説明

感熱記録材料

【課題】発色感度に優れる感熱記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に中間層と、該中間層上に感熱記録層を設けた感熱記録材料において、該中間層が中空粒子を含有し、該感熱記録層が糖類、アミノ酸類、及び一般式[X2+1−A3+(OH)][Zn−A/n・mHO]で表わされる層状複水酸化物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色感度に優れる感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の染料前駆体(以下、染料前駆体と記載。)、並びに電子受容性顕色剤(以下、顕色剤と記載。)を主成分とする感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応し記録画像が得られるものである。このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易なこと、騒音の発生がないこと等の利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル印字機、乗車券、チケットの発券機等広範囲の分野に利用されている。近年、これらの記録装置の使用環境はより過酷になってきており、可塑剤を含むプラスチックケースや食品ラップと接触した場合の画像部の保存性(以下、耐可塑剤性と記載。)に優れた感熱記録材料が要求されている。更に、記録装置の小型化、記録の高速化に従って、微小な熱エネルギーでも高濃度で鮮明な発色画像を得られることも要求されており、耐可塑剤性に優れ、かつ発色感度に優れた感熱記録材料が要望されている。
【0003】
耐可塑剤性に優れる感熱記録材料としては、糖類またはその誘導体を用いた発色反応を利用した感熱発色層を有する感熱記録材料が特開平07−179037号公報(特許文献1)に開示され、また耐光性や耐可塑剤性に優れる感熱記録材料として、アミノ酸類と糖類が加熱により画像を形成する感熱記録材料が特開2005−254764号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
一方、感熱記録材料の感熱記録層と支持体の間に断熱性のある中間層を設けて発色感度を向上させる方法が知られており、例えば特開昭59−155097号公報(特許文献3)に開示されている。しかし、発色成分として糖類及びアミノ酸類を用いる感熱記録材料の感熱記録層と支持体の間に、断熱効果の高い構造性顔料である焼成カオリン等を主成分とした中間層を設けた場合、この中間層は多孔質な塗層構造であるから、水溶性の高い糖類及びアミノ酸類が中間層に吸収されてしまい、発色感度がむしろ低下してしまうという問題があった。これを回避するために中空構造を持った有機顔料を主成分とした中間層を用いることも知られているが、発色感度は依然として満足のいくものではなく、改善が求められていた。
【0005】
他方、ハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物を感熱記録材料に使用できることは従来から知られており、例えば特開平05−8543号公報(特許文献4)では保護層が含有する充填剤として記載され、特開2010−105917号公報(特許文献5)では、感熱記録層が含有しても良い一成分として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−179037号公報
【特許文献2】特開2005−254764号公報
【特許文献3】特開昭59−155097号公報
【特許文献4】特開平05−8543号公報
【特許文献5】特開2010−105917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発色感度に優れる感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)支持体上に中間層と、該中間層上に感熱記録層を設けた感熱記録材料において、該中間層が中空粒子を含有し、該感熱記録層が糖類、アミノ酸類、および下記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物を含有することを特徴とする感熱記録材料。
[X2+1−A3+(OH)][Zn−A/n・mHO] (1)
(式中、X2+は2価の金属イオンを表し、Y3+は3価の金属イオンを、Zn−はn価の陰イオンを表す。Aは0.2≦A≦0.33の数値範囲を、mは0.1〜0.7の数値範囲をそれぞれ表す。)
(2)上記感熱記録層がポリオレフィン粒子を含有することを特徴とする上記1記載の感熱記録材料。
(3)上記アミノ酸類が、グリシンまたはアルギニンであることを特徴とする上記1または2記載の感熱記録材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、発色感度に優れる感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の内容を更に具体的に説明する。
【0011】
支持体上に中間層と、該中間層上に発色成分として糖類とアミノ酸類を含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料は、発色感度の点で充分満足できるものではなかった。本発明者はこれらの課題について鋭意検討を行った結果、該感熱記録層が上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物を含有することで、発色感度を高められることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明において感熱記録層が含有する糖類とアミノ酸類は、加熱することによっていわゆるアミノ−カルボニル反応により加熱部分を褐変させる。糖類のみを加熱するといわゆるカラメル化反応により糖類が焦げて褐変することが知られているが、本発明はアミノ−カルボニル反応を利用することによりカラメル化反応を利用した場合よりも、より発色感度の高い感熱記録材料が得られる。
【0013】
本発明で用いられる糖類は特に限定されるものではないが、好ましくはグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなど還元性を有する単糖類及びこれらの誘導体などが良く、より好ましくは、リボース、アラビノース、キシロースなど還元性を有するペントースが良い。L型、D型のいずれでも良い。また、必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0014】
本発明で用いられるアミノ酸類としてはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、システイン、メチオニン、プロリン等のα−アミノ酸、β−アラニンに代表されるβ−アミノ酸、γ−アミノ酪酸に代表されるγ−アミノ酸等が挙げられ、またこれらの塩類及び誘導体等が挙げられる。またL型、D型のいずれであっても良く、必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することもできる。中でもアミノ酸類にグリシンまたはアルギニンを使用した場合、高い発色感度を有する感熱記録材料を得ることができる。
【0015】
本発明において、糖類とアミノ酸類の比率は、質量比で1:10〜10:1の範囲で使用するのが好ましく、特に1:4〜4:1の範囲で使用するのがより好ましい。上記の比率の範囲に調整することで、発色感度の高い感熱記録材料が得られる。また、充分な熱応答性を得るためには、感熱記録層の総固形分中、糖類とアミノ酸類の総和が10〜80質量%を占めることが好ましく、より好ましくは40〜75質量%である。本発明における感熱記録層には、必要に応じて、糖類とアミノ酸類に加えて、公知の染料前駆体、顕色剤、増感剤、画像保存剤を併用することができる。公知の染料前駆体、顕色剤、増感剤、画像保存剤は、耐可塑剤性の点から、感熱記録層の総固形分中0〜20質量%とすることが好ましい。
【0016】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層に含まれる種々の成分は、分散媒中に分散された分散液として支持体上に塗布、乾燥されることが好ましい。その分散液は、発色成分を構成する化合物を乾式粉砕して分散媒中に分散する方法、または発色成分を構成する化合物を分散媒に混入し湿式粉砕する方法などにより得られる。本発明における、糖類とアミノ酸類はそれぞれ、もしくは共に、水を分散媒体として使用し、ホモミキサー、サンドグラインダー、ボールミル、アトライター、ビーズミル等の各種湿式粉砕機によって分散剤と共に分散あるいは粉砕して微粒子とした後、感熱記録層塗液の調製に用いられることが好ましい。容易に水に溶解する糖類やアミノ酸類の場合、塗工液に直接添加しても良いが、画像を形成する以前に他の成分との相互作用を避けるために、分散剤溶液中で攪拌(分散)してから用いることが好ましい。糖類とアミノ酸類をあらかじめ分散剤溶液中で攪拌(分散)することにより、糖類とアミノ酸類を分散剤で保護して、他の成分との相互作用を抑制することができる。
【0017】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、下記一般式(1)で表される層状複水酸化物を含有する。
[X2+1−A3+(OH)][Zn−A/n・mHO] (1)
【0018】
式中、X2+は2価の金属イオンを表し、Y3+は3価の金属イオンを、Zn−はn価の陰イオンを表す。Aは0.2≦A≦0.33の数値範囲を、mは0.1〜0.7の数値範囲をそれぞれ表す。上記一般式(1)中のX2+としては、例えば、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の2価金属イオンが挙げられ、複数種の金属イオンを有していても良い。Y3+としては、Al、Cr、Fe、Co、In等の3価金属イオンが挙げられ、複数種の金属イオンを有していても良い。Zn−としては、CO2−、Cl、NO、カルボン酸等のn価の陰イオンが挙げられる。このような層状複水酸化物は、一般に、2価と3価の混合金属塩水溶液とアルカリ性溶液を混合させて、2価と3価の金属イオンを共沈殿させる共沈法によって調製される。具体的にはMgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)12CO・3HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg3.5Zn0.5Al(OH)12CO・3HO等が挙げられる。また、層状複水酸化物の平均粒子径は0.05〜10μmのものが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。この平均粒子径が0.05μmより小さいものは、層状複水酸化物が凝集しやすく、均一に分散させることが困難となる等生産上の問題が生じる場合があり、逆に10μmより大きいものは、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、熱ヘッドとの密着性が低下し発色感度の向上が低下する問題が生じる場合がある。ここで言う平均粒子径とはレーザー回折散乱法により測定される。このような層状複水酸化物は市販品を利用することもでき、例えば協和化学工業(株)よりDHT−6(化学組成MgAl(OH)16CO・4HO、平均粒子径0.5μm)等の製品名で市販されているものを入手し利用することもできる。上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物を感熱記録層に使用した場合、発色感度に優れた感熱記録材料を得ることができる。
【0019】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層に含まれる上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物のX2+をMg2+、Y3+をAl3+、Zn−をCO2−とした場合は、発色感度がより高くなるため好ましい。
【0020】
本発明において、充分な熱応答性を得るためには、感熱記録層の総固形分中、上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物の総和が5〜50質量%を占めることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。
【0021】
本発明における感熱記録層には、上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物に加えて、耐スティッキング性向上、白色度向上等の目的に応じて、各種顔料を使用することができる。例えば、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、非晶質珪酸カルシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等の白色無機顔料など公知の顔料が挙げられる。これら各種顔料は、本発明の効果を損ねない範囲で使用することができる。
【0022】
本発明における、上記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物は、水を分散媒体として、ホモミキサー、サンドグラインダー、ボールミル、アトライター、ビーズミル等の各種湿式粉砕機によって分散剤と共に分散あるいは粉砕して微粒子とした後、感熱記録層塗液の調製に用いられることが好ましい。
【0023】
また、本発明の感熱記録層には発色感度向上のためにポリオレフィン粒子を含有させることができる。本発明におけるポリオレフィン粒子は、炭素数2から16のα−オレフィンの単独または2種以上の共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種からなり、例としてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独及びまたは2種以上の共重合体が挙げられ、中でもエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましく用いられる。また、このようなポリオレフィン粒子水分散体(以下、ポリオレフィンワックスエマルジョンと記載。)は市販品を利用することもでき、例えば三井化学(株)よりケミパールW400等の製品名で市販されているものを入手し、使用することもできる。
【0024】
本発明において、感熱記録層の総固形分に対して、ポリオレフィン粒子の総和が1〜15質量%を占めることが好ましい。上記の範囲でポリオレフィン粒子を感熱記録層に含有させた場合、発色感度のより優れた感熱記録材料を得ることができる。
【0025】
本発明で前記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物、糖類、アミノ酸類等の分散時に使用する分散剤としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、リン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン等のプロテイン、キトサンの酸中和物、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ジイソブチレン/無水マレイン酸共重合体塩、スチレン/イソブチレン/無水マレイン酸共重合体塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体塩、エチレン/アクリル酸共重合体塩、スチレン/アクリル酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルスルホン酸塩等の水溶性高分子化合物、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪酸金属塩等のアニオン系低分子界面活性剤、アセチレングリコール等のノニオン系界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することができる。分散剤は前記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、糖類及びアミノ酸類の総和に対して0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層のバインダーとして、通常の塗工で用いられる種々の水溶性高分子化合物、または水分散性高分子化合物を用いることができる。具体的には、デンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン等のプロテイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性バインダー、及びスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の水分散性バインダー等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することができる。バインダーは総固形分中5〜20質量%であることが好ましい。
【0027】
また、感熱記録層には耐スティッキング性向上のためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、カスターワックス等のワックス類を、耐水性を持たせるために各種の硬膜剤、架橋剤を、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、界面活性剤、蛍光染料、着色染料、ブルーイング剤等を含有させることができる。
【0028】
本発明において、支持体と感熱記録層との間に中空粒子を含有する中間層を設けることにより、高い発色感度を得ることができる。本発明の中空粒子を含有する中間層は、糖類、アミノ酸類等の水溶性の高い発色成分が中間層または支持体へ浸透するのを抑え、感熱記録層中に発色成分をとどまりやすくさせるため、発色感度向上をもたらす。また、断熱層として作用し、熱ヘッド等からの熱エネルギーの効率的活用による発色感度向上をもたらす。
【0029】
本発明において用いられる中空粒子は、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気、その他の気体を含有する微小球状中空粒子であり、平均粒子径は0.5〜10μmのものが好ましい。この平均粒子径(粒子外径)が0.5μmよりも小さいものは、中空率の制御が難しい等の生産上の問題が生じる場合があり、逆に10μmより大きいものは、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、熱ヘッドとの密着性が低下し発色感度の向上が低下する場合がある。更に、本発明で用いられる中空粒子は、中空率が40%以上のものが好ましく、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社よりローペイクHP−91(粒径1μm、中空率50%)等が市販されており、入手することができる。ここで言う中空率とは、中空樹脂の中空部の体積を、中空粒子の体積で除した値である。
【0030】
本発明において、中間層における中空粒子の含有量は中間層の総固形量に対して20質量%以上とすることが好ましく、60〜90質量%とすることがより好ましい。
【0031】
本発明の中間層には発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて各種無機顔料、有機顔料、及び有機無機複合顔料を使用することができる。例えば、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、珪酸カルシウム、コロイダルシリカ、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル等の通常塗工紙等に使用される顔料が挙げられ、これらを単独または2種以上併用して使用することができる。
【0032】
また中間層にはバインダーとして、通常の塗工で用いられる種々の水溶性高分子化合物、または水分散性樹脂を用いることができる。その具体例としては、例えばデンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、及びスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の水分散性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダーは単独、もしくは2種以上混合して用いることができる。バインダーの使用量は中空粒子に対して10〜400質量%とすることが好ましい。
【0033】
本発明において、感熱記録層上には、耐スティッキング性の向上、スクラッチ傷の防止、耐水性の向上、感熱発色画像の耐可塑剤性や耐薬品性の向上等を目的として保護層を設けることができる。保護層には、各種接着剤、無機顔料、各種硬化剤、各種架橋剤、紫外線吸収剤等を含有させ、単層または二層以上を積層させることができる。また、感熱記録層または保護層の表面にUVインキ等による印刷等を行ってもよい。
【0034】
本発明において、感熱記録層の固形分塗工量としては2〜15g/mが好ましい。2g/mより少ないと発色感度も低くなる場合があり、15g/mより多いと感熱記録層が有する各種性能の向上は飽和に達し、感熱記録層の塗工時の生産効率が低下する場合がある。一方、中間層の固形分塗工量は本発明の所望の効果を損なわない範囲で適宜設定されるが、2〜30g/mが好ましく、3〜15g/mが特に好ましい。また保護層の塗工量としては0.5〜5g/mが好ましい。0.5g/mより少ないと保護層が有する各種性能が発揮されない場合があり、5g/mより多いとサーマルヘッドから感熱記録層へ到達する熱エネルギーのロスが多くなり、発色特性の低下を招く場合がある。
【0035】
本発明の感熱記録材料が有する支持体としては、透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
【0036】
支持体の紙としては、例えば、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、TMP、CTMP、CGP等の機械パルプ、及び古紙パルプ等の各種パルプを含むものが挙げられ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等の各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤等の各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかで抄造された原紙等が挙げられる。また、ノーサイズプレス原紙、あるいはデンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスされた原紙、上質紙等が挙げられ、またポリエチレン等の成分からなる下引き層を有する支持体であっても良い。
【0037】
本発明において、感熱記録層が設けられている面と反対側の面には、カール防止、帯電防止等を目的としてバックコート層を設けてもよく、更に粘着加工等を行ってもよい。また、感熱記録層が設けられている面または反対側の面には、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含む層やインクジェット記録層等を設けてもよい。また、レーザー光による印字を行うために、感熱記録材料中の任意の層及び支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0038】
本発明における各層の形成方式については、特に限定されることなく、周知の技術を用いて形成することができ、例えば、エアーナイフコーター、各種ブレードコーター、各種バーコーター、各種カーテンコーター等の塗布装置や、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン等の各種印刷方式等を用いることができる。更に、表面平滑性を改良するために、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ブラッシング等の装置を利用することができる等、感熱記録材料製造に於ける種々の公知技術を用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部はすべて質量基準である。また塗工量は絶乾塗工量である。
【0040】
実施例1
(1)塗工用紙の作製
(中間層塗工液)
25%中空粒子分散液 339部
(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、ローペイクHP−91)
45%スチレン−ブタジエンラテックス 26部
20%尿素変性リン酸エステル化デンプン水溶液 18部
水 180部
上記の中間層塗工液を、坪量50g/mの上質紙に、固形分塗工量として10g/mとなるように塗工、乾燥して、塗工用紙を作製した。
(2)発色成分分散液の調製
以下の配合を混合し、ホモミキサーで分散して、発色成分分散液を得た。
1%メチルセルロース水溶液(分散剤溶液) 250部
D−グルコース 44部
グリシン 17部
(3)顔料分散液の調製
以下の配合を混合し、ホモミキサーで分散して、顔料分散液を得た。
層状複水酸化物(協和化学工業(株)製、DHT−6) 25部
10%ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(分散剤溶液) 3部
水 72部
(4)感熱記録層塗工液の調製
以下の配合を混合し、充分攪拌して、感熱記録層塗工液を得た。
発色成分分散液 311部
顔料分散液 100部
10%完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液(バインダー溶液) 80部
水 49部
(5)感熱記録材料の作製
上記塗工用紙に、上記感熱記録層塗工液を固形分塗工量で5g/mとなるように塗工して乾燥した後、カレンダー処理を行って感熱記録材料を作製した。
【0041】
実施例2
実施例1の(2)発色成分分散液の調製において、グリシン17部に代えて、L−アルギニンを17部用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0042】
実施例3
実施例1の(2)発色成分分散液の調製において、グリシン17部に代えて、L−リシン塩酸塩を17部用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0043】
実施例4
実施例1の(2)発色成分分散液の調製において、グリシン17部に代えて、L−グルタミン酸ナトリウムを17部用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0044】
実施例5
実施例1の(2)発色成分分散液の調製において、グリシン17部に代えて、L−ヒスチジンを17部用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0045】
実施例6
実施例1の(2)発色成分分散液の調製において、グリシン17部に代えて、L−バリンを17部用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0046】
実施例7
実施例2の(2)発色成分分散液の調製において、D−グルコース44部に代えて、D−キシロースを44部用いた以外は実施例2と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0047】
実施例8
実施例1の(4)感熱記録層塗工液の調製において、30%パラフィンワックスエマルジョン(近代化学工業(株)製、ペルトールSW−10)12部を追加し、水49部を水57部とした以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0048】
実施例9
実施例8の(4)感熱記録層塗工液の調製において、30%パラフィンワックスエマルジョン(近代化学工業(株)製、ペルトールSW−10)に代えて、30%ポリオレフィンワックスエマルジョン(三井化学(株)製、ケミパールW400)を用いた以外は実施例8と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0049】
比較例1
実施例1の(3)顔料分散液の調製において、層状複水酸化物に代えて、水酸化アルミニウムを用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0050】
比較例2
実施例1の(3)顔料分散液の調製において、層状複水酸化物に代えて、炭酸マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0051】
比較例3
実施例1の(3)顔料分散液の調製において、層状複水酸化物に代えて、炭酸カルシウムを用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0052】
比較例4
実施例1の(3)顔料分散液の調製において、層状複水酸化物に代えて、酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0053】
比較例5
実施例1の(3)顔料分散液の調製において、層状複水酸化物に代えて、焼成カオリン(BASF社製、アンシレックス)を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0054】
比較例6
実施例1の(1)中間層塗工液の調製において、25%中空粒子(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、ローペイクHP−91)分散液339部に代えて、25%焼成カオリン(BASF社製、アンシレックス)分散液339部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0055】
以上の実施例1〜9、比較例1〜6で作製した感熱記録材料を下記の評価に供した。各々の結果について、表1に示した。
【0056】
[発色感度]
作製した各感熱記録材料それぞれについて、印字テスト機(大倉エンジニアリング(株)製、TH−PMD)を用いて、ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗1510Ωのサーマルヘッドを使用し、ヘッド電圧21V、パルス幅1.5msecで通電して印字した。印字部分における発色濃度を、濃度計(GretagMacbeth社製、RD19)(ブラックモード)にて測定し、以下の基準に従い評価した。
◎:印字部分の発色濃度が0.15以上
○:印字部分の発色濃度が0.1以上、0.15未満
×:印字部分の発色濃度が0.1未満
表1には印字部分における発色濃度の具体的な値も併せて記載した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の記載から明らかなように、本発明によって発色感度に優れる感熱記録材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に中間層と、該中間層上に感熱記録層を設けた感熱記録材料において、該中間層が中空粒子を含有し、該感熱記録層が糖類、アミノ酸類、および下記一般式(1)で表わされる層状複水酸化物を含有することを特徴とする感熱記録材料。
[X2+1−A3+(OH)][Zn−A/n・mHO] (1)
(式中、X2+は2価の金属イオンを表し、Y3+は3価の金属イオンを、Zn−はn価の陰イオンを表す。Aは0.2≦A≦0.33の数値範囲を、mは0.1〜0.7の数値範囲をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記感熱記録層がポリオレフィン粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記アミノ酸類が、グリシンまたはアルギニンであることを特徴とする請求項1または2記載の感熱記録材料。