説明

懸濁液濃度維持装置

【課題】水平方向の強い水の流れを作らずに懸濁液の濃度を均一に且つ一定に維持する。
【解決手段】水生生物を飼育する懸濁液1を溜め、底面2aが下方に向けて傾斜して最も低い部分に流出口3を有する水槽2と、水槽2内に溜められた懸濁液1の液面1aの上から水槽2内の懸濁液1と同じ濃度の懸濁液を散水し続ける散水機構4を備え、水槽2の底面2aは懸濁液1の沈殿を流出口3に導き、散水機構4による散水量と同じ流量の水槽2内懸濁液1を流出口3から流出させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内の懸濁液の濃度を維持する懸濁液濃度維持装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、懸濁液の濃度が水生生物に与える影響を調べるのに適した懸濁液濃度維持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚等の水生生物に与える環境の影響を研究することは重要である。水生生物に与える環境の影響として、水生生物が生息する川、海、湖などの水質汚染の影響については研究されているが、水質汚染の影響だけではなく、砂等による水の懸濁の影響についての研究も必要である。この研究では、研究施設内の水槽に懸濁液を溜め、その懸濁液中で水生生物を飼育する必要があり、その際、水生生物を飼育する懸濁液を一定の濃度に維持する必要がある。従来、この分野の研究は進んでいなかったので、懸濁液中で水生生物を飼育するような研究は行われておらず、したがって、水生生物を飼育する懸濁液を一定の濃度に維持する装置類は無かった。
【0003】
水槽中の懸濁液は放っておくと沈殿するので、そのままでは懸濁の濃度を一定に保つことができない。このため、試行錯誤を繰り返し、懸濁液濃度維持装置の開発を試みた。開発の過程で、エアレーションによって濃度維持を図る懸濁液濃度維持装置や、撹拌子によって濃度維持を図る懸濁液濃度維持装置等を案出した。
【0004】
エアレーションによる懸濁液濃度維持装置を図5に示す。この懸濁液濃度維持装置は、水槽101の底101aに長手方向の中央が高くなる山形の案内板102を設置し、両端の低い部分で曝気を行う。曝気によって水槽101内の懸濁液103を撹拌し、その濃度維持を図る。なお、図5中符号104で示す部材は、飼育かごである。
【0005】
また、撹拌子による懸濁液濃度維持装置は、水槽下の磁石回転装置の回転磁石によって水槽内に沈めた撹拌子を磁気吸着しながら回転させるものである。撹拌子の回転によって水槽内の懸濁液を撹拌し、その濃度維持を図る。
【0006】
なお、懸濁物溶解装置として特開平10−160649号公報に開示されたものがある。これは、溶解用酸液を使用して、キャリア液中の試料を溶解させるものである。また、懸濁液の製造装置として特開平8−319485号公報に開示されたものがある。これは、ミキサー内の撹拌翼とバイブレータによって粉体を水に分散させるものである。
【0007】
【特許文献1】特開平10−160649号
【特許文献2】特開平8−319485号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のエアレーションによる懸濁液濃度維持装置では、曝気によって水槽内の懸濁液を均一に撹拌することは困難であり、局所的な澱みができて懸濁液の濃度を均一に維持することが難しかった。また、撹拌子による懸濁液濃度維持装置では、撹拌子の回転によって水流が発生し、魚を強制的に泳がせることになるので、懸濁液の濃度が水生生物に与える影響のみを調べる研究には採用することができかった。
【0009】
なお、特開平10−160649号、特開平8−319485号に記載された技術は、いずれも懸濁液の濃度を一定に維持するものではない。しかも、特開平10−160649号の懸濁物溶解装置は溶解用酸液を使用しているので、その性質上水生生物の飼育には採用することができない。また、特開平8−319485号公報に開示された懸濁液の製造装置は撹拌翼の回転によって水流が発生し、且つバイブレータの振動が水生生物に与える影響もあるので、やはり水生生物の飼育には採用することはできない。
【0010】
本発明は、試行錯誤の繰り返しによって開発されたもので、水生生物を強制的に泳がせるような水流を発生させずに懸濁液の濃度を均一に且つ一定に維持できる懸濁液濃度維持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の懸濁液濃度維持装置は、水生生物を飼育する懸濁液を溜め、底面が下方に向けて傾斜して最も低い部分に流出口を有する水槽と、水槽内に溜められた懸濁液の液面の上から水槽内の懸濁液と同じ濃度の懸濁液を散水し続ける散水機構を備え、水槽の底面は懸濁液の沈殿を流出口に導き、散水機構による散水量と同じ流量の水槽内懸濁液を流出口から流出させるものである。
【0012】
したがって、水槽内の懸濁液によって水生生物を飼育することができる。水槽内の懸濁液は放っておくと沈殿するが、この沈殿は懸濁液とともに傾斜した底面によって流出口に導かれて水槽の外に排出される。排出分を補う懸濁液が散水機構によって水槽内の懸濁液の上から散水されるので、水槽内の液面の水位は変化しない。また、散水機構によって散水される懸濁液の濃度は水槽内の懸濁液の濃度と同じであり、水槽内の懸濁液の濃度は一定に保たれる。
【0013】
また、請求項2記載の懸濁液濃度維持装置は、流出口から流出した懸濁液を散水機構によって散水するものである。したがって、水槽内の懸濁液を循環させて使用することができる。
【0014】
また、請求項3記載の懸濁液濃度維持装置は、流出口を水槽の底面の中央に設けたものである。したがって、懸濁液やその沈殿の流出口への回収を、水槽全体でより均一に行うことができる。
【0015】
さらに、請求項4記載の懸濁液濃度維持装置は、水槽内に飼育かごを設け、飼育かご内で水生生物を飼育するものである。したがって、水槽から飼育かごを引き上げることで、水生生物を水槽から取り出すことができる。また、飼育かごによって水生生物の行動範囲を制限することができる。
【発明の効果】
【0016】
しかして、請求項1記載の懸濁液濃度維持装置では、水生生物を飼育する懸濁液を溜め、底面が下方に向けて傾斜して最も低い部分に流出口を有する水槽と、水槽内に溜められた懸濁液の液面の上から水槽内の懸濁液と同じ濃度の懸濁液を散水し続ける散水機構を備え、水槽の底面は懸濁液の沈殿を流出口に導き、散水機構による散水量と同じ流量の水槽内懸濁液を流出口から流出させるようにしているので、水槽内の懸濁液の濃度を全体的に均一にすることができると共に、水槽内の懸濁液の濃度を一定に維持することができる。また、魚等が泳ぐ習性のある水平方向の水流を発生させることがないので、飼育している魚等を疲労させることがない。このため、懸濁液の濃度が水生生物に与える影響を調べる研究に使用する場合には、懸濁液の濃度による影響を正しく研究することができる。
【0017】
また、散水機構により特別なエアレーション装置を用いることなく、装置内の懸濁液の溶存酸素濃度を飽和に近い状態に維持することが出来る。
【0018】
また、請求項2記載の懸濁液濃度維持装置では、流出口から流出した懸濁液を散水機構によって散水するようにしているので、水槽内の懸濁液を循環させて使用することができ、懸濁液の使用量を少なくすることができる。また、散水機構による散水量と流出口から流出させる流出量とを一致させるのが容易である。
【0019】
また、請求項3記載の懸濁液濃度維持装置では、流出口を水槽の底面の中央に設けているので、懸濁液やその沈殿の流出口への回収を水槽全体でより均一に行うことができ、水槽内における懸濁液の澱みの発生をより一層良好に防止することができる。
【0020】
さらに、請求項4記載の懸濁液濃度維持装置では、水槽内に飼育かごを設け、飼育かご内で水生生物を飼育するので、水槽から飼育かごを引き上げることで水生生物を水槽から簡単に取り出すことができる。また、飼育かごによって水生生物の行動範囲を制限することができ、例えば水生生物が流出口に向かうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に本発明の懸濁液濃度維持装置の実施形態の一例を示す。本実施形態では、懸濁液の濃度が水生生物に与える影響を調べる飼育実験装置として使用する場合を例に説明する。ただし、懸濁液濃度維持装置は、飼育実験装置としての使用に限るものではないことは勿論であり、例えば、鑑賞目的、養殖目的等で懸濁液中で水生生物を飼育する水槽装置等として使用しても良い。
【0023】
懸濁液濃度維持装置は、水生生物を飼育する懸濁液1を溜め、底面2aが下方に向けて傾斜して最も低い部分に流出口3を有する水槽2と、水槽2内に溜められた懸濁液1の液面1aの上から水槽2内の懸濁液1と同じ濃度の懸濁液を散水し続ける散水機構4を備え、水槽2の底面2aは懸濁液1の沈殿を流出口3に導き、散水機構4による散水量と同じ流量の水槽2内懸濁液1を流出口3から流出させるものである。
【0024】
水槽2は、例えば透明なプラスチック製の板又はガラス製の板によって構成されており、例えば平面形状が矩形状を成している。水槽2の底面2aは四方から中央に向けて傾斜する4枚の三角形状の板5から構成されており、底面2aの中央には流出口3が設けられている。底面2aには懸濁液1の沈殿を懸濁液1とともに流出口3に良好に導くことができる角度、例えば55度の傾斜がつけられている。ただし、水槽2の底面2aの傾斜角度はこれに限るものではなく、懸濁液1中に澱みを発生させずに沈殿を懸濁液1とともに流出口3に導くことができる角度であれば良い。
【0025】
散水機構4は、水槽2の側壁の内面に取り付けられた散水管6と、散水管6に水槽2内の懸濁液1と同じ濃度の懸濁液を供給するポンプ7と、ポンプ7の吐出口と散水管6とを接続するチューブ8を備えている。散水管6には多数の小孔6aが設けられている。散水管6は水槽2内の懸濁液1の液面1aよりも高い位置に取り付けられている。このため、懸濁液1の液面1aの上から懸濁液をまくことができ、水生生物の飼育に必要な酸素を空気中から供給することができると共に、水槽2内の懸濁液1中に水流が発生するのを抑えることができる。ポンプ7は例えば電導ポンプで、吐出水量を調整することができ且つ調整した吐出水量を維持することができる。
【0026】
本実施形態では、流出口3とポンプ7の吸込口とをパイプ9によって直接的に接続し、流出口3から流出した懸濁液1を散水機構4によって散水するようにしている。即ち、水槽2内から流出した懸濁液1をポンプ7等によって撹拌して水槽2内に戻し、懸濁液1を循環させて使用している。この循環によって水槽2内では懸濁液1が上から下に向けて循環することになるが、水平方向の水流が発生する訳ではないので魚等を強制的に泳がすことにはならない。しかも、水槽2の容積はポンプ7の吐出水量に比べて大きく、水槽2内における懸濁液1の循環速度は極めて遅い。このことからも魚等を強制的に泳がすことにはならない。なお、図1において、懸濁液1の循環を矢印で示す。
【0027】
ポンプ7の吐出水量、換言すると流出口3からの流出水量は、例えば水槽2内に溜められた懸濁液1の水量が50リットルの場合で10リットル/分である。ただし、ポンプ7の吐出水量はこれに限るものではなく、懸濁液1の濃度を一定に維持することができる水量であれば良く、懸濁液1の濃度や懸濁物の種類等に応じて適宜選択可能である。
【0028】
使用する懸濁液1は、例えば飼育する水生生物が生息する環境を模して決定する。川砂による水の濁りがその川に生息する淡水魚に与える影響を調べる場合には、川の水や砂を模して懸濁液1を決定し、例えば水に粘土鉱物を懸濁させたものを使用する。また、海水の濁りが海水魚に与える影響を調べる場合には、例えば海水に粘土鉱物を懸濁させたものを使用する。
【0029】
また、本実施形態では、水槽2内に飼育かご10を設け、飼育かご10内で水生生物を飼育するようにしている。飼育かご10は、例えば樹脂製のものであり、飼育する水生生物の大きさよりも細かい目を有している。飼育かご10は、傾斜している底面2aの上部に載せられている。ただし、飼育かご10を上から吊すようにしても良い。
【0030】
この懸濁液濃度維持装置は、散水機構4によって懸濁液を散水させながら使用する。水槽2内の懸濁液1は放っておくと沈殿するが、この沈殿は懸濁液1とともに傾斜した底面2aによって流出口3に導かれて水槽2の外に排出される。この排出(流出)水量と散水管6からの散水量(ポンプ7の吐出水量)とは一致しているので、水槽2内の懸濁液1の液面1aの高さは変化しない。このため、通常の水槽に懸濁液1を溜めた場合と同様に一定量の懸濁液1中で水生生物を飼育することができる。
【0031】
本実施形態では、流出口3から流出した懸濁液1を散水機構4によって再び水槽2内に循環させているので、特別の調整作業を行わなくても、流出口3からの流出水量と散水管6からの散水水量(ポンプ7の吐出水量)とを一致させることができる。また、飼育に使用する懸濁液1の量を少なくすることができる。
【0032】
水槽2の底面2aは流出口3に向けて傾斜しており、水槽2内の全ての部分において澱みを生じさせずに懸濁液1やその沈殿を流出口3へと導く。このため、懸濁液1の濃度を全ての部分において均一に維持することができる。特に、底面2aの中央に流出口3を設けているので、澱みの発生をより一層防止することができ、懸濁液1の濃度の均一化をより高いレベルで達成することができる。また、散水管6からまかれる懸濁液の濃度は水槽2内の懸濁液1の濃度と同じであり、水槽2内の懸濁液1の濃度を一定に維持することができる。
【0033】
飼育している水生生物を水槽2から取り出す場合には、飼育かご10を引き上げれば良い。飼育かご10の引き上げによって水生生物を取り出すことができるので、その作業が容易である。特に、魚等の泳ぎ回る生物を多数飼育する場合には、取り出し作業の容易性が顕著になる。
【0034】
懸濁液1の濃度が水生生物に与える影響を調べる飼育実験では、例えば懸濁液1の濃度を所定値に維持した状態で水生生物を飼育し観察する。水生生物の生存の有無や活動状態を観察することで、懸濁液1の濃度が水生生物に与える影響を調べることができる。懸濁液濃度維持装置では、魚が泳ぐ習性のある水平方向の水流を発生させることがないので、飼育している魚を疲労させることがなく、懸濁液1の濃度による影響を正しく調べることができる。
【0035】
なお、1台の懸濁液濃度維持装置を使用して飼育実験を行っても良いが、複数の懸濁液濃度維持装置を同時に使用して実験を行っても良い。つまり、複数の懸濁液濃度維持装置を準備し、懸濁液1の濃度を1台ずつ変えておき、水生生物の活動の変化を比較しながら実験を行うようにしても良い。
【0036】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の説明では、流出口3から流出した懸濁液1を散水機構4によって散水する方法として、流出口3とポンプ7の吸込口とをパイプ9によって直接的に接続していたが、この構成に限るものではない。例えば、流出口3から流出した懸濁液1を図示しないタンクに導き、タンク内で撹拌装置等を使用して撹拌した後、ポンプ7から散水管6に供給するようにしても良い。
【0037】
また、必ずしも流出口3から流出した懸濁液1を散水機構4によって散水するようにしなくても良く、流出口3から流出した懸濁液1とは別の新しい懸濁液を散水機構4によって散水するようにしても良い。この場合には、流出口3の流路面積の調節とポンプ7の出力調節によって流出口3からの流出水量とポンプ7の吐出水量を一致させることができる。
【0038】
また、上述の説明では、水槽2の底面2aの中央に流出口3を設けていたが、流出口3を設ける位置は底面2aの中央に限るものではなく、水槽2内に懸濁液1の澱みを発生させることがない位置であれば良い。
【0039】
また、上述の説明では、水槽2として平面形状が矩形状をなすものを使用していたが、この形状の水槽2に限るものではなく、例えば平面形状が円形状をなす水槽等を使用しても良い。
【0040】
また、上述の説明では、飼育かご10を使用していたが、飼育かご10を使用しなくても良いことは勿論である。
【0041】
さらに、上述の説明では、散水管6を水槽2の側壁に取り付けていたが、側壁以外の場所に取り付けても良い。例えば、支持部材を設けてこれに散水管6を取り付けても良い。この支持部材を設ける場合には、散水管6を水槽2の真上に配置することが可能となり、真上から懸濁液をまくことができる。
【0042】
また、多数の小孔6aを一列に並べた散水管6に代えて、例えばシャワーヘッドのように多数の小孔を縦横に並べた散水器具を使用しても良い。
【実施例1】
【0043】
本発明の懸濁液濃度維持装置で、懸濁液1の濃度を一定に維持できることを確認するための実験を行った。実験は3回行った。実験の条件は以下の通りである。即ち、水槽2の大きさ:40×40×30cm、水槽2の底面2aの傾斜角度:55度、ポンプ7の吐出水量:10リットル/分、懸濁液1:海水50リットルに粘土鉱物(スメクタイト標準品)を懸濁させたもの、である。
【0044】
なお、比較のために、図5に示すエアレーション方式の懸濁液濃度維持装置を使用した実験も行った。実験の条件は以下の通りである。即ち、水槽の大きさ:41×21×26cm、水槽の側面:ガラス製、水槽の底の案内板102:樹脂製、水槽の底の案内板102の傾斜角度:15度、曝気量:3リットル/分、懸濁液:海水20リットルに粘土鉱物(スメクタイト標準品)を懸濁させたもの、である。
【0045】
本発明についての実験結果を図3に、比較実験としてエアレーション方式の結果を図4に示す。図3及び図4は、粘土鉱物の初期の添加濃度と96時間後の懸濁濃度との関係を示している。図3において、グラフ上に記載されているデータは、3回の実験の懸濁濃度の平均値(n=3)である。また、エラーバーは3回の実験の最大値と最小値の範囲を示している。一方、図4において、グラフ上に記載されているデータは、1回行った実験の懸濁濃度である。
【0046】
エアレーションによる懸濁液濃度維持装置では、いずれの添加濃度でも、96時間後に懸濁している粘土鉱物の濃度は添加濃度の10%以下であったのに対し、本発明の懸濁液濃度維持装置では、100000mg/Lという高濃度でも懸濁している粘土鉱物の濃度は添加濃度の80%以上であった。この結果、エアレーションによる懸濁液濃度維持装置に比べて、本発明の懸濁液濃度維持装置では懸濁状態を良好に維持できることが確認できた。なお、添加濃度が、図3では31600mg/L以下の場合で、添加濃度<懸濁濃度となっているが、これは、きわめて高濃度の海水中の懸濁物質を測定する場合に生じる塩分等による測定誤差によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の懸濁液濃度維持装置の実施形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う水槽の横断面図である。
【図3】本発明の懸濁液濃度維持装置を使用した実験結果を示し、粘土鉱物の添加濃度と懸濁濃度との関係を示す図である。括弧内の数値は添加濃度に対する懸濁濃度の割合である。
【図4】エアレーションによる懸濁液濃度維持装置を使用した比較実験の結果を示し、粘土鉱物の添加濃度と懸濁濃度との関係を示す図である。
【図5】エアレーション方式の懸濁液濃度維持装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 懸濁液
2 水槽
2a 水槽の底面
3 流出口
4 散水機構
10 飼育かご

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を飼育する懸濁液を溜め、底面が下方に向けて傾斜して最も低い部分に流出口を有する水槽と、前記水槽内に溜められた懸濁液の液面の上から前記水槽内の懸濁液と同じ濃度の懸濁液を散水し続ける散水機構を備え、前記水槽の底面は懸濁液の沈殿を前記流出口に導き、前記散水機構による散水量と同じ流量の水槽内懸濁液を前記流出口から流出させることを特徴とする懸濁液濃度維持装置。
【請求項2】
前記流出口から流出した懸濁液を前記散水機構によって散水することを特徴とする請求項1記載の懸濁液濃度維持装置。
【請求項3】
前記流出口は前記水槽の底面の中央に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の懸濁液濃度維持装置。
【請求項4】
前記水槽内に飼育かごを設け、前記飼育かご内で前記水生生物を飼育することを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の懸濁液濃度維持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−158319(P2006−158319A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356513(P2004−356513)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】