説明

慢性腎疾患の治療法

本発明は、高い溶解速度を有する医薬品グレードの有機第二鉄化合物を開示する。これらの有機第二鉄化合物(非限定的にクエン酸第二鉄が含まれる)は慢性腎疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年8月18日出願のPCT/US2006/032585および2006年1月30日出願の米国仮出願第60/763,253号の優先権を主張する。前出願の内容および開示全体は、参照により本出願に組み入れられる。
【0002】
本出願の全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示内容はその全体が、本発明が属する分野の技術水準をより完全に説明するために、ここに参照により本出願に組み入れられる。
【0003】
発明の属する分野
本発明は、慢性腎疾患を治療するための医薬品グレードの有機第二鉄化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
慢性腎疾患では、老廃物を排泄し、尿を濃縮し、電解質を保存する腎臓の能力が徐々にかつ次第に失われる。急激であるが可逆的な腎機能の不全を伴う急性腎不全と異なり、慢性腎疾患における腎機能は、不可逆的に末期腎疾患(ESRD)に向かって進行および悪化する。ESRDの患者は透析または腎移植なしで生存することができない。
【0005】
米国国立腎財団(U.S. National Kidney Foundation)は、腎疾患のタイプ(臨床診断)にかかわらず、腎臓損傷の有無および腎機能のレベルにしたがって慢性腎疾患を定義する。腎機能の主な尺度は糸球体ろ過量(GFR)であり、それは血清からのクレアチニンクリアランスおよび尿クレアチニン濃度として評価されることが多い。慢性腎疾患または慢性腎不全は3か月以上の期間に60 ml/分未満の糸球体ろ過量を有すると定義される。U.S. National Kidney Foundationは糸球体ろ過量に基づく腎障害の5ステージ分類を提案している。

【0006】
U.S. National Kidney Foundationによれば、人口の約11パーセントに相当する2000万人超の米国市民が慢性腎疾患を患い、さらに2000万人が高いリスクを有している。慢性腎疾患の高い有病率は保健医療制度に重大な負担を与える。慢性腎疾患と関連する最も明らかな経済的コストの1つは末期腎疾患の発症であり、それにより、米国のみで、2001に約230億米国ドルのコストがかかり、2010年には、年350億米国ドルに増えると見積もられる。初期の慢性腎疾患の患者に関して、総論では、年齢適合一般集団と比較して、概して14,000米国ドル〜22,000米国ドル/患者/年のコスト増が報告されている。
【0007】
進行性の腎損傷の病因は複雑かつ複数要因性であり、現在の理解は、主に、実験動物モデルに基づく。慢性腎疾患は、初期損傷(initiating insult)と無関係に、「共通経路」機構によって進行することが多い。腎機能異常の初期研究は機能および構造上の糸球体変化を重点的に取り扱った。最近では、進行性腎損傷の主要決定要因として尿細管間質の変化に高い関心が存在していて、重要な要因の1つは尿腔および間質中のリン酸カルシウム沈殿の生成である。慢性腎疾患の進行は、リン酸の単一ネフロンろ過負荷の増加、リン酸の絶対的な尿細管再吸収の増加、尿細管の管腔中のカルシウム・リン積の増加ならびに尿細管および間質中のリン酸カルシウムの沈殿(尿細管液中のクエン酸の濃度の減少によって促進される(沈殿-石灰化仮説))に起因する慢性尿細管間質性炎症から生じる。
【0008】
沈殿-石灰化仮説は、高リン酸飼料が慢性腎疾患を悪化させるのに対して、低リン酸飼料、リン酸結合剤の投与、および3-ホスホクエン酸(リン酸カルシウム沈殿のインヒビター)が慢性腎疾患の進行を遅らせることを示す実験動物において支持される。これらの結果に基づいて、血清リン酸およびカルシウム・リン積レベルの減少ならびに血清クエン酸および3-ホスホクエン酸レベルの増加は、ネフロンの損傷を減少させ、次いで慢性腎疾患の進行を遅延させるかもしれない。2000年〜2010年の間に慢性腎疾患の進行速度を30%減速させる(糸球体ろ過量の低下率の30%減少と定義される)ことによって、推定の潜在的な累積直接医療費の節約が606.1億米国ドルになることが報告されている。
【0009】
副甲状腺機能亢進症は腎機能障害の早期発現の1つであり、60 ml/分の糸球体ろ過量(慢性腎疾患ステージ2〜3)を有する患者において骨のわずかな変化が見出されている。腎臓の状態の悪化およびリン蓄積に伴って、副甲状腺は継続的に副甲状腺ホルモン(PTH)の放出を増加させ、副甲状腺機能亢進症の発症を導く。高PTHは骨から血清へのカルシウム放出を増加させる。その結果、カルシウムおよびリンの血清中濃度が異常になり、骨疾患および骨外性石灰化が生じる。腎組織でのリン酸カルシウムの沈殿は早期に始まる。これは腎疾患の進行速度に影響し、高リン酸血症およびカルシウム・リン(CaxP)積に密接に関連するかもしれない。
【0010】
酸塩基バランスは、通常、日々の酸負荷量の腎排泄によって維持される。腎機能が低下すると、酸塩基バランスは種々の代償機構によって維持され、そのうち、近位尿細管によるアンモニア合成の増加が最も重要である。髄質におけるアンモニアの捕獲障害は、近位尿細管にアンモニアの合成を増加させる追加の需要をもたらし、その結果、腎皮質中のアンモニアの濃度が上昇する。腎皮質中の高濃度の遊離塩基アンモニアは補体活性化および間質性炎症を生じさせうる。それは進行性腎損傷の主要決定要因の1つであると報告されている。腎性アシドーシスは、骨鉱質消失、副甲状腺機能亢進症、タンパク異化の増加、インスリン抵抗性および発育不全を生じさせる。最近の観察では、アシドーシスが炎症を引き起こし、かつ慢性腎疾患の進行を加速させることが示唆される。
【0011】
慢性代謝性アシドーシスは、タンパク質代謝、ゆえに尿酸の排泄増加および腎結石の形成を生じさせうる。処置しなければ、腎結石は、尿閉塞、尿路感染症を引き起こしうる。そしてその結果、慢性腎疾患が発症しうる。
【0012】
腎臓の変性プロセスが一旦始まると、今日まで、慢性腎不全に関する治療法は存在しない。慢性腎疾患が発症しうる前に早期の予防処置として、尿路感染症(urinary track infection)、閉塞、腎結石等の基礎症状を特定し治療するか、または腎毒性作用(すなわちNSAID)を有する薬物の服用を停止することが提案されている。また、早期に食事計画を変更すること(すなわち低タンパク食)が提案されている。さらに、高血圧症および糖尿病が該疾患の最も一般的な危険因子として特定されている。慢性腎疾患の進行に対して降圧療法を使用する利点は広く調査されている。アンギオテンシン(angiotension)変換酵素インヒビター(ACEI)およびアンギオテンシン受容体ブロッカー(ARB)の使用は、糖尿病を患うかまたは患わない患者ならびにタンパク尿を患うかまたは患わない患者間で有益であることが示されている。
【0013】
しかし実際には、多数の医師は、腎不全を有する患者において、これらの薬物クラスを使用していない。その理由は、これら2クラスの薬物が血清クレアチニン(腎臓の障害の一徴候)またはカリウム(末期腎疾患を有する患者において最も一般的な生命を危うくする緊急事態)のレベルを潜在的に増加させるかもしれないからである。進行した腎不全、両側腎動脈狭窄、および単腎の腎動脈狭窄を有する患者においてこれらの薬物を使用すべきでないことが提案されている。したがって、これらの薬物は、腎疾患をすでに発症した患者に対して一般に使用されないようであり、これらの薬物は慢性腎疾患の進行を遅延させるとは期待されていない。
【0014】
慢性腎疾患の進行を治療または予防することに加えて、他の投薬、例えば鉄およびエリスロポエチン補充が慢性腎疾患患者の貧血を抑制するために必要とされる。NaHCO3は尿毒症性症候群の1つ、例えば代謝性アシドーシス(骨減少症およびカルシウムの尿中排泄を生じさせる)を改善するために使用される。
【0015】
第二鉄含有化合物は多くの障害の治療に有用であり、該障害には、非限定的に、高リン酸血症および代謝性アシドーシスが含まれる。Hsu et al., New Phosphate Binding Agents: Ferric Compounds, J Am Soc Nephrol. 10:1274-1280 (1999)を参照のこと。以前の研究および発明では、食事由来のリン酸を結合するための第二鉄化合物の使用、およびそのような第二鉄化合物が腎不全患者の高リン酸血症の治療に潜在的に有用であることが報告されている(U.S. Patent No. 5,753,706; U.S. Patent No. 6,903,235; CN 1315174; Yang et al., Nephrol. Dial. Transplant 17:265-270 (2002))。血液中の増加量のリン酸は、クエン酸第二鉄等の化合物を投与することによって除去することができる。溶液状態になると、第二鉄はリン酸を結合し、そのリン酸第二鉄化合物は消化管中で沈殿し、その結果、食事由来のリン酸が身体から効果的に除去される。また、クエン酸第二鉄から吸収されたクエン酸が炭酸水素塩に変換され、それが腎不全患者に一般的な病状である代謝性アシドーシスを治すことが考えられる。
【0016】
米国特許第5,753,706号では、食事由来の可溶性リン酸に結合し、ゆえに消化管でのリン酸第二鉄またはリン酸第一鉄としてのリン酸の沈殿を引き起こし、食事供給源由来の可溶性リン酸の経口吸収を妨げるための経口的に有効な1グラム剤形中の第二鉄含有化合物(結晶性形状のクエン酸第二鉄および酢酸第二鉄が含まれる)の使用が開示されている。消化管で第二鉄イオンが可溶性リン酸に結合するには、経口投与されたクエン酸第二鉄の溶解が必要であるため、また、結晶性クエン酸第二鉄の溶解速度は緩徐(37℃で10〜12時間に及ぶ)であるため、実質的に大量の1 gのクエン酸第二鉄を経口投与することが必要とされる。また関連中国特許出願(CN 1315174)では、腎不全患者の高リン酸血症を治療するための経口溶液剤形中のクエン酸第二鉄および関連化合物の同様の使用が開示されている。
【0017】
Fe(III)はルイス酸であり、pH 5未満の胃では、通常7を超える腸のpHより、化学的に低溶解性である。しかし、胃はFe(III)化合物の溶解に関する重要な作用部位であると考えられる。胃は、Fe(III)が、食事由来のリン酸に結合し、リン酸が腸に達するのを妨げ、ゆえにリン酸の腸からの吸収を減少させる際に、その作用を媒介するための重要な作用部位であることが考えられる。
【0018】
2004年2月18日出願の国際出願第PCT/US2004/004646号(2004年9月2日に国際公開第WO2004/074444号の下に公開されている)では、新規有機第二鉄化合物を製造する方法が開示され、該化合物には、大きい有効表面積を有し、かつ以前に報告されている調製物より広い範囲のpHにわたって可溶性のままであるクエン酸第二鉄が含まれる。またこの公開では、種々の障害、例えば高リン酸血症および代謝性アシドーシスの治療においてこれらの新規有機第二鉄化合物を使用することが教示されている。それらは、より可溶性であるため、これらの新規形態の有機第二鉄化合物を使用して、経口投与経路によって患者に有機第二鉄化合物をより効果的に送達することができる。しかし、この公開は、これらの新規形態の有機第二鉄化合物が慢性腎疾患患者の治療を提供するために有用であるかどうかを示すいかなるデータも提供しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、これらの新規形態の有機第二鉄化合物が慢性腎疾患の治療または緩和に有益ないくつかの特性を有することを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要旨
本発明の前記目的および他の目的にしたがって、本発明の簡単な要旨を示す。以下の要旨には、いくらかの簡略化および省略が施されている可能性があるが、それは本発明のいくつかの態様を強調および導入するためのものであり、その範囲を限定するためのものではない。当業者が本発明の概念を実施および使用することを可能にするために適切な好ましい典型的実施形態についての詳細な説明は後のセクションで示す。
【0021】
本発明は、慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法を提供する。有機第二鉄化合物の例はクエン酸第二鉄である。代表的な溶解速度の範囲には、非限定的に、約2.5 mg/cm2/分〜約3.0 mg/cm2/分、または約3.0 mg/cm2/分〜約3.5 mg/cm2/分、または約3.5 mg/cm2/分〜約4.0 mg/cm2/分が含まれる。
【0022】
一実施形態では、その有機第二鉄化合物は、以下のステップ: (a) 第二鉄塩を得るステップ; (b) 酸化ポリ鉄(polyiron oxide)を含む混合物を生成するのに有効な条件下で第二鉄塩に水酸化アルカリ金属を加えるステップ; (c) 混合物から沈殿を単離するステップ; (d) 沈殿に有機酸を加えるステップ; (e) 有機酸および沈殿を加熱することによって有機酸第二鉄溶液を形成させるステップ; および(f) 有機酸第二鉄溶液から、該溶液に有機溶媒を加えることによって、有機第二鉄化合物を沈殿させるステップ、を含む方法にしたがって製造する。
【0023】
一般に、被験体はヒトまたは動物である。該被験体は任意のステージの慢性腎疾患(例えば末期腎疾患)を有してよく、または腎臓透析を受けている。該有機第二鉄化合物は、経口経路または当技術分野において一般に公知の任意の他の適切な経路で投与してよく、該有機第二鉄化合物は、当技術分野において一般に公知の多数の剤形に製剤化することができる。代表的な剤形には、非限定的に、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤が含まれる。
【0024】
一実施形態では、有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体の血清クレアチニンおよびBUNレベルが減少する。別の実施形態では、有機第二鉄化合物での処置の結果、血清中のリンおよびカルシウム・リン積(CaxP)レベルが減少する。
【0025】
一実施形態では、有機第二鉄化合物で処置すると、慢性腎疾患の進行が、予防、回復(reverse)、維持、または遅延される。別の実施形態では、被験体における副甲状腺機能亢進症、骨障害、または循環器疾患の発症が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、被験体の腎組織におけるリン酸カルシウム沈殿が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、腎結石形成が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、被験体における代謝性アシドーシスの発症が、予防、回復、維持または遅延される。
【0026】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体の治療用の医薬を製造するための、本明細書中に記載の有機第二鉄化合物の使用を提供する。
【0027】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法を提供する。有機第二鉄化合物の例はクエン酸第二鉄である。一実施形態では、有機第二鉄化合物は少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する。
【0028】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための治療計画を提供する; 該治療計画は、許容しうる担体および、少なくとも2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物を含み、その場合、該医薬組成物は一回または複数回投与計画によって投与される。
【0029】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬組成物であって、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬の製造における、上記医薬組成物の使用を提供する。
【0031】
図面の詳細な説明
図面では、本発明の特定の実施形態を説明するが、いかなる意味においても本発明の思想または範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0032】
(個々の図面については後述の図面の簡単な説明を参照)
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
図面では、本発明の特定の実施形態を説明するが、それは本発明の思想を制限すると解釈されるべきではなく、または本発明を必要以上に不明瞭にすることを避けるために詳細に記載されている。したがって、本明細書および図面は制限ではなく説明の意味で考慮されるものとする。
【0034】
後述で示す結果は、本明細書中に記載の方法にしたがって製造される有機第二鉄化合物の例であるクエン酸第二鉄での処置が、慢性腎疾患を有する患者のクレアチニン、リン、カルシウム・リン積(CaxP)の血清中濃度を減少させることを示す。ゆえに、本発明の有機第二鉄化合物(非限定的にクエン酸第二鉄が含まれる)を使用して、被験体の慢性腎疾患(CKD)の進行を緩和することができる; 例えば、CKDの進行を予防するか、回復させるか、維持するか、または遅延させることができる。
【0035】
本発明は、本明細書中で開示されるクエン酸第二鉄の使用に限定されない。本発明の方法での使用に好適な他のクエン酸第二鉄化合物、またはそれらの塩、誘導体、アナログ、代謝産物、または調製物は、本出願の教示内容にしたがうことによって当業者に自明である。さらにまた、本発明の方法はまた、本明細書中に記載の方法にしたがって合成される他の有機第二鉄化合物の使用を包含する。これらの有機第二鉄化合物は、好ましくは以下の特性を有するか、または含む:
リン(phosphorous)との結合についての高親和性;
広範囲のpHにわたる可溶性;
pHに依存しない高速結合性;
高溶解性;
身体全体にわたる低吸収性;
毒性なし;
経口投与可能; および/または
製造が安価。
【0036】
本明細書中に記載のデータを考慮して、当業者はまた、本発明が、本明細書中で開示される方法にしたがって製造された有機第二鉄化合物の使用に限定されないことを容易に理解する。ゆえに、本発明は、慢性腎疾患を処置するために有機第二鉄化合物を使用する方法であって、該有機第二鉄化合物が本明細書中に記載の特定の特性を有する方法を包含することが当業者に自明である。
【0037】
一実施形態では、本明細書中に記載の方法にしたがって製造される有機第二鉄化合物は、高リン酸血症、代謝性アシドーシス、および有機第二鉄化合物治療に応答する任意の他の障害の治療に有用である。本発明の有機第二鉄化合物は市販の有機第二鉄化合物より可溶性であるため、少量の本発明の有機第二鉄化合物を使用して、そのような障害を患う患者を効果的に治療することができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、本発明のクエン酸第二鉄は、生理条件下で、市販の形態のクエン酸第二鉄より有意に高い割合の水溶性を有し、したがって本発明のクエン酸第二鉄は、低用量で経口的に有効なクエン酸第二鉄の使用に関する有意な改善を提供すると考えられる。クエン酸第二鉄の経口有効量を減少させることによって、本発明のクエン酸第二鉄は、市販のクエン酸第二鉄化合物に付随する潰瘍性の胃腸副作用の発生率の低下をもたらすと考えられる。さらに、本発明のクエン酸第二鉄の高い溶解速度は、食事由来のリン酸を結合する作用の、より高速な開始をもたらすと考えられる。さらにまた、本発明の有機第二鉄化合物は市販の有機第二鉄化合物より広いpH範囲にわたって、より可溶性であり; したがって、本発明の有機第二鉄化合物は小腸で可溶性であることによって、より有効でありうる。
【0039】
本発明の有機第二鉄化合物は、当技術分野において一般に公知の多くの形態で投与することができる。本発明の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物には、非限定的に、固形、液状、または半固形形態、例えばゲル、シロップ、チュアブルまたはペーストが含まれる。本発明の有機第二鉄化合物は、単独でまたは製薬的に許容しうる担体と組み合わせて投与することができる。経口投与可能な形態には、非限定的に、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤が含まれる。該組成物は、有機第二鉄化合物治療に応答する疾病を患っているヒトまたは他の動物に投与することができる。
【0040】
医薬品グレードのクエン酸第二鉄の有効量は当業者が容易に決定することができる。例えば、有効量は、2〜100グラム/日、好ましくは2〜60グラム/日の範囲であってよい。あるいは、1日あたりの有効量は、2、4、6、または8グラムであってよい。
【0041】
本発明の医薬品グレードの有機第二鉄化合物、例えばクエン酸第二鉄を含む組成物は、高リン酸血症または、高い血清リン酸レベルによって特徴付けられる他の障害の治療に好適である。したがって、本発明は、種々の腎疾患; 例えば、末期腎疾患(ESRD)、慢性腎疾患(CKD)または他の関連腎疾患を有する被験体または患者、または透析を受けているが血液透析に限定されない被験体および患者を治療することを包含する。
【0042】
一実施形態では、本発明の医薬品グレードの有機第二鉄化合物、例えばクエン酸第二鉄を含む組成物を使用して、代謝性アシドーシスを有する被験体または患者を治療することができる。クエン酸塩から炭酸水素塩への変換によって改善されうる他の障害もまた、上記発明に包含される。
【0043】
一実施形態では、医薬組成物を使用する方法は、慢性腎疾患を有するヒトまたは非ヒト被験体または患者を処置するステップを包含する。概して慢性腎疾患の5つの臨床ステージが存在し、それは1〜5と番号付けされ、ステージ1が最も重篤でなく、ステージ5が最も重篤である。早期、例えばステージ1および2では、透析が必要とされない。慢性腎疾患がステージ5に進行すると、患者は週3回の透析処置を必要としうる。留意すべきは、慢性腎疾患のすべてのステージで高いリン酸レベルが観察されることである。したがって、本発明の実施形態は、低い血清リン酸レベルを達成するために、医薬品グレードのクエン酸第二鉄を含む組成物で早期または中期の慢性腎疾患を有する被験体またはヒトを治療する方法である。
【0044】
別の実施形態では、本発明の医薬品グレードのクエン酸第二鉄を含む組成物を投与することによって、血液透析を受けている後期慢性腎疾患を有するヒトまたは非ヒト被験体または患者を治療する方法を提供する。血液透析は血清リン酸レベルの減少に関して十分に有効ではないことが概して知られている。後期腎疾患を有する被験体またはヒトの治療は、該被験体またはヒトが現在、血液透析治療を受けているかどうかにかかわらず適用可能である。
【0045】
本発明の追加の実施形態は、慢性腎疾患を有し、かつ腹膜透析を受けている被験体またはヒトを、本明細書中に記載の医薬品グレードのクエン酸第二鉄含有組成物で処置する方法である。腹膜透析は血清リン酸レベルの減少に関して十分に有効ではないことが知られている。
【0046】
本発明は、慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法を提供する。一般に、該被験体はヒトまたは動物である。該被験体は末期腎疾患を有していても、または腎臓透析を受けていてもよい。該方法は、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む。代表的な溶解速度の範囲には、非限定的に、約2.5 mg/cm2/分〜約3.0 mg/cm2/分、または約3.0 mg/cm2/分〜約3.5 mg/cm2/分、または約3.5 mg/cm2/分〜約4.0 mg/cm2/分が含まれる。
【0047】
一実施形態では、その有機第二鉄化合物は、以下のステップ: (a) 第二鉄塩を生成するステップ; (b) 酸化ポリ鉄を含む混合物を得るために有効な条件下で第二鉄塩に水酸化アルカリ金属を加えるステップ; (c) 混合物から沈殿を単離するステップ; (d) 沈殿に有機酸を加えるステップ; (e) 有機酸および沈殿を加熱することによって有機酸第二鉄溶液を形成させるステップ; および(f) 有機酸第二鉄溶液から、該溶液に有機溶媒を加えることによって、有機第二鉄化合物を沈殿させるステップ、を含む方法にしたがって製造される。
【0048】
一実施形態では、水酸化アルカリ金属は水酸化ナトリウムであり、第二鉄塩は塩化第二鉄六水和物であり、かつ有機酸は結晶性クエン酸である。
【0049】
一般に、水酸化アルカリ金属(例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を20 ml/分未満、好ましくは約10 ml/分〜約20 ml/分の範囲の割合で加え、40℃未満、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の温度で水酸化アルカリ金属を第二鉄塩に加える。有機酸および沈殿を約80℃〜約90℃の範囲の温度に加熱する。有機酸第二鉄溶液から有機溶媒によって有機第二鉄化合物を沈殿させるステップは、有機溶媒を加える前に有機酸第二鉄溶液を30℃未満に冷却し、好ましくは有機酸第二鉄溶液を約10℃〜約30℃の範囲の温度に冷却するステップを含む。
【0050】
有機第二鉄化合物を合成する方法において、いくつかの有機酸、例えばクエン酸、酢酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、および酒石酸を使用することができる。一実施形態では、該有機酸は結晶性形状である。さらに、本明細書中に記載の有機第二鉄化合物の合成において、いくつかの有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、およびテトラヒドロフランを使用することができる。
【0051】
有機第二鉄化合物は、当業者によって決定される有効量、例えば2〜20 gm/日で投与することができる。有機第二鉄化合物は、経口経路でまたは、当業者が容易に決定できる任意の他の適切な経路で投与することができる。一般に、有機第二鉄化合物は、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤として製剤化することができる。
【0052】
一実施形態では、有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体の血清クレアチニンおよびBUNレベルが減少する。別の実施形態では、有機第二鉄化合物での処置の結果、血清中のリン、カルシウム・リン積(CaxP)レベルが減少する。
【0053】
一実施形態では、有機第二鉄化合物で処置すると、慢性腎疾患の進行が予防、回復、維持、または遅延される。別の実施形態では、被験体における副甲状腺機能亢進症、骨障害、または循環器疾患の発症が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、被験体の腎組織におけるリン酸カルシウム沈殿が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、腎結石形成が、予防、回復、維持または遅延される。さらに別の実施形態では、被験体における代謝性アシドーシスの発症が、予防、回復、維持または遅延される。
【0054】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法を提供し、その場合、該有機第二鉄化合物は、以下のステップ: (a) 第二鉄塩を得るステップ; (b) 酸化ポリ鉄を含む混合物を得るために有効な条件下で第二鉄塩に水酸化アルカリ金属を加えるステップ; (c) 混合物から沈殿を単離するステップ; (d) 沈殿に有機酸を加えるステップ; (e) 有機酸および沈殿を加熱することによって有機酸第二鉄溶液を形成させるステップ; および(f) 有機溶媒によって有機酸第二鉄溶液から有機第二鉄化合物を沈殿させるステップ、を含む方法にしたがって製造される。この合成方法は、高い溶解速度(例えば少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度)を有する有機第二鉄化合物(例えばクエン酸第二鉄)を製造するために本明細書中に記載されている。この治療方法は上記治療効果をもたらす。
【0055】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法を提供する。有機第二鉄化合物の例には、非限定的に、クエン酸第二鉄が含まれる。一般に、該被験体はヒトまたは動物である。該被験体は末期腎疾患を有していても、または腎臓透析を受けていてもよい。一実施形態では、有機第二鉄化合物は少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する。
【0056】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための治療計画を提供し、該治療計画は、許容しうる担体および、少なくとも2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物を含み、その場合、該医薬組成物は一回または複数回投与計画によって投与される。有機第二鉄化合物の例はクエン酸第二鉄である。表1に示される、少なくとも2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有機第二鉄化合物、例えばクエン酸第二鉄は本方法において有用である。例えば、該有機第二鉄化合物の溶解速度は、約2.5 mg/cm2/分〜約3.0 mg/cm2/分、または約3.0 mg/cm2/分〜約3.5 mg/cm2/分、または約3.5 mg/cm2/分〜約4.0 mg/cm2/分でありうる。一般に、医薬組成物の少なくとも一部分を経口投与する。一実施形態では、被験体は末期腎疾患を有していてもよく、該方法は、場合により、腎臓透析または腹膜透析を含んでよい。
【0057】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬組成物であって、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する、有効量の有機第二鉄化合物(例えばクエン酸第二鉄)を含む組成物を提供する。一実施形態では、該溶解速度は約2 mg/cm2/分〜約4 mg/cm2/分である。一般に、該組成物は、経口投与に好適な形態であり、例えば錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤である。
【0058】
本発明はまた、慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬の製造における上記医薬組成物の使用を提供する。一実施形態では、該被験体は末期腎疾患を有しているか、または腎臓透析を受けている。
【0059】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【実施例1】
【0060】
実施例1
医薬品グレードの有機第二鉄化合物を合成するための一般的方法
有機第二鉄化合物を合成するための一般的方法は、PCT/US2006/032585、および米国仮出願第60/763,253号(該文献は参照により本出願に組み入れられる)に開示されている。代表的な有機第二鉄化合物には、非限定的に、クエン酸第二鉄が含まれる。
【0061】
図1を参照すると、そのフローチャート10は、本発明で使用できる形態の有機第二鉄化合物またはクエン酸第二鉄化合物を合成するための一般的プロセスである。ボックス20に記載の出発材料は可溶性第二鉄塩を含む。可溶性第二鉄塩は、ボックス21に記載の塩化第二鉄六水和物(FeCl36H2O)、または任意の他の好適な可溶性第二鉄塩を含みうる。次いで、水酸化アルカリ金属(ボックス30)を特定の速度および温度で可溶性第二鉄塩に加える。特定の速度、好ましくは約10 ml/分〜約20 ml/分の範囲で、かつ特定の温度範囲、好ましくは40℃未満で水酸化アルカリ金属を加えると、均一なポリ鉄オキソコロイド懸濁液が形成される。水酸化アルカリ金属は、ボックス31に記載の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または任意の他の好適な水酸化アルカリ金属を含みうる。
【0062】
コロイド懸濁液沈殿を回収し、蒸留水ですすいで(ボックス40)、すべての可溶性不純物を除去する。すすいだ後、沈殿を再懸濁し、ボックス50に記載のように、結晶性有機酸を沈殿に加え、特定の温度範囲、好ましくは約80℃〜約90℃の範囲に加熱する。該有機酸は任意の好適な有機酸を含みうる。ボックス51は、使用できるいくつかの有機酸候補を列挙しており、その有機酸候補には、非限定的に、クエン酸、酢酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、および酒石酸が含まれる。有機酸を加えると、該酸が溶液中の沈殿と複合体を形成することが可能になる。ボックス60では、有機溶媒を用いて有機第二鉄化合物を溶液から沈殿させ、新規形態の有機第二鉄化合物を形成させる(ボックス70)。種々の有機溶媒を使用することができ、その有機溶媒には、非限定的に、ボックス61に記載の溶媒、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、または任意の他の好適な有機溶媒が含まれる。
【0063】
クエン酸第二鉄の合成
本発明の一実施形態では、有機第二鉄化合物はクエン酸第二鉄である。クエン酸第二鉄を生成するための出発材料は、塩化第二鉄六水和物(FeCl36H2O)の1.85M溶液を含む。比1:3の第二鉄 対 水酸化物イオンを達成するために必要な5M水酸化ナトリウムの容量を、20 ml/分未満、好ましくは約10 ml/分〜約20 ml/分の範囲の速度で塩化第二鉄六水和物溶液に加える。該混合物の温度を40℃未満、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲で維持しつつ、水酸化ナトリウムを加えて、水酸化第二鉄の酸化ポリ鉄コロイド懸濁液を形成させる。該懸濁液のpHを測定しながら、水酸化ナトリウムを加える。pHが7.0を超えたら、懸濁液を30℃未満、好ましくは約10℃〜約30℃の範囲になるまで冷却する。そして1 mm孔フィルターを通して該懸濁液をろ過して凝集物を分散させ、大きい粒子の水酸化第二鉄沈殿を除去する。そしてろ過した水酸化第二鉄懸濁液を遠心分離する。上清を廃棄し、沈殿させた水酸化第二鉄を再び遠心分離して、すべての残りの上清を除去する。そして水酸化第二鉄沈殿を蒸留水で再懸濁する。遠心分離-再懸濁ステップをさらに2回反復して、水酸化第二鉄沈殿を洗浄し、水溶性不純物を除去する。そして得られた水酸化第二鉄沈殿をホモジナイズする。
【0064】
比1:1の第二鉄 対 クエン酸を達成するために必要なクエン酸の量を沈殿に加える。混合物の色がオレンジ〜褐色から澄んだ黒色〜褐色に変化するまで、またはすべての水酸化第二鉄沈殿が溶解するまで、油浴中で混合物を約80℃〜約90℃の範囲に加熱する。反応物を30℃未満、好ましくは約10℃〜約30℃の範囲になるまで冷却し、pHを測定して、0.8〜1.5の範囲内であることを決定する。反応物を遠心分離し、上清を回収する。5倍容量の有機溶媒を加えることによって、上清からクエン酸第二鉄を沈殿させる。
【0065】
種々の有機溶媒を使用することができ、その有機溶媒には、エタノール、メタノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランが含まれる。溶媒を加えたら、淡いベージュ色沈殿が形成されるまで混合物を攪拌する。懸濁液を遠心分離し、上清を廃棄する。沈殿を、さらに2回、溶媒で洗浄し遠心分離する。そして沈殿を、周囲温度で8〜16時間真空オーブンで乾燥するか、または任意の他の好適な工業プロセス、例えば流動床乾燥によって乾燥する。乾燥させた沈殿を乳鉢および乳棒で砕き、周囲温度でさらに8〜24時間乾燥する。微細な沈殿を再び粉砕することによって細かく砕き、45メッシュサイズ(35ミクロン)のふるいに通してふるい分けする。その新規形態のクエン酸第二鉄粉末を、真空オーブンで再び、または流動床乾燥で再び乾燥し、1時間の乾燥によって0.25%未満の重量減少に至るまで周囲温度で乾燥する。
【実施例2】
【0066】
実施例2
本発明に係る有機第二鉄化合物の溶解性プロファイル
上記方法にしたがって製造された有機第二鉄化合物は、より広範囲のpHレベルにわたって、市販の有機第二鉄化合物よりもさらに可溶性である。本発明の有機第二鉄化合物のこの溶解性の増加は、本発明の有機第二鉄化合物の独特の非常に大きい有効表面積に起因すると考えられる。例えば、pH 8.0で、本発明のクエン酸第二鉄の固有溶解速度(intrinsic dissolution rate)は市販のクエン酸第二鉄より3.32倍高い。表1を参照のこと。
【0067】
市販のクエン酸第二鉄の固有溶解速度を本発明のクエン酸第二鉄と比較した。固有溶解速度とは、一定表面積の条件下での純粋な物質の溶解速度として定義される。製剤原料の溶解速度およびバイオアベイラビリティは、その固体特性: 結晶化度、無定形性(amorphism)、多形性、水和、溶媒和、粒子サイズおよび粒子表面積によって影響される。測定された固有溶解速度はこれらの固体特性に依存しており、典型的には、一定温度、撹拌速度、およびpHを維持しながら、物質の一定表面積を適切な溶解媒体に曝露することによって測定される。固有溶解速度を表1に示す。
【表1】

【0068】
本発明のクエン酸第二鉄のBET有効表面積は、市販のクエン酸第二鉄より、少なくとも16倍大きい。表2を参照のこと。
【0069】
有効表面積の分析はBET理論に基づく。該理論は、固体表面に対するおよび間隙中の気体吸着の際の質量とエネルギーの相互作用および相転移の現象を説明するものである。BET有効表面積測定では、単層の気体の容積を決定し、それにより単一層の吸着気体分子によって占有される面積を用いてサンプルの表面積を決定することが可能になる。表2は、市販のクエン酸第二鉄化合物の有効表面積と比較された本発明のクエン酸第二鉄の有効表面積の比較である。
【表2】

【実施例3】
【0070】
実施例3
患者における医薬品グレードのクエン酸第二鉄の使用および試験方法
試験組成物の取扱いおよび形態
クエン酸第二鉄を500 mgカプセル剤中に供給し、一方、同じ外観の(活性薬物を含有するカプセル剤と識別できない)カプセル剤中にプラセボを提供する。すなわち、プラセボカプセル剤には、活性カプセル剤の粉末色に合わせるためにソルビトールおよび着色剤を含有させる。プラセボカプセル剤の殻は活性カプセル剤の殻と同一である。
【0071】
保存
すべての研究薬物供給品を安定条件下で保存する必要があり、研究薬物容器に刻印されているその有効期限後に使用するべきではない。研究薬物は、遮光された密閉容器中で、制御条件下(15〜30℃; 59〜86°F)で保存されるべきである。
【0072】
用量
最近の予備研究で、末期腎疾患(ESRD)を有する患者の血清P04の減少に関して、クエン酸第二鉄(3 g/日)と炭酸カルシウム(3g/日)を比較した。このクエン酸第二鉄の用量は、軽度であるが許容可能なGI症状を伴った。
【0073】
研究または治療のために選択されるクエン酸第二鉄の用量は、1〜30グラム/日のクエン酸第二鉄であってよい。この用量は、部分的には、提供される製剤の性質に依存しうる。例えば、クエン酸第二鉄カプセル剤は約15グラム/日の一日量まで投与してよく、一方、錠剤形態では30グラム/日まで投与してよい。ゆえに、非常に広範囲の投与計画が本発明に包含される。
【0074】
被験体に最適な用量の滴定
本発明に関して、用語「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物を表す。個々の被験体または被験体群の最適用量は以下のように決定することができる。約1または2グラム/日の用量は単に例示的な出発用量として示唆される。必要に応じて、所望の結果が観察されるまで一日量を増やしてよい。
【0075】
本発明は、使用される用量範囲を限定することを意図しない。したがって、被験体(群)に応じて、一日の投与量は概ね30、40、50、60、70、80、90、または100グラム/日であってよい。医薬品グレードのクエン酸第二鉄の安全性プロファイルにより、広範囲の用量の実施が可能になる。
【0076】
さらに、本発明は、経口製剤であるカプセル剤および錠剤に限定されないものとする。多種多様な経口製剤が本発明による使用に適合するであろうことは当技術分野において知られている。
【0077】
投与計画の例示的実施例
投与計画の非限定的な例を以下に挙げる。これは、クエン酸第二鉄の有効量の選択方法、またはそれを提供する際の剤形または1日あたりの該組成物を投与する頻度に関して、本発明を限定することを意味しない。以下は、クエン酸第二鉄およびプラセボをどのように投与できるかを単に説明するものである。例えば、同じ外観の500 mgカプセル剤として投与する。すべての患者は、28日間、毎日、3回の各食事とともに4個のカプセル剤を(盲検方式で)受け取る。患者は、食事(朝食、昼食、および夕食)を終えて10分以内に研究薬物を摂取するよう指示される。
【0078】
各食事のときに摂取されるプラセボ、および活性カプセル剤の数は以下の通りである。
【0079】
本研究のプラセボ治療群
朝食とともに、4個のプラセボカプセル剤
昼食とともに、4個のプラセボカプセル剤
夕食とともに、4個のプラセボカプセル剤。
【0080】
本研究のクエン酸第二鉄2 g/日の治療群
朝食とともに、1個のクエン酸第二鉄カプセル剤および3個のプラセボカプセル剤
昼食とともに、1個のクエン酸第二鉄カプセル剤および3個のプラセボカプセル剤
夕食とともに、2個のクエン酸第二鉄カプセル剤および2個のプラセボカプセル剤。
【0081】
クエン酸第二鉄4 g/日の治療群
朝食とともに、2個のクエン酸第二鉄カプセル剤および2個のプラセボカプセル剤
昼食とともに、3個のクエン酸第二鉄カプセル剤および1個のプラセボカプセル剤
夕食とともに、3個のクエン酸第二鉄カプセル剤および1個のプラセボカプセル剤。
【0082】
クエン酸第二鉄6 g/日の治療群
朝食とともに、4個のクエン酸第二鉄カプセル剤
昼食とともに、4個のクエン酸第二鉄カプセル剤
夕食とともに、4個のクエン酸第二鉄カプセル剤。
【0083】
臨床スケジュールおよび評価
各患者の試験への参加は、8週間まで(スクリーニング期間(約1〜2週間)、1〜2週間の洗い出し、および4週間の研究薬物での処置)続ける。
【0084】
スクリーニング訪問(Screening Visit) 1 (研究-30〜-15日目)
最初のスクリーニング訪問時に以下の手順を実施する。
【0085】
1. 病歴(併用薬物治療を含む)。
【0086】
2. 人口統計データ。
【0087】
3. 身体検査(身長、体重、および生命徴候を含む)。
【0088】
4. 24時間想起法を用いてカルシウムおよびリンの食事摂取を評価する、スクリーニング期間中3回(1透析日、1非透析日、および1週末日を含む)の食事問診。注記: 食事問診は、部分的または全体的に、洗い出し期間中に実施してもよい。
【0089】
5. 実験室評価:
a. 血液学: 全血算(CBC) (分画(differential)による)、血小板
b. 化学物質: ナトリウム、カリウム、クロライド、炭酸水素塩、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、グルコース(ランダム)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン、血清カルシウム、血清リン酸、マグネシウム
c. 総コレステロールおよびLDLコレステロールレベル
d. 血清(妊娠の可能性がある女性については3-HCG)
e. 鉄パネル: 血清鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和パーセンテージ、および総鉄結合能。
【0090】
6. 12誘導ECG。
【0091】
7. 患者に洗い出し期間に関する指示を与える(研究-14〜-1日目):
a. -14日目にすべてのリン酸結合物質を中止する
b. -14日目にすべての鉄治療(経口または静脈内)を中止する
c. 安定な用量のビタミンDまたはカルシトリオールを登録前1か月間服用した患者に、研究の間中、その現在の用量を維持するよう指示する
d. 患者に、食事、カルシウムまたはマグネシウム含有制酸剤(他の薬剤)の変化を避けるようアドバイスする。
【0092】
スクリーニング訪問2 (研究日 -7 +/- 1日目)
血清P04の実験室評価。2週間の洗い出しが完了する前に、-7日目に5.5 mg/dL以上で10 mg/dL以下の血清P04を有する患者を無作為化してよい。無作為化の日は自動的に0日目になる。-7日目に10 mg/dL以上のリン酸レベルを有する患者を研究から除き、彼らの研究前薬物治療を再開するよう指示する。
【0093】
研究0日目(無作為化および投薬)
1. 身体検査(体重および生命徴候を含む)。
【0094】
2. 有害イベントの質問。
【0095】
3. 併用薬物治療の質問。
【0096】
4. ベースライン実験室評価:
a. 血清P04;
b. 血清Ca;
c. 鉄パネル: 血清鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和パーセンテージ、および総鉄結合能。ベースライン実験室評価は0日目の3日前までに行いうる。
【0097】
5. 0.5 mg/dL以上で10 mg/dL以下のP04レベルを有する患者を無作為化し、研究薬物の15日間供給を施す。患者は、0日目に、次の食事の終了後10分以内に研究薬物を摂取し始めるよう指示されるべきである。
【0098】
研究14日目(中間評価)
研究日 14 +/- 1日目に以下の手順を実施する。
【0099】
1. 身体検査(体重および生命徴候を含む)。
【0100】
2. 有害イベントの質問。
【0101】
3. 併用薬物治療の質問。
【0102】
4. 研究薬物の追加の15日間供給の調剤。すべての返送カプセル剤をカウントし、症例報告書に記録すべきである。
【0103】
5. 実験室評価:
a. 血液学: CBC (分画による)、血小板
b. 化学物質: ナトリウム、カリウム、クロライド、炭酸水素塩、BUN、クレアチニン、グルコース(ランダム)、AST、ALT、ALP、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン、カルシウム、リン酸、マグネシウム
c. 鉄パネル: 血清鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和パーセンテージ、および総鉄結合能
d. 総コレステロールおよびLDLコレステロールレベル。
【0104】
注記: 14日目に10 mg/dLより高いリン酸レベルを有する患者を研究から除き、彼らの研究前薬物治療を再開するよう指示する。
【0105】
研究28日目(研究評価の終了)
研究日 28 +/- 1日目または早期終了の日に以下の手順を実施する。
【0106】
1. 身体検査(体重および生命徴候を含む)。
【0107】
2. 有害イベントの質問。
【0108】
3. 併用薬物治療の質問。
【0109】
4. 実験室評価:
a. 血液学: CBC (分画による)、血小板
b. 化学物質: ナトリウム、カリウム、クロライド、炭酸水素塩、BUN、クレアチニン、グルコース(ランダム)、AST、ALT、ALP、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン、カルシウム、リン酸、マグネシウム
c. 総コレステロールおよびLDLコレステロールレベル
d. 鉄パネル: 血清鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和パーセンテージ、および総鉄結合能。
【0110】
5. 12誘導ECG。
【0111】
6. 研究終了後、患者に彼らの研究前薬物治療を再開するよう指示する。
【0112】
データ管理および解析
GloboMaxは、一次データ管理、モニタリング、およびコーディネートセンターである。各被験体に関して症例報告書(CRF)を用意する。CRFでは、被験体は氏名またはイニシャルによって特定されない。CRFは、臨床現場でモニターされ、GloboMaxの研究モニターによって収集される。検査済みCRFを使用して、電子データファイルを作成する。
【0113】
評価項目の3つの主要カテゴリーは、最初から扱われている生化学的および臨床的問題を反映する。追加の臨床的および生化学的問題は、発生次第、扱われる。したがって、該評価項目は、これらの研究または将来の研究で収集される関連の所見および測定の全体を限定するためのものではない。
【0114】
一次評価項目
ベースラインからの14および28日目の血清P04濃度の変化。
【0115】
二次評価項目
ベースラインからの14および28日目の血清カルシウム濃度の変化。
【0116】
ベースラインからの14および28日目の鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和パーセンテージ、および総鉄結合能の変化。
【0117】
ベースラインからの14および28日目のCa・PO4積の変化。
【0118】
安全性評価項目
各研究訪問時の、有害イベントならびに、身体検査、生命徴候および臨床検査の結果を記録することによって、安全性をモニターする。
【0119】
さらに、研究からの離脱に関する具体的規則が、実験室データに基づいて、患者の安全を確保するために定められている。そのような基準の非限定的な例は以下の記載によって説明される:
患者の血清リン酸レベルが研究期間中の任意の時点で10 mg/dL以上に増加した場合、該患者を研究から離脱させる。
【実施例4】
【0120】
実施例4
末期腎疾患(ESRD)患者における血清リン酸に対するクエン酸第二鉄の効果についての無作為化、二重盲検、プラセボ対照化、用量範囲決定(Dose-Ranging)研究
目的: (1) 末期腎疾患(ESRD)患者における血清リン酸(PO4)レベルに対する、28日間にわたり、TID (3回/日)で投与される、2、4および6 g/日の用量のクエン酸第二鉄の効果を決定すること。(2) ESRD患者において、28日間の、TID投与される、2、4、6 g/日の用量のクエン酸第二鉄の安全性を評価すること。
【0121】
研究薬物: 米国第11/206,981号およびWO 2004/07444に開示されているクエン酸第二鉄。
【0122】
研究デザイン: 血液透析を受けているESRD患者の血清リン酸濃度に対するクエン酸第二鉄の効果を評価するための、無作為化、二重盲検、プラセボ対照化、用量範囲決定研究。血清リン酸濃度によって測定される有効性に関して、研究14および28日目に患者を評価する。さらに、1以上の用量の研究薬物を投与された患者を安全性に関して評価する。
【0123】
研究期間: 8週間(スクリーニング期間、2週間の洗い出し、4週間の処置を含む)。
【0124】
結果は、0、2、4および6 gm/日(食事直後、すなわち10分以内にTIDで投与される)で、血清PO4およびCa×PO4の減少を示す。クエン酸第二鉄を経口投与し、3回/日で均等に与える。
【0125】
クエン酸第二鉄の、ESRD患者の血清リン酸レベルを低下させる能力が実証された。プラセボ、2、4、および6 gm/日に関して、28日間、血清カルシウムレベルの有意な変化は観察されなかった。しかし、Ca×PO4レベルは減少し、14および28日目の両時点で6 gm/日の用量に関して統計学的に有意であった。さらにこの結果は、クエン酸第二鉄での処置後に石灰化が回復するか、または安定化されうることも示す。以下の表に本研究のデータをまとめる。
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
【表5】

【0128】
【表6】

【0129】
【表7】

【0130】
図2および3に示されるように、医薬品グレードのクエン酸第二鉄を使用する処置は、ケミカルグレードのクエン酸第二鉄より優れたいくつかの利点を提供する。一般に、医薬品グレードのクエン酸第二鉄はケミカルグレードのクエン酸第二鉄と概ね等しい効力を示すが、医薬品グレードのクエン酸第二鉄はこの結果をケミカルグレードのクエン酸第二鉄より少ない有害副作用しか伴わずに達成する。
【0131】
図2はまた、医薬品グレードのクエン酸第二鉄の投与に伴う有害副作用が、プラセボに伴う有害副作用と統計学的に相違しなかったことを示す。この安全性プロファイルの利点は、個々の患者が、副作用について少ない懸念で、広範囲の用量にわたって滴定された医薬品グレードのクエン酸第二鉄の投薬を受けることができることである。このように、患者の個別の処置を、具体的なニーズおよび耐容性に合わせてオーダーメード化することができる。
【0132】
血清クレアチニンレベルの減少
糸球体ろ過量(GFR)レベルは構造的な腎臓損傷と相関し、したがって腎機能を測定するための黄金標準として使用される。GFRは、バイオマーカーである血清クレアチニンによって推定することができる。腎機能が悪化すると、腎臓は、クレアチニンを効率的に排泄するその機能を失い、その結果、体内にクレアチニンが保持される。したがって、血清クレアチニンの増加はGFRの低下を示し、それは腎臓悪化の重要な徴候である。
【0133】
第二相臨床研究: 「末期腎疾患(ESRD)患者の血清リン酸に対するクエン酸第二鉄の効果についての無作為化、二重盲検、プラセボ対照化、用量範囲決定研究」の非盲検拡張研究では、一部の患者に2〜6g/日のクエン酸第二鉄を投与し、血清クレアチニンレベルをモニターして、腎機能を評価した。6g/日のクエン酸第二鉄を投与された複数の患者が血清クレアチニンレベルの減少傾向を有するようであり、このことは、クエン酸第二鉄が慢性腎疾患の進行を改善し、遅延させ、および阻止させるか、または予防することを意味する。2人の患者から得られた結果を図5〜6に示す。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、本発明に係る新規形態の有機第二鉄化合物の生成方法を概説する模式図である。
【図2】図2は、ケミカルグレードおよび医薬品グレードのクエン酸第二鉄の安全性プロファイルの比較である。
【図3】図3は、ケミカルグレードおよび医薬品グレードのクエン酸第二鉄の効力プロファイルの比較である。
【図4】図4は、透析患者死亡率と高リン酸血症の割合の間の関連についての棒グラフを示す。
【図5】図5は、6g/日のクエン酸第二鉄で処置された患者(患者コード: 2-01-1-029)の血清クレアチニンレベルを示す。
【図6】図6は、6g/日のクエン酸第二鉄で処置された患者(患者コード: 2-01-1-032)の血清クレアチニンレベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約2.5 mg/cm2/分〜約3.0 mg/cm2/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約3.0 mg/cm2/分〜約3.5 mg/cm2/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約3.5 mg/cm2/分〜約4.0 mg/cm2/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機第二鉄化合物が、以下のステップ:
a) 第二鉄塩を得るステップ;
b) 酸化ポリ鉄(polyiron oxide)を含む混合物を生成するのに好適な条件下で水酸化アルカリ金属を第二鉄塩に加えるステップ;
c) 混合物から沈殿を単離するステップ;
d) 沈殿に有機酸を加えるステップ;
e) 有機酸および沈殿を加熱して、それにより有機酸第二鉄溶液を形成させるステップ; および
f) 有機溶媒によって有機酸第二鉄溶液から有機第二鉄化合物を沈殿させるステップ
を含む方法にしたがって製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水酸化アルカリ金属が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
20 ml/分未満の速度で水酸化アルカリ金属を加え、かつ40℃未満の温度で水酸化アルカリ金属を第二鉄塩に加える、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
有機酸および沈殿を約80℃〜約90℃の温度に加熱し、かつ有機溶媒によって有機酸第二鉄溶液から有機第二鉄化合物を沈殿させるステップが、有機溶媒を加える前に有機酸第二鉄溶液を30℃未満に冷却するステップを含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機酸が結晶性形状である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
有機酸が、クエン酸、酢酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、および酒石酸からなる群から選択される、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が、エタノール、メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第二鉄塩が塩化第二鉄六水和物であり、水酸化アルカリ金属が水酸化ナトリウムであり、かつ有機酸が結晶性クエン酸である、請求項5〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
被験体がヒトまたは動物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
慢性腎疾患が任意のステージの慢性腎疾患および末期腎疾患を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
被験体が腎臓透析を受けている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
有機第二鉄化合物を約2〜20 gm/日の用量で投与する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
有機第二鉄化合物を経口でまたは任意の他の適切な経路で投与する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
有機第二鉄化合物を、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤として製剤化する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体中の1種以上の物質の血清中濃度が減少し、該物質が、クレアチニン、BUN、リン、およびカルシウム・リン積(CaxP)からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体の1種以上の病状が、予防されるか、回復するか、維持されるか、または遅延され、該病状が、慢性腎疾患の進行、副甲状腺機能亢進症の発症、骨障害の発症、循環器疾患の発症、腎組織におけるリン酸カルシウムの沈殿、腎結石形成、および代謝性アシドーシスの発症からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
慢性腎疾患を有する被験体を治療する方法であって、有効量の有機第二鉄化合物を該被験体に投与するステップを含む方法。
【請求項22】
有機第二鉄化合物を経口投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
被験体がヒトまたは動物である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
被験体が任意のステージの慢性腎疾患を有しているか、または腎臓透析を受けている、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
有機第二鉄化合物を、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤として製剤化する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
有機第二鉄化合物が少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体中の1種以上の物質の血清中濃度が減少し、該物質が、クレアチニン、BUN、リン、カルシウム・リン積(CaxP)からなる群から選択される、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
有機第二鉄化合物での処置の結果、被験体の1種以上の病状が、予防されるか、回復するか、維持されるか、または遅延され、該病状が、慢性腎疾患の進行、副甲状腺機能亢進症の発症、骨障害の発症、循環器疾患の発症、腎組織におけるリン酸カルシウムの沈殿、腎結石形成、および代謝性アシドーシスの発症からなる群から選択される、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
有機第二鉄化合物がクエン酸第二鉄である、請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
慢性腎疾患を有する被験体のための治療計画であって、許容しうる担体および、少なくとも2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物を含み、ここで該医薬組成物を一回または複数回投与計画で投与する、治療計画。
【請求項31】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約2.5 mg/cm2/分〜約3.0 mg/cm2/分である、請求項30に記載の治療計画。
【請求項32】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約3.0 mg/cm2/分〜約3.5 mg/cm2/分である、請求項30に記載の治療計画。
【請求項33】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約3.5 mg/cm2/分〜約4.0 mg/cm2/分である、請求項30に記載の治療計画。
【請求項34】
医薬組成物の少なくとも一部分を経口投与する、請求項30〜33のいずれか一項に記載の治療計画。
【請求項35】
慢性腎疾患が任意のステージの慢性腎疾患および末期腎疾患を含む、請求項30に記載の治療計画。
【請求項36】
腎臓透析または腹膜透析をさらに含む、請求項30〜35のいずれか一項に記載の治療計画。
【請求項37】
有機第二鉄化合物を、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤として製剤化する、請求項30〜36のいずれか一項に記載の治療計画。
【請求項38】
有機第二鉄化合物がクエン酸第二鉄である、請求項30〜37のいずれか一項に記載の治療計画。
【請求項39】
慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬組成物であって、少なくとも約2 mg/cm2/分の溶解速度を有する有効量の有機第二鉄化合物を含む医薬組成物。
【請求項40】
有機第二鉄化合物の溶解速度が約2 mg/cm2/分〜約4 mg/cm2/分である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
有機第二鉄化合物がクエン酸第二鉄である、請求項39または40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
経口投与に適した剤形である、請求項39〜41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
経口投与に適した剤形が、錠剤、散剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、トローチ剤、丸剤、液剤、酒精剤、またはシロップ剤である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
慢性腎疾患を有する被験体を治療するための医薬の製造における、請求項39〜43に記載のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項45】
被験体が任意のステージの慢性腎疾患を有しているか、または腎臓透析を受けている、請求項44に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−525276(P2009−525276A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552431(P2008−552431)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002151
【国際公開番号】WO2007/089571
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505311733)グロボアジア エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】