説明

成分回収方法及び成分回収装置

【課題】藻類が分泌した成分の回収を容易にするとともに、エネルギーや薬品の消費を低減する。
【解決手段】気泡を生成するステップと、生成した気泡を藻類が存在する水槽30内の液中に供給するステップと、藻類から分泌されて気泡に付着し、浮上した成分を回収するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は藻類が分泌する成分を回収する成分回収方法及び成分回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類は、光合成により様々な成分を生成し、分泌している。藻類が生成する成分の中には、人間にとって有効な成分もあり、藻類が生成した有効成分を回収して利用することもある。
【0003】
藻類が生成した成分を利用するためには、まず、藻類を成長させて藻類に成分を生成させ、その後、成分を生成した藻類を回収し、乾燥後に有機溶剤等の薬品を利用して藻類から成分を抽出して回収する方法が一般的である(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述した方法では、藻類を成長させ、成長させた藻類を殺してから成分を回収している。したがって、藻類回収までに藻類成長のための期間が必要になるとともに、一度成長させた藻類を再利用することはできないため、次に成分を回収するためには前回藻類を回収した藻類とは別に始めから藻類を成長させる必要がある。また、藻類を殺すための乾燥には、大量のエネルギーを消費する。
【0005】
さらに、上述した方法では、藻類から成分を回収するために有機溶剤等の薬品を利用する。したがって、成分の回収には大量の薬品を消費するとともに、回収後には大量の薬品を含む廃液の処理も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−234055号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、財団法人電力中央研究所、“アオコから『緑の原油』の抽出に成功”、[online]、2010年3月17日、[平成22年4月8日検索]、インターネット(http://criepi.denken.or.jp/press/pressrelease/2010/03_17.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の方法では、毎回、藻類を成長させるための期間を要し、一度成分を回収した藻類は再利用することができない問題があった。また、大量のエネルギーや大量の薬品が必要になる問題があった。さらに、大量の薬品を含む廃液の処理が必要な問題があった。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、藻類が分泌する成分の回収を容易にするとともに、エネルギーや薬品の消費を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、藻類が分泌する成分を回収する成分回収方法であって、気泡を生成するステップと、生成した気泡を藻類が存在する水槽内の液中に供給するステップと、藻類から分泌されて気泡に付着し、浮上した成分を回収するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、気泡を生成するステップでは、微細な気泡を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、成分を回収するステップでは、浮上した成分を掻き寄せ手段によって掻き寄せて回収することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、成分を回収するステップでは、浮上して前記水槽からオーバーフローする成分を回収することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、藻類が分泌する成分は炭化水素であって、成分を回収するステップでは、この炭化水素を回収することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、藻類が分泌する成分を回収する成分回収装置であって、培養液とこの培養液中で培養する藻類が内部に存在する水槽と、当該水槽中に配置され、気泡を生成し、生成した気泡を培養液中に供給する気泡生成手段と、藻類から分泌されて気泡に付着し、浮上した成分を回収する回収手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、藻類が分泌した成分の回収を容易にするとともに、エネルギーや薬品の消費を低減した成分回収方法及び成分回収装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る成分回収方法及び成分回収装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る成分回収方法では、図1に示すような成分回収装置1の水槽30内の培養液20中で成長した藻類10から分泌される分泌物11を成分として回収する。この水槽30は、気泡21を生成して水槽30内の培養液20に、生成した気泡21を供給する気泡供給手段31と、気泡供給手段31から培養液20に供給された気泡21が藻類10から分泌された分泌物11を付着して浮上すると、分泌物11を付着した気泡21を回収する回収手段32とを備えている。
【0019】
気泡21とともに浮上して回収手段32で回収される分泌物11には、図1に示すように、藻類10から分泌されて藻類10の表面に付着している分泌物11や、藻類10から離れて培養液20中に単独で漂っている分泌物11がある。
【0020】
回収対象の分泌物11を分泌させる藻類の一例として、微細藻類であるボツリオコッカス属の藻類が挙げられる。ボツリオコッカス属の藻類は、光合成によって分泌物として炭化水素を分泌する。藻類10の表面に炭化水素11が分泌され、炭化水素11に気泡供給手段31によって供給された気泡21が接触すると、藻類10の表面の炭化水素11は気泡21に付着して気泡21とともに浮上する。すなわち、炭化水素11は油分であって、炭化水素11のような油分は気泡に付着しやすい性質を有しているため、藻類10の表面の炭化水素11は気泡21に付着して浮上する。
【0021】
気泡供給手段31は、水槽30の中心で気泡21を供給するよりも、水槽30の底面又は底面付近で気泡21を供給するほうが、気泡21が培養液20中に存在する時間が長くなり、気泡21が藻類10に接触しやすいために好ましい。
【0022】
また、気泡供給手段31が供給する気泡の量とサイズは、水槽30の大きさや培養液20中に存在する藻類10の量に応じて定められる。このとき、気泡21が大きいと水槽30内で培養液20の乱流が生じやすくなる。むしろ、気泡21が小さいほうが浮上する速度が遅く、気泡21が培養液20中に存在する時間が長くなるとともに、気液接触面積も大きくなる。したがって、気泡供給手段31が供給する気泡21のサイズは小さいほうが、気泡21が藻類10に接触しやすいために好ましい。ただし、気泡21は、あまり小さすぎても浮力が弱く浮上に時間がかかる、浮上できなくなるといった問題がでてくるため、浮上しやすく、藻類10に接触しやすい程度の適度な大きさであることが好ましい。
【0023】
なお、従来から藻類の飼育に必要な空気等の気体を水槽に供給するために利用していた気体供給手段がある場合、この気体供給手段に代えて、最適なサイズの気泡21を培養液20中に供給する気泡供給手段31を利用すればよい。このように気体供給手段を気泡供給手段31に代えたとき、気泡供給手段31が要するエネルギー量や設置スペースは、従来の気体供給手段で単に気体を供給していた場合と同様に抑えることができる。また、気泡供給手段31で気泡を供給することで、従来の気体供給手段と同様に水槽に藻類の飼育に必要な気体を供給することもできる。
【0024】
回収手段32は、分泌物11を付着して浮上した気泡21を回収する。例えば、回収手段32には、水槽30の水面付近に設置され、培養液20の水面に浮上した分泌物11を掻き寄せて収集する掻き寄せ手段を利用することができる。または、回収手段32は、水槽30上部に設置され、水槽30からオーバーフローする分泌物11を回収するものを用いてもよい。
【0025】
なお、藻類10も水面に浮上しようとする性質があるが、藻類10は分泌物11を生成することで浮上しやすくなるため、分泌物11が収集された後の藻類10は分泌物11を多く保持する藻類10よりも沈みやすくなる。したがって、藻類10が水面に浮上する事を防止することができ、分泌物11を付着した気泡21の回収を阻害することはない。
【0026】
また、分泌物11が収集された後の藻類10は、再び浮上するために分泌物11を生成しようとするため、分泌物11を回収することで、分泌物11の生成のサイクルの短期化が期待できる。
【0027】
上述した本発明に係る成分回収方法及び成分回収装置によれば、水槽30中に存在する藻類10からの分泌物11の回収を繰り返すことができるため、成分の回収毎に藻類を殺して新たな藻類を成長させる必要がなく、成分の回収のサイクルを短縮することができる。また、藻類10の乾燥のためのエネルギーも不要となるため、省電力化することができる。さらに、有機溶剤等の薬品も不要であり、廃液処理も不要にすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…成分回収装置
10…藻類
11…分泌物(炭化水素)
20…培養液
21…気泡
22…平成
30…水槽
31…気泡供給手段
32…回収手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類が分泌する成分を回収する成分回収方法であって、
気泡を生成するステップと、
生成した気泡を藻類が存在する水槽内の液中に供給するステップと、
藻類から分泌されて気泡に付着し、浮上した成分を回収するステップと、
を有することを特徴とする成分回収方法。
【請求項2】
気泡を生成するステップでは、微細な気泡を生成することを特徴とする請求項1に記載の成分回収方法。
【請求項3】
成分を回収するステップでは、浮上した成分を掻き寄せ手段によって掻き寄せて回収することを特徴とする請求項1又は2に記載の成分回収方法。
【請求項4】
成分を回収するステップでは、浮上して前記水槽からオーバーフローする成分を回収することを特徴とする請求項1又は2に記載の成分回収方法。
【請求項5】
藻類が分泌する成分は炭化水素であって、成分を回収するステップでは、この炭化水素を回収することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の成分回収方法。
【請求項6】
藻類が分泌する成分を回収する成分回収装置であって、
培養液とこの培養液中で培養する藻類が内部に存在する水槽と、
当該水槽中に配置され、気泡を生成し、生成した気泡を培養液中に供給する気泡生成手段と、
藻類から分泌されて気泡に付着し、浮上した成分を回収する回収手段と、
を有することを特徴とする成分回収装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−10606(P2012−10606A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147611(P2010−147611)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】