説明

感知器ベースおよび監視システム

【課題】 短絡線切離し機能を有し、システムの構成の自由度が高い感知器ベースおよびそれを使用した監視システムを提供する。
【解決手段】 アドレス設定手段を有する感知器とアドレス設定手段を有していない感知器を選択的に接続可能な端子部と、監視装置との間のデータ伝送に使用するアドレスを設定するアドレス設定手段と、伝送路から切離し可能な切離し手段と、接続されている感知器がアドレス設定手段を有する感知器であるかアドレス設定手段を有していない感知器であるかを検出するための検出手段とを備えた感知器ベースを設け、端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されている場合には、感知器のアドレスにより監視装置との間のデータ伝送を可能とし、端子部にアドレス設定手段を有しない感知器が接続されている場合には、感知器ベースのアドレス設定手段に設定されているアドレスにより監視装置との間のデータ伝送を実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災監視システムや防災監視システムなど火災感知器を備えた監視システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや工場などの建物や、イベント会場に敷設され、熱感知器や煙感知器などからの検知信号を受信して火災の発生を監視する監視装置(受信機)を備えた火災監視システムにおいては、受信機と複数の感知器とが伝送路で接続されて火災検知信号が2本の伝送線からなる伝送路により受信機へ伝送されるように構成されている。
【0003】
従来、火災監視システムにおけるデータ伝送方式として、感知器毎にアドレスを付与し、アドレスを含むデータ群を伝送することで、火災を検知した感知器すなわち火災の発生場所を受信機側で認知できるようにしたものが実用化されている。また、大規模なシステムでは、伝送路の途中に中継器を設けているものもある。中継器を設けた火災監視システムにおいては、中継器にアドレスを付与することで、アドレス送信機能を持たない感知器を用いても火災発生場所を受信機が認知することができる。
【0004】
さらに、アドレス送信機能を有する感知器を伝送線に接続する場合、取付け作業を容易にしたり、感知器が故障した場合に交換可能にするため、感知器の取付け面を備えた感知器ベースと呼ばれる土台のような部材を介して取り付けることが行われている。そこで、図5(A)に示すように、感知器ベース30にアドレス設定部を設けてアドレス送信機能を有する中継器のような機能を付加し、アドレス送信機能を持たない感知器40Aを接続可能した感知器ベースに関する発明が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
一方、火災監視システムでは、受信機を起点として伝送路がループ状に配設されることが多く、その場合、どこか一か所で伝送線の短絡や断線が発生するとシステム全体がダウンしてしまうため、伝送路の途中に幾つか短絡線切離し器を設けるようにした技術がある(例えば特許文献2)。そして、かかる短絡線切離し機能を感知器ベースに設けるようにした発明も提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−180272号公報
【特許文献2】特開平1−297931号公報
【特許文献3】特開2008−27349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている感知器ベースは、図5(A)に示すように、アドレス設定部を持たない感知器40Aが接続されることを想定した構成になっている一方、特許文献3に開示されている感知器ベースは、図5(B)に示すように、短絡線切離し機能のみ有しておりアドレス設定部を有する感知器40Bが接続されることを想定した構成になっている。したがって、いずれの感知器ベースも、アドレス設定部を持たない感知器またはアドレス設定部を有する感知器を任意に接続することはできないため、システムの構成の自由度が低いという課題がある。
【0008】
そこで、感知器ベースに、アドレス送信機能および短絡線切離し機能を設けてアドレス送信機能を持たない感知器またはアドレス送信機能を有する感知器のいずれも接続可能にすることも考えられる。しかし、単に両方の感知器を接続可能なように感知器ベースを構成しただけでは、感知器ベースはいずれの感知器が接続されているのか判別することができない。また、判別を容易にするため、アドレス設定部を持たない感知器を接続するための端子とアドレス設定部を有する感知器用とを接続するための端子をそれぞれ別個に2個ずつ設けることも考えられるが、そのように構成すると、端子数が多くなり感知器が大型化してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、短絡切離し機能を有するとともにシステムの構成の自由度を高めることができる感知器ベースおよびそれを使用した監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
感知器を結合可能な結合部を備え、伝送路を介して監視装置とデータ伝送可能に接続される感知器ベースであって、
アドレス設定手段を有する感知器とアドレス設定手段を有していない感知器のいずれかを選択的に接続可能な端子部と、
前記監視装置との間のデータ伝送に使用するアドレスを設定するアドレス設定手段と、
当該感知器ベースを前記伝送路から切離し可能な切離し手段と、
当該感知器ベースに接続されている感知器がアドレス設定手段を有する感知器であるかアドレス設定手段を有していない感知器であるかを検出するための検出手段と、
前記切離し手段および前記検出手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記検出手段を制御して当該感知器ベースに接続されている感知器の種類を判別し、
前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器のアドレス設定手段に設定されているアドレスにより前記監視装置との間のデータ伝送を可能とし、
前記端子部にアドレス設定手段を有しない感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器ベースのアドレス設定手段に設定されているアドレスにより前記監視装置との間のデータ伝送を実行することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、感知器ベースに接続された感知器がアドレス設定手段を有する感知器であるかアドレス設定手段を有していない感知器であるかを検出することができ、検出した結果に応じて使用するアドレスを選択するため、いずれの感知器が接続されたとしても混乱を生じることなく適正なデータ伝送を行うことができ、システムの構成の自由度を高めることができる。しかも、感知器ベースが切離し手段を備えているため、短絡が生じている感知器を伝送路から切り離すことで他の正常な感知器と監視装置との間のデータ伝送を妨げることがないようにすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の感知器ベースにおいて、
前記制御手段は、前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器ベースのアドレス設定手段に設定されているアドレスを、前記切離し可能な切離し手段を制御するためのアドレスとして使用するように構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、監視装置から端末側を見たときにアドレスが付与された感知器と短絡切離し器とが別個の機器として接続されているように見えるため、伝送路上で短絡が発生したことを検出した際に容易に適切な個所で切り離しを行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感知器ベースにおいて、
前記検出手段は当該感知器ベースに接続されている感知器が短絡状態に相当する状態にあるか否かを検出可能な短絡状態検出機能を備え、前記制御手段は前記検出手段が短絡状態に相当する状態を検出した場合に前記監視装置へアドレスとともに検出状態を示す情報を送信するように構成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、感知器に短絡状態に相当するが発生していることおよび短絡状態に相当するが発生している感知器のアドレスを、監視装置に知らせることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の感知器ベースにおいて、前記端子部は、アドレス設定手段を有する感知器が接続される端子と、アドレス設定手段を有しない感知器が接続される端子と、両者に共通の端子とからなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、アドレス設定手段を有する感知器が接続されるかアドレス設定手段を有しない感知器が接続されるかの検出が容易となる上、完全に別々の端子を設ける場合に比べて構成する部品数を少なくすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の感知器ベースにおいて、
前記制御手段は、前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器との間で通信を行いその通信時の前記検出手段からの信号に基づいて短絡状態を検出するように構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、感知器ベースに設けられている制御手段が接続されているアドレス設定手段を有する感知器との間で通信を行うことで、正常にアドレスを取得できれば短絡が発生していないと判断できる一方、アドレスを取得できれば短絡が発生していると判断することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の感知器ベースにおいて、
前記制御手段は、前記検出手段が正常な状態にあるか判別する機能を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、検出手段が故障している場合には感知器の状態を判断することができないことになるが、検出手段が正常な状態にあるか判別する機能を備えることで、感知器が短絡状態にあるのか検出手段が故障しているのかを区別して認知することができ、不要な感知器の交換作業や検査作業を行わずに済むようになる。
【0017】
請求項7に記載の監視システムは、上記のような構成を有する複数の感知器ベースと、前記複数の感知器ベースにそれぞれ接続された複数の感知器と、1つの伝送路を介して前記複数の感知器ベースと接続された監視装置と、を備え、
前記監視装置は、アドレス設定手段を有する感知器が接続されている感知器ベースとは感知器のアドレスを使用して通信を行い、アドレス設定手段を有していない感知器が接続されている感知器ベースとは当該感知器ベースのアドレスを使用して通信を行うように構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、監視システムにアドレス設定手段を有していない感知器に使用されている場合にも、中継器を用いることなくアドレスを用いてそのような感知器の情報を、伝送路を介して監視装置が受信することができ、異常が発生している場所を正確に把握することができるとともに、トータルのシステムコストを下げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、短絡切離し機能を有するとともに、アドレスを持たない感知器またはアドレスを有する感知器のいずれも接続することができるため、システムの構成の自由度を高めることができる感知器ベースおよびそれを使用した監視システムを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る感知器ベースおよびそれを使用した監視システムの一実施形態を示す構成説明図である。
【図2】実施形態の感知器ベースに設けられる感知器判別機能を備えた信号検出部の具体例であってアドレス送信機能を持たない感知器が接続された状態を示す回路図である。
【図3】実施形態の感知器ベースに設けられる感知器判別機能を備えた信号検出部にアドレス送信機能を有する感知器が接続された状態を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態の感知器ベースにおける制御部による信号検出部を用いた感知ヘッドの判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】従来の監視システムにおける感知器ベースの構成例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る感知器ベースおよびそれを使用した監視システムとしての火災監視システムの一実施形態を示す。この実施形態の火災監視システムは、監視装置としての受信機10と、該受信機10に伝送路20を介して接続されている感知器ベース30A,30B……と、感知器ベース30A,30Bにそれぞれに接続された感知器ヘッド40A,40Bなどから構成されている。感知器ベース30A,30Bは、図示しないが、例えば上面が天井などの壁面に取り付けるための取付け面とされ、反対側の面(下面)に感知器ヘッド40A,40Bを物理的に結合可能にする結合部が設けられている。
【0021】
なお、伝送路20はループして再び受信機10に戻るように配設される。伝送路20には、排煙ダンパーや中継器、人間が操作して異常の発生を知らせる押しボタン式の発信機などが接続される場合もある。また、すべての感知器が感知器ベースを介して伝送路20に接続されている必要はなく、直接伝送路20に接続された感知器が混在していても良い。伝送路20は、2本の伝送線L1,L2によって構成されており、2本の伝送線により信号を伝送する一方、電力も供給することができるようにされている。感知器ヘッド40A,40Bは、従来より用いられている火災感知器としての熱感知器、煙感知器、あるいは熱感知機能および煙感知機能の両方を備えたものであっても良い。
【0022】
図1において、符号40Aが付されているのはアドレス送信機能を有しない従来型の感知器(コンベンショナル感知器)、符号40Bが付されているのはアドレス送信機能を有する感知器(アナログ感知器)である。図1に示すように、本実施形態の感知器ベース30A,30Bは、同一の構成を備えており、伝送路20にコンベンショナル感知器とアナログ感知器のいずれの感知器をも選択的に接続可能にするものである。
【0023】
上記受信機10は、伝送路20を介して感知器ベース30A,30B……またはアナログ感知器40Bとデータ伝送可能に構成されている。具体的には、受信機10には、内部の不揮発性メモリに、伝送路20に接続されている感知器ベース30A,30B……のアドレスや感知器のうちアナログ感知器(40B)のアドレスが記憶されたテーブルが格納されており、受信機10は、このテーブルに記憶されているアドレスを用いて、ポーリングやアドレッシングにより各端末機とデータ(制御コマンドを含む)の伝送を行うことができる。
【0024】
上記感知器ベース30A,30B……は、それぞれディップスイッチあるいは不揮発性メモリなどからなるアドレス設定部31、該アドレス設定部31に設定されているアドレスを用いたデータ伝送を行う伝送部32、短絡線切離し用のスイッチ33、感知器ヘッド40A,40Bを電気的に接続可能な端子部34、該端子部34に接続されている感知器ヘッドがコンベンショナル感知器またはアナログ感知器のいずれであるか、またコンベンショナル感知器である場合に感知器が火災を検知しているか検出するための信号検出部35、短絡線切離し用のスイッチ33のオン、オフ制御を含め感知器ベース内全体を制御する制御部36を備えている。
【0025】
また、感知器ヘッド40A,40Bのうちアナログ感知器からなる感知器ヘッド40Bは、温度センサや煙センサなどを内蔵した火災検出部41の他に、当該感知器のアドレスを付与するアドレス設定部42と、該アドレス設定部42に設定されているアドレスを用いたデータ伝送を行う伝送部43とを備え、コンベンショナル感知器からなる感知器ヘッド40Aは火災検出部41のみ備えアドレス設定部42および伝送部43を備えていない。
【0026】
次に、感知器ベース(30A,30B)内に設けられている制御部36による信号検出部35を用いた感知器の種類の判定機能およびスイッチ33の短絡線切離し機能について詳しく説明する。
【0027】
図2および図3には、感知器ベース(30A,30B)内に設けられている信号検出部35の具体的な回路例が示されている。このうち、図2にはアドレス送信機能を持たないコンベンショナル感知器(40A)が接続された状態が、また図3にはアドレス送信機能を有するアナログ感知器(40B)が接続された状態が示されている。
【0028】
図2および図3に示すように、感知器ヘッド40Aまたは40Bを接続可能な端子部34は、3つの端子34a,34b,34cを備えており、このうち端子34aと34cはアナログ感知器40Bに設けられている一対の端子に対応して設けられている。また、端子34bと34cは、コンベンショナル感知器40Aに設けられている一対の端子に対応して設けられている。端子34cは、いずれの感知器が接続される場合にも接続される共通の端子である。
【0029】
本実施例の信号検出部35は、伝送路20を構成する2本の伝送線L1,L2のうち電流を供給する+側の伝送線に接続される端子T1と上記ヘッド接続用の端子34aとの間に接続されたPチャネルMOSトランジスタQ1と、上記端子T1と上記ヘッド接続用の端子34bとの間に直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタQ2およびダイオードD1と、上記トランジスタQ1のゲート端子と接地点との間に接続されたNPNバイポーラトランジスタQ3とを備え、バイポーラトランジスタQ3のベース端子が制御部36の制御端子C1に接続されている。なお、上記端子T1と上記トランジスタQ1のゲート端子との間には抵抗R0が接続され、常態においてQ1はオフにされるようになっている。
【0030】
また、信号検出部35は、上記端子T1と上記ヘッド接続用の端子34cとの間に接続されたノーマリオンのデプレッション型MOSトランジスタQ4およびツェナーダイオードDzと、上記ヘッド接続用の端子34aと34cとの間に接続された直列抵抗R1,R2と、端子34cと接地点との間に逆方向接続されたダイオードD2と、抵抗R1とR2との接続ノードN1と上記制御部36の制御端子C1との間に直列に接続されたPチャネルMOSトランジスタQ5および抵抗R3とを備え、トランジスタQ4とツェナーダイオードDzとの接続ノードN2にトランジスタQ2のゲート端子が接続される一方、トランジスタQ5のゲート端子はヘッド接続用の端子34cに接続されている。
【0031】
さらに、信号検出部35は、上記ヘッド接続用の端子34cと接地点との間との間に直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタQ6および抵抗R4,R5と、上記デプレッション型MOSトランジスタQ4のゲート端子と接地点との間との間に直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタQ7およびダイオードD3と、Q7のゲート端子と接地点との間に接続された抵抗R6とを備え、トランジスタQ6のゲート端子は制御部36の制御端子C2に接続され、Q7のゲート端子は上記トランジスタQ5と抵抗R3との接続ノードN3に接続され、トランジスタQ6と抵抗R4との接続ノードN4が制御部36の判定入力端子INに接続されている。
【0032】
次に、信号検出部35の動作について説明する。図2に示されているように、端子部34の端子34bと34cに従来型のコンベンショナル感知器40Aが接続されている状態で、制御部36が制御端子C1をロウレベル(0V)に固定し、制御端子C2にハイレベル(3.3V)の電圧を出力したとする。すると、制御端子C1をロウレベルであるため、トランジスタQ3がオフし、トランジスタQ1はゲート端子が抵抗R0によってソース電位(端子T1の電位)にプルアップされてオフ状態となる。また、制御端子C2のハイレベルによってトランジスタQ6がオンされるとともに、デプレッション型MOSトランジスタQ4は常時オン状態であるため、ツェナーダイオードDzおよびQ6を通して電流(例えば5μA)のが流れる。このときに生じるツェナー電圧によってトランジスタQ2がオン状態にされ、端子T1からQ2およびダイオードD1を通してヘッド接続用の端子34bへ電流が流され、感知器40Aへ供給される。
【0033】
この際、端子34bと34cに感知器40Aが接続されていないと感知器から端子34cへ電流が流れ込むことがないので、トランジスタQ6に流れる電流はツェナーダイオードDzからの5μAの電流のみであり、トランジスタQ6と抵抗R4との接続ノードN4の電位は接地電位に近い電圧となり、この電圧が制御部36の判定入力端子INに入力されることで、制御部36は感知器が接続されていないことを認知することができる。
【0034】
一方、端子34bと34cに感知器40Aが接続されていると、非火災状態では感知器から端子34cへ50〜500μA程度の電流が流れ込むこととなり、トランジスタQ6に流れる電流はツェナーダイオードDzからの5μAと加算された電流となる。その結果、トランジスタQ6と抵抗R4との接続ノードN4の電位は加算電流に応じた電圧となり、制御部36の判定入力端子INに入力されることで、制御部36は感知器が接続されていて通常の火災監視状態にあることを認知することができる。
【0035】
また、端子34bと34cに感知器40Aが接続されていて、感知器40Aが火災状態を検出するとオン状態となり感知器から端子34cへ5mAのような大きな電流が流れ込むこととなり、トランジスタQ6に流れる電流も大幅に増加する。その結果、トランジスタQ6と抵抗R4との接続ノードN4の電位はかなり高い電圧に上昇し、制御部36は感知器が火災の発生を検出しているあるいは感知器が短絡状態にあることを認知することができる。
【0036】
一方、図3に示されているように、端子部34の端子34aと34cにアナログ感知器40Bが接続されている状態で、制御部36が制御端子C1およびC2にそれぞれハイレベル(3.3V)の電圧を出力したとする。すると、制御端子C1がハイレベルであるためトランジスタQ3がオンし、端子T1から抵抗R0に電流が流れることによってトランジスタQ1のゲート電圧が下がりQ1はオン状態となる。そのため、端子34aから感知器40Bへ電流が出力される。また、制御端子C2がハイレベルであるためトランジスタQ6がオンしているので、Q1がオンされたことにより抵抗R1,R2からQ6を通して電流が流れて接続ノードN1の電位が高くなり、トランジスタQ5がオン状態となって電流が流れる。この電流は、抵抗R6を通って接地点へ流されるため、ノードN3の電位すなわちトランジスタQ7のゲート電位が高くなり、Q7もオンされる。その結果、感知器40Bから流れ出て端子34cへ流れ込んだ電流の多くは、ツェナーダイオードDz−トランジスタQ7−抵抗R5を通して接地点へ流れることとなる。
【0037】
そのため、感知器40Bが流す電流が少ないアイドル状態にあれば、例えば50〜200μAの電流が抵抗R5に流れて、接続ノードN4にそれに応じた電圧が生じ、この電圧が制御部36の判定入力端子INに入力されることで、制御部36は感知器がアイドル状態にあることを認知することができる。また、感知器がデータ送信のために多くの電流を流すようになると、例えば20〜30mAのような大きな電流がQ6,Q7から抵抗R4,R5に流れて、接続ノードN4にそれに応じたかなり高い電圧が生じ、この電圧が制御部36の判定入力端子INに入力されることで、制御部36は感知器40Bが送信状態あるいは短絡状態にあることを認知することができる。この際、制御部36は、感知器40Bへ送信要求を行って接続ノードN4の電圧が変動してデータを受信できれば送信状態と判定し、送信要求を行っても接続ノードN4の電圧が30mAに応じた高い電圧のまま変化しなければ、感知器40Bが短絡状態にあると判定することができる。
【0038】
一方、上記のように制御部36から制御端子C1およびC2にそれぞれハイレベル(3.3V)の電圧が出力されている状態においても、端子部34の端子34aと34cにアナログ感知器40Bが接続されていないと、感知器から端子34cへ電流が流れ込むことがないので、抵抗R4,R5に流れる電流はツェナーダイオードDzからの5μAの電流のみであり、トランジスタQ6と抵抗R4との接続ノードN4の電位は接地電位に近い電圧となり、この電圧が制御部36の判定入力端子INに入力されることで、制御部36は端子34a,34cに感知器が接続されていないことを認知することができる。
【0039】
次に、感知器ベースの制御部36による信号検出部35の判定処理について図4のフローチャートを用いて説明する。この図4に従った処理はシステムの電源が立ち上がることによって開始される。
【0040】
制御部36は、システムの電源が立ち上がると先ず制御端子C1をロウレベル“L”(=0V)に固定したまま、制御端子C2をハイレベル“H”(=3.3V)に立ち上げる(ステップS1)。そして、判定入力端子INに入力されている電圧をAD変換した値ADCが“0”より大きいか否か判定する(ステップS2)。ここで、ADC値が“0”より大きくない(=No)と判定すると信号検出部35が存在しないあるいは故障していると判断して処理を終了する。信号検出部35が存在して正常に動作していれば、判定入力端子INに入力されている電圧が0Vになることはないためである。一方、ステップS2でADC値が“0”より大きい(=Yes)と判定すると、次のステップで、ADC値が例えば5μAに対応した所定の判定レベルJ1よりも大きいか否か判定する(ステップS3)。
【0041】
このステップS3で、ADC値が判定レベルJ1よりも大きい(Yes)と判定すると、前記実施例で説明したように、信号検出部35の端子34b,34cに従来型の感知器が接続されているということが分かるので、次にADC値が例えば5mAに対応した所定の判定レベルJ2よりも大きいか否か判定する(ステップS4)。そして、ADC値が判定レベルJ2よりも小さい(=No)と判定すると、ステップS3へ戻って上記動作を繰り返す。
【0042】
また、ステップS4で、ADC値が判定レベルJ2よりも大きい(Yes)と判定すると、感知器が火災の発生を検出しているか感知器が短絡状態にあるため、アドレス設定部31に設定されているアドレスを読み出し、伝送部32を制御して受信機10へアドレスと共に感知器の状態情報を送信する(ステップS5)。受信機10がその情報を受信すると、例えば所定時間後に再度結果を送信するように指令するコマンドを送信し、当該感知器ベースは上記ステップS1から再度図5の処理を実行して、再びステップS4で、ADC値が判定レベルJ2よりも大きい(Yes)と判定して、感知器が火災の発生を検出しているか感知器が短絡状態にあることを受信機10へ知らせる(ステップS5)。
【0043】
すると、受信機10は当該受信機に設けられている警報器を鳴動あるいは異常報知ランプを点灯させる。その後、オペレータが警報を認知して他の情報から火災が発生しているか否か確認し、火災が発生していないと判断すると感知器が短絡状態にある可能性が高いので、受信機10のパネルを操作して火災もしくは短絡状態を知らせて来た感知器ベースに隣接する感知器ベースへ短絡線切離しコマンドをアドレスと共に送信する。そして、アドレスによって指定された感知器ベースの制御部36がこのコマンドを受信すると、短絡線切離し用のスイッチ33をオフ(開放)させる。これによって、短絡状態の感知器ベースは伝送路20から切り離された状態となるとともに、他の感知器ベースや感知器は伝送路20を使用したデータ伝送を継続することができる。
【0044】
一方、上記ステップS3で、ADC値が判定レベルJ1よりも小さい(=No)と判定すると、信号検出部35の端子34b,34cに従来型の感知器が接続されていないということが分かるので、アナログ感知器が接続されているか検出する処理(ステップS6)へ移行する。そして、先ず制御端子C1および制御端子C2をそれぞれハイレベル“H”(=3.3V)に立ち上げる(ステップS7)。その後、判定入力端子INに入力されている電圧をAD変換した値ADCが判定レベルJ1よりも大きいか否か判定する(ステップS8)。ここで、ADC値が判定レベルJ1よりも大きくない(=No)と判定すると、信号検出部35にアナログ感知器が接続されていないということが分かるので、ステップS1へ戻る。また、ステップS8で、ADC値が判定レベルJ1よりも大きい(=Yes)と判定すると、信号検出部35にアナログ感知器が接続されていることが分かるので、次のステップでアナログ感知器内の伝送部43との間で通信(アドレスの送信要求)を行う(ステップS9)。
【0045】
その後、判定入力端子INに入力されている電圧をAD変換した値ADCが判定レベルJ2よりも大きいか否か判定する(ステップS10)。ここで、ADC値が判定レベルJ2よりも大きくない(=No)と判定すると、信号検出部35に接続されているアナログ感知器が正常にデータを送信して来ているということが分かるので、制御部36は、アナログ感知器から送られてきたアドレスを、アナログ感知器40Bと受信機10との間のデータ伝送に使用するアドレスとして設定(ステップS11)してステップS8へ戻り、上記動作(S8〜S11)を繰り返す。
【0046】
具体的には、この場合、制御部36は、当該感知器ベース30B内の伝送部32をバッファとして動作させる、あるいは伝送部32をバイパスさせてアナログ感知器40Bがあたかも伝送路20の伝送線と直接接続されているような状態に設定する。また、制御部36は、当該感知器ベース内のアドレス設定部31に設定されているアドレスを、短絡切離し器(SCI)の専用のアドレスとして使用するように設定する。
【0047】
また、ステップS10で、ADC値が判定レベルJ2よりも大きい(Yes)と判定すると、信号検出部35に接続されているアナログ感知器が正常にデータを送信して来ていないつまり短絡しているということが分かるので、制御部36は、次のステップS12で短絡状態にあることを示す情報をアドレスと共に受信機10へ知らせて処理を終了し、ステップS1へ戻る。この情報を受信した受信機10は短絡状態を知らせて来た感知器ベースに隣接する感知器ベースへ短絡線切離しコマンドをアドレスと共に送信する。そして、アドレスによって指定された感知器ベースの制御部36がこのコマンドを受信すると、短絡線切離し用のスイッチ33をオフ(開放)させる。これによって、短絡状態の感知器ベースは伝送路20から切り離された状態となるとともに、他の感知器ベースや感知器は伝送路20を使用したデータ伝送を継続することができる。
【0048】
上記のように、本実施形態の感知器ベースは、アドレス設定部31を備えるためアドレスを持たない従来型のコンベンショナル感知器あるいはアドレスを有するアナログ感知器のいずれの感知器が接続された場合にも、受信機10との間で伝送路20を介したデータ伝送が可能である。また、アナログ感知器が接続されている場合には、アナログ感知器に付与されているアドレスを感知器のアドレスとして使用し、感知器ベースのアドレス設定部31に設定されているアドレスは短絡切離し器(SCI)のアドレスとして使用することで、受信機側において別個の機能の機器として扱うことができる。
なお、使用可能なアドレスの数に上限があり、設置したい感知器の数が制限されるような場合には、アナログ感知器に付与されたアドレスを、感知器ベースの短絡切離し器(Sを増加させることも可能であり、より大規模な監視システムに対応させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、感知器において短絡状態が発生すると、感知器ベースに設けられている切離し用のスイッチ33をオフ(開放)させて、短絡が生じている感知器を伝送路から切り離すことができるため、他の感知器もしくは感知器ベースが受信機10との間でデータ伝送ができなくなるような事態が発生するのを回避することができる。さらに、本実施形態の感知器ベースは、アドレス設定部31および短絡切離し用のスイッチ33を備えるため、従来は独立の機器として接続されることがあった中継器や短絡切離し器(SCI)が不要になるという利点もある。
【0050】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、短絡状態を検出した感知器ベースに隣接する感知器ベースの短絡線切離し用のスイッチ33を受信機10からの指令によってオフさせると説明したが、感知器ベースと感知器ヘッドとの間に短絡線切離し用のスイッチ33を設け、制御部36は、異常を検出した場合にそれを受信機10へ知らせるとともに、制御部36が短絡線切離し用のスイッチ33をオフさせるように構成することも可能である。
【0051】
また、感知器ベースにアナログ感知器が接続された場合、当該感知器ベース制御部36はアナログ感知器に付与されているアドレスを自己のアドレスとみなして処理を行うようにプログラムを構成することも可能である。これによって、感知器ベースに付与されたアドレスは不要となるので、使用可能なアドレスの数には上限がある場合に、当該アドレスを他の感知器のアドレスに割り当てることで設置可能な感知器の数が増加させ、より大規模な監視システムを構築することが可能となる。
【0052】
さらに、以上の説明では主として本発明者によってなされた発明を火災監視システムに適用した場合を例にとって説明したが、本発明は、感知器としてさらにCOなどの有害ガスのガス漏れ検知器を備えた防災システムや移動体感知器などを備えた防犯システムその他の監視システムに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 受信機(監視装置)
20 伝送路
30 感知器ベース
31 アドレス設定部
32 伝送部
33 短絡線切離し用のスイッチ
34 端子部
35 信号検出部
36 制御部
40A 従来型の感知器(感知器ヘッド)
40B アナログ感知器(感知器ヘッド)
41 火災検出部
42 アドレス設定部
43 伝送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器を結合可能な結合部を備え、伝送路を介して監視装置とデータ伝送可能に接続される感知器ベースであって、
アドレス設定手段を有する感知器とアドレス設定手段を有していない感知器のいずれかを選択的に接続可能な端子部と、
前記監視装置との間のデータ伝送に使用するアドレスを設定するアドレス設定手段と、
当該感知器ベースを前記伝送路から切離し可能な切離し手段と、
当該感知器ベースに接続されている感知器がアドレス設定手段を有する感知器であるかアドレス設定手段を有していない感知器であるかを検出するための検出手段と、
前記切離し手段および前記検出手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記検出手段を制御して当該感知器ベースに接続されている感知器の種類を判別し、
前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器のアドレス設定手段に設定されているアドレスにより前記監視装置との間のデータ伝送を可能とし、
前記端子部にアドレス設定手段を有しない感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器ベースのアドレス設定手段に設定されているアドレスにより前記監視装置との間のデータ伝送を実行することを特徴とする感知器ベース。
【請求項2】
前記制御手段は、前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器ベースのアドレス設定手段に設定されているアドレスを、前記切離し可能な切離し手段を制御するためのアドレスとして使用するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感知器ベース。
【請求項3】
前記検出手段は当該感知器ベースに接続されている感知器が短絡状態に相当する状態にあるか否かを検出可能な短絡状態検出機能を備え、前記制御手段は前記検出手段が短絡状態に相当する状態を検出した場合に前記監視装置へ検出状態を示す情報をアドレスとともに送信するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感知器ベース。
【請求項4】
前記端子部は、アドレス設定手段を有する感知器が接続される端子と、アドレス設定手段を有しない感知器が接続される端子と、両者に共通の端子とからなることを特徴とする請求項3に記載の感知器ベース。
【請求項5】
前記制御手段は、前記端子部にアドレス設定手段を有する感知器が接続されていると判別した場合には、当該感知器との間で通信を行いその通信時の前記検出手段からの信号に基づいて短絡状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の感知器ベース。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段が正常な状態にあるか判別する機能を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感知器ベース。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された構成を有する複数の感知器ベースと、前記複数の感知器ベースにそれぞれ接続された複数の感知器と、1つの伝送路を介して前記複数の感知器ベースと接続された監視装置と、を備え、
前記監視装置は、アドレス設定手段を有する感知器が接続されている感知器ベースとは感知器のアドレスを使用して通信を行い、アドレス設定手段を有していない感知器が接続されている感知器ベースとは当該感知器ベースのアドレスを使用して通信を行うように構成されていることを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93861(P2012−93861A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239159(P2010−239159)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000111074)株式会社LIXILニッタン (93)
【Fターム(参考)】