説明

感熱記録材料、感熱記録ラベル、感熱記録券紙及び感熱記録方法

【課題】支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減され、更に感度倍率を維持したまま、地肌かぶりを抑制することが可能な感熱記録材料を提供する。
【解決手段】古紙パルプを含む支持体と、支持体上に設けられた、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層とを備え、支持体及びサーマルコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含む感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱記録材料に関し、更に詳しくは、支持体に古紙パルプが含まれていても感熱紙の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することが可能な感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録紙は、通常では無色ないし淡色の発色性ロイコ染料と有機酸性物質のような顕色剤とが、熱時溶融反応して発色することを記録紙に応用したものであり、その例として特許文献1、特許文献2等の提案がなされている。これらの感熱記録紙は、計測用レコーダー、コンピューター等の端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベル、POSラベルなど広範囲の分野に応用されているが、最近はこれら用途と多様化に伴い、感熱記録紙に対する要求品質もより多様化、高度化してきている。
【0003】
一方、近年の資源保護の運動の高まりから、都市ゴミに含まれる紙類がクローズアップされており、特にオフィスや工場から出される紙ゴミはゴミ全体量の増加に拍車をかけている。そのため、こうしたゴミとして出される紙を回収し、再生紙として再利用したり、支持体に古紙パルプを含有させることが望まれている。
【0004】
感熱紙の支持体に古紙パルプを含有させることは、例えば特許文献3〜6等において提案されている。
【0005】
また、特許文献7には、古紙パルプを含有する支持体を用いると感熱紙の再発色能、すなわち感熱紙をある条件下に保存した時、保存後の記録特性が保存前と比較してどの程度維持できているかという特性、が低下することが記載されている。そして、特許文献7では、再発色能が低下する原因として、古紙パルプ中に含まれる界面活性剤により顕色剤が不活性化するためであろうと推定している。特に2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)は、比較的水溶性が高いためか界面活性剤と反応しやすく、不活性化しやすいと記載されている。このことから、古紙パルプを含有する支持体上に水溶性の高い顕色剤を使用することは、再発色能に関して問題があることが想定される。
【0006】
一方、記録装置の低コスト化に伴い、それに用いられているサーマルヘッドに対してもコストダウンが要求されるようになり、サーマルヘッドも低コストの素材で簡便に作られるようになってきている。そのため、サーマルヘッドの耐久性が低下し、例えば、サーマルヘッドの発熱体上に設けられる保護膜の膜形成状態が悪かったり、保護膜にピンホールやクラックなどの欠点を有するものもあった。
【0007】
上記保護膜にピンホールやクラックがある場合の最大の問題点としては、特に高温高湿環境下において使用する場合のサーマルヘッドの電気的な腐蝕破壊が挙げられる。この現象は、感熱記録材料に含まれるイオン成分によってサーマルヘッドの電極部が腐蝕し、最終的には断線してしまうことで、印字ができなくなってしまうものである。そして、この現象は、イオン成分が関与していることから、高湿環境下において起こりやすくなっている。
【0008】
このような状況から、感熱記録材料、サーマルヘッド、プリンターにおいては、故障発生を防ぐ為の検討が進められており、感熱記録材料では腐蝕原因であるイオン量を低減することが行われている。また、サーマルヘッドにおいてはヘッドの保護膜の改良が行われ、プリンターにおいても待機時の電圧印加を制御することが行われている。
【0009】
ところで、感熱記録材料に尿素及びその誘導体を用いることは、特許文献8〜特許文献11等において提案されている。すなわち、特許文献8には発色感度、スティック及びカス付着等のヘッドマッチング特性を大幅に改善できる感熱記録材料として、オーバーコート層中に尿素誘導体<R−NHCONH−R>、<R−NHCONH−R−NHCONH−R>の少なくとも1種を含有させた感熱記録材料が提案されている。ここで、R及びRは、炭素数10〜30の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは二価の炭化水素基を表している。しかし、特許文献8に記載の尿素誘導体は、水分子との親和力が小さく、水分子をトラップする効果が十分に発揮できないため、感熱記録材料中で電気腐蝕の原因であるイオン種が発生してしまい、これを移動させる環境(湿度)の影響を大幅に低減することは不可能であり、上述の再発色能や電蝕に関して十分な解決策にはならないと考えられる。
【0010】
また、特許文献9にはドット再現性に優れた感熱記録材料として、アンダーコート層中に融点75℃以上の尿素誘導体<R−NCON−R>等を含有させた感熱記録材料が提案されている。ここで、R、R、R、及びRは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表している。従って、特許文献9では、尿素誘導体として尿素を含有する構成も含まれる。しかし、尿素のみでは水分子をトラップする効果しか発揮できないため、感熱記録材料中の電気腐蝕の原因であるイオン種をトラップすることができず、上述の再発色能や電蝕に関してまだ不十分と考えられる。
【0011】
また、特許文献10には発色濃度及び発色感度が十分で、しかも地肌かぶりに優れた感熱記録材料として、<R-NHCONH-R>で表される炭素原子数7以上の尿素誘導体等を含有させる感熱記録材料が提案されている。ここで、Rはアルキル基を、Rは水素またはアルキル基を表しており、上記特許文献8と同様に水分子をトラップする効果が十分に発揮できないため、感熱記録材料中で電気腐蝕の原因であるイオン種が発生してしまい、これを移動させる環境(湿度)の影響を大幅に低減することは不可能であり、上述の再発色能や電蝕に関して十分な解決策にはならないと考えられる。更に、特許文献10の実施例には、比較材料として尿素が挙げられており、例えばN−オクタデシルウレアと比べると、尿素の配合では、特に地肌かぶりに大きな差異が生じることも記載されている。
【0012】
更に、特許文献11にはバインダーとしてゼラチンを用いた場合に生ずる発色濃度の低下を防止することができる感熱記録材料として、感熱記録層がバインダーとしてのゼラチンと、尿素または尿素誘導体を含有する感熱記録材料が提案されている。しかし、上記特許文献10と同様に、尿素のみでは水分子をトラップする効果しか発揮できないため、感熱記録材料中の電気腐蝕の原因であるイオン種をトラップすることができず、上述の再発色能や電蝕に関して課題が残されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減され、更に感度倍率を維持したまま、地肌かぶりを抑制することが可能な感熱記録材料を提供すること、および、サーマルヘッドの電蝕を抑制することが可能な感熱記録方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の感熱記録材料は、古紙パルプを含む支持体と、前記支持体上に設けられた、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層とを備え、前記支持体及びサーマルコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の感熱記録材料は、古紙パルプを含む支持体と、前記支持体上に設けられたアンダーコート層と、該アンダーコート層上に形成された、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層とを備え、前記支持体、アンダーコート層及びサーマルコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の感熱記録材料は、古紙パルプを含む支持体と、前記支持体上に設けられた、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、前記サーマルコート層上に設けられたオーバーコート層と、を備え、前記支持体、サーマルコート層及びオーバーコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の感熱記録材料は、古紙パルプを含む支持体と、前記支持体上に設けられたアンダーコート層と、該アンダーコート層上に形成された、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、前記サーマルコート層上に設けられたオーバーコート層と、を備え、前記支持体、アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする。
【0018】
また、上記いずれかの感熱記録材料において、前記アンダーコート層がプラスチック球状中空粒子を含むことを特徴とする。この場合、前記プラスチック球状中空粒子の中空率が80%以上であることが好ましい。
【0019】
また、上記いずれかの感熱記録材料において、前記サーマルコート層、アンダーコート層、及びオーバーコート層の少なくとも1層以上に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。
【0020】
また、上記いずれかの感熱記録材料において、前記サーマルコート層、アンダーコート層、及びオーバーコート層の少なくとも1層以上に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することが好ましい。
【0021】
また、上記いずれかの感熱記録材料は、裏面にバックコート層を設けてもよい。
【0022】
また、本発明の感熱記録ラベルは、上記いずれかの感熱記録材料の表面及び/又は裏面に印刷を施したものである。
【0023】
また、本発明の感熱記録ラベルは、上記いずれかの感熱記録材料の裏面に粘着層を設けたものである。
【0024】
また、本発明の剥離紙不要の感熱記録ラベルは、上記いずれかの感熱記録材料の裏面に熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けたものである。
【0025】
また、本発明の感熱記録券紙は、上記いずれかの感熱記録紙の裏面に磁気記録層を設けたものである。
【0026】
また、本発明の感熱記録方法は、少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを押し当てて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させて発色反応をさせることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料が上記いずれかの感熱記録材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、支持体(支持体層)並びにサーマルコート層、さらに必要に応じアンダーコート層及び/又はオーバーコート層を備え、これらの少なくとも1層に、尿素及び少なくとも弱酸とその共役塩基、あるいは弱塩基とその共役酸からなる緩衝溶液を1種類以上含むことから、支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、また、サーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することができ、更に感度倍率を維持したまま、耐熱地肌かぶりも抑制することが可能な感熱記録材料を提供することができる。
【0028】
また、記録材料として本発明の感熱記録材料を用いることにより、サーマルヘッドの電蝕が大幅に抑制された感熱記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の感熱記録材料は、古紙パルプを含む支持体と、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、を備えている。また、感熱記録材料は、支持体とサーマルコート層との間にアンダーコート層を備えていてもよく、さらにサーマルコート層上にオーバーコート層を備えていてもよい。そして、支持体、アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含んでいる。
【0030】
<支持体>
本発明の支持体は種々の古紙パルプを含有することができる。古紙パルプとしては、例えば新聞、雑誌等の古紙を、脱墨剤を用いて脱インクしたものを使用することができる。
【0031】
<サーマルコート層>
サーマルコート層は、熱時溶融によりロイコ染料と顕色剤を接触させて発色反応を行う感熱記録層である。サーマルコート層は、少なくともロイコ染料と顕色剤を含有し、さらに尿素及び緩衝溶液のほかに、慣用の顔料、後述する結着剤、架橋剤、結合剤、充填剤等を含有することができる。サーマルコート層に用いられるロイコ染料の例としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。このうちフルオラン系化合物としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−フェネチルフルオラン等が挙げられる。
【0032】
本発明において、前記ロイコ染料を発色させる顕色剤の例としては、例えば、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−VHF−ブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−WHU−ブチルフェノール)、p−ニトロ安息香酸亜鉛、1,3,5−トリス(4−WHU−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−(3,4−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルスルフィド)、4−(β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ)サリチル酸、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルボン酸、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−WHU−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−WHU−ブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル)ブタン、4,4’−チオビス(6−WHU−ブチル−2−メチルフェノール)4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、1,3−ビス(4 −ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジ(m−クロロフェニルチオ尿素)、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)等を挙げることができる。更に、各種オリゴマータイプの化合物なども例示できる。また、サーマルコート層中におけるロイコ染料と顕色剤との比は、0.5〜10部、好ましくは、1〜5部(ここで、「部」はいずれも重量比率を意味する)の範囲で用いることが好ましい。
【0033】
<アンダーコート層>
アンダーコート層は、支持体とサーマルコート層との間に設けられ、サーマルコート層に加えられた印字エネルギーを最大限活用するための下引き層である。本発明においては、感熱記録材料の高感度化(すなわち、高い断熱性及びサーマルヘッドとの密着性を向上させ発色感度を向上させること)を目的として、支持体上にアンダーコート層を設けることが好ましい。アンダーコート層はプラスチック球状中空粒子を含有することが好ましく、さらに、後述する尿素及び緩衝溶液、結着剤、架橋剤、結合剤、充填剤等を含有することができる。プラスチック球状中空粒子は、例えば、熱可塑性高分子を殻とし、内部に空気その他の気体を含有するもので、すでに発泡状態となっている球状中空微粒子である。この熱可塑性中空樹脂粒子の中空率(中空度)は、中空粒子の外径部分の体積と内径部分の体積の比であり下記式で表示されるものである。本発明では、水分のトラップを多くして再発色能低下を防ぐ観点から、プラスチック球状中空粒子の中空率が80%以上であることが好ましく、85〜95%の範囲内であることがより好ましい。
【0034】
中空率(%)=(中空粒子の内径部分の体積/中空粒子の外径部分の体積)×100
【0035】
プラスチック球状中空微粒子は、例えばアクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂や、スチレンなどのスチレン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステル及び/又メタクリル酸エステルの共重合体、ビニル基を一分子当たり2個以上有するビニルモノマー及び/又はジビニルベンゼンを含有するモノマーからなる共重合体などから作ることができる。
【0036】
<オーバーコート層>
本発明においては、サーマルコート層上に保護層としてオーバーコート層を設けることができる。オーバーコート層はヘッドマッチング性、感熱記録材料への筆記性向上等の上でも有用である。オーバーコート層は、後述する尿素及び緩衝溶液、結着剤、架橋剤、結合剤、充填剤等を含有することができる。
【0037】
<尿素>
本発明において用いる尿素分子(HNCONH)は、N原子と結合しているH原子が+に帯電し、C原子と結合しているO原子が−に帯電している為、6ヶ所の水素結合サイトを持っており、4ヶ所の水素結合サイトを持っている水分子と水素結合を介して混じりあうことにより、水分子を効率良くトラップすることができる。上記の理由により、尿素分子の水素原子をアルキル基等で置換した尿素誘導体ではなく、尿素を用いることが水分子トラップ効果を最大限発揮できる点で好ましい。
【0038】
また、尿素分子の添加量は、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層のそれぞれの全固形分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。0.1重量部より小さいと尿素の水分子トラップ効果が十分発揮できない為、特に再発色能の向上が不十分となり、10重量部を越えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0039】
尿素分子を支持体に添加する場合の添加量は、支持体100重量部に対して0.02〜2重量部であり、特に0.1〜1重量部の範囲が好ましい。0.02重量部より小さいと尿素の水分子トラップ効果が十分発揮できない為、特に再発色能の向上が不十分となり、2重量部を越えて用いても、再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0040】
<緩衝溶液>
本発明において、上記尿素と併用して用いられる緩衝溶液は、少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含んでいる。緩衝溶液の具体例としては、例えば、酢酸と酢酸ナトリウム、ギ酸とギ酸ナトリウム、リン酸とリン酸二水素カリウム,リン酸水素二ナトリウム、アンモニアと塩化アンモニウム等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の緩衝溶液の添加量は、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層のそれぞれの全固形分100重量部に対して0.01〜1重量部であり、特に0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。0.01重量部より小さいと緩衝溶液のイオン消費(捕捉)効果が十分発揮できない為、特に電蝕低減の効果が不十分となり、1重量部を越えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0042】
本発明の緩衝溶液を支持体に添加する場合の添加量は、支持体100重量部に対して0.002〜0.2重量部であり、特に0.01〜0.1重量部の範囲が好ましい。0.02重量部より小さいと緩衝溶液のイオン捕捉効果が十分発揮できない為、特に電蝕低減の効果が不十分となり、0.2重量部を越えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0043】
<結着剤>
前記のとおり、アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層は、それぞれ結着剤を含有することができる。本発明に用いる結着剤としては、特に限定されるものではないが、例えばジアセトン変性ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。ジアセトン変性ポリビニルアルコールは、ジアセトン基を有するビニルモノマーと脂肪酸ビニルエステルとを共重合させて得た重合体を鹸化する等の公知の方法により製造することができる。ジアセトン基を有するビニルモノマーとしては、具体的にはジアセトンアクリルアミドやメタジアセトンアクリルアミドが好ましい。脂肪酸ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。これらの共重合可能なビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコール中のジアセトン基の含有量は、ポリマー全体の0.5〜20モル%であり、耐水性を考慮すると2〜10モル%の範囲が好ましい。2モル%より少ないと実用上耐水性が不十分となり、10モル%を越えてもそれ以上の耐水化の向上が見られず高価になるだけなので経済的でない。また本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコールの重合度は300〜3000で、特に500〜2200の範囲が好ましい。また鹸化度は80%以上が好ましい。
【0044】
<架橋剤>
アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層は、それぞれ架橋剤を含有することができる。本発明で使用される架橋剤は、特に限定されるものではないが、ヒドラジド基を持つヒドラジド化合物が好ましく、例えばカルボヒドラジド、蓚酸ヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ヒドラジド、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のヒドラジド化合物を併用しても良いし、機能を損なわない範囲で他の公知の架橋剤と組み合わせても良い。ヒドラジド化合物の中では耐水性や安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0045】
本発明において、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層には、上記尿素及び緩衝溶液、結着剤、架橋剤の他に、さらに必要に応じ結合剤、充填剤を含有することができる。
【0046】
結合剤としては、例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、デンプン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のもの或はポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、コロイダルシリカとアクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等を挙げることができる。
【0047】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、クレー、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等を挙げることができる。
【0048】
本発明においては、上記各層に、必要に応じ感熱記録材料に慣用される補助添加成分、例えば、填料、滑剤等を併用することができる。この場合、填料としては、例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレーカオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の有機系の微粉末を挙げることができる。滑剤としては高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類等を挙げることができる。
【0049】
<バックコート層>
本発明の感熱記録材料においては、支持体の裏面(サーマルコート層とは反対側の面)に、慣用の顔料、樹脂、架橋剤等を主成分とするバックコート層を設けることも可能である。バックコート層を設けることにより、裏面からの油や可塑剤の浸透を抑え、また、カールコントロールを行うことができる。
【0050】
本発明の感熱記録材料において、アンダーコート層は、支持体上に、乾燥時の重量で0.5〜8g/m、好ましくは1.5〜5g/mの範囲内で設けることができる。また、サーマルコート層は乾燥時の重量で3〜10g/m、好ましくは4〜7g/mの範囲内で設けることができる。また、オーバーコート層は乾燥時の重量で0.5〜8g/m、好ましくは1.5〜5g/mの範囲内で設けることができる。更に、上記アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層以外に、支持体の裏面にバックコート層を乾燥時の重量で0.1〜3g/m、好ましくは0.5〜2g/mの範囲内で設けることができる。
【0051】
本発明の感熱記録材料は例えば次のような方法によって製造することができる。まず、常法によりまずロイコ染料、顕色剤、尿素及び緩衝溶液などをそれぞれ別々に結合剤あるいは必要に応じてその他の添加物と共にボールミル、アトライター、サンドミルなどの分散機にて粉砕、分散化後、混合してサーマルコート層用の塗布液を調製する。この場合、上記ロイコ染料や顕色剤は水を分散媒体として使用し、例えばサンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によってポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びスチレン−無水マレイン酸共重合体及びそれらの誘導体などの水溶性合成高分子化合物などと共に分散させ、分散液とした後、サーマルコート層の塗布液とすることができる。一方、尿素及び緩衝溶液、結合剤あるいは必要に応じてその他の添加物を用いてアンダーコート層用の塗布液、オーバーコート層用の塗布液を各々調製する。なお、尿素及び緩衝溶液は、これらの塗布液のいずれか1種または全てに配合することができる。
【0052】
次に、各塗布液を、例えば紙、プラスチックシート、合成紙等の支持体上に、アンダーコート層を設ける場合はアンダーコート層、サーマルコート層、必要に応じてオーバーコート層を形成する順序で塗布、乾燥を繰り返して本発明の感熱記録材料を得ることができる。
【0053】
サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層、バックコート層等の各層を形成する方法としては、例えばエアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
【0054】
以上のようにして得られる本発明の感熱記録材料は、その表面にサーマル記録ヘッドを押し当てることによって画像を形成できる。
【0055】
<感熱記録ラベル>
本発明の感熱記録材料は、表面及び/又は裏面に印刷を施すことにより、あるいは、裏面に粘着層を設けることにより、感熱記録ラベルとすることができる。この場合、裏面に熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けて剥離紙不要の感熱記録ラベルとすることも可能である。
【0056】
<感熱記録券紙>
また、本発明の感熱記録材料は、裏面に磁気記録層を設けることにより、感熱記録券紙とすることができる。
【0057】
<作用>
本発明の感熱記録材料の作用について説明する。上述のとおり、本発明の感熱記録材料において支持体に使用される古紙パルプは、主に新聞、雑誌等の古紙を、脱墨剤を用いて脱インクしたものである。ここで、脱墨剤としては(1)ノニオン系、(2)脂肪酸系、(3)脂肪酸誘導体系、(4)高級アルコール系、(5)油脂誘導体系、の界面活性剤及び(6)起泡剤(ノニオン系/アニオン系界面活性剤)が使用されており、古紙パルプの製造工程(離解→除塵→脱墨)で除去しきれなかった脱墨剤(界面活性剤)が支持体上に残留することが推定される。上記(1)の界面活性剤はポリオキシエチレン、(2)はカルボン酸、(3)〜(5)はポリオキシアルキレン、(6)はポリオキシエチレン/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造が親水基部分となっている。また、カルボン酸/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造は水中では、親水基の部分が陰イオンに電離し、水素イオン或は陽イオン(例えばNa、K)を放出している。これに対し、ポリオキシエチレン(アルキレン)構造は、水中では親水基の部分は電離していない。
【0058】
ところで、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に代表されるフェノール性顕色剤は水中では弱酸性、即ちフェノール性水酸基がごく弱いアニオン性を示す為、上記陽イオンと相互作用することにより顕色能を失ってしまうことが考えられる。しかし、本発明に用いる尿素分子(HNCONH)は、N原子と結合しているH原子が+に帯電、C原子と結合しているO原子が−に帯電している為、6ヶ所の水素結合サイトを持っており、4ヶ所の水素結合サイトを持っている水分子と水素結合を介して混じりあう、すなわち水分子を効率良くトラップすることができる。この水分子トラップ効果により、特に電蝕の原因であるイオン種を発生し、移動させる環境(湿度)の影響を大幅に低減することが可能となる。
【0059】
更に、本発明で尿素分子と併用して使用する弱酸とその共役塩基、あるいは弱塩基とその共役酸からなる緩衝溶液は、例えば弱酸(酢酸)とその共役塩基(酢酸ナトリウム)からなる場合、CHCOOが上記水素イオン、陽イオンを消費(捕捉)し、CHCOOHが陰イオンに電離した脱墨剤(界面活性剤)の親水基部分に作用(捕捉)する為、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を効率良く抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0060】
また、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層における結着剤(結着樹脂)としては、ジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。ジアセトン変性ポリビニルアルコールは、イオン性が低いため、このようなイオン性を有する界面活性剤との相互作用が少なく、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。また、ジアセトン変性ポリビニルアルコールはイオン性が低いために、感熱記録材料中或は支持体自体に含まれる陽イオン及び陰イオンのサーマルヘッドへの移動を劇的に抑制することができ、電蝕を低減することができる。
【0061】
また、アンダーコート層が中空粒子を含有している場合、その中空粒子の中空率が高ければ高いほど水分がトラップされやすくなり、吸水率がアップする為、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0062】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において示す「部」及び「%」はいずれも重量基準である。
【0063】
下記組成よりなる混合物をサンドミルで平均粒径が2μm以下になるよう粉砕し、A液からC液を調製した。
(A液)染料分散液の調整
1)3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3)水 50部
【0064】
(B液)顕色剤分散液の調整
1)4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3)水 50部
【0065】
(C液)顔料分散液の調整
1)シリカ 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3)水 50部
【0066】
下記組成比の混合物を混合攪拌して、〔D液〕及び〔E液〕を調製した。
(D液)樹脂水溶液の調整
1)ジアセトン変性ポリビニルアルコール 10部
2)水 90部
【0067】
(E液)架橋剤水溶液の調整
1)アジピン酸ジヒドラジド 10部
2)水 90部
【0068】
下記組成比の混合物を混合攪拌して(N液)、(BS−1液)〜(BS−3液)を調整した。
(N液)
1)尿素 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0069】
(BS−1液)
1)酢酸 5部
2)酢酸ナトリウム 5部
3)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
4)水 80部
【0070】
(BS−2液)
1)リン酸 5部
2)リン酸二水素カリウム 5部
3)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
4)水 80部
【0071】
(BS−3液)
1)アンモニア 5部
2)塩化アンモニウム 5部
3)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
4)水 80部
【0072】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してサーマルコート層液〔T液〕を調整した。
(T−1液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
【0073】
(T−2液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)N液 25部
【0074】
(T−3液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)BS−1液 2.5部
【0075】
(T−4液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)N液 25部
5)BS−1液 2.5部
【0076】
(T−5液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)N液 25部
5)BS−2液 2.5部
【0077】
(T−6液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)N液 25部
5)BS−3液 2.5部
【0078】
(T−7液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)N液 25部
5)BS−1液 2.5部
6)D液 50部
【0079】
(T−8液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)N液 25部
5)BS−1液 2.5部
6)D液 45部
7)E液 5部
【0080】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してアンダーコート層液〔U液〕を調整した。
(U−1液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
【0081】
(U−2液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)N液 10部
5)BS−1液 1部
【0082】
(U−3液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)N液 10部
5)BS−2液 1部
【0083】
(U−4液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)N液 10部
5)BS−3液 1部
【0084】
(U−5液)
1)スチレンアクリル共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率50%、固形分40%)
20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)N液 10部
5)BS−1液 1部
【0085】
(U−6液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)N液 10部
5)BS−1液 1部
【0086】
(U−7液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 50部
4)N液 10部
5)BS−1液 1部
6)D液 30部
【0087】
(U−8液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 50部
4)N液 10部
5)BS−1液 1部
6)D液 27部
7)E液 3部
【0088】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してオーバーコート層液〔O液〕を調製した。
(O−1液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
【0089】
(O−2液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)N液 10部
7)BS−1液 1部
【0090】
(O−3液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)N液 10部
7)BS−2液 1部
【0091】
(O−4液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)N液 10部
7)BS−3液 1部
【0092】
(O−5液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)水 50部
5)N液 10部
6)BS−1液 1部
【0093】
(O−6液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)N液 10部
7)BS−1液 1部
【0094】
(実施例1及び34)
下記表1の組み合わせにしたがって、上記のようにして調整した各塗工液を用いて、古紙パルプ80%、NBKP17.8%、尿素2%、酢酸0.1%、酢酸ナトリウム0.1%により構成される中質紙(坪量50g/m)を支持体とする感熱記録材料を作製した。アンダーコート層を形成する場合は、上記支持体の表面に、アンダーコート層液〔U液〕を乾燥重量が3g/mとなるように塗布乾燥してアンダーコート層塗布済み紙を得た。また、サーマルコート層の形成は、上記支持体に直接、又は上記アンダーコート層塗布済み紙の上にサーマルコート層液〔T液〕をロイコ染料の乾燥重量が0.5g/mとなるように塗布乾燥してサーマルコート層塗布済み紙を得た。また、オーバーコート層を形成する場合は、上記サーマルコート層塗布済み紙の上にオーバーコート層液〔O液〕を乾燥重量が3g/mとなるように塗布乾燥し、40℃環境下に15時間保管した後、20kg/mの圧力でキャレンダー処理して感熱記録材料を得た。
【0095】
(実施例2〜33及び比較例1〜3)
古紙パルプ80%、NBKP20%により構成される中質紙(坪量50g/m)を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0096】
【表1】

【0097】
<再発色能試験>
次に前記で得られた各感熱記録材料に対し、以下に示す再発色能試験を行い、その結果を表2に示した。
(1)保存前発色濃度:各感熱記録材料を大倉電気社性感熱紙発色試験装置(TH−PMD)にて印加エネルギー0.45W/dot、パルス時間1.0msの条件で印字し、発色濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定した。
(2)保存後発色濃度:各感熱記録材料を50℃、80%RHの条件に一週間保存し、(1)と同様の条件にて印字を行い、発色濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定した。
(3)式1で定義する再発色能(%)を求めた。実用的には65%を超えることが必要であり、80%以上が好ましい。その結果を表2に示した。
【0098】
再発色能=[(保存後発色濃度)/(保存前発色濃度)]×100(%)・・・(式1)
【0099】
<待機電蝕試験>
また、前記で得られた各感熱記録材料に対し、松下電子部品社製サーマルヘッドをつけた感熱印字装置を用いて、加電圧24V、40℃、90%RHの環境下で2日間待機した時の電蝕試験を行い、更にそのサーマルヘッドを用いてベタ印字を行い、式2で定義する待機電蝕率を求めた。実用的には、50%以下である必要があり、20%以下が好ましい。その結果を表2に示した。
【0100】
待機電蝕率={1−(B/A)}×100(%) ・・・ (式2)
A:待機電蝕試験前のベタ印字面積
B:待機電蝕試験後のベタ印字面積
【0101】
<動的発色試験>
各感熱記録材料を大倉電気社性感熱紙発色試験装置(TH-PMD)にて印加エネルギー0.45W/dot、1ライン記録時間20msec/L、走査密度8×385ドット/mm条件下で、1msec毎にパルス幅0.0〜0.7msecに可変させて印字し、印字濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定し、濃度が1.0となるパルス幅から、式3で定義する感度倍率を求めた。その結果を表2に示した。
【0102】
感度倍率=(比較例1のパルス幅)/(サンプルのパルス幅) ・・・ (式3)
【0103】
<耐熱地肌かぶり性試験>
また、前記で得られた各感熱記録材料に対し、以下に示す耐熱性試験を行い、その結果を表2に示した。
(1)保存前地肌濃度:保存前の地肌濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定した。
(2)保存後地肌濃度:各感熱記録材料を70℃Dryの条件に24時間保存し、保存後の地肌濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定した。
(3)式4で示す耐熱地肌かぶり性を求めた。その結果を表2に示す。
【0104】
耐熱地肌かぶり性=(保存後地肌濃度)−(保存前地肌濃度) ・・・ (式4)
【0105】
【表2】

【0106】
表1及び表2から、支持体、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層のいずれか少なくとも1層に尿素及び少なくとも弱酸とその共役塩基、あるいは弱塩基とその共役酸からなる緩衝溶液を1種類以上含む実施例の感熱記録材料は、古紙パルプを用いても65%より高い再発色能が得られ、待機電蝕率も50%以下に抑えられ、更に感度倍率を維持したまま、耐熱地肌かぶりを抑えることができることがわかる。これに対し、尿素のみ、緩衝溶液のみ、及び尿素も緩衝溶液も用いない比較例の感熱記録材料は65%以下の再発色能しか得られず、待機電蝕率も50%超と高く、サーマルヘッドの電蝕を抑えにくいことがわかる。
【0107】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特公昭43−4160号公報
【特許文献2】特公昭45−14039号公報
【特許文献3】特開昭58−025986号公報
【特許文献4】特開平03−140287号公報
【特許文献5】特開平03−227291号公報
【特許文献6】特開2005−88399号公報
【特許文献7】特公平07−085945号公報
【特許文献8】特開昭61−287788号公報
【特許文献9】特開昭63−218394号公報
【特許文献10】特公平04−031874号公報
【特許文献11】特開2000−118140号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを含む支持体と、
前記支持体上に設けられた、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層とを備え、
前記支持体及びサーマルコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
古紙パルプを含む支持体と、
前記支持体上に設けられたアンダーコート層と、
該アンダーコート層上に形成された、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層とを備え、
前記支持体、アンダーコート層及びサーマルコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項3】
古紙パルプを含む支持体と、
前記支持体上に設けられた、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、
前記サーマルコート層上に設けられたオーバーコート層と、
を備え、
前記支持体、サーマルコート層及びオーバーコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項4】
古紙パルプを含む支持体と、
前記支持体上に設けられたアンダーコート層と、
該アンダーコート層上に形成された、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、
前記サーマルコート層上に設けられたオーバーコート層と、
を備え、
前記支持体、アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層のいずれか1つ以上に、尿素、並びに少なくとも弱酸とその共役塩基、または、弱塩基とその共役酸を含む緩衝溶液を1種類以上含むことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項5】
前記アンダーコート層がプラスチック球状中空粒子を含むことを特徴とする請求項2又は4に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
前記プラスチック球状中空粒子の中空率が80%以上であることを特徴とする請求項5に記載の感熱記録材料。
【請求項7】
前記サーマルコート層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項8】
前記アンダーコート層及びサーマルコート層の少なくとも1層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項2に記載の感熱記録材料。
【請求項9】
前記サーマルコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項3に記載の感熱記録材料。
【請求項10】
前記アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項4に記載の感熱記録材料。
【請求項11】
前記サーマルコート層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項12】
前記アンダーコート層及びサーマルコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の感熱記録材料。
【請求項13】
前記サーマルコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の感熱記録材料。
【請求項14】
前記アンダーコート層、サーマルコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項4に記載の感熱記録材料。
【請求項15】
前記請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面にバックコート層を設けたことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項16】
前記請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料の表面及び/又は裏面に印刷を施したことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項17】
前記請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着層を設けたことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項18】
前記請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けたことを特徴とする剥離紙不要の感熱記録ラベル。
【請求項19】
前記請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けたことを特徴とする感熱記録券紙。
【請求項20】
少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを押し当てて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させて発色反応をさせることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料が請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録材料であること特徴とする感熱記録方法。

【公開番号】特開2011−56790(P2011−56790A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208952(P2009−208952)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】