説明

成型品の製造方法および成型品防汚複合体の製造方法

【課題】基本物性が大きく損なわれずに、機能性成分を準安定的に高含有するポリマー組成物を用いた成型品などを廉価に供給する。
【解決手段】少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなる第1のベースポリマー(A)と、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなり前記第1のベースポリマー(A)に相溶性のない第2のベースポリマー(B)と、前記第1のベースポリマー(A)及び前記第2のベースポリマー(B)のいずれにも相溶性がないとともに前記第1のベースポリマー(A)の熱分解点と前記第2のベースポリマー(B)の熱分解点のうち、低い方の熱分解点において液体又はスラリー状態である少なくとも1種類の物質を含む添加物(C)とからなり、(A)、(B)および(C)はそれぞれ相分離しており、接している2相の界面がGyroid構造の3次元連続平行界面を形成している、ポリマー組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明はポリマー組成物に関し、特に互いに相溶性のない第1のベースポリマー(A)、第2のベースポリマー(B)および添加物(C)を混合したポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基本物性を著しく損なうことなく、マトリックポリマーとは相溶性のない機能性液状第3成分を準安定的に多量に保持する熱可塑性ポリマー組成物は、3次元架橋ゴム又は特許文献1記載の液体/ポリマーエマルジョン以外に開示されている例はない。
【0003】
3次元架橋ゴムは熱可塑性がないため、押し出し成形することが困難であり、フィルムや繊維などを製造することは困難である。
【0004】
特許文献1に記載の液体/ポリマーエマルジョンは不連続相であるため、フィルムなどに成型した場合に、含有される液体又はポリマーなどが成型品の表裏を連続した状態で貫通することができない。
【0005】
液体/ポリマーエマルジョンはエマルジョン形成する液体/界面形成ブロックコポリマー/ポリマー3者の組み合わせが必要であり、3者の自由な組み合わせを採用することができない。また、エマルジョンは不連続相である。さらに、稀釈してもこのエマルジョンは壊れない。
【0006】
稀釈すると第3成分の保持構造が壊れる、機能性液状第3成分を準安定的に多量に保持するポリマー組成物は未だ開示されていない。
【0007】
特許文献2に「フルオロポリマーは、非付着性(例えば調理器具)や、防食性(例えば、化学タンク、排気ダクト)のためにも、金属基材のコーティングに使用されてきたが、その非付着性は、フルオロポリマーを基材に接着するときには問題となる。通常、フルオロポリマーの金属基材への接着は、最初に化学エッチング又は高圧グリットブラスティングを使用して、基材に粗面を形成する。その後、プライマーを塗布する。ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの、熱的に安定なバインダーとして知られるものは、フルオロポリマーと化学的に相互作用するか否か知られていないため、これらの物質の使用はプライマーに限られている。プライマーは粉末であってもよいが、より一般的には溶剤から、又は水溶液から塗布される。物品は、接着しかつ、溶剤又は液体キャリアーを蒸発させるために、通常、必要温度で焼付けられる。通常、その後に、フルオロポリマーのトップコートを塗布し、焼付けて、保護又は装飾コーティングにフルオロポリマーを融着させる。」と記載されているようにフッ素系樹脂をコーティングする塗装工程は複雑であり、経済的に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3963941号公報
【特許文献2】特表2007−508415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は基本物性が大きく損なわれずに、機能性成分を準安定的に高含有するポリマー組成物、及びそれからなる高絶縁性ポリマー製品及び集塵フィルター、及び防汚性製品、及びセパレーター用ポリマー組成物及びそれからなるフィルム又は繊維製品を使用した電池、コンデンサー、キャパシター、良導電性・伝熱性プラスチックなどを廉価に供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなる第1のベースポリマー(A)と、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなり前記第1のベースポリマー(A)に相溶性のない第2のベースポリマー(B)と、前記第1のベースポリマー(A)及び前記第2のベースポリマー(B)のいずれにも相溶性がないとともに前記第1のベースポリマー(A)の熱分解点と前記第2のベースポリマー(B)の熱分解点のうち、低い方の熱分解点において液体又はスラリー状態である少なくとも1種類の物質を含む添加物(C)とからなり、(A)、(B)および(C)はそれぞれ相分離しており、接している2相の界面が3次元連続平行界面を形成している構成を備えている。
【0011】
ここでスラリーとは液体に粉体が混合されていて流動性を有する状態のもの(流体)である。
【0012】
3次元連続平行界面とは、Gyroid構造における2つの空間(領域)を隔てる膜の両面を意味している。Gyroid構造とは、共連結構造の一種であって、一枚の連続的な膜が周期的に空間を埋め尽くし、その膜によって空間が2つの領域に分割されている構造である。2つの領域同士は膜によって隔てられており互いに接触してはいない。なお、共連結構造とは膜(あるいは界面)によって分けられる2つの空間がそれぞれ無限に連結した領域を形成している構造のことである。
【発明の効果】
【0013】
本発明ポリマー組成物は、マトリックポリマーの基本物性が大きく損なわれずに、機能性成分を準安定的に高含有させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の実施形態においては、第1のベースポリマー(A)と第2のベースポリマー(B)との少なくともいずれか一方はゴム(エラストマー)ではなく、3者混合させたポリマー組成物もゴム(エラストマー)ではない。そのため、実施形態のポリマー組成物を用いて押し出し成形を行うことが可能であり、フィルムや繊維等を製造することが可能である。
【0015】
また添加物(C)は第1のベースポリマー(A)の熱分解点と第2のベースポリマー(B)の熱分解点のうち、低い方の熱分解点において液体又はスラリー状態であるが、熱分解点にまで温度が上がっても大気圧よりも高い圧力(例えば混練押し出し機の内部)であればベースポリマーの熱分解は実質的に起こらない。
【0016】
本願発明の好適な実施形態においては、(A)、(B)、(C)がGyroid構造の平行膜を構成しており、(C)で分割された2つの領域のそれぞれを(A)、(B)が占めている構造となる。3次元連続平行界面は、(C)が構成している膜において(B)と(C)との界面α及び(A)と(C)との界面βが形成しているものであり、界面αと界面βとは平行であって3次元的に連続して延びて空間を埋めている。
【0017】
第1のベースポリマー(A)の熱分解点は、(A)が2種類以上のポリマーをブレンドしたものであるとき、ブレンドされた各ポリマーの熱分解点のうち、最も低いものに相当する。第2のベースポリマー(B)の熱分解点に関しても同様である。
【0018】
また実施形態の1形態は(C)が熱可塑性ポリマー、熱可塑性オリゴマー、オイル、殺虫剤、フェロモン、忌避剤、誘引剤、粘着剤、界面活性剤、離型剤、抗菌剤、防カビ剤、防炎剤、平滑剤、摩擦剤、補強材、導電剤、伝熱剤、防錆剤、電解液の少なくとも1種であるポリマー組成物及びその成型品である。当該成型品は、その一部に前記ポリマー組成物を備えていればよく、例えば多層フィルムであって一層が前記ポリマー組成物からなるフィルムを挙げることができる。
【0019】
また実施形態の1形態は、上記のポリマー組成物を、(A)、(B)、および(A)又は(B)と相溶性のあるポリマーのうちの一つによって希釈し、当該ポリマー組成物の希釈物を成型して得られた成型品である。また、この成型品は、表面に、0.001μm以上2μm以下の厚みの前記(C)からなる膜を備えている構成とすることができる。
【0020】
また実施形態の1形態は前記成型品がフィルム又は繊維などの押し出し成型品、又は射出成型品である。また、(C)が食用オイルであるフィルムであり、(C)が粘着剤であるフィルムであり、(C)が界面活性剤であるフィルム、又は繊維及び繊維製品である。また、(C)が防錆剤であるフィルム及びラミネート製品である。
【0021】
また実施形態の1形態は(C)の主成分がポリマー又はポリブレンドである前記ポリマー組成物及びその成型品である。
【0022】
好ましいその1形態は(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが電気抵抗1015Ωcm以上であるポリマー組成物及びその成型品であり、その成型品が繊維製品であり、その成型品がメルトブローン不織布又は、メルトブローン不織布との積層物からなる成型品である。またその成型品は好ましくはエレクトレット加工されたフィルターである。
【0023】
また実施形態の1形態は(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが熱可塑性接着剤である前記ポリマー組成物及びその成型品である。
【0024】
好ましいその1形態はセラミック、金属、木材、プラスチックの少なくとも1種に接着力が大きい、これらの物質用途の熱可塑性接着剤である前記ポリマー組成物及びその成型品であり、あるいは、フッ素樹脂成型品と前記ポリマー組成物との積層体である成型品複合体であり、防汚成型品である。
【0025】
また実施形態の1形態は(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つがガスバリアー性熱可塑性樹脂であるポリマー組成物である。好ましくはガスバリアー性樹脂がポバール・酢酸ビニル共重合物であるポリマー組成物及びその成型品である。
【0026】
また実施形態の1形態は(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂変性物、及びポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂変性物との少なくとも一方を含むポリマーブレンド、のうちの一つである前記組成物及びその成型品である。
【0027】
好ましいその1形態は、(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが、フッ素樹脂、フッ素樹脂変性物、及びフッ素樹脂とフッ素樹脂変性物との少なくとも一方を含むポリマーブレンド、のうちの一つである前記組成物及びその成型品であり、その成型品は好ましくはコンデンサー又はキャパシター用セパレーターであるフィルム又は繊維製品である。
【0028】
また好ましいその1形態は(C)が電池用電解液である電池用セパレーターフィルム又は繊維製品であり、そのセパレーターフィルム又は繊維製品を使用した2次電池である。
【0029】
また実施形態の1形態は前記ポリマー組成物を含むサスペンジョン又はスラリー又はインキ又はペイント(ペンキ)である。ポリマーサスペンジョン又はスラリーは(C)を溶解しない分散媒中で前記ポリマー組成物を溶融温度以上で攪拌、分散させ、適当な界面活性剤で準安定状態を形成する公知の製法により製造することができる。
【0030】
またその1形態は(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つがエポキシ硬化触媒である前記ポリマー組成物及びその成型品であり、好ましくはエポキシ硬化触媒がイミダゾール系化合物である組成物及びそれからなる粉体触媒である。
【0031】
また実施形態の1形態は(C)が金属又は無機化合物である前記ポリマー組成物及びその成型品であり、好ましくは、(C)が錫又は錫合金である良導電、伝熱性のポリマー組成物及びその成型品である。
【0032】
実施形態に使用する(A)は、1種類以上の熱可塑性ポリマーからなる。実施形態に使用する(B)も、1種類以上の熱可塑性ポリマーからなる。熱可塑性ポリマーの1種として、反応後に熱硬化性ポリマーとなる熱可塑性前駆体も(A)および(B)に使用できる。ただし、このような熱可塑性前駆体を(A)及び(B)の少なくとも一方に用いる場合は、(A)と(B)は3次元連続平行界面形成を損なうほど溶融状態で著しく反応しない種類の熱可塑性前駆体あるいは混合条件を選ぶ。熱可塑性ポリマーとしては例えばポリジフルオロエチレンなどの熱可塑性フッ素樹脂、HDPE,LDPE,LLDPEなどのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリメタクリレート及びその変性物などの付加重合物、PET、PBT、PTT、PLAなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの縮重合物などがある。熱硬化性ポリマーの熱可塑性前駆体としては例えば不飽和ポリエステル樹脂前駆体やフェノール樹脂前駆体のノボラックとヘキサミン混合物又はその部分硬化加熱樹脂などがある。熱硬化性樹脂の場合は成形後、キュアし、優れた耐熱性、寸法安定性が得られる。
【0033】
実施形態で言う「相溶性のない」は(A)と(B)が機械的にシェアを掛けて溶融混合させようとしても相分離し、界面を形成することを意味する。従って、(A)と(B)が同じPEであっても相分離すればHDPEとLDPEの組み合わせでも良く、(A)と(B)が同じPPであっても一方が変性されて相分離する組み合わせでも良い。
【0034】
(A)と(B)との組み合わせとして、相溶性のないポリオレフィン同士、又はポリオレフィンなどの付加重合物とポリエステルなどの縮重合物などとは(A)と(B)として組み合わせても良い。しかし、組成の異なるポリエステル2種類又はポリエステルとポリアミドを(A)と(B)として使用する際には溶融状態でこれらが相互に著しく反応し、3次元連続平行界面構造を壊し、ベースポリマー本来の性質を損なわないことを予め確認しておくと良い。3次元連続平行界面構造は溶融状態でのベースポリマー(A)と、ベースポリマー(A)に相溶性のないポリマー(B)の容積比率が50:50に近いことが好ましい。容積比率が均等より少し偏っている方がベースポリマーの基本物性が損なわれることが少なく好ましい。また、有機物(C)又はそれらの混合物(D)は容積比率が全体の1/3以下である。
【0035】
実施形態の(A)又は(B)の熱分解点以下で液体又はスラリー状である(C)としては、熱可塑性ポリマー、熱可塑性オリゴマー、オイル、殺虫剤、フェロモン、忌避剤、誘引剤、粘着剤、界面活性剤、離型剤、抗菌剤、防カビ剤、平滑剤、摩擦剤、補強材、導電剤、伝熱剤、接着剤、絶縁材、芳香剤、農薬、硬化剤触媒などがある。
【0036】
離型剤として界面活性剤、オイルなどが使用され、具体的には、バター、菜種油、オリーブ油、大豆油、コーンオイル、ごま油、ひまわり油、棉実油、紅花油などの食用オイル、鉱物オイル及びそのエステル類及びエーテル類、高級脂肪酸塩、ソルビタンエステル類、ソルビトールエステル、及びこれらのEO又は/及びPO付加物、シリコーン樹脂などがある。
【0037】
熱可塑性ポリマー、熱可塑性オリゴマーの具体例としては、例えばポリジフルオロエチレンPVDF、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体ETFE、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体PFAなどの熱可塑性フッ素樹脂、ポリスチレンなどの高絶縁性ポリマー及びオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの変性物及びオリゴマー、ポリ酢酸ビニル鹸化物などの親水性ポリマー及びオリゴマーなどがある。
【0038】
また、界面活性剤にはアニオン、カチオン、両性、ノニオン型界面活性剤などがあり、例えばドデシルフェニルスルホン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレートなどの親水性界面活性剤がある。界面活性剤の作用としては親水性の他に湿潤作用、浸透作用、乳化作用、分散作用、起泡作用、洗浄作用、平滑作用、帯電防止作用、防錆作用、撥水作用、凝集作用などが挙げられる。
【0039】
また、撥水剤及び撥アルコール剤の具体例としてシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素化合物などがあり、導電剤具体例としてポリアニリン水溶液、ポリアニリン分散液、ポリピロール分散液などのイオン伝導性物質などがある。さらには伝熱剤・導電材として融点231℃の錫、及び半田などの低融点合金などがある。
【0040】
また、金属用熱可塑性接着剤主成分具体例としてガラス、セラミック、クラレ(株)製「モビタール」(商標名)などのポリビニルブチラール、及びポリビニルブチラールとエポキシ樹脂混合物、EVA、EVAとエポキシ樹脂混合物などがある。
【0041】
また、ガスバリアー性樹脂主成分具体例としてはクラレ(株)製「エバール」(商標名)ポリビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体、ナイロン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、PVDFなどのハロゲン含有樹脂系、熱可塑性アクリル樹脂などがある。
【0042】
実施形態の1形態である熱可塑性フッ素樹脂シートとガラス、セラミック、金属を接着した積層体は実施形態の組成物である熱可塑性フッ素樹脂を(A)、ポリブチラールを(B)、EVAを(C)とした中間層により接着し製造する。表面層を熱可塑性フッ素樹脂とすることで優れた防汚性を半永久的に付与する。平板製品は積層し、加圧熱成型することにより製造する。また複雑な成形品は前記積層体熱加圧成型品とガラス、セラミック、金属成形品を再度熱加圧成型により複合し、表面防汚性のガラス、セラミック、金属製品を製造する。
【0043】
上記の成型品は、便器、浴槽などの防汚性陶器、流しなどの金属製品に適用できる。
【0044】
また、抗菌剤、防カビ剤の具体例としてはTriclosan、Paraben、ジクロロフルアニドなどの有機系、及びその溶液又は分散剤、及び銀ゼオライト、銅ゼオライト、銀ガラス、銀アパタイトなどの無機系の流動パラフィン分散剤などがある。
【0045】
また、殺虫剤及び忌避剤具体例としてはペルメトリン、フェノトリン、ピレトリン、エンペントリン、メトフルトリンなどのピレスロイド系殺虫剤、カルバリル、プロポクサー、フェノブカーブなどのカーバメイト系殺虫剤、パラチオン、ジクロルボス、アセフェートなどの有機リン系殺虫剤、硫酸ニコチンなどのニコチン系殺虫剤、イミドクロプリド、アセタミプリド、ジノテフランなどのクロロニコチニル系殺虫剤、テルチオンなどのテルペン系殺虫剤及びDEET、ファルネシルアセトンなどの忌避剤がある。
【0046】
また、防錆剤の具体例としてはジシクロへキシルアミンナイトライト(DICHAN)、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト(DIPAN)、シクロヘキシルアミンカーバメイト(CHC)、ベンゾトリアゾール(BTA)、トリルトリアゾール(TTA)、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート(DICHACHC)、融点271℃の亜硝酸ナトリウムなどがある。
【0047】
また、絶縁材の具体例としてはポリジフルオロエチレン、ポリジフルオロクロロエチレン及びこれらの変性物などの熱可塑性フッ素樹脂、ポリスチレン及びそのコポリマーなどがある。中では1015Ωcmと絶縁性が大きく廉価なポリスチレン及びそのコポリマーが好ましい。
【0048】
また、農薬の具体例として抗菌剤、殺菌剤、除草剤などのは例えばジチオカーバメイト系「チウラム」ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド融点155℃が抗菌剤、鳥忌避剤として知られ、いもち病菌を始め白紋羽病菌等に対して強い菌糸生育阻害作用を示すマロン酸エステル系、融点54℃「イソプロチオラン」Isoprothiolane)殺菌剤がある。また、芝やレタス用の除草剤で、イネ科及び広葉の一年生雑草に高い除草効果がある融点155℃のプロピザミドpropyzamideがある。
【0049】
また、エポキシ硬化触媒具体例としてアミン系、ポリオール系、イミダゾール系化合物などがある。中では取扱上イミダゾール系化合物が好ましく、中では2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル―2−フェニルイミダゾールが操業上、融点が120℃未満で、活性化範囲が130℃以上で粉体塗料用触媒として好ましい。
【0050】
本発明はこれら具体例に限定するものではない。
【0051】
実施形態の特徴構造である3次元連続平行界面構造をポリマー中に形成する製造方法としてはシェアの大きい混練機が好ましく、例えば2軸押出機を使用する。液状添加物を液状で配合する場合はサイドインジェクション方式が好ましい。液状添加物が常温固体の場合はホッパーから定量供給する。
【0052】
3次元連続平行界面は剪断力が掛かるほど細かく形成されるため、スクリューに適合した温度条件で、スクリュー回転数を大きくすることが好ましい。好ましくはスクリュー回転数800rpm以上であり、より好ましくは1,000rpm以上である。
【0053】
3次元連続平行界面の厚さは数nmまで小さくすることが可能であり、3次元連続平行界面に挟まれて液状添加物層が形成される。従って、押出機から押し出され、急冷固化されペレタイズされた3次元連続平行界面構造は表面に形成された液状添加物層の厚さと3次元連続平行界面に挟まれて液状添加物層の厚さがほぼ等しくなる。多量の液状添加物を含有しながら、ペレット表面がドライタッチを保たれるのはこのためである。
【0054】
本実施形態では、(C)がGyroid構造の膜を構成しており、分割された2つの領域のそれぞれを(A)、(B)が占めている構造となる。3次元連続平行界面は、(C)が構成している膜において(B)と(C)との界面α及び(A)と(C)との界面βが形成しているものであり、界面αと界面βとは平行であって3次元的に連続して延びて空間を埋めている。
【0055】
また、3次元連続平行界面構造はベースポリマー(A)とベースポリマー(B)の溶融時容積比率がほぼ等しい状態に発現するため、これにさらにベースポリマー(A)又は(B)を加え稀釈するとバランスが壊れ、3次元連続平行界面構造が壊れる。3次元連続平行界面構造が破壊され、ポリブレンド海嶋状態になると液状添加物はポリマー内部から表面にブリードアウトし、液状添加物による表面特性が発揮される。熱硬化触媒を常温で保持させておき、溶融時に放出させ架橋させ、表面平滑剤を保持させておき、成型時に表面に移行させ平滑効果発揮時期をコントロールすることが可能である。
【0056】
実施形態の組成物は例えば2軸押し出し機などの混練機を使用し、製造する。(C)又は(D)が製造時液状又はスラリー状の際は多連プランジャーポンプなどの液体サイドインジェクション装置を使用し、サイドインジェクションにより定量供給する。ノズルから押し出し後、クエンチバスなどでマトリックスポリマーを固化させ、索状で取り出し、カッターでカットしペレット状に成形する。索状に取り出せない場合は水中カッターを使用して丸ペレットを製造する。前記方法が困難な場合はシート状に押し出し、ローラーカッターでカットし、角ペレットに成形する。
【0057】
実施形態の組成物はマスターバッチとして使用する時もあり、コンパウンドとして使用する時もある。
【0058】
実施形態のフィルム、繊維製品などの押し出し成型品、射出成型品などの成型品は実施形態の組成物マスターバッチ又はコンパウンドを使用し、一般的な製造方法で製造する。例えばジクロルフルアニドは熱分解温度が150℃以下であるが、PPベースのスパンボンド不織布を235℃で製造することができた。一般的に知られている熱分解温度以上の高温で前記製造法を使用して、熱分解を抑制して製造することができた理由は熱分解反応が平衡反応の1種であるためである。即ち一般に知られている熱分解温度は常圧開放系で測定されている。一方、実施形態の成形品スパンボンド内での熱分解反応は高圧閉鎖系であり、平衡反応が著しく阻害される系であることによる。
【0059】
金属錫の融点は231℃と金属としては低融点であり、比較的安定な金属で、伝熱性が優れている。ポリカーボネート20w%・金属錫55w%・PET25w%からなる実施形態の組成物のインジェクション成型品プレートは優れた導電性・伝熱性を示した。
【0060】
実施形態の組成物は前記の通り、(A)及び(B)と反応しない金属錫や亜硝酸ナトリウムのような無機物をも(C)として使用することができることは、実施形態の組成物が物理的に構成されていることを意味している。
【0061】
本実施形態の1形態であるポリプロピレン成型物は熱融解無塩バター上澄み液が成型物表面に0.2から1.0w%、成型物内部に0.1から1.0w%含有され、成型物表面近傍に多く微分散したポリエチレンを0.5から10w%含有するポリプロピレン成型物である。また、その1形態は成型物が離型性フィルムである。この製品状態は3次元連続平行界面構造が破壊された状態である。
【0062】
ポリエチレンとポリプロピレンをほぼ等容積比でホッパーから供給し、熱融解無塩バター上澄み液をサイドインジェクションし、混練押出、急冷することによって製造される実施形態の3次元連続平行界面構造組成物マスターバッチを、ポリエチレンで稀釈し、Tダイ法でアルミ箔上にラミネートすることにより上記離型性フィルムが製造される。
【0063】
また同様にして薄膜射出成形すると離型性カップなどが、液体サイドインジェクション装置を持たない一般的な射出成型機で製造できる。
【0064】
無塩バターを60℃程度に加温すると融解し、静置すると2層に分離する。清澄な上澄み液と白濁した液が下層に分離される。下層は水エマルジョンで、蛋白質を含有する。この蛋白質がバターの焦げやすさの原因である。この上澄み液のみを使用することで、フィルム製造時などの加熱処理により着色することが避けられる。
【0065】
また、本実施形態の1形態であるポリエチレンフィルム成型物は粘着剤層が0.1μm以上の厚さで形成されたラップフィルムである。前記離型性フィルムと同様、この製品状態は3次元連続平行界面構造が破壊された状態である。
【0066】
本実施形態の組成物に発現する3次元連続平行界面構造の断面は、光学顕微鏡又はSEMにより観察し、また、稀釈成型品中に少量分散するベースポリマー切片の位相差顕微鏡により観察した。さらに実施形態の成型品の表面にある蒸散性液上添加物の厚さは蒸散速度などから計算により求めた。
【0067】
さらに詳細については実施例にて説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1(防汚成型品)
(A)としてダイキン(株)製熱可塑性PVDF(フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を34vol%、(B)としてダイキン(株)製PVDF(フッ化ビニリデン)を36vol%、(C)のガラス用接着剤ポリマーとしてクラレ(株)製MOWITAL(商標名)B30Tを30vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度320℃、ダイ温度300℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて索状に押し出し、40℃水浴で急冷後カットし、実施例1の3次元連続平行界面構造組成物コンパウンドペレットを得た。
【0069】
ペレット押し出し方向断面及びそれに直交する断面フッ素成分をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0070】
前記コンパウンドをTダイから320℃で厚さ50μmのダイキン(株)製PVDF(フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体)シートの上に押し出しラミネートし、実施例1の多層シート成型体を製造した。
【0071】
前記多層シートと厚さ3mm、20cm角の表面を正常にしたガラスとを積層し、320℃で加圧熱融着し、実施例1のPVDF・ガラス積層体を製造した。
【0072】
前記PVDF・ガラス積層体のPVDF面はPVDF自体が保有する優れた撥水、撥油性を示し、汚れ成分(カーボンブラック:16.7%、牛脂硬化油20.8%、流動パラフィン:62.5%)の15%ヘキサン希釈液1mlを試料上に滴下し、常温で1時間以上放置してヘキサンを風乾させてスポット状の汚れを付着させ、カケン(日本化繊検査協会)式拭き取り試験機で拭き取り試験をした結果、対象品PPシートと比較し、実施例1の多層シートは残った親水性汚れ及び新油性汚れが少なく、優れた防汚性を示した。また、本製品はPVDF面の厚さが42μmと厚いため長期使用に耐える優れた耐久性を示した。
【0073】
実施例2(エレクトレット加工されたフィルター)
(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR2のLDPEを44vol%、(B)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR3のPPを46vol%、(C)絶縁材料としてPS−Japan(株)製MFR30のPStポリマーを10vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,200回転/分、最高温度230℃((B)のPPポリマー分解温度350℃よりも低い)、ダイ温度190℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて索状に押し出し、40℃水浴で急冷後カットし、実施例2の3次元連続平行界面構造組成物コンパウンドを得た。
【0074】
前記コンパウンドを使用し、紡糸温度380℃で(A)、(B)及び(C)を熱分解させ分子量を下げてメルトブローン不織布を製造し、エレクトレット加工を行い実施例2のメルトブローン不織布を製造した。塵埃捕集効果を向上させるエレクトレット加工をされた布は高湿度条件に曝されると孤立電荷が移動し、エレクトレット加工効果が低下することが知られている。20℃、80RH%、24時間放置後の塵埃捕集率低下は一般的なPPメルトブローン不織布の約20%に比較し、前記メルトブローン不織布の低下率は12%と少なく優れた塵埃捕集効果を維持していた。
【0075】
前記コンパウンドペレット押し出し方向断面及びそれに直交する断面PSt成分金属染色部をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0076】
実施例3(防錆フィルム)
(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR0.9のLDPEを36vol%、(B)としてMFR5の変性HDPEを34vol%、(C)として防錆剤亜硝酸ナトリウム(融点271℃)を30vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,000回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度290℃、ダイ温度270℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて押し出し、ホットカッターでカットし、空冷後、実施例3の3次元連続平行界面構造組成物防錆マスターバッチを得た。マスターバッチ製造時溶融した亜硝酸ナトリウムのノズルからの噴出もなく、ペレットのべたつきもなく、ペレットは極僅かに着色したが操業性に問題はなかった。
【0077】
前記マスターバッチペレットを浴比100:1沸騰水で20分煮沸して亜硝酸ナトリウムを除去した後、押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0078】
前記マスターバッチ3w%を日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR0.9LDPE97w%で希釈し、定法に従い厚さ100ミクロン、幅20cmの実施例3の防錆PEインフレーションフィルムを製造した。このフィルム中には約0.9g/mの亜硝酸ナトリウムが含有されているがほとんど無色で透明であった。
【0079】
JIS Z 1535 5.4 「気化性さび止め紙」に準拠し、フィルムに適合する条件を設定し、前記防錆PEフィルムと市販PEフィルムの防錆び性を比較した。実施例3のフィルムではテストピースに発錆は見られなかったが、対象品市販フィルムのテストピースには発錆が認められた。
【0080】
実施例4(ガスバリアー性フィルム)
(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR0.9のLDPEを46vol%、(B)としてMFR5の変性HDPEを44vol%、(C)としてクラレ(株)製エチレン含有量38%のガスバリアー性樹脂「エバール」(商標名)(融点約170℃)を10vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,000回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度210℃、ダイ温度200℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて押し出し、ホットカッターでカットし、空冷後、実施例4の3次元連続平行界面構造組成物ガスバリアーコンパウンドを得た。エバールを金属染色したコンパウンドペレットの押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0081】
前記コンパウンドを使用し定法により厚さ25μmの実施例4のインフレーションフィルムを製造した。このフィルムの酸素透過率(23℃,0%RH)ml・25μ/m・24hr・atmは0.5であった。100%前記「エバール」の酸素透過率が0.4であるから、僅かに絶対値は劣るものの、ほぼ同等の優れた酸素ガスバリアー性を示した。100%「エバール」フィルムはPEに比べると高価でありフィルム製造温度条件範囲が狭く、長期運転によりゲル化し易い欠点がある。一般的にはコスト低減も兼ねて、エバールをPEなどとともに多層フィルムにして使用される。一方、実施例4のコンパウンドは一般的なPEと同様に製造条件で取り扱うことができ、高価な「エバール」の使用量も少ないため経済的であった。
【0082】
実施例5(セパレーター)
(A)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR30の変性PPを44vol%、(B)としてMFR30のPPを46vol%、以上2つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、(C)として電解液溶媒であるプロピレンカーボネートを10vol%をサイドインジェクションにより定量供給し、スクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度230℃、ダイ温度190℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて索状に押し出し、40℃水浴で急冷後カットし、実施例5の3次元連続平行界面構造組成物PPコンパウンドのペレットを得た。ペレットの押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0083】
前記コンパウンドを使用し、定法により紡糸温度230℃で目付20g/mの実施例5のスパンボンドを製造した。このスパンボンドは繊維表面に溶媒が露出しているため、このスパンボンドをセパレーターとして使用したキャパシターは電解液をキャパシターに組み込む時、気泡が混入することなく、容易に組み込むことができ、気泡の混入によるキャパシター容量バラツキを低減することができた。
【0084】
実施例6(導電性ポリマー)
(A)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR30の変性PPを44vol%、(B)としてMFR30のPPを46vol%、(C)として山西金属(株)製Sn−Cu系(401)粉末鉛フリーハンダを10vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、電解液溶媒であるプロピレンカーボネート10vol%をサイドイスクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度230℃、ダイ温度190℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて索状に押し出し、40℃水浴で急冷し、直径1mmの実施例6の導電性PPストランドを製造した。このストランドの電気抵抗は10−5Ω・cm台であり、金属並みの導電性を示した。
【0085】
このストランドをカットし、実施例6の3次元連続平行界面構造組成物導電性PPコンパウンドペレットを製造した。ペレット押し出し方向断面及びそれに直交する断面錫成分をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0086】
このペレットを使用し定法により射出成型した厚さ3mmの角プレートの電気抵抗は10−5Ω・cm台であり、金属並みの導電性を示した。
【0087】
実施例7(粉体塗料用粉体触媒)
(A)として住友ベークライト(株)製ノボラック・フェノール系硬化剤タイプPR51530を42vol%、(B)としてPR54869を38vol%、(C)として四国化成(株)製融点約50℃のイミダゾール系硬化触媒C11ZCNを20vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度110℃、ダイ温度100℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて押し出し、ホットカッターでカット後、空冷し実施例7の粉体塗料用架橋触媒マスターバッチのペレットを得た。イミダゾールを金属染色したペレットの押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。次にハンマーミルでマスターバッチを粉砕し、径10〜40μmに分級させて、実施例7の粉体触媒を製造した。
【0088】
本実施例の粉体触媒2w%、住友ベークライト(株)製ノボラック・フェノール系硬化剤タイプPRHF3粉体38w%、酸化チタン40w%含有ジャパンエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂1003F粉体60w%を静電塗装法により厚さ0.8mmのリン酸亜鉛処理冷延鋼板に均一に塗布し、140℃×20分で焼き付け、乾燥膜厚60μm塗膜を形成した。
【0089】
比較例として本実施例の粉体触媒の代わりに硬化触媒C11ZCN粉体を0.4w%とし、その他の塗料成分として住友ベークライト(株)製ノボラック・フェノール系硬化剤タイプPRHF3粉体39w%、酸化チタン40w%含有ジャパンエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂1003F粉体60.6w%をドライブレンドし、静電塗装法により厚さ0.8mmのリン酸亜鉛処理冷延鋼板に均一に塗布し、140℃×20分で焼き付け、乾燥膜厚60μm塗膜を形成した。比較例の塗膜500g荷重、50cm高さ落下耐衝撃強度は、目視により本実施例の粉体塗料粉体触媒を用いた上記塗膜の落下耐衝撃強度と比較したところ、明らかに劣った。
【0090】
実施例8(易離型フィルム)
(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR5のLDPEを33vol%、(B)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR5のPPを37vol%、以上2つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、別途60℃で熱融解させて分液させた無塩バター上澄み液を(C)としてプランジャーポンプによって押し出し機の途中から30vol%の割合で定量的にサイドインジェクションし、スクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度200℃、ダイ温度190℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて索状に押し出し、40℃水浴で急冷後カットし、無色半透明の実施例8の3次元連続平行界面構造組成物マスターバッチであるペレットを得た。マスターバッチ製造時には、ノズルからのバターの噴出もなく、ペレットのべたつきもなく、操業性にも問題はなかった。
【0091】
ペレットにべたつきがないことは、ベースポリマーと相溶性のない液状粘着性のあるバターがペレット表面に0.1μm程度にしか存在しないことを意味している。これはペレット内部のバター層の厚さも0.1μm程度か、同程度であることを意味し、微細構造がペレット内部に準安定的に形成されていることを意味している。ペレット押し出し方向断面及びそれに直交する断面をシクロヘキサンで洗浄し、SEM観察した結果、多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0092】
前記マスターバッチを5vol%と日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR5のLDPE95vol%を定量供給し、Tダイから200℃で厚さ15μmのアルミ箔ポリプロピレンラミネートフィルム上に、10μm厚さで押し出しラミネートし、実施例8の多層フィルムを製造した。
【0093】
この多層フィルムのポリエチレン層の上に厚さ0.13μmのバター層が形成されていることを液体窒素で冷却後破断させた断面SEM観察で確認した。
【0094】
この多層フィルムのポリエチレン層を内面とした幅18cm、深さ20cmの袋をヒートシールし、作成した。この袋の中に市販レトルトカレー100gを60℃に加温して流し入れ、直ぐに逆さまにしてカレーを袋から自然流出させた後、残ったカレーの重さを計量した。残ったカレーの量は1.8gであった。
【0095】
比較のため前記マスターバッチを入れないブランクの多層フイルムで作成した袋に残ったカレーの量は8.1gであり、本実施例の多層フィルムが優れた離型性を示した。
【0096】
SEM観察結果この多層フィルムの断面に連続平行界面は存在しなかったが、この事実はフィルム内部でマスターバッチ時に形成されていた3次元連続平行界面構造が壊され、通常見受けられる不連続なポリブレンドに変化したことを示している。
【0097】
比較例
実施例8と同様にしてプライムポリプロ(商標名)MFR50のPPを70vol%に60℃で熱融解させ分液した無塩バター上澄み液を液状添加物として、プランジャーポンプで押し出し機の途中から30vol%の割合で定量的にサイドインジェクションしたところ、バターがPPと相分離し、ノズルから噴出し、索状に押し出すことができなかった。
【0098】
実施例9(親水性不織布)
実施例8と同様にして、(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR5のLDPEを34vol%と、(B)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR5のPPを36vol%と、以上2つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、溶融させた界面活性剤グリセリンモノステアレートを液状添加物(C)としてプランジャーポンプで押し出し機の途中から30vol%の割合で定量的にサイドインジェクションし、スクリュー回転速度1,200回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度200℃、ダイ温度190℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて押し出し、ホットカッターでカットし、空冷後、実施例9の3次元連続平行界面構造組成物マスターバッチであるペレットを得た。マスターバッチ製造時には、溶融したグリセリンモノステアレートのノズルからの噴出もなく、ペレットのべたつきもなく、操業性にも問題はなかった。
【0099】
前記マスターバッチペレットを浴比100:1沸騰水で20分煮沸してグリセリンモノステアレートを除去した後、押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0100】
前記マスターバッチ6重量部をプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR15のPP94重量部で希釈し、定法に従い溶融紡糸により目付30g/mの実施例9のスパンボンドを製造した。このスパンボンドにスポイトで1mlの蒸留水を滴下したところ、瞬時に吸水し、良好な親水性を示した。このスパンボンドの繊維径は約20μmであった。PP繊維中に含まれるグリセリンモノステアレートは高々1重量%であり、繊維表面に存在すると考えられる残り2重量%のグリセリンモノステアレートが形成する液状添加物の厚さは約0.1μmと算出される。
【0101】
実施例10(防錆フィルム)
実施例8と同様にして、(A)として日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR0.9のLDPEを36vol%、(B)としてプライムポリマー(株)製プライムポリプロ(商標名)MFR5のPPを34vol%、液状添加物(C)として防錆剤DICHAN(ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩)を30vol%、以上3つを高速回転2軸混練押し出し機のホッパーから定量供給し、スクリュー回転速度1,000回転/分、上記の(A)及び(B)の分解温度以下である最高温度160℃、ダイ温度150℃で、任意の2つが相分離する(A)、(B)及び(C)を溶融混練させて押し出し、ホットカッターでカットし、空冷後、実施例10の3次元連続平行界面構造組成物防錆マスターバッチであるペレットを得た。マスターバッチ製造時には、ノズルからの溶融したDICHANの噴出もなく、ペレットのべたつきもなく、ペレットは淡茶色に着色したが操業性に問題はなかった。
【0102】
前記マスターバッチペレットを浴比100:1沸騰水で20分煮沸してDICHANを除去した後、押し出し方向断面及びそれに直交する断面をSEM観察した結果、平行多層構造が形成されていることから、3次元連続平行界面構造が形成されていることを確認した。
【0103】
前記マスターバッチ6重量部を日本ポリエチレン(株)製ノバテック(商標名)MFR0.9LDPE94重量部で希釈し、定法に従い厚さ100ミクロン、幅20cmの実施例10の防錆インフレーションフィルムを製造した。このフィルム中には約1.8g/mのDAICHANが含有されているがほとんど無色で僅かに半透明であった。DAICHANの防錆び能力は5mg/L以上空気中に含有されて発揮する。このフィルムで製造した20cm幅、長さ30cmの実施例10の円筒形防錆袋の最大含有空気量は約3Lで、使用フィルム重量は8g/袋であり、含有されるDICHANは144mg/袋である。従って、この袋に含有されたDICHANの約10w%が気化すると十分な防錆性が発揮される濃度になり、十分な防錆耐久性があることを示した。
【0104】
上述の実施形態及び実施例は本発明の例示であり、本発明はこれらの例に限定されない。ベースポリマーである(A)、(B)は複数の熱可塑性ポリマーを混合したポリマーブレンドであってもよく、例えば実施例2の(A)として分子量の異なる2種類のLDPEを混合したものを、(B)として分子量の異なる2種類のPPを混合したものを用いてもよい。この例では同種のポリマーを混合させたが異なる種類のポリマーを混合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のポリマー組成物は、マトリックポリマーと相溶性のない物質を多量に安定的に含有しているので、界面活性作用、離型作用、防錆作用など様々な作用を有する成型品の製造等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなる第1のベースポリマー(A)、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなり前記第1のベースポリマー(A)に相溶性のない第2のベースポリマー(B)、前記第1のベースポリマー(A)及び前記第2のベースポリマー(B)のいずれにも相溶性がないとともに前記第1のベースポリマー(A)の熱分解点と前記第2のベースポリマー(B)の熱分解点のうち低い方の熱分解点において液体又はスラリー状態である少なくとも1種類の物質を含む添加物(C)からなり、(A)、(B)および(C)はそれぞれ相分離しており、接している2相の界面がGyroid構造の3次元連続平行界面を形成している、ポリマー組成物と、
前記ポリマー組成物とは異なるポリマーと
を用いて成型品を製造する方法であって、
溶融混練工程と、成型工程とを備えており、
前記溶融混練工程又は成型工程において前記3次元連続平行界面が破壊される、成型品の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー組成物とは異なる前記ポリマーは、前記(A)、(B)、および該(A)又は(B)と相溶性のあるポリマーのうちの一つである、請求項1に記載されている成型品の製造方法。
【請求項3】
前記成型品は表面に0.001μm以上2μm以下の厚みの前記(C)からなる膜を備えている、請求項2に記載されている成型品の製造方法。
【請求項4】
前記成型工程では、押し出し成型、又は射出成型が行われる、請求項1から3のいずれか一つに記載されている成型品の製造方法。
【請求項5】
前記(C)は食用オイル、粘着剤および防錆剤のうちのいずれか一つであり、前記成型品はフィルム形状である、請求項4に記載されている成型品の製造方法。
【請求項6】
前記(C)は界面活性剤であり、前記成型品はフィルム形状あるいは繊維形状である、請求項4に記載されている成型品の製造方法。
【請求項7】
前記(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが、1015Ωcm以上の電気抵抗を有する物質である、請求項1から3のいずれか一つに記載されている成型品の製造方法。
【請求項8】
前記成型品は、メルトブローン不織布、又はメルトブローン不織布との積層物からなるフィルターである、請求項7に記載されている成型品の製造方法。
【請求項9】
前記(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが、フッ素樹脂、フッ素樹脂変性物、及びフッ素樹脂とフッ素樹脂変性物との少なくとも一方を含むポリマーブレンド、のうちの一つであり、前記成型品はフィルムまたは繊維である、請求項1に記載されている成型品の製造方法。
【請求項10】
前記(C)は、熱可塑性高導電組成物からなる導電剤である、請求項1に記載されている成型品の製造方法。
【請求項11】
前記(C)は金属又は無機化合物である、請求項1に記載されている成型品の製造方法。
【請求項12】
前記金属は錫又は錫合金である、請求項11に記載されている成型品の製造方法。
【請求項13】
少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなる第1のベースポリマー(A)、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーからなり前記第1のベースポリマー(A)に相溶性のない第2のベースポリマー(B)、前記第1のベースポリマー(A)及び前記第2のベースポリマー(B)のいずれにも相溶性がないとともに前記第1のベースポリマー(A)の熱分解点と前記第2のベースポリマー(B)の熱分解点のうち、低い方の熱分解点において液体又はスラリー状態である少なくとも1種類の物質を含む添加物(C)からなり、(A)、(B)および(C)はそれぞれ相分離しており、接している2相の界面がGyroid構造の3次元連続平行界面を形成していて粉体であるポリマー組成物と、
フッ素樹脂成型品と
を積層した成型品防汚複合体の製造方法であって、
前記(A)、(B)および(C)の中の少なくとも一つが熱可塑性接着剤であり、
積層する工程において、前記3次元連続平行界面が破壊される、成型品防汚複合体の製造方法。
【請求項14】
前記熱可塑性接着剤は、セラミック、金属、木材およびプラスチックの少なくとも1種に対する接着剤である、請求項13に記載されている成型品防汚複合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−228455(P2010−228455A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103759(P2010−103759)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2009−523502(P2009−523502)の分割
【原出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(503188092)有限会社サンサーラコーポレーション (14)
【出願人】(591045105)クラレリビング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】