説明

感電体験装置と感電体験方法

【課題】人体に影響することなく安全に感電を体験できる感電体験装置と感電体験方法を提供すること。
【解決手段】正弦波インバータ22は、感電体験時間の間、人間接触部31に感電体験電圧を印加して人間に感電体験電流を流す。感電体験電流と感電体験時間は、入力部12により制御部11に設定する。制御部11は、設定された感電体験時間の間、設定された感電体験電流を流すように、正弦波インバータ22の感電体験電圧を制御する。感電体験中に人間接触部31に流れる電流Ihが、上限電流Iuを超えるとリレー25が作動して人間接触部31の給電回路を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人間に所定の大きさの電流を所定時間流して感電を体験する感電体験装置と感電体験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来博物館の展示用或いは学校の教材用として、電気体験装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
従来の電気体験装置は、室内灯、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、暖房機器、パソコン等の家電製品や屋内配線の過電流、漏電、短絡等の異常状態を模擬的に発生させて、見学者がそれらの異常状態を視覚、聴覚、嗅覚等で体験できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−191199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気体験装置は、感電の防止手段は設けてあるが、感電を体験できるようには構成されていない。即ち従来の電気体験装置は、感電を体験できないが、電気工事技術者等の訓練には感電の体験も必要である。
また、電気工事会社の中には、社員の安全研修の一環として、実際に感電を体験するコーナを設けている企業もある。しかしながら、このコーナは、企業の研修施設に固定されているため、社員は、そこへ行かないと体験できない。また、その体験も、各種危険体験の一環として設けてあるため、たんに、感触を体験するだけであって、感電時間や感電電流を種々設定できる構成にはなっていない。
本願発明は、その点に鑑み、人体に影響することなく安全に感電を体験できる感電体験装置と感電体験方法を提供することを目的とする。
また、本願発明の感電体験装置は、小型化して持ち運び可能な大きさ並びに簡便な操作方法とすることにより、小中学校の教材用として、或いは、工業高校、大学の理工学部系学生に対する実習・研修装置として、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の感電体験装置は、人間接触部、人間接触部に感電体験電圧を印加する電源部、その電源部を制御する制御部、制御部に感電体験電流と感電体験時間を設定する入力部を備え、制御部は、電源部から人間接触部に電圧を印加して感電体験者の人間抵抗を測定し、その測定した人間抵抗を用いて設定した感電体験電流を流すのに必要な感電体験電圧を算出することを特徴とする。
請求項2に記載の感電体験装置は、請求項1に記載の感電体験装置において、前記電源部は、正弦波インバータであることを特徴とする。
請求項3に記載の感電体験装置は、請求項1叉は請求項2に記載の感電体験装置において、前記制御部は、感電体験電流が設定した範囲を超えないように感電体験電圧を制御することを特徴とする。
請求項4に記載の感電体験装置は、請求項3に記載の感電体験装置において、感電体験電流が上限電流を超えたときはリレーが作動して前記人間接触部の給電回路を遮断することを特徴とする。
請求項5に記載の感電体験装置は、請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の感電体験装置において、当該装置が持ち運び可能な構成になっていることを特徴とする。
請求項6に記載の感電体験方法は、人間接触部、人間接触部に感電体験電圧を印加する電源部、その電源部を制御する制御部、制御部に感電体験電流と感電体験時間を設定する入力部を備えた感電体験装置において、制御部に種々の感電体験電流と感電体験時間を設定し、人間接触部に感電体験者を接触させ、電源部から人間接触部に電圧を印加して感電体験者の人間抵抗を測定し、その測定した人間抵抗を用いて設定した感電体験電流を流すのに必要な感電体験電圧を算出して人間接触部に印加することを特徴とする。
請求項7に記載の感電体験方法は、請求項6に記載の感電体験方法において、前記電源部は、正弦波インバータであることを特徴とする感電体験方法。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の感電体験装置は、感電体験電流と感電体験時間を設定してスタートボタンを押すだけで、簡単に感電を体験できる。そして本願発明の感電体験装置は、感電体験電流と感電体験時間を種々設定でき、かつそれらの組合せも変えられるから、いろいろな種類の感電を体験できる。
本願発明の感電体験装置は、感電体験中に人間接触部に流れる電流が設定した感電体験電流を超えないように制御し、かつ上限電流を超えたときは、人間接触部の給電回路を遮断するから、安全に感電を体験できる。
【0007】
また本願発明の感電体験装置は、感電体験電流を流す前に、感電体験者の人間抵抗を測定して感電体験電圧を算出するから、感電体験電流を設定通り正確に流すことができる。そして人間抵抗は、感電体験電流を流す回路と同じ回路を用いて測定するから、人間抵抗測定のための装置は必要でない。
また、本願発明の感電体験装置は、小型化して持ち運びが可能な大きさとすることにより、企業内の各支店、各種営業所等へ、適宜運ぶことができるので、いつでも、どこでも、使用可能である。さらには、小中学校の教材用として、あるいは、工業高校、大学の理工学部系学生に対する実習・研修装置としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係る感電体験装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に基づいて本願発明の実施例に係る感電体験装置を説明する。
【実施例】
【0010】
感電体験装置は、人間に電流を流す人間接触部31、人間接触部31に60Hz、50Hz等の正弦波電圧を印加する正弦波インバータ22、正弦波インバータ22を制御する制御部11、感電体験中に人間に流す電流(感電体験電流と呼ぶ)とその感電体験電流を流す時間(感電体験時間と呼ぶ)を制御部11に設定するタッチパネル等の入力部12等からなる。制御部11は、CPUからなる。ここで前記感電体験電流を流すのに必要な電圧(正弦波インバータ22の出力電圧)を感電体験電圧と呼ぶ。
【0011】
正弦波インバータ22には、商用電源(AC100V)から、スイッチSW1、変圧器T、電路遮断器ELB、整流平滑回路21を介して電力を供給する。変圧器Tは、商用電源と人間接触部31の電源部である正弦波インバータ22とを切り離して人間を保護する機能も有している。正弦波インバータ22は、リレー25によって作動するリレースイッチSW2、保護抵抗Rgを介して人間接触部31に電圧を印加する。
人間接触部31に流れる電流(人間に流れる電流)Ihは、電流センサ23により検出して比較回路24と制御部11へ供給する。比較回路24は、電流Ihと上限電流Iuを比較し、電流Ihが上限電流Iuを超えると、リレー25が作動してリレースイッチSW2が作動し、人間接触部31の給電回路を遮断する。上限電流Iuは、電流が人間に与える影響を勘案して10mAに設定してある。
【0012】
人間接触部31は、電極311,312からなり、両電極に例えば手のひらを接触させると、電気回路が形成されて人間(手のひら)に電流が流れる。したがってそのとき感電を体験できる。感電体験電流と感電体験時間は、入力部11により、夫々1,2,3,4,5mAと20,40,60,80,100msから選定して制御部11に設定する。制御部11は、設定された感電体験電流と感電体験時間が、例えば1mAと20msの場合、人間接触部31に流れる電流と流れる時間が1mAと20msになるように、正弦波インバータ22を制御する。
【0013】
制御部11に設定した感電体験電流、感電体験時間は、表示部13に表示される。また表示部13には、感電体験時に人間に流れる電流も表示する。
なお人間接触部31に感電体験電圧を印加する電源部は、直流電源でもよいが、人間は直流の感電に鈍いため交流の方がよいし、また感電体験電圧、感電体験電流や感電体験時間の制御には、正弦波インバータが適している。
【0014】
次に図1の感電体験装置の動作と感電体験方法について説明する。
(1)入力部12から制御部11に、感電体験電流、感電体験時間を夫々1mA,20msに設定する。
(2)人間接触部31に手のひらを接触させる。
(3)スタートボタン14を押す。
(4)制御部11は、まず人間接触部31の手のひらの抵抗(人間抵抗)を測定(算出)する。人間抵抗の測定には、まず正弦波インバータ22から人間接触部31に、予備的に人間が感じない程度の低い電圧(例えば5V)を印加して電流Ihを検出する。次にその電流Ihを用いて人間抵抗を算出する。
(5)制御部11は、算出した人間抵抗を用いて、感電体験電流1mAを流すのに必要な感電体験電圧を算出する。なお感電体験電圧は、最大60V程度である。
(6)制御部11は、その計算結果に基づいて、人間接触部31の手のひらに1mAの電流が、20msの間流れるように正弦波インバータ22を制御する。
(7)感電体験者は、手のひらに流れる電流により感電を体験する。
なお感電体験電流と感電体験時間は、1mAと20msを例に説明したが、それらは、任意に組合せることができる。
【0015】
人間抵抗は、感電体験中に手のひらに汗が出て抵抗が小さくなり、手のひらを流れる電流Ihが1mAを超えることがある。その場合制御部11は、電流Ihが1mAを超えないように正弦波インバータ22の感電体験電圧を制御する。
なお電流Ihが上限電流Iu(10mA)を超えると、前述したように、リレー25が作動しリレースイッチSW2が作動して人間接触部31の給電回路を遮断する。
【0016】
以上のように、本実施例の感電体験装置は、入力部12から制御部11に感電体験電流と感電体験時間を設定し、スタートボタン14を押すだけで、簡単に感電を体験できる。そして本実施例の感電体験装置は、感電体験電流と感電体験時間を種々設定でき、かつそれらの組合せも、例えば、小さい電流で長い間、大きい電流で短い間、或いは大きい電流で長い間等に変えることができるから、いろいろの種類の感電を体験することができる。
また本実施例の感電体験装置は、感電体験中に人間接触部31に流れる電流Ihが設定した感電体験電流を超えないように制御し、かつ上限電流Iu(10mA)を超えたときは、人間接触部31の給電回路を遮断するから、安全に感電を体験できる。
【0017】
また本実施例の感電体験装置は、感電体験電流を流す前に、感電体験者が感じない程度の低い電圧により感電体験者の人間抵抗を測定して感電体験電圧を算出するから、感電体験電流を設定通り正確に流すことができる。そして人間抵抗は、感電体験電流を流す回路と同じ回路を用いて測定できるから、人間抵抗測定用の特別の装置は必要でない。
また、本実施例の感電体験装置は、構成が簡単でAC100Vの商用電源を使用できるから、小型化して持ち運びが可能な大きさにすることができる。したがって本実施例の感電体験装置は、例えば企業内の各支店、各種営業所等へ搬送して、いつでも、どこでも、使用することができる。
【符号の説明】
【0018】
11 制御部
12 入力部
13 表示部
21 整流平滑回路
22 正弦波インバータ
23 電流センサ
24 比較回路
25 リレー
31 人間接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間接触部、人間接触部に感電体験電圧を印加する電源部、その電源部を制御する制御部、制御部に感電体験電流と感電体験時間を設定する入力部を備え、制御部は、電源部から人間接触部に電圧を印加して感電体験者の人間抵抗を測定し、その測定した人間抵抗を用いて設定した感電体験電流を流すのに必要な感電体験電圧を算出することを特徴とする感電体験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の感電体験装置において、前記電源部は、正弦波インバータであることを特徴とする感電体験装置。
【請求項3】
請求項1叉は請求項2に記載の感電体験装置において、前記制御部は、感電体験電流が設定した範囲を超えないように感電体験電圧を制御することを特徴とする感電体験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の感電体験装置において、感電体験電流が上限電流を超えたときはリレーが作動して前記人間接触部の給電回路を遮断することを特徴とする感電体験装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の感電体験装置において、当該装置が持ち運び可能な構成になっていることを特徴とする感電体験装置。
【請求項6】
人間接触部、人間接触部に感電体験電圧を印加する電源部、その電源部を制御する制御部、制御部に感電体験電流と感電体験時間を設定する入力部を備えた感電体験装置において、制御部に種々の感電体験電流と感電体験時間を設定し、人間接触部に感電体験者を接触させ、電源部から人間接触部に電圧を印加して感電体験者の人間抵抗を測定し、その測定した人間抵抗を用いて設定した感電体験電流を流すのに必要な感電体験電圧を算出して人間接触部に印加することを特徴とする感電体験方法。
【請求項7】
請求項6に記載の感電体験方法において、前記電源部は、正弦波インバータであることを特徴とする感電体験方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−2548(P2011−2548A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144052(P2009−144052)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(594056719)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(592026473)株式会社昭和電業社 (6)
【Fターム(参考)】