説明

成形プレス用耐熱クッション材

【課題】プリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイの製造における成形プレス用耐熱クッション材であって、クッション量を増加した場合であっても、熱の昇温速度が変わることなく、均一に熱を伝えることができる成形プレス機用耐熱クッション材を提供する。
【解決手段】繊維基材の片面又は両面に対し、該基材に用いられる繊維と同種でも異種でもよい1種又は2種以上の繊維からなるバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化した成形プレス用耐熱クッション材2であって、該クッション材が、熱伝導性繊維を含み、該熱伝導性繊維が、目付4000g/mの製品としたときの90〜140℃間における昇温速度が、3.6℃/min以上となる繊維であることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形プレス用耐熱クッション材、特にプリント配線板の材料となる積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイなどの製造に用いる成形プレス用の高クッション量耐熱クッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、電子機器を始め、電気的な接続が必要な分野で広く使用されている。例えば、片面プリント配線板は、基板の片面に導体パターンを形成したものであるが、ラジオ、ステレオ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等に用いられる。両面プリント配線板は、基板の両面に導体パターンを形成したものであるが、FAX、ワープロ、CDプレーヤ等に用いられる。多層プリント配線板は、導体パターンを形成した基板を2枚以上それぞれプリプレグを挟みプレス成形したもので、基板の両面だけでなく内部にも3層以上の導体パターンが存在するプリント配線板である。このような多層プリント配線板は、高密度配線・高密度実装・高信頼性が要求される高速超大型コンピュータなどの中央演算処理装置(CPU)・メモリ装置や衛星通信装置などの高級通信機器・高速計測機器に使用される。
一般に、プリント配線板に用いられるプリント基板は、クラフト紙とフェノール樹脂からなる紙フェノール積層板やガラス繊維の織布とエポキシ樹脂からなるガラスエポキシ積層板等がある。この積層板を製造する際に使用される成形プレス用耐熱クッション材は、熱盤や鏡面板の凹凸、変形、厚み斑等を吸収して成形プリプレグ(Bステージ状態)の全面に均等な圧力と熱を伝達するという重要な機能を担うものである。即ち、熱プレス工程において、プリプレグは、加熱により一旦粘度が下がり液体状態に戻った後、徐々に硬化が進み、成形時、プリプレグシートの全面に熱盤からの一定時間内での一定熱量の供給と熱盤中に配設されている熱媒体が通る配管等による熱斑の是正と圧力が均等に伝達されるように、該プリプレグシート面に接して金属鏡面板が配置され、熱盤と金属鏡面板との間にクッション材が介在している。
【0003】
ガラスエポキシ等の積層板の場合、一般に大量生産のために積層成形されるが、熱盤と熱盤の間に1回のプレスで10数枚の製品ができるように原材料が段取りされ製造される。例えば、積層板の場合、製品は、1m×1m、1m×2m、1m×4m等のサイズで製造され、プレス機1台に設置されている熱盤はプレス機により11枚から31枚程度である。製品を作る熱盤間の数から10段プレス機、30段プレス機等と呼ばれている。この熱盤と熱盤の間1段で製造する製品1枚を1ページと言い、1段の製品を合わせて1ブックと言うこともある。製品1枚には、ガラスクロスにエポキシ樹脂が含浸され半キュアー状態のプリプレグが製品の厚みにより数枚から10数枚積層されている。そして、両面板の時は、この積層したプリプレグの両面に17μm〜70μm厚程度の銅箔が貼られている。片面板の場合は、当然片面のみに銅箔が貼られている。
【0004】
更に、熱盤と熱盤の間にセッティングする両面板の1ブックを例に図1に基づき説明すると、下側から、(1)下側熱盤1+(2)耐熱クッション材2+{(3)鏡面板3+(4)銅箔4+(5)積層板の厚みによって決まる設定枚数のプリプレグ5+(6)銅箔4}×1ブックのページ数分繰返し+(7)鏡面板3+(8)耐熱クッション材2+(9)上熱盤1の順となっている。即ち、1m×1mサイズの20段プレス機で1ブック12ページとして積層板を製造した場合、1プレスで製造できる積層板の枚数は1m×1mサイズで240枚である。しかし、これを1m×4mサイズの30段プレス機で上と同様に1ブック12ページとして生産した場台、1プレスで製造できる積層板の枚数は1m×1mサイズに換算すると1440枚となり、6倍の生産性向上となる。従って、各工場ではより大型サイズの多段プレス機の導入が求められている。
【0005】
上記のように準備したセットをプレス機に入れ成形するが、この時の成形条件は樹脂原料配合等により異なる。このため、成形工程で使用されるクッション材の熱移動量(昇温速度:℃/min)が製造条件に合致していないと、1段中の中央部の製品と熱盤側の製品、あるいは1枚の製品の中でも中央部と周辺部で物性差が発生する。これはプリプレグ中の樹脂が加熱により粘度が一旦下がり液体状態に戻った後、徐々に硬化が進み製品となるが、この工程途中でプレス圧を昇圧するタイミングがズレルためである。
【0006】
即ち、樹脂を移動させプリプレグ同士の接着、プリプレグと銅箔の接着および樹脂中に含まれている空気の除去・細分吸収させる温度と圧力による成形プレスのタイミングが許容範囲を越えるためであり、樹脂粘度が低い時にプリプレグに圧力が掛かると、樹脂が必要以上に流れて、積層板等の中央部板厚が厚く、周辺部板厚が薄くなると言う問題が発生する。例えば、この積層板を数枚重ねて多層プリント配線板を製造した場合に、最終的に製造された製品の厚みがばらばらとなってしまう。
逆に、粘度が高くなってからプリプレグに圧力が掛かると、樹脂が十分に流れず樹脂中に含まれている空気が消えず製品となったときに絶縁性等の問題が発生する可能性がある。
従って、各工場においては、高品質の製品を製造するためにクッション量は上げたいが、熱移動量を変えてまで、即ち、上述のようにタイミングが重要となるプレス条件を変えてまでクッション量を上げるべきではないと考えられている。
【0007】
積層成形しない単層のプレス成形、また、上述のようにページ数を増やし、大量生産する積層成形のいずれにおいても、高品質の製品を得るために製品の全面に均一な熱を伝達することが重要である。しかし、製造の難しさは製作寸法の二乗で難しくなるといわれており、製品サイズが大きくなればなるほど、熱盤や鏡面板の凹凸、変形、厚み斑等が製品の品質に大きく影響するため、成形プリプレグ(Bステージ状態)の全面に均等な圧力と熱を伝達するのに、現状のクッション材よりも更に多いクッション量を持つクッション材が要望されている。
【0008】
次に、多層プリント配線板の製造方法について、4層板の製造方法を例に説明する。
まず、上記した方法により製造された積層板の表裏銅箔面に回路図を印刷し、不要な銅箔を薬品で除去して積層板の両面に回路図を形成してこれを内層材とする。この内層材の両面に積層板と同様なプリプレグを配設、その外側に銅箔を配設し鏡面板で挟み込み、更にその外側にクッション材を置いてプレス機にセッティングし積層板と同様にプレス加工して4層板を製造する。しかし、積層板と大きく異なるのは、その製造サイズが50cm×50cm程度と小さいことが挙げられる。この4層板に穴をあけ、その側面を銅メッキすることにより内層回路と外層回路を相互接続させる。その後、表裏銅箔面に回路図を印刷し不要な銅箔を薬品で除去して積層板の両面に回路を形成する。
【0009】
上記の多層プリント配線板は積層板と違い、その製造サイズが小さいものの内面に回路が作られている基板が入っているため、回路を形成している銅箔の有無により成形前の材料の絶対厚みが製品1枚の中で異なっており、成形プレス時に十分樹脂を移動させ厚みを均一にする必要がある。従って、この場合においても昇温速度が大きく変化することなく、クッション量のあるクッション材が要望されている。
さらに、最近は、高速超大型コンピュータなどの中央演算処理装置(CPU)・メモリ装置や衛星通信装置などの高級通信機器・高速計測機器に使用される超多層プリント配線板が増えつつあり、ますます多層化が進むと予測されることから、より一層クッション量のあるクッション材が要望される。
【0010】
更に、最近ではテレビ等でブラウン管に替わり液晶ディスプレイ、エレクトロルミネセンス等の各種フラットパネルディスプレイが開発されているが、これらの貼り合わせ等の製造工程で使用される成形プレス用クッション材においても、プリント配線板の場合と同様に、均等な圧力と熱を伝達するクッション材が要望されている。フラットパネルディスプレイの製造工程の場合、プリント配線板用積層板と異なりプレス圧が小さく、また製品の精度が高く要求されることから、一般的には多段成形するものではなく一段で一枚の製品を成形するが、この場合においても成形プレスの際に熱のばらつきがあるのは好ましくなく、全面に均一に熱を伝えるクッション性のあるクッション材が必要となる。
【0011】
また、半導体パッケージの小型・高性能化に伴って、チップとほぼ同サイズのチップスケールパッケージ(Chip Scale Package,CSP)と呼ばれる半導体パッケージが急速に増えており、CSP製造工程においても、全面に均一に熱を伝えるクッション性のあるクッション材が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、前記課題を解決し、クッション量を増加した場合であっても、熱の昇温速度が変わることなく、均一に熱を伝える成形プレス機用耐熱クッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、成形プレス用耐熱性ニードルフェルトクッション材が一定の条件下において密度が同じであれば、素材によって昇温速度とクッション材の目付との間に相関関係があることを見出した。従って、クッション量を増加させたい時は、クッション材の目付を重くすれば良いが、それでは昇温速度が遅くなり既存設備の現状成形プレス条件に合わず、樹脂流れ不良等の不良品発生の原因となり、また、成形プレス条件をクッション材に合わせることもできるが、これでは成形時間が掛かりすぎて生産性の低下を招き、一方、昇温速度を速くしたい時には、クッション材の目付を軽くする必要があるが、今度は、クッション量の不足により製品に均一な圧力と均一な熱移動ができず不良品の原因となるとの知見を得た。
従って、目付が増加した場合でも、昇温速度が遅くならない材料が必要であるとの結論に達した。本発明者は、そこでさらに研究を進めた結果、耐熱性を有し、かつ良好な熱伝導性を有する繊維を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、繊維基材の片面又は両面に対し、該基材に用いられる繊維と同種でも異種でもよい1種又は2種以上の繊維からなるバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化した成形プレス用耐熱クッション材であって、該クッション材が、熱伝導性繊維を含み、該熱伝導性繊維が、目付4000g/mの製品としたときの90℃〜140℃間における昇温速度が、3.6℃/min以上となる繊維であることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
また、本発明は、熱伝導性繊維が、目付2000g/mの製品としたときの90〜140℃間における昇温速度が、3.8〜4.0℃/minであり、目付4000g/mの製品としたときの昇温速度が、3.6〜3.8℃/minであることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
【0015】
さらに、本発明は、熱伝導性繊維が、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
また、本発明は、熱伝導性繊維を20〜100重量%含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
さらに、本発明は、目付2000g/mの製品を製造したときの90〜140℃間における昇温速度が、2.5〜3.1℃/minであり、目付4000g/mの製品では、1.0〜1.8℃/minとなる繊維を含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
また、本発明は、芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
さらに、本発明は、芳香族ポリアミド繊維としてメタ系芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
【0016】
また、本発明は、繊維基材の片面又は両面に対し、該基材に用いられる繊維と同種でも異種でもよい1種又は2種以上の繊維からなるバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化した成形プレス用耐熱クッション材であって、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含むことを特徴とする、成形プレス用耐熱クッション材に関する。
さらに、本発明は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を20〜100重量%含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
また、本発明は、芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
さらに、本発明は、芳香族ポリアミド繊維としてメタ系芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
また、本発明は、昇温速度測定に、温度:180℃、圧力:100kg/cmで1時間の劣化プレスを行なったサンプルを用いて、各製品サンプル間の密度差を減少させることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材に関する。
さらに、本発明は、前記成形プレス用耐熱クッション材の、プリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイの製造における成形プレスヘの使用に関する。
また、本発明は、プリント配線板が多層プリント配線板であることを特徴とする、前記使用に関する。
【0017】
本発明によれば、従来の耐熱繊維では得られない程、速い昇温速度を有する高熱伝導性の繊維を用いることで、生産性を低下することなく、クッション量を上げることができる。
また、クッション量を上げることにより、均一に熱を伝えることができ、高品質の製品を大量生産することが可能となる。
さらに、熱伝導性繊維を用いることにより、目付を多くした場合でも、昇温速度が大きく変化することがないため、成形プレス条件を変えることなく、そのままクッション量の増加が可能となる。
これらの熱伝導性繊維を従来の耐熱繊維に混紡することにより、混紡率と目付の変化に対応して、従来よりも昇温速度を幅広く変化させることができ、クッション量と昇温速度の調整が可能となる。
本発明の成形プレス用耐熱クッション材は、熱を均一に伝達できることから、プリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイ等の製造における成形プレスに使用した場合に、全面にばらつきのない高品質の製品を得ることができる。
【0018】
劣化プレス、昇温速度の測定条件および昇温速度の計算、クッション量の測定条件は、下記のように行う。
1.劣化プレス
試験に使用するサンプルは、初期密度の影響を受けないように、成形プレス機を用いて温度:180℃、圧力:100kg/cmで1hr劣化プレスを行い昇温性とクッション性の評価に使用した。
【0019】
2.昇温性
1)測定方法
試験開始時、成形プレス機の上下熱盤温度を25℃に調整し、上熱盤のみ200℃になるまで昇温速度を4.0℃/minに設定する。上下熱盤間に調整サンプルを入れ、圧力を20kg/cm掛けてプレスし、クッション材の非昇温熱盤側(下熱盤側)の温度を測定する。
2)昇温速度(℃/min)
上記測定条件で測定した下熱盤に接するクッション材の温度が一定範囲内を上昇するのに要した時間で除した値である(今回は90℃〜140℃間の50℃を上昇するのに要した時間で除した値である)。
【0020】
3.クッション性
1)測定方法
測定温度(180℃および250℃)に設定した成形プレス機の上下熱盤間に調整サンプルを入れ圧力を0kg/cm(接触圧)、15kg/cm、50kg/cm加圧した時の調整サンプルの厚みを測定する。
2)クッション量(μm)
15kg/cmに加圧した時のサンプルの厚みから50kg/cmに加圧した時のサンプルの厚みを引いた値を15kg/cm→50kg/cmのクッション量とする。
【0021】
4.到達温度(℃)
1)測定方法
昇温速度測定と同時に測定する。
成形プレス機の熱盤間に入れたサンプルの非昇温熱盤側(下熱盤側)の温度を測定する。
2)到達温度(℃)
サンプル温度が30℃に達してから1時間経過後のサンプル温度とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の成形プレス用耐熱クッション材に用いられる熱伝導性繊維は、該繊維100%用いて、目付4000g/m製品を製造したときの90〜140℃間における上記条件に従って測定した昇温速度が、3.6℃/min以上となる繊維であればいずれの繊維を用いてもよいが、例えば、全芳香族ポリエステル繊維、ボリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ステンレス繊維等が挙げられ、特に、例えば、目付2000g/mの製品を製造したときの90〜140℃間における昇温速度が3.8〜4.0℃/minであり、目付4000g/mの製品では3.6〜3.8℃/minとなるような繊維が、目付が2倍に変化しても昇温速度の変化が少ないため、成形プレスの条件を変えることなく、そのままクッション量を増やすことが可能となることから、好ましい。このような繊維として、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維が挙げられるが、該繊維は、熱伝導性が良好な上に、耐熱性が高く、使用中の寸法変化が少ない等の点から特に好ましい。
【0023】
本発明の成形プレス用耐熱クッション材に用いられる基材およびバットに用いられる繊維は、高温高圧の成形プレス条件下(例えば、ガラスエポキシ積層板の成形条件、温度:180〜210℃、圧力:30〜50kg/cm、紙フェノール積層板の成形条件、温度:160〜190℃、圧力:80〜120kg/cm、液晶パネル製造工程のプレス条件、温度:160〜180℃、圧力:3〜5kg/cm)で長期間安定して使用可能な耐熱性のある繊維ならいずれの繊維を用いてもよいが、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどを主体とするメタ系芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名/帝人製)やノーメックス(商品名/Dupont製))、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどを主体とするパラ系芳香族ポリアミド繊維(ケブラー(商品名/Dupont製)やテクノーラ(商品名/帝人製))、PPS繊維(トルコン(商品名/東レ製))等である。例えば、目付2000g/mの製品を製造したときの90〜140℃間における昇温速度が2.5〜3.1℃/minであり、目付4000g/mの製品では、1.0〜1.8℃/minとなるような繊維を用いると、上記の熱伝導性繊維と異なり、昇温速度が低いことから、混紡割合によって、昇温速度の調整が可能となり好ましい。そのような繊維のうち、耐熱性等の点から、芳香族ポリアミド繊維が好ましく、用いる芳香族ポリアミド繊維としては目的に応じて、パラ系又はメタ系ポリアミド繊維を適宜選択すべきであるが、昇温速度調整の観点からは、特に、メタ系芳香族ポリアミド繊維が好ましい。また、基材とバットに用いられる繊維は、同種であっても異種であってもよい。
【0024】
熱伝導性繊維のクッション中の混紡割合は、1〜100重量%まで使用できるが、昇温速度を変化させ、生産性向上および品質上(混紡斑)の点から、20〜100重量%が好ましい。本発明の成形プレス用耐熱クッション材は、上記繊維を主たる原料とした基材である1枚の織布又は数枚重ね積層した織布の片面又は両面に対し、1種又は2種以上の上記繊維を主たる原料としたバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化し製造する。
具体的には、目付30〜300g/m、好ましくは、50〜150g/mの基材である織布1枚の上に、目付50〜200g/m、好ましくは、75〜150g/mのバットを載せニードリングしプレニードル品を準備する。このプレニードル品をニードリングしながら2〜15枚程度巻き込む、巻き込み枚数は好ましくは3〜6枚である。このようにニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化して製造されたクッション材の目付は500〜7000g/m、好ましくは1500〜3000g/mであり、厚み1〜30mm、好ましくは、厚み2〜15mmであれば、クッション材として十分である。
【0025】
また、特殊な例としては、昇温速度が遅い繊維と昇温速度が速い繊維とを混紡するのでなく、昇温速度が遅い繊維を中央部に配置し、その片面あるいは両面に昇温速度が速い繊維を積層するものもある。昇温速度が遅い繊維層の目付を多くすることにより、昇温性とクッション性をより均一とした後、クッション材から鏡面板(製造品側)へスムーズに熱が移動できるようにしたものである。本来、昇温速度の速い繊維層は鏡面板と接する片面のみでも良いが、クッション材が絶えず同じ面が表面となる訳ではないので両面に昇温速度の速い繊維層を形成している。但し、製造方法では上記バット混紡品に比べ生産性が悪くなる。本発明の成形プレス用耐熱クッション材は、クッション性が良く、熱を効率良く均一に伝え、温度調整が可能となることから、温度と圧力のタイミングが製品の品質に大きな影響を与えるプリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイの製造における成形プレスに用いるクッション材として特に好適である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の成形プレス用耐熱クッション材について、実施例を用いてさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
〔実施例1〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚上にPBO繊維とケブラーを50%:50%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作り、それを更に4周ニードリングしながら巻き込んで絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例2〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚重ねて、その表裏にPBO繊維とケブラーを70%:30%の割合で混紡したバットを載せニードリングにて絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例3〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚上にPBO繊維とコーネックスを50%:50%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作り、それを更に4周ニードリングしながら巻き込んで絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
【0027】
〔実施例4〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚重ねて、その表裏にPBO繊維とコーネックスを70%:30%の割合で混紡したバットを載せニードリングにて絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例5〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚上にPBO繊維100%の目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作り、それを更に4周ニードリングしながら巻き込んで絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例6〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維とケブラーを50%:50%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例7〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維とケブラーを70%:30%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
【0028】
〔実施例8〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維とコーネックスを50%:50%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例9〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維とコーネックスを70%:30%の割合で混紡した目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例10〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維の目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例11〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にPBO繊維の目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に14周巻き込んで目付7000g/mで厚み23mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例12〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚重ねて、その表裏にケブラー100%のバットを各650g/m針打ちし、更に針打ちしたケブラーの表裏にPBO繊維100%のバットを各200g/m針打ちして絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔実施例13〕
PBO繊維のスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚重ねて、その表裏にコーネックス100%のバットを各650g/m針打ちし、更に針打ちしたコーネックスの表裏にPBO繊維100%のバットを各200g/m針打ちして絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
【0029】
〔比較例1〕
ケブラーのスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚重ね、その表裏にケブラー100%のバットを載せニードリングにて絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔比較例2〕
コーネックスのスパン糸からなる目付100g/mの基布を3枚更ね、その表裏にコーネックス100%のバットを載せニードリングにて絡合一体化した目付2000g/mで厚み6mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
【0030】
〔比較例3〕
ケブラーのスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にケブラーの目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔比較例4〕
コーネックスのスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚の上にコーネックスの目付100g/mのバットを載せながら4層針打ちし、目付500g/mのプレニードル品を作りそれを更に8周巻き込んで目付4000g/mで厚み13mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔比較例5〕
コーネックスのスパン糸からなる目付100g/mの基布1枚に、コーネックス100%のバットを表裏合せて900g/m載せニードリングにて絡合一体化した目付1000g/mで厚み3.3mmの成形プレス用ニードルフェルトクッション材を得た。
〔昇温速度〕
それぞれの成形プレス用耐熱クッション材の90〜140℃間における上記の条件下で測定した昇温速度および最高到達温度を表1に示す。〔実施例11〕、〔比較例1〕、〔比較例5〕はPBO、ケブラー、コーネックスの各繊維単体で昇温速度を同程度に合せたものである。
【0031】
【表1】

【0032】
PBO繊維のみを用いた実施例5および実施例10を比較すると、目付によって昇温速度の変化が少なく、良好であった。また、PBO繊維の混紡割合を変えることで、昇温速度を変化させることが可能となる。
〔実施例11〕、〔比較例1〕、〔比較例5〕はPBO、ケブラー、コーネックスの各繊維単体で昇温速度3.0℃/min程度に合せたものであるが各繊維を使用したサンプルの目付はPBOの場合7000g/m、ケブラー2000g/m、コーネックス1000g/mと繊維によって大きな差がある。
〔クッション性〕
PBO繊維を用いた実施例5、10および11(目付がそれぞれ2000g/m、4000g/mおよび7000g/m)、ケブラー繊維を用いた比較例1および3(目付がそれぞれ2000g/mおよび4000g/m)およびコーネックス繊維を用いた比較例2、4および5(目付がそれぞれ2000g/m、4000g/mおよび1000g/m)の成形プレス用耐熱クッション材を180℃、250℃下で0〜50kg/cmまで加圧し、15kg/cmと50kg/cmのクッション材の厚みの変化量(μm)をクッション量とした。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
ガラスエポキシ積層板や多層板の実機で使用する時に重要とされる圧力15kg/cm→50kg/cmでの厚みの変化量(クッション量)についてPBO繊維とケブラー繊維およびコーネックス繊維の耐熱クッション材を同一目付で比較すると、目付4000g/mで測定温度180℃ではPBOは、コーネックスに比べ150μm程度、ケブラーに比べ、100μm程度少ないが、測定温度が250℃になると逆にPBOのクッション量はコーネックスの約3倍、ケブラーの約1.7倍となる。さらに、PBOは、測定温度が180℃から250℃へ上昇してもクッション量の極端な低下が見られない (実施例10、比較例3、比較例4) 。
昇温速度を約3.0℃/minとして、クッション量を比較した場合(実施例11、比較例1および比較例5)、PBOは測定温度180℃でコーネックスの約4.5倍、ケブラーで約2.5倍となっている。更に測定温度が250℃となるとPBOは285μmとクッション量が大きく、コーネックスの約18倍、ケブラーの約4倍となっている。
【0035】
本発明によると、クッション量を増加した場合であっても、熱の昇温速度が変わることなく、均一に熱を伝える成形プレス用耐熱クッション材を提供することができる。また、該クッション材を、プリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイなどの製造における成形プレス時のクッション材に用いることにより、高品質の製品を得ることができ、また多段成形した場合であっても、製品の品質の低下および生産性が低下することなく、大量生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】積層板の成形プレスの例を示す図
【図2】昇温速度測定時の熱盤昇温曲線とクッション材の昇温曲線
【符号の説明】
【0037】
1 熱盤
2 耐熱クッション材
3 鏡面板
4 銅箔
5 プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材の片面又は両面に対し、該基材に用いられる繊維と同種でも異種でもよい1種又は2種以上の繊維からなるバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化した成形プレス用耐熱クッション材であって、該クッション材が、熱伝導性繊維を含み、該熱伝導性繊維が、目付4000g/mの製品としたときの90〜140℃間における昇温速度が、3.6℃/min以上となる繊維であることを特徴とする、前記成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項2】
熱伝導性繊維が、目付2000g/mの製品としたときの90〜140℃間における昇温速度が、3.8〜4.0℃/minであり、目付4000g/mの製品としたときの昇温速度が、3.6〜3.8℃/minであることを特徴とする、請求項1に記載の成形プレス用耐熱クッション材
【請求項3】
熱伝導性繊維が、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項4】
熱伝導性繊維を20〜100重量%含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項5】
目付2000g/mの製品を製造したときの90〜140℃間における昇温速度が、2.5〜3.1℃/minであり、目付4000g/mの製品では、1.0〜1.8℃/minとなる繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項6】
芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項7】
芳香族ポリアミド繊維としてメタ系芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、請求項6に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項8】
繊維基材の片面又は両面に対し、該基材に用いられる繊維と同種でも異種でもよい1種又は2種以上の繊維からなるバットを1層又は2層以上積層し、ニードリングにて基材とバット繊維を絡合一体化した成形プレス用耐熱クッション材であって、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含むことを特徴とする、成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項9】
ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を20〜100重量%含むことを特徴とする、請求項8に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項10】
芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項11】
芳香族ポリアミド繊維としてメタ系芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする、請求項10に記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項12】
昇温速度測定に、温度:180℃、圧力:100kg/cmで1時間の劣化プレスを行なったサンプルを用いて、各製品サンプル間の密度差を減少させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の成形プレス用耐熱クッション材。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の成形プレス用耐熱クッション材の、プリント配線板用積層板、プリント配線板、CSPおよびフラットパネルディスプレイの製造における成形プレスヘの使用。
【請求項14】
プリント配線板が多層プリント配線板であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−15388(P2007−15388A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217147(P2006−217147)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【分割の表示】特願2002−25244(P2002−25244)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】