説明

懸濁用組成物

【課題】緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有した懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制できる懸濁用組成物を提供すること。
【解決手段】卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかを含有した懸濁用組成物では、焼成カルシウム粉末を含有した懸濁用組成物と比較して、溶媒に溶かした際における溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、溶液中における組成物の色変化を抑えることができ、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水に溶かす(懸濁させる)ことで、飲料として手軽に食物繊維や栄養素を取ることができる懸濁用組成物が、健康食品として広く知られている。
【0003】
このような懸濁用組成物には緑葉の粉末を含有させたものが多くあるが、この緑葉の粉末の他にも、骨の健康を維持する目的で、カルシウム化合物を含有させたものも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載された技術を利用して、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物を生成した場合、使用したカルシウム化合物が焼成されたものであると、次の問題点が生ずる。即ち、懸濁用組成物を溶媒(例えば、水や飲料)に溶かすと、溶液が強いアルカリ性を呈するため、溶かした懸濁用組成物に変色が発生する。これにより、溶液の見栄えが悪くなる(緑葉独特の色が失われる)という問題点があった。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有した懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制できる懸濁用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の懸濁用組成物は、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有するものであって、前記カルシウム化合物に、卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかを用いることで、前記懸濁用組成物を溶媒に溶かした際における前記懸濁用組成物自体の色変化を抑制したものである。
【0008】
また、請求項2記載の懸濁用組成物は、請求項1記載の懸濁用組成物において、前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、アシタバ、キャベツ、甘藷の茎葉、チャの葉、ヨモギからなる群より少なくとも1つ選択されるものである。
【0009】
また、請求項3記載の懸濁用組成物は、請求項1または2に記載の懸濁用組成物において、前記緑葉の粉末に加え、野菜の粉末を含有したものである。
【0010】
また、請求項4記載の懸濁用組成物は、請求項3記載の懸濁用組成物において、前記野菜の粉末が、ニンジン、ニガウリ、濃縮トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、カボチャからなる群より少なくとも1つ選択されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の懸濁用組成物によれば、緑葉の粉末と共に含有するカルシウム化合物を、卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかとしているので、焼成カルシウムを含有したものと比較して、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際における溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、溶液中における緑葉の色変化を抑えることができ、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、後述する実施形態の記載により限定して解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0013】
本発明の懸濁用組成物は、緑葉の粉末およびカルシウム化合物(卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれか)を含有する。
【0014】
本発明の懸濁用組成物に含有される緑葉の粉末は、緑葉を粉砕したものであれば特に限定されない。この緑葉としては、例えば、イネ科植物(大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)の緑葉、キク科植物(ヨモギ等)、セリ科植物(パセリ、セロリ等)、クワ科植物(クワ等)、ドクダミ科植物(ドクダミ等)、シソ科植物(シソ等)、アブラナ科植物(小松菜、キャベツ、ブロッコリー等)、ユリ科植物(アスパラガス等)、シナノキ科植物(モロへイヤ等)、ヒルガオ科植物(甘藷の茎葉等)、アカザ科(ホウレンソウ等)のような緑色植物の緑葉が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい緑葉としては、イネ科植物(好ましくは大麦若葉)、セリ科植物(好ましくはアシタバ)、アブラナ科植物(好ましくはケール)、ヒルガオ科植物(好ましくは甘藷の茎葉)又はキク科植物(好ましくはヨモギ)等を挙げることができる。その他にも、キャベツ、チャの葉を挙げることができる。
【0015】
上述した植物の緑葉から粉末を製造するには、これらの植物の緑葉(本明細書において「緑葉」と記載した場合、特に断りのない限り、植物の茎なども含む概念で使用している)を、適当な大きさに切断し、必要に応じて、ブランチング(熱水)処理等の変色防止処理や乾燥処理を施し、次いで適当な大きさに粉砕すれば良い。なお、乾燥処理を行う場合は、凍結乾燥、あるいは70℃以下の低温加熱乾燥(例えば、温風乾燥)であることが好ましい。上述した一連の処理により得られる緑葉の粉末は、緑葉を搾汁することなくそのまま乾燥粉末にしている。
【0016】
なお、上述した一連の処理以外にも、緑葉を採取した後、水、アルコール等の溶媒と共にミキサーで均質化し、その後熱風乾燥や凍結乾燥やスプレードライで乾燥して、緑葉の粉末を得ても良い。
【0017】
本発明の懸濁用組成物に含有される未焼成カルシウムは、卵殻、珊瑚、家畜の骨、魚の骨、貝殻等を水洗してから粗粉砕し、その後、不要成分(肉片や骨髄、あるいは卵殻膜等)を除去し、更に脱水、乾燥、粉砕及び微粉砕等の製造工程を通して、粉末状に調製される。未焼成カルシウムは、上述したもの以外にも、牡蠣殻、真珠あるいはイカ甲骨を用いて調製しても良い。なお、未焼成カルシウムは、卵殻、珊瑚を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の懸濁用組成物に含有される炭酸カルシウム(CaCO3)は、石灰石を湿式粉砕し、粉末状にしたものである。
【0019】
本発明の懸濁用組成物には野菜の粉末を含有しても良い。この野菜粉末としては、ニンジン、ニガウリ、濃縮トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、カボチャ、浅葱、明日葉、アスパラガス、さやいんげん、さやえんどう、おかひじき、オクラ、貝割れ大根、かぶの葉、からし菜、ぎょうじゃにんにく、京菜、クレソン、こごみ、小松菜、山東菜、ししとうがらし、サラダ菜、しそ、十六ささげ、春菊、せり、大根の葉、高菜、たらの芽、チンゲンサイ、つくし、つるむらさき、唐辛子、とんぶり、ナズナ、なばな、ニラ、ニンニクの芽、万能ねぎ、野沢菜、パクチョイ、バジル、パセリ、パプリカ、ピーマン、広島菜、ブロッコリー、ほうれん草、みつば、芽キャベツ、よめな、よもぎ、リーキ、ロケットサラダ、わけぎ等が挙げられる。
【0020】
本発明の懸濁用組成物に含有し得る野菜粉末は、上述した各野菜を乾燥して粉末に加工して生成される。乾燥野菜粉末としては、例えば、凍結乾燥粉末や熱風乾燥粉末等が挙げられる。
【0021】
また、本発明の懸濁用組成物には、更に、例えば、還元麦芽糖、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビット等の甘味料や、ビタミンBやビタミンD等の栄養添加剤、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維、カゼインホスホペプチド、酸化マグネシウム、スピルリナ、香料を含有しても良い。その他にも、松樹皮抽出物、ジャガイモ抽出物、葛の花抽出物、チャ抽出物、チャの花抽出物、大豆抽出物、タマネギ粉末を含有しても良い。
【0022】
また、本発明の懸濁用組成物は、水、牛乳、豆乳、清涼飲料などに溶かして飲むことができることに加え、水、牛乳、豆乳、清涼飲料などに予め添加した形態で飲食品類として利用することもできる。また、これ以外にも、本発明の懸濁用組成物は、食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状などに成形することで、食品素材として利用することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、後述する実施例に限定して解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0024】
(懸濁用組成物の色変化試験1)
懸濁用組成物の色変化試験1について説明する。色変化試験1を実施するにあたり、まず、表1に記載の配合に従って、試験例1〜4と比較例1との全5例をそれぞれ調製した。具体的には、試験例1では、ケール粉末およびアシタバ粉末からなる緑葉の粉末(以下、単に、「緑葉粉末」と称す)1.0gと未焼成の卵殻カルシウム粉末1.2gとを混合したものを懸濁用組成物とし、それを水100mlに溶かした。また、試験例2では、緑葉粉末1.0gと未焼成の珊瑚カルシウム粉末1.2gとを混合したものを懸濁用組成物とし、それを水100mlに溶かした。また、試験例3では、緑葉粉末1.0gと貝殻焼成カルシウム1.2gとを混合したものを懸濁用組成物とし、それを水100mlに溶かした。ここで、試験例1〜3では、懸濁用組成物に対するカルシウム粉末の配合割合を、約54.5%としている。なお、試験例1で使用した未焼成の卵殻カルシウム粉末の平均粒径は、8μmから10μmの範囲内としている。
【0025】
また、試験例4では、緑葉粉末1.0gのみを懸濁用組成物とし、それをクエン酸水溶液100mlに溶かした。なお、比較例1では、緑葉粉末1.0gのみを懸濁用組成物とし、それを水100mlに溶かした。
【0026】
【表1】

【0027】
各懸濁用組成物を各溶媒に溶かした後、比較例1の色(緑葉粉末のみを水に溶かしたものの色)を基準として、試験例1〜4の色がどの程度異なるかを目視にて確認した。つまり、試験例1〜4の各々と比較例1とを目視比較して、色の変化具合を確認した。また、試験例1〜4および比較例1の各溶液の目視比較時における水素イオン濃度(pH)を、pH測定器により測定した。この確認および測定を、懸濁用組成物の色変化試験とした。なお、色の変化具合は、1〜4の4段階で評価し、比較例1の色(基準)に対しての変化が、最小である場合を「1」とし、最大である場合を「4」として評価した。具体的には、比較例1の色に対して、変化が殆ど見られない場合を「1」とし、若干の変化が見られる場合には「2」とし、明らかな変化が見られる場合には「3」とし、茶変色が大きく見られる場合を「4」として評価した。
【0028】
上述の色変化試験1によって確認された結果を表2に示す。この表に示す通り、比較例1のpHが6.54であるのに対し、試験例1は、pH9.41であり、pHの変化量を+2.87に留めている。このとき、試験例1の色は、比較例1の色に対して、殆ど変化が見られない結果となった(比較例2の色と略同一の色となった)。また、試験例2は、pH9.02であり、pHの変化量を+2.48に留めている。このとき、試験例2の色は、比較例1の色に対して、殆ど変化が見られない結果となった。また、試験例3は、pH13.10となり、pHの変化量が+6.56と大きくなった。このとき、試験例3の色は、比較例1の色に対して、茶変色が大きく見られる結果となった。そして、試験例4は、pH2.42となり、pHの変化量が−4.12となった。このとき、試験例4の色は、比較例1の色に対して、明らかな変化が見られる結果となった。
【0029】
【表2】

【0030】
表2から明らかな通り、試験例1(未焼成の卵殻カルシウム粉末を使用した例)および試験例2(未焼成の珊瑚カルシウム粉末を使用した例)では、試験例3と比較して(焼成カルシウム粉末を使用した例と比較して)、溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、溶液中における緑葉の色変化を抑え、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。
【0031】
(懸濁用組成物の色変化試験2)
懸濁用組成物の色変化試験2について説明する。色変化試験2を実施するにあたり、まず、表3に記載の配合に従って、試験例5〜8と比較例2との全5例をそれぞれ調製した。ここで、表3に記載の処方Aとは、ケール末とアシタバ末とを0.9g含有し、ニンジン末とニガウリ末と濃縮トマトとグリーンピース末とモロヘイヤ末とカボチャ末とを0.13g含有し、難消化性デキストリンと還元麦芽糖とビタミンDとスピルリナとを1.58g含有する処方である(計2.61g)。
【0032】
表3に示す試験例5〜8および比較例2を具体的に説明する。試験例5では、未焼成の卵殻カルシウム0.39gおよび処方Aによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし(計3.0g)、これを水100mlに溶かした。また、試験例6では、炭酸カルシウム0.39gおよび処方Aによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。また、試験例7では、貝殻焼成カルシウム0.39gおよび処方Aによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。また、試験例8では、処方Aによる組成物2.61gのみを懸濁用組成物とし、これを5%のクエン酸水溶液100mlに溶かした。なお、比較例2では、処方Aによる組成物2.61gのみを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。
【0033】
【表3】

【0034】
各懸濁用組成物を各溶媒に溶かした後、比較例2の色(処方Aのみを水に溶かしたものの色)を基準として、試験例5〜8の色がどの程度異なるかを目視にて確認した。また、試験例5〜8および比較例2の各溶液の目視比較時におけるpHをpH測定器により測定した。なお、色の変化具合の評価は、色変化試験1の場合と同一の評価方法とした。
【0035】
上述の色変化試験2によって確認された結果を表4に示す。この表に示す通り、比較例2のpHが6.47であるのに対し、試験例5は、pH7.54であり、pHの変化量を+1.07に留めている。このとき、試験例5の色は、比較例2の色に対して、殆ど変化が見られない結果となった(比較例2の色と略同一の色となった)。また、試験例6は、pH7.43であり、pHの変化量を+0.96に留めている。このとき、試験例6の色は、比較例2の色に対して、殆ど変化が見られない結果となった。また、試験例7は、pH12.56となり、pHの変化量が+6.09と大きくなった。このとき、試験例7の色は、比較例2の色に対して、茶変色が大きく見られる結果となった。そして、試験例8は、pH3.69となり、pHの変化量が−2.78となった。このとき、試験例8の色は、比較例2の色に対して、若干の変化が見られる結果となった。
【0036】
【表4】

【0037】
表4から明らかな通り、試験例5(処方Aに対し、未焼成の卵殻カルシウムを使用した例)および試験例6(処方Aに対し、炭酸カルシウムを使用した例)では、試験例7と比較して(処方Aに対し、焼成の貝殻カルシウムを使用した例と比較して)、溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、処方Aの組成物の溶液中における色変化を抑え、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。
【0038】
(懸濁用組成物の色変化試験3)
懸濁用組成物の色変化試験3について説明する。色変化試験3を実施するにあたり、まず、表5に記載の処方に従って、試験例9〜12と比較例3との全5例をそれぞれ調製した。ここで、表5に記載の処方Bとは、有機大麦若葉を0.84g含有し、難消化性デキストリンと還元麦芽糖とビタミンDとカゼインホスホペプチドとスピルリナと酸化マグネシウムとを1.77g含有する処方である(計2.61g)。
【0039】
表5に示す試験例9〜12および比較例3を具体的に説明する。試験例9では、未焼成の珊瑚カルシウム0.39gおよび処方Bによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし(計3.0g)、これを水100mlに溶かした。また、試験例10では、炭酸カルシウム0.39gおよび処方Bによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。また、試験例11では、貝殻焼成カルシウム0.39gおよび処方Bによる組成物2.61gを混合したものを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。また、試験例12では、処方Bによる組成物2.61gのみを懸濁用組成物とし、これを5%のクエン酸水溶液100mlに溶かした。なお、比較例3では、処方Bによる組成物2.61gのみを懸濁用組成物とし、これを水100mlに溶かした。
【0040】
【表5】

【0041】
各懸濁用組成物を各溶媒に溶かした後、比較例3の色(処方Bのみを水に溶かしたものの色)を基準として、試験例9〜12の色がどの程度異なるかを目視にて確認した。また、試験例9〜12および比較例3の各溶液の目視比較時におけるpHをpH測定器により測定した。なお、色の変化具合の評価は、色変化試験1の場合と同一の評価方法とした。
【0042】
上述の色変化試験3によって確認された結果を表6に示す。この表に示す通り、比較例3のpHが9.77であるのに対し、試験例9は、pH9.65であり、pHの変化量を−0.12に留めている。このとき、試験例9の色は、比較例3の色から殆ど変化が見られない結果となった(比較例3の色と略同一の色となった)。また、試験例10は、pH9.70であり、pHの変化量を−0.07に留めている。このとき、試験例10の色は、比較例3の色から殆ど変化が見られない結果となった(比較例3の色と略同一の色となった)。また、試験例11は、pH12.63となり、pHの変化量が+2.86となった。このとき、試験例11の色は、比較例3の色に対して明らかな変化が見られる結果となった。そして、試験例12は、pH5.00となり、pHの変化量が−4.77となった。このとき、試験例12の色は、比較例3の色に対して若干の変化が見られる結果となった。
【0043】
【表6】

【0044】
表6から明らかな通り、試験例9(処方Bに対し、未焼成の珊瑚カルシウムを使用した例)および試験例10(処方Bに対し、炭酸カルシウムを使用した例)では、試験例11と比較して(処方Bに対し、焼成の貝殻カルシウムを使用した例と比較して)、溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、処方Bの組成物の溶液中における色変化を抑え、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。
【0045】
色変化試験1〜3によって明らかとなった通り、卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかを含有した懸濁用組成物では、焼成カルシウムを含有した懸濁用組成物と比較して、溶媒に溶かした際における溶液の強アルカリ化を抑制することができる。よって、溶液中における組成物の色変化を抑えることができ、結果、懸濁用組成物を溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。
【0046】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0047】
例えば、試験例1,2では、懸濁用組成物全体に対するカルシウム粉末の配合割合を、約54.5%としたが、これに限られるものではない。即ち、懸濁用組成物に配合するカルシウム粉末の割合を、54.5%以下としても良い。この場合には、試験例1,2と比較してカルシウム含有量が少なくなるので、懸濁用組成物を水100gに溶かした際における溶液のアルカリ化を、試験例1,2よりも抑制することができる。よって、懸濁用組成物に配合するカルシウム粉末の割合を54.5%以下とした場合には、表2に示す結果よりも更に、色変化を抑制することができる。
【0048】
また、試験例1,2,5,6,9,10では、懸濁用組成物を溶かす溶媒を水としたが、これに限られるものではなく、溶媒を、お茶、牛乳、豆乳、清涼飲料等の飲料としても良い。この場合、懸濁用組成物を溶かす溶媒によって色の変化に違いがあるものの、卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかを含有したものが、焼成カルシウムを含有したものと比べて、色変化を抑制できることに変わりはない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の懸濁用組成物によれば、溶媒に溶かした際に発生し得る懸濁用組成物自体の色変化を抑制することができる。よって、この色変化の抑制が必要な産業分野での利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物であって、前記カルシウム化合物に、卵殻未焼成カルシウム、珊瑚未焼成カルシウムまたは炭酸カルシウムのいずれかを用いることで、前記懸濁用組成物を溶媒に溶かした際における前記懸濁用組成物自体の色変化を抑制したことを特徴とする懸濁用組成物。
【請求項2】
前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、アシタバ、キャベツ、甘藷の茎葉、チャの葉、ヨモギからなる群より少なくとも1つ選択されることを特徴とする請求項1記載の懸濁用組成物。
【請求項3】
前記懸濁用組成物は、前記緑葉の粉末に加え、野菜の粉末を含有したことを特徴とする請求項1または2に記載の懸濁用組成物。
【請求項4】
前記野菜の粉末が、ニンジン、ニガウリ、濃縮トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、カボチャからなる群より少なくとも1つ選択されることを特徴とする請求項3記載の懸濁用組成物。


【公開番号】特開2012−130261(P2012−130261A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283333(P2010−283333)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】