説明

慣性力センサ

【課題】本発明は、外乱振動を抑制して検出精度を損なわずに小型化した慣性力センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の慣性力センサは、角速度検出素子61と、この角速度検出素子61を上面に中空保持する載置部63とこの載置部63に配線パターン64を介して接続された外方部65とからなる防振手段62と、角速度検出素子61からの出力信号を処理するIC67と、角速度検出素子61、防振手段62およびIC67を収納するパッケージ68とを備え、パッケージ68の内底面に加速度検出手段66を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、自動車、ロボット、船舶、車両等の移動体の姿勢制御やナビゲーション等、各種電子機器に用いられる慣性力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の慣性力センサの一つである角速度センサについて説明する。
【0003】
図9は従来の角速度センサの分解斜視図、図10は同角速度センサの断面図である。
【0004】
図9、図10において、従来の角速度センサは、音叉形状の振動子からなる振動型の角速度検出素子2と、この角速度検出素子2から出力される出力信号を処理するIC4と、信号処理用のコンデンサ6とを備えている。
【0005】
上記した角速度検出素子2とIC4およびコンデンサ6は、互いに並べてケース8に実装するとともに蓋10をし、そしてこの蓋10をしたケース8をパッケージ12に収納してカバー14をしている。
【0006】
また、前記パッケージ12の内部にはケース8を載置する載置部16を形成しており、かつこの載置部16はS字状の屈曲部を有する端子18を介してパッケージ12に接続されている。
【0007】
そしてまた、前記ケース8に配置した電極パッド20を介して、S字状の屈曲部を有する端子18と角速度検出素子2およびIC4を互いに電気的に接続しており、そして前記端子18を介して信号の入出力を行っている。
【0008】
このような角速度センサを検出したい検出軸に対応させて、車両等の移動体の姿勢制御装置やナビゲーション装置等に用いている。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第03/046479号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来の構成では、ケース8を載置する載置部16がS字状の屈曲部を有する端子18を介してパッケージ12に接続されているため、このS字状の屈曲部を有する端子18によって、衝撃等に起因した角速度センサへの外乱振動を抑制することができる。しかしながら、ケース8に配置される角速度検出素子2とIC4は互いに並べて配置されるため、ケース8内の実装面積が大きくなってケース8の小型化が図れないという問題点を有していた。また、角速度検出素子2と端子18およびIC4と端子18は、ケース8の電極パッド20を介して電気的な接続を行っているため、ケース8の電極パッド20の配置数も多くなってケース8の小型化が図れないという問題点を有していた。
【0012】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、外乱振動を抑制しつつ、角速度検出素子とICとの実装面積を低減させることができ、かつ信号の入出力のための電極パッドの配置数も低減して小型化が図れる慣性力センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、角速度検出素子と、この角速度検出素子を上面に中空保持する載置部とこの載置部に配線パターンを介して接続された外方部とからなる防振手段と、角速度検出素子からの出力信号を処理するICと、角速度検出素子、防振手段およびICを収納するパッケージとを備え、パッケージの内底面に加速度検出手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、載置部を中空保持しつつ配線パターンを介して接続された外方部によってパッケージに取り付けているため、慣性力センサの小型化が図れるとともに、配線パターンが防振機能の役割を果たし、そしてこの配線パターンによって外乱振動を吸収することができる。特に、防振手段における載置部の下面に加速度検出手段を設けた場合は、防振手段における載置部の上面側に設けた角速度検出素子の質量を、載置部の下面に設けた加速度検出手段の質量と略同一とすることにより、角速度検出素子、載置部および加速度検出手段を合わせた重心のずれに起因して角速度検出素子に測定する角速度以外の角速度が発生したり、また加速度検出手段に測定する加速度以外の加速度が発生したりすることはなくなるため、角速度および加速度の検出信号の精度が向上するという効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における角速度センサの分解斜視図
【図2】同角速度センサの防振手段の上面図
【図3】同角速度センサの防振手段の下面図
【図4】パッケージに収納する前の同角速度センサの斜視図
【図5】振動伝達率と振動周波数の関係を示す減衰特性図
【図6】本発明の実施の形態1における他の角速度センサの例を示す分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における角速度センサの側断面図
【図8】本発明の実施の形態2における他の角速度センサの側断面図
【図9】従来の角速度センサの分解斜視図
【図10】従来の角速度センサの一部透視断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜3に記載の発明について説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態1における慣性力センサの一つである角速度センサの分解斜視図、図2は同角速度センサの防振手段の上面図、図3は同角速度センサの防振手段の下面図、図4はパッケージに収納する前の同角速度センサの斜視図である。
【0019】
図1〜図4において、本発明の実施の形態1における角速度センサは、音叉形状等の振動子からなる振動型の角速度検出素子32と、加速度センサからなる加速度検出手段33と、前記角速度検出素子32および加速度検出手段33から出力される出力信号を処理するIC34と、信号処理用のコンデンサ36と、前記角速度検出素子32、加速度検出手段33、IC34およびコンデンサ36を収納するパッケージ38と、蓋39とを備えている。
【0020】
前記角速度検出素子32およびIC34は防振手段を介してパッケージ38に収納されるもので、前記防振手段は、角速度検出素子32を積層したIC34を載置する載置部40と、この載置部40の外方に分離して配置されるとともに配線パターン42を介して接続された外方部44とを有するTABテープ46により構成され、そして、このとき、角速度検出素子32の重心と、IC34の重心と、載置部40の重心とが互いに同一軸上に配置されるように、載置部40の上に角速度検出素子32とIC34とを載置しているものである。
【0021】
また、前記TABテープ46は、載置部40および外方部44を絶縁フィルムで形成しており、そして載置部40の中心に対して点対称な形状および配置となるように配線パターン42を絶縁フィルムに接着配置して形成している。そしてまた、パッケージ38の底面部に設けた段差部47にTABテープ46の外方部44を載置して取り付けることにより、前記載置部40を中空保持しつつ、この空間を利用して、パッケージ38の底面に段差部47の高さ以下のコンデンサ36を配置している。
【0022】
さらに、前記角速度検出素子32は入出力信号用の素子用電極パッド48を有し、かつIC34は入出力信号用のIC用電極パッド50を有し、そしてパッケージ38は前記素子用電極パッド48またはIC用電極パッド50との接続用電極パッド52を有している。また、前記IC用電極パッド50は角速度検出素子32の外方に配置して、素子用電極パッド48またはIC用電極パッド50と配線パターン42とを電気的に接続するとともに、素子用電極パッド48、IC用電極パッド50または配線パターン42と接続用電極パッド52とをボンディングワイヤー54等によって電気的に接続している。そしてまた、前記配線パターン42を介して信号の入出力を行っているものである。
【0023】
そして、上記したような角速度センサを検出したい検出軸に対応させて、車両等の移動体の姿勢制御装置やナビゲーション装置等に用いているものである。
【0024】
上記構成によれば、角速度検出素子32をIC34に積層しているため、載置部40に対する実装面積を低減させることができ、これにより、小型化が図れるとともに、載置部40を中空保持しつつ配線パターン42を介して接続された外方部44によってパッケージ38に取り付けているため、配線パターン42が防振機能の役割を果たし、そしてこの配線パターン42によって外乱振動を吸収することができる。このように本発明の実施の形態1においては、外乱振動を抑制しながら検出精度を損なわずに小型化を図ることができるものである。
【0025】
ここで、防振機能の減衰特性について、図5を用いて説明する。図5は、外乱振動の振動周波数と振動伝達率の関係を示す減衰特性図である。特性波Aを基準の減衰特性波とすると、この特性波Aでは外乱振動の振動周波数が2000Hz近傍にて振動伝達率が最大であり、高域側に推移するにつれて振動伝達率は小さくなる。また、特性波Bでは特性波Aよりも低域側にて振動伝達率が最大であり、特性波Cでは特性波Aよりも高域側にて振動伝達率が最大であり、特性波Bも特性波Cも高域側に推移するにつれて振動伝達率は小さくなる。特性波Aと特性波Bとを比較すると、特性波Aの振動伝達率が最大を示す外乱振動の振動周波数値よりも高域側の帯域では特性波Bの方が減衰率は大きく、特性波Aと特性波Cとを比較すると、特性波Cの振動伝達率が最大を示す外乱振動の振動周波数値よりも高域側の帯域では特性波Aの方が減衰率は大きい。この振動周波数は、次式で表される。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、fは振動伝達率が最大となる共振振動周波数、αは係数、kは配線パターン42によるバネ定数、mは配線パターン42を介して外方部44に支持されている物体の合計の質量であり、本発明の実施の形態1では、主として載置部40、角速度検出素子32およびIC34の合計質量である。
【0028】
本発明の実施の形態1では、角速度検出素子32の振動周波数を約22000Hz程度としており、高域側での減衰特性が良い特性波Bのような波形を得るために、kの剛性を加え、mを大きくしている。すなわち、本発明の実施の形態1では、角速度検出素子32をIC34に積層することにより、配線パターン42を介して外方部44に支持されている物体の合計の質量(m)を大きくして、より高帯域側における外乱振動の吸収率を向上させている。これにより、角速度検出素子32が約22000Hz程度で振動している際に、この振動周波数に近似した周波数の外乱振動が加わっても、この外乱振動を効率よく減衰させることができるため、角速度検出素子32の振動に悪影響が生じるのを抑制できるものである。
【0029】
この場合、本発明の実施の形態1においては、角速度検出素子32の重心と、IC34の重心と、載置部40の重心とを互いに同一軸上に配置しているため、載置部40の重心を中心にして、配線パターン42には均等に質量がかかることになり、これにより、角速度検出素子32を安定した状態で載置部40に載置することができるため、角速度検出素子32の感度劣化を抑制できるものである。載置部40の重心とIC34の重心とが同一軸上からずれたり、載置部40の重心と角速度検出素子32の重心とが同一軸上からずれたりした場合には、例えば、センサに外力が働くと、重心のずれに起因して載置部40にモーメントが働いて角速度検出素子32が安定して載置されないため、角速度検出素子32の感度に悪影響を与えるおそれがある。上記説明において、角速度検出素子32の重心と、IC34の重心と、載置部40の重心とを互いに同一軸上に配置するとは、略同一軸上も含むものである。
【0030】
また、角速度検出素子32をIC34に積層しているため、角速度検出素子32の小型化が図られたとしてもIC34上に安定した状態で実装することができる。振動型の角速度検出素子32は、振動用の振動部位と実装固定用の固定部位とを有するが、振動しない固定部位の面積は角速度検出素子32の全体の面積に比べて小さくなるため、IC34の上に角速度検出素子32の固定部位を配置して角速度検出素子32を取り付けることにより、安定度が高くなって特性劣化を抑制できるものである。
【0031】
そしてまた、角速度検出素子32と配線パターン42およびIC34と配線パターン42をボンディングワイヤー54等によって電気的に接続しているため、パッケージ38における電気的な接続箇所を低減することができ、これにより、小型化が図れるものである。
【0032】
さらに、安定度の向上のためにIC34の上に角速度検出素子32を載置し、かつIC用電極パッド50は角速度検出素子32の外方に配置しているため、素子用電極パッド48とIC用電極パッド50とを必要に応じて電気的に接続することができ、これにより、素子用電極パッド48またはIC用電極パッド50の全てをパッケージ38に配置した接続用電極パッド52と電気的に接続する必要がなくなる。また、防振手段を構成する載置部40の上にIC34を載置し、かつ配線パターン42はIC34の外方に配置しているため、素子用電極パッド48またはIC用電極パッド50と配線パターン42とを必要に応じて電気的に接続することができ、これにより、素子用電極パッド48またはIC用電極パッド50の全てをパッケージ38に配置した接続用電極パッド52と電気的に接続する必要がなくなる。すなわち、パッケージ38に配置する接続用電極パッド52の数を少なくしても、素子用電極パッド48、IC用電極パッド50または配線パターン42と接続用電極パッド52とを電気的に接続することができ、これにより、信号の入出力のための電極パッドの配置数を低減させることができるため、小型化が図れるものである。
【0033】
さらにまた、防振手段は、載置部40および外方部44を絶縁フィルムで形成し、かつこの絶縁フィルムに配線パターン42を接着配置したTABテープ46を用いて構成しているため、簡単に防振手段を形成することができるものである。
【0034】
また、配線パターン42は載置部40の中心に対して点対称な形状や、中心を通る中心線に対して線対称な形状とすれば、外乱振動の特定方向に対する吸収率が劣化することもない。この対称な形状は、配線パターン42の少なくとも載置部40と外方部44との間に対応する部分が対称であれば、効果を有するものである。
【0035】
なお、上記本発明の実施の形態1においては、角速度検出素子32の振動子は音叉型の形状としているが、振動型の振動子であれば、それ以外の形状のものでも良いものである。
【0036】
また、上記本発明の実施の形態1における慣性力センサにおいては、パッケージ38の内底面に加速度検出手段33を設けた構成としているが、図6に示すように、防振手段における載置部40の下面に加速度検出手段55を設けても良いもので、このような構成にした場合は、防振手段における載置部40の上面側に設けた角速度検出素子32とIC34との質量合計を、載置部40の下面に設けた加速度検出手段55の質量と略同一とすることにより、角速度検出素子32、IC34、載置部40および加速度検出手段55を合わせた重心のずれに起因して角速度検出素子32に測定する角速度以外の角速度が発生したり、また加速度検出手段55に測定する加速度以外の加速度が発生したりすることはなくなるため、角速度および加速度の検出信号の精度が向上するという効果が得られるものである。
【0037】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0038】
図7は本発明の実施の形態2における慣性力センサの一つである角速度センサの側断面図である。
【0039】
図7において、61は角速度検出素子である。62は防振手段で、この防振手段62は、載置部63と、この載置部63に配線パターン64により接続された外方部65とにより構成されており、そして前記載置部63の上面に前記角速度検出素子61を中空保持するように設けている。66は加速度センサからなる加速度検出手段で、この加速度検出手段66は前記防振手段62における外方部65の下面に設けている。67はICで、このIC67は前記角速度検出素子61および加速度検出手段66からの出力信号を処理している。68はパッケージで、このパッケージ68は、段差部69を設けており、この段差部69に前記防振手段62における外方部65を固着している。また、前記パッケージ68の内底面にはIC67を設けている。70は蓋で、この蓋70は前記パッケージ68を閉塞するものである。
【0040】
そして、前記防振手段62における載置部63を中空保持しつつ、配線パターン64を介して接続した外方部65によりパッケージ68に取り付けているため、配線パターン64が防振機能の役割を果たすことになり、そしてこの配線パターン64によって外乱振動を吸収することができるという効果が得られるものである。
【0041】
なお、上記本発明の実施の形態2における慣性力センサにおいては、防振手段62における外方部65の下面に加速度検出手段66を設けた構成としているが、図8に示すように、パッケージ68の内底面に加速度検出手段71を設けた場合でも、上記と同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る慣性力センサは、外乱振動を抑制しつつ小型化が図れるという効果を有するものであり、特に各種電子機器に適用して有用となるものである。
【符号の説明】
【0043】
32,61 角速度検出素子
33,55,66,71 加速度検出手段
34,67 IC
36 コンデンサ
38,68 パッケージ
40,63 載置部
42,64 配線パターン
44,65 外方部
46 TABテープ
47 段差部
48 素子用電極パッド
50 IC用電極パッド
52 接続用電極パッド
54 ボンディングワイヤー
62 防振手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度検出素子と、この角速度検出素子を上面に中空保持する載置部とこの載置部に配線パターンを介して接続された外方部とからなる防振手段と、前記角速度検出素子からの出力信号を処理するICと、前記角速度検出素子、防振手段およびICを収納するパッケージとを備え、前記パッケージの内底面に加速度検出手段を設けた慣性力センサ。
【請求項2】
角速度検出素子と、この角速度検出素子を上面に中空保持する載置部とこの載置部に配線パターンを介して接続された外方部とからなる防振手段と、前記角速度検出素子からの出力信号を処理するICと、前記角速度検出素子、防振手段およびICを収納するパッケージとを備え、前記防振手段における載置部の下面に加速度検出手段を設けた慣性力センサ。
【請求項3】
角速度検出素子と、この角速度検出素子を上面に中空保持する載置部とこの載置部に配線パターンを介して接続された外方部とからなる防振手段と、前記角速度検出素子からの出力信号を処理するICと、前記角速度検出素子、防振手段およびICを収納するパッケージとを備え、前記防振手段の下面に加速度検出手段を設けた慣性力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−101132(P2013−101132A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287085(P2012−287085)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−225523(P2008−225523)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】