説明

慢性疲労症候群及び神経変性疾患の治療用組成物及び治療方法

本発明は、慢性疲労症候群及び神経変性疾患の治療用のα−MSHから作られる薬剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明分野]
本発明は、α―メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)から作られる医薬組成物に関する。
[発明の背景]
メラニン細胞刺激ホルモン(MSHと総称される)は、下垂体中葉の細胞によって製造されるペプチドホルモンの1種である。MSHは、皮膚及び毛髪のメラニン細胞によるメラニンの製造及び放出を促す(メラニン形成)。MSHはまた、視床下部の弓状核の神経細胞の亜集団によっても産生される。これらの神経細胞によって脳に放出されるMSHには、食欲を喚起し、性的興奮をもたらす効果がある。
【0002】
メラニン細胞刺激ホルモンは、メラノコルチンと呼ばれるグループに属している。メラノコルチンは、CNS及び様々な末梢組織に広範に発現する生物活性ペプチドである。これらのペプチドは、食物摂取量、エネルギー恒常性、免疫機能を含む重要な生理的機能の調節に関わっている。
【0003】
メラノコルチンは、一群の天然ペプチドを含み、その全てが前駆体分子プロオピオメラノコルチン(POMC)から得られる。POMCは、生物学的役割が不完全に線引きされている少なくとも8つの異なるペプチドを活性化させるポリホルモンである。四塩基性部位での分裂は、下垂体におけるPOMCの処理の重要な調整ステップである。下垂体では、POMCのLysLysArgArg部位での組織特異的分割により、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アルファ−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、ベータ−MSH、ガンマ−MSHのいずれかが製造される。従来、POMCは、下垂体細胞により単独で製造されると考えられていたが、POMCメッセンジャーRNA(mRNA)またはPOMC由来のペプチドは、視床下部の弓状核、脳幹の交連核、皮膚などの下垂体以外の組織で発現されることが明らかになった。脊髄においては、後角及びラミナXで、POMC由来のペプチドACTH及びα−MSHが検出されている。さらに、POMC由来のペプチドはまた、リンパ球、単球、ランゲルハンス細胞、上皮細胞でも検出された。
【0004】
α−MSHは、その色素細胞におけるメラニン形成制御における役割でよく知られている。しかしながら、最近の研究により、解熱剤、抗菌剤、抗炎症剤、免疫調節剤、性機能ペプチドの調整剤としての強力かつ広範囲の活動が証明された。
【0005】
各メラニン細胞刺激ホルモンは以下のアミノ酸配列を持つ。
アルファ−MSH:Ac−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH2
ベータ−MSH:Ala−Glu−Lys−Lys−Asp−Glu−Gly−Pro−Tyr−Arg−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Ser−Pro−Pro−Lys−Asp
ガンマ−MSH:Tyr−Val−Met−Gly−His−Phe−Arg−Trp−Asp−Arg−Phe−Gly
メラノコルチンは、特徴として7回膜貫通部位を持つGたんぱく質共役受容体に属する識別可能な一群の受容体に結合することで様々な生物学的効果を発揮する。これまでに5つのメラノコルチン受容体が識別されており(MC−1〜MC−5)、高度に保存されたアミノ酸相同性を備えた5つの別々の遺伝子を持つ生成物に対応している。それらの受容体の活性化により、アデニル酸シクラーゼを通して細胞内環状アデノシン一リン酸の上昇が導かれる。ACTHが5つ全てのメラノコルチン受容体を活性化させる一方で、α−MSHはMC−2受容体を除く全ての受容体を活性化する。MC−1受容体は、皮膚ケラチン生成細胞、樹状細胞、マクロファージ、内皮細胞、上皮細胞上で発現される。
【0006】
MC−3及びMC−4受容体は、中枢神経系(CNS)において豊富に発現され、摂食行動及びエネルギー恒常性の調整に極めて重要な役割を担っている。これらの受容体は、勃起機能制御に関わるいくつかの核に位置する。MC−3受容体の発現は、視床下部、視床、脳幹、皮質に主に見られるが、MC−4受容体はより広く分布し、皮質、視床、視床下部、脳幹を含む脳のほぼあらゆる領域で見つかる。
【0007】
ACTH及びα−MSHの性的興奮を引き起こす能力は、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、サルを含む様々な種で立証されている。数多くの報告で、低レベル(1〜10μg)のACTH及びα−MSHの脳室内投与によりペニス勃起が誘発されている。勃起に対するメラノコルチンの効果は、アンドロゲンに依存すると考えられる。
【0008】
皮膚は、α−MSHの生成及び分泌が最初に確認された下垂体以外の部位である。尋常性乾癬及び湿疹を含むいくつかの炎症性皮膚疾患において、α−MSHレベルの上昇が見られる。α−MSHの強力な抗炎症性は、遅延型過敏症及びハプテン特異的耐性のマウスモデルにおいて見られた。後者のモデルでは、予防治療及び治療の両方の計画にα−MSH誘発性ハプテン特異的耐性が見られた。
【0009】
皮膚に加え、気管支肺胞洗浄液の気道においても、ついで、アレルギー性気管支ぜんそく、α−MSH抑制アレルゲン特異的なIgE、IgG1、IgG2a Ab製造の動物モデルにおいてもα−MSHの製造及び機能的役割が実証された。
【0010】
さらに、アルファ−メラニン細胞刺激ホルモンは、血液を含まないかん流され分離されたラットの腎臓における虚血性腎損傷を改善し、炎症性大腸炎のラットモデルにおいて結腸損傷を縮小する。
[慢性疲労症候群]
慢性疲労症候群(CFS)は、消耗性及び複雑性疾患であり、安静によって改善されず、身体及び精神活動によって悪化する可能性のある強い疲労を特徴とする。CFSにかかった人は、ほとんどの場合、発症前よりかなり低いレベルの活動で機能する。これらの重要で決定的な特徴に加え、患者は、脱力感、筋肉痛、記憶障害、及び/または精神統一障害、不眠、24時間を越える労作後疲労を含む様々な非特異的症状を報告している。時には、CFSは長期にわたって持続する。CFSの原因は確認されておらず、特異的診断検査を利用できない。さらに、多くの病気が身体の自由を奪うほどの疲れを症状として示すので、CFSの診断を下す前に、他の既知で多くの場合治療可能な疾患を除外するよう注意が必要である。CFSはより頻繁に女性に起きるが、女性にのみ起きるわけではない。過去に活動的な大人が病気になるとCFSと診断されやすいが、CFSは幼児や特にティーンエイジャーを含むあらゆる年齢層で報告されている。
【0011】
基本的に、慢性疲労症候群の診断を受けるためには、患者は2つの判断基準を満足させる必要がある。
1.臨床診断により除外されるその他の既知の医学的症状を伴う重度の慢性疲労が6ヶ月以上続いていること、
2.同時に、以下のうちの4つ以上の症状があること:短期記憶または集中力の実質的障害;のどの痛み;リンパ節の圧痛;筋肉痛;腫れまたは赤みを伴わない多関節痛;新しい種類、パターンまたは程度の頭痛;疲れの取れない眠り;24時間を越える労作後全身倦怠感。
【0012】
以下の詳細な症状が、病気の連続して6ヶ月以上続くか繰り返されなければならず、疲労に先行してはならない。
・疲労:CFSにかかった人は、精神及び身体の両方に、深刻な圧倒的な疲労を経験する。その疲労は、激しい活動により悪化し、休息によって回復しない(あるいは完全に回復しない)。CFSの診断を受けるには、この疲労状態が6ヶ月間持続する必要がある。
【0013】
・痛み:CFSの痛みは、筋肉痛、関節痛(関節の腫れまたは赤みを伴わず、一時的なこともある)、頭痛(特に、新しいタイプ、程度または持続)、リンパ節痛、のどの痛み、腹痛(しばしば過敏性腸症候群として)が含まれる。患者はまた、骨、眼、睾丸痛、神経痛、痛みを伴う皮膚過敏を報告している。胸の痛みは、研究者により、さまざまに微小血管障害または心筋症に帰されており、多くの患者は、痛みを伴う頻脈を報告している。
【0014】
・認知的問題:CFSにかかった人は、物忘れ、混同、思考困難、集中困難、“精神疲労”または“頭にもやがかかった状態”を経験する。さらなる兆候が経験される可能性があり、2003年カナダ定義では、これらの兆候には失語症、失認、認知に関わるボディマップの喪失が含まれる。
【0015】
・過敏症:CFSにかかった人は、大抵、光、音、いくつかの化学物質及び食品に敏感になる。多くのCFS患者が、食品、匂い、化学物質に対するアレルギータイプの過敏性の増加を報告し、多くはまた、薬品に対する過敏性を報告して、治療を複雑にしている。もともとアレルギー、ぜんそく、似たような症状があった患者は、たいていの場合、症状の悪化を報告している。感覚的な過負荷が患者により共通して報告されており、その結果、疲労の増加や偏頭痛または発作を引き起こしている。
【0016】
・不十分な体温調節:CFSにかかった人は、しばしば暑すぎると感じたり寒すぎると感じたりすることが報告されており、これはおそらく体温調節を行う視床下部との関わりによるものと考えられている。多くのCFS患者が、頻繁に微熱を出したり、または、測定可能な熱を出さない熱様症状(汗をかく、暑すぎるまたは寒すぎると感じる、など)を報告している。
【0017】
・睡眠障害:“疲れの取れない眠り”及び休息はCFSの顕著な特徴であり、不眠症も共通している。睡眠スケジュールを維持することは多くの患者にとって非常に難しい。鮮明で“熱狂的な”夢はCFSにかかった多くの人々の症状であり、乱れた睡眠パターンを悪化させている。患者は、健康な人と違い、運動は不眠及び疲れの取れない眠りの症状を同様に悪化させると報告している。
【0018】
・心理学的/精神医学的症状:情緒不安定、緊張、憂鬱、イライラ、さらに、時として奇妙な感情の“平坦化”(おそらく疲労による)がCFS患者に現れる。これらの症状の多くは、直接CFS機構により引き起こされ、あるいは、時には、その症候群により生成される2次的な症状である可能性がある。なぜなら、多くの慢性疼痛または病の患者もまた同様な精神医学的問題を示すからである。精神医学的症状があったCFS患者は、これらの症状がCFSの発症により悪化していると報告するかもしれない。精神医学的症状の治療だけでは、CFSの身体的症状は回復されず、これは、その病気が本質的に心理的なものでないことを示している。
【0019】
・自律神経システムとホルモンの障害:
○CFSにかかった人は、多くの場合、自律神経システムに異常があり、特に素早く立ち上がったときに、血液量の減少、起立不耐症、めまい、立ちくらみなどを経験する。
【0020】
○ホルモン異常には、バソプレッシン媒介の異常代謝及び異常に低いテストステロンレベル、成長ホルモン及びその他の重要なホルモンが含まれる。
CFSにかかった多くの人々は、その病気は突然、猛烈に始まると報告している。いくらかの人々は、初めてその病気にかかった特定の日付あるいは時間さえも思い出せる。
【0021】
CFSの最もありふれた目に見える様相の1つは、いわゆる“労作後全身倦怠感”である。CFSにかかった人が、限界を超えて(限界は日によって変わる可能性がある)努力すると、症状が悪化する。一生懸命努力するほど、そしてそれが長く続くほど、症状はその後悪化し、回復するのにかかる時間も長くなる。
【0022】
CFSにかかった人は、数ヵ月後、あるいは数年後に改善するかもしれないが、全く改善しない可能性もある。CFS患者は、ある一定レベルの健康で変動しない状態に至る可能性もあるし、次第に衰弱する可能性もある。多くの場合、時間と共に症状が変わり、周期も不規則になる。特にストレスの多い人生の出来事あるいはさらなる病気後によく再発する。平均的CFS患者は、適度に深刻な影響を受け、一生その状態に留まることが予想される。患者がその病気から本当に完全に‘回復’するのかどうか、あるいは以前の活動レベルを取り戻すに十分な程、単純に元気になるかどうかはわからない。
[CFSの治療]
・CFSには既知の治療法がないので、治療は、症状の軽減と機能の改善に向けられる。通常、薬物及び非薬物療法が推奨される。
【0023】
・あらゆるCFS患者を救う単一の療法は存在しない。
・睡眠、痛み、その他の特定の症状を治療するために使用される薬物療法に加えて、過剰な努力の予防を含む生活様式の変更、ストレスの軽減、食事制限、軽いストレッチ、栄養剤が、しばしば推奨される。
【0024】
・注意深く監督された身体療法もまたCFSの治療の一部であるかもしれない。しかしながら、過度に熱心な身体活動により症状が悪化することもある。運動及び活動管理に対するごく穏やかなアプローチが、過度の活動を避け、体調不良を防ぐために推奨される。
【0025】
・医療専門家は、様々な理由によりCFSの診断を患者に下すのを躊躇するであろうが、適切で正確な診断を受けて治療及びさらなる評価を進めることは重要である。
・診断及び治療の遅れは、長期のさらなる不良転帰と関連すると考えられる。例えば、CDCの研究は、CFSにかかったのが2年以下の患者はよくなりやすいことを示した。早い干渉がこのより好ましい結果に起因するかどうかはわからないが、診断前に病気であった期間が長ければ長いほど、病気の進行はより複雑であるように見える。
[発明の詳細な説明]
本発明は、遊離酸であるペプチドα−MSHあるいはその薬学的に許容される塩の利用に関し、慢性疲労症候群の治療用薬剤の製造のために、配列Ac−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH2を含んでいる。
【0026】
本発明はまた、α−MSH及び薬学的に許容されるキャリヤを含む物質の医薬組成物を含んでいる。薬学的に許容されるキャリヤは、緩衝水キャリヤ、及び、好ましくは塩類あるいはクエン酸塩緩衝キャリヤであってもよい。
【0027】
α−MSHまたは医薬組成物は、従来技術で知られるどんな手段で投与されてもよく、注射による投与、粘膜を介した投与、口腔投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与を含む。好ましい実施例において、投与は、塩またはクエン酸塩緩衝液であってもよい水性緩衝液を含む定量の製剤の経鼻投与によるもので、超音波ネブライザにより供給される。
【0028】
本発明の第1の目的は、α−MSHを使用して、慢性疲労症候群の治療用の薬剤を製造することである。
本発明の第1の利点は、有害な副作用を引き起こさない投与量で効き目があることである。
【0029】
本発明の別の目的は、慢性疲労症候群の治療用のα−MSH薬剤を提供することである。α−MSH薬剤は、低投与量で効き目が増加するため、従来の静脈、皮下、筋肉注射以外の、超音波ネブライザによる吸入または鼻腔供給システム及び粘膜供給システムを含むがこれらに限定されない供給システムにより投与されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ペプチドα−MSHは、固相手段によって合成され、HPLCによって96%より高い純度に精製され、水中では澄んだ無色の溶液である白い粉末となる。
通常、α−MSHは、固相合成により合成され、従来から知られる方法によって精製されてもよい。さまざまな樹脂及び試薬を使用した数多くのよく知られた手順のどれを使ってα−MSHを調製してもよい。
【0031】
α−MSHは、薬学的に許容される塩の形状であってもよい。アルファMSHの酸添加塩は、ペプチド及び、塩化水素、臭化水素酸、硫黄、リン、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸あるいはメタンスルホン酸などの過剰の酸から適当な溶媒中に作製される。
【0032】
活性成分の化学反応度、活性及び非活性成分間の潜在的相互作用、製造工程、投薬形態、容器密封方式、出荷時の環境条件、保管、取り扱い、製造から使用までの時間の長さを含む多くの要因が、薬品の安定性に影響する。薬品の安定性は、製剤の物理的安定性だけでなく化学的安定性によっても決定される。熱や光を含む物理的要因は、化学反応を開始または加速させる可能性がある。
【0033】
製剤の最適な物理的安定性は、少なくとも3つの主な理由により非常に重要である。第1に、薬品は、患者に投与される際、新鮮、上品、専門的に見えなくてはならない。はっきりしない色の変化などの外見の変化は、患者または消費者に製品に対する信頼性を失わせる。第2に、いくつかの製品は複数回投与容器に分配されるので、活性成分の投与量が時間をかけて確実に均一になるようにしなければならない。濁った溶液または不安定な乳剤は、投与量パターンを不均一にする。第3に、活性成分は、その調剤の期待される在庫の有効期間中、患者に入手可能でなければならない。製品が不活性あるいは所望しない形状に分解すると、患者が薬剤を入手できなくなる。
【0034】
薬品の安定性は、したがって、特定の製剤の、物理的、化学的、微生物学的、治療的、毒物学的な仕様に留まる能力として規定されてもよい。
安定した溶液は、元のままの明度、色彩、匂いをその在庫期間中ずっと保つ。溶液の明度を保持することは物理的安定性を維持するにあたって主たる関心事である。
【0035】
溶液は、4℃〜約37℃ぐらいの比較的広い温度範囲で、澄んだ状態でいる必要がある。より低い範囲では、成分が、その温度では溶解度が低くなるために沈殿してしまう可能性があり、より高い温度では、同質性が、ガラス容器又はゴム密封容器からの抽出物により破壊される可能性がある。したがって、活性医薬成分の溶液は、循環温度状態に対処できなければならない。同様に、製剤はこの温度範囲の間中その色彩を保持しなければならず、その匂いも安定して維持する必要がある。
【0036】
少量のペプチドは通常不安定で、水溶液中では劣化しやすい。この点で、アルファMSHの効能がそのレッテル通りの90%より少なくなると、患者への投与に適しているとはもはや考えられない。
【0037】
さまざまなタイプの糖、界面活性剤、アミノ酸及び脂肪酸が、タンパク質及びペプチド製品を劣化させずに安定化させるために、単一あるいは組み合わせて使用されている。ワング(Wang)及びハンソン(Hanson)によるパレンテラル サイエンス アンド テクノロジー サプリメント誌(J.Parenteral Science and Technology Supplement)には、タンパク質及びペプチドの非経口製剤が記載されている。緩衝剤、防腐剤、等張剤、界面活性剤などの賦形剤の例は、マニング等(Manning et al.)による薬学研究第6巻(6 Pharmaceutical Research),1989年、ワング(Wang)及びコワク(Kowak)によるパレンテラル ドラッグ アソシエーション第34巻(34 J.Parenteral Drug Association) 452頁,1980年、エービス等(Avis et al.)による薬の剤形(Pharmacuetical Dosage Forms):パレンテラル メディケーションズ(Parenteral Medications),第1巻,1992年に記載されている。
【0038】
対象に投与するのに適した薬剤の開発は複雑であることが理解される。当技術分野では、単一あるいは複数の投与量を提供し冷蔵された際及び室温で十分な安定性を持つアルファMSHの薬剤に対するニーズが存在している。さらに、当技術分野では、そのようなペプチドの物理的及び化学的劣化を最小限にする適当な容器/密封方式で梱包された液体薬剤に対するニーズが存在している。
【0039】
緩衝剤、緩衝系、緩衝溶液、緩衝された溶液という用語は、水素イオン濃度あるいはpHとの関連で使用される場合には、酸またはアルカリを添加した際に、あるいは溶媒で希釈した際に、pHの変化に抵抗するシステム、特に水溶液、の能力について言及している。酸及び塩基を添加してもpHがあまり変化しないという緩衝液の特徴は、弱酸及び弱酸塩、あるいは弱塩基及び弱塩基塩の存在によるものである。前者のシステムの例は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムである。添加したヒドロニウムあるいはヒドロキシルイオンの量が緩衝系の中和能力を超えない場合、pHの変化はわずかである。
【0040】
緩衝系は、ギ酸塩(pKa=3.75)、乳酸塩(pKa=3.86)、安息香酸(pKa=4.2)、シュウ酸塩(pKa=4.29)、フマル酸エステル塩(pKa=4.38)、アニリン(pKa=4.63)、酢酸緩衝剤(pKa=4.76)、クエン酸塩緩衝剤(pKa2=4.76、pKa3=6.4)、グルタミン酸塩緩衝剤(pKa=4.3)、リン酸塩緩衝剤(pKa=7.20)、コハク酸エステル塩(pKa1=4.93、pKa2=5.62)、ピリジン(pKa=5.23)、フタル酸エステル塩(pKa=5.41)、ヒスチジン(pKa=6.04)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸;pKa=6.15)、マレイン酸(pKa=6.26)、カコジル酸塩(ジメチルアルシン酸、pKa=6.27)、炭酸(pKa=6.35)、ADA(N−2−アセトアミド)イミノアセト酢酸;pKa=6.62;PIPES(4−ピペラジンビス−エタンスルホン酸;ビス−トリス−プロパン(1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン、pKa=6.80)pKa=6.80)、エチレンジアミン(pKa=6.85)、ACES 2−[(2−アミノ−2−オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸;pKa=6.9)、イミダゾール(pKa=6.95)、MOPS (3−(N−モルヒネ)−プロパンスルホン酸;pKa=7.20)、ジエチルマロン酸(pKa=7.2)、TES(2−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノエタンスルホン酸;pKa=7.50)及びHEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸;pKa=7.55)緩衝剤あるいはpKa3.8〜7.7で製剤のpHを4.8〜6.7に維持可能なその他の緩衝剤、からなるグループから選択されることができる。
【0041】
最も好ましい緩衝剤は薬学的用途に適した緩衝剤、例えば、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、フマル酸エステル塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、フタル酸エステル塩、コハク酸エステル塩緩衝剤など、患者への投与に適した緩衝剤である。また本発明においては、塩化ナトリウムが所望のpHを維持し、その結果、緩衝成分として働くように使用されてもよい。
【0042】
本製剤には安定剤が含まれていてもよいが、重要なことは、安定剤が必要ないことである。しかしながら、もし含むとすれば、本発明の実施に有用な安定剤は、炭水化物または多価アルコールまたはキレート剤である。本発明の実施に有用な適当な炭水化物または多価アルコールは、医薬組成物の約1〜10%(w/v)である。適当なキレート剤は、薬剤のほぼ0.04〜0.2%である。
【0043】
多価アルコール及び炭水化物は同じ化学的特徴、すなわち、ペプチド及びタンパク質を安定化させる役割を果たすCHOH−CHOH−を持つ。多価アルコールは、分子量200、400、1450、3350、4000、6000、8000のさまざまなポリエチレングリコール(PEGs)だけでなく、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、イノシトール、キシリトール、及びポリプロピレン/エチレングリコールコポリマーのような化合物を含む。これらの分子は、直鎖分子である。マンノース、リボース、トレハロース、マルトースイノシトール、エリトリトール、ラクトースなどの炭水化物は、ケトまたはアルデヒド基を含むことができる循環分子である。これら2種類の化合物は、上昇温度及び凍結融解または凍結乾燥処理により起きる変性及び劣化に対しペプチド及びタンパク質を安定化するのに有効であることが証明されている。
【0044】
実際に使用されるキレート剤は、EDTA(エチレン−ジアミン四酢酸)及びその派生物である。EDTAは薬品や化粧品に使用される安定剤で、所定の化学式の中の成分が水中に存在する微量元素(特にミネラル)やその他の成分と結びついて、テクスチャ、匂いなどの望まない製品の変化及び一貫性の問題を引き起こすのを防いでいる。特に、微量の重金属がペプチド及びタンパク質の自然加水分解を加速することがわかっている。ソルビトール及びマンニトールが、好ましい多価アルコールである。多価アルコールの別の有用な特徴は、本願に記載した凍結乾燥された製剤の弾力性の維持である。
【0045】
米国薬局方(USP)は、静菌性及び静真菌性濃度の抗菌剤は複数回投与容器に含まれる調剤に添加されなければならないと述べている。抗菌剤は、使用時に適度な濃度で存在して、皮下注射針及び注射器で中身の一部を取り出すあるいはペン注入器などのその他の送達用の侵襲手段を使用する間、調剤に偶然に持ち込まれる微生物の増殖を防ぐ必要がある。抗菌剤はその化学式の他のすべての構成要素と確実に両立できるように評価され、その活動は、ある製剤で有効である特定の薬品が別の製剤では有効でないことを確実にするために化学式全体で評価されるべきである。特定の薬品が、ある製剤では有効で別の製剤では有効でないのはまれなことではない。
【0046】
薬学的常識では、保存料は、微生物の成長を防ぐまたは抑制する物質であり、この目的で、微生物により生じる腐敗を避けるために薬剤に添加されてもよい。保存料の量は多くないにも関わらず、ペプチドの全体的な安定性に影響を与える可能性があるので、保存料の選択でさえも難しい。
本発明の実施において使用される保存料は、0.005〜1%(w/v)の範囲である一方、各保存料の好ましい範囲は、単独でまたは他との組み合わせで、ベンジルアルコール(0.2−1%)、あるいはm−クレゾール(0.1−0.3%)、あるいはフェノール(0.1−0.8%)、あるいはメチル(0.05−0.25%)とエチルまたはプロピルまたはブチル(0.005%−00.3%)パラベンとの組み合わせである。
【0047】
α−MSHは、液剤の状態ではガラス容器のガラスに吸収される傾向があるため、界面活性剤によりさらに薬剤を安定化させることができる。界面活性剤はしばしば、親水性破壊及び塩橋分離の両方によって、タンパク質の変性を引き起こす。比較的低濃度の界面活性剤は、界面活性剤部分とタンパク質上の反応部位との間の強い相互作用により、強力な変性活動を発揮する。しかしながら、この相互作用を賢明に使用することで、界面のあるいは表面の変性及び吸収に対して、ペプチド及びタンパク質を安定化させることができる。ペプチドをさらに安定化することができる界面活性剤が、全薬剤の約0.001〜0.3%(w/v)の範囲で選択的に存在し、ポリソルベート80(すなわち、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;トゥイーン80)、CHAPS(登録商標)(すなわち、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]1−プロパンスルホナート)、Brij(登録商標)(例えば、(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)であるBrij35)、ポロクサマー、または別の非イオン活性剤を含んでいてもよい。
【0048】
本発明のペプチド薬剤には他の成分が存在していてもよい。そのような追加の成分には、湿潤剤、乳化剤、充填剤、弾力調整剤、金属イオン、油性賦形剤、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン)及び両性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシン、ヒスチジンなどのアミノ酸)が含まれてもよい。このような追加の成分は、もちろん、本発明の薬剤の全体的な安定性に不利に影響してはならない。
【0049】
非経口薬物及び吸入のための薬物の最も重要な賦形剤は水である。吸入投与に適した品質の水を蒸留または逆浸透によって用意しなければならない。これらの手段によってのみ、さまざまな液体、ガス、固体を汚染する物質を水から適切に分離することが可能である。注射用の水は、本発明の薬剤に使用される好ましい水性賦形剤である。
【0050】
容器もまた、吸入又は注射の薬剤の不可欠な部分であり、特に液体が水性の場合、完全に溶解しないあるいは保持する液体に何らかの方法で影響を与えない容器はないので、一構成要素と見なしてもよい。したがって、吸入または非経口薬剤のための容器の選択には、溶液だけでなく容器の組成と、それが対象となる取り扱いを考慮しなければならない。ペプチドのガラス瓶のガラス表面への吸収は、例えばFIOLAX(登録商標)o.c.−Klarガラス(Schott、ドイツ)、Wheaton−33(登録商標)低抽出可能なホウケイ酸塩ガラス(Wheaton Glas Co.、米国)あるいはCorning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740(Corning Inc.、米国)のホウケイ酸塩ガラスの使用により最小化できる。他の使用可能なガラスタイプ、例えば、無色ガラス、加水分解クラスIプラス;DIN ISO8362(Schott、St.Gallen、スイス)による6Rは、ASTM(米国材料試験協会)、EP(ヨーロッパ薬局方)及びUSP(米国薬局方)のタイプIホウケイ酸塩ガラスの基準を満たすはずである。例えば、アルファMSHの生物学的及び化学的特性は、5%のマンニトール及び0.02%のトゥイーン80の存在下で最終濃度が0.033mg/ml及び2mg/mlのアルファMSHにすることでFIOLAX(登録商標)o.c.−Klarガラス瓶で形成及び凍結乾燥により安定化される。
【0051】
テフロンコートされたゴム栓20mm、FM259/0 ダークグレー(Ph.Eur.タイプI)(Helvoet Pharma、Alken、ベルギー)または赤色注射ゴム栓20mm V9034(Helvoet Pharma、Alken、ベルギー)または同等の栓などのガラス瓶の栓が、吸入または注射用薬剤の密閉容器として使用できる。
【0052】
本発明のペプチド薬剤の開発には、どんな殺菌処理を使用してもよい。典型的な殺菌処理には、ろ過、蒸気(湿式加熱)、乾式加熱、ガス(例えば、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、二酸化塩素、酸化プロピレン、ベータプロピオラクトン、オゾン、クロロピクリン、過酢酸臭化メチルなど)、放射露光、無菌処理が含まれる。本発明の実施において、ろ過は好ましい殺菌方法である。除菌は、0.22μmフィルタを介したろ過を含む。ろ過後、溶液は上述したような適当なガラス瓶につめられる。
【0053】
本発明のα−MSH製剤はまた凍結乾燥(凍結乾燥)されていてもよい。凍結乾燥された製品は、使用前に元に戻すことができる。
本発明の製剤は、吸入または経鼻投与を対象としているのが好ましい。その他の可能な投与経路としては、筋肉内、静脈内、海綿体、皮下、皮内、関節内、髄腔内、粘膜などが挙げられる。
【0054】
本発明には、以下のステップを含む、α−MSHを含む可溶性医薬組成物の製造処理及び製造方法が記載されている。
1.薬学的に有効な量のα−MSHと少なくとも1つの安定剤とを欠く場合に、pH値を4.6〜6.9に維持できる緩衝系の生成
2.そのような緩衝剤への、薬学的に有効な量のα−MSHと少なくとも1つの安定剤との添加。
【0055】
緩衝剤が水性、または大部分水性緩衝剤であるのが好ましい。“大部分水性”というのは、水性緩衝剤の体積当たり15%まで、好ましくは10%まで、有機溶剤を添加することができることを意味する。適当な有機溶剤は、エタノール及び/またはイソプロパノールである。さらに、アルファMSHを含む溶液に少なくとも1つの安定剤を添加するのが有利であることがわかった。特に有利な安定剤には、EDTA及び/またはマンニトールまたはソルビトールが含まれる。
[投与経路]
α−MSHは、錠剤、カプセル、カプレット、懸濁液、粉末、凍結乾燥調剤、坐薬、点眼液、貼り薬、経口可溶製剤、スプレー、エアロゾルなどを含むがそれらに限定されない従来技術で知られているどんな手段により形成されてもよく、緩衝剤、結合剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤、その他の従来技術で知られる薬剤と混合形成されてもよい。一般的に、α−MSHが細胞の表皮層を通過して導入される投与経路であればどんな経路で利用されてよい。投与手段には、粘膜を介した投与、口腔投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与などが含まれてもよい。慢性疲労症候群の治療のための投与量は、前記手段のいずれかまたは従来技術で知られたその他の手段による、患者の生活の質を改善するのに十分な投与量である。
【0056】
一般的に、患者に投与されるα−MSHの実際の量は、投与方法及び使用される製剤によって、かなり広い範囲で変動する。
[経鼻あるいは肺内投与]
“経鼻投与”は、あらゆる形式のα−MSHの鼻腔内投与を意味する。α−MSHは、生理食塩水、クエン酸塩またはその他の一般的な賦形剤または防腐剤を含む溶液などの水溶液の形であってもよい。それぞれのアエロゾルが、超音波ネブライザによって製造され、投与されたα−MSHが乾燥または粉末状製剤でもあるのが好ましい。
【0057】
別の実施例では、α−MSHは、肺に直接投与されてもよい。肺内投与は、呼気の間に患者により作動されて本発明のペプチドの定量ボーラスの自己投与を可能にする装置である定量吸入器によって行われてもよい。
【0058】
α−MSHは、薬物の効果的な鼻吸収を増大させるさまざまな薬剤のいずれと共に形成されてもよい。これらの薬剤は、粘膜に許容できない損害を与えることなく鼻吸収を増大させなければならない。米国特許番号5,693,608、5,977,070、5,908,825は特に、吸収促進剤を含む、使用されてもよい数多くの医薬組成物を教示しており、前述のそれぞれの教示及びその中で引用される全ての参照文献及び特許文献は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0059】
水溶液中で、α−MSHは、通常約pH4〜約pH7の、生理的に許容可能であればいずれのpHであってもよい、生理食塩水、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩またはその他の緩衝剤によって適切に中和されてもよい。リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水及び酢酸塩の緩衝液など、緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。生理食塩水の場合、0.9%の生理食塩溶液を使用してもよい。酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などの場合には、50mM溶液を使用してもよい。バクテリアやその他の微生物増殖を防ぐあるいは制限するために、緩衝剤に加えて、適当な防腐剤を使用してもよい。使用されてもよい防腐剤の1つは、0.05塩化ベンザルコニウムである。
【0060】
α−MSHを乾燥した粒子状にすることも可能であると共に考えられる。好ましい実施例において、粒子は、約0.5〜6.0マイクロメータであり、粒子が肺の表面に落ち着くと共に吐き出されないのに十分な大きさであるが、肺に到着する前に気道の表面に堆積しない程度に小さい。乾燥粒状微小粒子を形成するのに、マイクロ製粉、スプレー乾燥、凍結乾燥が後に続く急速冷凍アエロゾルを含むがそれらに限定されないさまざまな異なる技術のいずれを用いてもよい。微小粒子により、ペプチドは肺深くに堆積され、それにより迅速かつ効率的に血流に吸収される。さらに、経皮、経鼻、経口粘膜送達経路の場合、時としてそうであるように、この方法だと浸透促進剤が不要となる。推進剤ベースのアエロゾル、ネブライザ、単回投与乾燥粉末吸入器、複数回投与乾燥粉末吸入器を含む、さまざまな吸入器のうちのどれを使用してもよい。現在使用されている一般的な装置には、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患などの治療のための薬剤を届けるために使用される定量吸入器が含まれる。好ましい装置には、常に約6.0.mu.mより小さい粒子サイズの細かい粉末の雲またはアエロゾルを形成するように構成された乾燥粉末吸入器が含まれる。現在使用されている乾燥粉末吸入器の1つのタイプは、GlaxoのRotahaler.TM.であり、管に1回分の乾燥粉末を調合し、粉末の吸入のために患者の吸引力を用いる。その他のより進んだ好ましい乾燥粉末吸入器が開発されているあるいは開発中であり、推進剤などが含まれる。
【0061】
平均寸法分布を含む微粒子サイズは、作成方法によって制御されてもよい。マイクロ製粉では、製粉ヘッドのサイズ、回転子の速度、処理時間などが微粒子サイズを制御する。スプレー乾燥では、ノズルサイズ、流量、乾燥機熱などが微粒子サイズを制御する。凍結乾燥が後に続く急速冷凍アエロゾルによる作成では、ノズルサイズ、流量、アエロゾル化された溶液の濃度などが微粒子サイズを制御する。これらのパラメータなどは微粒子サイズを制御するのに使用されてもよい。
【0062】
ある好ましい実施例において、1回分の乾燥粉末を分散させて細かい粉末の“雲”を作る圧電性結晶を備えた乾燥粉末吸入器が使用される。粉末雲が一旦生成されると、粉末雲上の電気静的に充電されためっきが薬物を気流に乗せる。利用者は比較的軽く一息吸い込むだけで粉末を吸入できる。この装置は呼吸により活性化されてもよく、吸入の始まりに際して電子部品を作動させる流量センサを使用し、これにより、活性化と使用者の呼吸リズムとの調整の必要を排除している。
【0063】
本発明の医薬組成物は、慢性疲労症候群の予防及び/または治療のための薬剤を製造するのに適している。
本発明の薬剤は、吸入または経鼻投与用に形成されるのが好ましい。本発明のアルファMSH製剤の投与に適した手順は実施例に示されている。
【0064】
さらに、好ましい可溶医薬組成物は、無菌で作製される。
[実施例]
以下に、慢性的に病気の患者による薬剤の吸入投与のための安全かつ有効な薬物用量の臨床例を提供する。
【0065】
慢性疲労症候群に苦しむ34歳の女性患者の血清中のα−MSHは極端に低いレベルを示していた(<8pg/ml−通常は30−40pg/ml)。血清中のα−MSH濃度は競争力のあるRIAを使用して測定された。サンプル中のα−MSHは、α−MSH−アルブミン複合体に対して作られた抗血清との結合において125Iラベルのα−MSHに匹敵した。分析試料の感度を増すため、125I−α−MSHを後で添加した。Ab結合125I−α−MSHを、二重Abポリエチレングリコール沈降技術を用いて遊離分画から分離した。沈降物の放射能を測定した。この分析試料に使用された抗血清は、α−MSH分子のC末端部に向けられたもので、副腎皮質刺激ホルモンと交差反応を示さなかった。簡単に言えば、100μlのサンプルを3mlのガラス管にピペットでとり、翌日、200μlの抗α−MSH血清を添加して、その混合物を4℃で24時間培養した。3日目に二重Abポリエチレングリコール(500μl)を添加し、混合物をさらに60分培養した。最後に、ガラス管を遠心分離機にかけ、上清を静かに移し、ガンマカウンタ(計測時間3分)を使用してその沈降物中の放射能を測定した。
【0066】
患者は自転車で運動しているときに、肺動脈圧の上昇を含むひどい肺ストレスを経験した。肺活量測定検査により、患者のFEV1が2.2lであることが明らかになった。
超音波ネブライザを使用して毎日600マイクログラムのα−MSHを3回に分けて4週間連続して吸入した後、SF−36生活の質アンケートにより判断されたところでは、患者は著しく改善し、FEV1値も2.6lに改善された。身体的及び臨床的改善は、何の否定的な副作用も伴わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性疲労症候群の治療用薬剤の製造のためのペプチドα−MSHの使用。
【請求項2】
慢性疲労症候群及び神経変性疾患の治療用薬剤の製造のためのペプチドα−MSHの使用。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の使用であって、前記薬剤が超音波ネブライザによって投与されることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2010−503623(P2010−503623A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527665(P2009−527665)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000493
【国際公開番号】WO2008/031233
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509074036)モンドビオテック ラボラトリーズ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】