説明

成型用防汚性ハードコートフィルム

【課題】本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、防汚性、耐傷性を充分に有し、さらに成型性に優れる、成型用に適した成成型用防汚性ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ハードコート層を積層してなり、
120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が75〜250%であり、かつ、フィルム長手方向および幅方向の100%伸張時応力(F100値)が、7〜65MPaであり、ハードコート層が活性エネルギー線による架橋硬化後のオレイン酸による接触角が25°以下であり、さらに、架橋硬化後の鉛筆硬度がH以上である、成型用防汚性ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルフィルムに関し耐傷性、耐指紋付着性、高硬度、耐摩耗性、防汚性を示し、成型応力が低いことから成型用に好適に使用することができる、成型用防汚性ハードコ−トフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車部材、電子機器、建材分野などの加飾用途において、成型性に優れ、安価であること、軽量であることから、各種合成樹脂フィルム、各種合成樹脂シートが使用されている。しかし、表面硬度が低いため傷つきやすく、かつ、透明性の低下、指紋付着による非防汚性などの問題があった。近年、ポリエステルフィルムにハードコート層を塗布した成型用フィルムが普及している(特許文献1参照)。しかしながら、ハードコート樹脂は、成型時にひび割れなどが発生し、かつ、防汚性の機能がなく成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用できるものではなかった。
【0003】
また、防汚機能を有したハードコートフィルムの提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、該フィルムは基材フィルムに、防汚フィルム、親油性フィルム、粘着層が積層されており、製造工程が煩雑であり、製造コストが高くなり、かつ、タッチパネル用途のため成型性に劣り、成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−93902号公報
【特許文献2】特開2005−149102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、フィルム表面に傷が付きにくく、優れた耐傷性を示し、かつ、指紋が目立ちにくく、さらに成型性に優れる、成型用途に適した成型用防汚性ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ハードコート層を積層してなり、
120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が75〜250%であり、
かつ、フィルム長手方向および幅方向の100%伸張時応力(F100値)が7〜65MPaであり、
活性エネルギー線による架橋硬化後のハードコート層表面におけるオレイン酸による接触角が25°以下であり、
さらに、架橋硬化後の鉛筆硬度がH以上である成型用防汚性ハードコートフィルム。
(2)前記ポリエステルフィルムの融点が230〜270℃である(1)に記載の成型用防汚性ハードコートフィルム。
(3)自動車部材、電子機器または建材用途であって、かつ、成型用途に用いられる(1)または(2)に記載の成型用防汚性ハードコートフィルム。
(4) (1)〜(3)の何れかに記載の成型用防汚性ハードコートフィルムを成型してなる成型部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、成型用フィルムとして使用することで、優れた耐傷性、防汚性の成型部材を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、成型部材の成型加工時に要求される成型性の点から、120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の100%伸長時応力(F100値)が7〜65MPaであることが必要である。
【0009】
成型用防汚性ハードコートフィルムの加工工程においては、赤外線ヒーターなどによる予熱工程を経た後に真空成型、圧空成型、プラグアシスト成型などの熱成型される工程を有する。
【0010】
成型用防汚性ハードコートフィルムは、上記のような成型方法において、フィルム表面温度として120℃程度で成型されることが多い。このため、成型用防汚性ハードコートフィルムとしても120℃での成型応力を低くすることで、均一性成型が可能となり、成型後も優れた外観を保持することができる。
【0011】
120℃における100%伸長時応力(F100値)が7MPa未満であると、成型加工での予熱工程でフィルム移送のための張力に耐えることができず、フィルムが変形、場合によっては破断してしまう場合があり、成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用できない場合がある。逆に65MPaを越えると、熱成型時に変形が不十分であり、成型用防汚性ハードコートフィルムとしての使用に耐えないものとなってしまう。取扱い性、成型追従性の点で、120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の100%伸長時応力(F100値)は7〜60MPaであれば好ましく、7〜55MPaであれば最も好ましい。
【0012】
また、成型用防汚性ハードコートフィルムは、複雑な形状、さらに高成型倍率への成型が可能となるため、120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の伸度が75〜250%であることが必要である。
【0013】
伸度が75%未満であると、高成型倍率の成型部材を成型する場合に、フィルムが破断してしまう場合があり、成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用できない場合がある。また、250%を超えるフィルムの設計は、経済的ではなく、また耐熱性に劣る場合もあるため好ましくない。成型性、耐熱性、経済性の点で、フィルム長手方向および幅方向の伸度は85〜225%であれば好ましく、90〜200%であれば最も好ましい。
【0014】
ここで本発明における120℃におけるフィルムの100%伸長時応力(F100値)、および伸度について説明する。試験長50mmの矩形型に切り出したフィルムサンプルを120℃に設定した恒温層中で90秒間の予熱後、300mm/分のひずみ速度で引張試験を行った際の100%伸長時における応力の値を100%伸長時応力(F100値)、フィルムが破断したときのフィルムの伸び率を伸度とした。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、120℃におけるフィルムの100%伸長時応力、伸度を上記の範囲とする方法としては、積層フィルムの製造時、フィルムの長手方向および幅方向に各々90〜130℃の温度において2.5〜3.5倍する条件であり、なおかつ、面倍率(長手方向延伸倍率×幅方向延伸倍率)が7〜11倍であることが好ましい。延伸温度は、使用する原料により適宜変更できるが、延伸温度は高温にするほど、配向が抑制されるため、好ましい。さらに、延伸前の熱処理温度も、延伸温度と同等またはそれ以上に設定すると、より配向が抑制されるため好ましい。また、延伸後の熱固定工程において、熱処理温度を高温にすることで延伸による配向を緩和する点で好ましいことである。好ましい温度範囲は、200〜250℃、さらに好ましくは210〜245℃、最も好ましくは220〜240℃である。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムは、成型性、取り扱い性の観点から、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)を主たる構成成分であることが好ましい。ここで、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)とは、100モル%ポリエチレンテレフタレートを構成成分とする樹脂、または、ポリエチレンテレフタレートに30モル%未満、好ましくは20モル%未満の共重合成分を共重合したポリエチレンテレフタレート(ただし、副生成するジエチレングリコールは共重合成分としては除く)を構成成分とする樹脂である。ポリエチレンテレフタレートへの共重合成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物などが挙げられるが、成形性、取扱い性の点で、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく使用される。また、好ましいジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどを挙げることができるが、成形性、取扱い性の点で、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく使用される。また、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)は、共重合成分を含まない100モル%ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂(a1)と、共重合成分を20モル%未満含むポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a2)のように、2種類以上のポリエチレンテレフタレート系の樹脂から構成されていてもよい。さらに、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(a1)も共重合成分を30モル未満含んでいてもよく、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)は、3種類以上のポリエチレンテレフタレート系の樹脂をブレンドしてもよい。
【0017】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、取り扱い性、成型性、成型後の外観の観点から、構成するグリコール残基成分は、10〜90モル%がエチレングリコール残基、10〜90モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基および/または、0〜10モル%がその他のグリコール残基成分であることが好ましい。また、その他のグリコール残基成分は複数のグリコール残基成分であっても良く、ポリエチレンテレフタレートの製造段階において副生成するジエチレングリコール残基もその他のグリコール残基成分に含まれる。このようなグリコール残基成分からなるためには、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂(B)とをフィルム全体を基準として、樹脂(A)が10〜90質量%、および樹脂(B)が90〜10質量%で混合されてなるポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであることが好ましい。樹脂(A)が90質量%を越えると、樹脂(B)と混合することで発現する成形性向上効果が認められず、逆に樹脂(B)が90質量%を越えると耐熱性が劣り、製膜性に問題が発生する。樹脂(A)と樹脂(B)の混合比率としては、フィルム全体を基準として、樹脂(A)が40〜90質量%および樹脂(B)が60〜10質量%であれば製膜安定性、耐熱性、成形性の点でより好ましく、樹脂(A)が60〜90質量%および樹脂(B)が40〜10質量%であれば特に好ましい。
【0018】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは耐熱性、寸法安定性などの観点から融点が230〜270℃であることが好ましい。融点が230℃未満では耐熱性に劣り、熱成形などを行う際に熱負けによるフィルム表面の粗れが、発生してしまい、外観が低下してしまう場合がある。また、逆に融点が270℃を越えると、融点が高くなりすぎるために、熱成型性に劣る場合がある。耐熱性、成型性の双方の観点からは、融点が230〜265℃であれば好ましく、230〜255℃であればより好ましい。ここで、ポリエステルフィルムの融点としては示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク温度である。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、フィルムとした場合には複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合、最も高温に現われる吸熱ピーク温度を本発明のポリエステルフィルムの融点とする。
【0019】
ポリエステルフィルムの融点を掛かる温度範囲とする方法としては、フィルム製膜時に使用するポリエステル樹脂段階において、融点を230〜270℃の範囲としておくことが好ましく、また、異なる組成のポリエステル樹脂を用いる場合でも、融点が210℃以上であるポリエステル樹脂を使用し、また、融点が低いポリエステル樹脂をブレンドして使用する場合においても、溶融混練時の樹脂間でのエステル交換反応による融点降下を抑制するために、予め樹脂中に残存している触媒を失活させたり、触媒能を低減させるためにリン化合物を添加する。また、残存触媒量の低いポリエステル樹脂を準備するなどをすることで、融点を230〜270℃の範囲にすることができる。
【0020】
本発明で使用するポリエステル樹脂については、市販されているポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂およびそれらの共重合体を購入し、用いることができるが、たとえば、ポリエチレンテレフタレート樹脂の場合、以下のように重合することができる。
【0021】
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、所望の極限粘度、たとえば極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。
【0022】
これらの樹脂を用いて、本発明の積層フィルムを製造する際の好ましい方法について、具体的に記述する。
【0023】
まず、使用するポリエチレンテレフタレート系の樹脂(A)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂(B)所定の割合で計量し、混合する前もしくは混合した後に窒素雰囲気もしくは真空雰囲気で乾燥を行う。乾燥は乾燥後の樹脂中の水分率が50ppm以下とすることが好ましい。そして、混合したポリエステル樹脂を単軸もしくは二軸押出機に供給し溶融押出する。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0024】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムに用いるポリエステルフィルムは、無延伸のまま使用しても優れた成型性、外観を発現するが、二軸配向フィルムとすることで、成型時の予熱工程や、成型工程での耐熱性、さらには成型部材を作製した後の耐熱性、耐経時変化性が向上するため、好ましいことである。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0025】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、2.5〜3.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.5倍、特に好ましくは3〜3.4倍が採用される。また、延伸速度は1,000〜200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは長手方向の延伸温度を100〜120℃、幅方向の延伸温度を90〜110℃とするのが良い。また、延伸は各方向に対して複数回行っても良い。
【0026】
また、コーティング層を設ける方法については、一軸に延伸した後、インラインでコーティング層を積層する。また、その他、延伸前にコーティングした後、同時二軸延伸を行う方法などを用いることができる。
【0027】
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、200〜245℃の熱処理温度とするのが好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1〜60秒間、より好ましくは1〜30秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、コーティング層を設けることもできる。
【0028】
本発明において、ハードコート剤をコーティングする方法としては特に限定されないが、押出ラミネート法、メルトコーティング法を用いてもよいが、高速で薄膜コートできる点で、例えば、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、キッスコート、ダイコート、あるいはメタリングバーコートすることにより積層する方法が好ましく使用されるが、塗布前にコロナ処理を行うことが好ましい。
【0029】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、基材フィルムとしては、単層フィルムでもA/B2層以上の積層フィルムでもよい。A/B/Cの3層構成とする場合は、経済性、生産性の観点からは、C層を構成するポリエステルをA層を構成するポリエステルと同じにすることが好ましい。さらに、経済性、生産性を向上させるために、A層とC層の積層厚みは等しくすることが好ましい。
【0030】
A/B2層構成とする場合は、両面ともにハードコート剤をコーティングしていても、A層、B層どちらかの片面のみにコーティングしていてもよいが、A層、B層のどちらか片方のみにハードコート剤をコーティングさせる方が、経済的に好ましい。
【0031】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、ハードコート層を架橋硬化させるには活性エネルギー線による架橋硬化が好ましく、さらに、活性エネルギー線が、紫外線であることが好ましい。また、紫外線の積算照射度は硬化性の観点から、200〜1000mJ/cmであることが好ましく、300〜900mJ/cmであれば、さらに好ましく、400〜800mJ/cmであれば最も好ましい。また、紫外線照射の方法については特に限定されないが、成型用防汚性ハードコートフィルムを成型したのち、オフラインで架橋効果させるのが好ましい。また、成型前に架橋硬化を行うと、成型時にハードコート層の白化、割れなどが発生し、防汚性が損なわれる場合があり、成型用防汚ハードコートフィルムとして使用できない場合がある。
【0032】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムのハードコート層の架橋硬化後の鉛筆硬度がH以上であることが必要である。硬化後の鉛筆硬度がH以下であると、傷が付きやすく優れた耐傷性を示さない場合があり、成型用防汚ハードコートフィルムとして使用できない場合がある。
【0033】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、活性エネルギー線による架橋硬化後のハードコート層表面におけるオレイン酸による接触角が25°以下であることが必要である。接触角が25°以上であると、親油性が劣り指紋、油などが付着してしまう場合がある。好ましくは、23°以下であり、20°以下が最も好ましい。コート層の厚みは特に限定されないが、耐傷性の観点から0.5〜15μmであることが好ましい。コート層の厚みが0.5μm以下であると、優れた耐傷性を示さない場合があり、また、20μm以上であると成型時に、白化や亀裂を発生したり成型性が低下する場合がある。より好ましくは、1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとするのが、成型用防汚性ハードコートフィルムとしての可とう性や耐カール、防汚性、耐傷性、透明性、機械的強度、成型性等の面から最も好ましい。
【0034】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは優れた成型加工性を有し、真空、圧空成型などの熱成型において金型に追従した成型部品を容易に作製することができる。また、優れた耐傷性を有していることから、建材、自動車部材や電子機器や電機製品などの部品の用途として好ましく使用される。使用される成型部材としては特に限定されないが、建材では、例えば、壁紙表皮材、看板、自動車部材では、例えば、バンパー、ドアミラーなどの外装部材、センターパネル、ドアパネルなどの内装部材、電子機器や電機製品では、例えば、携帯電話、パソコン、携帯ゲーム機などに好ましく用いられる。
【0035】
また、本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、成型用に好ましく用いられるが、例えばインサート成型用途に好ましく使用される。インサート成形とは、一般的にフィルムなどプラスチック材料をあらかじめ金型内に設置しておき、そこに樹脂を射出成形して充填する成型方法のことを指す。金型内にフィルムそのものを設置して、樹脂圧で所望の形状にしてもよいが、より複雑な形状を出すためには、金型内に設置するフィルムを真空成型、真空圧空成型、プラグアシスト成型などで、あらかじめ所望の形状にプレ成型しておき、その形状に樹脂を充填する方法が好ましく用いられる。
【0036】
インサート成形用途に用いられる場合は、射出成形する樹脂との密着性を高めるため、樹脂側の表面に易接着層を設置してもよい。射出成形用樹脂としてはポリカーボネート、ABS(Acrylnitrile−butadiene−styrene)、AS(Acrylnitrile−styrene)、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、TPO(Thermo Plastic Olefin elastomer)またこれらの混合樹脂が好ましく用いられるため、これらの樹脂との密着性が高いことが好ましい。易接着層としては特に限定されないが、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系、塩化ポリプロピレン系などが挙げられる。
【0037】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、インサート成形用途に用いられる場合、成型後の成型体の深み性、形状保持性の点で、厚みは50〜300μmであることが好ましく、75〜250μmであればさらに好ましく、100〜200μmであれば最も好ましい。
【0038】
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムは、成型用に好ましく用いられるが、例えば、成型用基材に貼合せて用いることができる。成型用基材と貼合せることで、成型用基材/成型用耐候性積層ポリエステルフィルムから構成される成型用防汚性ハードコートシートとなる。
【0039】
成型用基材としては特に限定されないが、樹脂シート、金属板、紙、木材などが挙げられる。中でも、成型性の点で樹脂シートが好ましく用いられ、高成型性の点で、熱可塑性樹脂シートが好ましく用いられる。
【0040】
ここで、熱可塑性樹脂シートとしては、熱成型が可能な重合体シートであれば特に限定されないが、アクリル系シート、ABS(Acrylnitrile−butadiene−styrene)シート、ポリスチレンシート、AS(Acrylnitrile−styrene)シート、TPO(Thermo Plastic Olefin elastomer)シート、TPU(Thermo Plastic Uretane elastomer)などが好ましく用いられる。該シートの厚みとしては、50μm〜2000μm、より好ましくは100μm〜1800μm、さらに好ましくは250〜1500μmである。
【0041】
以上のような構成の成型用防汚性ハードコートシートの成型方法について、具体的に説明するが、成型方法はこれに限定されるものではない。
【0042】
成型用耐候性シートを150〜400℃の遠赤外線ヒーターを用いて、表面温度が30〜200℃の温度になるように加熱し、金型を突き上げ、真空引きすることによって、所望の形に成型する。成型倍率の大きい成型の場合は、シートにさらに圧空をかけて、成型することで、より深い成型が可能となる。このように成型された成型加飾用シートはトリミングを行い成型部材となる。またこの成型部材は、このまま使用してもよいが、成型品としての強度を付与させるために、金型を押し当てて凹んだ部分にTPO、ポリカーボネート、ABS樹脂などをインジェクションしてもよい。このようにして、成型部材が完成する。
【実施例】
【0043】
(1)融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用いて測定した。フィルム5mgをサンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際の吸熱ピーク温度を融点とした吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
【0044】
(2)ポリエステルの極限粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0045】
(3)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。
【0046】
(4)100%伸長時の応力
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定は予め120℃に設定した恒温層中にフィルムサンプルをセットし、90秒間の予熱の後で引張試験を行った。サンプルが100%伸長したとき(チャック間距離が100mmとなったとき)のフィルムにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除いた値を100%伸長時応力(F100値)とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0047】
(5)鉛筆硬度
フィルムをA4サイズにカットしサンプルとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、メタリングバー(#4)を用いて、ハードコート剤をコーティングし、100℃の熱風乾燥機中で、60秒乾燥させて、コーティング層を積層したフィルムを得た。
さらにUV照射機(アイグラフィックス社製、ECS−401GX)にて照射強度が600mJ/cm2となるように照射し、コーティング層を架橋硬化させた。得られたサンプルをJIS K5600−5−4の方法で評価を行った。
【0048】
(6)伸度
(4)と同様の方法で、フィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行い、フィルムが破断したときの伸度をそれぞれの伸度とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0049】
(7)接触角
フィルムを長手方向または、横方向に長さ40mm×幅15mmの矩形に切り出しサンプルとした。接触角計(協和界面科学(株)社製、CONTACT−ANGLE METER CA−D)とオレイン酸を用いて測定を行った。なお、測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0050】
(8)成型性
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムに、400℃の遠赤外線ヒーターを用いて、表面温度が120℃の温度になるように加熱し、70℃に加熱した金型(底面直径50mm)に沿って真空成形を行った。金型に沿って成形できた状態を成形度合い(絞り比:成形高さ/底面直径)を用いて以下の基準で評価した。
S:絞り比0.5以上で成形できた。
A:絞り比0.5〜0.3で成形できた。
B:絞り比0.3で成形できた。
C:追従性が低く、絞り比0.3の形に成形できなかった。
【0051】
(9)指紋付着性
本発明の成型用防汚性ハードコートフィルムをA4サイズにカットしサンプルとした。フィルム表面にオレイン酸を1滴滴下し、1分間放置後、産業用ワイパーにて拭き取り、滴下前後のΔヘイズから以下のような基準で評価を行った。
S:Δヘイズが0.5%未満であった。
A:Δヘイズが0.5〜1%未満であった。
B:Δヘイズが1%〜3%未満であった。
C:Δヘイズが3%以上であった。
【0052】
以下に本発明の成型用耐候性積層ポリエステルフィルム等の製造に関する一例を記載する。
【0053】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0054】
(PET)
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、固有粘度0.65,副生したジエチレングリコールが2モル%共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0055】
(粒子マスター)※表中では粒子Mと表記
上記ポリエチレンテレフタレートを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.4μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターを作製した。
【0056】
(PET−G)
テレフタル酸ジメチルを100質量部、エチレングリコール60質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール82質量部の混合物に、酢酸マンガンを0.04質量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃メタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.045質量部、二酸化ゲルマニウム0.01質量部を添加して、徐々に昇温、減圧し、最終的に275℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.67となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングして1,4−シクロヘキサンジメタノールを33モル%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。該ポリマーを3mm径の立方体に切断し、回転型真空重合装置を用いて、1hPaの減圧下、225℃で極限粘度が0.8になるまで固相重合を行なった。
【0057】
(塗剤1)
PH−0148/A(日本ペイント(株)社製)80重量部)
PH−0148/B(日本ペイント(株)社製)20重量部)。
【0058】
(塗剤2)
UV−7600B(日本合成化学社製)98.8重量部
イルガ・キュア 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.2重量部。
【0059】
(塗剤3)
UV−7630B(日本合成化学社製)98.8重量部
イルガ・キュア 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.2重量部。
【0060】
(塗剤4)
UV−7640B(日本合成化学社製)98.8重量部
イルガ・キュア 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.2重量部。
【0061】
(塗剤5)
PH−0148/A(日本ペイント(株)社製)50重量部)
PH−0148/B(日本ペイント(株)社製)50重量部)。
【0062】
(実施例1)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層を構成するポリエステルとして、PETとPET−Gと粒子マスターとを質量比49.9:50:0.2で混合して使用した。B層を構成するポリエステルとしては、PETとPET−Gとを質量比50:50で混合して使用した。
各々混合したポリエステル樹脂を個別に真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、別々の単軸押出機に供給、280℃で溶融し、別々の経路にてフィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイの上部に設置したフィードブロック内にてA層/B層/A層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。
【0063】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を110℃、延伸温度を105℃で長手方向に3.0倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃、延伸温度120℃で幅方向に3.0倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度240℃で5秒間の熱処理を行い、フィルム厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、メタリングバー(#4)を用いて、塗剤1をコーティングし、100℃の熱風乾燥機中で、60秒乾燥させて、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
該フィルムは上記(4)〜(9)のテストで成型用防汚性ハードコートフィルムとして優れた特性を示していた。
【0065】
(実施例2)
単層フィルムとした。構成するポリエステルとして、PETとPET−Gと粒子マスターとを質量比89.2:10:0.8で混合して使用した。その後は、厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、メタリングバー(#7)を用いて、塗剤1コーティングした。その後は、実施例1と同様にしてコーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
該フィルムは、(4)〜(9)のテストで成型用防汚性ハードコートフィルムとして優れた特性を示していた。
【0066】
(実施例3)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層を構成するポリエステルとして、PETと粒子マスターとを質量比99:1で混合して使用した。B層を構成するポリエステルとしては、PETとPET−Gとを質量比60:40で混合して使用した。
その後は、実施例1と同様にして、フィルム厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにコーティング剤として塗剤1としてメタリングバー(#8)を用いた以外は、実施例1と同様にして、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
該フィルムは、(4)〜(9)のテストで成型用防汚性ハードコートフィルムとして優れた特性を示していた。
【0067】
(実施例4)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層を構成するポリエステルとして、PETと粒子マスターとを質量比99:1で混合して使用した。B層を構成するポリエステルとしては、PETを使用した。
その後は、実施例1と同様にして、フィルム厚み150μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにコーティング剤として塗剤1としてメタリングバー(#10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
該フィルムは、120℃でのF100値がやや高かったため成型性が若干低下したが、(4)〜(9)のテストで成型用防汚性ハードコートフィルムとして優れた特性を示していた。
【0068】
【表1】

【0069】
(実施例5)
A/B/Aの2層積層フィルムとした。A層を構成するポリエステルとして、PETとPET−Gと粒子マスターとを質量比69:30:1で混合して使用した。B層を構成するポリエステルとしては、PETとPET−Gとを質量比70:30で混合して使用した。
その後は、積層厚み比を変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにコーティング剤として塗剤1をコートし、メタリングバー(#5)を使用した以外は実施例1と同様に、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。該フィルムは、190℃でのF100値がやや高かったため成型性が若干低下したが(4)〜(9)のテストで、成型用防汚性性ハードコートフィルムとして優れた特性を示していた。
【0070】
(比較例1)
単層フィルムとした。PETと粒子マスターを質量比97:3で混合して使用した。
その後は、実施例1と同様にして、フィルム厚み25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにメタリングバー(#25)を使用し、コーティング剤として塗剤2をコートした以外は実施例1と同様に、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
該フィルムは、120℃でのF100値が高く、成形性に劣り成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用に耐えないものであった。
【0071】
(比較例2)
単層フィルムとした。構成するポリエステルとして、PET−Gを使用した。
80℃12時間乾燥し、水分を十分に除去した後、別々の単軸押出機に供給、220℃で溶融し、フィルターを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。
この未延伸ポリエステルフィルムにこの二軸配向ポリエステルフィルムにメタリングバー(#9)を使用し、コーティング剤ついては塗剤3をコートした以外は実施例1と同様に、コーティング層を積層した未延伸ポリエステルフィルムを得た。該フィルムは、120℃でのF100値が極度に低く、成形品の耐熱性に劣るため、成型用防汚性ハードコートフィルムとして使用に耐えないものであった。
【0072】
(比較例3)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層を構成するポリエステルとして、PETを使用した。B層を構成するポリエステルとしては、PETとPET−Gとを質量比94:5:1で混合して使用した。
その後は、実施例1と同様にして、フィルム厚み25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにメタリングバー(#4)を使用し、コーティング剤として塗剤4をコートした以外は実施例1と同様に、コーティング層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。該フィルムは、成型時にコート層の割れが発生し、成型用防汚性ハードコートフィルムとして、使用に耐えないものであった。
【0073】
(比較例4)
単層フィルムとした。PETとPET−Gを質量比60:40で混合して使用した。
その後は、実施例1と同様にして、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムにメタリングバー(#25)を使用し、コーティング剤として塗剤5をコートしたが、斑が発生しコーティングできなかった。該フィルムは、成型用防汚性ハードコートフィルムとして、使用に耐えないものであった。
【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明はポリエステルフィルムに関し、優れた防汚性と耐傷性を示し、成型応力が低いことから成型用に好適に使用することができる。特に、建材、自動車部品や携帯電話や電機製品などの部品の加飾用途として好ましく使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ハードコート層を積層してなり、
120℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が75〜250%であり、
かつ、フィルム長手方向および幅方向の100%伸張時応力(F100値)が7〜65MPaであり、
活性エネルギー線による架橋硬化後のハードコート層表面におけるオレイン酸による接触角が25°以下であり、
さらに、架橋硬化後の鉛筆硬度がH以上である成型用防汚性ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムの融点が230〜270℃である請求項1に記載の成型用防汚性ハードコートフィルム。
【請求項3】
自動車部材、電子機器または建材用途であって、かつ、成型用途に用いられる請求項1または2に記載の成型用防汚性ハードコートフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の成型用防汚性ハードコートフィルムを成型してなる成型部材。

【公開番号】特開2011−74105(P2011−74105A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223898(P2009−223898)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】