説明

感熱記録材

【課題】サーマルヘッドの高温化に対応した背面層を有する感熱記録材を提供すること。
【解決手段】基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材において、該背面層が、シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)と耐熱性高分子(B)とを含有し、上記樹脂(A)と上記耐熱性高分子(B)との割合が、両者の合計を100質量%としたときに、上記樹脂(A)が1〜50質量%であり、上記耐熱性高分子(B)が50〜99質量%であることを特徴とする感熱記録材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融型熱転写インク層や昇華転写層を加熱することによって感熱記録を行うサーマル記録方式、詳細には感熱記録層としてワックスインキを使用する熱転写方式、レジンインキを使用する感熱転写方式や昇華転写方式に使用される感熱記録材に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマル記録方式で使用される感熱記録材において、当該感熱記録材は主に薄いポリエステルフィルムを基材とし、該基材上面に溶融型熱転写インク層、または昇華転写型インク層からなる感熱記録層が設けられ、その反対面に背面層が形成される構成である。該背面層は、印画時のサーマルヘッド耐熱滑性を目的として設けられている。具体的には印画時に高温となるサーマルヘッドが、感熱記録材と粘着(スティッキング)することを防止したり、摩耗カスがサーマルヘッドに焼き付くのを防止したりする目的で設けられている。これら背面層により、印画時の感熱記録材の走行異常発生防止、および印画画質低下防止などの効果がある。
【0003】
近年、印画画質の向上、印画スピードの向上、印画物の耐久性向上などの要望が強まり、これら要望点を解決する手段として、サーマルヘッドの温度を高温化する処方が採用されている。サーマルヘッドの温度を高温にすると、感熱記録層の各種インクの受像層への転写を容易とし、印画スピードが向上し、高精細な印画が可能になる。また、インクのバインダーとして耐熱性の高いものを使用できるので、印画物が各種耐久性に優れる。一方、サーマルヘッドの温度を高温化させることにより、従来の背面層では、耐熱滑性が不十分である場合が発生している。具体的には、サーマルヘッドに背面層がスティッキングを起こし、走行異常が発生したり、背面層および基材がサーマルヘッドへ焼き付き、印画画質の劣化などを引き起こす。
【0004】
また、感熱記録材として長時間印画しても保守作業の必要のない、いわゆるメンテナンスフリータイプの感熱記録材が要望されている。これらの要望の達成には、前記のスティッキング、焼き付きなどによるサーマルヘッドへのダメージを極力低下させる対策が必要である。これらによりサーマルヘッド自身の磨耗劣化を防止し、サーマルヘッドの交換、保守作業の低減したメンテナンスフリータイプの感熱記録材が要望されている。
【0005】
また、印画スピードの高速化やメンテナンスフリーなどの要望に対応するために、感熱記録材の搬送時や印画時などに発生する静電気原因のトラブルに対する改善が求められている。静電気原因のトラブルとは、静電気の発生により、塵、埃が搬送部品、サーマルヘッド、感熱記録材に付着し、印画時の画質の低下、サーマルヘッドの損傷を生じる現象である。
【0006】
従来、上記の背面層を形成するための塗料としては、シロキサン変性ポリウレタン樹脂とポリイソシアネート化合物からなる架橋硬化物の使用(特許文献1、2参照)が提案されているが、いずれも高温化されたサーマルヘッドに対しては耐熱性が不十分であり、スティッキングが発生し、満足な印画が得られない。
【0007】
また、アセテート基を含むセルロースエステル樹脂、またはこの樹脂にシリコーンオイルを添加した層を背面層として設けること(特許文献3)、また、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース類などにワックス類、高級脂肪酸のアミドまたはエステルなどを添加した背面層を設けること(特許文献4)が提案されているが、いずれも高温化されたサーマルヘッドに対しては耐熱性が不十分であり、また、感熱記録材が保存中、ロール状に巻き取られるため、背面層は感熱記録層(インク層)と接触し、経時的な背面層中の添加物の感熱記録層への移行が発生し、インクの受像層への転写が不均一になるなどして印画画質が低下する。
【0008】
さらにシリコーン変性ポリイミド樹脂からなる背面層(特許文献5)、また、シリコーン含有ポリアミドイミド樹脂組成物からなる背面層(特許文献6)が提案されているが、いずれも高温化されたサーマルヘッドに対しては耐熱性および基材シートとの密着性が不十分である。背面層の基材シートとの密着性が不足すると、印画時に背面層がサーマルヘッドによって削り取られて付着し、印画画質の劣化を生じる。また、シリコーン変性ポリイミド樹脂またはシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を背面層用塗料の主成分とすると、背面層用塗料は非常に高価(樹脂の析出、洗浄、再溶解工程を行うと特に)となり、コスト的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−227087号公報
【特許文献2】特開昭64−11888号公報
【特許文献3】特開平1−234292号公報
【特許文献4】特開平7−172076号公報
【特許文献5】特開平5−229272号公報
【特許文献6】特開平8−113647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、近年要望の強まっている、サーマルヘッドの高温化に対応した背面層を有する感熱記録材を提供することである。これらの背面層により、従来の背面層を使用した場合より、サーマルヘッドの保守、交換の頻度の低いメンテナンスフリーとなり、サーマルヘッド自身の寿命を延ばすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材において、該背面層が、シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)と耐熱性高分子(B)とを含有し、上記樹脂(A)と上記耐熱性高分子(B)との割合が、両者の合計を100質量%としたときに、上記樹脂(A)が1〜50質量%であり、上記耐熱性高分子(B)が50〜99質量%であることを特徴とする感熱記録材を提供する。ここで前記背面層は、さらに0.1〜20質量%の塗料添加剤(C)を含むことができる。
【0012】
上記本発明においては、前記シロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)が、該樹脂(A)固形分中に、シロキサン成分を0.1〜50質量%含有し、シロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)の数平均分子量が、2,000〜500,000であることが好ましい。
【0013】
また、上記本発明においては、前記耐熱性高分子(B)が、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール樹脂(エバール)、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、セルロース類、キトサン、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドエステル樹脂、シリコーン系樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明においては、前記耐熱性高分子(B)のガラス転移点(Tg)が、100℃以上、好ましくは140℃以上であること;前記塗料添加剤(C)が、滑剤(ワックス、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン系オイル)、有機・無機フィラーまたは帯電防止剤であること;前記背面層が、イソシアネート架橋剤、カルボジイミド架橋剤またはオキサゾリン架橋剤にて架橋されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、近年要望の強まっている背面層からの移行による印画の低下のない、サーマルヘッド高温化に対応した高耐熱滑性の背面層を有する感熱記録材を提供することができ、これらの感熱記録材により、従来の背面層を使用した場合より、サーマルヘッドの保守、交換の頻度の低いメンテナンスフリーとなり、サーマルヘッド自身の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に発明を実施するための形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の感熱記録材は、背面層がシロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)と、耐熱性高分子(B)と、必要に応じて塗料添加剤(C)を皮膜形成成分として含有することを特徴とする。
【0017】
本発明に用いるシロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)は、背面層を形成したときに耐熱性の高い(アミド)イミド結合を有し、また、シロキサンセグメントによる滑性を有し、耐熱性と滑性とが必要な感熱記録材における背面層用素材として有用であるが、単独で使用するには耐熱性が不足しており、無理に耐熱性の高い樹脂(A)を得ようとすると、シロキサン含有量を減らす必要が生じ、背面層とした時に滑性が不足する、あるいは樹脂(A)が特殊な高沸点溶剤にしか溶解しなくなったり、不溶不融となって背面層用材料として利用するには困難が伴う。さらに背面層の基材シートへの密着性が不足しており、また、高価でもあり、コスト的に不利である。これら欠点は耐熱性高分子(B)と配合することで補うことができる。
【0018】
本発明において背面層に用いるシロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)は、市場から入手可能な樹脂であり、または酸成分とイソシアネートまたはアミンとの反応によって合成可能であり、1種または2種以上を組合せて使用することができる。シロキサン成分は、官能基(水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基など)を有するシロキサン化合物を用いて、樹脂(A)中の分子鎖中または末端に組み込んだもので、組み込み方はブロック方式でもグラフト方式でもよい。
【0019】
本発明に用いるシロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)としては、該樹脂(A)固形分中にシロキサンセグメントを0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%含有することが望ましく、シロキサンセグメントの含有量が0.1質量%未満では、シロキサンセグメントによる滑性が発現できず、一方、シロキサンセグメントの含有量が50質量%を超えると、背面層の皮膜強度や耐熱性が低下し、感熱記録材の走行不良、背面層のサーマルヘッドへの付着が発生し、良好な印画が得られない。
【0020】
本発明に用いるシロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)としては、数平均分子量が、2,000〜500,000であることが望ましく、分子量が2,000未満では背面層の耐熱性が不足し、一方、分子量が500,000を超えると、耐熱性高分子(B)との相溶性が低下し、背面層の基材シートに対する密着性が低下し、感熱記録材の走行不良、背面層のサーマルヘッドへの付着が発生し、良好な印画が得られない。
【0021】
本発明においてシロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)とともに用いられる耐熱性高分子としては、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール樹脂(エバール)、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、セルロース類、キトサン、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドエステル樹脂、シリコーン系樹脂およびウレタン樹脂などから選ばれ、1種または2種以上を組合せて使用することができる。
【0022】
本発明における耐熱性高分子(B)のガラス転移点(Tg)は、100℃以上であることが必要であり、Tgが100℃未満では背面層の耐熱性が不足し、良好な印画結果が得られない。前記耐熱性高分子の中でもアセタール基変性ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、ポリエステル類、セルロース類(セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が望ましく、特にアセタール基変性ポリビニルアルコール、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートが好ましい。
【0023】
さらに本発明における耐熱性高分子(B)は、シロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)との相溶性、背面層の基材との密着性、塗膜の乾燥性(高沸点溶剤を必要としないで簡便に成膜可能である良好な乾燥性)が損なわれなければ、Tgが140℃以上であることが望ましい。これら耐熱性高分子として、Tg140℃以上であるセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートが特に好ましい。
【0024】
本発明における耐熱性高分子(B)として使用されるアセタール基変性ポリビニルアルコールは、数平均分子量が15,000〜150,000の範囲であり、Tgが100℃以上であるものが好ましい。
【0025】
本発明における耐熱性高分子(B)として使用されるセルロースアセテートブチレートは、ブチリル基の含有量がASTM D817に準拠した値にて15〜40モル%のものであり、数平均分子量が50,000〜80,000の範囲であり、Tgが140℃以上であり、溶融範囲が190℃〜250℃の範囲であるものが好ましい。
【0026】
本発明における耐熱性高分子(B)として使用されるセルロースアセテートプロピオネートは、プロピオニル基の含有量がASTM D817に準拠した値にて40〜50モル%のものであり、数平均分子量が10,000〜80,000の範囲であり、Tgが140℃以上であり、溶融範囲が185℃〜210℃の範囲であるものが好ましい。
【0027】
本発明における耐熱性高分子(B)として使用されるセルロースアセテートは、セルロースジアセテートとセルローストリアセテートであり、それぞれのアセチル基の含有量がASTM D817に準拠した値にてセルロースジアセテートが約40モル%のものであり、セルローストリアセテートが約44モル%のものであり、それぞれの数平均分子量は20,000〜100,000の範囲であり、Tgが180℃以上であり、溶融点が230〜300℃の範囲であるものが好ましい。特に塗料への応用を考えた場合、有機溶剤に対する溶解性などを加味するとセルロースジアセテートが特に好ましい。
【0028】
本発明において背面層におけるシロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)と耐熱性高分子(B)との質量比は、樹脂(A)と耐熱性高分子(B)との合計を100質量%としたときに、樹脂(A)が1〜50質量%であり、耐熱性高分子(B)が50〜99質量%であり、好ましくは樹脂(A)が10〜30質量%であり、耐熱性高分子(B)が70〜90質量%である。シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)の質量比が1%未満では、背面層とした時にシロキサンセグメントによる滑性が発現せず、一方、シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)の質量比が50質量%を超えると、背面層の基材シートに対する密着が悪くなり、また、耐熱性高分子(B)の質量比が50質量%未満では背面層の密着性および皮膜強度が弱くなり、背面層がサーマルヘッドに付着しやすくなり、印画不良を発生する。
【0029】
本発明においては、背面層に、前記シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)および耐熱性高分子(B)に加えて塗料添加剤(C)として、滑剤(ワックス、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン系オイル)、有機・無機フィラーまたは帯電防止剤などを背面層中の樹脂成分の性能を損なわない範囲で1種もしくは2種以上を添加し、耐熱性および滑性のさらなる向上、帯電防止性やサーマルヘッド清浄性などの付与が可能である。
【0030】
本発明で使用可能なワックスとして、分子量が250〜10,000の範囲の従来公知のワックスが使用でき、特に限定はされない。例を挙げると、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、ラノリン、鯨蝋、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス類とその誘導体の変性ワックス類、硬化ひまし油とその誘導体などの水素添加ワックス類、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエステルワックス、塩素化炭化水素などの合成炭化水素類、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミドなどの合成脂肪酸誘導体類が挙げられる。
【0031】
本発明で使用可能な界面活性剤は、従来公知のものがいずれも使用でき、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびそれらの共重合物およびエステル、アルキルアミンなど)、アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、リン酸エステルおよびその塩など)、カチオン系界面活性剤(四級アンモニウム塩など)、両性界面活性剤が使用できる。
【0032】
本発明で使用可能な金属石鹸は従来公知のものがいずれも使用でき、ステアリン酸金属石鹸、12−ヒドロキシステアリン酸金属石鹸、モンタン酸金属石鹸、ベヘン酸金属石鹸、ラウリル酸金属石鹸が使用でき、それらの金属部分はカルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが使用できる。その他オクチル酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、ウンデシレン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、リシノール酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛なども使用できる。
【0033】
本発明で使用可能なシリコーン系オイルは、従来公知のものがいずれも使用でき、ストレートシリコーンオイル、官能基含有シリコーンオイルが使用でき、ストレートシリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルが使用できる。官能基含有シリコーンオイルとしてはポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル基変性シリコーンオイル、水酸基変性シリコーンオイルおよびそれらの変性体などが使用できる。
【0034】
本発明で使用可能なフィラーは、従来公知のものがいずれも使用でき、有機フィラー(メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ナイロン粒子、ポリオレフィン粒子、フッ素樹脂粒子など)、無機フィラー(シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、グラファイト、粘土鉱物、二硫化モリブデンなど)などが使用できる。
【0035】
本発明で使用可能な帯電防止剤は、従来公知のものがいずれも使用でき、金属(粒子状金属、繊維状金属、金属コーティング粒子など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタンなど)、金属アルコキシド、ITO粉末などの導電性フィラー、炭素(炭素繊維、ケッチェンブラック、アニリンブラックなどのカーボンブラック類、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブなど)、電子導電性高分子、イオン導電性高分子、その他高分子(ポリアニリンおよびスルホン化ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、アルカリ金属塩含有ポリエーテル、アルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、四級カチオン塩含有アクリル系樹脂、ポリアミン、特殊変性ポリエステル、特殊カチオン系樹脂、セルロース誘導体など)、界面活性剤(四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミンなどのノニオン界面活性剤)、イオン性液体などが使用できる。背面層に帯電防止機能を持たせると従来基材やプライマーとして前工程で導入されていた帯電防止付与工程を省くことができ、工程上に多くのメリットがある。以上、帯電防止機能を有する背面層とすることで、数々の静電気に関するトラブルを防止することができる。
【0036】
本発明における塗料添加剤の添加量は、背面層において質量比で0.1〜20質量%が望ましく、添加量が20質量%を超えると、背面層の皮膜強度が低下し、印画不良を発生する。
【0037】
本発明においては、背面層にさらなる耐熱性および密着性の向上を目的としてイソシアネート架橋剤を添加してもよく、イソシアネート架橋剤としては公知のもの、例えば、ポリイソシアネート類、ブロックイソシアネート類、イソシアネートプレポリマー、およびそれらの変性体を用いることができ、特に限定はされない。イソシアネート架橋剤の添加量は、背面層中の樹脂成分100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは2〜55質量部である。添加量がこれよりも少ないと架橋剤の効果がなく、一方、添加量が多いと、未反応架橋剤の残存や塗膜の脆化などの悪影響が現れる。
【0038】
イソシアネート架橋剤を併用する場合、必要に応じて、さらに硬化触媒、反応抑制剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。硬化触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラ−n−ブチルチタネートおよびビスマスなどの金属と有機または無機酸の塩および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミンおよびジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。反応抑制剤としては、例えば、燐酸、酢酸、酒石酸、フタル酸およびギ酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
本発明においては、背面層に、さらなる耐熱性および密着性の向上を目的としてポリカルボジイミド系またはポリオキサゾリン系の架橋剤を使用することができる。これらポリカルボジイミド系またはポリオキサゾリン系の架橋剤としては、公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、ポリカルボジイミド系架橋剤としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライト、ポリオキサゾリン系の架橋剤としては、株式会社日本触媒製の商品名エポクロスなどの市販品を入手して使用することができる。これらポリカルボジイミド系またはポリオキサゾリン系の架橋剤を併用する場合、その使用量は背面層中の樹脂成分100質量部に対し、1〜100質量部、好ましくは2〜55質量部である。
【0040】
なお、本発明で使用する背面層形成用塗料は、無溶剤でもよいし、水または有機溶剤を用いてもよい。この塗料が有機溶剤の溶液となっていると、背面層を作成するのが容易となり望ましい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートなども使用することができる。水または有機溶剤を用いて調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、通常、2〜95質量%程度である。
【0041】
本発明で用いる背面層形成用塗料の製造に使用する分散・混合の手段としては、撹拌、超音波処理、振動分散、混練などが挙げられるが、特に限定されない。塗料の濃度や粘度に応じて、慣用の混合分散機(例えば、ボールミル、バスケットミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、湿式ジェットミル、ディゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機など)を用いて混合することにより製造できる。
【0042】
本発明の感熱記録材に用いる基材シートとしては、従来から感熱記録材の基材として使用されているものが使用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミド、セロハンなどのプラスチックフィルムやグラシン紙、コンデンサー紙などの高密度紙などで、厚さが1.5〜10μm程度のものが好ましい。基材シートがこれよりも薄いと強度が弱くなり、しわやたるみが生じ、これよりも厚いと熱伝導が悪くなり、転写の精度が悪くなる。
【0043】
本発明の感熱記録材の背面層を形成するに際しては、背面層形成用塗料を、従来公知の方法によって基材シートの一方の面(反対面は感熱記録層)に乾燥厚さが0.02〜1μm程度となるよう塗布して背面層を形成させる。塗布量がこれよりも薄いと背面層の効果が発揮されず、これよりも厚いと熱伝導が悪くなる。
【0044】
上記の基材シートは、塗布される層との密着性を高めるために研磨処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、放射線処理、オゾン処理、薬品処理などの従来公知の表面処理を1種または2種以上施してもよく、必要ならばプライマー層を設けてもよく、このプライマー層に帯電防止性能を付与することもできる。また、予め易接着処理やプライマー処理が施された基材シートを使用することも可能である。
【0045】
本発明の感熱記録材は、上記の背面層形成用塗料を用い、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、基材シート、感熱記録層形成材料(溶融熱転写ならば顔料およびワックスなどからなるワックスインク層、顔料およびレジンなどからなるレジンインク層が、昇華転写ならば昇華性の染料およびバインダー樹脂などを含むインク層が選択される)などの背面層形成用材料以外の材料は、いずれも公知の材料が使用でき、特に限定されない。
【実施例】
【0046】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0047】
[シロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂の合成例]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、N−メチル−2−ピロリドン817部、無水トリメリット酸194部、およびジアミノプロピルジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製「KF8012」;アミン当量2,200)40部を仕込み、窒素雰囲気下において、50℃にて2時間反応させた後、180℃まで昇温し、さらに5時間反応させ、反応系内より溜出する水を除去した。その後溶液を120℃まで冷却し、ジフェニルメタンジイソシアネート250部を加えて3時間反応させた。反応後、N−メチル−2−ピロリドン210部を加えて、不揮発分30%のシリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂溶液を得た。
【0048】
[実施例1]
(背面層用塗料1)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂溶液 40部
・エスレックK KS−1(アセタール基変性ポリビニルアルコール
樹脂 積水化学工業株式会社製 Tg=107℃) 30部
・メチルエチルケトン 616部
・シクロヘキサノン 154部
【0049】
上記の背面層用塗料を用い、グラビア印刷により、厚さ6μmの易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に、乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を蒸発させて背面層を形成した。
【0050】
さらに、得られたフィルムの背面層と反対側の面に、下記の組成の感熱記録層塗工液1(昇華転写インク)について、シアン、マゼンタ、イエローをそれぞれグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.8g/m2になるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を蒸発させて感熱記録層を形成し、実施例1の感熱記録材を作成した。
【0051】
(感熱記録層塗工液1)
シアン
・Kayaset Blue 714(染料:日本化薬株式会社製) 5.0部
・エスレックB BX−1(ポリビニルブチラール樹脂:積水化学工
業株式会社製) 4.0部
・メチルエチルケトン 45.5部
・トルエン 45.5部
【0052】
マゼンタ
・MS Red G(染料:三井化学株式会社製) 4.0部
・BX−1 4.0部
・メチルエチルケトン 46.0部
・トルエン 46.0部
【0053】
イエロー
・Foron Brillant Yellow S-6GL(染料:クラリアント社製)5.5部
・BX−1 4.5部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0054】
[実施例2]
実施例1における背面層用塗料中の耐熱性高分子をCAB−381−20(セルロースアセテートブチレート樹脂 イーストマンケミカル社製 Tg=141℃)に代えた(背面層用塗料2)以外は実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材を作成した。
【0055】
[実施例3]
実施例1における背面層用塗料中の耐熱性高分子をCAP−504−0.2(セルロースアセテートプロピオネート樹脂 イーストマンケミカル社製 Tg=159℃)に代えた(背面層用塗料3)以外は実施例1と同様にして実施例3の感熱記録材を作成した。
【0056】
[実施例4]
実施例1における背面層用塗料中の耐熱性高分子をCA−398−10(セルロースアセテート樹脂 イーストマンケミカル社製 Tg=185℃)に代えた(背面層用塗料4)以外は実施例1と同様にして実施例4の感熱記録材を作成した。
【0057】
[実施例5]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例5の感熱記録材を作成した。
【0058】
(背面層用塗料5)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂溶液 40部
・CAP−504−0.2 30部
・ステアリン酸亜鉛 Zn−St(日東化成工業株式会社製)
2.1部
・メチルエチルケトン 648部
・シクロヘキサノン 162部
【0059】
[実施例6]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例6の感熱記録材を作成した。
【0060】
(背面層用塗料6)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂 40部
・CAP−504−0.2 30部
・パゼットGK(超微粒子導電性酸化亜鉛分散体 固形分20% ハ
クスイテック株式会社製) 21部
・メチルエチルケトン 666.4部
・シクロヘキサノン 166.6部
【0061】
得られた背面層の表面抵抗率を三菱化学株式会社製 ハイレスタUP MCP−HP450を用いて測定すると8.2×109Ω/□であった。比較例として従来の背面層を測定すると1013Ω/□以上であった。
【0062】
[実施例7]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例7の感熱記録材を作成した。
【0063】
(背面層用塗料7)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂溶液 40部
・CAP−504−0.2 30部
・コロネートL(イソシアネート架橋剤 固形分75% 日本ポリウ
レタン工業株式会社製) 5.6部
・メチルエチルケトン 679部
・シクロヘキサノン 170部
【0064】
[実施例8]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例8の感熱記録材を作成した。
【0065】
(背面層用塗料8)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂 40部
・CAP−504−0.2 30部
・カルボジライト V−09M(カルボジイミド架橋剤 固形分70
% 日清紡ケミカル株式会社製) 3部
・メチルエチルケトン 467.2部
・シクロヘキサノン 161.8部
【0066】
[実施例9]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例9の感熱記録材を作成した。
【0067】
(背面層用塗料9)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂 40部
・CAP−504−0.2 30部
・エポクロス RPS−1005(オキサゾリン架橋剤 固形分10
0% 株式会社日本触媒製) 2.1部
・メチルエチルケトン 648.0部
・シクロヘキサノン 162.0部
【0068】
[実施例10〜14]
実施例5〜9における背面層用塗料中の耐熱性高分子をCA−398−10に代えた(背面層用塗料10〜14)以外はそれぞれ実施例5〜9と同様にして実施例10〜14の感熱記録材を作成した。
【0069】
[比較例1]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材を作成した。
【0070】
(背面層用塗料15)
・合成例のシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂溶液 40部
・エスレックB BX−L(アセタール基変性ポリビニルアルコール
樹脂 積水化学工業株式会社製 Tg=74℃) 30部
・メチルエチルケトン 616部
・シクロヘキサノン 154部
【0071】
[比較例2]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして比較例2の感熱記録材を作成した。
【0072】
(背面層用塗料16)
・HR15ET(ポリアミドイミド樹脂溶液 固形分25% 東洋績
株式社製) 48部
・CAP−504−0.2 30部
・メチルエチルケトン 609.6部
・シクロヘキサノン 152.4部
【0073】
[比較例3]
実施例1における背面層用塗料を下記のものに代えた以外は実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材を作成した。
【0074】
(背面層用塗料17)
・HR15ET 48部
・CAP−504−0.2 30部
・KF−96−100cs(ジメチルシリコーンオイル 信越化学工
業株式会社製) 1.2部
・メチルエチルケトン 609.6部
・シクロヘキサノン 152.4部
【0075】
[実施例15〜28および比較例4〜6]
実施例1〜14および比較例1〜3に対して背面層はそれぞれ同一のままで、感熱記録層を感熱記録層塗工液1(昇華転写インク)から下記の組成の感熱記録層塗工液2(溶融熱転写インク)に変え、その塗布量が5g/m2になるようにホットメルトによるロールコート法によって塗布することによって実施例15〜28および比較例4〜6の感熱記録材を作成した。
【0076】
(感熱記録層塗工液2)
・パラフィンワックス 10部
・カルナウバワックス 10部
・ポリブテン(新日本石油株式会社社製) 1部
・カーボンブラック 2部
【0077】
上記で得られた各感熱記録材を感熱記録層ごとにそれぞれ、市販のフォトプリンターまたはバーコードプリンターを用いて下記の条件下で印画を行い、サーマルヘッドのスティッキング性、ヘッドの汚染性、印画結果を評価した。また背面層と基材シートとの密着性をテープ剥離試験で評価し、背面層の移行性も試験した。
【0078】
(印画条件 昇華転写方式)
プリンター KX−PX20(松下電器産業株式会社製)
ドット密度 300dpi
印字濃度 最大濃度(256/256諧調)
受像紙 KX−PVMS36L ペーパー
(純正紙 松下電器産業株式会社製)
【0079】
(印画条件 溶融転写方式)
プリンター 110XiIIIplus(Zebra社製)
ドット密度 300dpi
印字濃度 12
受像紙 平滑度50秒の上質紙
【0080】
(1)スティッキング性
感熱記録材を実装試験に供した場合の、印画時における感熱記録材の皺の発生、サーマルヘッドの背面層に対するスティッキングの発生およびサーマルヘッドと感熱記録材との熱融着を目視にて評価し、スティッキングのないものを5、感熱記録材の破損によりサーマルヘッドが走行不能であったものを1として5段階評価した。その際の感熱記録材の走行、搬送時の音の変化にも注目した。評点4以上を合格(○)とし、3点以下を不合格(×)とした。
*5:スティッキングないもの
*4:スティッキングないが走行音が変化するもの
*3:スティッキング発生気味のもの
*2:スティッキング発生しているが走行はしているもの
*1:スティッキングにより走行不可能となったもの
【0081】
(2)サーマルヘッドの汚染性
感熱記録材を実装試験に供した場合の、サーマルヘッドのヘッド熱素子部分に対する汚れの付着の有無をデジタルマイクロスコープにて走行前の状態と比較観察し、汚れのないものを合格(○)とし、汚れのあるものを不合格(×)とした。
【0082】
(3)印画結果
感熱記録材を実装試験に供して得られた印画物の状態を観察し、問題ないものを○、スジや色むらが見られるものを×とした。
【0083】
(4)密着性
感熱記録材の背面層と基材シートとの接着性をテープ剥離試験(粘着テープ:セロテープ(商品名、登録商標 ニチバン株式会社製))、貼り付け:圧着ローラー1kg−1往復、剥離:90°)を行い、背面層の剥離がないものを○、剥離が見られるものを×とした。
【0084】
(5)移行性
感熱記録材の背面層と100μmのPETフィルムを重ね合わせ、7cm×7cm単位あたり、20kgの荷重をかけ、50℃の高温槽内で72時間放置した。72時間後の100μmPETフィルムの背面層と重ねた面の表面エネルギーをぬれ張力試験用混合液で確認した(JIS K6768)。和光純薬工業株式会社製、ぬれ張力試験用混合液を用い、35mN/m以上を合格(○)とし、34mN/m以下を不合格(×)と評価した。
【0085】
各試験の結果を下記表1に示す。
【0086】

【0087】

【0088】
実施例はいずれもスティッキングせず、サーマルヘッドの汚染もなく、良好な印画結果が得られ、昇華転写方式および溶融熱転写方式いずれに対しても高耐熱性、高滑性な背面層が提供された。これに対し耐熱性高分子のTgが低い比較例1および4ではスティッキングが発生し、サーマルヘッドに付着物が発生し、良好な印画結果が得られなかった。同様に滑性成分を有さない比較例2および5ではスティッキングが発生し、サーマルヘッドが走行不能となり印画されなかった。また滑性成分としてシリコーンオイルを添加した比較例3および6ではスティッキングは発生しなかったもののシリコーンオイルがサーマルヘッドを汚染し、印画にも悪影響を及ぼした。また移行性の結果からシリコーンオイルが経時的に感熱記録層に移行し、印画性能が劣化する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明によれば、高温化するサーマルヘッドに対してもスティッキング防止性、サーマルヘッド非汚染性に優れた背面層を有する感熱記録材および該感熱記録材の製造に使用する塗料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材において、該背面層が、シロキサン共重合ポリイミド樹脂またはシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)と耐熱性高分子(B)とを含有し、上記樹脂(A)と上記耐熱性高分子(B)との割合が、両者の合計を100質量%としたときに、上記樹脂(A)が1〜50質量%であり、上記耐熱性高分子(B)が50〜99質量%であることを特徴とする感熱記録材。
【請求項2】
前記背面層が、さらに0.1〜20質量%の塗料添加剤(C)を含む請求項1に記載の感熱記録材。
【請求項3】
前記シロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)が、該樹脂(A)固形分中に、シロキサン成分を0.1〜50質量%含有し、シロキサン共重合ポリイミド樹脂およびシロキサン共重合ポリアミドイミド樹脂(A)の数平均分子量が、2,000〜500,000である請求項1または2に記載の感熱記録材。
【請求項4】
前記耐熱性高分子(B)が、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール樹脂(エバール)、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、セルロース類、キトサン、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドエステル樹脂、シリコーン系樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の感熱記録材。
【請求項5】
前記耐熱性高分子(B)のガラス転移点(Tg)が、100℃以上である請求項1または2に記載の感熱記録材。
【請求項6】
前記耐熱性高分子(B)のガラス転移点(Tg)が、140℃以上である請求項1または2に記載の感熱記録材。
【請求項7】
前記塗料添加剤(C)が、滑剤(ワックス、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン系オイル)、有機・無機フィラーまたは帯電防止剤である請求項2に記載の感熱記録材。
【請求項8】
前記背面層が、イソシアネート架橋剤、カルボジイミド架橋剤またはオキサゾリン架橋剤にて架橋されている請求項1または2に記載の感熱記録材。