説明

慢性的微小血管障害を治療するためのポリマー療法

ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを投与することによって、炎症により特徴付けられる慢性的微小血管障害、例えば加齢性黄斑変性症、を治療する方法を提供する。一回の投与でも効果的であるが、最適及び持続的効果のために、複数の投与も可能である。好ましくは、医薬組成物の一回の投与と、それに続く、継続的な注入では無い、週毎の投与の繰り返しが所望の効果を達成する。該コポリマーを用いて慢性的微小血管障害を診断し及び特徴付ける方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、炎症により特徴付けられる慢性的微小血管障害、例えば黄斑変性症、を治療する、その進行を阻止する、又は診断するためのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、微小血管の機能障害及び障害を、加齢性黄斑変性症(AMD)、うっ血性心不全、脳虚血、一過性脳虚血発作、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢血管疾患、末梢血管疾患、突発性難聴等のいくつかの慢性的病気に繋げる最初の発症機序として現れる。これらの病気における炎症は、炎症の標準的な指標、例えば白血球数の基線(ベースライン)の増加、赤血球沈降速度の増加、C反応性タンパク質の増加、ホモシステインの増加を用いて観察され、及び、活性化因子、例えばフォスフォリパーゼ-A2 (PLA2)、 VEGF、 IL-1、 IL-6、 因子 B、及びフィブリノゲンによって起こされ得る。微小血管の明白な病変の発生が無い微小血管領域も、酸化ストレス及び内皮細胞の活性化が特徴的である炎症形質を帯びる。
【0003】
微小血管炎症疾患の臨床的所見は、特定の部位の病変の深刻さ、該部位の代謝上の必要性、及びその生理学的機能に依存する。例えば、僅かな出血を起こすのに十分な病変は、皮膚では取るに足りない染みを起こすが、目では同じ病変が失明を起こし得る。
【0004】
血管形成は、病理学的な条件、例えば加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、及び癌、に加えて、種々の生理学的条件下、例えば正常な成長及び傷の治癒、で起こる。炎症細胞、即ちモノサイト/マクロファージ、T細胞及び好中球は、内皮細胞(EC)の増殖、転移、及び活性化等の内皮細胞(EC)の機能に影響を及ぼし得る成長因子及びサイトカインを分泌することによって、血管形成プロセスに関与する。炎症の結果形成された新たな血管は、正常な血管と同様にたんぱく質を含むことができない可能性があり、それによって組織の浮腫を起こし得る。正常でない血管の生成は、いくつかの網膜の病気における重大な問題である。内皮細胞機能不全及び炎症は、加齢性黄斑変性症、糖尿病及び他の病気の患者の、網膜微小血管の変性の発生における中核的機序であると考えられている。
【0005】
<加齢性黄斑変性症>
加齢性黄斑変性症、即ちAMDは、目の最も鋭敏な箇所、黄斑、の慢性及び進行性の病気であり、中央部の視力が失われる。最も普通の症状は、中央部の歪、コントラスト感度の喪失、及び色覚の喪失であり、これらのいずれも眼鏡、コンタクトレンズ、もしくはレーザー外科手術によって治すことができない。加齢性黄斑変性症の患者は、しばしば一人で生活し、及び日常的な行動をすることが難しい。米国において、約1500万人が加齢性黄斑変性症に患わされている。
【0006】
加齢性黄斑変性症は、先進国における50歳以上の人の晩発性視覚障害及び法的盲の主原因である。米国国勢調査局に拠れば、50歳以上の米国人の数は約8000万であり、この20年間に約40%増加すると予測されている。米国において、この高齢者人口の増加は、加齢性黄斑変性症患者の数の顕著な増加をもとらすと予測される。
【0007】
加齢性黄斑変性症の詳しい原因は知られておらず、恐らく多因子性である。遺伝、環境、及び生活様式上の要因が特定されている。加齢性黄斑変性症には二つの形態がある。10〜15%の患者は湿性加齢性黄斑変性症であり、残りは乾性加齢性黄斑変性症である。乾性加齢性黄斑変性症は、網膜が萎縮し、排泄物(ドルーゼン)が蓄積し、及び黄斑の光感受性細胞がゆっくり壊れるときに発症し、罹患した目における中央部の視野が次第にぼやけてくる。乾性加齢性黄斑変性症は、目の網膜における、微小血管の損なわれた血流及び炎症が原因であると考えられている。
【0008】
乾性加齢性黄斑変性症の患者は、5年以内の湿性加齢性黄斑変性症への進行又は転換の危険性に応じて、アメリカ国立眼研究所カテゴリ1〜4のいずれかへと診断される(AREDS レポート、 No. 14. Arch. Ophthalmol. (2005年), 123:1207-1214)。
カテゴリ1−いずれの目にも黄斑異常がない場合から僅かな小さいドルーゼンがある場合まで。
カテゴリ2−多くの小さい、もしくは、少しの中程度のドルーゼンがある、又は色素異常がある。
カテゴリ3−少なくとも1つの大きなドルーゼン、多くの中程度のドルーゼン、又は非中央部の地図状萎縮がある。
カテゴリ4−片側の目の視力が20/32 未満の、進行したAMD又はAMDの病変。
【0009】
現在、加齢性黄斑変性症のFDAが認めた治療法は無い。抗酸化剤と亜鉛との製剤の高用量投与が乾性加齢性黄斑変性症の進行を約25%の患者で遅らせたが、既に病気により失われた視力は回復されなかったと報告されている。大きな蛋白質及び脂質を除去するための血液濾過(レオフェレーシス)が米国で臨床的に試された。レオフェレーシスは、一部の早期進行性疾患を伴う加齢性黄斑変性症の患者において視力を向上した(Pullido, J.S.ら、加齢性黄斑変性(AMD) のためのレオフェレーシスの最終多施設治験(MIRA-1)予備的分析結果、Trans. Am. Ophthalmol. Soc. 104: 221-231 (2006))。レオフェレーシスにより血液から除去された蛋白質及び脂質は、或る日数の間に再生する。しかし、10週間の間の、8回の半日治療の後の向上は、1年間維持し得る。運悪く、一旦加齢性黄斑変性が進行ステージに至ると、視力喪失を防止するための治療法は無い。
【0010】
湿性加齢性黄斑変性症は、網膜背後の異常な血液細胞が黄斑下部で成長し、血液及び体液を漏らし始めると発症し、黄斑を損傷する。血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)の異常な生成が、病態に寄与する。異常な血液細胞の発生を抑制する治療を十分早期に受けないと、損傷は修復不可能となる。湿性加齢性黄斑変性症は、新たな血液細胞を、レーザー外科手術(光線力学的治療)及び/又は目の中での血液細胞形成を阻止する薬剤もしくは免疫剤(例えば、抗VEGF)の注入によって、破壊することによって又はその発生を防止することによって、治療することができる。運悪く、現在の療法により治療できる湿性加齢性黄斑変性症の患者数は比較的少ない。元々網膜萎縮を発生し、及び、異常細胞の発生を刺激する微小血管炎症性疾患は存続し続ける。その結果、治療に拘らず、視力喪失が進行し得る。
【0011】
<糖尿病性網膜症>
糖尿病性網膜症は、最も多い糖尿病性眼病であり、米国の成人における失明の最大の原因である。総ての糖尿病患者、即ち1型及び2型の双方、にはその危険性がある。糖尿病であると診断された米国人の40〜45%は、糖尿病性網膜症の何らかの段階にある。糖尿病性網膜症には、軽度非増殖性網膜症、中程度非増殖性網膜症、重度非増殖性網膜症、及び増殖性網膜症の4段階がある。
【0012】
糖尿病性網膜症は、重度微小血管損傷を伴う炎症性疾患である。糖尿病性網膜症により損傷された血管は、二通りの方法で視力喪失を起こす。脆弱で、異常な異常血管が発生し得、目の中央部に血液を浸出して、視覚をぼやけさせる。これは、増殖性網膜症と呼ばれ、該疾患の最も進行した4段階目である。これに加えて、黄斑中央部へと体液が浸出し得、黄斑を肥大させて、視覚をぼやけさせる。この症状は「黄斑浮腫」と呼ばれ、病気が進行するにつれて起こる可能性が高いが、糖尿病性網膜症のいずれの段階でも起こり得る。
【0013】
増殖性網膜症患者の約半数が黄斑浮腫も有する。未治療のままであると、増殖性網膜症は重度の視力喪失及び失明さえ起こし得る。黄斑浮腫は、局所的レーザー治療と呼ばれるレーザー手術により治療し得る。一旦、患者が増殖性網膜症を発症すると、視覚を損ない二度と治癒することができない新たな出血の危険性に常に曝される。最近の、異常血管形成を阻止する免疫学的研究は、この病を遅延させる見込みがあることを示す。
【0014】
<他の慢性的微小血管障害>
炎症は、微小血管障害を伴う他の慢性疾患にも付随していることが見出された。内耳の微小血管障害は、突発性感覚神経性難聴等の種々の感覚神経性難聴障害によく見られる最終的な症状である。重症虚血肢 (CLI)に伴う休息痛及び栄養的変化、及び、最も進行した末梢動脈疾患 (PAD)は、主として、末梢微小循環の決定的な減少と関係がある。さらに、低度の炎症は、ヒトの心不全を来たし得る。加えて、炎症マーカーは、末梢性疾患だけでなく、認知症に関係する脳疾患機構も反映し得る。
【0015】
多くの慢性的微小血管障害に付随する炎症マーカーは、しばしば、臨床的症候が現れるかなり前に測定可能である。慢性的微小血管障害を診断し及びこれらのハイリスク要因を早期検出し次第、治療するための方法への多大なるニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
炎症を特徴とする慢性的微小血管障害の進行を阻止もしくは防止し及び治療する方法がここに記載される。記載された方法に従い、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン直鎖コポリマーを含む医薬組成物が、微小血管障害を患う患者に投与される。該医薬組成物の一回の投与は、所望の効果を達成する。最適で持続する効果をもたらすために、後続の投与も必要となり得る。
【0017】
本明細書に記載の方法において投与される該医薬組成物中のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、以下の化学式を有する。
【化1】

上式において、bは(C3H6O)bで表される疎水部(即ち、該コポリマーのポリオキシプロピレン部分)が分子量約950〜4000ダルトン、好ましくは約1200〜3500ダルトンを有するような整数であり、且つ、aは(C2H4O)aで表される親水部(即ち、該コポリマーのポリオキシエチレン部分)が該コポリマーの約50〜95重量%を構成するような整数である。コポリマーは、好ましくは、5,000〜15,000ダルトンの分子量を有する。
【0018】
好ましいコポリマーは、以下の化学式で表されるPoloxamer 188である。
【化2】

ここで、疎水部(C3H6O)bの分子量は、約1750ダルトンであり且つ該コポリマーの総分子量は約8400ダルトンである。
【0019】
他の好ましいコポリマーは、低分子量及び高分子量の不純物が減じられた精製Poloxamer 188であり、該ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、引用により本明細書に包含される米国特許第5,696,298号明細書に記載されているように約1.07未満、1.05未満もしくは 1.03未満の分散度を有する。
【0020】
本発明の方法によって治療するのに適した、慢性的炎症に特徴付けられる微小血管疾患は、限定されることなく、加齢性黄斑変性症 (AMD)、うっ血性心不全, 脳虚血, 一過性脳虚血発作、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢血管疾患, 末梢血管もしくは動脈疾患, 重症虚血肢, 及び突発性感覚神経性難聴を包含する。
【0021】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを投与し及びポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーにより誘発される、炎症指標、血流、及び/又は組織酸素負荷の変化を監視することによる慢性的微小血管障害の患者を診断もしくは特徴付ける方法も提供される。
【0022】
従って、本発明の目的は、慢性の微小血管障害を治療する方法を提供し、及び、影響を受けている組織の機能を回復する方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、慢性的微小血管障害を治療して、治療不可能な症状に進行する危険性を減じる方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、病気の初期ステージの、好ましくは、症状が現れる前に、慢性的微小血管障害を診断もしくは特徴付けし、より特定の且つ効果的な治療方法を実施し及び永久的な損傷を防ぐ方法を提供することである。
【0025】
本発明の、これらの及び他の目的、特徴及び利点は、以下に開示される実施形態の詳細な説明及び請求の範囲を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、鎌状赤血球病の急性胸部症候を示す子供における、P188及び酸素(pO2)の血中レベルの時間変化を表すグラフであり、8時間に亘り300 mg/kg のP188を一回注入した後の、血液酸素レベルの持続的向上を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
炎症に特徴付けられる慢性的微小血管障害の進行を阻止/防止し及び治療する方法を提供する。該方法に従い、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを含む医薬組成物が慢性的微小血管障害に苦しむ患者に処方される。一回の投与で効果的であるが、最良且つ持続的な効果を達成するために、複数回の治療が必要となり得る。好ましくは、一回の投与または一連の投与が、週毎、月毎、もしくはより少ない頻度での該医薬組成物の投与により、持続的な所望の効果を達成する。
【0028】
本発明の方法において投与される該医薬組成物中のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、直鎖コポリマーであり、以下の化学式を有する。
【化3】

上式において、bは(C3H6O)bで表される疎水部が、分子量約950〜4000ダルトン、好ましくは約1200〜3500ダルトンを有するような整数であり、且つ、aは(C2H4O)aで表される親水部がコポリマーの約50〜95重量%を構成するような整数である。コポリマーは、好ましくは、5,000〜15,000ダルトンの分子量を有する。
【0029】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、界面活性な薬剤即ち界面活性剤であり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの重合により形成される。該コポリマーは、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドの形態の三元ブロックコポリマーである。
【0030】
本方法で使用するのに好ましいコポリマーは、以下の化学式で表されるPoloxamer 188 (P188、BASF社より商品名 Pluronic(商標)F68で入手可能、フローハムパーク、ニュージャージー州)である。
【化4】

ここで、疎水部(C3H6O)bの分子量は、約1750ダルトンであり且つその総分子量は約8400ダルトンである。P188は分子量約8400g/モルであり、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドの重量比が4:2:4である。
【0031】
他の好ましいコポリマーは低分子量及び高分子量の不純物が減じられ且つ分散度が1.07、1.05もしくは 1.03未満の精製Poloxamer 188である。
【0032】
標準的炎症指標により測定される、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーにより誘発される炎症の変化を監視することによって慢性的微小血管障害を有する患者を診断もしくは特徴付ける方法も提供される。
【0033】
本発明の方法によって治療されもしくは診断される慢性病症状として適するものは、微小血管の炎症、特に内皮細胞、血液細胞に影響を及ぼし、及び、例えばフィブリノゲン、VEGF、組織因子、TPA、 IL1、CRP、 IL-8、及び ホスホリパーゼ A2等の炎症メディエーターが関与する微小血管の炎症によって特徴付けられる。これらの慢性病は、加齢性黄斑変性症 (AMD)、うっ血性心不全、脳虚血、 一過性脳虚血発作、 重症虚血肢、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢血管疾患、末梢血管もしくは動脈疾患、及び突発性感覚神経性難聴が包含される。ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン直鎖コポリマー、例えばPoloxamer 188、のこれらの慢性疾患症状に対する驚くほど持続される効果が、症状に応じて、複数の週、月、又は年に及んで維持され、及び、それが、一回もしくは一連の投与によって達成され得る。組成物は、静脈内注入により投与されてよいが、他の注入経路も便利であり得る。
【0034】
<定義>
本明細書において、用語「a」、「an」及び「the」は、1または1以上を意味し、文脈上不適切で無い限り、複数を包含する。
本明細書において、節「主として〜からなる」は、該節が言及する組成物の主特性を実質的に変更するような要素を排除するものである。従って、「主として〜からなる」という医薬組成物の記載は、組成物の活性を実質的に変更するような如何なる化学物質もしくは他の成分を排除するものである。
【0035】
用語「有効な量」は、ヒトもしくは動物に投与されたときに、抗炎症性応答を誘発する;血管形成を防止し、減じ、もしくは低下する;血管増殖の減少をもたらす;及び/又は病原性の血管疾患を防止する、組成物の量を表す。有効な量は、当業者が日常的な手法に従い、容易に決定できる。本発明の方法におけるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの特定の効果用量及び用量スケジュールは、経験的に又は他の方法により決定することができ、該決定は当業者にとって日常的なものである。当業者であれば、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの用量は、例えば、投与の経路、使用されるコポリマー、投与される他の医薬、年齢、症状、性別、及び患者の病気の程度に依存して、変わることを理解するであろう。禁忌症の場合には、各医師が用量を調整し得る。
【0036】
例えば、医薬的に許容されるコポリマー組成物は、静脈内、筋肉内、非経口的、皮下、又はエアロジルとして吸引により、患者の体重当たり、約 20 mg/kg 〜 500 mg/kg (例えば、限定されることなく、 約 20〜50、 20〜100、20〜250、50〜100、50〜200、 50〜300、100〜200、100〜300、100〜400、 250〜450; 300〜475 mg/kg等 、例えば、しかし限定されることなく、患者の体重当たり、約20、50、75、100、 150、 200、 250、 300、350、 400、 450、 475、 500 mg/kg等)投与することができ、但しこれらの範囲に限定する趣旨ではない。好ましくは、投与される溶液中のコポリマーの濃度は、約5% 〜25% (例えば、限定されることなく、 約 5〜10、 5〜15、 5〜20、10〜15、 10〜20 %等、例えば約 5、 6、 7、 8、 9、 10、 11、 12、 13、 14、 15、 16、 17、 18、 19、 20、 21、 22、 23、 24、 25 %)。所望の効果を引き出すための組成物の実際の量は、治療される病気及び個々の反応に依存して、個々の患者毎に異なるであろう。個人に投与される特定の量は、当業者に日常的に使用されている方法によって容易に決定することができる。
【0037】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの特定用量の投与の効果は、医療履歴、兆候、症状、及び本明細書に記載するような微小血管障害の治療が必要とされる患者の状態を評価するのに有用であると知られている客観的実験室試験の、特定の側面を評価することによって決定することができる。これらの兆候、症状、及び客観的実験室試験は、このような患者を治療する医療従事者又はこの分野の研究者には理解されるように、治療され又は防止される病気、状態、に応じて変わり得る。例えば、適切なコントロール群との比較及び一般人又は特定の個人における病気の通常の進行に関する知識に基づいて、仮に、1)患者の再発の頻度又は深刻さが改良されている、2)病気の進行が安定しもしくは遅延している、又は3)状態または病気の治療のための他の薬品の使用の必要性が、減じられもしくは無くなった、とすれば、その治療は効果的であると判断されよう。
【0038】
「治療」は、患者の微小血管障害もしくは状態を安定化もしくは遅延するために、微小血管障害もしくは状態の症状及び/又は再発の頻度もしくは深刻さを減じるために、及び/又は患者の微小血管障害もしくは状態を除去するために、本明細書で記載のコポリマーを患者に投与することを意味する。
【0039】
「所望の効果を達成する」もしくは「治療効果を達成する」は、本発明におけるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの患者への投与が、患者の微小血管障害もしくは状態を安定化もしくは遅延し、微小血管障害もしくは状態の症状及び/又は再発の頻度もしくは深刻さを減じ、及び/又は患者の微小血管障害もしくは状態を除去することを意味する。
【0040】
所望の効果もしくは治療の効果の例は、限定されることなく、黄斑変性症の患者の網膜の血流の改良(もしくは網膜の血流悪化の遅延、停止、及び/又は阻止);黄斑変性症の患者の視覚機能の改良(もしくは視覚機能喪失の速度の低下もしくは進行の阻止);黄斑変性症の患者の網膜下液の量の減少及び/又は黄斑浮腫量の減少;末梢動脈疾患患者の末梢微小血管流の改良(もしくは末梢微小血管流のさらなる消失の低下及び/又は停止);重症虚血肢患者の四肢血行及び/又は皮膚血流の改良(もしくは安定化);糖尿病性網膜症患者の網膜血管増殖の部分的または不完全な阻止;一過性脳虚血発作患者の一過性脳虚血発作の回数及び/又は深刻さの低減;不安定性狭心症を伴う慢性うっ血性心不全の患者のうっ血性心不全及び/又は狭心症の低下及び/又は進行の停止を含む。
【0041】
当業者は、本明細書記載のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの投与により、所望のもしくは治療効果がいかにして達成されるかを理解するであろう。
【0042】
抗VEGF化合物は、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)の血管形成活性を少なくとも部分的に阻止する治療的化合物を意味する。抗VEGF化合物の例は、但しこれらに限定されないが、ペガプタニブ(pegaptanib、MACUGEN(商標)、ペグ化抗VEGF アプタマー) 及びラニビズマブ( ranibizumab 、LUCENTIS(商標)、抗VEGF モノクローナル抗体断片) を包含する。
【0043】
「体液」は、患者もしくは被検者の体からの総ての液を意味し、血液、血清、尿、唾液、痰、及び/又は涙を包含し、但しこれらに限定されない。
【0044】
<Poloxamer 188>
或る種のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、ヒトもしくは動物に投与された際に、いくつかの急性疾患に対する有用な生物学効果を有することが見出されている。これらの活性は、米国特許第4,801,452、 4,837,014、4,873,083、4,879,109、4,897,263、4,937,070、4,997,644、 5,017,370、5,028,599、 5,030,448、5,032,394、 5,039,520、 5,041,288、 5,047,236、 5,064,643、 5,071,649、 5,078,995、 5,080,894、 5,089,260、 米国再発行特許 36,665 (5,523,492の再発行)、5,605,687、 5,696,298、 6,359,014、及び 6,747,064号 及び国際出願 PCT/US2005/034790、 PCT/US2005/037157 及び PCT/US2006/006862に記載されており、これらの総てが引用により本明細書に組み込まれる。
【0045】
Poloxamer 188 (P188)は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン直鎖コポリマー界面活性剤であり、損傷細胞及び変性たんぱく質上に発生した疎水性領域に結合し、それによって水和格子を回復する。このような結合は、損傷された膜の封止を容易にし、細胞を破壊し得る炎症メディエーターの増幅を中止させる。このポリマーは、血液内に形成された小体の危険な凝集を招く疎水的付着性相互作用をも阻止する。Poloxamer 188の抗付着性及び抗炎症性効果は、損傷された組織中の減じられた摩擦による増大された血流、血液内に形成された小体の危険な凝集の防止、赤血球の変形能の維持、血小板及び顆粒球の非付着性、血液の正常の濃度、アポトーシスの低減、及び、VEGF、種々のケモカイン、インターロイキン、及びケモカイン等の炎症マーカー、によって示される。
【0046】
非イオン性界面活性剤、Poloxamer P188は、急性血管閉塞及び組織損傷に伴う症状の治療に長年使用されている。しかし、その作用持続期間の短さ、身体からの排泄の速さ及び半減期の短さにより、長い効果のためには、Poloxamer P188の継続的注入が必要であると考えられてきた。従って、Poloxamer P188は、直接的原因の持続時間が短い急性疾患(例えば心臓発作、鎌状赤血球発症、出血性ショック、もしくは血栓)のためにのみ有用であると考えられてきた。
【0047】
精製Poloxamer 188は、高い及び低い分子量のポリマー状不純物を減じるように精製された、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの合成の、非イオン性ブロックコポリマーである。平均分子量8500 ± 1000ダルトンのコポリマーは、二つの親水性ポリオキシエチレン鎖(ブロック)で挟まれた一つの疎水性ポリオキシプロピレン鎖(ブロック)からなり、以下の構造式を有する:
【化5】

ここで、疎水性(C3H6O)bの分子量は、約1750ダルトンであり、該ポリマーの総分子量は約8400ダルトンである。P188は約8400 g/molの分子量を有し、ポリ(エチレンオキサイド)−ポリ(プロピレンオキサイド)−ポリ(エチレンオキサイド)の重量比は、4:2:4である。
【0048】
Poloxamer 188の現在供給される臨床的剤型は、希釈しもしくはせずに静脈内(IV)投与向けの、無色透明で、無菌の、非発熱性の溶液である。希釈の度合いは、患者の流体要求に依存し、治療効果には関係がない。各100 mlバイアルは、15 gの精製Poloxamer 188 (150 mg/ml)、 308 mg の米国局方塩化ナトリウム、 238 mg の米国局方クエン酸ナトリウム、36.6 mgの米国局方クエン酸及び100 ml までの米国局方水を含む。溶液のpHは、約6.0であり、容積モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。これらの臨床的処方は、静菌剤もしくは保存剤を含まない。
【0049】
<治療の方法>
炎症で特徴付けられる微小血管障害を有する患者の治療は、該患者に、本明細書記載のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを含む医薬的に許容される組成物を、有効用量投与することによって完了することができる。一回の投与で、効果的な結果が得られ得る。複数回投与、例えば、連続的注入ではない、週ごとの投与が、最適且つ持続した効果を達成するのに必要であり得る。
【0050】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン直鎖コポリマー、例えばPoloxamer 188は、血流を増大することにより微小血管障害の治療に有用である。損傷された組織の微小血管血流は、炎症、凝血、低下した血中酸素レベル、赤血球の変形能の欠損、スラッジ、粘度、摩擦、内皮細胞の損傷、白血球付着及び血管緊張を含む複数の因子の危険に曝される。Poloxamer 188は、これら各パラメータに影響を及ぼし、血流を増加する能力を有する。驚くことに、ある症状においては、血液中からコポリマーが無くなった後の長い間、効果が持続する。
【0051】
Poloxamer 188は、血管内皮細胞への血液細胞の異常付着を阻止することによって微小血管障害も治療することができる。斯かる異常付着は、多発性慢性的微小血管障害の病態生理学の一部として、次第に認められるようになってきた。そのような付着を阻止することは、慢性的炎症を維持する事象の増大を阻止することができる。
【0052】
本明細書に記載のPoloxamer 188は、免疫抑制効果を及ぼすことなく又は感染性を増大することなく、微小血管障害を治療するのに使用することができる。傷清浄剤として多用されているので、Poloxamer 188は、傷の治癒を遅延することも、感染性を高めることもない。それは、損傷された組織に付随する有害な炎症反応を効果的に防止する。Poloxamer 188は、好中球により媒介される組織の損傷を、少なくとも二つの機構により減じる。(1)好中球の炎症性座位への移動、走化性、及び付着を阻止する、及び(2)酸素バーストを阻止する。
【0053】
慢性的微小血管障害を治療するために、Poloxamer 188を、当業者に公知の処方及び方法を用いて、上述のように実質的に精製された組成物として提供すること、又は、医薬的に許容される処方中に入れること、又は、持続された放出により送達することができる。これらの処方は、標準的経路で投与することができる。一般に、組成物は種々の経路で投与してよい(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、脊髄内、硝子体内、皮下、又は筋肉内)。好ましい経路は、静脈内注入である。
【0054】
本発明の方法で使用するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーと組合わせることができる医薬的に許容される担体は、当業界で周知である。例えば、Remington著「薬学の科学及び実践」、 第21版、 Randy Hendrickson編、Lippincott Williams & Wilkins、 (2005年)は、本明細書で記載のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの医薬的デリバリに適した組成物及び処方を記載する。一般に、担体の性質は、使用される投与の態様に依存する。例えば、非経口処方は、通常、医薬的及び生理学的に許容される流体である注射用流体、例えば水、生理的食塩水、平衡塩溶液、水性デクストロース、グリセロール等、をベヒクルとして含む。生物学的中性の担体に加えて、投与されるべき医薬組成物は、少量の非毒性の補助的物質、例えば濡れ剤もしくは乳化剤、保存剤、及びクエン酸ナトリウム等のpH緩衝剤等、を含むことができる。
【0055】
本発明におけるPoloxamer 188及び関連するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの有効用量は、治療下の病気の状態もしくは症状、及び他の臨床的要因、例えば動物もしくはヒトの体重及び状態、及び投与経路に依存する。動物もしくはヒト中でのPoloxamer 188の半減期に依存して、該化合物は、一日数回から月一回もしくはそれ以下迄、投与することができる。例えば、該化合物は、一日一回、週に数回、週一回、月二回、月一回、6〜8週毎に一回、3月毎に一回等、投与することができる。本明細書に記載する方法は、一回だけでなく、同時もしくは長期に亘る複数回の投与も企図する。
【0056】
本発明の方法は、ヒト及び動物の双方に適用されることが理解されるべきである。
【0057】
本発明のPoloxamer 188の処方は、非経口(皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、硝子体内、皮膚内、頭蓋内、気管内、硬膜外を包含する)投与に適するものを包含する。該処方は、単位用量形態で便利に提供されてよく、従来の医薬的方法で調製されてよい。斯かる技術としては、有効成分と医薬的担体もしくは賦形剤を組み合わせるステップを含む。
【0058】
非経口投与に適した処方は、水性及び非水性の無菌注射溶液を包含し、それは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び投与を受けるべき受容体の血液と組成物とを等張にする溶質を含むことができる。該処方は、単位用量もしくは複数用量包装、例えば、封止されたアンプル及びバイアルで提供されてよく、乾燥された又は凍結乾燥された状態で貯蔵されて、使用直前に、注入のための無菌液担体、例えば水を加えるだけにしてもよい。
【0059】
好ましい単位用量処方は、投与される成分の一日の用量もしくは単位、一日のサブ用量、又はその適切な部分を含むものである。上述の成分に加えて、該処方は、本発明の処方に関連する分野で使用される他の添加剤を含み得ることが理解されるべきである。加えて、該医薬組成物は、他の活性成分、例えば、限定されることなく、抗VEGF、抗炎症剤、抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤等を含むことができる。
【0060】
<診断方法>
本明細書に記載のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、異なる慢性的微小血管障害を有する患者における、同一の炎症指標による異なる応答を選択的に誘発できるので、微小血管障害に罹患している(又は罹患する可能性がある)と特定された患者に該ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを投与し、次いで、炎症指標を測定することによる炎症の変化、及び、例えば近赤外分光を用いてヘモグロビン飽和度を測定することによる組織の酸素負荷の変化を監視することによって、これらの異なる病気を診断又は特徴付けできる。観察されたこれらの炎症指標における変化は、病気に関与する炎症メディエーターを特定し及びこれらの病気の適切な治療を工夫するのに有用である。例えば、加齢性黄斑ジストロフィーによる視覚損失は、炎症、光感応性細胞の死滅もしくは他の要因による可能性がある。上述のパラメータの測定による、該ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー治療への応答は、根源にある原因を特定する助けとなり、それにより、最も適した治療をタイムリーに決定するのに大いに役立つ。
【0061】
監視されるべき炎症指標は、標準指標、例えば、限定されることなく、赤血球沈降速度(ESR)、分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)、B因子、フィブリノゲン、C反応性蛋白質(CRP)、IL-1、 IL-6、IL-8、及び単球走化性タンパク質-1(MCP-1)を含む。炎症指標の他の例については、下記文献を参照されたい。Shankar, A.ら(2007年)、「循環白血球数と長期加齢性黄斑変性症症例の関連: ブルーマウンテンアイスタディ」、Am J Epidemiol 165:375-382; Vine, A. K., ら (2005年)「加齢性黄斑変性症の危険因子としての循環器疾患のバイオマーカー」、Ophthalmology 112:2076-2080; Rattazzi, M., ら (2003年)「循環器疾患におけるC反応性蛋白及びインターロイキン6:責任もしくは受動的傍観因子」、 J Hypertens 21:1787-1803; Niessen, H. W.ら、 (2003年)「循環器疾患におけるタイプII分泌型ホスホリパーゼA2:アテローム性動脈硬化及び心筋細胞の虚血性損傷におけるメディエーター」、 Cardiovasc Res 60:68-77;Devine, L.ら (1996年)「網膜色素上皮単層膜を横切るインビトロでのリンパ球の移動におけるLFA-1, ICAM-1, VLA-4 and VCAM-1の役割」、Immunology 88:456-462; Hill, T. A.ら、 (1997年)「血液リンパ球のヒト網膜毛細血管系への選択的付着の新しい研究方法」、 Invest Ophthalmol Vis Sci 38:2608-2618; Bartosik-Psujek, Hら (2003年)「脳虚血における炎症マーカー」 Neurol Sci 24:279-280。
【0062】
類似の炎症性微小血管系を有する患者における、コポリマーに誘発される同一の炎症マーカーによる種々の応答は、病気の原因を理解するのに、病気を特定するのに、及び病気の適切な治療を選択するのに有用である。例えば、sPLA2のレベルは急性胸部症候群(ACS)の臨床的重篤度と相関があること、及び、鎌状赤血球患者、ACS、血管閉塞性疾患及び結核を差別化する因子であることが示されている。例えば、微小血管障害に罹患した患者へのPoloxamer 188 投与後のsPLA2のレベルの低下の測定は、病気(急性胸部症候群)の原因の可能性に関する貴重な情報、従って、このタイプの病気の効果的な治療の選択を提供する。
【実施例】
【0063】
本発明が、下記実施例を参照してさらに詳細に示されるが、該実施例は、本発明の範囲を如何なる意味でも制限するものではない。それどころか、本明細書を読んだ後に、他の種々の実施形態、修飾、及び同等物が、本発明の精神及び/又は特許請求の範囲から離れることなく、当業者にそれ自体を示唆することが明確に理解されるべきである。
【実施例1】
【0064】
肺の慢性炎症疾患へのPoloxamer 188の一回投与の効果
Poloxamer 188(P188、 Burroughs-Welcome、 Research Triangle Park、ノースカロライナ州)の一回投与は、慢性微小血管炎症疾患の患者の治療において、長期の有益な効果をもたらした。
【0065】
鎌状赤血球病は、ヘモグロビンの遺伝子異常に因る病気である。しかし、病気の多くの所見、特に急性胸部症候は、微小血管炎症の所見である。
【0066】
鎌状赤血球病の急性胸部症候群を示す7歳の男児は、従来の治療に応答が無く、交換輸血、7本の胸部管、及び、酸素の恒常的な供給によるほぼ75%の血中酸素(pO2)レベル、を含む種々の治療に関わらず、肺が完全に白いままであった。21日目に、30mg/kg のP188が急速投与され、次いで、30mg/kg/hrで8時間、投与された。
【0067】
図1に示すように、P188の投与後、酸素が急速且つ持続的にほぼ95%の飽和まで上昇した。この血液中酸素負荷レベルは、14日持続した。さらに、彼は、不飽和化または気胸症を発症することもなく、ポジティブな呼吸圧(PEEP)の必要性が減じ、より良い呼吸機能を示した。その後、不幸にも、男児は多臓器不全で亡くなった。しかし、基礎疾患の状態(鎌状赤血球症の発作)が持続し、悪くなっていたので、P188の一回の投与による慢性病に対する持続効果は、全く予測されないものであった。
【実施例2】
【0068】
P188の抗炎症性細胞保護活性
ラットの上腸間膜動脈閉塞(SMAO)は、虚血/再灌流損傷を生じる(Gonzalez, E. A.ら 、「高張食塩水の従来的投与は、腸の最適な保護をもたらし、及び、腸の虚血再灌流の後の、離れた組織の損傷を制限する」、J. Trauma 61:66-73 (2006年))。60分間手術によりSMAOを、又は類似の偽手術をラットに付与した。クランプ除去の5分前に蘇生処置が施され、該動物は6時間後に屠殺された。表1は、これらの動物の小腸における遺伝子発現のマイクロアレイ分析を示す。それらは、P188の抗炎症性細胞保護活性が、慢性微小血管炎症疾患の多くのメディエーター及びマーカーに及ぶことを示す。
【表1】

【実施例3】
【0069】
カテゴリ3 加齢性黄斑変性症を治療するためのPoloxamer 188の使用
Poloxamer 188を、左目の中心窩付近に、複数の大きくて柔らかいドルーゼンを有する、非浸出性カテゴリ3 加齢性黄斑変性症に罹患した75歳の男性に投与する。彼の目の、初期処置糖尿病性網膜症研究(ETDRS)チャートを用いた最良の矯正視力(BSCVA) は、左が20/50であり、右が20/32である。彼は、国立眼研究所視覚調査 (NEI-VFQ)で75のスコアも有する。彼は、国立眼研究所の加齢性眼病研究(AREDS)により推奨されているビタミンサプルメントを高用量摂取している。
【0070】
この患者が、精製Poloxamer 188を、一定速度で2時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり100 mg/kgになるまで静脈内注入して治療される。該治療が10週間繰り返される。
【0071】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0072】
目の検査は、1、3、6、9、及び12ヶ月に行い、BSCVAとNEI-VFQの向上を測定する。加えて、相対的網膜及び小窩コロイド状血流(ChBFlow)のレーザードップラー測定をドップラーフローメトリ(LDF) (Oculix Instrument社製、 ハンティントンバレイ、ペンシルバニア州) により測定する。結果を本技術において標準化したAU(任意単位)で表す(Metelitsina, T.I.ら、 Investigative Ophthalmology & Visual Science, 49, 358-61, 2008).。ChBFlowは、治療前の6.40 AUから治療後3時間で7.3 AUに増える。さらなる治療で、ChBFlowが定常的に治療前のベースラインより上を示す。
【実施例4】
【0073】
カテゴリ 4 加齢性黄斑変性症を治療するためのPoloxamer 188の使用
Poloxamer 188を、左目に複数の大きくて柔らかいドルーゼンと、右目に初期湿性加齢性黄斑変性症を有する、カテゴリ4 加齢性黄斑変性症に罹患した70歳の女性に投与する。彼女の目の、ETDRSチャートを用いたBSCVAは、左が20/40であり、右が20/80である。彼女は、NEI-VFQで65のスコアである。彼女はAREDSにより推奨されたビタミンサプルメントを高用量摂取している。
【0074】
この患者が、精製Poloxamer 188を、一定速度で2時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり100 mg/kgになるまで静脈内注入して治療される。改良された、微小血管内血流及びコロイド状血流(ChBFlow)が、治療直後のレーザードップラー測定により実証される。この治療を週3回、10週間繰り返す。
【0075】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0076】
目の検査は、1、3、6、9、及び12ヶ月に行う。これらの検査は、BSCVAとNEI-VFQ及び血流のレーザードップラー測定からなる。1月及び3月後に、BSCVAの1段階(one line)の向上が見られるが6月後には見られない。そこで、4回の追加注入が週間隔で行われる。BSCVAは、再び1段階向上し、12月間安定である。加えて、ドップラーフローメトリによるChBFlowのレーザードップラー測定は、ベースライン値6.1 AU よりも2.2 AU高い状態で安定化される。その年の間、カテゴリ4のAMD患者に予想されるような視覚損傷がないことには、意義がある。視覚の早期損傷の危険性が高い患者の視覚は、何ヶ月間かに亘り維持される。
【実施例5】
【0077】
加齢性黄斑変性症を治療するためのPoloxamer 188の使用
Poloxamer 188を、左目の中心窩付近に、複数の大きくて柔らかいドルーゼンを有する、加齢性黄斑変性症に罹患した77歳の男性に投与する。彼は白内障もしくは他の網膜の病を患っていない。彼の目の、初期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)チャートを用いた、最良の矯正視力(BSCVA) は、左が20/50であり、右が20/40である。彼の腎臓機能は彼の年齢の割りには正常である。
【0078】
この患者が、精製Poloxamer 188を、一定速度で24時間に亘り、合計が体重1kg当たり800 mg/kgになるまで静脈内注入をして治療される。Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。それは、静脈内注入器具に便利な体積とするために、5%ブドウ糖を含む正規生理食塩水と混合される。
【0079】
注入の前及び終了時に、小窩コロイド状血流(ChBFlow)と浮腫を測定する。ドップラーフローメトリにより測定されたChBFlowは、5.7 AU から注入終了時に7.0 AUに向上する。浮腫は、光干渉断層撮影により測定される平均網膜厚さの減少により測定され、3日以内に改良される。
【実施例6】
【0080】
加齢性黄斑変性症を治療するためのPoloxamer 188の使用
2年間右目の視覚を喪失しており、且つ、左目の視覚も徐々に失われつつある75歳の女性は、潜在性脈絡膜新生血管を伴う両側新生血管性AMDであると診断されている。彼女の視力(VA)は、右目が指数弁6フィートであり、左目が20/80である。該患者は、ペガプタニブ(MACUGEN(商標)、ペグ化抗VEGFアプタマー)の硝子体腔内注入を両目に受けているが、彼女の視力は、右目が指数弁6フィートであり、左目が20/100に落ちている。光干渉断層撮影により、両目の体液及び嚢胞性黄斑障害が増加していることが認められる。
【0081】
この患者が、精製Poloxamer 188を、30mg/gk/時の一定速度で8時間、5日連続で、及び、週毎にさらに4回、静脈内注入して治療される。Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。それは、静脈内注入器具に便利な体積とするために、5%ブドウ糖を含む正規生理食塩水と混合される。眼底検査は、両目の網膜下液の消失を示し、これは光干渉断層撮影及び血流のレーザードップラー測定により確認される。彼女の視覚機能は、左目において20/60に向上する。
【実施例7】
【0082】
湿性加齢性黄斑変性症を治療するための、ルセンティス(LUCENTIS(商標))とPoloxamer 188の組み合わせの使用
2年間両目の視力を喪失している82歳の男性は、病変部面積の50%以上の脈絡膜新生血管を伴う両側新生血管性AMDであると診断されている。彼の視力は、左目が指数弁6フィートであり、右目が20/100である。光干渉断層撮影により両目の網膜体液の増加が認められる。
【0083】
ルセンティス(商標)(ラニビズマブ;抗VEGFモノクローナル抗体断片)0.5 mg (0.05 mL)を硝子体腔内注入により左目に月1回、4月間投与し、その後、3月毎に投与する。同時に、患者は、精製Poloxamer 188を100 mg/kg/時の一定速度で4時間に亘り静脈内注入して治療される。該注入が、第1週に2回、次いで、週1回4週間、繰り返される。Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。それは、静脈内注入器具に便利な体積とするために、5%ブドウ糖を含む正規生理食塩水と混合される。
【0084】
眼底検査は、両目の網膜下液の消失を示し、これは光干渉断層撮影により確認される。視力は、1月内に僅かに向上し、1年間安定である。
【実施例8】
【0085】
加齢性黄斑変性症を治療するためのPoloxamer 188の使用
2年間左目の視力を喪失しており、右目の視力も徐々に喪失している81歳の男性は、病変部面積の50%以上の脈絡膜新生血管を伴う両側新生血管性AMDであると診断されている。彼の視力は、左目が指数弁6フィートであり、右目が20/80である。光干渉断層撮影により両目の網膜体液の増加が認められる。
【0086】
該患者が、精製Poloxamer 188を100 mg/kg/時の一定速度で4時間に亘り静脈内注入して治療される。該注入が、第1週に2回、次いで、週1回4週間、繰り返される。Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。それは、静脈内注入器具に便利な体積とするために、5%ブドウ糖を含む正規生理食塩水と混合される。
【0087】
眼底検査は、両目の網膜下液の消失を示し、これは光干渉断層撮影により確認された。視力は、1月内に向上し、1年間安定である。
【実施例9】
【0088】
末梢動脈疾患を治療するためのPoloxamer 188 の使用
Fontaine分類ステージIII の末梢動脈疾患により、数ヶ月間両足に運動制限症候群を起こしている65歳の男性が、精製Poloxamer 188を、一定速度で2時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり100 mg/kgになる迄静脈内注入して治療される。この治療を週1回10週間繰り返す。
【0089】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0090】
両足の経皮酸素圧(TcpO2) (PeriFlux System 500、Perimed社製、ストックホルム、スウェーデン)及び近赤外(InSpectra StO2、 Hutchinson Technologies社, ハッチンソン、ミネソタ州)による組織酸素飽和度を、微小循環に対する治療効果をモニタするために、繰り返し測定する。治療開始後1、 3、 6、 及び 12月の測定は、Fontaine分類ステージの改良、経皮酸素圧の顕著な上昇、及び休息痛の退行を示す。
【実施例10】
【0091】
重症虚血肢を治療するためのPoloxamer 188の使用
3週間の間持続的に再発する休息痛及び足の潰瘍を伴う、Fontaine分類ステージIIIの重症虚血肢に進行した末梢血管疾患の78歳の老女にPoloxamer 188を投与する。彼女のTcpO2 は 39 mmHgであり、高い切断の危険性に曝されている。彼女が、Poloxamer 188を一定速度で4時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり200 mg/kgになるまで静脈内注入して、治療される。この治療が、毎日、4日間、次いで、週1回10週間、繰り返される。
【0092】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0093】
休息痛及び足の潰瘍は改善する。さらに、経皮酸素圧(TcpO2)及び足関節・上腕血圧指数(ABI)を繰り返し求める。TcpO2は改善し、及び、切断を免れる。
【実施例11】
【0094】
糖尿病性網膜症の黄斑浮腫を治療するためのPoloxamer 188の使用
糖尿病性網膜症の黄斑浮腫のために視覚がぼやけている44歳の女性が、レーザー外科手術と精製Poloxamer 188を一定速度で4時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり100 mg/kgになるまで静脈内注入することによって治療される。この治療が6週間繰り返される。
【0095】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。目の病理及び視覚がモニタされる。黄斑浮腫は鎮まり、視覚が安定する。
【実施例12】
【0096】
増殖型糖尿病性網膜症を治療するためのPoloxamer 188の使用
増殖型網膜症を伴う糖尿病の40歳の男性は、以前、網膜レーザー手術を受けたことがあるが、精製Poloxamer 188を、一定速度で4時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり100 mg/kgになるまで、静脈内注入して治療される。この治療を週1回、8週間繰り返す。
【0097】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0098】
網膜血管の浮腫が、蛍光血管造影、光干渉断層撮影及びレーザードップラー流速計によりモニタされる。改善が観察されれば、血管を切除するための追加のレーザー手術は必要ない。
【実施例13】
【0099】
一過性脳虚血発作を治療するためのPoloxamer 188 の使用
半身麻痺に特徴付けられる、一過性脳虚血発作が多くなっている63歳の男性が、精製Poloxamer 188を、一定速度で4時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり200 mg/kgになる迄静脈内注入して治療される。この治療が100 mg/kgに投与量を下げて、週1回、8週間繰り返される。
【0100】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0101】
最初の一週間で、一過性脳虚血発作の回数及び重篤度が低下し、3月の間、発作が無いもしくは重篤度が低い状態が維持される。
【実施例14】
【0102】
不安定性狭心症を伴う慢性うっ血性心不全を治療するためのPoloxamer 188 の使用
2年間、うっ血性心不全を患う72歳の男性が、急性不安定性狭心症を伴う急性発症(エピソード)に患わされている。彼は、ジゴキシンの標準的治療、利尿及び補助的治療を受けている。これに加えて、彼は、精製Poloxamer 188を一定速度で4時間に亘り、合計投与量が体重1kg当たり200 mg/kgになるまで静脈内注入して治療される。この治療が、毎日、3日間、次いで、投与量を100 mg/kgに下げて、週1回、8週間、繰り返される。
【0103】
Poloxamer 188は、精製Poloxamer 188 (150 mg/ml) 15 g、米国局方塩化ナトリウム308 mg、米国局方クエン酸ナトリウム238 mg、米国局方クエン酸36.6 mg、及び注入のための米国局方水100 mlとして処方される。該溶液のpHは、約6.0であり、モル浸透圧濃度312 mOsm/Lを有する。
【0104】
改善を見るために、不安定性狭心症及び心臓疾患が監視される。不安定性狭心症エピソードは減少し、1週間内に消え、少なくとも3月は再発しない。
【0105】
本明細書で言及する総ての科学文献、出版物、抄録、特許及び特許出願は、引用によりその総てが本明細書に組み込まれる。
本発明を、開示される態様に関し詳細に記載してきたが、本発明の精神及び範囲内において、多くの変形及び修飾がもたらされ得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における微小血管障害を治療する方法であって、該方法は、医薬的に有効な量のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーと医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、該コポリマーは下記化学式を有し、
【化1】

上記式は下記のように表すこともでき、
【化2】

上式において、(C3H6O)bは該コポリマーの疎水部であり、且つ、(C2H4O)aは該コポリマーの親水部であり、bは(C3H6O)bで表される疎水部が、分子量約950〜4000ダルトンを有するような整数であり、aは(C2H4O)aで表される親水部が該コポリマーの約50〜90重量%を構成するような整数であり、これにより哺乳動物における微小血管障害を治療する、方法。
【請求項2】
bが、(C3H6O)bで表される、コポリマーの疎水部が分子量約1200〜3500ダルトンを有するような整数であり、且つ、aが、(C2H4O)aで表される親水部が該コポリマーの約50〜90重量%を構成するような整数である、請求項1の方法。
【請求項3】
(C3H6O)bで表される疎水部の分子量が約1750ダルトンであり、且つ、該コポリマーの総分子量が約8400ダルトンである、請求項1の方法。
【請求項4】
治療されるべき微小血管障害が炎症により特徴付けられる、請求項1の方法。
【請求項5】
治療されるべき微小血管障害が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢血管疾患、突発性難聴、脳虚血、一過性脳虚血発作、うっ血性心不全、重症虚血肢及び末梢血管疾患からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項6】
投与が、静脈内注入により行われる、請求項1の方法。
【請求項7】
該医薬組成物の、一回の投与が所望の効果を達成する、請求項1の方法。
【請求項8】
該医薬組成物が、抗VEGF化合物、抗血栓性化合物、及び、抗炎症性化合物の少なくとも1つをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項9】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが精製されて、約1.07未満の分散度を有するように低及び高分子量不純物が減じられている、請求項3の方法。
【請求項10】
該コポリマーが約1.05未満の分散度を有する請求項9の方法。
【請求項11】
該コポリマーが約1.03未満の分散度を有する請求項10の方法。
【請求項12】
哺乳動物における慢性的な微小血管障害を診断する方法であって、
(a)医薬的に有効な量のポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体と医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を哺乳動物に投与する工程であって、ここで該コポリマーは下記化学式を有し、
【化3】

上記式は下記のように表すこともでき、
【化4】

上式において、(C3H6O)bは該コポリマーの疎水部であり、且つ、(C2H4O)aは該コポリマーの親水部であり、bは(C3H6O)bで表される疎水部が、分子量約950〜4000ダルトンを有するような整数であり、aは(C2H4O)aで表される親水部が該コポリマーの約50〜90重量%を構成するような整数である、工程、
(b)哺乳動物の体液内の、炎症指標の量を測定する工程、及び
(c)炎症指標の量の変化を微小血管障害の特徴と関連付ける工程、
を含み、これにより、哺乳動物における微小血管障害を診断する方法。
【請求項13】
bが、(C3H6O)bで表される、コポリマーの疎水部が分子量約1200〜3500ダルトンを有するような整数であり、且つ、aが、(C2H4O)aで表される親水部が該コポリマーの約50〜90重量%を構成するような整数である、請求項12の方法。
【請求項14】
(C3H6O)bで表される、コポリマーの疎水部の分子量が約1750ダルトンであり、且つ、該コポリマーの総分子量が約8400ダルトンである、請求項12の方法。
【請求項15】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが精製されて、約1.07未満の分散度を有するように低及び高分子量不純物が減じられている、請求項14の方法。
【請求項16】
該コポリマーが約1.05未満の分散度を有する請求項15の方法。
【請求項17】
該コポリマーが約1.03未満の分散度を有する請求項16の方法。
【請求項18】
該炎症指標が、分泌型ホスホリパーゼA2である、請求項12の方法。
【請求項19】
該炎症指標が、赤血球沈降速度、B因子、フィブリノゲン、C反応性蛋白質、IL-1、 IL-6、IL-8、及び単球走化性タンパク質-1からなる群より選ばれる、請求項12の方法。
【請求項20】
該医薬組成物が、抗VEGF化合物または抗炎症性化合物をさらに含む、請求項12の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535772(P2010−535772A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519998(P2010−519998)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/009603
【国際公開番号】WO2009/023177
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510036458)シンスラックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】