説明

成型フィルター

【課題】微細なダストが形成した大きなダスト集合物などをも下流側に流してしまうこともなく、各種サイズや各種の形態のダストに対し良好な捕集能力を発揮し得て、濾材抵抗が少なく、形態安定性も良好な成型フィルターを提供すること。
【解決手段】胴部と底部とを有する成型フィルターであり、該底部が成型枠体で構成され、該成形枠体には、胴部を構成する胴部フィルターパーツと底部を構成する底部フィルターパーツのそれぞれが接着固定されて全体が構成され、かつ、胴部フィルターパーツおよび底部フィルターパーツは、少なくとも1層がメルトブロー不織布であり、他層が短繊維不織布またはスパンボンド不織布である2層以上の不織布の積層体からなることを特徴とする成型フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用として用いられる、いわゆるバケツ型の成型フィルターに関する。
さらに詳しくは、主に、家庭用の計画換気システムの外気取入れフィルター部や、室内給気用の空調フィルター部として使用され、例えば、外気から流入する花粉、土砂、カーボン類、室内で発生する糸、綿あるいはダニなどのいわゆるハウスダストを捕集して、快適な空気環境を保つことを実現する、いわゆるバケツ型の成型フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法の改定におけるシックハウス対策で居室の換気率が建築材料に基づき設定されるなど、快適環境を保つための技術開発が進められている。
【0003】
このため、マンション、アパートなど建家の外気の吸気穴に、はめ込みタイプのフィルターや全館冷暖房の24時間計画換気システム、顕熱交換型の24時間計画換気システムを配した住宅が建設されるようなった。
【0004】
これらの濾材として、一般に粗塵用と呼ばれている非常に密度の低いカード綿を樹脂で接着したシート状物、樹脂の代わりに熱接着繊維をブレンドし熱接着でシート状化をし濾材として、これらを縫製してなるフィルターが使用されている。
【0005】
しかしながら、これらを使用した設備の設置場所は限られたスペースで、濾材の使用量に限りがあり、一方で換気率の縛りから圧力損失(以下、圧損ということがある)の低い材料として選定する必要があり結果として、荒ゴミは捕集するが、花粉、土砂、カーボン類等ダストを効率よく除去する能力に乏しいフィルターであるのが現状である。
【0006】
花粉、土砂、カーボン類等ダストを効率よく除去するには、濾材自身のダスト捕集能力の高い濾材を使用することが好ましいが、これらは一般的に圧損の高い濾材であり、換気効率を上げるための動力を大きくする必要があり良策ではなく、圧損は小さいものの方が望ましいのである。
【0007】
本発明者らは、先に、特に、ダスト捕集能力が高く、濾材抵抗が少なく、形態安定性の良い成型フィルターを効率よく、安定して提供できる成型フイルターとして、底部が成型枠体で構成され、かつ、その底部および胴部が不織布からなるフィルターパーツを接着・固定されて構成されていて、かつ、該成型枠体とフィルターパーツが、いずれもポリプロピレン系樹脂で構成されている成型フィルターを提案した(特許文献1)。
【0008】
しかし、該特許文献1に記載されている成型フィルターでは、圧損を小さくすることに着目すると大きなダストから小さなダストまで通過させてしまうという欠点があり、このため、圧力損失を小さなものとしながらダスト捕集性能を上げるためにフィルターパーツをエレクトレット加工したもので構成することも特許文献1の請求項5で提案されている。しかし、そのような構成の場合、エレクトレットの電荷によりフィルターパーツの裏側(下流側)面に微細なダスト(概して、直径で言えば、5μm以下)がくっつき、そして、更に、その上にダストがくっつくという現象を生じさせ、その繰り返しによりダストが集合して次第に大きく成長し、ついには、大きなダスト集合物(概して、直径で言えば20〜100μm)として下流側に流れてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2005−125179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、微細なダストが形成した大きなダスト集合物などをも下流側に流してしまうこともなく、各種サイズや各種の形態のダストに対し良好な捕集能力を発揮し得て、濾材抵抗が少なく、形態安定性も良好な成型フィルターを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の成型フィルターは、以下の(1)に記載の構成を有するものである。
【0011】
(1)胴部と底部とを有するバケツ型の成型フィルターであり、該底部が成型枠体で構成され、該成形枠体には、前記胴部を構成する胴部フィルターパーツと前記底部を構成する底部フィルターパーツのそれぞれが接着固定されて全体が構成され、かつ、前記胴部フィルターパーツおよび前記底部フィルターパーツは、少なくとも1層がメルトブロー不織布であり、他層が短繊維不織布またはスパンボンド不織布である2層以上の不織布の積層体からなることを特徴とする成型フィルター。
【0012】
また、かかる構成を有する本発明の成型フィルターは、より好ましくは、以下の(2)〜(10)記載のうちのいずれかの具体的構成を有するものである。
【0013】
(2)前記メルトブロー不織布がエレクトレット加工を施されたものであり、かつ前記短繊維不織布またはスパンボンド不織布が抗菌加工を施されたものであることを特徴とする上記(1)記載の成型フィルター。
【0014】
(3)胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツとが、該フィルターパーツ内の短繊維不織布またはスパンボンド不織布側が、フィルター内を通過する流体流の下流側に配されて該底部成形枠体に接着固定されてなることを特徴とする上記(1)または(2)記載の成型フィルター。
【0015】
(4)胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、フラジール法による通気量が100〜600cc/cm2 ・secである通気性を有するものであることを特徴とする上記(1)、(2)または(3)記載の成型フィルター。
【0016】
(5)胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形加工(山谷折り賦形加工)されてなるものであることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)または(4)記載の成型フィルター。
【0017】
(6)胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形の山頂と谷底の高低差が5〜20mmであり、プリーツ賦形(山谷折り)のピッチが2〜10mmであることを特徴とする上記(5)記載の成型フィルター。
【0018】
(7)該胴部フィルターパーツのプリーツ山に外接させて、3〜15cmの間隔で複数の帯状の補強体を設けたことを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)記載の成型フィルター。
【0019】
(8)該成型枠体が、前記胴部フィルターパーツが固定される溝と、前記底部フィルターパーツが固定される縁部とを有する成型枠体であることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)記載の成型フィルター。
【0020】
(9)該成型フィルターが、計画換気システム空調での外気取り入れ用成型フィルターとして使用されるものであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の成型フィルター。
【0021】
(10)該成型フィルターが、室内給気用成型フィルターとして使用されるものであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の成型フィルター。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、家庭用換気システム用の外気取り入れ部や室内給気用空調フィルターにおいて、外気から流入する花粉、土砂、カーボン類、室内で発生する糸、綿、ダニなどのいわゆるハウスダストを効果的にカットし、快適環境を保つことを可能にする空調用の成型フィルターを提供することが可能となる。
【0023】
特に、本発明においては、微細なダストが形成した大きなダスト集合物などをも下流側に流してしまうこともなく、各種サイズや各種の形態のダストに対し良好な捕集能力を発揮し得て、濾材抵抗も少ない成型フィルターが実現される。
【0024】
また、本発明にかかる成型フィルターは、形態安定性も良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の成型フィルターについて、更に詳しく説明をする。
本発明の成型フィルターは、胴部と底部とを有するバケツ型の成型フィルターであり、該底部が成型枠体で構成され、該成形枠体には、胴部を構成する胴部フィルターパーツと底部を構成する底部フィルターパーツのそれぞれが接着固定されて全体が構成されている。そして、更に、該胴部フィルターパーツおよび該底部フィルターパーツは、少なくとも1層がメルトブロー不織布であり、他層が短繊維不織布またはスパンボンド不織布である2層以上の不織布積層体からなるものである。本発明において、バケツ型とは、図1と図2に1例モデルを示したように、少なくとも胴部と底部とを有する成型フィルターであって、該胴部と底部のそれぞれがフィルター面として形成されているものをいう。
【0026】
この基本構造を図面により説明すると、図1は、本発明の成型フィルターの開口部から見た底部フィルターパーツの一例を示す概略図である。
【0027】
成型枠体1は、例えば、図1に示したように、F字型、すなわち、Fの字を寝かした形態の枠体を構成していて、該枠体は外側の壁1が内側の壁1′よりも高く、かつ該内側の壁1′のさらに内側には、縁1″が設けられて構成がされた枠体である。
【0028】
かかる成型枠体1の外側の壁1と内側の壁1′の間の溝部に胴部フィルターパーツ2が挿入されて接着固定されている。この成型枠体の内側の壁1′の内側には、縁部1″が設けられており、ここに底部フィルターパーツ3が貼り付けられて接着固定されて、本発明の成型フィルターは構成されている。
【0029】
胴部フィルターパーツ2と、底部フィルターパーツ3は、それぞれが、少なくとも1層がメルトブロー不織布であり、他層が短繊維不織布またはスパンボンド不織布である計2層以上の不織布積層体から形成されているものである。
【0030】
このようにメルトブロー不織布と、短繊維不織布またはスパンボンド不織布を組み合わせて使用することにより、微細なダストが形成した大きなダスト集合物などをも下流側に流してしまうこともなく、各種サイズや各種の形態のダストに対し良好な捕集能力を発揮し得て、濾材抵抗も少ない成型フィルターが実現される。
【0031】
図2は、図1に示した成型フィルターを側面から見たものを一部切り込みを入れて図示したものである。
【0032】
胴部フィルターパーツ2と、底部フィルターパーツ3は、それぞれプリーツ賦形加工(山谷折り賦形加工)がされてなることが好ましく、さらに、ブリーツ賦形加工を施したものを用いる場合には、蛇腹のように形状が不安定な点もあるので、そのプリーツ山に外接させて、3〜15cm程度の間隔ピッチで1本〜複数本の帯状の補強体を設けてもよい。図2に示した成型フィルターでは、その胴部フィルターパーツ2には、2箇所に該帯状の補強体(プリーツ補強用テープ4)が該プリーツ山に外接されて補強されている。この態様では、帯状の補強体としてプリーツ補強用テープ4が貼り付けられているが、さらに、この場合は、成形枠体に挿入し接着固定せしめる側の胴部フィルターパーツ2の端部を、予め該プリーツ補強用テープ4を貼り付けて安定化させておくと、作業性も接着性も大幅にアップできるという利点がある。
【0033】
本発明において、特に胴部と底部のフィルターパーツの好ましい構成は、メルトブロー不織布がエレクトレット加工を施されたものであって、短繊維不織布またはスパンボンド不織布が抗菌加工を施されたものである。これは、エレクトレット加工がされていることにより、圧力損失がさほど大きくなることなくダストの捕集を効果的にできるようになるからであり、短繊維不織布またはスパンボンド不織布は、該フィルターパーツの全体強度の向上に寄与し、同時に抗菌加工が施されているものを使用することにより、フィルターパーツ内に捕捉されたダストに菌が繁殖することを防ぐことができることとなる。
【0034】
この態様の場合は、エレクトレット化不織布は、いったん通過したダストも下流側の面で電化の作用によりその裏面(下流側面)に捕捉することができるため、該裏面に捕捉されたダストは次第に成長をしていき、当初はごく微細なダストであっても集合体として大きなサイズに成長をしていき、ついには、比較的大きなダスト集合体として下流に流れていく可能性がある。したがって、メルトブロー不織布をエレクトレット化させたものとして使用する場合には、該エレクトレット不織布裏面でのダスト吸着作用による不都合を防止するために、上流側において、エレクトレットメルトブロー不織布が配置されて、下流側において短繊維不織布またはスパンボンド不織布側が配置されるように使用されるのがよい。
【0035】
このような構成とすれば、いったんフィルターパーツを通過したようなごく微細なダストが、エレクトレット効果に基づいて、フィルターパーツ裏面上に吸着されて堆積していくこと、それが成長していくことが防止され、微細なダストが多数集合して形成された大きなダスト集合体としてのダストを、下流側に流してしまうことが良好に防止できるものとなる。この場合、いったんフィルターパーツを通過したようなごく微細なダストは、そのまま成型フィルターを通過することとなるが、ごく微細なダストであるのならば、特別な問題とはならないものである。
【0036】
本発明において、胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれは、本発明者らの知見によれば、フラジール法による通気量が100〜600cc/cm2 ・secである通気性を有するものであることが、圧力損失とダスト捕集能力の双方を両立させることができるので好ましい。
【0037】
また、胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形加工(山谷折り賦形加工)されてなるものであることが好ましく、プリーツ賦形加工(山谷折り賦形加工)をすることにより、フィルターとして機能する面積を大きくできることとなり、良好なフィルター効果を発揮することができるようになる。また、その場合は、胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形の山頂と谷底の高低差が5〜20mmであり、プリーツ賦形(山谷折り)のピッチが2〜10mmであることが好ましい。また、プリーツ賦形(山谷折り)がされてなる場合には、胴部フィルターパーツのプリーツ山に外接させて、3〜15cmの間隔で複数の帯状の補強体を設けることが形態の安定性を維持する上で好ましい。該補強体は、図2で例示した帯状テープが該当する。
【0038】
フィルターパーツを構成するメルトブロー不織布は、外気から流入する花粉、土砂、カーボン類、室内で発生する糸、綿、ダニなどのいわゆるハウスダストをカットし、快適環境を保つためのメイン濾材として、繊維間空隙が比較的小さく、均一であることが好ましい。
【0039】
フィルターパーツ全体としてのフラジール法による通気量は、前述のように100〜600cc/cm2 ・secであることが好ましいことから、該メルトブロー不織布の単独体としては、フラジール法による通気量で120〜700cc/cm2 ・sec程度の通気性を有し、かつ、エレクトレット加工が施されて捕集能力が高められたものを用いることが、特に好ましい。該通気量は、メルトブロー不織布を構成する繊維の太さ、目付、厚みをコントロールして製造することで調整が比較的容易に可能である。
【0040】
特に、ポリプロピレンを主体としたメルトブロー不織布を用いる場合には、繊維に電荷を付与するのに非常に適した素材であり、特に本発明の濾材に好適な素材である。メルトブロー不織布にエレクトレット加工を施す方法は、例えば、米国特許第5057710号明細書に記載の方法などで行うことができる。
【0041】
一方、短繊維不織布またはスパンボンド不織布の層は、プリーツ賦形を良好に可能にさせる機能と、該不織布層が下流に用いられる場合には、上流のメルトブロー不織布を通過した超微細な粒子や異物が、フィルターパーツの下流側の面上で蓄積し、大径のダスト集合体となることを防止することができる機能を有していることが求められる。
【0042】
この機能を保有させるには、厚みとして0.3〜2mm程度、JIS規定の45°カンチレバー法剛軟度で15〜30cmを有し、通気量が150cc/cm2 ・sec以上を超える短繊維不織布もしくはスパンボンド不織布とすることが好ましい。このような不織布も、該不織布を構成する繊維の太さ、目付、厚みをコントロールして製造することで調整が比較的容易に可能である。
【0043】
なお、短繊維不織布またはスパンボンド不織布の層を下流に用いた場合、該層の厚みが薄いと超微細な粒子や異物が、いったん通過したフィルターパーツの下流面で蓄積しやすく、厚いとプリーツ賦形によるデットスペースを生じさせる原因となり易いので、注意が必要である。また、硬さが不足すると、成型フィルターに通風したときに変形してデットスペースの発生が起こりやすく、硬すぎると成型フィルターの取付け作業性が悪いので注意が必要である。短繊維不織布またはスパンボンド不織布の層の通気量は、該層の厚み、硬さの点で満足できるものであれば多い方が好ましく、本発明者らの知見によれば、一般に、少なくとも150cc/cm2 ・sec以上であれば、フィルターパーツ全体としての望ましい通気量100〜600cc/cm2 ・secを確保でき、好ましい。
【0044】
フィルターパーツ全体の不織布層が100cc/cm2 ・secより通気量が少ないと、成型フィルターの圧損抵抗を低くするために濾材面積を増す必要があり、設備的に制限のある場所には不向きであるので注意を要する。また、600cc/cm2 ・secを超える通気量となると、繊維間の空隙が大きくなり、濾材からのダストの漏れ率が増すので注意を要する。
【0045】
かかるフィルターパーツとしては、プリーツ賦形加工が施されたものが、ダスト捕集能力が高く、濾材抵抗が少ないという効果の上から好ましい。プリーツの山と谷の高低差は、大きければ大きいほど濾材量(濾材面積)が増え、濾材の通過風速が遅くなり、ダストの捕集性は向上するが、形態の安定性が低下するので好ましくない点もあり、5〜20mm程度とするので好ましい。逆に、5mm未満のような小さなときは、濾材量を大きくするためには、成型フィルターの全体サイズアップが必要となり、設備的に制限のある場所に設置するには不向きであるので注意が必要である。
【0046】
また、賦形プリーツのピッチが2mm未満の場合、濾材の厚みにもよるが、濾材間隔が狭くなり構造圧損が生じやすくなるので注意が必要である。また、賦形プリーツのピッチが10mmを越えるときは、低い山高さの場合と同様に成型フィルターの全体サイズアップが必要となり、設備的に制限のある場所には不向きであるので注意を要する。特に、好ましい賦形プリーツのピッチの範囲は4〜8mmである。
【0047】
かくして、得られたフィルターパーツを成型フィルターの胴部と底部に用いるが、所定の成型フィルターサイズに合わせて、型を打ち抜く方法、縁抜き方法には種々の方法があり、特に限定されないが、好ましくはトムソン型の打ち抜き機、あるいは超音波の打ち抜き機が好ましく使用できる。
【0048】
プリーツタイプのフィルターパーツを製造したいときは、所定の山ピッチにセットし、不織布、織物、紙等からなるテープや、ビード材に使用される樹脂等で固定してから、打ち抜くと形状が安定するだけでなく、使用時の風圧に対する補強体の役目、成型枠体に胴部フィルターパーツを接着剤で固定する場合に、作業性、接着強度を高める効果も果たし、生産上、使用時耐久性の観点から好ましい。プリーツ補強用に用いるテープは、幅5〜12mmのものが好ましい。該プリーツ補強用テープは、特に胴部フィルターパーツを成形枠体に接着せしめるときに使用すると大きな効果を奏する。すなわち、胴部フィルターパーツの成形枠体に挿入・接着固定させる側の端部を、予め該プリーツ補強用テープを貼り付けて安定化させておくと、作業性はもとより、その後の接着性を大幅にアップさせることができる。このプリーツ山のピッチを該プリーツ補強用テープで固定するときの間隔(補強用テープの固定間隔)は、3〜15cmとするのが、形態安定性の点からよい。なお、ここでいう間隔とは、テープ端部と隣接するテープ端部の間の距離であり、中心間距離(ピッチ)ではない。
【0049】
得られたフィルターパーツの胴部を構成するものは、成型工程の前に筒状に形成されるが、この場合、端面同士を0.5〜2cm前後重ねて、熱融着あるいは超音波融着法により融着する方法や、糊材、オレフィン系接着剤で接着する方法等で筒状に形成することができる。ポリプロピレンを主体とした樹脂からなる不織布の場合には、製法の容易性、加工スピードの点から、接着剤で接着する方法が、十分な接着強度が得られるので特に好ましい。
【0050】
本発明の成型フィルターは、ポリプロピレン樹脂を主体とした素材からなるものが好ましいものであり、ここでいう主体とは、ポリプロピレンのホモポリマ、ポリプロピレンと他のオレフィンとの共重合体、さらには1−メチルペンテン等の他のオレフィンとのブレンド樹脂を意味する。
【0051】
本発明において、成型枠体には、図1、図2にて説明したように、胴部フィルターパーツが固定される溝と、底部フィルターパーツが固定される縁部とを有することが実際的であり好ましいが、具体的構造については、それだけに限定されるものではない。
【0052】
本発明にかかる成型フィルターは、底部が成型枠体で構成されていることも重要な点である。成型枠体を用いることにより、フィルター全体の形態を安定した形状に形成することが比較的簡単にできる上に、形態安定性が良く、機能性、性能に優れたフィルターを効率よく、安定して実現することができる。
【0053】
成型枠体は、フィルターパーツと同じ樹脂で構成することが好ましい。具体的には、特にポリプロピレンを主体とした樹脂で構成することにより、一般に、各部材との接着性に優れた丈夫なフィルターであって、さらに建築材料として難燃性材料の要請にも応えられる上に、使用後に焼却しても、ダイオキシンを生じることがなく、環境的な点でも良好な成型フィルターを提供することができる。
【0054】
該成型枠体の形状は、特に限定されるものではないが、好ましくは円形状あるいは楕円形状であるのが、形態安定性やフィルター機能の点から好ましい。より好ましくは楕円形状、特に好ましくは円形半径1.5倍程度の楕円形状が、形態安定性に優れているので望ましい。つまり、該楕円形状の成型枠体を、縦長に取り付ければ該成型フィルターの胴部の形状を安定して保持することができるものである。
【0055】
該成型枠体は、該成型フィルターのサイズに合わせ、たとえばポリプロピレンを主体とした樹脂などを用いて射出成型手段等により成形できる。
【0056】
本発明の成型フィルターは、バケツ型成型フィルターであることが重要であり、その底部周縁部が成型枠体で構成されており、この成型枠体に、該バケツ型成型フィルターの胴部および底部を構成する不織布からなるフィルターパーツを接着・固定させて製造できる。
【0057】
なお、本発明において、特に、環境保護の点を考慮すれば、トウモロコシから得られるポリ乳酸樹脂からなる成形枠体および該樹脂からなるフィルターパーツを用いて成型フィルターを形成することも望ましい。該樹脂は、生分解性の性質を持ち合わせており、環境保護には最適な材料である。
【0058】
本発明にかかる成型フィルターは、近年の、計画換気システム空調での外気取り入れ用成型フィルターとして、あるいは、室内給気用成型フィルターなどとして、好適に使用されるものである。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明において、各物性値の測定は以下の方法によるもである。
【0060】
(1)フラジール法による通気量の測定:
JIS L1096の8.27.1〔A法(フラジール形法)〕による。試験片の大きさおよび採取量、気圧計の圧力並びに試験結果は、次の通りとした。試験片の大きさおよび採取量については、試験片は15cm×15cmの大きさとし、試料の幅1m当たり3枚採取する。気圧計の圧力の単位はPa(パスカル)とし、傾斜形気圧計の圧力の調整は125Paとする。試験結果は、試験片を通過する空気量を求め、3回の試験結果の平均値を算出し、JIS Z8401によって整数に丸めた。
【0061】
(2)45°カンチレバー法による剛軟度の測定:
JIS L1096の8.19.1〔A法(45°カンチレバー法)〕による。試験片は試料の幅1m当たり、タテ方向及びヨコ方向にそれぞれ3枚採取して行い、それらの平均値を算出した。
【0062】
(3)フィルターの捕集効率の測定:
被測定対象のバケツ型フィルターを評価機器(ダストカウンター)(MET ONE製機器番3315)にセットし、大気塵の捕集効率を、大気の通過風量200m3 /時間として評価した。
【0063】
なお、実施例1において製作したバケツ型の成形フィルターは、実寸法が、底部フィルターパーツの濾材有効面積(空気が通過できる面積)が0.01125m2 、胴部フィルターパーツの濾材有効面積が0.0987m2 であり、総合計が0.1100m2 の濾材有効面積を持つものであり、定常的に、200m3 /時間の大気が通過するようにセットした。比較例のソック型フィルターについても同一レベルの濾材有効面積を有するようにほぼ同一径、ほぼ同一長さで製造をして、同一の手法で測定に供した。
【0064】
被測定対象のバケツ型(実施例)とソック型のフィルター(比較例)のそれぞれの上流および下流にマノメータを設置して圧力差から圧力損失を測定し、また、それぞれのフィルターにおいて、上流大気のダストの個数とフィルター通過後の下流大気のダストの個数から、下記の式に従い捕集効率(%)を求めた。
【0065】
なお、上述ダストカウンター(MET ONE製機器番3315)は、表1に示したダストの径の区分ごとに従ってダスト個数をカウントするようにセットしたものであり、本測定では、そのカウントされた個数から、ダスト径の区分ごとにその捕集効率をそれぞれn数を5として求めて、その5つのデータの平均を百分率表示での小数点1けたまで求めた。
捕集効率(%)={(上流ダスト数−下流ダスト数)/上流ダスト数}×100
【0066】
実施例1
〔成形枠体の形成〕
図1に示したとおりの概略形状を有する成形枠体を、ポリプロピレン樹脂を射出成型することにより製造した。
(底部フィルターパーツおよび胴部フィルターパーツの形成)
【0067】
一方、東レ・ファインケミカル(株)製のポリプロピレン樹脂製メルトブロー不織布の“トレミクロン”(登録商標)ES02040(フラジール法による通気量が500cc/cm2 ・sec、目付20g/m2 )と、倉敷繊維加工(株)のPETおよびPET/PEのカード不織布からなる熱融着不織布のTRF110(フラジール法による通気量が217cc/cm2 ・sec)を積層して、低融点パウダー使用のシンター加工によって接着して、胴部用のフィルターパーツおよび底部用のフィルターパーツを形成した。
【0068】
なお、メルトブロー不織布“トレミクロン”(登録商標)ES02040は、エレクトレット加工された不織布である。
【0069】
このフィルターパーツに、さらに山頂谷底の高低差(山高さ)9ミリでプリーツ加工を施し、プリーツ賦形をしたフィルターパーツを準備した。
【0070】
〔底部フィルターパーツの装着〕
上記の成形枠体の底部の縁部(図2の1″)に、前記プリーツ賦形加工をしたフィルターパーツを、5ミリピッチにプリーツ山の間隙を調節した底部フィルターパーツをセットし、ホットメルト接着剤(日立化成ポリマー(株)製ホットメルト接着剤“ハイボン”(登録商標)XH494−3)で成形枠体と一体化した。
【0071】
該底部フィルターパーツは、上記のポリプロピレン樹脂製メルトブロー不織布の“トレミクロン”(登録商標)ES02040が上流側で、上記の倉敷繊維加工(株)のPETおよびPET/PEのカード不織布からなる熱融着不織布のTRF110(フラジール法による通気量が217cc/cm2 ・sec)が下流側になるように使用したものである。
【0072】
〔胴部フィルターパーツの装着〕
次いで、前記プリーツ賦形加工をしたフィルターパーツを、バケツ型成型フィルターの径(プリーツを含む全長:473mm)に合わせて裁断し、これを筒状に成形したときの筒長さ230mmに合わせて、さらに裁断した後、この裁断後のフィルターパーツを、5ミリピッチにプリーツ山の間隙を調節して胴部フィルターパーツを形成した。
【0073】
該胴部フィルターパーツは、上記のポリプロピレン樹脂製メルトブロー不織布の“トレミクロン”(登録商標)ES02040が上流側で、上記の倉敷繊維加工(株)のPETおよびPET/PEのカード不織布からなる熱融着不織布のTRF110(フラジール法による通気量が217cc/cm2 ・sec)が下流側になるように使用したものである。
【0074】
そして、その胴部フィルターパーツの成型フィルターでの外側に相当する面の2カ所に、10mm幅のプリーツ補強用テープとして、綿バイアステープをホットメルト接着剤(日立化成ポリマー(株)製ホットメルト接着剤“ハイボン”(登録商標)XH494−3)を用いて、ほぼ等間隔に貼り付けた。
【0075】
次いで、胴部フィルターパーツの成形枠体への挿入部分である端部に、該綿バイアステープを同様にして貼り付けた。
【0076】
次いで、平面状の該胴部フィルターパーツを円筒状に形成し、その両端を重ね合せて前記接着剤を用いて接着し、併せて胴部フィルター径より少し長めの綿バイアステープ同士も接着し、最終的に3本の綿バイアステープで胴部フィルターパーツが安定化されたものを形成した。このフィルターパーツのプリーツ間隔は、該綿バイアステープにより、一定化とともに形態の安定化がされていた。
【0077】
該成型枠体の外側の壁1と内側の壁1′の間の溝部に、ホットメルト接着剤(日立化成ポリマー(株)製ホットメルト接着剤“ハイボン”(登録商標)XH494−3)を流し込み、胴部フィルターパーツの綿バイアステープを接着した端部側を挿入・嵌め込み固定して、成型枠体と接着一体化した。
【0078】
〔フィルター性能の評価(捕集効率の算定と評価)〕
かくして得られたバケツ型成型フィルターの性能(捕集効率、圧力損失)は、表1に示すように計画換気システム空調での外気取り入れフィルターとして好適なものであった。
【0079】
比較例1
ポリエステル系樹脂綿(ダイニック社製ML−300RF)の目付300g/m2 、厚み14mmのものを実施例1の成型フィルターと同一径、同一長さに調整して縫製して、ソック型フィルターを形成した。ソック型フィルターは、底部の成型枠体などを使用していない単なる袋状のフィルターである。
【0080】
このソック型フィルターの性能(捕集効率、圧力損失)評価を実施例1のものと同様にして行った。
【0081】
実施例1、比較例1のそれぞれの評価結果を表1に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から明らかなように、実施例1のものは、比較例1のものに比して、除去対象とする花粉、土砂、カーボン類等のいずれのものに対しても優れた捕集性能を示したが、比較例1のものは10〜25μm以上の粒子に対しての捕集性能に劣るものであり、実用性に乏しいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の成型フィルターの開口部から見た底部フィルターパーツの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示した成型フィルターを側面から見たものを一部切り込みを入れて図示したものである。
【符号の説明】
【0085】
1、1′、1″:成型枠体
2:胴部フィルターパーツ
3:底部フィルターパーツ
4:プリーツ補強用テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と底部とを有するバケツ型の成型フィルターであり、該底部が成型枠体で構成され、該成形枠体には、前記胴部を構成する胴部フィルターパーツと前記底部を構成する底部フィルターパーツのそれぞれが接着固定されて全体が構成され、かつ、前記胴部フィルターパーツおよび前記底部フィルターパーツは、少なくとも1層がメルトブロー不織布であり、他層が短繊維不織布またはスパンボンド不織布である2層以上の不織布の積層体からなることを特徴とする成型フィルター。
【請求項2】
前記メルトブロー不織布がエレクトレット加工を施されたものであり、かつ前記短繊維不織布またはスパンボンド不織布が抗菌加工を施されたものであることを特徴とする請求項1記載の成型フィルター。
【請求項3】
胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツとが、該フィルターパーツ内の短繊維不織布またはスパンボンド不織布側が、フィルター内を通過する流体流の下流側に配されて該底部成形枠体に接着固定されてなることを特徴とする請求項1または2記載の成型フィルター。
【請求項4】
胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、フラジール法による通気量が100〜600cc/cm2 ・secである通気性を有するものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の成型フィルター。
【請求項5】
胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形加工(山谷折り賦形加工)されてなるものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の成型フィルター。
【請求項6】
胴部フィルターパーツと底部フィルターパーツのそれぞれが、プリーツ賦形の山頂と谷底の高低差が5〜20mmであり、プリーツ賦形(山谷折り)のピッチが2〜10mmであることを特徴とする請求項5記載の成型フィルター。
【請求項7】
該胴部フィルターパーツのプリーツ山に外接させて、3〜15cmの間隔で複数の帯状の補強体を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の成型フィルター。
【請求項8】
該成型枠体が、前記胴部フィルターパーツが固定される溝と、前記底部フィルターパーツが固定される縁部とを有する成型枠体であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の成型フィルター。
【請求項9】
該成型フィルターが、計画換気システム空調での外気取り入れ用成型フィルターとして使用されるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の成型フィルター。
【請求項10】
該成型フィルターが、室内給気用成型フィルターとして使用されるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の成型フィルター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−268417(P2007−268417A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97417(P2006−97417)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】