説明

成形不良孔検査装置及びその方法

【課題】成形不良孔検査と同時に縦孔の底部で焼き固まった固化砂の破砕を行なって工程時間を短縮することができる成形不良孔検査装置及びその方法を目的とする。
【解決手段】 鋳造成形品Cに対して接離するフレーム2の下面に、縦孔Vを通じて挿入されて連通孔Hに検査エアを噴射するエア供給筒9と、他の縦孔Vを通じて挿入されて連通孔Hを通過した検査エアの流速を検出する風速センサ10と、特定の縦孔Vを通じて挿入されて縦孔V底部の固化砂を破砕する破砕棒8と、フレーム2の水平位置を規制する複数の位置決めピン4とを設けた装置及びフレーム2をその下面の位置決めピン4により鋳造成形品Cに対して水平位置を規制して、フレーム2下面の破砕棒8で特定の縦孔V底部の固化砂を破砕すると同時に、フレーム2下面に設けられたエア供給筒9を縦孔Vに挿入し、他の縦孔Vを通じて連通孔を通過した検査エアの流速を風速センサ10で測定して連通孔Hの成形不良を検出する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダヘッドやシリンダブロック等の中子型を用いて冷却水孔等の連通孔が形成された鋳造成形品の成形不良検査と鋳造成形品の中子型を受けた巾木穴等により形成される縦孔の底部で焼き固まった固化砂(黒砂)の破砕とを行なう成形不良孔検査装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中子型により連通孔が成形された鋳造成形品は、成形後鋳造成形品に振動を加えて中子型を破砕した後、連通孔の成形不良を検査するのが普通であった(例えば、特許文献1参照、特許文献2,3参照)。
【0003】
しかし、振動による中子型の破砕では巾木を取り付けた巾木穴等の縦孔の底部にできた黒砂と称せられる焼き固まった固化砂を破砕することができなかった。この固化砂は連通孔内の流体の流れを阻害して冷却効果等を低下させる危険性があった。そこで縦孔に棒を突っ込んで底部の固化砂を手作業で破砕除去する必要があった。このため、鋳造から検査工程の完了までに時間がかかり生産性向上の妨げる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−121254号公報
【特許文献2】特開2000−162097号公報
【特許文献2】特開2001−116663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形不良孔検査と同時に鋳造成形品の縦孔の底部で焼き固まった固化砂の破砕を行なって鋳造から検査までの工程時間を短縮することができる成形不良孔検査装置及びその方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成形不良孔検査装置は、表面に開口する多数の縦孔と、これらの縦孔間を結ぶように内部に形成された連通孔とを備えた鋳造成形品の成形不良孔を検出する装置であって、鋳造成形品に対して接離するフレームの下面に、縦孔を通じて挿入されて連通孔に検査エアを噴射するエア供給筒と、他の縦孔を通じて連通孔を通過した検査エアの流速を検出する風速センサと、特定の縦孔を通じて挿入されて縦孔の底部に生じる固化砂を破砕する破砕棒と、鋳造成形品に対するフレームの水平位置を規制する複数の位置決めピンとを設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、エア供給筒と破砕棒とを、フレームに対して上方に逃げることができるように弾性的に取り付け、その逃げ量の検出手段をフレームに設けたり、破砕棒の断面形状を、丸み部分と平面部分または丸み部分のみからなるものとしたりしてもよい。
【0008】
また、本発明の成形不良孔検査方法は、表面に開口する多数の縦孔と、これらの縦孔間を結ぶように内部に形成された連通孔とを備えた鋳造成形品の成形不良孔を検出する方法であって、フレームをその下面の位置決めピンにより鋳造成形品に対して水平位置を規制することにより、フレーム下面に設けられた破砕棒で特定の縦孔の底部に生じる固化砂を破砕すると同時に、フレーム下面に設けられたエア供給筒を縦孔に挿入し、他の縦孔を通じて連通孔を通過した検査エアの流速を風速センサで測定して連通孔の成形不良を検出することを特徴とするものである。
【0009】
なお、フレームに対して上方に逃げることができるように弾性的に取り付けられたエア供給筒と破砕棒のいずれかがフレームに対して上方に逃げたとき、その逃げ量から縦孔の詰まりを検出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、フレームをその下面の位置決めピンにより鋳造成形品に対して水平位置を規制することにより、フレーム下面に設けられた破砕棒で特定の縦孔の底部に生じる固化砂を破砕すると同時に、フレーム下面に設けられたエア供給筒を縦孔に挿入し、他の縦孔を通じて連通孔を通過した検査エアの流速を風速センサで測定して連通孔の成形不良を検出することにより、成形不良孔の検査と、鋳造成形品の縦孔の底部に焼き固まった固化砂の破砕を同時に行うことができるので、鋳造から検査までの工程時間を短縮でき生産性を向上できる。
【0011】
請求項2のように、エア供給筒と破砕棒とを、フレームに対して上方に逃げることができるように弾性的に取り付け、その逃げ量の検出手段をフレームに設けたことにより、鋳造バリによる縦孔の詰まりを検知してNG判定を行ないライン外に排除することができるので、不良品の成形不良孔を検査するという無駄を無くすことができる。
【0012】
請求項3のように、破砕棒の断面形状を、丸み部分と平面部分または丸み部分のみからなるものとしたことにより、破砕棒が縦孔に挿通されていても検査エアの流れが大きく減速されることがないので、的確、且つ高精度の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい実施形態において破砕棒の配置状態を示す一部切欠側面図である。
【図2】同じく風速センサとエア供給筒の配置状態を示す一部切欠側面図である。
【図3】風速センサとエア供給筒の一部切欠側面図である。
【図4】破砕棒による固化砂の打撃破砕状態を示す断面図である。
【図5】破砕棒による異なる部位の固化砂の打撃破砕状態を示す断面図である。
【図6】縦孔に配置された破砕棒の横断面図である。
【図7】別の縦孔に配置された破砕棒の横断面図である。
【図8】鋳造成形品における検査エアの流れを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、冷却水路等が形成されるシリンダヘッドの連通孔を検査する装置に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1,2において、1はライン上を搬送されてくる鋳造成形品Cの成形不良孔検査装置であり、該成形不良孔検査装置1は図示しない昇降装置やロボットアーム等に装着されるチャンネル状のフレーム2の左右脚辺2a,2aに取り付けられる複数の位置決めピン4と、前記フレーム2の天板2bにばね3aの付勢下に吊下げ部3により吊り下げられる多数の破砕棒8及び複数のエア供給筒9と、フレーム2の天板2bに直接取り付けられる複数の風速センサ10とからなる。
【0015】
前記位置決めピン4は先端をライン上に停止させた鋳造成形品Cの表面に当接させてフレーム2の水平位置(傾きと下降量)方向を規制し、破砕棒8、エア供給筒9、風速センサ10が特定の縦孔に適正に挿入できるようにしている。なお、X−Y位置の規制は鋳造成形品Cを下方から押し上げる図示しないテーパピンを鋳造成形品C下面のプラグ孔に挿入させて行なう。
【0016】
また、破砕棒8とエア供給筒9とを吊り下げる前記吊下げ部3はフレーム2の天板2bを挟み込むようにして連杆3bを上下の連結板3cにより連繋させるとともに、天板2bのスリーブ3dに連杆3bを嵌挿させて摺動自在としたもので、ばね3aはスリーブ3dの下端と下部の連結板3c間に介在されている。該ばね3aにより、破砕棒8が縦孔V等に形成されている鋳造バリ等にぶつかると、ばね3aの付勢力に抗して吊下げ部3に取り付けられた破砕棒8とエア供給筒9とは上方に逃げることとなる。この逃げ量をフレーム2に取り付けた図示しない検出手段としてのリミットスイッチで検出してNG信号を出力するようにしている。このようにして詰まりが検出された鋳造成形品Cはライン外に排除される。
【0017】
前記各破砕棒8は、鋳造成形品Cとしてのシリンダヘッドを鋳造する際、冷却水路等の連通孔Hを成形する中子型等を保持する巾木により形成される6箇所の底部に縦孔Vを通じて挿入され、底部で焼き固まっている固化砂を打撃破砕するものである。
【0018】
さらに、各破砕棒8の外形状は鋳造成形品Cの孔壁面と接触しないよう2〜3mmの隙間をもたせることにより、検査エアの流れが急激に変わったり閉ざされたりしないようにしている。さらに、破砕棒8の横断面形状は図6、7に示されるように、連通孔Hの孔形状により異なり、横断面形状を、丸み部分と平面部分との組合せとしたり、丸み部分のみで形成される略卵形状としたりして、検査エアが破砕棒8を通過する際、破砕棒8が大きな空気抵抗とならないようにしている。このようにすることにより、検査エアの流れは大きく減速されることがないので、精度の高い検査が可能となる。
【0019】
さらに、前記風速センサ10は検査エア導入孔を形成したウレタン製のヘッド10aを先端に設けるとともに、筒本体の検査エア導入孔内に風速検出素子10bを配置させたもので、基部をフレーム2に直付けしている。10cは筒本体の側面にはエア排気用の横孔であり、該横孔10cは導入された検査エアの円滑に流れ出て風速が減速されないようにしている。風速センサ10による検査エアの測定は、鋳造成形品Cの特定の縦孔Vの表面開口にヘッド10aを押し当て、エア供給筒9により特定の縦孔Vから噴射された検査エアが連通孔Hを通過して縦孔Vより吹き出る風速を検出するものである。
【0020】
連通孔Hの検査は図8に点線矢印に示されるように、エア供給筒9と風速センサ10とを配置して行なわれる。風速センサ10は検査部位によっては共用させて風速センサ10の本数を減らしてコストダウンを図っている。なお、風速センサ10を共用する場合、時間差を持たせて別々のエア供給筒9のノズルから検査エアを噴射して検査孔を判別する。
【0021】
このような成形不良孔検査装置1は、ハンマリング等によって振動が加えられて砂型等が破砕排除された鋳造成形品Cはライン上を搬送されて検査位置で停止される。鋳造成形品Cが停止すると成形不良孔検査装置1は図示しない昇降装置やロボットアームにより鋳造成形品C上に降下される。次いで、鋳造成形品Cの下面プラグ孔に下方からテーパピンを挿入して鋳造成形品CのX−Y位置を正確に位置決め規制するとともに、鋳造成形品Cを押し上げてフレーム2から垂設されている位置決めピン4に押し付ける。鋳造成形品Cの上面を位置決めピン4に当接させることにより、鋳造成形品Cはフレーム2と平行する水平状態となるとともに、破砕棒8とエア供給筒9は鋳造成形品Cの縦孔V内及び連通孔H内の特定深さまで挿入される。
【0022】
そして、縦孔Vの底部に固化砂があれば破砕棒8の先端は固化砂を打撃破砕することとなる。このとき鋳造成形品Cの表面開口から特定の縦孔Vを通じて連通孔H内に挿入されているエア供給筒9のノズルより検査エアが連通孔Hに向けて噴射される。この検査エアは鋳造成形品Cの表面開口に押し当てられた特定の風速センサ10により検出される。該風速センサ10により検出された風速に基づいて連通孔Hの良否が判定される。そして、鋳造成形品C内の残された破砕砂は次工程に搬送されて清掃される。
【0023】
また、破砕棒8が縦孔V内に挿入された際、縦孔V内の鋳造バリにぶつかると、破砕棒8は吊下げ部3とともにばね3aの付勢力に抗してフレーム2に対して上方に逃げるので、フレーム2に設けられている検出手段により逃げ量が検出される。そして、検出された逃げ量に基づいてNG信号を発して該当鋳造成形品Cをライン外に排除する。このようにしてライン外に排除された鋳造成形品は、オフラインで鋳造バリを除去されてラインに再投入され、再度、成形不良孔の検査が行われる。
【0024】
なお、風速測定の時、破砕棒8は縦孔Vに挿入されたままの状態となるが、破砕棒8は鋳造成形品Cの孔内壁面と当接しないように2〜3mmの隙間をもたせて配置されるとともに、その横断面形状は孔形状に応じて丸み部分と平面部分との組合せ形状としたり、丸み部分のみで形成される略卵形状としたりしているので、検査エアの風速が大きく減速されることはなく、高精度、且つ的確な風速測定が行われることとなる。
【0025】
また、破砕棒8により破砕された固化砂の量が多い場合は、破砕された固化砂が風速検査の障害となり連通孔Hは詰まっているものと判断され、NG信号が出力されてライン外に排除する。このような鋳造成形品Cはライン外で破砕された固化砂は清掃され、再度、検査ラインに戻され成形不良孔検査が行われる。
【符号の説明】
【0026】
1 成形不良孔検査装置
2 フレーム
2a 左右脚辺
2b 天板
3 吊下げ部
3a ばね
3b 連杆
3c 連結板
3d スリーブ
4 位置決めピン
8 破砕棒
9 エア供給筒
10 風速センサ
10a ヘッド
10b 風速検出素子
10c 横孔
C 鋳造成形品
H 連通孔
V 縦孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口する多数の縦孔と、これらの縦孔間を結ぶように内部に形成された連通孔とを備えた鋳造成形品の成形不良孔を検出する装置であって、鋳造成形品に対して接離するフレームの下面に、縦孔を通じて挿入されて連通孔に検査エアを噴射するエア供給筒と、他の縦孔を通じて連通孔を通過した検査エアの流速を検出する風速センサと、特定の縦孔を通じて挿入されて縦孔の底部に生じる固化砂を破砕する破砕棒と、鋳造成形品に対するフレームの水平位置を規制する複数の位置決めピンとを設けたことを特徴とする鋳造成形品の成形不良孔検出装置。
【請求項2】
エア供給筒と破砕棒とを、フレームに対して上方に逃げることができるように弾性的に取り付け、その逃げ量の検出手段をフレームに設けたことを特徴とする請求項1記載の鋳造成形品の成形不良孔検出装置。
【請求項3】
破砕棒の断面形状を、丸み部分と平面部分または丸み部分のみからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載の鋳造成形品の成形不良孔検出装置。
【請求項4】
表面に開口する多数の縦孔と、これらの縦孔間を結ぶように内部に形成された連通孔とを備えた鋳造成形品の成形不良孔を検出する方法であって、フレームをその下面の位置決めピンにより鋳造成形品に対して水平位置を規制することにより、フレーム下面に設けられた破砕棒で特定の縦孔の底部に生じる固化砂を破砕すると同時に、フレーム下面に設けられたエア供給筒を縦孔に挿入し、他の縦孔を通じて連通孔を通過した検査エアの流速を風速センサで測定して連通孔の成形不良を検出することを特徴とする鋳造成形品の成形不良孔検出方法。
【請求項5】
フレームに対して上方に逃げることができるように弾性的に取り付けられたエア供給筒と破砕棒のいずれかがフレームに対して上方に逃げたとき、その逃げ量から縦孔の詰まりを検出することを特徴とする請求項4記載の鋳造成形品の成形不良孔検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96278(P2012−96278A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248137(P2010−248137)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)