説明

懸濁液用注腸容器

【課題】 従来、難溶性薬剤の懸濁液の注腸容器において、容器本体の吐出口部を下方に傾けて吐出口部に連結した注腸ノズルから懸濁液を吐出する場合、吐出するまでに準備時間を必要とする関係上、容器本体の吐出口部に難溶性薬剤が滞留すると吐出操作が難しく、また、逆流するのを充分に阻止することができない課題があった。
【解決手段】
懸濁液を収容した容器本体50の吐出口部51に連結した注腸ノズル60のノズル連結部61内に、密着側面を有する弁頭部10と該弁頭部10を弾圧すると共に懸濁液を吐出方向に誘導する螺旋状の弾力バネ部30を有する弁部材40を内部に一体に収容した弁収容筒体1を設け、難溶性薬剤の懸濁液を流動的に注腸ノズル60から吐出することができると共に、注腸ノズル側からの逆流を確実に阻止することができる懸濁液用注腸容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性薬剤を懸濁した懸濁液を収容した容器本体の吐出口部を下方に傾けて前記吐出口部に連結した注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するようにした懸濁液用注腸容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液より比重の重い難溶性薬剤を懸濁した懸濁液の注腸容器において、容器本体の吐出口部を下方に傾けて前記吐出口部に連結した注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するには、容器本体を傾けてから吐出するまでの準備に相当の時間を要する関係上、容器本体の吐出部に難溶性薬剤が滞留して思うように吐出操作が出来なかったり、逆流するのを充分に阻止することができない課題があった。
【0003】
本発明に使用される難溶性薬剤は、特許文献1に記載のように、日本薬局方にいう溶解性を示す用語の「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」および「ほとんど溶けない」のいずれの溶解性を示すもので、処方の形態としては水性懸濁液剤として提供されるものが含まれる。
【0004】
難溶性薬物の具体的な例としては、特許文献1に記載のように、ステロイド性抗炎症剤、消炎鎮痛剤、解熱鎮痛剤、抗てんかん剤、化学療法剤、合成抗菌剤、抗ウィルス剤、ホルモン剤、血管新生抑制剤、免疫抑制剤、プロテアーゼ阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤、または潰瘍性大腸炎治療剤などが挙げられる。ステロイド抗炎症剤としては、酢酸コルチゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、プロピオン酸フルチカゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ロトプレドノール、フルオロメトロン、ジフルプレドナード、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルオシノニド、アムシノニド、ハルシノニド、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、または酪酸クロベタゾンなどが挙げられる。解熱鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、またはスルピリンなどが挙げられる。抗てんかん剤としては、例えばアセタゾラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、ジアゼパム、またはニトラゼパムなどが挙げられる。消炎鎮痛剤としては、例えばアルクロフェナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、エピリゾール、オキサプロジン、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、ナプロキセン、ピロキシカム、フェンブフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、フロクタフェニン、ペンタゾシン、メチアジン酸、またはメフェナム酸、モフェゾラクなどが挙げられる。化学療法剤としては、サラゾスルファピリジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファメトピラジン、またはスルファモノメトキシンなどのサルファ剤、エノキシン、オフロキサシン、シノキサシン、スパルフロキサシン、チアンフェニコール、ナリジクス酸、トシル酸トスフロキサシン、ノルフロキサシン、ピペミド酸三水和物、ピロミド酸、フレロキサシン、またはレボフロキサシンなどの合成抗菌剤、アシクロビル、ガンシクロビル、ジダノシン、ジドブジン、またはビタラビンなどの抗ウィルス剤、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、ミコナゾール、またはピマリシンなどの抗真菌剤が挙げられる。ホルモン剤としては、インスリン亜鉛、プロピオン酸テストステロン、または安息香酸エストラジオールなどが挙げられる。血管新生抑制剤としては、シクロスポリン、ラパマイシン、またはタクロリムスなどが挙げられる。プロテアーゼ阻害剤としては、例えば〔L−3−トランスーエトキシカルボニルオキシランー2−カルボニル〕―L−ロイシン(3−メチルブチル)アミド(E−64−d)などが挙げられる。アルドース還元酵素阻害剤としては、5−(3−エトキシー4−ペンチルオキシフェニル)チアゾリジンー2、4−ジオンなどが挙げられる。潰瘍性大腸炎治療剤としてはメサラジンなどが挙げられる。
【0005】
特許文献2に記載の懸濁液用注腸容器においては、筒状弁体にヒンジ連結した開閉蓋式の弁体によって、吐出する流体の流圧に応じて弁蓋が90度まで自然に押し開かれるように構成してあるが、閉じる場合も自然に閉じるものであるから流体の逆流を迅速且つ充分に阻止することは出来ない構成であった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−36660号公報
【特許文献2】特開2003−190298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、容器本体の吐出部に流動しにくい難溶性薬剤が滞留することなく充分に流動性が確保できて吐出操作が円滑に出来ると共に、逆流するのを迅速に阻止することができる懸濁液用注腸容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載のように、難溶性薬剤を懸濁した懸濁液を収容した容器本体の吐出口部を下方に傾けて前記吐出口部に連結した注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するようにした注腸容器において、容器本体の吐出口部に連結する注腸ノズルのノズル連結部に、懸濁液が滞留可能な大径管部と、該大径管部から滑らかに小径化して弁頭部の側面と密着して嵌受する弁受管部と、弁受管部から再度滑らかに大径化して弁頭部を開閉作動可能に収容する弁収容管部とを有する弁収容筒体を設けると共に、前記弁収容筒体内に、前記弁受管部に嵌合する先細りのテーパー嵌合面を側面に有する前記弁頭部と、弁収容筒体の末端部に設置可能な中空状の筒状弁基部と、弁頭部と筒状弁基部との間に弁頭部を弁受管部に向かって弾圧すると共に難溶性薬剤の懸濁液を吐出方向に誘導可能に螺旋状に設けた弾力バネ部とを有する弁部材を設けてなる懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が弁受管部との間にテーパー嵌合面以外に密着位置をガイドし規制する当接弁部を有しない懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が基端部側面から先端部側面まで断面円状で高さに対してテーパー嵌合面の半径が0.02〜0.2の割合で減少する滑らかな円断面を有する懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項1、2又は3に記載の懸濁液用注腸容器において、弁部材が弁頭部と筒状弁基部との間に弾力バネ部以外の連結部分を有しない懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項5に記載のように、請求項1乃至4のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾力バネ部が複数条の重なり合わないバネ片部からなる懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、請求項6に記載のように、請求項5に記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部が3条のバネ片部からなる懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、請求項7に記載のように、請求項1乃至6のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部の内径が筒状弁基部の内径にほぼ等しい懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、請求項8に記載のように、請求項1乃至7のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁受管部の最小径面部が滑らかな円弧断面を有する懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、請求項9に記載のように、請求項1乃至8のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部に逆流阻止用凹陥部を設けてなる懸濁液用注腸容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る懸濁液用注腸容器によれば、本発明は、請求項1に記載のように、難溶性薬剤を懸濁した懸濁液を収容した容器本体の吐出口部を下方に傾けて前記吐出口部に連結した注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するようにした注腸容器において、容器本体の吐出口部に連結する注腸ノズルのノズル連結部に、懸濁液が滞留可能な大径管部と、該大径管部から滑らかに小径化して弁頭部の側面と密着して嵌受する弁受管部と、弁受管部から再度滑らかに大径化して弁頭部を開閉作動可能に収容する弁収容管部とを有する弁収容筒体を設けると共に、前記弁収容筒体内に、前記弁受管部に嵌合する先細りのテーパー嵌合面を側面に有する前記弁頭部と、弁収容筒体の末端部に設置可能な中空状の筒状弁基部と、弁頭部と筒状弁基部との間に弁頭部を弁受管部に向かって弾圧すると共に難溶性薬剤の懸濁液を吐出方向に誘導可能に螺旋状に設けた弾力バネ部とを有する弁部材を設けてなる構成を有することにより、容器本体の吐出口部を下方に傾けて注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するとき、ノズル連結部に設けた弁収容筒体の弁受管部に側面で密着していた弁頭部が懸濁液の液圧によって大径の弁収容管部に押し込まれて、弁頭部側面と弁収容管部との間に滑らかに広がる液流路ができ、次いで、螺旋状の弾力バネ部により渦状に旋回させて懸濁液を筒状弁基部内に導入して、流動しにくい難溶性薬剤を滞留することなく流動的に注腸ノズルから吐出することができると共に、吐出操作が完了した場合には、弾力バネ部によって押圧された弁頭部が弁収容管部から弁受管部に円滑に迅速に案内され、その側面のテーパー嵌合面が弁受管部に楔状に嵌着して、注腸ノズル側からの逆流を確実に阻止することができる効果がある。
【0018】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が弁受管部との間に滑らかなテーパー嵌合面以外に密着位置を規制するフランジ状の弁部分を有しない構成であるから、弁頭部を懸濁液の流動性を阻害しない簡素で機能的な構造にすることができるのみならず、弁受管部とテーパー嵌合面との密着位置を幅広く設定できて逆流阻止を確実にすることができる効果がある。
【0019】
また、本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が基端部側面から先端部側面まで断面円状で高さに対してテーパー嵌合面の半径が0.02〜0.2の割合で減少する滑らかな円断面を有する構成にすることにより、懸濁液の流動性に対応して弁受管部とテーパー嵌合面との密着位置を幅広く設定できて逆流阻止を確実にすることができる効果がある。
【0020】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項1、2又は3に記載の懸濁液用注腸容器において、弁部材が弁頭部と筒状弁基部との間に弾力バネ部以外の連結部分を有しない構成にすることにより、螺旋状の弾力バネ部によって懸濁液の流動性を他の構造に邪魔されずに充分に与えることができる効果がある。
【0021】
また、本発明は、請求項5に記載のように、請求項1乃至4のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾力バネ部が複数条の重なり合わないバネ片部からなる構成を有することにより、弁頭部を複数のバネ片部で安定して作動するように弾圧することができる効果がある。
【0022】
また、本発明は、請求項6に記載のように、請求項5に記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部が3条のバネ片部からなる構成を有することにより、弁頭部を3点保持で安定して弾圧することができる効果がある。
【0023】
また、本発明は、請求項7に記載のように、請求項1乃至6のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部の内径が筒状弁基部の内径にほぼ等しい構成を有することにより、懸濁液の円滑な流動性が得られると共に、弁部材を一体成型でプラスチック成形加工するときに内径部分をほぼ同一径の棒状の中子で容易に成形することが出来る効果がある。
【0024】
また、本発明は、請求項8に記載のように、請求項1乃至7のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁受管部の最小径面部分が滑らかな円弧断面を有する構成を有することにより、弁頭部側面のテーパー嵌合面と円滑な着脱を可能にする効果がある。
【0025】
また、本発明は、請求項9に記載のように、請求項1乃至8のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部に逆流阻止用凹陥部を設けてなる構成を有することにより、逆流する液によって弁頭部が押圧されて迅速且つ確実に弁受管部に嵌着する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図示する実施例により本発明を説明する。
【0027】
本発明に係る懸濁液用注腸容器は、図7又は図8に記載の如く、難溶性薬剤を懸濁した懸濁液を収容した容器本体50の吐出口部51を下方に傾けて前記吐出口部51に連結した注腸ノズル60から難溶性薬剤の懸濁液を吐出するようにした注腸容器70において、容器本体50の吐出口部51に連結する注腸ノズル60のノズル連結部61に、前記弁部材40を内部に一体に収容した弁収容筒体1を設けてある。
【0028】
弁収容筒体1には、内部に後述する弁部材40を一体に収容してあり、図7及び図8に記載の如く、先端部にノズル孔62を有する注腸ノズル60の管状のノズル管部63の基部付近のノズル連結部61内に一体に収納されている。
【0029】
容器本体50の吐出口部51は、容器天板52の中央に吐出孔53を具備し、その外周に注腸ノズル60の連結筒部65が密封状態で嵌着したとき、ノズル管部63の連結管部66が吐出孔53を囲んで容器天板52に密着するように構成してある。64は弾力性を有する締め付け管部で、吐出口部51及び逆止突起部54を乗り越えて嵌合し容易に抜けないように構成してある。なお、容器本体50の吐出口部51には、注腸ノズル60の連結筒部65が螺合する構成であっても良い。
【0030】
弁収容筒体1は、図2又は図3に記載の如く、下方に傾けた容器本体50の吐出口部51から供給される懸濁液が滞留可能な大径管部2と、該大径管部2から滑らかに小径化して弁頭部10の側面と密着して嵌受する弁受管部3と、弁受管部3から再度滑らかに大径化して弁頭部10を開閉作動可能に収容する弁収容管部4とを有する。
【0031】
また、前記弁収容筒体1内には、前記弁受管部3に嵌合する先細りのテーパー嵌合面11を側面に有する前記弁頭部10と、弁収容筒体1の末端部に設置可能な中空状の筒状弁基部20と、弁頭部10と筒状弁基部20との間に弁頭部10を弁受管部3に向かって弾圧すると共に難溶性薬剤の懸濁液を吐出方向に誘導可能に螺旋状に設けた弾力バネ部30とを有する弁部材40を設けてある。
【0032】
この構成を有することにより、容器本体の吐出口部を下方に傾けて注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するとき、図2に記載のように、ノズル連結部に設けた弁収容筒体1の弁受管部3に側面で密着していた弁頭部10が懸濁液の液圧によって大径の弁収容管部4に押し込まれて、弁頭部10側面と弁収容管部4との間に滑らかに広がる液流路Aができ、次いで、螺旋状の弾力バネ部30により渦状に旋回させて懸濁液を筒状弁基部20内に導入して、流動しにくい難溶性薬剤の懸濁液を滞留することなく流動的に注腸ノズルから吐出することができる。
【0033】
更に、吐出操作が完了した場合には、図1に記載のように、弾力バネ部30によって押圧された弁頭部10が弁収容管部4から弁受管部3に円滑に迅速に案内され、その側面のテーパー嵌合面11が弁受管部3に楔的に嵌着して、注腸ノズル側からの逆流を確実に阻止することができる。このことは、吐出操作前などにおいて注腸ノズルを腸内に挿入する段階などにおいても注腸ノズル側からの逆流を確実に阻止することができることを意味する。なお、弁頭部10の裏側には逆流阻止用凹陥部13を設けてあり、逆流する液によって弁頭部10が押圧されて迅速且つ確実に弁受管部3に嵌着するように構成してある。
【0034】
前記弁受管部3は、図2に記載のように、大径管部2から滑らかに小径化する小径化テーパー面部3bと、弁頭部10側面のテーパー嵌合面11と嵌合する最小径面部3aと、再度滑らかに大径化する大径化テーパー面3cからなり、小径化テーパー面部3bは吐出する懸濁液を大径管部2から弁頭部10に円滑に誘導して弁頭部10の迅速な離脱を可能にし、滑らかな円弧断面を有する最小径面部3aは弁頭部側面のテーパー嵌合面11と円滑な着脱を可能にし、大径化テーパー面3cは弁頭部10の上部側面と弁収容管部4との間に滑らかに広がる液流路Aを形成して懸濁液の流動を増進する効果がある。
【0035】
また、弁頭部10が弁受管部3との間に滑らかなテーパー嵌合面11以外に密着位置を規制するフランジ状の弁部分などを有しない構成であるから、弁頭部10を懸濁液の流動性を阻害しない簡素で機能的な構造にすることができるのみならず、弁受管部3とテーパー嵌合面11との密着位置を幅広く設定できて逆流阻止を確実にすることができる。12は弁頭部10の頂上面部14とテーパー嵌合面11との間に設けた円弧面部である。
【0036】
また、弁頭部10が基端部側面から先端部側面まで断面円状で高さに対してテーパー嵌合面11の半径がほぼ0.02〜0.2の割合で減少する滑らかな円断面を有することにより、懸濁液の流動性に対応して弁受管部3とテーパー嵌合面11との密着位置を幅広く設定できると共に、図2に記載のように、テーパー側面11と弁収容管部4との液流路Bを滑らかに狭めて流圧を増大して中空で螺旋状の弾圧バネ部30を介して筒状弁基部20内の円管部21の広い液流路Cに導入して、流動しにくい難溶性薬剤を滞留することなく流動的に注腸ノズルから吐出することができる。なお、図示の実施例の場合、弁頭部10が基端部側面から先端部側面まで断面円状で高さに対してテーパー嵌合面11の半径がほぼ0.1の割合で減少する滑らかな円断面を有する。
【0037】
また、弁収容筒体1は弁収容管部4の下端部に筒状弁基部20を係止するための係止段部5を具備し、筒状弁基部20の外側に設けた係合縁部22が図において下方から嵌め込み式に嵌着するように構成してある。この場合、係止段部5の最小径部は弁頭部10の基端部側面の外径にほぼ等しく、従って、係合縁部22の外形は弁収容管部4より小径で係止段部5の最小径部より大きく構成してあり、図において係止段部5の下方に滑らかに大径化して設けたガイド筒部6を通って弾性的に嵌合するように構成してある。また、筒状弁基部20の係合縁部22の下側にはガイド筒部6に嵌合する嵌合凹部23が設けてある。
【0038】
また、本発明に係る螺旋状の弾性バネ部30は、図において、弁頭部10の下外側縁部15と筒状弁基部20の上外側縁部24との間に細長状のバネ片部31をスパイラルに設けて構成してあり、図2に記載のように圧縮した状態でもバネ片部31の間に螺旋状の液流路が形成されるように構成してある。バネ片部31はコイルスプリングのように一条のバネ片部31を一回以上の多数回に巻き回した形態にすることも、二条以上の多条のバネ片部31を重なり合わないように互いに螺旋状に設けた形態にすることも可能である。
【0039】
図3に記載の実施例の場合、3条のバネ片部31を互いに120度間隔で120度旋回して螺旋状になるように設けてあり、弁頭部10を3条のバネ片部31の3点保持で安定して弾圧することができるように構成してある。
【0040】
個々のバネ片部31は内側に仮想内円筒部32が存在するかのようにその周囲に巻き付けるように設けてあり、図示の実施例の場合は、バネ片部31の内側面33が平面状をなすのに対して外側面34は断面が三角形状又は円弧状の山形になるように成形してあり、バネ片部31が形成する螺旋状の流路が外側から内側には流動しやすく、内側から外側には戻りにくく構成してある。なお、1条、2条、4条以上のバネ片部31からなる弾性バネ部30の場合でも同様に構成することができるのは勿論可能である。
【0041】
上記の構成からなる弁部材40は、プラスチックの射出成形での一体加工が可能である。弾性バネ部30の仮想内円筒部32の径と筒状弁基部20の円管部21の径とほぼ等しい同一径の棒状の中子の先端部を、弁頭部10の逆流阻止用凹陥部13の形状に一致させて、その周囲を弁頭部10、弾性バネ部30及び筒状弁基部20の外形にキャビテイが合致する外割型で覆って、ゲートから溶融プラスチックをキャビテイ内に充填して、プラスチックの固化後に外型及び中子を外せば、弁部材40が一体成形することができる。
【0042】
なお、弁収容筒体1もプラスチックス加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明実施例の要部の一作動態様を示す一部概略断面図。
【図2】その要部の他の作動態様を示す一部概略断面図。
【図3】その一要部の正面図。
【図4】その平面図。
【図5】その平面図。
【図6】図3の要部の中央縦断面図。
【図7】本発明実施例の概略断面図。
【図8】その実施例の一部分解概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 弁収容筒体
2 大径管部
3 弁受管部
4 弁収容管部
5 係止段部
6 ガイド筒部
10 弁頭部
11 テーパー嵌合面
12 円弧面部
13 逆流阻止用凹陥部
14 頂上面部
15 下外側縁部
20 筒状基部
21 円管部
22 係合縁部
23 嵌合凹部
24 上外側縁部
30 弾力バネ部
31 バネ片部
32 仮想内円筒部
33 内側面
34 外側面
40 弁部材
50 容器本体
51 吐出口部
60 注腸ノズル
61 ノズル連結部
62 ノズル孔
63 ノズル管部
64 締め付け管部
65 連結筒部
66 連結管部
70 注腸容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性薬剤を懸濁した懸濁液を収容した容器本体の吐出口部を下方に傾けて前記吐出口部に連結した注腸ノズルから難溶性薬剤の懸濁液を吐出するようにした注腸容器において、
容器本体の吐出口部に連結する注腸ノズルのノズル連結部に、懸濁液が滞留可能な大径管部と、該大径管部から滑らかに小径化して弁頭部の側面と密着して嵌受する弁受管部と、弁受管部から再度滑らかに大径化して弁頭部を開閉作動可能に収容する弁収容管部とを有する弁収容筒体を設けると共に、
前記弁収容筒体内に、前記弁受管部に嵌合する先細りのテーパー嵌合面を側面に有する前記弁頭部と、弁収容筒体の末端部に設置可能な中空状の筒状弁基部と、弁頭部と筒状弁基部との間に弁頭部を弁受管部に向かって弾圧すると共に難溶性薬剤の懸濁液を吐出方向に誘導可能に螺旋状に設けた弾力バネ部とを有する弁部材を設けてなる懸濁液用注腸容器。
【請求項2】
請求項1に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が弁受管部との間にテーパー嵌合面以外に密着位置をガイドし規制する当接弁部を有しない懸濁液用注腸容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部が基端部側面から先端部側面まで断面円状で高さに対してテーパー嵌合面の半径が0.02〜0.2の割合で減少する滑らかな円断面を有する懸濁液用注腸容器。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の懸濁液用注腸容器において、弁部材が弁頭部と筒状弁基部との間に弾力バネ部以外の連結部分を有しない懸濁液用注腸容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾力バネ部が複数条の重なり合わないバネ片部からなる懸濁液用注腸容器。
【請求項6】
請求項5に記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部が3条のバネ片部からなる懸濁液用注腸容器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弾性バネ部の内径が筒状弁基部の内径にほぼ等しい懸濁液用注腸容器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁受管部の最小径面部が滑らかな円弧断面を有する懸濁液用注腸容器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の懸濁液用注腸容器において、弁頭部に逆流阻止用凹陥部を設けてなる懸濁液用注腸容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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