成型誘電複合線形加速器
【課題】
【解決手段】
無溶媒製造プロセスで導体電極と一体形成される成型誘電複合層を有し、成型誘電複合体が好ましくは熱硬化性樹脂などの有機高分子中にナノ粒子充填材を有している線形加速器。この成型誘電複合体を組み入れることにより、加速器の伝送ラインの臨界絶縁層の誘電定数が高められると同時に、加速器において高い誘電強度が維持される。
【解決手段】
無溶媒製造プロセスで導体電極と一体形成される成型誘電複合層を有し、成型誘電複合体が好ましくは熱硬化性樹脂などの有機高分子中にナノ粒子充填材を有している線形加速器。この成型誘電複合体を組み入れることにより、加速器の伝送ラインの臨界絶縁層の誘電定数が高められると同時に、加速器において高い誘電強度が維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、ローレンスリバーモア国立研究所の業務における米国エネルギ省とカリフォルニア大学との間の規約W−7405−ENG−48にしたがってこの発明の権利を有する。
【0002】
I.従来出願に対する参照
この出願は、参照することにより本願に組み入れられる2005年11月14日に出願された米国仮出願第60/737,028号の利益を主張する。
【0003】
II.発明の分野
本発明は、線形加速器に関し、特に、加速器伝送ラインにおける導体電極間の空間を満たすように成型される誘電複合体であって、成型誘電複合体の誘電定数が、高電圧パルス勾配を粒子加速軸に沿ってもたらすことができるように高い線形加速器に関する。
【背景技術】
【0004】
III.発明の背景
粒子加速器は、帯電した原子粒子、例えば電子、陽子、または、帯電した原子核のエネルギを増大させ、それにより、それらを原子物理学者および粒子物理学者が研究できるようにするために使用される。高エネルギ帯電原子粒子は、ターゲット原子と衝突するように加速され、また、結果として得られる生成物は検出器を用いて観察される。非常に高いエネルギにおいて、荷電粒子は、ターゲット原子の原子核を破壊でき、他の粒子と相互に作用することができる。物質の基本単位の性質および挙動の手がかりとなる変換が引き起こされる。また、粒子加速器は、核融合装置を開発する上でも、また、癌治療などの医学的用途においても重要なツールである。
【0005】
コンパクトな構造中で高電圧パルス勾配を生み出してコンパクトユニットでの加速粒子の生成、加速および制御を可能にする改良された線形加速器アーキテクチャおよび構造の必要性が存在する。特に、電気的な波面の伝搬を可能にする高誘電定数材料をコンパクトブルームラインベースの線形加速器内で組み込んで、高電圧パルス勾配を形成することが非常に望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、横方向加速軸に沿ってパルス状の勾配を与えるべく電気的な波面を伝搬して通すための、第1の端部から第2の端部へと横方向加速軸へ向かって延びる少なくとも1つの伝送ラインを備え、各伝送ラインは、第1および第2の端部を有し且つ第2の端部が加速軸に隣接する第1の導体と、第1の導体に隣接するとともに第1および第2の端部を有し且つ第2の端部が加速軸に隣接する第2の導体と、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たし且つ少なくとも1つの有機高分子と有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを備える成型誘電複合体と、を備えるコンパクト線形加速器を含んでいる。
【0007】
本発明の他の態様は、線形加速器を製造する方法であって、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを含む少なくとも1つの誘電複合スラブを成型し、成型誘電スラブの誘電定数よりも誘電定数が大きい第2の誘電複合材料によって、成型誘電複合スラブをコーティングし、第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブのそれぞれに対して2つの導体を押し付けて、第2の誘電複合材料を前記導体間から押し出すことにより、三重点領域を第2の誘電複合材料で完全に満たすことを備える方法を含んでいる。
【0008】
また、本発明の他の態様は、線形加速器を製造する方法であって、モールドキャビティ内に少なくとも1つの導体を位置決めし、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを含む誘電複合体でモールドキャビティを満たして、当該複合体内に当該導体を少なくとも部分的に浸し、誘電複合体を硬化させて、誘電複合体を当該導体と一体成型することを備える方法を含んでいる。
【0009】
開示内容に組み入れら且つ開示内容の一部を形成する添付図面は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、図面を参照すると、図1−2は、参照符号10で全体的に示される本発明の線形加速器の典型的な伝送ラインを示しており、線形加速器は一般にそのような伝送ラインの少なくとも1つを備えている。伝送ライン構造は、第1の導体13と、第1の導体に隣接する第2の導体14と、導体間の空間を満たし且つ本明細書中で説明される態様で成型される誘電複合材料15とを含んでいる。
【0011】
図示のように、伝送ライン10は、典型的には均一な幅であるが必ずしもそうである必要はない平行板ストリップ状に構成されていること、すなわち、長くて狭い幾何学的形状であることが好ましい。図1および図2に示される特定の伝送ラインは、第1の端部11と第2の端部12との間に延び、且つ長さlと比べて比較的狭い幅wnである細長いビームまたは板状の直線形態を成している。伝送ラインのこのストリップ状の形態は、第1の端部11から第2の端部12へと伝搬電気信号波を案内し、それにより、第2の端部で出力パルスを制御するように作用する。具体的には、波面の形状は、モジュールの幅を適切に設定することにより、例えば幅を次第に細くする(図示せず)ことにより制御されてもよい。ストリップ形状の形態により、コンパクト加速器は、パルスを歪めることなく平坦な出力(電圧)パルスを生成することができ、それにより、粒子ビームが経時変化するエネルギ利得を受けないようにすることができる。本明細書中および請求項中で使用されるように、第1の端部11は、スイッチ(例えば、図3における28)に接続される端部として特徴付けられ、また、第2の端部12は、粒子加速のための加速軸16に隣接する出力パルス領域などの負荷領域に隣接する端部として特徴付けられる。
【0012】
図3および図4は、非対称ブルームライン動作および対称ブルームライン動作のための本発明の成型誘電複合線形加速器の2つの典型的な実施形態を示している。典型的なブルームラインモジュールは、第1、第2および第3の導体を備える2つの伝送ラインを有しており、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体と、第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体とを伴っている。図3および図4に示されていないが、線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電層において伝搬逆極性波面を起こすスイッチ(例えば、図3における28)とを含んでいることは言うまでもない。
【0013】
図3は、特に、全体的に参照符号20で示され且つスイッチ28に接続される単一の非対称ブルームラインモジュール(すなわち、2つの伝送ライン)を備えるコンパクト線形加速器の第1の典型的な実施形態を示している。図3に示されるように、好ましい非対称ブルームラインモジュールの狭いビーム状構造は、薄いストリップの状態に形成され、こちらも細長いが、より厚いストリップとして示される誘電複合材料によって分離される3つの平面導体を含んでいる。具体的には、第1の平面導体ストリップ23および真ん中の第2の平面導体ストリップ25は、それらの間の空間を満たす第1の誘電体材料24によって分離される。また、第2の平面導体ストリップ25および第3の平面導体ストリップ26は、それらの間の空間を満たす第2の誘電体材料27によって分離される。誘電体材料によって成される分離は、図示のように平面導体ストリップ23,25,26を互いに平行となるように位置決めすることが好ましい。
【0014】
平面導体ストリップおよび誘電複合ストリップ23−27に接続されてこれらの端部を覆う随意的な第3の誘電体材料29も示されている。このように第3の誘電体材料29は、誘電スリーブ若しくは当該技術分野において、“誘電壁加速器”すなわち“DWA”として知られるこのタイプの加速器の壁特性である。この第3の誘電体材料29は、波を組み合わせてパルス電圧のみが真空壁の両端間にかけられるようにする役目を果たし、それにより、その壁に対して応力が加えられる時間が減少され、更に高い勾配が可能になる。また、第3の誘電体材料は、波を加速器に対して加える前に波を変形させる、すなわち、電圧を上げ、インピーダンスを変化させるなどする領域として使用することもできる。したがって、第3の誘電体材料29および第2の端部22は、一般に、矢印16により示される負荷領域に隣接して示されている。具体的には、矢印16は、粒子加速の方向を向く粒子加速器の加速軸を表わしている。加速の方向が2つの誘電体ストリップを通る速い伝送ラインおよび遅い伝送ラインの経路に依存していることは言うまでもない。
【0015】
図3において、スイッチ28は、第1の端部において、すなわち、ブルームラインモジュールの第1の端部21において、平面導体ストリップ23,25,26のそれぞれに接続されて示されている。スイッチは、最初に、外側の平面導体ストリップ23,26をグランド電位に接続し且つ真ん中の導体ストリップ25を高電圧源(図示せず)に接続する働きをする。その後、スイッチ28は、第1の端部で短絡させるように動作し、それによってブルームラインモジュールを通って伝搬する電圧波面を起こし、第2の端部で出力パルスを生成する。具体的には、スイッチ28は、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成されているか或いは非対称動作のために構成されているかに応じて、誘電体のうちの少なくとも1つにおいて伝搬逆極性波面を第1の端部から第2の端部へと起こすことができる。
【0016】
図3に示されるように非対称動作のために構成される場合、ブルームラインモジュールは、誘電複合層24,27の誘電定数および厚さ(d1≠d2)が異なる。ブルームラインの非対称動作は、誘電層を通る伝搬波速度を異なるものとする。また、好ましくは、第2の誘電複合ストリップ27は、例えば3:1など、第1の誘電ストリップ24よりもかなり伝搬速度が低い。この場合、伝搬速度はv2およびv1のそれぞれによって規定される。ここで、v2=(μ2ε2)−0.5、v1=(μ1ε1)−0.5であり、透過率μ1および誘電率ε1は第1の誘電体材料の材料定数であり、また、透過率μ2および誘電率ε2は第2の誘電体材料の材料定数である。これは、第1の誘電ストリップの誘電定数すなわちμ2ε2よりも大きい誘電定数すなわちμ1ε1を有する材料を第2の誘電ストリップのために選択することによって得ることができる。図3に示されるように、例えば、第1の誘電ストリップの厚さがd1として示され、第2の誘電ストリップの厚さがd2として示され、d2がd1よりも大きくなるように示されている。d2をd1よりも大きく設定することにより、異なる配置と異なる誘電定数との組み合わせが第2の平面導体ストリップ25の両側に同じ特性インピーダンスZをもたらす。なお、特性インピーダンスは両方の半体において同じであってもよいが、各半体を通る信号の伝搬速度は必ずしも同じではなくてもよい。
【0017】
図4は、全体的に参照符号30で示され且つ第1および第2の成型誘電複合体34,37と交互に積層配置される第1の導体34と第2の導体35と第3の導体36とを有する対称ブルームライン構造の線形加速器を示している。しかしながら、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成される場合には、誘電複合ストリップ34,35の誘電定数が等しく、幅および厚さ(d1=d2)も等しくなる。また、図4に示されるように、磁性材料40も第2の誘電複合ストリップ37に極めて接近して配置され、それにより、そのストリップ内では波面の伝搬が妨げられる。このようにして、スイッチは、第1の誘電複合ストリップ34においてのみ伝搬逆極性波面を起こすようになっている。
【0018】
スイッチ28,38が例えばガス放電閉塞スイッチ、表面フラッシュオーバー閉塞スイッチ、固体スイッチ、光伝導スイッチなどの非対称または対称ブルームラインモジュール動作に適したスイッチであることは言うまでもない。また、スイッチおよび誘電体材料のタイプ/寸法の選択は、例えば20メガボルト/mを越える勾配を含む様々な加速勾配でコンパクト加速器が動作できるように適切に選択できることもまた、言うまでもない。しかしながら、設計の問題として更に低い勾配を達成することもできる。また、この発明の誘電複合材料を使用して形成されるブルームラインモジュールは、単一の加速セル、すなわち、第1のブルームラインモジュールと位置合わせされて積み重ねられる少なくとも1つの更なるブルームラインモジュールを備える加速セルを形成するように積層できることは言うまでもない。積層体の層は、誘電定数および厚さが異なってもよい。
【0019】
一般に、図1の層15、図3の層24,27、および、図4の層34,37のために使用される成型誘電複合材料は、参照することにより本願に組み入れられる米国特許第6,608,760号に概ね記載されるタイプのものであるが、誘電定数を高く、好ましくは高エネルギ粒子加速においては2〜40の誘電定数にするように成型プロセスを使用して製造され、ロール成形によって製造されるものではない。このように、成型誘電複合体は、複合材料マトリクスの状態で一緒に成型される少なくとも1つの有機高分子と少なくとも1つの粒子充填材とを備えている。粒子充填材は、有機高分子よりも誘電定数が大きい。また、好ましくは、少なくとも1つの有機高分子はTgが140℃よりも高く、成型誘電複合体は誘電定数が−55〜125Cの温度範囲にわたって15%未満変化する。そのような誘電複合体を成型することにより、本発明の伝送ラインでは、100kV/cmを越える極めて高い絶縁破壊電圧が得られる。
【0020】
粒子充填材は、幅広い範囲の温度にわたって高い非常に安定した誘電定数を示す、立方晶構造の非耐熱強誘電体粒子であることが好ましい。用語“非耐熱強誘電体粒子”は、本明細書中では、1つ以上の強誘電体材料から形成される粒子を示すために使用される。好ましい強誘電体材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムネオジム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコン酸マグネシウム、二酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムマグネシウム、チタン酸ジルコニウム、および、これらの混合物が挙げられる。
【0021】
また、本発明において有用な強誘電体粒子は、粒径が約20〜約150ナノメートルの範囲であってもよい。粒子は基本的にすべて、ナノ粒子であることが好ましく、このことは、粒子の粒径が100ナノメートル未満、好ましくは約50ナノメートル未満であることを意味する。また、強誘電体粒子の少なくとも50%が50〜100ナノメートル、好ましくは40〜60ナノメートルの範囲のサイズであることも好ましい。本発明において有用な強誘電体粒子は、例えばTPL社によって製造される50ナノメートルのチタン酸バリウムまたはストロンチウムナノ粒子などのように、降下(precipitation)プロセスなどの非耐熱プロセスによって製造されることが好ましい。
【0022】
強誘電体粒子は、少なくとも1つの高分子と組み合わされて誘電層を形成する。強誘電体粒子は、誘電層の好ましくは約10〜約80重量%の範囲の量、あるいは、好ましくは約15〜50体積%の範囲の量、最も好ましくは約20〜40体積%の範囲の量で誘電層中に存在し、誘電層の残りの部分は1つ以上の樹脂系を供えていてもよい。強誘電体粒子は、誘電プリント回路基板層を形成するために一般に使用される1つ以上の樹脂と組み合わされることが好ましい。樹脂は、シリコン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、カプトン材料、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ウレタン樹脂、これらの樹脂の混合物、および、誘電基板材料を形成するのに有用な任意の他の樹脂などの材料を含んでいてもよい。樹脂は、高Tg樹脂であることが好ましい。高Tgとは、使用される樹脂系の硬化Tgが約140℃を上回ることを意味している。樹脂Tgは、160℃を超えることがより好ましく、180℃を超えることが最も好ましい。好ましい樹脂系は、AlliedSignal社により製造される406−N Resinである。
【0023】
本発明で使用される誘電複合材料は米国特許第6,608,760号に開示される材料とほぼ同じであるが、本発明における製造方法は、線形加速器で用いる成型誘電複合体のスラブ層を形成するために成型方法を利用する。
【0024】
図5〜図7には、線形加速器を製造する第1の典型的な方法が示されている。モールドキャビティ51を有する型枠50が設けられ、モールドキャビティ51内には、導体スラブ/ストリップ52などの導体が間隔を空けて配置されている。図6においては、導体を少なくとも部分的に浸すため、未だ硬化されていない流状誘電複合スラリーがモールドキャビティ内に注がれ或いは導入される。その後、誘電複合体は、適切な温度および圧力で硬化される。硬化温度および圧力は例えば約50〜約150℃の範囲をとることができ、また、圧力は約100から約1500psiまで変化可能である。硬化後、図7に示されるように、ほぼモールドキャビティの形状を成す成型モノリシック体54が生成される。ここで、縁部における電界を最小にするために成型誘電複合体が導体電極を取り囲んでいる。
【0025】
図8〜図11は、本発明の線形加速器を製造する第2の典型的な方法を示している。図8においては、型枠60が設けられ、この型枠内に誘電複合スラリー61が注がれ或いは導入され、これにより、図9の誘電複合スラブ61が型枠の形状を成すように成型される。図10において、成型誘電複合体61は、導体電極71,72,73と交互に配置された状態の更なる成型誘電複合体(参照符号62,63,64)と積層されて示されている。しかしながら、層を組み合わせる前に、図10は、誘電スラブの接触面上にコーティングされ、誘電定数が、より高い第2の材料(参照符号65,66,67,68,69)も示している。また、第2の誘電体材料は、本明細書中で説明されるタイプの誘電複合体あるが、更に高い濃度の高誘電定数ナノ粒子を有していることが好ましい。導体71,72,73は、その後、矢印74,75で示されるように、第2の誘電体コーティングされた誘電スラブ61,62,63,64に対して押し付けられ、それにより、第2の誘電体材料が導体と誘電複合スラブとの間から押し出される。導体電極は、導電層、半導電層、絶縁層、または、半絶縁層のうちの1つでコーティングされることが好ましい。図11は、このようにして形成された線形加速器の最終形態80であって、第2の誘電体材料81−83が、導体と誘電複合スラブとの分離部分にある三重点領域(triple point region)を満たしているものを示している。このようにすると、縁部で電界を減少させることができ、性能が向上する。
【0026】
誘電層は、誘電層に対して強度を与えるために随意的な第2の充填材料を含んでいてもよい。第2の充填材料の例としては、石英、シリカグラス、電子グレードガラス、および、セラミックなどの織材料または不織材料、アラミド、液晶高分子、芳香族ポリアミド、または、ポリエステルなどの高分子、セラミックポリマーなどの粒子材料、および、その他、プリント配線基板を製造するために一般に使用される充填材および補強材料が挙げられる。随意的に、約20〜70wt%の範囲の量、好ましくは約35〜約65wt%の範囲の量の第2の充填材料が、誘電層中に存在してもよい。
【0027】
この発明の誘電体材料は随意的に、誘電層の形成で一般に使用される他の材料を含んでいてもよい。例えば、誘電体粒子及び/又は第2の充填材料は、充填材と樹脂材料との間を結合して誘電層を補強するために結合剤を含むことができる。また、この発明において有用な樹脂組成は、シラン結合剤などの結合剤、ジルコン酸塩、チタン酸塩を含んでもよい。更に、この発明において有用な樹脂組成は、粒子凝集度またはコーティングされた外観を制御するために界面活性剤および湿潤剤を含んでいてもよい。この発明の樹脂/強誘電体粒子を使用して形成される誘電層は、0.005インチよりも大きい厚さであることが好ましい。
【0028】
特定の動作シーケンス、材料、温度、パラメータ、および、特定の実施形態を説明し或いは図示してきたが、そのようなものは限定を意図するものではない。改良および変更は当業者にとって明らかであり、また、本発明は添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の線形加速器の単一の伝送ラインの側断面図である。
【図2】図1の伝送ラインの平面図である。
【図3】第1および第2の成型誘電複合層の誘電定数および厚さが異なる、本発明の線形加速器の単一の非対称ブルームラインモジュールの第1の例示的実施形態の側断面図である。
【図4】第1および第2の成型誘電複合体の誘電定数および同じ厚さが等しい、本発明の単一の対称ブルームラインモジュールの第2の例示的実施形態の側断面図である。
【図5】本発明の第1の典型的な加速器製造方法における、導体が内部に位置決めされて成る型枠の平面図である。
【図6】型枠のモールドキャビティ内に誘電複合材料を導入した後における図5に続く平面図である。
【図7】一体成形された誘電複合体および導体を型枠から取り出した後における図6に続く平面図である。
【図8】本発明の第2の典型的な加速器製造方法における、誘電複合材料を内部に有する型枠の側面図である。
【図9】型枠からの成型された誘電複合生成物の、図8に続く側面図である。
【図10】押圧されて多層状になるように、第2の誘電体材料でコーティングされ且つ導体電極と交互に配列された状態で位置決めされる2つの成型誘電複合層の図9に続く側面図である。
【図11】第2の誘電体が三重点の領域を満たすように押し出される最終形態すなわち線形加速器を示す図10に続く側面図である。
【技術分野】
【0001】
米国政府は、ローレンスリバーモア国立研究所の業務における米国エネルギ省とカリフォルニア大学との間の規約W−7405−ENG−48にしたがってこの発明の権利を有する。
【0002】
I.従来出願に対する参照
この出願は、参照することにより本願に組み入れられる2005年11月14日に出願された米国仮出願第60/737,028号の利益を主張する。
【0003】
II.発明の分野
本発明は、線形加速器に関し、特に、加速器伝送ラインにおける導体電極間の空間を満たすように成型される誘電複合体であって、成型誘電複合体の誘電定数が、高電圧パルス勾配を粒子加速軸に沿ってもたらすことができるように高い線形加速器に関する。
【背景技術】
【0004】
III.発明の背景
粒子加速器は、帯電した原子粒子、例えば電子、陽子、または、帯電した原子核のエネルギを増大させ、それにより、それらを原子物理学者および粒子物理学者が研究できるようにするために使用される。高エネルギ帯電原子粒子は、ターゲット原子と衝突するように加速され、また、結果として得られる生成物は検出器を用いて観察される。非常に高いエネルギにおいて、荷電粒子は、ターゲット原子の原子核を破壊でき、他の粒子と相互に作用することができる。物質の基本単位の性質および挙動の手がかりとなる変換が引き起こされる。また、粒子加速器は、核融合装置を開発する上でも、また、癌治療などの医学的用途においても重要なツールである。
【0005】
コンパクトな構造中で高電圧パルス勾配を生み出してコンパクトユニットでの加速粒子の生成、加速および制御を可能にする改良された線形加速器アーキテクチャおよび構造の必要性が存在する。特に、電気的な波面の伝搬を可能にする高誘電定数材料をコンパクトブルームラインベースの線形加速器内で組み込んで、高電圧パルス勾配を形成することが非常に望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、横方向加速軸に沿ってパルス状の勾配を与えるべく電気的な波面を伝搬して通すための、第1の端部から第2の端部へと横方向加速軸へ向かって延びる少なくとも1つの伝送ラインを備え、各伝送ラインは、第1および第2の端部を有し且つ第2の端部が加速軸に隣接する第1の導体と、第1の導体に隣接するとともに第1および第2の端部を有し且つ第2の端部が加速軸に隣接する第2の導体と、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たし且つ少なくとも1つの有機高分子と有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを備える成型誘電複合体と、を備えるコンパクト線形加速器を含んでいる。
【0007】
本発明の他の態様は、線形加速器を製造する方法であって、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを含む少なくとも1つの誘電複合スラブを成型し、成型誘電スラブの誘電定数よりも誘電定数が大きい第2の誘電複合材料によって、成型誘電複合スラブをコーティングし、第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブのそれぞれに対して2つの導体を押し付けて、第2の誘電複合材料を前記導体間から押し出すことにより、三重点領域を第2の誘電複合材料で完全に満たすことを備える方法を含んでいる。
【0008】
また、本発明の他の態様は、線形加速器を製造する方法であって、モールドキャビティ内に少なくとも1つの導体を位置決めし、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも誘電定数が大きい少なくとも1つの粒子充填材とを含む誘電複合体でモールドキャビティを満たして、当該複合体内に当該導体を少なくとも部分的に浸し、誘電複合体を硬化させて、誘電複合体を当該導体と一体成型することを備える方法を含んでいる。
【0009】
開示内容に組み入れら且つ開示内容の一部を形成する添付図面は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、図面を参照すると、図1−2は、参照符号10で全体的に示される本発明の線形加速器の典型的な伝送ラインを示しており、線形加速器は一般にそのような伝送ラインの少なくとも1つを備えている。伝送ライン構造は、第1の導体13と、第1の導体に隣接する第2の導体14と、導体間の空間を満たし且つ本明細書中で説明される態様で成型される誘電複合材料15とを含んでいる。
【0011】
図示のように、伝送ライン10は、典型的には均一な幅であるが必ずしもそうである必要はない平行板ストリップ状に構成されていること、すなわち、長くて狭い幾何学的形状であることが好ましい。図1および図2に示される特定の伝送ラインは、第1の端部11と第2の端部12との間に延び、且つ長さlと比べて比較的狭い幅wnである細長いビームまたは板状の直線形態を成している。伝送ラインのこのストリップ状の形態は、第1の端部11から第2の端部12へと伝搬電気信号波を案内し、それにより、第2の端部で出力パルスを制御するように作用する。具体的には、波面の形状は、モジュールの幅を適切に設定することにより、例えば幅を次第に細くする(図示せず)ことにより制御されてもよい。ストリップ形状の形態により、コンパクト加速器は、パルスを歪めることなく平坦な出力(電圧)パルスを生成することができ、それにより、粒子ビームが経時変化するエネルギ利得を受けないようにすることができる。本明細書中および請求項中で使用されるように、第1の端部11は、スイッチ(例えば、図3における28)に接続される端部として特徴付けられ、また、第2の端部12は、粒子加速のための加速軸16に隣接する出力パルス領域などの負荷領域に隣接する端部として特徴付けられる。
【0012】
図3および図4は、非対称ブルームライン動作および対称ブルームライン動作のための本発明の成型誘電複合線形加速器の2つの典型的な実施形態を示している。典型的なブルームラインモジュールは、第1、第2および第3の導体を備える2つの伝送ラインを有しており、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体と、第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体とを伴っている。図3および図4に示されていないが、線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電層において伝搬逆極性波面を起こすスイッチ(例えば、図3における28)とを含んでいることは言うまでもない。
【0013】
図3は、特に、全体的に参照符号20で示され且つスイッチ28に接続される単一の非対称ブルームラインモジュール(すなわち、2つの伝送ライン)を備えるコンパクト線形加速器の第1の典型的な実施形態を示している。図3に示されるように、好ましい非対称ブルームラインモジュールの狭いビーム状構造は、薄いストリップの状態に形成され、こちらも細長いが、より厚いストリップとして示される誘電複合材料によって分離される3つの平面導体を含んでいる。具体的には、第1の平面導体ストリップ23および真ん中の第2の平面導体ストリップ25は、それらの間の空間を満たす第1の誘電体材料24によって分離される。また、第2の平面導体ストリップ25および第3の平面導体ストリップ26は、それらの間の空間を満たす第2の誘電体材料27によって分離される。誘電体材料によって成される分離は、図示のように平面導体ストリップ23,25,26を互いに平行となるように位置決めすることが好ましい。
【0014】
平面導体ストリップおよび誘電複合ストリップ23−27に接続されてこれらの端部を覆う随意的な第3の誘電体材料29も示されている。このように第3の誘電体材料29は、誘電スリーブ若しくは当該技術分野において、“誘電壁加速器”すなわち“DWA”として知られるこのタイプの加速器の壁特性である。この第3の誘電体材料29は、波を組み合わせてパルス電圧のみが真空壁の両端間にかけられるようにする役目を果たし、それにより、その壁に対して応力が加えられる時間が減少され、更に高い勾配が可能になる。また、第3の誘電体材料は、波を加速器に対して加える前に波を変形させる、すなわち、電圧を上げ、インピーダンスを変化させるなどする領域として使用することもできる。したがって、第3の誘電体材料29および第2の端部22は、一般に、矢印16により示される負荷領域に隣接して示されている。具体的には、矢印16は、粒子加速の方向を向く粒子加速器の加速軸を表わしている。加速の方向が2つの誘電体ストリップを通る速い伝送ラインおよび遅い伝送ラインの経路に依存していることは言うまでもない。
【0015】
図3において、スイッチ28は、第1の端部において、すなわち、ブルームラインモジュールの第1の端部21において、平面導体ストリップ23,25,26のそれぞれに接続されて示されている。スイッチは、最初に、外側の平面導体ストリップ23,26をグランド電位に接続し且つ真ん中の導体ストリップ25を高電圧源(図示せず)に接続する働きをする。その後、スイッチ28は、第1の端部で短絡させるように動作し、それによってブルームラインモジュールを通って伝搬する電圧波面を起こし、第2の端部で出力パルスを生成する。具体的には、スイッチ28は、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成されているか或いは非対称動作のために構成されているかに応じて、誘電体のうちの少なくとも1つにおいて伝搬逆極性波面を第1の端部から第2の端部へと起こすことができる。
【0016】
図3に示されるように非対称動作のために構成される場合、ブルームラインモジュールは、誘電複合層24,27の誘電定数および厚さ(d1≠d2)が異なる。ブルームラインの非対称動作は、誘電層を通る伝搬波速度を異なるものとする。また、好ましくは、第2の誘電複合ストリップ27は、例えば3:1など、第1の誘電ストリップ24よりもかなり伝搬速度が低い。この場合、伝搬速度はv2およびv1のそれぞれによって規定される。ここで、v2=(μ2ε2)−0.5、v1=(μ1ε1)−0.5であり、透過率μ1および誘電率ε1は第1の誘電体材料の材料定数であり、また、透過率μ2および誘電率ε2は第2の誘電体材料の材料定数である。これは、第1の誘電ストリップの誘電定数すなわちμ2ε2よりも大きい誘電定数すなわちμ1ε1を有する材料を第2の誘電ストリップのために選択することによって得ることができる。図3に示されるように、例えば、第1の誘電ストリップの厚さがd1として示され、第2の誘電ストリップの厚さがd2として示され、d2がd1よりも大きくなるように示されている。d2をd1よりも大きく設定することにより、異なる配置と異なる誘電定数との組み合わせが第2の平面導体ストリップ25の両側に同じ特性インピーダンスZをもたらす。なお、特性インピーダンスは両方の半体において同じであってもよいが、各半体を通る信号の伝搬速度は必ずしも同じではなくてもよい。
【0017】
図4は、全体的に参照符号30で示され且つ第1および第2の成型誘電複合体34,37と交互に積層配置される第1の導体34と第2の導体35と第3の導体36とを有する対称ブルームライン構造の線形加速器を示している。しかしながら、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成される場合には、誘電複合ストリップ34,35の誘電定数が等しく、幅および厚さ(d1=d2)も等しくなる。また、図4に示されるように、磁性材料40も第2の誘電複合ストリップ37に極めて接近して配置され、それにより、そのストリップ内では波面の伝搬が妨げられる。このようにして、スイッチは、第1の誘電複合ストリップ34においてのみ伝搬逆極性波面を起こすようになっている。
【0018】
スイッチ28,38が例えばガス放電閉塞スイッチ、表面フラッシュオーバー閉塞スイッチ、固体スイッチ、光伝導スイッチなどの非対称または対称ブルームラインモジュール動作に適したスイッチであることは言うまでもない。また、スイッチおよび誘電体材料のタイプ/寸法の選択は、例えば20メガボルト/mを越える勾配を含む様々な加速勾配でコンパクト加速器が動作できるように適切に選択できることもまた、言うまでもない。しかしながら、設計の問題として更に低い勾配を達成することもできる。また、この発明の誘電複合材料を使用して形成されるブルームラインモジュールは、単一の加速セル、すなわち、第1のブルームラインモジュールと位置合わせされて積み重ねられる少なくとも1つの更なるブルームラインモジュールを備える加速セルを形成するように積層できることは言うまでもない。積層体の層は、誘電定数および厚さが異なってもよい。
【0019】
一般に、図1の層15、図3の層24,27、および、図4の層34,37のために使用される成型誘電複合材料は、参照することにより本願に組み入れられる米国特許第6,608,760号に概ね記載されるタイプのものであるが、誘電定数を高く、好ましくは高エネルギ粒子加速においては2〜40の誘電定数にするように成型プロセスを使用して製造され、ロール成形によって製造されるものではない。このように、成型誘電複合体は、複合材料マトリクスの状態で一緒に成型される少なくとも1つの有機高分子と少なくとも1つの粒子充填材とを備えている。粒子充填材は、有機高分子よりも誘電定数が大きい。また、好ましくは、少なくとも1つの有機高分子はTgが140℃よりも高く、成型誘電複合体は誘電定数が−55〜125Cの温度範囲にわたって15%未満変化する。そのような誘電複合体を成型することにより、本発明の伝送ラインでは、100kV/cmを越える極めて高い絶縁破壊電圧が得られる。
【0020】
粒子充填材は、幅広い範囲の温度にわたって高い非常に安定した誘電定数を示す、立方晶構造の非耐熱強誘電体粒子であることが好ましい。用語“非耐熱強誘電体粒子”は、本明細書中では、1つ以上の強誘電体材料から形成される粒子を示すために使用される。好ましい強誘電体材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムネオジム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコン酸マグネシウム、二酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムマグネシウム、チタン酸ジルコニウム、および、これらの混合物が挙げられる。
【0021】
また、本発明において有用な強誘電体粒子は、粒径が約20〜約150ナノメートルの範囲であってもよい。粒子は基本的にすべて、ナノ粒子であることが好ましく、このことは、粒子の粒径が100ナノメートル未満、好ましくは約50ナノメートル未満であることを意味する。また、強誘電体粒子の少なくとも50%が50〜100ナノメートル、好ましくは40〜60ナノメートルの範囲のサイズであることも好ましい。本発明において有用な強誘電体粒子は、例えばTPL社によって製造される50ナノメートルのチタン酸バリウムまたはストロンチウムナノ粒子などのように、降下(precipitation)プロセスなどの非耐熱プロセスによって製造されることが好ましい。
【0022】
強誘電体粒子は、少なくとも1つの高分子と組み合わされて誘電層を形成する。強誘電体粒子は、誘電層の好ましくは約10〜約80重量%の範囲の量、あるいは、好ましくは約15〜50体積%の範囲の量、最も好ましくは約20〜40体積%の範囲の量で誘電層中に存在し、誘電層の残りの部分は1つ以上の樹脂系を供えていてもよい。強誘電体粒子は、誘電プリント回路基板層を形成するために一般に使用される1つ以上の樹脂と組み合わされることが好ましい。樹脂は、シリコン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、カプトン材料、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ウレタン樹脂、これらの樹脂の混合物、および、誘電基板材料を形成するのに有用な任意の他の樹脂などの材料を含んでいてもよい。樹脂は、高Tg樹脂であることが好ましい。高Tgとは、使用される樹脂系の硬化Tgが約140℃を上回ることを意味している。樹脂Tgは、160℃を超えることがより好ましく、180℃を超えることが最も好ましい。好ましい樹脂系は、AlliedSignal社により製造される406−N Resinである。
【0023】
本発明で使用される誘電複合材料は米国特許第6,608,760号に開示される材料とほぼ同じであるが、本発明における製造方法は、線形加速器で用いる成型誘電複合体のスラブ層を形成するために成型方法を利用する。
【0024】
図5〜図7には、線形加速器を製造する第1の典型的な方法が示されている。モールドキャビティ51を有する型枠50が設けられ、モールドキャビティ51内には、導体スラブ/ストリップ52などの導体が間隔を空けて配置されている。図6においては、導体を少なくとも部分的に浸すため、未だ硬化されていない流状誘電複合スラリーがモールドキャビティ内に注がれ或いは導入される。その後、誘電複合体は、適切な温度および圧力で硬化される。硬化温度および圧力は例えば約50〜約150℃の範囲をとることができ、また、圧力は約100から約1500psiまで変化可能である。硬化後、図7に示されるように、ほぼモールドキャビティの形状を成す成型モノリシック体54が生成される。ここで、縁部における電界を最小にするために成型誘電複合体が導体電極を取り囲んでいる。
【0025】
図8〜図11は、本発明の線形加速器を製造する第2の典型的な方法を示している。図8においては、型枠60が設けられ、この型枠内に誘電複合スラリー61が注がれ或いは導入され、これにより、図9の誘電複合スラブ61が型枠の形状を成すように成型される。図10において、成型誘電複合体61は、導体電極71,72,73と交互に配置された状態の更なる成型誘電複合体(参照符号62,63,64)と積層されて示されている。しかしながら、層を組み合わせる前に、図10は、誘電スラブの接触面上にコーティングされ、誘電定数が、より高い第2の材料(参照符号65,66,67,68,69)も示している。また、第2の誘電体材料は、本明細書中で説明されるタイプの誘電複合体あるが、更に高い濃度の高誘電定数ナノ粒子を有していることが好ましい。導体71,72,73は、その後、矢印74,75で示されるように、第2の誘電体コーティングされた誘電スラブ61,62,63,64に対して押し付けられ、それにより、第2の誘電体材料が導体と誘電複合スラブとの間から押し出される。導体電極は、導電層、半導電層、絶縁層、または、半絶縁層のうちの1つでコーティングされることが好ましい。図11は、このようにして形成された線形加速器の最終形態80であって、第2の誘電体材料81−83が、導体と誘電複合スラブとの分離部分にある三重点領域(triple point region)を満たしているものを示している。このようにすると、縁部で電界を減少させることができ、性能が向上する。
【0026】
誘電層は、誘電層に対して強度を与えるために随意的な第2の充填材料を含んでいてもよい。第2の充填材料の例としては、石英、シリカグラス、電子グレードガラス、および、セラミックなどの織材料または不織材料、アラミド、液晶高分子、芳香族ポリアミド、または、ポリエステルなどの高分子、セラミックポリマーなどの粒子材料、および、その他、プリント配線基板を製造するために一般に使用される充填材および補強材料が挙げられる。随意的に、約20〜70wt%の範囲の量、好ましくは約35〜約65wt%の範囲の量の第2の充填材料が、誘電層中に存在してもよい。
【0027】
この発明の誘電体材料は随意的に、誘電層の形成で一般に使用される他の材料を含んでいてもよい。例えば、誘電体粒子及び/又は第2の充填材料は、充填材と樹脂材料との間を結合して誘電層を補強するために結合剤を含むことができる。また、この発明において有用な樹脂組成は、シラン結合剤などの結合剤、ジルコン酸塩、チタン酸塩を含んでもよい。更に、この発明において有用な樹脂組成は、粒子凝集度またはコーティングされた外観を制御するために界面活性剤および湿潤剤を含んでいてもよい。この発明の樹脂/強誘電体粒子を使用して形成される誘電層は、0.005インチよりも大きい厚さであることが好ましい。
【0028】
特定の動作シーケンス、材料、温度、パラメータ、および、特定の実施形態を説明し或いは図示してきたが、そのようなものは限定を意図するものではない。改良および変更は当業者にとって明らかであり、また、本発明は添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の線形加速器の単一の伝送ラインの側断面図である。
【図2】図1の伝送ラインの平面図である。
【図3】第1および第2の成型誘電複合層の誘電定数および厚さが異なる、本発明の線形加速器の単一の非対称ブルームラインモジュールの第1の例示的実施形態の側断面図である。
【図4】第1および第2の成型誘電複合体の誘電定数および同じ厚さが等しい、本発明の単一の対称ブルームラインモジュールの第2の例示的実施形態の側断面図である。
【図5】本発明の第1の典型的な加速器製造方法における、導体が内部に位置決めされて成る型枠の平面図である。
【図6】型枠のモールドキャビティ内に誘電複合材料を導入した後における図5に続く平面図である。
【図7】一体成形された誘電複合体および導体を型枠から取り出した後における図6に続く平面図である。
【図8】本発明の第2の典型的な加速器製造方法における、誘電複合材料を内部に有する型枠の側面図である。
【図9】型枠からの成型された誘電複合生成物の、図8に続く側面図である。
【図10】押圧されて多層状になるように、第2の誘電体材料でコーティングされ且つ導体電極と交互に配列された状態で位置決めされる2つの成型誘電複合層の図9に続く側面図である。
【図11】第2の誘電体が三重点の領域を満たすように押し出される最終形態すなわち線形加速器を示す図10に続く側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部から第2の端部へと横方向加速軸へ向かって延び、電気的な波面を伝搬して、横方向加速軸に沿ってパルス状の勾配を与えるための少なくとも1つの伝送ラインを備えるコンパクト線形加速器であって、各伝送ラインが、
第1の端部、および、前記加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の導体と、
第1の導体に隣接し、そして、第1の端部、および、前記加速軸に隣接する第2の端部を有する第2の導体と、
前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たし、そして、少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを備える成型誘電複合体と
を備えるところのコンパクト線形加速器。
【請求項2】
前記第1および第2の導体、並びに、前記成型誘電複合体は、第1の端部から第2の端部へと長手方向に延びる平行板ストリップ状に構成されている、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項3】
2つの伝送ラインが横方向加速軸へ向かって延びて、ブルームラインモジュールを形成しており、前記ブルームラインモジュールは、前記第1の導体と、前記第2の導体と、これらの導体間に設けられた誘電複合体と、前記第2の導体に隣接しており、そして、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第3の導体と、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たし、そして、少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを備える第2の誘電複合体とを備える、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項4】
前記第1および第2の誘電複合体が、異なる誘電定数を有して、非対称ブルームラインを形成する、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項5】
前記第1および第2の誘電複合体が、等しい誘電定数を有して意、対称ブルームラインを形成する、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項6】
第1のブルームラインモジュールと位置合わせされて積層される少なくとも1つの更なるブルームラインモジュールを更に備える、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項7】
前記第1および第2の導体は、導電層、半導電層、半絶縁層、絶縁層から成るグループから選択される材料でコーティングされる、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項8】
前記成型誘電複合体は、0.005インチよりも大きい厚さを有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項9】
前記成型誘電複合体は、2〜40の誘電定数を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項10】
前記成型誘電複合体は、前記複合体が−55〜125℃の温度に晒されるときに、15%未満変化する誘電定数を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項11】
前記成型誘電複合体は、100kV/cmよりも大きい絶縁破壊電圧を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの粒子充填材は、実質的に約20〜150ナノメートルの範囲内の粒径を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの粒子充填材は、立方晶構造の非耐熱強誘電体粒子を含む、請求項12に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項14】
前記複合体は、約10〜約80重量%の強誘電体粒子を含む、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項15】
前記強誘電体粒子は、バリウム系セラミック粒子である、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項16】
前記強誘電体粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、および、その混合物から成るグループから選択される、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項17】
線形加速器を製造する方法であって、
少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを含む少なくとも1つの誘電複合スラブを成型し、
成型された前記誘電複合スラブの誘電定数よりも大きい誘電定数を有する第2の誘電複合材料によって、成型された前記誘電複合スラブをコーティングし、
前記第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブのそれぞれに対して2つの導体を押し付けて、第2の誘電複合材料を前記導体間から押し出すことにより、三重点領域(triple point region)を第2の誘電複合材料で完全に満たす、
ことを含む方法。
【請求項18】
少なくとも2つの誘電複合スラブを成型し、これを第2の誘電複合材料でコーティングし、少なくとも3つの導体が、第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブと交互に層状配列された状態で配置されて押圧される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の誘電複合材料が、より高い濃度の高誘電定数ナノ粒子を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
線形加速器を製造する方法であって、
モールドキャビティ内に少なくとも1つの導体を位置決めし、
前記モールドキャビティを、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを含む誘電複合体で満たして、前記誘電複合体内に前記導体を少なくとも部分的に浸し、
前記誘電複合体を硬化させて、前記誘電複合体を前記導体と一体成型する、
ことを含む方法。
【請求項21】
少なくとも2つの導体が、前記成型誘電複合体との交互の層状配列を形成するために、モールドキャビティ内で互いに間隔を空けて配置される、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
第1の端部から第2の端部へと横方向加速軸へ向かって延び、電気的な波面を伝搬して、横方向加速軸に沿ってパルス状の勾配を与えるための少なくとも1つの伝送ラインを備えるコンパクト線形加速器であって、各伝送ラインが、
第1の端部、および、前記加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の導体と、
第1の導体に隣接し、そして、第1の端部、および、前記加速軸に隣接する第2の端部を有する第2の導体と、
前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たし、そして、少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを備える成型誘電複合体と
を備えるところのコンパクト線形加速器。
【請求項2】
前記第1および第2の導体、並びに、前記成型誘電複合体は、第1の端部から第2の端部へと長手方向に延びる平行板ストリップ状に構成されている、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項3】
2つの伝送ラインが横方向加速軸へ向かって延びて、ブルームラインモジュールを形成しており、前記ブルームラインモジュールは、前記第1の導体と、前記第2の導体と、これらの導体間に設けられた誘電複合体と、前記第2の導体に隣接しており、そして、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第3の導体と、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たし、そして、少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを備える第2の誘電複合体とを備える、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項4】
前記第1および第2の誘電複合体が、異なる誘電定数を有して、非対称ブルームラインを形成する、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項5】
前記第1および第2の誘電複合体が、等しい誘電定数を有して意、対称ブルームラインを形成する、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項6】
第1のブルームラインモジュールと位置合わせされて積層される少なくとも1つの更なるブルームラインモジュールを更に備える、請求項3に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項7】
前記第1および第2の導体は、導電層、半導電層、半絶縁層、絶縁層から成るグループから選択される材料でコーティングされる、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項8】
前記成型誘電複合体は、0.005インチよりも大きい厚さを有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項9】
前記成型誘電複合体は、2〜40の誘電定数を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項10】
前記成型誘電複合体は、前記複合体が−55〜125℃の温度に晒されるときに、15%未満変化する誘電定数を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項11】
前記成型誘電複合体は、100kV/cmよりも大きい絶縁破壊電圧を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの粒子充填材は、実質的に約20〜150ナノメートルの範囲内の粒径を有している、請求項1に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの粒子充填材は、立方晶構造の非耐熱強誘電体粒子を含む、請求項12に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項14】
前記複合体は、約10〜約80重量%の強誘電体粒子を含む、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項15】
前記強誘電体粒子は、バリウム系セラミック粒子である、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項16】
前記強誘電体粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、および、その混合物から成るグループから選択される、請求項13に記載のコンパクト線形加速器。
【請求項17】
線形加速器を製造する方法であって、
少なくとも1つの有機高分子と、前記有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを含む少なくとも1つの誘電複合スラブを成型し、
成型された前記誘電複合スラブの誘電定数よりも大きい誘電定数を有する第2の誘電複合材料によって、成型された前記誘電複合スラブをコーティングし、
前記第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブのそれぞれに対して2つの導体を押し付けて、第2の誘電複合材料を前記導体間から押し出すことにより、三重点領域(triple point region)を第2の誘電複合材料で完全に満たす、
ことを含む方法。
【請求項18】
少なくとも2つの誘電複合スラブを成型し、これを第2の誘電複合材料でコーティングし、少なくとも3つの導体が、第2の誘電複合材料でコーティングされた成型誘電複合スラブと交互に層状配列された状態で配置されて押圧される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の誘電複合材料が、より高い濃度の高誘電定数ナノ粒子を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
線形加速器を製造する方法であって、
モールドキャビティ内に少なくとも1つの導体を位置決めし、
前記モールドキャビティを、少なくとも1つの有機高分子と、有機高分子の誘電定数よりも大きい誘電定数を有する少なくとも1つの粒子充填材とを含む誘電複合体で満たして、前記誘電複合体内に前記導体を少なくとも部分的に浸し、
前記誘電複合体を硬化させて、前記誘電複合体を前記導体と一体成型する、
ことを含む方法。
【請求項21】
少なくとも2つの導体が、前記成型誘電複合体との交互の層状配列を形成するために、モールドキャビティ内で互いに間隔を空けて配置される、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−516333(P2009−516333A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540288(P2008−540288)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/044297
【国際公開番号】WO2007/120211
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(308032150)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティー,エルエルシー (1)
【出願人】(308032161)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/044297
【国際公開番号】WO2007/120211
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(308032150)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティー,エルエルシー (1)
【出願人】(308032161)
【Fターム(参考)】
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