説明

懸濁液の形態のランタンならびにセリウムおよびテルビウムから選択される少なくとも1つの希土類元素のリン酸塩、この調製方法、およびこの発光団としての使用

本発明のリン酸塩は、希土類元素(Ln)リン酸塩であって、Lnはセリウムおよびテルビウムまたはランタンから選択される少なくとも1つの希土類元素と、上記希土類元素の少なくとも1つとの組み合わせであり、リン酸塩が、少なくとも25nmの平均サイズを有する等方性で単結晶のモナザイト型一次粒子が凝集して得られた、最大400nmの平均サイズを有する二次粒子の液相中の懸濁液の形態であることを特徴とするリン酸塩である。前記リン酸塩は発光団として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液の形態の、セリウムおよびテルビウムから選択される少なくとも1種類の希土類金属と、場合によりランタンとの組み合わせのリン酸塩、この調製方法、およびこの発光団としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ルミネセンスおよびエレクトロニクスの分野は、現在、大幅な開発が進んでいる。言及できるこれらの開発の例としては、新規な表示および照明またはマーキング技術のためのプラズマシステム(スクリーンおよびランプ)の開発が挙げられる。これらの新規用途には、さらに改善された性質を有する発光団材料が必要となる。従って、これらのルミネセンス特性に加えて、これらの材料は、特に、所望の用途におけるこれらの使用を促進するために特定の形態または粒度分析の特性を有することが必要となる。
【0003】
より詳細には、可能な限り個別化された粒子であり、非常に微細な、サブミクロンサイズ、特に500nm未満の粒子の形態である発色団が探求されている。グロッギング(grogging)による発光団の調製方法は公知である。しかし、所望の結晶相を得るためには、これらの方法は、高温での焼成を必要とし、一般にはその結果として粉砕が困難な生成物が得られ、そのためこのような寸法を実現することが不可能となる。
【0004】
さらに、ルミネセンスおよびエレクトロニクスの分野における開発状況では、フィルムの形態の透明なルミネセンス材料を得ることが探求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主目的は、このような粒度分析特性を有する生成物を得ることである。
【0006】
本発明の第2の目的は、上記種類のルミネセンス材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これを目標として、本発明のリン酸塩は、希土類金属(Ln)(Lnは、セリウム、テルビウム、およびランタンから選択される少なくとも1種類の希土類金属を表す。)と、上記の最初の2つの希土類金属の少なくとも1つとの組み合わせのリン酸塩であって、モナザイト型の少なくとも25nmの平均サイズを有する等方性単結晶一次粒子が凝集して得られた、400nm以下の平均サイズを有する二次粒子の液相中の懸濁液の形態であることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、以下の説明、および添付の図面を読めばより十分に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるリン酸塩のTEM写真である。
【図2】このリン酸塩の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、用語「希土類金属」は、スカンジウム、イットリウム、および周期表の57から71の間(両端を含む。)の原子番号の元素から形成される群の元素を意味する。
【0011】
以下の説明において、特に明記しない限り、引用される値の範囲において、これらの制限値が含まれることも指摘しておく。
【0012】
本発明のリン酸塩は、セリウムもしくはテルビウムのリン酸塩、またはこれら2つの希土類金属の組み合わせのリン酸塩である。本発明のリン酸塩は、ランタンと、上記の2つの希土類金属の少なくとも1つとの組み合わせのリン酸塩を含むこともでき、特に、ランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩であってもよい。
【0013】
特定の実施形態によると、これらの種々の希土類金属の比率は、以下に示す値の範囲内で変動することができる。従って、本発明の懸濁液の粒子(一次または二次粒子)は、以下の一般式(1):
LaCeTbPO(1)
(式中、x+y+zの合計は1であり、yおよびzの少なくとも1つは0以外である。)
に対応することができるリン酸塩を実質的に含む。
【0014】
粒子中に存在する残留リン酸塩がある量で存在し得る。
【0015】
式(1)中のxおよびyの少なくとも1つが0以外である場合、好ましくはzは最大0.5であり、zは0.05から0.2の間、特に0.1から0.2の間とすることができる。
【0016】
xは、特に0.4から0.95の間とすることができる。
【0017】
以下の特定の組成を単なる例として挙げることができる:
La0.44Ce0.43Tb0.13PO
La0.57Ce0.29Tb0.14PO
La0.56Ce0.30Tb0.14PO
La0.94Ce0.06PO
Ce0.67Tb0.33PO
【0018】
特定の一実施形態によると、粒子中に存在する式(1)のリン酸塩は、特に、ルミネセンス特性の促進剤として、または元素のセリウムおよびテルビウムの酸化状態の安定剤として従来作用してきた他の元素を含むことができる。特に言及できるこれらの元素の例としては、アルカリ金属(特にLi、NaおよびK)、ホウ素、ならびにスカンジウム、イットリウム、ルテチウム、およびガドリニウムなどの他の希土類金属が挙げられる。ランタンが存在する場合は、この元素の代わりに上記希土類金属が特に存在することができる。これらの促進または安定化元素は、アルカリ金属およびホウ素の場合は、式(1)のリン酸塩の全質量に対する元素が一般に1質量%以下の量で存在し、上述の他の元素の場合は一般に30%以下の量で存在する。
【0019】
さらに、本発明によるリン酸塩は、空気中高温で焼成した後でさえも、非常に低いセリウムIVおよび/またはテルビウムIV濃度を有する。
【0020】
これら2つの化学種のこの低い比率は、国際照明委員会(International Commission on Illumination)によって定義され、フランス規格協会[French Standards Collection](AFNOR)colorimetric color No.X08−012(1983)に挙げられているCIE 1976系の特徴的色座標(L,a,b)の測定にある測色試験によって示すことができる。これらの座標は、Pacific Scientific社によって販売される測色計を使用して求められる。
【0021】
例えば、懸濁液の液相から分離した後の粉末形態の本発明のリン酸塩は、空気中700℃で焼成した後に、座標Lで表される明るさが98%を超え、有利には少なくとも99%となる。
【0022】
この座標Lによって、生成物の白色の測定が可能となり、この白色は、酸化状態4+のセリウムおよび/またはテルビウムなどの生成物中の着色種の存在に直接関連する。
【0023】
本発明のリン酸塩は、「二次粒子」として公知の粒子の懸濁液の形態で存在する。これらの粒子は、本明細書の説明では「一次粒子」と呼ばれる別のより微細な凝集粒子の凝集体である。
【0024】
これらの二次粒子は400nm以下、特に300nm以下、さらに特に200nm以下の平均サイズ(d50)を有する。一般に、これらの平均サイズは少なくとも50nm、特に少なくとも100nmである。
【0025】
さらに、これらの粒子は狭い粒子サイズ分布を有することができ、具体的には、これらの分散指数が、1以下、好ましくは0.7以下、さらにより好ましくは0.5以下となることができる。
【0026】
本明細書全体で、二次粒子に関して得られる平均サイズおよび分散指数は、レーザー粒度分布計を使用してレーザー散乱技術を使用することによって得られる値である(体積分布)。
【0027】
用語「分散指数」は比:
σ/m=(d84−d16)/2d50
を意味し、式中:
−d84は、粒子の84%がd84未満の直径を有する粒径であり;
−d16は、粒子の16%がd16未満の直径を有する粒径であり;
−d50は、粒子の平均直径である。
【0028】
本明細書で、平均サイズ測定は、デカンテーションを行っていない懸濁液、即ち上澄み相およびデカンテーション沈殿物を有さない懸濁液であって、必要であれば、この種類の測定に使用される周知の方法による超音波プローブによって処理されている懸濁液に対して行われることを指摘しておく。
【0029】
二次粒子を構成する一次粒子は、これよりさらに詳細に説明する形態、相、およびサイズの特性を有する。
【0030】
一次粒子は、実質的に結晶モナザイト構造の希土類金属オルトリン酸塩の形態である。本発明のリン酸塩のX線回折(XRD)による分析では、例えばCeOまたはTb型の無関係な相の存在は明らかとならず、このことは、酸化状態3+のみでのセリウムおよび/またはテルビウムの存在をさらに裏付けている。
【0031】
これらの一次粒子は単結晶である。
【0032】
粒子の単結晶の側面は、TEM技術(透過型電子顕微鏡法)によって測定される平均粒子サイズを、XRD分析から得られたコヒーレント領域の値と比較することによって明らかにすることができる。XRDで測定される値は、結晶面(200)に相当する回折線の幅から計算されるコヒーレント領域のサイズに対応することを本明細書で指摘しておく。書籍のTheorie et technique de la radiocristallographie,A.Guinier,Dunod,Paris,1956に記載されるようなシェラー(Scherrer)モデルがこの測定に使用される。TEM(t)によって測定される平均サイズと、XRD(t)によって測定される平均サイズとの2つの値は、一次粒子の場合、同程度の大きさであり、即ち、本明細書の説明の意味では、これらは比t/tが2以下、特に1.5以下となる。
【0033】
これらの粒子は、これらの形態に関して等方性または実質的に等方性でもある。具体的には、これらの形態は、球体(完全に等方性の形態)に類似しており、針または小板形態の粒子とは対照的である。
【0034】
より詳細には、2以下、特に1.5以下の比L/Iを有することができ、Lは粒子の最大長さを意味し、Iは最小長さを意味する。LおよびIの値はTEM分析によって求められる。
【0035】
前述したように、一次粒子は、少なくとも25nm、特に少なくとも30nmの平均サイズを有する。このサイズは25nmから200nmの間であってもよく、特に30nmから150nmの間であってもよい。
【0036】
一次粒子の場合、ここおよび本明細書の説明全体で提供されるサイズの値は、TEMまたはXRD分析技術によって得られた値である。
【0037】
本発明のリン酸塩は、一般に、前述の粒子の液相中の懸濁液の形態である。この懸濁液は、経時により沈降することがあり、この沈降によって粒子が互いに凝集することがある。しかし、このことは、本発明の懸濁液の重要な性質の1つであり、非常に少ない機械的エネルギーを使用する単純な撹拌、特に、例えば120Wの出力を3分間使用する超音波処理によって、これらの粒子を解凝集させることができ、それによって粒子が前述のすべての特性を有する懸濁液に戻すことができる。
【0038】
本発明による懸濁液の液相は、水もしくは水/水混和性溶媒混合物、または有機溶媒であってもよい。
【0039】
有機溶媒は、特に水混和性溶媒であってもよい。言及できる例としては、アルコール類、例えばメタノールまたはエタノール、グリコール類、例えばエチレングリコール、グリコール類のアセタート誘導体、例えばエチレングリコールモノアセタート、グリコールエーテル類、ポリオール類、およびケトン類が挙げられる。
【0040】
この液相は分散剤を含むこともできる。
【0041】
この分散剤は、公知の分散剤、例えばアルカリ金属のポリリン酸塩(Mn+23n+1)またはメタリン酸塩([MPO)(Mはナトリウムなどのアルカリ金属を意味する。)からの分散剤、特にヘキサメタリン酸ナトリウムなどから選択することができる。アルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウム)、アミノアルコール類、ホスホナート類、クエン酸およびこの塩、ホスホコハク酸誘導体((HOOC)−R−PO(式中、Rはアルキル鎖である。))、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリスチレンスルホン酸、ならびにこれらの塩から選択することもできる。クエン酸およびメタリン酸塩が特に好ましい。
【0042】
分散剤の量は、1%から15%の間、特に4%から8%の間とすることができ、この量は、分散物中の固体の質量に対する分散剤の質量として表される。
【0043】
懸濁液のリン酸塩濃度は広い範囲内で変動させることができる。例えば、約10g/lから約500g/lの間、特に40g/lから300g/lの間とすることができる。
【0044】
水相中の懸濁液であり、特定の一変形による場合、これらの興味深い特徴の1つは、広いpH範囲にわたる安定性である。即ち、懸濁液のpHを特定の値の範囲内で変動させた場合に、これらの懸濁液は安定性のままである、即ち粒子の沈降および凝集が生じず、これらの範囲は全体として、2から11の間、特に4から10の間とすることができるpH値に及ぶ。このようなpHの変動は、ルミネセンス用途において懸濁液を使用する場合に生じることがあり、従って懸濁液を広範囲の用途で使用できるため、この特徴は結果として重要となる。
【0045】
本発明は、固体形態であるリン酸塩、即ち、前述の懸濁液形態のリン酸塩を得ることが可能な特徴を有する粉末の形態であるリン酸塩にも関する。言い換えると、この粉末を液相中に再分散させ、単純に撹拌した後、実質的な機械的エネルギーを加える必要がなく、特にこの場合には、例えば約450Wの出力の単純な超音波処理によっても、前述の特徴を有するリン酸塩の懸濁液が得られる。言うまでもなく、リン酸塩の性質および組成、結晶相の性質、希土類金属の性質および量に関して前述したすべてが、固体形態のリン酸塩にも同様に適用される。
【0046】
懸濁液形態の本発明のリン酸塩の調製方法をこれより説明する。
【0047】
この方法は:
−希土類金属(La、Ce、Tb)の可溶性塩を含有する第1の溶液を、リン酸塩イオンを含有し2未満の初期pHを有する第2の溶液中に連続的に投入するステップと;
−第1の溶液を第2の溶液に投入する間、こうして得られる媒体のpHを2未満の一定値に調整し、これによって沈殿物を得るステップと;
−こうして得られた沈殿物を回収し、少なくとも600℃の温度で焼成するステップと;
−焼成で得られた生成物の湿式粉砕を行うステップとを含むことを特徴とする。
【0048】
この方法の第1のステップは、調製したいリン酸塩の組成物中に含まれる希土類金属の塩の第1の溶液を撹拌しながら、リン酸塩イオンを含有し2未満の初期pHを有する第2の溶液に連続的に投入することからなり;これら2つの溶液を接触させる間に形成される媒体のpHも2未満の一定値に調整される。使用に適した希土類金属の塩は、特に、水性媒体に対して可溶性の塩であり、例えば硝酸塩、塩化物、酢酸塩、カルボン酸塩、またはこれらの混合物である。
【0049】
希土類金属塩の溶液との反応が意図されるリン酸塩イオンは、純粋化合物または溶液中の化合物、例えばリン酸、アルカリ金属のリン酸塩、またはこの陰イオンが希土類金属と会合して可溶性化合物が得られる他の金属元素のリン酸塩によって提供することができる。リン酸塩イオンは、好ましくは、特にリン酸ジアンモニウムまたはリン酸モノアンモニウムであってもよいリン酸アンモニウムの溶液の形態で加えられる。
【0050】
好ましくは、リン酸塩イオンを含有する溶液は、最初に(即ち希土類金属塩溶液の投入を開始する前に)2未満、好ましくは1から2の間のpHを有する。従って、使用される溶液がこのようなpHを本来有さない場合は、塩基(例えばリン酸初期溶液の場合はアンモニア水溶液)を加えることによって、または酸(例えばリン酸ジアンモニウム初期溶液の場合は硝酸)を加えることによって、pHが望ましい好適な値にされる。
【0051】
リン酸塩イオンは、反応媒体が1を超え、有利には1.1から3の間のPO3−/希土類金属比を有するような量で存在する。
【0052】
用語「pHの調整」は、塩基性化合物または緩衝溶液を媒体に加えることによって、特定の一定値または実質的な一定値に媒体のpHを維持することを意味する。従って、媒体のpHは、設定公称値付近で0.5pH単位以下、より好ましくはこの値の付近で0.1pH単位以下で変動する。
【0053】
その後、希土類金属塩を含有する溶液の投入中、得られる媒体のpHは徐々に減少し、従って、2未満、好ましくは1から2の間となる必要がある所望の一定操作値にこの媒体のpHを維持するために、この媒体中に塩基性化合物が同時に投入される。
【0054】
言及できる好適な塩基性化合物の例としては、金属水酸化物(NaOH、LiOH、KOH、Ca(OH)など)、または水酸化アンモニウム、または、反応媒体に加える間に、この媒体中に他の時点で含有される化学種の1つと混合されることによって、構成化学種が沈殿物を全く形成することがなく、沈殿媒体のpHを調整することができるその他のあらゆる塩基性化合物が挙げられる。本発明の好ましい塩基性化合物の1つはアンモニアであり、有利には水溶液の形態で使用される。
【0055】
希土類金属塩溶液とリン酸塩イオン溶液との混合によって沈殿物が生成する。
【0056】
この沈殿は、好ましくは水性媒体中、温度は重要ではないが有利には室温(15℃から25℃)から100℃の間の温度において行われる。この沈殿は、反応媒体を攪拌しながら行われる。
【0057】
沈殿後、場合により、先に得られた反応媒体を、沈殿が行われた温度と同じ温度範囲内の温度において、例えば15分から1時間の間とすることができる時間維持することによって、熟成を行うことができる。
【0058】
得られた沈殿物は、あらゆる好適な手段によって、特に濾過によって、反応媒体から分離することができる。沈殿物は、不純物を除去するために、例えば水を使用して洗浄することができる。
【0059】
本発明の方法の次のステップは、得られた沈殿物を焼成することにある。
【0060】
この焼成は、少なくとも600℃の温度で行われ、特に600℃から1000℃の間であってもよい。この焼成は、空気中または還元雰囲気中、例えば窒素またはアルゴンとの混合物としての水素中で行われる。この焼成の時間は、例えば約2時間である。
【0061】
この焼成は、フラックスを使用してまたは使用せずに行うことができる。特に言及できる好適なフラックスとしては、フッ化リチウム、フッ化アルミニウムまたはフッ化マグネシウム、塩化リチウム、塩化アルミニウム、または塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムおよび酸化ホウ素が挙げられるが、明らかにこれらに限定されるものでは決してない。フラックスは生成物と混合され、次にこの混合物が選択された温度にされる。
【0062】
本発明の方法の最終ステップは、焼成で得られた生成物を粉砕することにある。
【0063】
湿式粉砕は、水中、または水/溶媒混合物中、または懸濁液を構成する液相に関して前述した溶媒と同じ種類の有機溶媒中で行われる。
【0064】
前述の種類および前述の量の分散剤を粉砕中に使用することができる。この分散剤は、前述の種々のpH範囲内での得られた懸濁液の安定性に寄与することができ、特定の分散剤で、特定のpH範囲にわたる安定性が得られる。
【0065】
湿式粉砕後、本発明のリン酸塩が懸濁液の形態で得られる。
【0066】
水/溶媒混合物中または有機溶媒中の懸濁液の場合、この懸濁液は、前述した方法によって得られた水性懸濁液から調製することができ、有機溶媒をこの水性懸濁液に加えた後、必要であれば、蒸留によって水を除去することで調製できることに留意されたい。
【0067】
前述の説明は、懸濁液の形態のリン酸塩の調製に関するものである。粉末の形態で本発明のリン酸塩を得るためには、この懸濁液を使用して開始し、固体生成物を、あらゆる公知の分離技術の使用、例えば濾過によって液相から分離する。こうして得られた固体生成物は、場合により乾燥させ、次に前述のものと同じ種類の液相中に再懸濁させることができる。
【0068】
懸濁液の形態のリン酸塩または固体形態のリン酸塩を意味する本発明のリン酸塩は、これらの性質のため、発光団として使用することができる。これらのリン酸塩は、プラズマシステム中(キセノンおよび/またはネオンなどの希ガスまたは希ガス混合物によって励起されるスクリーンおよびランプ)、ならびにセリウムおよびテルビウムがともにドープされたリン酸塩の場合の水銀蒸気ランプ中で使用される波長範囲内の電磁励起下でルミネセンス特性を有する。結果として、これらのリン酸塩は、プラズマシステム(ディスプレイスクリーンまたは照明システム)中または水銀蒸気ランプ中で発色団として使用することができる。
【0069】
従って、本発明は、前述のリン酸塩もしくは前述の方法によって得られたリン酸塩を含むルミネセンスデバイス、またはこの同じリン酸塩を使用して製造されたデバイスにも関する。同様に、本発明は、製造にリン酸塩を含むことができる、またはこの同じリン酸塩を含む、プラズマシステムまたは水銀蒸気ランプに関する。これらの製造における発光団の使用は、周知の技術により行われ、例えばスクリーン印刷、電気泳動、沈降、インクジェット印刷、吹き付け、スピンコーティング、または浸漬コーティングによって行われる。
【0070】
本発明のリン酸塩の粒度分析特性は、例えば目に見えないバーコードシステムを有するマーキングを形成するために、IR可視範囲内のアップコンバージョン機構、またはIR範囲内のルミネセンス機構を使用した半透明インク中のマーカーとして使用できるような特性である。
【0071】
本発明のリン酸塩は、紙、厚紙、布地、ガラス、または高分子材料などの材料のマーカーとして使用することもできる。後者の材料は、エラストマー性、熱可塑性、熱硬化性の多様な性質を有することができる。
【0072】
特にセリウムおよびテルビウムを主成分とする本発明のリン酸塩は、水銀蒸気照明システム中の反射壁として使用することができる。
【0073】
本発明は、本発明による少なくとも1種類のリン酸塩、もしくは前述の方法によって得られるリン酸塩を含むルミネセンス材料、またはこのようなリン酸塩を使用して製造されたルミネセンス材料にも関する。
【0074】
好ましい一実施形態によると、このルミネセンス材料は透明であってもよい。この場合、この組成物中またはこの製造中に含まれるリン酸塩は、100nmから200nmの間、好ましくは100nmから150nmの間の平均二次粒子サイズを有する本発明によるリン酸塩である。
【0075】
この材料は、本発明のリン酸塩に加えて、サブミクロン粒子またはナノメートル粒子の形態の他のリン酸塩、より一般的には他の発光団を含んだり、これを使用して製造したりすることができることに留意されたい。
【0076】
この材料は、2つの形態、即ち、透明性およびルミネセンス特性を全体として有する材料のバルク形態、または複合形態、即ちこの場合、基体の形態、およびこの基体上の層であってこの層のみがこれらの透明性およびルミネセンス特性を有する形態のいずれかであってもよい。この場合、本発明のリン酸塩は前記層中に含有される。
【0077】
この材料の基体は、ケイ素でできていたり、シリコーンを主成分としたり、または石英でできていたりしてもよい基体である。基体は、ガラス、またはポリカーボネートなどのポリマーであってもよい。基体、例えばポリマーは、数ミリメートルの厚さのシートまたは板の剛性形態であってもよい。数十ミクロンまたはさらには数ミクロンから十分の数ミリメートルの厚さのフィルムの形態であってもよい。
【0078】
本発明の目的では、用語「透明材料」は、60%以下の曇り度および少なくとも60%の全透過率、好ましくは40%以下の曇り度および少なくとも80%の全透過率を有する材料を意味する。全透過率は、入射光の量に対する、層を透過する光の総量に相当する。曇り度は、層の拡散透過率の、この全透過率に対する比に相当する。
【0079】
これら2つの大きさは、以下の条件下で測定される:0.2μmおよび1μmの間の厚さを有する材料の層を厚さ0.5mmの標準ガラス基体上に堆積する。材料中のリン酸塩粒子の質量分率は少なくとも20%である。全透過率および拡散透過率の測定は、550nmの波長で積分球が取り付けられたパーキンエルマーラムダ(Perkin−Elmer Lambda)900分光計上で標準手順によって、材料および基体の層を介して行われる。
【0080】
材料、特に前述の層は、本発明によるリン酸塩に加えて、ポリマー(ポリカーボネート、メタクリラート)、シリカート、シリカビーズ、リン酸塩、酸化チタン、または材料の機械的および光学的性質を特に改善するその他の無機フィラーなどの種類のバインダーおよびフィラーを含むことができる。
【0081】
材料中のリン酸塩粒子の質量分率は20%から99%の間とすることができる。
【0082】
層の厚さは、30nmから10μmの間、好ましくは100nmから3μmの間、さらにより好ましくは100nmから1μmの間とすることができる。
【0083】
複合形態の材料は、本発明のリン酸塩懸濁液を、場合により、例えば硝酸クロム酸(sulfo−chromic)混合物であらかじめ洗浄した基体上に堆積することによって得ることができる。前述のバインダーまたはフィラーもこの堆積の時点で加えることができる。この堆積は、吹き付け、スピンコーティング、または浸漬コーティング技術によって行うことができる。層の堆積後、基体を風乾し、次に、場合により熱処理を行うことができる。熱処理は、一般に少なくとも200℃の温度に加熱することによって行われ、この高い方の値は、特に不要な反応を回避するために層と基体との適合性を特に考慮して設定される。乾燥および熱処理は、空気中、不活性雰囲気中、減圧下、または水素中で行うことができる。
【0084】
前述のことから分かるように、材料はバインダーまたはフィラーを含むことができる。懸濁液を使用するこの場合には、懸濁液自体が、これらのバインダーまたはフィラーの少なくとも1つ、またはこれらの前駆体を含むことができる。
【0085】
バルク形態の材料は、ポリマー型、例えばポリカーボネートまたはポリメタクリレート、またはシリコーンのマトリックス中にリン酸塩粒子を混入することによって得ることができる。
【0086】
最後に、本発明は、前述の種類の材料と、さらに、UVフォトンの供給源、例えばUVダイオード、またはHg、希ガス、またはX線型の励起であってもよい励起源とを含むルミネセンスシステムに関する。
【0087】
本発明のシステムは、照明窓ガラス型の透明な壁面照明装置として使用することができる。
【0088】
これより実施例を示す。これらの実施例において、粒度分析は、前述のレーザー散乱技術により行った。超音波プローブ(450Wプローブ)で2分30秒間あらかじめ処理し、1g/lから10g/lの間の濃度に希釈した懸濁液に対してコールター(Coulter)装置を使用して測定を行ったことも指摘しておく。
【実施例1】
【0089】
この実施例は、本発明による式La0.56Ce0.3Tb0.14POのリン酸ランタンセリウムテルビウムの調製に関する。
【0090】
硝酸ランタン、硝酸セリウム、および硝酸テルビウムを以下の組成(単位は原子%)で混合することによって溶液を調製する:
La:56%
Ce:30%
Tb:14%
溶液の硝酸塩濃度は350g/lである。
【0091】
この溶液を60℃においてリン酸溶液に加え、このpHはアンモニア水溶液を加えることによって1.6に調整する。リン酸塩/希土類金属のモル比は1.15である。沈殿中のpHも、アンモニア水溶液を加えることによって一定に維持されるよう調整する。
【0092】
沈殿後、反応媒体を60℃において15分間維持する。次に沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、続いて風乾し、850℃で焼成する。
【0093】
こうして得られた粉末は、モナザイト型のLaCeTbリン酸塩構造を有する。この粉末を、0.4から0.6mmZrO−SiOビーズを有するモリネックス(Molinex)ビーズを使用してボウルミル中で湿式粉砕する。粉砕室中のビーズの占有率は65%である。懸濁液の固体濃度は50質量%であり、分散剤のヘキサメタリン酸ナトリウム(HMP)を、0.1gHMP/g粉末(即ち10質量%)の比率で加える。スピンドルの回転速度は1000rpmである。粉砕は150分間続ける。
【0094】
この湿式粉砕の後、0.2から0.3mmZrO−SiOビーズを使用して懸濁液に対して第2の粉砕を行う。このもう一つの粉砕のパラメーターは変更せず、粉砕時間は60分間である。
【0095】
音波処理を使用しないレーザー粒度分析による分析では以下の結果が得られる:
【0096】
【表1】

【0097】
こうして得られたサンプルのX線回折による分析によって、リン酸ランタンセリウムテルビウムのモナザイト相は、回折線の幅から計算されるコヒーレント領域のサイズが35nmの結晶面(200)に対応していることが分かる。
【0098】
添付の図1は、粉砕で得られた懸濁液のTEM写真である。この写真は、粒子の単結晶および等方性の性質を示している。具体的には、測定平均粒子サイズは40nmであり、これより1.15のTEM平均サイズ/XRD平均サイズ比が得られる。
【0099】
図2は、254nmにおける励起下でのこの同じ懸濁液の発光スペクトルであり、Tb3+イオンの発光が4f−4f遷移に対応していることが示されている。
【0100】
懸濁液の乾燥後に得られた粉末の測色試験によって、L座標を測定することができる。得られたL値は98.6%である。98%を超えるこの値から、生成物中に酸化状態4のセリウムおよび/またはテルビウムなどの着色種が存在しないと結論を出すことができる。
【実施例2】
【0101】
この実施例も、本発明による粉末形態のリン酸ランタンセリウムテルビウムの調製に関する。
【0102】
合成は実施例1の合成と同じであり、次に湿式粉砕で得られたスラリーを110℃のオーブン中で12時間乾燥させる。
【0103】
こうして得られた粉末形態の乾燥生成物を水中に再懸濁させることで懸濁液を得る。
【0104】
450Wの出力で超音波処理を行った後のこの懸濁液のレーザー粒度分析による分析によって以下の結果が得られる:
【0105】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類金属(Ln)(Lnは、セリウム、テルビウム、およびランタンから選択される少なくとも1つの希土類元素を表す。)と、上記の最初の2つの希土類金属の少なくとも1つとの組み合わせのリン酸塩であって、モナザイト型の少なくとも25nmの平均サイズを有する等方性で単結晶の一次粒子が凝集して得られた、400nm以下の平均サイズを有する二次粒子の液相中の懸濁液の形態であることを特徴とする、リン酸塩。
【請求項2】
二次粒子が0.7以下の分散指数を有することを特徴とする、請求項1に記載のリン酸塩。
【請求項3】
粒子が以下の一般式(1):
LaCeTbPO(1)
(式中、x+y+zの合計は1であり、yおよびzの少なくとも1つは0以外であり、xは場合によっては特に0.4から0.95の間となる。)
のリン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸塩。
【請求項4】
粒子が、xおよびyの少なくとも1つが0以外であり、zが0.5以下、特に0.05から0.2の間である前述の式(1)のリン酸塩を含むことを特徴とする、請求項3に記載のリン酸塩。
【請求項5】
二次粒子が2以下のL/I比を有することを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のリン酸塩。
【請求項6】
二次粒子が300nm以下、特に200nm以下の平均サイズを有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のリン酸塩。
【請求項7】
液相中に再懸濁させた後、請求項1から6の一項に記載の懸濁液形態のリン酸塩を得ることができる粉末形態であることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載のリン酸塩。
【請求項8】
請求項1から6の一項に記載のリン酸塩を調製する方法であって:
−希土類金属(La、Ce、Tb)の可溶性塩を含有する第1の溶液を、リン酸塩イオンを含有し2未満の初期pHを有する第2の溶液中に連続的に投入するステップと;
−第1の溶液を第2の溶液に投入する間、こうして得られる媒体のpHを2未満の一定値に調整し、これによって沈殿物を得るステップと;
−こうして得られた沈殿物を回収し、少なくとも600℃の温度で焼成するステップ;と;
−焼成で得られた生成物の湿式粉砕を行うステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
沈殿媒体のpHの調整が、塩基性化合物を加えることによって行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7の一項に記載のリン酸塩、または請求項8および9のいずれかに記載の方法によって得られたリン酸塩を含む、またはこれらのリン酸塩を使用して製造されることを特徴とする、ルミネセンスデバイス。
【請求項11】
請求項1から7の一項に記載のリン酸塩、または請求項8および9のいずれかに記載の方法によって得られたリン酸塩を含む、またはこれらのリン酸塩を使用して製造されることを特徴とする、プラズマシステム。
【請求項12】
請求項1から7の一項に記載のリン酸塩、または請求項8および9のいずれかに記載の方法によって得られたリン酸塩を含む、またはこれらのリン酸塩を使用して製造されることを特徴とする、水銀蒸気ランプ。
【請求項13】
請求項1から7の一項に記載のリン酸塩、または請求項8および9のいずれかに記載の方法によって得られたリン酸塩を含む、またはこれらのリン酸塩を使用して製造されることを特徴とする、ルミネセンス材料。
【請求項14】
透明であり、上記リン酸塩が100nmから200nmの間の平均二次粒子サイズを有することを特徴とする、請求項13に記載の材料。
【請求項15】
請求項13または14に記載の材料を含み、励起源も含むことを特徴とする、ルミネセンスシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520751(P2011−520751A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508904(P2011−508904)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055767
【国際公開番号】WO2009/138426
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】