説明

感覚欠損を治療するための組成物および方法

本発明は、感覚欠損の治療に有効な組成物および方法を提供する。本発明の好ましい実施形態において、植物精油から単離または合成された芳香族テルペン化合物を利用した陰性感覚症状の治療を詳述する。併用してまたは個々に使用されるゲラニオールおよびシトロネロールなどの化合物、ならびにそれらの化学的類縁体は、好適な剤形において、単独で、または薬学的に許容できる担体と共に組成物として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感覚障害を治療するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、1つまたは複数のテルペン化合物を含む天然または非天然の組成物、ならびに感覚欠損を治療するための組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経の損傷または機能障害は、感覚の消失または障害の症状を引き起こすことがある。このような症状は、「痺れ」とも呼ばれ、軽触、ピン穿刺、振動、熱または冷たさを感じる能力の低下として現れうる。これらの症状によって、痛みを与えると考えられる刺激をしても、痛みが感じにくくなる。また、このような症状の罹患者は、固有感覚の減少を経験しうる。これらの症状群は、「陰性感覚症状(negative sensory phenomena)」と呼ばれ、アロジニア(通常は有痛でない刺激による痛み)、異常触感(「ピンや針」の刺痛)、痛覚過敏(刺激に対する過大な痛覚)、触覚過敏(通常の刺激に対する感覚増大)、異感覚(実際にはない傷を付けられているような不快な異常感覚)、および異常感覚(自発的または誘発的な感覚の異常)などの「陽性感覚症状(positive sensory phenomena)」とは区別される。緊張低下、筋力低下、耐久力低下などの陰性運動症状および筋緊張の増加、震顫、ジストニア、およびジスキネジアなどの陽性運動症状も存在する。
【0003】
「ニューロパシー」は、神経損傷の病態を意味する。ニューロパシーは、末梢神経系または中枢神経系の損傷または病的変化により生じる。ニューロパシーは、通常、「灼熱的」、「電気的」、「刺すような」、および「電撃的」と呼ばれる痛みを生じさせる。しかし、有痛または無痛のニューロパシーの罹患者は陰性感覚症状を経験することもある(Bonica’s Management of Pain、第三版、ISBN 06833042623を参照)。これらの不要で望ましくない感覚は、効果的な治療が開発されていないために、治療時に無視されることが多い。
【0004】
侵害受容性疼痛は、オピオイド類および非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)によって和らげられる。しかし、これらの薬剤は、ニューロパシー性疼痛の治療において限定的な効果しか発揮しない。反対に、ガバペンチンなど、ニューロパシー性疼痛の治療に用いられる薬剤は、侵害受容性疼痛に対する効果がわずかであるか、全く無い。また、鎮痛剤についての先行教示によれば、痛み軽減のための鎮痛剤を用いた場合、陰性感覚症状が悪化したり、誘発されたりすることがある。
【0005】
したがって、ニューロパシー性疼痛を治療するための現行の慣例的な薬理学的方策では、以下に概述する多数の異なる薬剤が処方されている。しかしながら、多くの場合、陰性感覚症状の治療は無視されている。さらに、陰性感覚症状は、疼痛治療によって悪化したり、疼痛治療開始時に発生したりする。このため陰性感覚症状は、疼痛治療の負の副作用であると考えられている。また、ニューロパシー性疼痛治療は、有効性不足、治療忍容性不足であったり、または望ましくない症状を増加または誘発させたりするので、効果は限定的である。
【0006】
抗不整脈薬:特定の抗不整脈薬はナトリウムブロック活性を有する。糖尿病性ニューロパシーおよびヘルペス後神経痛などの末梢神経系損傷による一次的な痛みの軽減には、少量のリドカインが用いられる。しかし、静脈内リドカイン療法においては、発作および不整脈の危険性を減少させるために、患者のECGおよび血圧の連続的なモニタリングが必要である(例えば非特許文献1参照)。
【0007】
抗うつ薬:三環系抗うつ薬およびセロトニン再取り込み阻害剤の両方が、ニューロパシー性疼痛の治療に用いられている。多数の臨床試験により、糖尿病性ニューロパシーまたはヘルペス後神経痛の治療におけるTCA類の安全性および有効性が実証されているが、その反応率はおよそ33%と低い。アミトリプチリンはニューロパシーの治療に用いられた最初の三環系抗うつ薬であり、近年でも広く処方されている。アミトリプチリンは、高齢患者において、抗コリン作用による副作用(譫妄など)の発生率が高い。三環系抗うつ薬は、前不整脈作用を有していることから、異常EKGを有する集団における使用が制限される。セロトニン特異的再取り込み阻害剤(SSRI)は、ニューロパシー性疼痛に対して効果が低く、7人の患者のうちわずか1人のニューロパシー性疼痛を軽減するだけであった。セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤は、ニューロパシー性疼痛を有する4〜5人の患者のうち1人の割合で反応し、結果はわずかに良好である(例えば非特許文献2参照)。
【0008】
抗痙攣薬:カルバマゼピン、フェニトイン、ガバペンチンおよびラモトリジンは全てニューロパシー性疼痛の治療に用いられている。カルバマゼピン、フェニトインおよびラモトリジンなどの薬剤によるナトリウムチャネルブロック活性の阻害がニューロパシー性疼痛の軽減の作用機序と考えられている。抗痙攣薬のガバペンチンは、糖尿病性ニューロパシーによる疼痛、混合ニューロパシー、およびヘルペス後神経痛に有効であることが試験により示されている。一般に抗痙攣薬で最もよく現れる有害作用は、鎮静および小脳性症状(眼振、震顫および共調運動不能)である。ガバペンチンに関連した最も一般な副作用は、無力症、頭痛、眩暈および傾眠であり、まれに多発性ニューロパシーも発生しうる。ラモトリジンは、三叉神経痛以外のニューロパシー性疼痛の治療に用いた場合、プラセボ以上の効果は有さない(例えば非特許文献3参照)。
【0009】
非ステロイド系抗炎症薬:非ステロイド系抗炎症薬は一般に、ニューロパシー性疼痛の治療に推奨される薬剤ではない。非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)によるニューロパシー性疼痛の軽減効果は不安定だからである(例えば非特許文献4参照)。
【0010】
オピオイド:オピオイドによるニューロパシー性疼痛の治療には議論の余地がある。オピオイドは、ニューロパシー性疼痛の治療には無効であると考えられていたが、他の治療方法が有効でなかった患者に対していくらか有効である可能性がある。短期間の試験では、ニューロパシー性疼痛の減少におけるオピオイドの有効性に関して多義的な証拠が提供されているが、中期試験では、プラセボを超える著しい有効性が示されている。オピオイドの有害事象は一般的に報告されており、長期有効性、安全性(潜在的な中毒作用を含む)および患者のQOLを、さらに評価する必要がある。一般的に、ニューロパシー性疼痛は、他のタイプの痛みよりオピオイドに対する反応性が低いと考えられる(例えば非特許文献5参照)。
【0011】
他の薬剤:シナプス前とシナプス後双方のGABA B受容体をブロックするバクロフェンは、三叉神経痛を治療する第一線の薬剤として用いられる。この薬剤の最も一般的な副作用は、眠気であり、潜在的な中毒作用に関する懸念がある(例えば非特許文献6参照)。
【0012】
N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストであるケタミンはニューロパシー性疼痛治療に関する関心を集めた。ケタミンは、ヘルペス後神経痛の症状を軽減させることを示した。しかし、ケタミンは長期に使用すると、鎮静、反応時間の遅延および幻覚を引き起こす。この理由から、慢性の非悪性疼痛に対するケタミンの使用は現在推奨されていない(例えば非特許文献7参照)。
【0013】
デキストロメトルファンもまた、NMDAアンタゴニストである。デキストロメトルファンで、糖尿病性ニューロパシーの患者の疼痛を軽減することにいくらか成功しているが、ヘルペス後神経痛、発作後痛、または糖尿病性以外の末梢ニューロパシーの患者には効果がない(例えば非特許文献8参照)。
【0014】
局所用薬剤:局所用薬剤は、全身毒性が無く、局所的な痛みの軽減に効果を発揮する。経皮クロニジンは、糖尿病性ニューロパシーの治療に使用されているが、効果が不安定である。トウガラシの抽出物を含有するカプサイシンクリームは、ニューロパシー性疼痛に時々用いられる。これは、サブスタンスPを枯渇させることにより、無髄1次求心性神経に作用し得る。サブスタンスPを枯渇させるには、カプサイシンの反復的かつ連続的な使用が必要であるが、強い灼熱感という一般的副作用が連続的な使用を減少させることになり、患者の服薬順守が問題となりうる。全体的に、臨床試験におけるニューロパシー性疼痛に対するカプサイシンクリームによる効果には、ばらつきがあった(例えば非特許文献4参照)。ケタミンは、麻酔量よりも低用量で鎮痛活性を有する非経口的麻酔薬であり、オピオイド受容体活性を有するN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。対照試験および症例報告により、経皮ケタミンのニューロパシー性疼痛に対する有効性が示されている(例えば非特許文献9参照)。ゼラニウム植物(Pelargonium spp)の蒸気蒸留物であるゼラニウム精油は、香料や芳香剤に用いられており、一般に、米国食品医薬品局によって安全性が確認されている。ゼラニウム精油の局所的塗布は、2/3の患者のヘルペス後神経痛を軽減することが示されており、1/4の患者においては劇的な臨床的反応(clinical response)を示した(例えば非特許文献10参照)。
【0015】
ニューロパシー的症状は、例えば糖尿病、アルコール依存症、甲状腺機能低下症、尿毒症、栄養欠乏、化学療法、化学物質曝露または薬物誘発、感染、外傷、自己免疫疾患、慢性疲労症候群、線維筋痛、虚血、および遺伝性障害などの種々の障害によって引き起こされる。したがって、ニューロパシー的症状は比較的頻繁に観察されるものであり、場合によっては陰性および陽性の感覚症状を含む。このため、陰性感覚症状痛みを軽減し、かつ副作用を最小化した新規治療方法が求められている。また、原因が不明の陰性感覚症状の治療方法も求められている。
【0016】
天然物質は、多種多様な化合物を提供しており、それらの多くが治療薬としての有効性を示す。植物に由来する多くの精油は、侵害受容性疼痛の治療にとって有効な鎮痛性および抗炎症性を有することが報告されている。例えば、ショウガ(Zingiber spp.)の多数の種は、抗侵害受容性を有することが示されている。ショウガの精油は、モノテルペン類(フェランドレン、カンフェン、シネオール、シトラール、およびボルネオール)、セスキテルペン類(ジンジベレン、ジンジベロール、ジンジベレノール、β−ビサボレン、セスキフェランドレン、その他)、アルデヒド類およびアルコール類からなる成分の複合混合物である(例えば非特許文献11参照)。メントールは、ハッカ(Mentha)属の植物に見られる植物起源の天然化合物であり、侵害受容性疼痛に対する鎮痛性を有することが示されている(例えば非特許文献12参照)。しかしながら、ニューロパシーおよびそれによって引き起こされた陰性感覚症状に対する植物抽出物の研究はきわめて少ない。
【0017】
特許文献1には、ニューロパシー性感覚損失の治療に、製薬組成物、好ましくは、リドカインなどの安息香酸ベースの鎮痛剤を使用する方法が記載されている。特許文献2では、痛みおよび陰性感覚症状を含むニューロパシー症状の予防および治療に、トルペリゾンを使用する方法が教示されている。特許文献3では、ニューロパシー性疼痛の治療の副作用として誘発されるニューロパシー性の陰性感覚症状の予防および治療のために、カリウムと共に抗痙攣剤を同時に投与することが教示されている。
【0018】
ゼラニウム精油は、昆虫忌避剤として、香料中で使用されたり、他の関連した目的のために広く使用されている。例えば、特許文献7では、動物忌避組成物中の一成分として、ゼラニウム精油を使用することが記載されている。特許文献6では、口腔洗浄組成物の一部としてゼラニウム精油を使用することが記載されている。特許文献5では、漂白組成物中、芳香剤としてゼラニウム精油を使用することが記載されている。特許文献4では、香料組成物中にゼラニウム精油を使用することが記載されている。特許文献8の標題「Diagnosis and treatment of various neuralgias」には、ペラルゴニウム・グラベオレンス(Pelargonium graveolens Ait.)精油を主成分とした組成物によるニューロパシー性疼痛症候群の診断方法および治療方法が記載されている。この精油は、ゼラニウム精油バーボン、ゼラニウム再結合油、およびバラゼラニウム精油とも呼ばれる。
【0019】
しかし、特許文献8によって教示されるように、ゼラニウム精油は天然由来の化合物の複合混合物である。複合混合物に含まれるいくつかの化合物は有効でありうるが、いくつかの化合物は無効であるか、または炎症性もしくは毒性を有しうる。例えば、天然のゼラニウム精油に見られる多数の成分が刺激物であることが知られているので、局所的に塗布された際に皮膚発疹を引き起こしたり、痛みを悪化させたりする恐れがある。例えば、天然のゼラニウム精油の一成分であるa−ピネンは、皮膚に刺激性であると考えられ、使用によって、発疹、灼熱痛、頭痛、嘔吐、さらには腎臓障害を引き起こしうる(例えば非特許文献13参照)。b−フェランドレンは、接触皮膚炎を引き起こし得る過敏化作用が知られている(例えば非特許文献14参照)。天然のゼラニウム精油のもう1つの成分であるp−シメンもまた「主要な皮膚刺激物」であると考えられ、接触時には発赤引き起こし、経口または吸入で摂取した場合は頭痛、吐き気および嘔吐を引き起こしうる(例えば非特許文献15参照)。
【0020】
特許文献8はまた、ゼラニウム精油の使用は、使用部位に陰性感覚症状、すなわち痺れを引き起こすことを教示している。
【0021】
したがって、神経細胞の損傷や原因不明の他の病態や薬物治療の副作用に起因し、かつ陽性感覚症状を伴う、または伴わない陰性感覚症状を罹患している患者に対する療法方法が求められている。
【0022】
これらの背景情報は、本出願者が考える既知の情報を本発明に関連づける目的で提供したものである。したがって先行の情報のいずれかが、本発明に対して先行技術を構成することを認めるものではなく、そのように解釈すべきでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0112183号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0004050号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0092636号明細書
【特許文献4】米国特許第4,311,617号明細書
【特許文献5】米国特許第4,579,677号明細書
【特許文献6】米国特許第4,923,685号明細書
【特許文献7】米国特許第4,940,583号明細書
【特許文献8】米国特許第5,260,313号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Kalso,E Sodium Channel Blockers in Neuropathic Pain, Current Pharmaceutical Design, Volume11,Number 23,September 2005,3005-3011(7)
【非特許文献2】Sindrup,Soren H.; Otto,Marit; Finnerup,Nanna B.Jensen,Troels S.Antidepressantsin the Treatment of Neuropathic Pain Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology,Volume 96, Number 6,June 2005,399-409(11).
【非特許文献3】Jensen TS.Anticonvulsants in neuropathic pain: rationale and clinical evidence. Eur J Pain.2002;6 Suppl A:61-8.
【非特許文献4】Kingery WS.A critical review of controlled clinical trials for peripheral neuropathic pain and complex regional pain syndromes. Pain 1997;73:123-139.
【非特許文献5】Elon Eisenberg, MD;Ewan D.McNicol,RPh;Daniel B. Carr, MDEfficacy and Safety of Opioid Agonists in the Treatment of Neuropathic Pain of Nonmalignant Origin JAMA. 2005;293:3043-3052.
【非特許文献6】Fromm GH.Baclofen as an adjuvant analgesic. J Pain Symptom Management 1994;9(8):500-509.
【非特許文献7】Eide K,Stubhaug A,Oye I,Breivik H.Continuoussubcutaneous administration of the N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) receptor antagonist ketamine in the treatment of postherpetic neuralgia.Pain1995;61(2):221-8.
【非特許文献8】Sindrup SH,Jensen TS.Efficacy of pharmacological treatments of neuropathic pain: an update and effect related to mechanism of drug action.Pain 1999;83(3):389-400.
【非特許文献9】Kronenberg RH.Ketamine as an analgesic: parenteral, oral, rectal, subcutaneous, transdermal and intranasal administration.J Pain Palliat Care Pharmacother.2002;16(3):27-35.
【非特許文献10】Greenway FL,Frome BM,EngelsTM 3rd,McLellan A.Temporary relief of postherpetic neuralgia pain with topical geranium oil.Am J Med 2003 Nov;115(7):586-7.
【非特許文献11】Vendruscolo A,Takaki I,Bersani-Amado LE,Dantas JA,Bersani-Amado CA,Cuman R K.N Antiinflammatoryand antinociceptive activities of zingiberofficinale roscoe essential oil in experimental animal models.Ind J Pharm Vol 38 No 1 58-59 2006.
【非特許文献12】Nicoletta Galeotti,Lorenzo Di Cesare Mannelli,Gabriela Mazzanti,Alessandro Bartolini,Carla Ghelardini Menthol: a natural analgesic compound Neuroscience Letters 322(2002) 145-148頁 NEUROLOGY 2005;65:812-819.
【非特許文献13】New Jersey Dept of Health Hazardous Substance Fact Sheet July 1999 #0052.
【非特許文献14】http://Toxnet.nlm.nih.gov CASRN:555-10-2.
【非特許文献15】Johnston,G.A.R.GABA Receptor Channel Pharmacology.Current Pharmaceutical Design 2005,11,1867-1885.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、陰性感覚症状の予防および治療のための組成物および方法を提供することである。本発明の組成物および治療方法は、例えば、神経損傷に起因した症状や原因不明の症状を治療するための治療剤の開発など、広い適用範囲を有する。これらの症状としては、例えば、軽触、ピン穿刺、振動、熱、冷たさを感知する能力の低下または固有感覚の減少が挙げられる。これらの症状は、「痺れ」とも称される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の1態様によれば、少なくとも1つのテルペン化合物または2以上のテルペン化合物の組合わせと、任意に1以上の薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤とを含む、陰性感覚症状の治療用組成物が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、以下の式Iまたは式IIで表される1以上の化合物、または薬学的に許容できるその異性体、塩、エステルもしくは水和物を含む、陰性感覚症状の治療用組成物が提供される。組成物には、1以上の薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤が含まれていてもよい。
【化1】

、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基およびC〜C20分枝状アリル基から選択され、ただし
およびR、RおよびR、RおよびR、またはR10およびR11のうちの1以上が=Oもよく、
上記アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびアリル基は、アリール、アミン、アミド、ハロゲン化物、ホスフェートまたはチオールで任意に置換されている。
【0028】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載された治療的有効量の組成物を対象哺乳動物に投与することを含む、何らかの原因による陰性感覚症状を治療する方法が提供される。治療的有効量とは、神経機能の臨床試験において症状を減少させるか、もしくは軽減するかまたは変化を誘導する量である。対象哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。本発明の方法は、例えば、糖尿病性末梢ニューロパシー、帯状ヘルペス、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群、反射性交感神経性ジストロフィ、幻肢症候群、慢性疾患(多発性硬化症、HIVなど)、外傷(灼熱痛)、インピンジメント(例えば、坐骨神経痛、手根管など)、薬物曝露、毒性化学物質曝露、現感染症、過去の感染症、臓器機能障害、血管疾患、代謝疾患、癌、癌治療、自己免疫疾患、線維筋痛により引き起こされるか、または突発性である陰性感覚症状の治療方法であることが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい1実施形態によれば、ゲラニオール、シトロネロール、および関連化合物など、1つまたは複数のテルペン分子を投与することによる、ニューロパシー性陰性感覚症状の治療方法が提供される。特に、本発明は、ゲラニオール、シトロネロール、または関連化合物などの、1つまたは複数のテルペン分子を単独にまたは組合わせで含む組成物を、哺乳動物に対して局所投与または経口投与する、新規なニューロパシー性症状の治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】サンプル番号4(ゲラニオール)および対照を用いて、マウスの海馬切片のパッチクランプの電気生理学的試験から得られた電流−電圧プロットを示しており、膜電流の減少(ゲラニオール対対照)を示す。
【図2】皮質ニューロンにおける典型的な電流電圧関係(A=対照:B=ゲラニオール:C=ウォッシュアウト後)ならびに電流パルス脱分極後の皮質ニューロンの典型的な反応(D=対照条件:E=ゲラニオールの存在下:F=回収後)を示す。
【図3】パッチクランプ試験時、種々の処置後の正味の電流減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、治療過程においてしばしば無視されたり、または現行の治療法により事実上悪化したり、または現行の治療法によって発生したりする症状および機能不全に対する新規な治療方法を提供する。これらの症状は、陰性感覚症状としても分類され、「痺れ」とも称される。これらの症状は、軽触、ピン穿刺、振動、熱または冷たさを感知する能力の低下として臨床的に確認される。これらの症状によって、痛みを与えると考えられる刺激をしても、痛みが感じにくくなる。陰性感覚症状はまた、固有感覚の減少として現れることもある。ここで「固有感覚」とは、身体が必要な力で動いているかどうか否かを認知する感覚、および身体の種々の部分の相対的位置を認知する感覚のことである。陰性感覚症状は、陽性感覚症状、陰性運動症状、または陽性運動症状を伴うこともあるし、伴わないこともある。
【0032】
本発明の1実施形態によれば、背景技術に記載された精油蒸留物の制限および欠点の多くが、単離および/または合成された化合物、ならびにそれらの組成物を使用することによって克服される。所望の効果のみを有する単離および/または合成された化合物によって、他の成分を含む天然精油蒸留物と比較して、より良好な調節と治療効果の増強が可能となる。したがって、治療剤をより良好に設計することができ、また既知の活性成分に標準化することにより、これら薬剤の品質を管理することができる。効用が無かったり、刺激性または毒性を有したりする化合物は、このような組成物から除外することができる。さらに、これらの化合物の合成誘導型は、より経済的に生産でき、医療用植物生産に悪影響を及ぼす気候条件によって、供給が影響されない。
【0033】
本発明は、神経機能に影響を及ぼす化合物または化合物の混合物を含む組成物の投与によって、感覚を回復させたり、または改善させたりすることができる新規な手段を提供する。本発明の組成物は、少なくとも1つのテルペン化合物または、薬学的に許容できるその塩、エステルもしくは溶媒和物、および任意に薬学的に許容できる希釈剤または担体を含む。
【0034】
本明細書で用いられる「テルペン化合物」とは、テルペン、テルペノイド、または薬学的に許容できるその塩、エステルもしくは溶媒和物のことである。「テルペノイド」は、化学的に修飾されたテルペンである。テルペノイドの非限定的な例としては、テルペノイドアルデヒド類、テルペノイド酸類、テルペノイドエステル類、テルペノイドオキシド類が挙げられる。
【0035】
本発明の具体的な実施形態では、組成物中のテルペン化合物は、ゲラニオール、シトロネロール、ゲラニアール、シトロネラール、リナロール、メントン、ローズオキシド、アルファ−テルピネオール、薬学的に許容できるその塩、エステルもしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物である。
【0036】
テルペン化合物は、以下の式Iまたは式IIで表される構造式を有しているのが好ましい。
【化2】

式中の
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれH、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択され、ただし
およびR、RおよびR、RおよびR、ならびにR10およびR11のうちの1以上は、=Oでもよく、
上記アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびアリル基が、アリール基、アミン基、アミド基、ハロゲン化物、ホスフェート基またはチオール類で任意に置換される。
【0037】
別の実施形態によれば、組成物は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が、それぞれH、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C10非分枝状アルキル基、C〜C10分枝状アルキル基、C〜C10非分枝状アルコキシ基、C〜C10分枝状アルコキシ基、C〜C10非分枝状アシルオキシ基、C〜C10分枝状アシルオキシ基、C〜C10非分枝状アリル基、C〜C10分枝状アリル基から選択され、ただしRおよびR、RおよびR、RおよびR、ならびにR10およびR11のうちの1以上は、=Oでもよい式IまたはIIで表される化合物を含む。
【0038】
別の実施形態によれば、組成物は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が、それぞれH、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C非分枝状アルキル基、C〜C分枝状アルキル基、C〜C非分枝状アルコキシ基、C〜C分枝状アルコキシ基、C〜C非分枝状アシルオキシ基、C〜C分枝状アシルオキシ基、C〜C非分枝状アリル基、C〜C分枝状アリル基から選択され、ただしRおよびR、RおよびR、RおよびR、ならびにR10およびR11のうちの1以上は、=Oでもよい式IまたはIIで表される化合物を含む。
【0039】
別の実施形態によれば、組成物は、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR12が、Hであり、R10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択されるか、またはR10およびR11が、=Oである式Iで表される化合物を含む。
【0040】
関連する実施形態によれば、組成物に含まれる1または複数の式Iの化合物は、
ゲラニアール(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール)、
ネラール(シス3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール)、
ゲラニオール(2,6−オクタジエン−1−オール,3,7−ジメチル−,(2E)−)、
ネロール(シス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)、
ゲラニルホルメート(2,6−オクタジエン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート,2E)−)、
ゲラニルブチレート(ブタン酸,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル)、
ゲラニルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル,(2E)−)、または薬学的に許容できるこれらの異性体、塩、エステルもしくは溶媒和物である。
【0041】
別の実施形態によれば、組成物は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13およびR14が、Hであり;R10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択されるか、またはR10およびR11が、=Oである式IIで表される化合物を含む。
【0042】
関連する実施形態によれば、組成物に含まれる1または複数の式Iの化合物は、
シトロネラール(3,7−ジメチル−6−オクテン−1−アール)、
シトロネロール(3,7−ジメチルオクト−6−エン−1−オール)、
シトロネリルホルメート(6−オクテン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート)、
シトロネリルブチレート(ブタン酸,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル)、
シトロネリルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル,(2E)−)または薬学的に許容できるこれらの異性体、塩類、エステルもしくは溶媒和物である。
【0043】
本発明の組成物中に単独または組合わせて含有させることができるテルペン化合物の具体例には、ゲラニオール(2,6−オクタジエン−1−オール,3,7−ジメチル−,(2E)−)、シトロネロール(6−オクテン−1−オール,3,7−ジメチル−,(2E)−)、およびそれらの誘導体が含まれる。現在、これらの化合物を単独または組合わせて用いることで、陰性感覚症状を有効に治療することが示されている。
【0044】
式Iおよび式IIで表されるテルペン化合物は、神経組織の損傷による異常神経伝達により引き起こされるニューロパシーに起因する、不快かつ処置が困難な症状の治療に有用であることが判明している。本発明は、いずれかのクラスの芳香族テルペン化合物を用いて陰性感覚症状の治療方法に関する。用いられる化合物の幾つかは、天然のペラルゴニウム・グラベオレンス(Pelargonium graveolens Ait.)の精油中または他の植物原料から単離されてもよいし、合成されてもよい。特に、本発明は、陰性感覚症状の治療に用いることができるテルペン化合物のクラスと構造を開示している。
【0045】
精油は、様々な官能性側鎖を有する炭素環または炭素鎖の両方を含む様々な分子構造の芳香性化合物を含む複合混合物であることが知られている。炭素環または炭素鎖は2重結合を有していてもよいし、有さなくてもよい。典型的な植物精油のクロマトグラムは、200以上のオーダーの異なるピークを含みうる。植物精油は、テルペン類、セスキテルペン類、エステル類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、有機酸類、および種々のその他の化合物の複合混合物である。さらに、上記化合物の各クラスは、多くのサブクラスを含有する。例えば、テルペンの分類には、ヘミテルペン類、モノテルペン類、ジテルペン類、セスキテルペン類、トリテルペン類、テトラテルペン類、および炭素骨格の修飾または酸化により形成された関連テルペノイド類が含まれる。さらに、これらの化合物はいずれも、哺乳動物において広範囲の生理活性を有する可能性があり、局所的使用または経口投与をすると有害作用または毒性を示すこともある。このように植物精油は多種多様の化合物を含むため、化合物の幾つかは、神経伝達阻害作用を抑制したり、または神経伝達の興奮を促進したりする。このように植物精油には、様々の化合物が存在し、受容体チャネルの薬理学が極めて複雑であるため、どの化合物が、望ましい効果を有し、どの化合物が望ましくない効果を有するかは、当業者にとって明白ではない。
【0046】
したがって、例えば、精油蒸留物に関する従来の知見からは、精油蒸留物が、陰性感覚症状に対して効果を発揮するかは、当業者にとって明白ではなかった。このことは特に、特許文献8に、これらの化合物の使用によって陰性感覚症状(特許文献8では「痺れ」と称される)が引き起こされることが開示されていることからも明らかである。さらに、精油蒸留物中のどの化合物が、有効な効果を有するか、効果を有さないか、または陰性感覚症状をさらに悪化させるかは、当業者に明白ではなかった。どの化合物が有効であるかを単離して判定するためには、生きた哺乳類動物および神経組織の培養細胞の両方を対象とした広範な研究が必要である。
【0047】
さらに、陰性感覚症状の発現の機序および感覚症状軽減の機序が十分理解されていないため、どの化合物が陰性感覚症状の軽減に最も効果を有するか、どの化合物が陰性感覚症状を悪化しうるか、またはどの化合物が毒性を有するかについては、当業者とって自明ではない。したがって、精油に含まれる化合物の同定し、精製し、そして試験することによって陰性感覚症状の軽減の原因となっている化合物を解明し得ることは可能ではあるものの、自明ではない。また、文書化された多数の例では、薬用植物由来の活性薬剤化合物を解明できない。これらの試みが失敗した理由の1つは、天然由来の植物抽出物または全植物体に見られる化合物の異種混合物の生理学的効果が、化合物同士の相乗作用によってもたらされるということである。したがって、異種混合物を分画化し、1つまたは複数の異なる活性成分を解明するための一連の試みは、複合混合物の相乗作用が失われるために失敗に終わる。この現象は、本発明の非明確性を裏づけている。
【0048】
本発明の組成物および方法の開発において、陰性感覚症状に対して有効な効果を有するゼラニウム精油および/または他の天然および合成の芳香油源に含まれる活性成分を特定することを目標とし、in vitroおよびin vivo両方の方法を用いて広範な研究を実施した。ゼラニウム精油は様々な化合物を含み、それらの多くは知られているが、いくつかはまだ解明されていない。ゼラニウム精油中の1つまたは複数の活性成分を特定するために、天然由来のゼラニウム精油に存在する化合物を既知量含有する合成ブレンドを提供し、パッチクランプアッセイに供した(実施例1を参照)。次いで、ゼラニウム精油内に含有される個々の精製化合物をin vivoで試験した。
【0049】
【表1】

【0050】
何人かが陰性感覚症状を経験したことがあるヒトニューロパシー性疼痛患者の一群において、ゼラニウム精油と他の精油とのブレンド(表1)の効果を調べた。実施例4、5、6および7に示されるように、時には痛みの軽減を伴い、また時には伴わずに陰性感覚症状が軽減されることが確認された。また、陰性感覚症状を経験している患者群において、合成されたゲラニオールを使用すると、症状に改善(主観的報告)が確認された(実施例2および3を参照)。また、微細繊維試験では、これらの患者群における感覚機能の改善が示された。陰性感覚症状を患っているヒトの体の部位に、治療的有効量のゼラニウム精油ブレンドまたはゲラニオールを局所的に塗布した。塗布量は患者の罹患面積の大きさに依存させた。具体的には、投与量は1〜10滴の範囲であり、狭い罹患部位には1滴塗布し、広い罹患部位またはより重篤な疼痛症状を示している部位には10滴塗布した。塗布後、数分以内に典型的な陽性反応(positive response)が報告された。
【0051】
多くの患者は、天然ゼラニウム精油抽出物よりも合成ゲラニオールの効果を好んだ。これは、個々の合成化合物が天然ゼラニウム精油およびゼラニウム精油ブレンドよりもよりよい効果を提供することを示している。
【0052】
本発明の製薬組成物は標準的な周知の技法を用いて調製することができる。本発明の製薬組成物は、薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤を含まなくともよい。しかし、組成物の所望の特徴に応じて、このような希釈剤または賦形剤を組成物中に含有させてもよい。本明細書に用いられる「組成物」は、テルペン化合物のみを含有する製薬調製物を意味してもよい。
【0053】
本発明の組成物は、活性成分として、単離または精製されたテルペン化合物、例えば、1つまたは複数の式IまたはIIで表される化合物、または薬学的に許容できるその塩、エステルもしくは溶媒和物を用いて調製される。本発明では「溶媒和物」は、「水和物」を含む。本発明の組成物は、植物材料の蒸留物(天然油)そのものではない。しかし、本発明の合成組成物の調製に用いられるテルペン化合物は、植物材料から単離された1つまたは複数の化合物を含んでもよい。
【0054】
本発明の組成物は、多種多様な剤形で調製し、投与することができる。本発明の組成物は、懸濁液、ピル、ゲル、油、クリーム、パッチ、スプレーまたはエアゾールの形態でありうる。組成物は、経口投与、局所投与、鼻腔内送達、経皮投与に好適なように製剤化することができる。このような組成物を製造する方法を手短に後述するが、これらの方法に用いられる手法は標準的なものであり、当業者によく知られている。以下の剤形が、活性成分として、式IまたはIIで表される化合物、それらの塩、エステルもしくは溶媒和物、またはそれらの任意の組合わせを含むことは、当業者には明白である。
【0055】
本発明の化合物からの製薬組成物の調製では、薬学的に許容可能な担体は固体でも液体でもよい。固体の製剤としては、散剤、錠剤、ピル、カプセル剤、カシェ剤、座剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料として機能する1つまたは複数の物質であり得る。
【0056】
粉末剤においては、担体は、活性成分が分散し、かつ微細分割された固体である。
【0057】
錠剤においては、活性成分は必要な結合性を有する好適な比率の担体と混合され、所望の形体およびサイズに圧縮される。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。同様に、好適な担体には、カシェ剤および舐剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、ピル、カシェ剤および舐剤は、経口投与に好適な固体剤形として用いられる。
【0058】
坐薬を調製するには、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ワックスをまず溶融させ、活性成分をその中に攪拌などにより均一に分散させればよい。次いで、溶融した均一な混合物を簡便なサイズの型に注ぎ入れ、冷却させることによって固化させる。
【0059】
液体形態の製剤としては、液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水プロピレングリコール液剤が挙げられる。非経口の注射用液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液を用いて製剤化できる。
【0060】
経口使用に好適な水溶液剤は、活性成分を水中に溶解させ、所望の場合は好適な着色剤、香料、安定化剤および増粘剤を添加することにより調製することができる。
【0061】
好適な経口用の懸濁剤は、微細分割した活性成分を、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁化剤と共に、水中に分散させることによって作製することができる。
【0062】
また、使用直前に液体形態の製剤に変換させる経口投与用の固体形態製剤も挙げられる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液および乳液が挙げられる。これらの製剤は、活性成分の他に、着色剤、香料、安定化剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、および増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0063】
本発明の組成物の特に好ましい投与様式は、皮膚面へ局所的に塗布する様式である。このような組成物は、ローション、溶液、クリーム、軟膏または粉末の形態で局所的に塗布される。例えば、組成物を、ポリエチレングリコールまたは液体パラフィンの水性乳液からなるクリーム剤に含有させ製剤化してもよいし、または、必要な安定化剤および保存剤などと共に、1%〜10%の濃度で、白色ワックスまたは白色軟パラフィンの基剤からなる軟膏内に含有させ製剤化してもよい。局所的塗布用組成物は、結合剤、賦形剤、抗酸化剤および色素などの追加成分を含有してもよい。
【0064】
製剤は、単位剤形であることが好ましい。このような形態の製剤は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分化されている。単位剤形は、パッケージ化した製剤の形態でもよい。パッケージは、パックされたクリーム剤、ローション剤、軟膏剤、錠剤、カプセル剤、またはチューブ、バイアルまたはアンプル内の散剤などの個別の量の製剤を含有する。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、または舐剤自体でもよいし、適切な数のパッケージ形態におけるこれらのいずれかでもよい。
【0065】
単位用量製剤中の活性成分の量は、活性成分の具体的な適用および効力に応じて調整してもよい。しかし、用量は、患者の要件、治療している病態の重症度、および用いる化合物に応じて調整されてもよい。具体的な状況における適切な用量は、当業者によって決定されうる。一般に、治療は化合物の最適量より少ない用量で開始される。その後、その状況下で最適な効果が達成されるまで、少量ずつ用量を増加させる。必要に応じて、1日に必要な総用量を分割し、1日の間に何回かに分けて投与してもよい。
【0066】
本明細書に記載した本発明のより十分な理解を得るために、以下の実施例を記載する。当然のことながら、これらの実施例は単に例示を目的としたものである。したがって、以下の実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0067】
[実施例1:マウス海馬切片のパッチクランプ電気生理学的試験]
マウス海馬切片を用いて試験を行った。12時間の明条件(ZT 0〜12)および12時間の暗条件(ZT 12〜24)の環境下で育成された動物から、200〜400μMの冠状脳切片を採取した。具体的には、イソフルランで動物に麻酔し、動物から脳を素早く取り出し、取り出した脳を氷冷、酸素含有(O95%:CO5%)、重炭酸緩衝の人工脳脊髄液(ACSF)中に入れた。海馬を含有する脳組織の1cm塊をLeica VT1000Sミクロトーム(Leica Microsystems)の切断面に接着させ、冠状切片を調製した。記録チャンバーに移す前に、全ての切片をおよそ1時間かけて平衡化した。チャンバーに移した後、30℃、3ml/分の速度で酸素含有ACSFにより切片を連続的に灌流し、その後6〜12時間かけて全体的に記録を行った。ホウケイ酸ガラス(Garner Glass Co.)から作製されたパッチ微小電極(5〜8MΩ)に、120mMの酢酸K、40mMのHEPES、10mMのEGTA、6mMのMgCl、ナイスタチン(450μg/ml)またはグラミシジンB(5μg/ml)およびプルロン酸F127から構成されたKベースの内部パッチ液を充填した。
【0068】
穿孔パッチ記録技法を用いた(Korn & Horn、1989年)。また生存海馬ニューロンの視覚的標的化は、Leica DM LFSAスコープを使用し、赤外線差動干渉対照(Infrared Differential Interference Contrast)(IR−DIC)顕微鏡法を用いて行った。穿孔パッチ構成により、従来の全細胞記録に相当する細胞に対するアクセス抵抗が提供される。このようなアクセスは、通常ギガオームシールが形成された2〜15分後に得られる。Digidata 1322AによりPCコンピュータにインターフェースしたAxopatch 700Bパッチクランプ増幅器または解離DRGニューロンの調査のためのAxopatch 200B/Digidata 1322Aを装備したZeiss Axoscop 200倒立顕微鏡を備えた3つの異なるパッチ装置で、Pclamp 9.0およびAxoscope 9ソフトウェアを用いて記録を行った。
【0069】
試験される化合物を、潅流液中投与法によって切片に投与した。これによりイオンチャネルの興奮性および/または減衰ならびに誘発シナプス応答に及ぼす化合物の効果を調べた。DHおよび海馬の周知の線維通過経路に従って刺激用電極(同心または双極性)を切片内に入れた。
【0070】
皮質ニューロンにおける典型的な電流−電圧(I−V)関係を、図2A、2Bおよび2Cに示す。−110mVから−20mVの範囲において、一連の10mVレベルのステップ(250ms)に対する重畳反応が示されている。(A)は対照条件下、(B)はゲラニオールの存在下、および(C)は薬剤の洗浄後のものである。ゲラニオールの存在下で、膜電流の振幅の減少および作用電位の抑制が観察された。
【0071】
0.4nAの脱分極電流パルス後の皮質ニューロンの典型的な反応が図2D、2Eおよび2Fに示されている。(D)は対照条件下、(E)はゲラニオールの存在下、および(F)は回復後のものである。化合物の存在下で、作用電位の抑制が確認された。
【0072】
6つの皮質ニューロンの平均電流−電圧プロットが図1に示される。ゲラニオールの存在下で、膜電流が減少した(試験化合物番号4)。
【0073】
図3は、負の最大電圧ステップ(−110mV)後の、種々の天然由来のゼラニウム精油および純粋化合物の存在下での電流減少を各試験薬剤ごとに示す。サンプル1、2および6は天然由来のゼラニウム精油の例;サンプル3は合成組成物の例、サンプル4は純粋なゲラニオールの例、サンプル5は純粋なシトロネロールの例、およびサンプル4+5はゲラニオールとシトロネロールの50:50(容量)で組み合わせた例である。正味の電流は、同一電圧ステップに反応した、対照条件下と試験化合物の存在下との差を表す。試験化合物のうち、サンプル番号4(ゲラニオール)が最大の抑制をもたらした(対照と試験化合物との間の電流の差)ことが確認された。
【0074】
この実施例で提供されたデータは、試験した化合物および組成物が神経機能の異常に関連した障害の治療に有用であることを示唆している。
【0075】
[実施例2:症例試験]
DBは、耐糖能障害を有するが糖尿病ではない73歳の男性である。彼は、ライフスタイルを修正し、糖尿病を予防するための試験に参加した。彼のウェストは99cmであり、体重は86.4kgである。
【0076】
彼は、高血圧用に、ベンゼプリル(ACE阻害剤)およびフェロジピン(カルシウムチャネル遮断剤)を服用していた。彼はまた、過敏性腸症候群用に、アトロピンと共にヒオスシアミンおよびジフェノキシレートを服用していた。
【0077】
彼は、2008年7月3日に検査来院し、足裏の痺れを訴えた。ナイロン繊維によって感覚を検査すると、この患者はいずれの母指球にも繊維を感知できなかった。一方の母指球にゲラニオールを塗布した。およそ5分後、足をナイロン繊維で再検査した。処置されなかった足は依然として繊維の接触を認めることができなかった。ゲラニオールによって局所的に処置された足は、ナイロン繊維を感知することができた。
【0078】
[実施例3:症例試験]
GJは、両方の足に痺れのある特発性ニューロパシーを有する84歳の男性である。彼は身長が177.8cm、体重が72.2kg、BMIが23kg/mであった。彼はビオカーゼ、レボキシル、ジギテク、アロプリノール、ネキシウム、メトプロロール、クマジンおよびマルチビタミンを服用していた。
【0079】
彼は、2008年3月5日に初来院し、足裏の痺れを訴えた。彼はどちらの足裏にも感覚試験に用いるナイロン繊維を感知できなかった。彼の左足にゲラニオールが塗布され、5分後に感覚を再検査した。再検査すると、この患者はゲラニオールで処置した左足裏にナイロン繊維を感知できたが、ゲラニオールを塗布しなかった右足では感知できなかった。この患者は、1日おきに左足用にゲラニオールが投与された。彼は2週間後に再来院し、左足が2週間にわたって右足よりもより高い感覚を有している状態が続いていると述べた。
【0080】
[実施例4:症例試験]
JHは、主訴が偏頭痛である47歳の男性である。頭痛は一般にImitrex(スマトリプタン)で対処されていた。また、偏頭痛を対処するために、ゼラニウムを含有する天然精油のブレンド(表1)の塗布を始めた。この患者は、10年前のナイフ傷による右手の第二指(人指し指)の永続的な痺れを報告した。こめかみに精油を塗布するために人指し指を用いた後、10年ぶりに痺れが軽減され正常な感覚が復帰したと報告した。これは、本患者による予想外の効果であった。
【0081】
[実施例5:症例試験]
実験例5では、2型糖尿病および末梢ニューロパシーと診断され、1年間、足と足指に痛みと痺れのある65歳の白人女性を対象とした。彼女の糖尿病診断は5年未満前であり、週に数回の、痛み、チクチク感、および痺れの経験を報告した。数滴のゼラニウム精油ブレンド(表1)を足に塗布したところ、痛みは変わらなかったが、ほぼ直ちに足指の痺れが軽減したと報告した。彼女の言によると「足指に命がよみがえった」ようであり、感覚と固有感覚の回復を示している。彼女は局所用ゼラニウム精油ブレンドを再塗布し、感覚の回復している時間がだんだん長くなり、数回の塗布後、感覚は一日中持続した。
【0082】
[実施例6:症例試験]
実験例6では、10年間、1型糖尿病による足の痛みと痺れがあると報告している54歳のラテンアメリカ系男性を対象とした。彼は、毎日の痛みを4/10のレベルであると報告した。数滴のゼラニウム精油ブレンド(表1)を足に適用すると、約10分間のうちに痛みと痺れが完全に無くなり、数年ぶりに夜を通して眠ったと報告した。
【0083】
[実施例7:症例試験]
実験例7では、7年間の2型糖尿病により手に痛みと知覚麻痺がある62才の白人女性を対象とした。痛みは、1年前から始まったと報告されている。彼女は、両手に知覚麻痺があることを知らせ、2,3滴のゼラニウム精油ブレンド(表1)を両手に塗布した。彼女の痛みと知覚麻痺は、15分で完全に回復した。別の機会にこの処置を繰り返すと、再度痛みと知覚麻痺の完全回復が得られた。
【0084】
本明細書に記述された刊行物、特許、特許出願は全て、本発明に関係する当業者の技術レベルを示しており、個々の刊行物、特許または特許出願は、本明細書に参照として援用されている。
【0085】
本発明の範囲は、in vitro試験またはin vivo試験で提示された範囲、または提示された実施例の範囲ではなく、添付の請求項およびそれらの法的な等価物により判定すべきである。このように本発明は記載されているが、本発明が多くの方法で変更しうることは明白である。このような変更は、本発明の意図と範囲からの逸脱として見なされることなく、当業者に明白と考えられるこのような変更は全て、以下の請求項の範囲内に包含されることが意図されている。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのテルペン化合物または2以上のテルペン化合物の組合わせと、任意に1以上の薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤と、を含む陰性感覚症状(negative sensory phenomena)の治療用組成物。
【請求項2】
前記テルペン化合物は、テルペン、テルペノイド、または薬学的に許容できるそれらの塩、エステルもしくは溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記テルペノイドは、テルペノイドアルデヒド、テルペノイド酸、テルペノイドエステル、テルペノイドオキシドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記テルペン化合物は、ゲラニオール、シトロネロール、ゲラニアール、シトロネラール、リナロール、メントン、ローズオキシド、アルファ−テルピネオール、ネラール(シス3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール)、ネロール(シス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)、ゲラニルホルメート(2,6−オクタジエン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート,2E)−)、ゲラニルブチレート(ブタン酸,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル)、ゲラニルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル,(2E)−)、シトロネリルホルメート(6−オクテン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート)、シトロネリルブチレート(ブタン酸,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル)、シトロネリルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル,(2E)−)または薬学的に許容できるそれらの異性体、塩、エステルもしくは溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記テルペン化合物は、ゲラニオールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記テルペン化合物は、式Iまたは式IIで表される化合物、または薬学的に許容できるそれらの塩、エステルもしくは水和物であり、かつ
任意に1以上の薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】

(R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれH、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択され、ただし
およびR、RおよびR、RおよびR、またはR10およびR11のうちの1以上が、=Oでもよく、
前記アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびアリル基が、アリール、アミン、アミド、ハロゲン化物、ホスフェートまたはチオール類で任意に置換されている。)
【請求項7】
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR12が、Hであり、
10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択されるか、またはR10およびR11が=Oである式Iで表される化合物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13およびR14が、Hであり、
10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基およびC〜C20分枝状アリル基から選択されているか、またはR10およびR11が=Oである式IIで表される化合物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトの陰性感覚症状を治療するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
懸濁液、ピル、ゲル、油、クリーム、パッチ、スプレーまたはエアゾールの形態である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
経口投与、局所投与、鼻腔内送達、または経皮投与に適した、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記陰性感覚症状の原因が、ニューロパシーに起因する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ニューロパシーは、糖尿病性末梢ニューロパシー、帯状ヘルペス、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群、反射性交感神経性ジストロフィ、幻肢症候群、慢性疾患(多発性硬化症、HIVなど)、外傷(灼熱痛)、インピンジメント(例えば、坐骨神経痛、手根管など)、薬物曝露、毒性化学物質曝露、現感染症、過去の感染症、臓器機能障害、血管疾患、代謝疾患、癌、癌治療、自己免疫疾患、線維筋痛により引き起こされるかまたは突発性である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記陰性感覚症状は、軽触、ピン穿刺、振動、熱、冷たさまたは痛みのうちの少なくとも1つを感知する能力の低下および/または固有感覚の減少である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
対象哺乳動物の陰性感覚症状を治療するための、少なくとも1つのテルペン化合物または2以上のテルペン化合物の組合わせの使用。
【請求項16】
前記テルペン化合物が、テルペン、テルペノイド、または薬学的に許容できるそれらの異性体、塩、エステルもしくは溶媒和物である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記テルペノイドが、テルペノイドアルデヒド、テルペノイド酸、テルペノイドエステル、テルペノイドオキシドである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記テルペン化合物が、ゲラニオール、シトロネロール、ゲラニアール、シトロネラール、リナロール、メントン、ローズオキシド、アルファ−テルピネオール、ネラール(シス3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール)、ネロール(シス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)、ゲラニルホルメート(2,6−オクタジエン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート,2E)−)、ゲラニルブチレート(ブタン酸,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル)、ゲラニルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,(2E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルエステル,(2E)−)、シトロネリルホルメート(6−オクテン−1−オール,3,7−ジメチル−,ホルメート)、シトロネリルブチレート(ブタン酸,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル)、シトロネリルチグレート(2−ブタン酸,2−メチル−,3,7−ジメチル−6−オクテニルエステル,(2E)−)または薬学的に許容できるそれらの異性体、塩、エステルもしくは溶媒和物である、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記テルペン化合物が、ゲラニオールである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記テルペン化合物が、式Iまたは式IIで表される化合物、または薬学的に許容できるそれらの塩、エステルもしくは水和物であり、かつ
任意に1つまたは複数の薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤を含む、請求項15に記載の使用。
【化2】

(R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれH、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択され、ただし
およびR、RおよびR、RおよびR、またはR10およびR11のうちの1以上が、=Oでもよく、
前記アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびアリル基が、アリール、アミン、アミド、ハロゲン化物、ホスフェートまたはチオール類で任意に置換されている。)
【請求項21】
前記テルペン化合物は式Iで表される化合物であり、
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR12が、Hであり、R10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択されるか、またはR10およびR11が、=Oである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記テルペン化合物は式IIで表される化合物であり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13およびR14が、Hであり、R10および/またはR11が、H、OH、COOH、COOCH、CHOH、OCOH、C〜C20非分枝状アルキル基、C〜C20分枝状アルキル基、C〜C20非分枝状アルコキシ基、C〜C20分枝状アルコキシ基、C〜C20非分枝状アシルオキシ基、C〜C20分枝状アシルオキシ基、C〜C20非分枝状アリル基、C〜C20分枝状アリル基から選択されるか、またはR10およびR11が、=Oである、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記対象哺乳動物がヒトである、請求項15〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記テルペン化合物またはテルペン化合物の組合わせが、懸濁液、ピル、ゲル、油、クリーム、パッチ、スプレーまたはエアゾールの形態の組成物に含まれる、請求項15〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、経口投与、局所投与、鼻腔内送達、または経皮投与に適した、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記陰性感覚症状の原因が、ニューロパシーに起因する、請求項15〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記ニューロパシーが、糖尿病性末梢ニューロパシー、帯状ヘルペス、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群、反射性交感神経性ジストロフィ、幻肢症候群、慢性疾患(多発性硬化症、HIVなど)、外傷(灼熱痛)、インピンジメント(例えば、坐骨神経痛、手根管など)、薬物曝露、毒性化学物質曝露、現感染症、過去の感染症、臓器機能障害、血管疾患、代謝疾患、癌、癌治療、自己免疫疾患、線維筋痛により引き起こされるか、または突発性である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記陰性感覚症状が、軽触、ピン穿刺、振動、熱、冷たさまたは痛みのうちの少なくとも1つを感知する能力の低下および/または固有感覚の減少である、請求項15〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
対象哺乳動物の陰性感覚症状を治療する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物を前記対象哺乳動物に投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−530543(P2011−530543A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522356(P2011−522356)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001114
【国際公開番号】WO2010/017626
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511027149)ニューロクエスト インク (1)
【出願人】(511027862)ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステイト ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ (1)
【Fターム(参考)】