成形体およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法
【課題】成形体およびその製造方法、並びに不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒およびその製造方法、並びにメタクリル酸製造用触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の成形体10は、所定の間隔で配置された複数の柱状部12と、隣接する柱状部12,12同士を接合するブリッジ部11とを備え、前記柱状部の長手方向に前記複数の柱状部で囲設された貫通孔13を有し、かつ周面に前記複数の柱状部間の間隔によって形成された開口14を有する形状である。この成形体10は、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用いて、第一および第二のダイの少なくとも一方の回転および停止を繰り返して成形することができる。
【解決手段】本発明の成形体10は、所定の間隔で配置された複数の柱状部12と、隣接する柱状部12,12同士を接合するブリッジ部11とを備え、前記柱状部の長手方向に前記複数の柱状部で囲設された貫通孔13を有し、かつ周面に前記複数の柱状部間の間隔によって形成された開口14を有する形状である。この成形体10は、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用いて、第一および第二のダイの少なくとも一方の回転および停止を繰り返して成形することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、触媒、触媒担体、吸着剤、乾燥剤、調湿材等として有用な成形体およびその製造方法、並びに、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒と、この触媒を用いた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法、並びにメタクリル酸製造用触媒と、この触媒を用いたメタクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロピレン、イソブチレン、ターシャリーブチルアルコール等を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒としては、モリブデン、ビスマス、鉄、ニッケルおよびコバルトを含有する複合酸化物を使用するのが有効であることが知られている(特許文献1)。
【0003】
このような触媒や触媒担体には、円柱状や円筒状等の形状に成形された成形体が使用されてきた。このような成形体は、これまでから固定床反応装置における触媒反応に汎用されており、一般に、触媒や触媒担体である成形体を反応管に充填し、該反応管にガス等を通じさせる方法において使用されていた。
【0004】
ところが、円柱状や円筒状の成形体を反応管に充填してガス等を通した場合、反応管の入り口と出口とで圧力差、すなわち圧力損失が生じる。この圧力差が大きくなると、目的生成物の選択性が低下するといった問題を生じることがある。
【0005】
そこで、触媒成形体の形状を工夫して、圧力損失等の問題を解決するために、本発明者らは、先に、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するコイル状筒材に、該コイル状筒材の軸方向に沿って柱状部が接合された形状の成形体を開発した(特許文献2)。
【0006】
この成形体は、例えば固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際にいかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができるという利点を有するが、その構造上、押出成形時、特に成形直後の切断時に潰れやすいという問題があった。
また、固定床反応装置等の装置や反応管等の各種容器に充填した際にも、成形体が割れて圧力損失増加に繋がる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−117866号公報
【特許文献2】特開2008−201130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際の圧力損失が小さく、しかも製造工程での切断時や、上記各種容器等へ充填した際にも、潰れたり、割れたりしない高い強度を有する成形体およびその製造方法を提供することである。
本発明の他の課題は、前記成形体からなる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、および不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造しうる方法を提供することである。
また、本発明のさらに他の課題は、前記成形体からなるメタクリル酸製造用触媒、およびメタクリル酸を収率良く製造しうる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、所定の間隔で配置された複数の柱状部と、隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部を備えた成形体を使用する場合には、全面に貫通孔または開口が形成されているので、圧力損失が小さくなり、しかも構造上、充分な強度を有するため、成形直後の成形体の切断を行っても、成形体が潰れにくく、従って工業的な生産が可能となり、かつ固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填しても、割れが少ないので、圧力損失増加に繋がる恐れがなくなるという新たな事実を見出した。
また本発明者らは、上記成形体からなり、触媒成分として特定の複合酸化物を用いた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒を使用する場合、上記した事実により、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造することができ、さらに、上記成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を使用する場合においても、前記と同様にメタクリル酸を収率良く製造することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の成形体は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有することを特徴とする。
本発明に係る成形体の製造方法は、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、(イ)前記第一および第二のダイをそれらの溝同士が重なり合う位置から該第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士が重なり合う位置まで回転させてブリッジ部を成形し、(ロ)ついで前記第一および第二のダイのいずれか一方の回転を停止させて前記柱状部を成形し、(ハ)再び第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士が重なり合う位置まで回転させて前記ブリッジ部を成形する動作を繰り返して成形体を成形することを特徴とする。
前記押出成形機から押出された前記柱状部は、前記ブリッジ部を含む所定の長さで切断される。
【0011】
また、本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、以下の構成を有する。
(1)少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブテン、ビスマス、鉄を含有し、さらにニッケルおよび/またはコバルトを含有する複合酸化物であることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(2)前記複合酸化物が、下記一般式(I)
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、0≦e≦10、0≦f≦10、0<g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)で示されるものである前記(1)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(3)前記複合酸化物が、その前駆体を分子状酸素含有ガスの雰囲気下で焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理したものである前記(1)または(2)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(4)前記焼成が300〜600℃で行われる前記(3)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(5)前記熱処理が200〜600℃で行われる前記(3)または(4)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(6)前記還元性物質が水素、アンモニア、一酸化炭素、炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、炭素数1〜6のアルデヒドおよび炭素数1〜6のアミンから選ばれる化合物である前記(3)〜(5)のいずれかに記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【0012】
本発明に係る不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法は、上記の(1)〜(6)のいずれかに記載の触媒の存在下、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素とを気相接触酸化するものである。
【0013】
また、本発明のメタクリル酸製造用触媒は、以下の構成を有する。
(7)少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒。
(8)前記ヘテロポリ酸化合物が、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む前記(7)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
(9)前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第一焼成し、次いで酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである前記(7)または(8)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
(10)前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第一焼成し、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである前記(7)または(8)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【0014】
本発明に係るメタクリル酸の製造方法は、前記(7)〜(10)のいずれかに記載の触媒の存在下、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と分子状酸素とを気相接触酸化するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成形体によれば、成形体の全体に貫通孔および開口が形成されているので、例えば固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際にいかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができ、またこのような成形体を押出成形法によって容易に提供することができるという効果がある。
さらに、本発明の成形体は、隣接する柱状部同士がブリッジ部により互いに接合されているため、成形体の強度が向上しており、従って押出成形直後に成形体を切断する際に潰れにくく、また固定床反応装置等の装置や反応管等の各種容器に充填した際にも割れにくいという効果がある。
よって、本発明の成形体は、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等として有用であり、とりわけ触媒もしくは触媒担体として用いると、高い触媒性能を効率よく発揮することができる。
また、前記成形体からなり、少なくともモリブデン、ビスマス、鉄、ニッケルおよびコバルトを含有する複合酸化物を触媒成分とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素と気相接触酸化させて、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造することができるという効果がある。
さらに、前記成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブデンを含むヘテロポリ酸化物からなるメタクリル酸製造用触媒は、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン、およびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクリル酸を収率良く製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の成形体の一実施形態を示す概略正面図であり(但し、この実施形態における側面図および背面図は正面図と同じである)、(b)は(a)の成形体を上側から見た概略平面図である。
【図2】(a)は、図1(b)のX−X線概略断面図であり、(b)は、図1(b)のY−Y線概略断面図である。
【図3】本発明の成形体の他の実施形態を示す概略正面図である(但し、この実施形態における側面図および背面図は正面図と同じである)。
【図4】(a)は、本発明の成形体を製造するための押出成形機における押出し孔部の一例を示す概略拡大断面図であり、(b)は(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
【図5】図4に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図6】押出成形機より押出された成形体の切断位置を説明するための説明図である。
【図7】(a)は、本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部の他の例を示す概略拡大断面図であり、(b)は(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
【図8】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す概略正面図であり、(b)は(a)の成形体を上側から見た概略平面図である。
【図9】図8に示す成形体を製造する押出成形機における押出し孔部を示す概略拡大図である。
【図10】図9に示す押出し孔部を有する押出成形機を用いて第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図11】(a)は、比較例2および3で作製した触媒を上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の触媒を示す概略正面図である。
【図12】本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部のさらに他の例を示す概略拡大断面図である。
【図13】図12に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図14】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の成形体の概略正面図である。
【図15】本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部のさらに他の例を示す概略拡大断面図である。
【図16】図15に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図17】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の成形体の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(成形体)
以下、図面を用いて、本発明の成形体を説明する。図1(a)は、本発明の成形体の一実施形態を示す概略側面図であり、図1(b)は、図1(a)の成形体の概略平面図である。図2(a)は、図1(b)のX−X線概略断面図であり、図2(b)は図1(b)のY−Y線概略断面図である。
【0018】
図1(a)、(b)および図2(a)、(b)に示す本発明の成形体10は、所定の間隙で配置された複数の柱状部12と、前記複数の柱状部12の長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部11とを備え、前記柱状部12の長手方向(すなわち後述する成形体10の押出方向)に複数の柱状部12で囲まれた貫通孔13を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体10の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部12間の間隔によって形成された開口14を有する形状を呈している。
【0019】
この実施形態では、4本の柱状部12はそれらの間に貫通孔13を形成するように等間隔で配列されている。そして、ブリッジ部11は、隣接する各柱状部12同士を接合するように各柱状部12を横切るように巻回している。また、隣接する柱状部12、12間には、それらの間の間隙に相当する幅を有する開口14が形成され、この開口14の上下はブリッジ部11が位置している。
ここで言う柱状部12、12の間隙、すなわち開口14の幅Wは、成形体の大きさ等によって変動するため特に限定されないが、通常、0.1〜49mm、好ましくは1〜28mm程度がよい。
【0020】
柱状部12の横断面形状は、円形に制限されるものではなく、例えば、半円形、三角形、矩形等のいずれであってもよい。
また、ブリッジ部11の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、半円形、円形、三角形、矩形等のいずれであってもよい。また、その太さは、巻回したときに隣接する柱状部12、12同士を高い強度で接合できる限り、特に制限はない。
【0021】
なお、柱状部12の数は、図1に示されるように、4本に限定されるものではなく、3本〜9本であればよい。さらに好ましくは奇数であるのがよい。例えば、図8(a)、(b)は、5本の柱状部17を等間隔で配列し、それらの間をブリッジ部16で接合した本発明の他の実施形態を示している。このような成形体であっても周面に開口18が、上下面に貫通孔19をそれぞれ形成することができる。
また、間隙は各柱状部12間に必ず形成されていなければならないわけではなく、例えば、間隙は少なくとも一つであって、他の部位は柱状部12同士が間隙なく接合されていてもよい。
また、柱状部12の長さ(すなわち成形体10の高さ)は1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、柱状部12の径は、成形体の強度を考慮して0.2〜24mm、好ましくは1〜14mm程度がよい。また、成形体10の外径D1は、1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、成形体10の内径(すなわち貫通孔13の径D2)は0.1〜49mm、好ましくは1〜28mm程度がよい。但し、D2=D1×90〜10%、好ましくは30〜80%であるのがよい。
【0022】
また、図1、図2に示す成形体10の場合、柱状部12は、ブリッジ部11の外周から一部が外方に突出するように設けられているが、ブリッジ部11の内周から一部が内方に突出するように設けられていてもよい。
【0023】
また、図1、図2に示す成形体10は、柱状部12の両端部にブリッジ部11を設けたものであるが、図3に示すように、柱状部12の両端部の他、中央部にもブリッジ部11を設けてもよい。つまり、本発明におけるブリッジ部11は、柱状部12の長手方向に間隔をもって複数段にわたって設けることもできる。
【0024】
以上のように、本発明の成形体は、その形状に特徴を有するものであり、従って、成形体を構成する成形材料の種類や組成等に関しては、何ら制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
例えば、本発明の成形体を触媒として用いる場合には、水酸化アルミニウム(ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト)、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、α−アルミナ、シリカ、チタニア(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)、ゼオライト等の金属酸化物、モリブデン、コバルト、ビスマス等を主成分とする複合金属酸化物、モリブデン、バナジウム、リン等からなるヘテロポリ酸などを用いることができる。
本発明の成形体を触媒担体として用いる場合には、コージュライト、ムライト、水酸化アルミニウム(ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト)、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、α−アルミナ、シリカ、チタニア(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)、ジルコニア、セリア等の金属酸化物、シリカ-アルミナ、マグネシアスピネル、カルシアスピネル、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム、ゼオライトなどを用いることができる。
本発明の成形体を吸着剤、乾燥材、調湿材等として用いる場合には、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、シリカ−アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、アパタイト、珪藻土などを用いることができる。
また、本発明の成形体は、これら成形材料のほか、種々のプラスチック材料等を用いて形成することもできる。
【0025】
本発明の成形体は、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等として用いられる。特に、触媒もしくは触媒担体として種々の形態の触媒反応に用いる場合、本発明の効果をより有効に活用することに鑑みると、固定床式反応装置等の反応装置や容器に充填して用いることが好ましい。つまり、本発明の成形体は、いかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができ、しかも高い強度を有しているので、固定床式反応装置において反応管に充填した場合にも、触媒性能を効率よく発現させることができるのである。
【0026】
以上のような形状の本発明の成形体は、例えば、以下に詳述する本発明の製造方法により製造することができるが、本発明の成形体を製造する方法はこれに限定されるわけではない。
なお、本発明の成形体は、例えば以下に記述する本発明の製造方法により成形された後、必要に応じて、焼成を施すこともできる。
【0027】
(成形体の製造方法)
本発明の成形体は、例えば、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイを嵌入し内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、第一のダイと第二のダイのいずれか一方の回転と停止を繰り返しながら成形材料を押出す押出成形方法によって作成することができる。以下、この押出成形方法と該方法で用いられる押出成形機とについて、図面を用いて詳しく説明するが、本発明の成形方法は勿論、該方法に限定されるものではない。
【0028】
図4(a)は、本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部の一例を示す概略拡大断面図であり、図4(b)は、図4(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
図4に示す押出成形機20は、外周面に2つの溝21aを有する第一のダイ21と、該第一のダイ21を嵌入し内周面に第一のダイ21と複数の溝22aを有するリング状ないし筒状の第二のダイ22とを備えている。詳しくは、第一のダイ21と第二のダイ22は、第二のダイ22に第一のダイ21を嵌入した状態で、ともに押出成形機20の前面に取り付けられており、この第一のダイ21が有する溝21aと第二のダイ22が有する溝22aとから成形材料が連続的に押し出されるようになっている。
【0029】
第一のダイ21およびその溝21a、並びに第二のダイ22およびその溝22aの寸法は、特に制限されるものではないが、例えば、第一のダイ21の外径は0.3〜48mm、好ましくは2.0〜29mm程度がよく、溝21aの深さは、R0.1〜R12mm、好ましくはR0.5〜R7mm程度がよい。また、第二のダイ22の外径は1〜150mm、好ましくは2〜100mm程度がよく、内径は0.3〜48mm、好ましくは2.0〜29mm程度がよく、溝22aの深さは、R0.1〜R12mm、好ましくはR0.5〜R7mm程度がよい。ここで、Rは曲率半径であることを意味している(以下同じ)。なお、図4に示す実施形態においては、溝22aの数は4個、溝21aの数は2個となっているが、これに限定されるわけではなく、溝21a、溝22aの数は、それぞれ得ようとする成形体の柱状部12の数等に応じて、適宜設定されるものである。
【0030】
さらに、押出成形機20は、前記第一のダイ21を回転させる回転手段23をも備えている。この回転手段23は、特に制限されるものではなく、例えばモーターなど通常の回転手段を採用すればよい。具体的には、図4に示す実施形態においては、第一のダイ21に固定した回転軸23aをモーター23bで回転駆動させることにより、第一のダイ21を回転させるようになっている。この場合、第一のダイ21の2つの溝21aが第二のダイ22の4つの溝22aのいずれかと合わさった時、それぞれの溝から押出された成形材料により柱状部12が形成されることとなり、第一のダイ21の2つの溝21aと第二のダイ22の4つの溝22aがずれた時には、第一のダイ21の2つの溝21aのみから押出された成形材料によりブリッジ部11が形成されることとなる。
【0031】
なお、図4に示す実施形態とは逆に、回転手段23が第二のダイ22を回転させるものである場合には、第一のダイ21の溝21aから押出された成形材料により柱状部12が形成され、第二のダイ22の溝22aから押出された成形材料によりブリッジ部11が形成されることとなり、得られる成形体は、ブリッジ部11の内周面(すなわち、貫通孔13内)に柱状部12の一部が突出したものとなる。
【0032】
図4に示す押出成形機20を用いて成形体10を作成するための成形材料の押出し操作は、例えば、次の(イ)〜(ニ)の順で行われる。
(イ)前記第一のダイ21および第二のダイ22の溝、21a、22aから成形材料を押出しながら、それらの溝21a、22a同士が重なり合う位置Mから該第一のダイ21を、次の前記第一および第二のダイ21,22の溝21a、22a同士が重なり合う位置Nまで180度回転させて前記ブリッジ部を成形する。
(ロ)ついで前記位置Nで第一および第二のダイ21,22の回転を停止させて前記柱状部を成形する。
(ハ)再び第一のダイ21を、位置Nから、もとの前記位置Mまで180度回転させて前記ブリッジ部を成形する。
(ニ)ついで、前記位置Mで第一および第二のダイ21,22の回転を停止させて前記柱状部12を成形する。
【0033】
以上の押出し操作を繰り返して成形体10を連続的に押出成形する。
図5は、以上の成形時間と第一のダイ21の回転角度との関係を示している。図5では、後述する比較例1、4についての成形時間と回転角度との関係も併せて示している。
本発明における、前記した回転および停止の操作は、例えばシーケンス制御により行うことができる。ここで、第一のダイ21の回転停止時間は、目的とする柱状部12の長さに応じて調整可能である。
【0034】
ブリッジ部11を成形する場合、第一のダイ21の回転速度は重要であり、当該回転速度が成形材料の成形機20からの押出速度に比べて遅い場合には、ブリッジ部11が螺旋状になってしまうおそれがある。従って、通常、第一のダイ21の回転速度は、成形材料の押出速度に対して2倍以上、好ましくは4〜10倍であるのが好ましい。また、成形材料の押出速度は、通常、1〜2000mm/分、好ましくは10〜1000mm/分であるのがよい。この回転速度は、第二のダイ22を回転させる場合も同様である。
【0035】
押出成形機20は、このほかに、第一および第二のダイ21、22から押し出された成形材料を切断する切断手段24をも有している。この切断手段24にて所定長さに切断することにより、成形体10が連続的に得られるのである。
切断手段24は、特に制限されるものではなく、例えば、カッターナイフや2つのガイドローラ間に張りわたされた線材(ピアノ線など)といった従来公知の切断手段を採用すればよい。
これらの切断手段24はダイ21、22の押出し孔の前面を横切るようにモーター等で駆動させればよいが、好ましくはダイ21、22の前面に接触ないし近接して横切らせるのがよい。
【0036】
連続的に押出された成形体の切断位置は、例えば図1,2に示すような成形体10では、図6に示すようにブリッジ部11を2つに分割する位置X1,X2,X3…で切断して、柱状部12の長手方向両端部にそれぞれブリッジ部11,11を形成している。矢印Yは成形体の押出し方向を示している。尚、図3に示すような成形体を得る場合は、位置X1で切断後、位置X3で切断すればよい。
【0037】
また、本発明における成形体を製造する押出成形機には、溝21aと溝22aから押出される成形材料の押出し速度を制御するために、流量制御弁(図示せず)が設けられていてもよい。
【0038】
図7(a)、(b)は本発明に係る成形体の製造方法の他の例を示している。同図に示すように、この実施形態では、第一のダイ21の溝21aと、第二のダイ22の溝22aとが同数(4つ)形成されている。従って、押出操作にあたっては、前記(イ)および(ハ)における第一のダイ21と第二のダイ22のいずれか一方を90度回転させればよい。その他は、前述の実施形態と同じである。なお、図4(a),(b)と同じ構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
こうして得られる成形体は、所定の間隙で配置された複数の柱状部12と、前記複数の柱状部12の長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部11と、を備え、前記柱状部12の長手方向に複数の柱状部12で囲まれた貫通孔13を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体10の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部12間の間隔によって形成された開口14を有している。
また、この成形体は、触媒として用いられた際、従来の製造方法で製造された触媒より大きな表面積および適度な強度を持つため、固定床多管式反応装置および各種容器等に充填された場合の圧力損失が小さくなり、優れた触媒活性を有している。
【0040】
本発明の成形体は、次に述べる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造とメタクリル酸製造のみならず、エチレンオキシド製造、プロピレンオキシド製造、1,2−ジクロロエタン製造、合成ガス製造、水素製造、天然ガス改質、灯油改質、ジメチルエーテル改質、ジメチルエーテル製造、エチルベンゼン脱水素、選択水素化、酸化、脱硝、水素化脱硫などの触媒、触媒前駆体または触媒担体としても好適に使用しうるものである。
【0041】
<不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒>
(触媒の製造)
本発明に係る不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブデン、ビスマス、鉄を必須とする複合酸化物からなるものである。この複合酸化物には、モリブデン、ビスマス、鉄以外の元素が含まれていてもよく、例えば、ニッケル、コバルト、カリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム等が含まれていても良い。
【0042】
かかる複合酸化物の好ましい例は、下記一般式(I)で示すことができる。
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、1≦e≦10、1≦f≦10、1≦g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)
【0043】
中でも、下記の組成(酸素原子を除く)を有するものが好ましく用いられる。
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Co5-10Cs0.01-1 (I−1)
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Co5-10Sb0.1-5K0.01-1 (I−2)
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Ni5-10Sb0.1-5Si0.1-5Tl0.01-1 (I−3)
【0044】
上記触媒の原料としては、通常、上記触媒に含まれる各元素の化合物、例えば、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、オキソ酸やそのアンモニウム塩、ハロゲン化物等が、所望の原子比を満たすような割合で用いられる。
例えば、モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム等が、ビスマス化合物としては、酸化ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス等が、鉄化合物としては、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が、それぞれ使用できる。
【0045】
上記の触媒原料から調製される触媒前駆体は、分子状酸素含有ガスの雰囲気下に焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理される。
この触媒前駆体は、通常、触媒原料を水中で混合して水溶液又は水性スラリーを得、次いでこの水溶液又は水性スラリーを乾燥することにより調製することができる。
また、この乾燥は、例えば、ニーダー、箱型乾燥機、ドラム型通気乾燥装置、スプレードライヤー、気流乾燥機等を用いて行うことができる。
【0046】
前記で得た触媒前駆体は、分子状酸素含有ガスの雰囲気下にて焼成する。このガス中の分子状酸素濃度は、通常1〜30容量%、好ましくは10〜25容量%である。
分子状酸素源としては、通常、空気や純酸素が使用され、これが必要に応じて窒素、二酸化炭素、水、ヘリウム、アルゴン等で希釈されて、分子状酸素含有ガスとして使用される。
焼成温度は、通常300〜600℃、好ましくは400〜550℃である。また、焼成時間は、通常5分〜40時間、好ましくは1時間〜20時間である。
【0047】
本発明では、上記焼成により得られた触媒を、還元性物質の存在下で熱処理する(以下、この還元性物質の存在下での熱処理を単に還元処理ということがある)。かかる還元処理により、触媒の活性を効果的に向上させることができる。
【0048】
還元性物質としては、例えば、水素、アンモニア、一酸化炭素、炭化水素、アルコール、アルデヒド、アミン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることができる。ここで、炭化水素、アルコール、アルデヒドおよびアミンは、それぞれ、その炭素数が1〜6程度であるのがよく、かかる炭化水素の例としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、α−ブチレン、β−ブチレン、イソブチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン等が挙げられ、アルコールの例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、メタリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール、フェノール等が挙げられる。
また、アルデヒドの例としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドなどの飽和脂肪族アルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクロレインなどの不飽和脂肪族アルデヒド等が挙げられ、アミンの例としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの飽和脂肪族アミン、アリルアミン、ジアリルアミンなどの不飽和脂肪族アミン、アニリン等が挙げられる。
【0049】
還元処理は、通常、上記還元性物質を含むガスの雰囲気下で触媒を熱処理することにより行われる。
このガス中の還元性物質の濃度は、通常0.1〜50容量%、好ましくは1〜50容量%、さらに好ましくは3〜30容量%であり、このような濃度になるように、還元性物質を窒素、二酸化炭素、水、ヘリウム、アルゴン等で希釈すればよい。なお、分子状酸素は、還元処理の効果を損なわない範囲で存在させてもよいが、通常は存在させないのがよい。
【0050】
還元処理の温度は、通常200〜600℃、好ましくは300〜500℃である。また、還元処理の時間は、通常5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間である。
還元処理は、触媒を管型や箱型等の容器に入れ、ここに還元性物質を含むガスを流通させながら行うのが好ましく、その際、容器から排出されたガスは必要により循環再使用してもよい。
例えば、触媒を気相接触酸化用の反応管に充填し、ここに還元性物質を含むガスを流通させて還元処理を行った後、引き続き気相接触酸化を行うことも可能である。
【0051】
還元処理により、通常、触媒の質量減少が見られるが、これは、触媒が格子酸素を失うためと考えられる。そして、この質量減少率は、0.05〜6%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5%である。還元が進み過ぎて質量減少率があまり高くなると、触媒活性が反って低下することがある。この場合は、再度、分子状酸素含有ガスの雰囲気下での焼成を行って、質量減少率を下げるのがよい。なお、質量減少率は、次式により求められる。
【0052】
質量減少率(%)=(還元処理前の触媒の質量−還元処理後の触媒の質量)/還元処理前の触媒の質量×100
【0053】
還元処理の際、用いる還元性物質の種類や熱処理条件等によっては、還元性物質自身や還元性物質由来の分解生成物等が還元処理後の触媒に残存することがある。このような場合は、別途、触媒中の該残存物質量を測定し、これを該残存物込みの触媒質量から差し引いて、還元処理後の質量を算出すればよい。該残存物は、典型的には炭素であるので、例えば、全炭素(TC:total carbon)測定等により、その質量を求めればよい。
【0054】
なお、本発明に係る触媒の成形は、触媒前駆体の段階で行ってもよく、また焼成後に行ってもよく、還元処理を行った後に成形をしてもよい。
【0055】
<不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造>
この触媒を用いて、プロピレンを分子状酸素により気相接触酸化することで、アクロレインおよびアクリル酸を収率良く製造することができる。また、イソブチレンやターシャリーブチルアルコールを分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクロレインおよびメタクリル酸を収率良く製造することができる。
【0056】
この気相接触酸化反応は、通常、固定床多管式反応器に触媒を充填し、ここにプロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる原料化合物と分子状酸素とを含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床での反応も可能である。
分子状酸素源としては、通常、空気が用いられ、原料ガス中には、原料化合物および分子状酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれる。
【0057】
反応温度は通常250〜400℃であり、反応圧力は減圧でも可能であるが、通常100〜500kPaである。原料化合物に対する分子状酸素の量は通常1〜3モル倍である。また、原料ガスの空間速度SVは、STP(standard temperature and pressure)基準で、通常500〜5000/時である。
【0058】
<ヘテロポリ酸化物からなるメタクリル酸製造用触媒>
(触媒の製造)
本発明に係るメタクリル酸製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなる触媒であり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)からなるものが好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものである。
【0059】
上記触媒のヘテロポリ酸化合物は、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、X元素ということがある)と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、Y元素ということがある)が含まれるのが望ましい。通常、モリブデン12原子に対して、リン、バナジウム、X元素およびY元素が、それぞれ3原子以下の割合で含まれる触媒が、好適に用いられる。
【0060】
上記触媒の原料としては、通常、上記触媒に含まれる各元素を含む化合物、例えば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が、所望の原子比を満たすような割合で用いられる。
例えば、リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が用いられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が用いられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸塩、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が用いられる。また、X元素を含む化合物としては、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられ、Y元素を含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられる。
【0061】
本発明では、上記触媒原料を水中で混合して、触媒の原料を含む水性混合物を得、これを乾燥した後、酸化性ガス雰囲気下に所定温度で第一段焼成を行う。かかる乾燥は、スプレードライヤー等を用いた噴霧乾燥により行うのが好ましい。また、上記乾燥後、該乾燥物を後述するように所定形状に成形した後、第一段焼成を行ってもよく、上記乾燥後、該乾燥物を熱処理(前焼成)した後、成形し、次いで第一段焼成を行ってもよく、上記乾燥後、該乾燥物を成形し、次いで熱処理(前焼成)した後、第一段焼成を行ってもよい。かかる成形を行う場合、必要に応じて成形助剤を用いるのが好ましい。また、かかる乾燥物の熱処理(前焼成)を行う場合、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下に、180〜300℃程度の温度で行うのが好ましい。
【0062】
また、触媒原料としてアンモニウム化合物を用いたり、アンモニアやアンモニウム塩を添加したりして、アンモニウム根を含む水性混合物を得、これを乾燥した後、熱処理してから成形するか、成形してから熱処理すると効果的である。これらの処方によれば、該熱処理の際、ケギン型へテロポリ酸塩の構造を形成することができ、こうして得られるケギン型ヘテロポリ酸塩は、本発明による焼成に対し、特に好適な対象となる。
【0063】
本発明では、上記乾燥後、酸化性ガスの雰囲気下に所定の温度で第一段焼成した後、所定量の水を含む非酸化性ガスの雰囲気下に所定温度まで昇温し、次いで、非酸化性ガスの雰囲気下に所定の温度で第二段焼成を行う。このような一連の成形・焼成・昇温・焼成操作を行うことにより、良好なメタクリル酸収率を与え、優れた触媒寿命を有するメタクリル酸製造用触媒を製造することができる。
【0064】
第一段焼成で用いられる酸化性ガスは、酸化性物質を含むガスであり、典型的には、酸素含有ガスが挙げられ、その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。尚、第一段焼成で用いられる酸化性ガスには、必要に応じて0.1〜10容量%の水分を存在させてもよく、0.5〜5容量%の水分を存在させるのがより好ましい。
【0065】
第一段焼成の温度は、300〜400℃であり、好ましくは360〜400℃である。
第一段焼成の温度が、300℃未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがあり、一方、400℃を越えると、触媒が分解・焼結しやすいため、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0066】
第一段焼成後、所定量の水を含む非酸化性ガスの雰囲気下に420℃以上に昇温する。
ここでいう非酸化性ガスは、実質的に酸素などの酸化性物質を含有しないガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。かかる非酸化性ガスに含まれる水の含有量は、0.1〜10容量%であり、好ましくは0.5〜5容量%である。該含有量が0.1容量%未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0067】
上記昇温後、非酸化性ガスの雰囲気下に所定温度で第二段焼成を行う。第二段焼成の温度は、400〜500℃であり、好ましくは420〜450℃である。第二段焼成の温度が、400℃未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがあり、一方、500℃を越えると、触媒が分解・焼結しやすいため、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0068】
第二段焼成で用いられる非酸化性ガスは、先と同様、実質的に酸素などの酸化性物質を含有しないガスであるが、この第二段焼成で用いられる非酸化性ガスには、水が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。水が含まれている場合、水の含有量は、通常0.1〜10容量%であり、好ましくは0.5〜5容量%である。
【0069】
各焼成時間はそれぞれ適宜調整されるが、通常1〜20時間程度である。また、昇温時間は、通常0.5〜10時間程度である。各焼成や昇温の際の雰囲気ガスとして、使用されるガスを流通させながら行うのが望ましい。尚、酸化性ガスによる第一段焼成と非酸化性ガスによる第二段焼成の順番は入れ替えても良い。
【0070】
<メタクリル酸の製造>
前記したヘテロポリ酸からなる触媒を用いて、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクリル酸を収率良く製造することができる。
【0071】
メタクリル酸の製造は、通常固定床多環式反応器に上記触媒を充填し、これに原料化合物と酸素を含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床のような反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気が用いられ、また原料ガス中には、原料化合物および酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれうる。
【0072】
メタクロレインを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は、500〜5000/時(STP基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPaの条件下に反応が行われる。なお、原料のメタクロレインは必ずしも高純度の精製品である必要は無く、例えば、イソブチレンの気相接触反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを用いることもできる。
【0073】
また、イソブタンを原料として用いる場合、通常、原料ガスの中のイソブタン濃度は、1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000/h(STP基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPaの条件下に反応が行われる。イソ酪酸やイソブチルアルデヒドを原料として用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合と、ほぼ同様の反応条件が採用される。
【0074】
<チタン酸アルミニウム系結晶成形体>
本発明の成形体は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がチタン酸アルミニウム結晶を含むものである。
【0075】
本発明において、チタン酸アルミニウム系結晶を含む成形体は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成することにより製造され、原料混合物には更にマグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含んでいてもよい。「チタン酸アルミニウム系結晶を含む」とは、成形体を構成する結晶相にチタン酸アルミニウム系結晶相が存在していることを意味し、チタン酸アルミニウム系結晶相は、例えば、チタン酸アルミニウム結晶相、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相などであってよく、その他の結晶相が含まれていてもよい。
【0076】
前記成形体には、少なくともチタン、アルミニウムの元素が含まれており、これに加えてマグネシウム、ケイ素が含まれていることがある。さらに、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素以外の元素が含まれていてもよく、例えばジルコニウム、タングステン、セリウム、ナトリウム、鉄等が含まれていてもよい。
【0077】
<アルミニウム源粉末>
本発明において用いられる原料混合物に含有されるアルミニウム源粉末は、成形体を構成するアルミニウム元素を含む化合物の粉末である。アルミニウム源粉末としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、擬γ型、δ型、θ型、α型、ρ型、η型、χ型、κ型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。
【0078】
本発明で用いられるアルミニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0079】
アルミニウム塩は、無機酸とのアルミニウム無機塩であってもよいし、有機酸とのアルミニウム有機塩であってもよい。
アルミニウム無機塩として具体的には、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
アルミニウム有機塩として具体的には、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0080】
また、アルミニウムアルコキシドとして具体的には、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0081】
水酸化アルミニウムとしては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などの結晶型の水酸化アルミニウムが挙げられ、不定形(アモルファス)の水酸化アルミニウムであってもよい。
アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物なども挙げられる。
【0082】
本発明において、アルミニウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記のなかでも、アルミニウム源粉末としてはアルミナ粉末が好ましく用いられる。なお、アルミニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0084】
アルミニウム源粉末の粒径は特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が、0.1〜100μm、好ましくは1〜60μmの範囲のものが使用できる。アルミニウム源粉末の粒径が100μmより大きいと、例えば、造粒や押出しなどの湿式成形において、アルミニウム源粉末の保水力が低下して成形が困難となる。また、0.1μmより小さいと、粉末が気相中に浮遊し易くなり取扱いが困難になる。
【0085】
なお、本発明において用いられるアルミニウム源粉末は、上記粒径の範囲を満たす限りにおいてシングルモーダルな粒径分布を有していてもよく、バイモーダルな粒径分布を有していてもよく、あるいはそれ以上の粒径ピークを有するものであってもよい。
【0086】
上記粒径範囲を満たすアルミニウム源粉末としては、市販品をそのまま用いることもできるし、あるいは、市販品のアルミニウム源粉末に対して、粉砕、解砕、分級、篩別、造粒などの処理を施して上記粒径範囲を満たすアルミニウム源粉末を得てもよい。
【0087】
<チタニウム源粉末>
上記原料混合物に含有されるチタニウム源粉末は、成形体を構成するチタン元素を含む化合物の粉末であり、かかる化合物としては、例えば、酸化チタンの粉末が挙げられる。
酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。
酸化チタン(IV)としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などの結晶型の酸化チタン(IV)が挙げられ、不定形(アモルファス)の酸化チタン(IV)であってもよい。なかでも、より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0088】
本発明で用いられるチタニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよい。
かかる化合物としては、例えば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0089】
チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。
チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0090】
本発明において、チタニウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記のなかでも、チタニウム源粉末としては酸化チタン粉末が好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)粉末である。なお、チタニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0092】
チタニウム源粉末の粒径は特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜25μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、チタニウム源粉末のD50が、1〜20μmの範囲内であるチタニウム源粉末を用いることが好ましく、これにより、焼成時に無作為に発生するチタン酸アルミニウムまたはチタン酸アルミニウムマグネシウムの核生成を効果的に抑制し、かつチタン酸アルミニウムまたはチタン酸アルミニウムマグネシウムの粒成長を進行させることができるので、より均質なチタン酸アルミニウム結晶相またはチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相の組織構造を形成することができる。均質なチタン酸アルミニウム系結晶の組織構造の形成は、耐熱性および機械的強度のばらつきの低減に寄与する。なお、チタニウム源粉末はバイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタニウム源粉末を用いる場合においては、レーザ回折法により測定される粒径が大きい方のピークを形成する粒子の粒径は、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0093】
レーザ回折法により測定されるチタニウム源粉末のモード径は特に限定されず、0.3〜60μmの範囲内であってもよい。
【0094】
上記原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との含有量比は、モル比で35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。このような範囲内で、チタニウム源粉末をアルミニウム源粉末に対して過剰に用いると、速やかにチタン酸アルミニウム化反応(チタン酸アルミニウムマグネシウム化反応を含む)が進行するため有利である。
【0095】
<マグネシウム源粉末>
上記原料混合物は、マグネシウム源粉末を含有していてもよい。マグネシウム源粉末は、成形体を構成するマグネシウム元素を含む化合物の粉末であり、かかる化合物としては、例えば、マグネシア(酸化マグネシウム MgO)の粉末のほか、空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末が挙げられる。後者の例としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0096】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0097】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
【0098】
また、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることもできる。このような化合物としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl2O4)が挙げられる。なお、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いる場合、原料混合物中におけるアルミニウム源粉末のAl2O3(アルミナ)換算量および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物粉末に含まれるAl成分のAl2O3(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源粉末のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が35:65〜45:55、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0099】
本発明において、マグネシウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0100】
マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、マグネシウム源粉末のD50は3〜20μmの範囲内であることが好ましく、これにより、より均質なチタン酸アルミニウムマグネシウム系結晶の組織構造を形成することができる。均質な組織構造の形成は、耐熱性および機械的強度のムラの低減に寄与する。
【0101】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源粉末の含有量をこの範囲内に調整することにより、成形体の機械的強度および耐熱性を向上させ得る。
【0102】
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末が含まれる原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。
【0103】
<ケイ素源粉末>
上記原料混合物に含有されるケイ素源粉末は、主にチタン酸アルミニウム系結晶(例えばチタン酸アルミニウム結晶、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶など)からなる複合化されたケイ酸ガラス相を形成する化合物の粉末である。成形体にケイ酸ガラス相を含有させることにより該成形体の耐熱性を向上させることができる。ケイ素源粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)の粉末が挙げられる。
【0104】
また、ケイ素源粉末は、空気中で焼成することによりシリカ(SiO2)に導かれる化合物の粉末であってもよい。
かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、シリコン樹脂、長石、ガラスフリット、ガラスファイバーなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源粉末として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることも好ましい。
【0105】
ガラスフリットを用いる場合、得られる成形体の耐熱性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。本発明において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0106】
上記ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50質量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al2O3〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0107】
本発明において、ケイ素源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0108】
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、ケイ素源粉末のD50は1〜20μmの範囲内であるものを用いることが好ましく、これにより、原料混合物の成形体の充填率が向上し、機械的強度および耐熱性のより高い焼成体を得ることができる。
【0109】
本発明においては、良好な機械的強度および耐熱性を有する成形体を得るために、ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下とされ、好ましくは4質量%以下とされる。また、ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、2質量%以上とすることが好ましい。原料混合物に含まれる無機成分とは、成形体を構成する元素を含む成分であり、典型的には、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末である。ただし、原料混合物に含まれる添加剤(造孔剤、バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤等)が無機成分を含む場合、それらも含まれる。ケイ素源粉末の含有量が原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%を超える場合あるいは2質量%未満である場合、良好な機械的強度および耐熱性が得られない場合がある。
【0110】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびケイ素源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。
【0111】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。
【0112】
また、本発明では、上記マグネシアスピネル(MgAl2O4)などの複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料粉末として用いることができる。この場合、そのような化合物はそれぞれの金属源化合物を混合したものと同じであると考えることができ、このような考えに基づき、原料混合物中におけるアルミニウム源原料、チタニウム源原料、マグネシウム源原料およびケイ素源原料の含有量が前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内に調整される。
【0113】
また、原料混合物にはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウム自体が含まれていてもよく、例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、該チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタニウム源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
【0114】
<造孔剤>
また、上記原料混合物は造孔剤を含むことができる。本発明においては、造孔剤の粒径としては特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が10〜50μmの範囲内であるものが用いられる。
【0115】
造孔剤の種類(構成材料)は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類およびこれら樹脂類の中空粒子;アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、変性ポリアルキレンオキサイド、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体架橋物等の吸水性樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン、コーンスターチなどの植物系材料;グラファイト等の炭素材などが挙げられる。また、造孔剤は原料混合物に含まれる無機成分になり得るものであってもよく、このようなものとしては、例えば、アルミナ中空ビーズ、チタニア中空ビーズ、中空ガラス粒子などが挙げられる。これらの造孔剤は、市販品をそのまま用いることもできるし、適宜篩分けしたものを用いてもよい。
【0116】
原料混合物に含まれる造孔剤の含有量は、原料混合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.2〜25質量部である。
造孔剤の含有量が0.1質量部未満であると細孔が形成されず、造孔剤の添加効果を得ることができない。また、50質量部を超えると得られる成形体の強度が低下する。
【0117】
本発明においては、上記原料混合物を本発明の成形体の形状に成形した後、得られた成形体を焼成することにより、チタン酸アルミニウム系結晶相を含む成形体を得る。
本発明においては、上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末および任意で使用される造孔剤を含む原料混合物を成形して成形体を得た後、当該成形体を焼成することにより、チタン酸アルミニウム系結晶を含む成形体を得る。
【0118】
原料混合物の成形に用いる成形機としては、例えば、前述した押出成形機20などが挙げられる。押出成形を行なう際には、原料混合物に、例えば、バインダ、潤滑剤および可塑剤、分散剤、ならびに溶媒などの、造孔剤以外の他の添加剤を添加して成形することができる。
【0119】
上記バインダとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス;EVA、ポリエチレン、ポリスチレン、液晶ポリマー、エンジニアプラスチックなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
バインダの添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。
【0120】
上記潤滑剤および可塑剤としては、例えば、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。
潤滑剤および可塑剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、10質量部以下であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0121】
上記分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
分散剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0122】
また、上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。
溶媒の使用量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0123】
成形に供される原料混合物は、上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末および任意で使用される造孔剤、ならびに上記の各種他の添加剤を混合(混練)することにより得ることができる。
【0124】
成形体の焼成における焼成温度は、通常、1200℃以上、好ましくは1300℃以上である。また、焼成温度は、通常、1700℃以下、好ましくは1600℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時〜500℃/時である。ケイ素源粉末を用いる場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けると、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができるため有利である。焼成工程には、バインダや造孔剤等を燃焼により除去するための仮焼(脱脂)工程が含まれる。脱脂は、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(例えば、150〜600℃の温度範囲)になされる。脱脂工程においては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0125】
焼成は、通常、大気中、もしくは穏やかな燃焼を行なわせるためにより低い酸素分圧中で行なわれるが、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末、バインダや造孔剤等の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0126】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0127】
焼成に要する時間は、原料混合物の成形体がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、原料混合物の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。以上のようにして、主にチタン酸アルミニウム系結晶から構成される成形体を得ることができる。
【0128】
前記のようにして得られた本発明の成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.1mL/g以上であり、かつ、極大細孔半径が1μm以上であるのが好ましい。
【0129】
本発明の成形体は、耐圧強度が5daN以上であり、加熱前の成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体との耐圧強度の比が下記式(A)を満たし、かつ、前記夫々の成形体(加熱前の成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体)の耐圧強度の変動係数の比が下記式(B)を満たす。
CSa/CSb≧0.4 (A)
CVCSa/CVCSb≦2.5 (B)
(式中、CSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度であり、CSbは加熱前成形体の耐圧強度であり、CVCSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度の変動係数であり、CVCSbは加熱前成形体の耐圧強度の変動係数である。)
【0130】
(エチレンオキシド製造用触媒)
本発明の成形体は、エチレンオキシド製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、該触媒担体(成形体)に銀を担持させた触媒(以下、エチレンオキシド製造用触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、エチレンオキシドを効率よく製造することができる。
【0131】
触媒担体を構成する成形材料(担体材料)としては、特に制限されるものではなく、例えば、アルミナ、炭化珪素、チタニア、ジルコニア、マグネシア等の多孔性耐火物を用いることができる。好ましくは、触媒担体は、α−アルミナを主成分とするのがよく、具体的には、成形材料の全重量の90重量%以上がα−アルミナであるのがよい。
また、触媒担体には、シリカを含有させることもできる。シリカを含有させる場合、その含有量は、触媒担体の成形材料の全重量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0132】
なお、アルミナ等の成形材料にはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、エチレンオキシド製造用触媒は充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0133】
触媒担体は、10%を超える吸水率を有するものであることが、触媒成分(銀や後述する促進剤成分等)を含浸させ易い点で、好ましい。触媒担体の吸水率は、高いほど好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であるのがよい。ただし、触媒担体の吸水率があまりに高すぎると、触媒強度が低下する恐れがあるので、その上限は、通常80%以下、好ましくは70%以下であるのがよい。
【0134】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において細孔半径0.3μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。細孔半径0.3μm以上の細孔が0.05mL/g未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0135】
触媒担体は、窒素吸着一点法による比表面積測定において0.01〜10m2/gの比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が0.01m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(銀や後述する促進剤成分)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、エチレンオキシドの製造時にエチレンオキシド製造用触媒の活性部位とガスとの接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。一方、触媒担体の比表面積が10m2/gを超えると、生成したエチレンオキシドの逐次酸化が顕著となり、選択性が低下するおそれがある。
【0136】
エチレンオキシド製造用触媒は、触媒担体に、触媒成分として銀を担持させたものである。
銀の担持量は、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは5〜25重量%。さらに好ましくは8〜20重量%であるのがよい。銀の担持量が1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、銀の凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持された銀は触媒担体上で通常、金属銀の形態で存在するのであり、担持量は金属銀としての重量である。
【0137】
触媒担体に銀を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、銀塩、銀化合物、または銀錯体を適当な溶媒に溶解した銀溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。銀溶液の銀濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の銀が触媒担体に担持されるように適宜設定すればよい。
【0138】
エチレンオキシド製造用触媒は、さらに、希土類金属、マグネシウム、レニウムおよびアルカリ金属からなる群より選ばれる1種以上の促進剤成分をも含有することが、触媒性能を向上させるうえで、好ましい。加えて、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)を含有させると、エチレンの気相接触酸化において、副反応としてエチレンオキシドの異性化が起こるのを抑制することができるという利点も得られる。
【0139】
促進剤成分としては、特に、レニウムおよびアルカリ金属が好ましく、とりわけ、好ましいアルカリ金属としては、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、最も好ましいアルカリ金属はセシウムである。また、補助促進剤として、硫黄、タリウム、モリブデン、タングステン、クロムなどを併用することができ、特に、レニウムを促進剤成分として用いる場合には、これら補助促進剤の併用が望ましい。
【0140】
促進剤成分や補助促進剤の含有量は、その種類や組み合わせ、触媒担体の物性の違いなどによって異なるので、それらに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、レニウムの含有量は、金属として触媒全重量に対し、好ましくは10〜20000重量ppm、より好ましくは30〜10000重量ppmであるのがよい。他方、アルカリ金属の含有量は、金属として触媒全重量に対し、好ましくは10〜20000重量ppm、より好ましくは15〜10000重量ppmであるのがよい。なお、促進剤成分として含有させるアルカリ金属がナトリウムであり、触媒担体中にもナトリウムが含有されている場合には、その合計含有量が前記範囲内となるようにすることが望ましい。
【0141】
促進剤成分や補助促進剤を含有させるには、例えば、銀と同様に、所望の元素を含む塩、化合物、錯体等を適当な溶媒に溶解させた溶液(以下、「促進剤成分等含有液」と称することもある)を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、促進剤成分等含有液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、銀を担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、銀を担持させる際に同時に行ってもよいし、銀を担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、銀を担持させる際に同時に行うことが好ましい。ただし、促進剤成分としてレニウムを用い、かつ上述した補助促進剤を併用するときには、銀を担持させる前もしくは銀を担持させるのと同時に補助促進剤を含有させる(補助促進剤溶液を接触もしくは含浸させる)とともに、少なくとも触媒担体の一部に銀を担持させた後にレニウムを含有させる(レニウム溶液を接触もしくは含浸させる)ことが、触媒活性の点で望ましい。
【0142】
レニウムを促進剤成分とする場合、これを含んだ促進剤成分等含有液の調製に用いることのできるレニウムを含む塩、化合物、錯体等の例としては、ハロゲン化レニウムなどのレニウム塩、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物および酸等が挙げられる。これらの中でも、過レニウム酸塩が好ましく、より好ましくは過レニウム酸アンモニウムがよい。
他方、アルカリ金属を促進剤成分とする場合、これを含んだ促進剤成分等含有液の調製に用いることのできるアルカリ金属を含む塩、化合物、錯体等の例としては、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、重炭酸塩、修酸塩およびカルボン酸塩等が挙げられる。
【0143】
促進剤成分等含有液は、促進剤成分または補助促進剤とする元素ごとに調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた促進剤成分等含有液を用いるのがよい。さらには、銀溶液の中に促進剤成分または補助促進剤とする元素を含有させて、銀、促進剤成分および補助促進剤の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0144】
なお、エチレンオキシド製造用触媒には、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体に銀溶液または促進剤成分等含有液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0145】
(エチレンオキシドの製造方法)
エチレンオキシドの製造方法は、エチレンオキシド製造用触媒の存在下、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化する。エチレンオキシド製造用触媒は、固定床式反応装置等の反応装置や容器に充填して気相接触酸化反応に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくエチレンオキシドを生成させることができる。
【0146】
エチレンオキシドの製造方法は、エチレンオキシド触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、その反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃とし、反応圧力は、通常0〜40kg/cm2G、好ましくは10〜30kg/cm2Gとし、空間速度は、通常1,000〜30,000hr-1(STP)、好ましくは3,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。触媒に接触させる原料ガスとしては、例えば、エチレン0.5〜50容量%、酸素1〜20容量%、炭酸ガス0〜20容量%、残部の不活性ガス(窒素、アルゴン、水蒸気等)および低級炭化水素類(メタン、エタン等)からなり、さらに反応抑制剤としての二塩化エチレン、塩化ジフェニル等のハロゲン化物を0.1〜50容量ppm含有するものを用いることができる。また、分子状酸素含有ガスとしては、通常、空気、酸素および富化空気などが用いられる。
【0147】
(合成ガス製造用触媒I)
本発明の成形体は、合成ガス製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、本発明の合成ガス製造用触媒Iは、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、ニッケルが担持されている。
本発明の合成ガス製造用触媒Iを合成ガス製造に用いることで、合成ガスを効率よく製造することができる。
【0148】
ここで、合成ガスとは、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスであり、例えば、メタンガス、天然ガス、LPG、ナフサ等の炭化水素類を原料として、水蒸気改質法(SR法)、自己熱改質法(ATR法)、もしくはこれらを組合わせた複合改質法等によって工業的に製造されているガスのことをいう。
これら改質法においては、例えば炭化水素類がメタンである場合、下記式(C1)に示す反応(水蒸気改質反応)によって、水素と一酸化炭素とを含む混合ガス(合成ガス)が得られる。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (C1)
得られた合成ガスは、工業用水素、アンモニア、メタノール、炭化水素液体燃料(GTL)、ジメチルエーテル、都市ガス向けの中高カロリーガス製造用などの原料ガスとして利用される。
【0149】
本発明において、触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0150】
触媒担体(成形体)は、カルシウムを酸化物(CaO)換算で0.1〜30重量%含むものであることが好ましく、さらに好ましくは、この触媒担体中のカルシウムの少なくとも一部はアルミナと化合物を形成しているのがよい。これにより、触媒表面上への炭素析出を抑制することができる。触媒担体中のカルシウムとアルミナとが形成する化合物としては、例えば、各種アルミン酸カルシウム(例えば、CaO・6Al2O3(ハイボナイト)、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3など)が挙げられる。
【0151】
なお、触媒担体(成形体)は、触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0152】
触媒担体(成形体)は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.20mL/g以上であり、細孔半径0.01μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。全細孔容積が0.20mL/g未満であったり、細孔半径0.01μm以上の細孔が0.05mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0153】
触媒担体(成形体)は、窒素吸着一点法による比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルなど)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、合成ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0154】
本発明の合成ガス製造用触媒Iは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルを担持させたものである。
ニッケルの担持量は、触媒全重量に対して0.1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは1〜40重量%。さらに好ましくは2〜30重量%であるのがよい。ニッケルの担持量が0.1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、ニッケルの凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたニッケルは触媒担体上で通常、酸化物(酸化ニッケル)の形態で存在するのであり、担持量は酸化ニッケルとしての重量である。
【0155】
触媒担体にニッケルを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルの塩、化合物もしくは錯体等(硝酸ニッケルなど)を適当な溶媒に溶解したニッケル溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。ニッケル溶液のニッケル濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のニッケルが担持されるように適宜設定すればよい。例えば、硝酸ニッケルの溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させた場合には、その後、必要に応じて、乾燥、焼成を施すことにより、硝酸ニッケルを酸化ニッケルに転化させることができる。
【0156】
本発明の合成ガス製造用触媒Iは、さらに、白金族元素をも含有することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。とりわけ、白金族元素として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素を含有することが特に好ましい。
白金族元素の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0157】
白金族元素を含有させるには、例えば、ニッケルと同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた白金族元素含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、白金族元素含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、ニッケルを担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、ニッケルを担持させる際に同時に行ってもよいし、ニッケルを担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、ニッケルを担持させる際に同時に行うことが好ましい。
【0158】
白金族元素が複数である場合には、元素ごとに白金族元素含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた白金族元素含有溶液を用いるのがよい。さらには、ニッケル溶液の中に白金族元素を含有させて、ニッケルおよび白金族元素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
なお、担持された白金族元素は、酸化物、水酸化物、金属等の形態で、触媒担体の表面から1mm以内の深さ領域に60%以上存在することが望ましい。
【0159】
なお、本発明の合成ガス製造用触媒Iには、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体にニッケル溶液または白金族元素含有溶液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0160】
(合成ガスの製造方法)
本発明の合成ガスの製造方法は、本発明の合成ガス製造用触媒Iの存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させることにより、合成ガス(一酸化炭素と水素とを含む混合ガス)を得るものであり、例えば、炭化水素類がメタンである場合には、上述した式(C1)のような水蒸気改質反応によって、一酸化炭素と水素とが生成する。本発明の合成ガスの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C1)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、例えば、水蒸気改質法、自己熱改質法、もしくはこれらを組合わせた複合改質法が挙げられる。いずれの手法を採用した場合にも、本発明の合成ガス製造用触媒Iは、反応装置や容器に充填して合成ガスの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく合成ガスを生成させることができる。
【0161】
炭化水素類は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ等の1種または2種以上の中から、得ようとする合成ガスの組成(一酸化炭素と水素との比率)等に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、例えば、メタンガス、天然ガス(通常、メタンが主成分である)、LPG(通常、プロパンやペンタンが主成分である)、ナフサ等を用いることができる。
【0162】
本発明の合成ガスの製造方法は、本発明の合成ガス製造用触媒Iを用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、その反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜1,200℃、好ましくは500〜1,100℃とし、反応圧力は、通常10〜70bar、好ましくは15〜60barとすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、1,000〜10,000hr-1(STP)、好ましくは2,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。
【0163】
(合成ガス製造用触媒II)
本発明の成形体は、合成ガス製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、マグネシアスピネルを主成分とする触媒担体(成形体)にニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒IIは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、合成ガスを効率よく製造することができる。なお、合成ガスとは、前述した合成ガスと同様である。
【0164】
本発明において、触媒担体はマグネシアスピネルを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がマグネシアスピネルであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするマグネシアスピネル(MgAl2O4)は、酸化マグネシウム(MgO)およびα−アルミナ(α−Al2O3)のいずれか一方または両方を含有してもよい。
【0165】
触媒担体は、前記と同様に、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.20mL/g以上であり、細孔半径0.01μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。
【0166】
前記触媒担体は、窒素吸着一点法による比表面積測定において1m2/g以上の比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜100m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルなど)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、合成ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0167】
合成ガス製造用触媒IIは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルを担持させたものである。ニッケルの担持量は、前記と同様に、触媒全重量に対して0.1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは1〜40重量%。さらに好ましくは2〜30重量%であるのがよい。
その他は、前記した合成ガス製造用触媒Iと同様である。
【0168】
(水素製造触媒I)
本発明の成形体は、水素製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)にニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させた水素製造触媒Iは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、燃料電池などに使用される水素を効率よく製造することができる。
【0169】
水素としては、従来から、メタンガス、天然ガス(都市ガス)、プロパンガス、LPG、GTL合成液体燃料、軽油、重油、灯油、ナフサ等の各種炭化水素類を原料とし、これを、触媒の存在下、水蒸気改質法(SR法)、自己熱改質法(ATR法)、もしくはこれらを組合せた複合改質法等により改質することにより得られる水素リッチ改質ガスが使用されている。このような水素リッチ改質ガスは、例えば、メタンを原料とする場合、下記式(C2)に示す水蒸気改質反応によって水素と一酸化炭素の混合ガスを得、これを、必要に応じて、下記式(C3)に示すCO転化反応に付すことによって得られる。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (C2)
CO + H2O → CO2 + H2 (C3)
【0170】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0171】
触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0172】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、極大細孔半径が0.001μm以上であり、かつ累積細孔容積が0.10mL/g以上であるものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0173】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体のBET比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルや白金族元素など)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、水素製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0174】
水素製造触媒Iは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させたものである。
ニッケルの担持量は、触媒全重量に対して2〜60重量%であることが好ましい。より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%であるのがよい。ニッケルの担持量が2重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、60重量%を超えると、ニッケルの凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたニッケルは触媒担体上で通常、酸化物(酸化ニッケル)の形態で存在するのであり、前記担持量は酸化ニッケルとしての重量である。
【0175】
触媒担体にニッケルを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルの塩、化合物もしくは錯体等(硝酸ニッケルなど)を適当な溶媒に溶解したニッケル含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。ニッケル含有溶液のニッケル濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のニッケルが担持されるように適宜設定すればよい。例えば、硝酸ニッケルの溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させた場合には、その後、必要に応じて、乾燥、焼成を施すことにより、硝酸ニッケルを酸化ニッケルに転化させることができる。
【0176】
白金族元素は、ロジウム、ルテニウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。より好ましくは、2種以上の白金族元素を併用するのがよい。
白金族元素の含有量は、触媒全重量に対して0.05〜20重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜15重量%。さらに好ましくは0.1〜2重量%であるのがよい。白金族元素の担持量が0.05重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、20重量%を超えると、白金族元素の凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。2種以上の白金族元素を併用する場合には、その合計担持量が前記範囲であればよい。なお、担持された白金族元素は担体上で通常、酸化物、水酸化物、金属等の形態で存在するが、担持量は金属としての重量である。
【0177】
触媒担体に白金族元素を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルと同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた白金族元素含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。白金族元素が2種以上である場合には、元素ごとに白金族元素含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた白金族元素含有溶液を用いるのがよい。
【0178】
触媒成分としてニッケルと白金族元素の両方を担持させる場合には、前述したニッケル含有溶液と白金族元素含有溶液とをそれぞれ調製し、それらを順に触媒担体に接触もしくは含浸させてもよいが、好ましくは、ニッケルと白金族元素の両方を含有する溶液を調製し、ニッケルおよび白金族元素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0179】
なお、水素製造触媒Iには、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体にニッケル含有溶液、白金族元素含有溶液、またはニッケルと白金族元素の両方を含有する溶液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0180】
(水素の製造方法)
水素の製造方法は、水素製造触媒Iの存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させる事により、炭化水素類を改質し、水素として水素リッチ改質ガスを得るものである。例えば、炭化水素類がメタンである場合には、上述した式(C2)のような水蒸気改質反応によって、一酸化炭素を含む水素リッチ改質ガスが生成する。水素の製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C2)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、例えば、水蒸気改質法、自己熱改質法、もしくはこれらを組合せた複合改質法が挙げられる。いずれの手法を採用した場合にも、水素製造触媒Iは、反応装置や容器に充填して水素の製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく燃料電池用水素を生成させることができる。
【0181】
炭化水素類は、特に制限されないが、例えば、メタンガス、天然ガス(通常、メタンが主成分である)、プロパンガス、LPG(通常、プロパンやペンタンが主成分である)、GTL合成液体燃料、軽油、重油、灯油、ナフサ等を用いることができる。炭化水素類は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0182】
水素の製造方法は、水素製造触媒Iを用いて炭化水素類を改質する点を除けば、常法に従って行うことができる。したがって、前述した炭化水素類の改質に際し、その反応条件等は特に制限されるものではないが、例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜1,200℃、好ましくは500〜1,100℃とし、反応圧力は、通常10〜70bar、好ましくは15〜60barとすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、1,000〜10,000hr-1(STP)、好ましくは2,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。
【0183】
水素の製造方法においては、前述した通り炭化水素類と水蒸気とを反応させた後、必要に応じて、一酸化炭素を低減する処理を行うことができる。これにより、さらに水素濃度を高めることができるとともに、燃料電池の電極の被毒を抑制することができる。一酸化炭素を低減する処理としては、例えば、上述した式(C3)のCO転化反応のほか、吸着材を充填したPSA装置等により一酸化炭素を吸着分離する処理などが挙げられる。
【0184】
(水素製造触媒II)
本発明の成形体は、水素製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、マグネシアスピネルを主成分とする該触媒担体(成形体)にニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させた水素製造触媒IIは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、燃料電池などに使用される水素を効率よく製造することができる。
【0185】
触媒担体はマグネシアスピネル(MgAl2O4)を主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がマグネシアスピネルであるのがよい。かかる触媒担体は、酸化マグネシウム(MgO)およびα−アルミナ(α−Al2O3)のいずれか一方または両方を含有していてもよい。
その他は、前記した水素製造触媒Iと同様である。
【0186】
(ジメチルエーテル改質触媒)
本発明の成形体は、ジメチルエーテルの改質の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に銅を担持させた触媒(以下、ジメチルエーテル改質触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、ジメチルエーテルの改質を効率よく製造することができる。
【0187】
ジメチルエーテルは、工業用水素、アンモニア、メタノールなどの各種原料ガスの製造、および燃料電池用水素等として利用されている水素含有ガスを製造するために、原料炭化水素とともに、下記反応式(C4)、(C5)に示すような水蒸気改質反応に使用される。
ジメチルエーテルを原料炭化水素類に使用することの利点は、脱硫処理が不要であり、かつ、常温でプロパンよりも低い圧力で液化するため、貯蔵や運搬等の取扱いが容易なこと等が挙げられる。
CH3OCH3 + H2O → 2CH3OH (C4)
CH3OH + H2O → 3H2 + CO2 (C5)
【0188】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、ベーマイト、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0189】
なお、触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0190】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0191】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは、2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体のBET比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(銅)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、水素含有ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0192】
ジメチルエーテル改質触媒は、上述した触媒担体に、触媒成分として銅を担持させたものである。銅の担持量は、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは2〜25重量%であるのがよい。銅の担持量が1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持された銅は触媒担体上で通常、金属銅の形態で存在するのであり、担持量は金属銅としての重量である。
【0193】
触媒担体に銅を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、銅塩、銅化合物等を適当な溶媒に溶解した銅溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。銅溶液の銅濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の銅が担持されるように適宜設定すればよい。
銅化合物としては、例えば酢酸銅等の有機酸の水溶性塩、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。
【0194】
ジメチルエーテル改質触媒は、さらに、亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。
亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。
【0195】
亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有させるには、例えば、銅と同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のいずれか1種類以上の含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、上記した各含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、銅を担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、銅を担持させる際に同時に行ってもよいし、銅を担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、銅を担持させる際に同時に行うことが好ましい。
【0196】
元素が複数である場合には、元素ごとに含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた含有溶液を用いるのがよい。さらには、前記した銅溶液の中に亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有させて、銅および亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0197】
なお、ジメチルエーテル改質触媒には、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体に銅溶液または亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0198】
(水素含有ガスの製造方法)
水素含有ガスの製造方法は、前記したジメチルエーテル改質触媒の存在下、ジメチルエーテルと水蒸気とを反応させることにより、水素含有ガス(二酸化炭素と水素とを含む混合ガス)を得るものであり、上述した式(C4)、(C5)のような水蒸気改質反応によって、二酸化炭素と水素とが生成する。水素含有ガスの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C4)、(C5)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。ジメチルエーテル改質触媒は、反応装置や容器に充填して水素含有ガスの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく水素含有ガスを生成させることができる。
【0199】
水素含有ガスの製造方法は、ジメチルエーテル改質触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常100〜700℃、好ましくは150〜600℃とし、反応圧力は、常圧とすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、10〜1,000,000hr-1(STP)、好ましくは100〜10,000hr-1(STP)とすることができる。
【0200】
尚、反応管に供給する水蒸気とジメチルエーテル(DME)との比(H2O/DME)は、モル比で1〜20、好ましくは3〜10であるのが良い。
【0201】
(ジメチルエーテル製造用触媒)
本発明の成形体は、所定の成形材料からなるジメチルエーテル製造用触媒として好適に使用することができる。
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、さらにシリカとマグネシウム元素とを含有する。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒をジメチルエーテル製造に用いることで、ジメチルエーテルを効率よく製造することができる。
【0202】
ジメチルエーテル製造は、下記式(C6)に示すように、ジメチルエーテル〔CH3OCH3〕は、ジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノール〔CH3OH〕を脱水反応させて製造される。
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (C6)
【0203】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、アルミナを主成分とする。アルミナは、アルミニウムの酸化物であって、通常は化学式(C7)
Al2O3・nH2O〔0≦n≦0.5〕 (C7)
で示されるものであり、χ、γ、ηなどの結晶構造を有する活性アルミナが用いられる。活性アルミナは、χ、γ、η以外の結晶構造、例えばκ、δ、ρなどの結晶構造を含んでいてもよい。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるアルミニウム含有量は、ジメチルエーテル製造用触媒の全体を基準として酸化物(Al2O3)換算で通常80重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
【0204】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、シリカを含有する。これにより、例えば反応時、高温高圧水蒸気雰囲気に曝された際にBET比表面積が低下することを抑制できる。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるシリカの含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で、0.5重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.8重量部以上である。シリカの含有量が前記範囲よりも少ないと、高温高圧水蒸気雰囲気下においてアルミナの水酸化アルミニウム化が進行し、ジメチルエーテル製造用触媒のBET比表面積が低下する傾向がある。一方、シリカの含有量の上限は特に制限されないが、一定量を超えると、それ以上過剰に含有させてもBET比表面積の低下抑制効果のさらなる向上は期待できないので、経済的観点から、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下であるのがよい。
【0205】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒にシリカを含有させる際のシリカ源としては、特に制限されないが、例えば、酸性シリカゾル、中性シリカゾルなどのシリカゾル液、シリカ粉末、オルトケイ酸テトラエチルなどのケイ素アルコキシド等を用いることができる。シリカ源としては、これらの中でも特に、アルミニウムおよびマグネシウム以外の金属分を含まないものが好ましい。
【0206】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、マグネシウム元素を含有する。これにより、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させることが可能になる。なお、本発明のジメチルエーテル製造用触媒中に含まれるマグネシウム元素は、通常、酸化マグネシウム(MgO)の形態となっている。
【0207】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるマグネシウム元素の含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、Mg換算で、0.01〜1.2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。マグネシウム元素の含有量が前記範囲よりも少ないと、マグネシウム元素の含有効果が不充分となり、長時間反応に供すると充分に反応率を維持できないおそれがある。一方、マグネシウム元素の含有量が前記範囲よりも多いと、反応開始時(初期)の反応率が低下する傾向があり、効率的にジメチルエーテルを製造するうえでは不利となる場合がある。
【0208】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒にマグネシウム元素を含有させる際のマグネシウム源としては、特に制限されないが、例えば、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の各種マグネシウム塩のほか、酸化マグネシウムの粉末等を用いることができる。
【0209】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、チタン、セリウム、ジルコニウム、亜鉛など、アルミニウムおよびマグネシウム以外の金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、通常、酸化物の形態で含まれる。
【0210】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、ナトリウム含有量が触媒全体を基準として酸化物(Na2O)換算で、通常0.01重量%以下であり、理想的にはナトリウムを実質的に含まない(0重量%)のがよい。ナトリウム含有量が0.01重量%を超えると、反応率が低下する傾向がある。
【0211】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、その使用前においてBET比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、通常は300m2/g以下である。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積が、通常0.3cm3/g以上であり、通常は3.0cm3/g以下である。また、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積が、1.8nm〜100μmの細孔の累積容積に対して10%〜60%、さらには15%〜50%程度であることが好ましい。
【0212】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、例えば、i)シリカ源およびマグネシウム源を含む溶液(好ましくは水溶液)をアルミナ前駆体に充分に吸収させた後、本発明の成形体の形状に成形し、焼成する方法、ii)シリカ源、マグネシウム源およびアルミナ前駆体を予め粉体として混合し、本発明の成形体の形状に成形した後、焼成する方法、等により製造することができる。いずれの方法においても、アルミナ前駆体としては、特に制限はなく、従来公知の方法で得られたものを使用してもよいし、市販の水酸化アルミニウムや水酸化酸化アルミニウム等を使用してもよい。また、焼成に際しては、特に制限はないが、焼成温度は通常400℃〜1100℃程度、焼成時間は通常2時間〜24時間程度とし、通常、空気雰囲気中で行われる。
【0213】
i)の方法において、前記溶液をアルミナ前駆体に吸収させるには、前記溶液中にアルミナ前駆体を含浸させるか、アルミナ前駆体に前記溶液をスプレー等により塗布するなどの手段を採用すればよい。また、前記i)の方法において、前記シリカ源および前記マグネシウム源を含む溶液をアルミナ前駆体に吸収させる際には、前記シリカ源と前記マグネシウム源の両方を含む溶液を用いてもよいし、前記シリカ源を含む溶液と前記マグネシウム源を含む溶液とを各々別に吸収させるようにしてもよい。他方、前記ii)の方法における混合手段は、特に制限されるものではなく、例えば、ミキサーのように粉体を攪拌する手段を採用してもよいし、ミルのように粉砕しながら混合する手段を採用してもよい。
なお、前記i)の方法と前記ii)の方法とは、適宜組合せることもでき、例えば、前記シリカ源および前記マグネシウム源の一方を粉体としてアルミナ前駆体と混合した後、得られた混合物に前記シリカ源および前記マグネシウム源のもう一方の溶液を吸収させるようにしてもよい。
【0214】
なお、本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法は、上述の方法に限定されるものではなく、アルミナ前駆体を本発明の成形体の形状に成形し、焼成した後にシリカ源およびマグネシウム源を付与する方法でも製造することができる。
【0215】
(ジメチルエーテルの製造方法)
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下、メタノールの脱水反応によりジメチルエーテルを得るものであり、上述した式(C6)のような脱水反応によって生成する。本発明のジメチルエーテルの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C6)の脱水反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。具体的には、メタノールを気化させたメタノールガスを脱水反応温度で触媒と接触させればよい。本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、反応装置や容器に充填してジメチルエーテルの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくジメチルエーテルを生成させることができる。
【0216】
メタノールガスは、全量がメタノールである純メタノールガスであってもよいが、水(水蒸気)や、エタノール、イソプロパノール等のようなメタノール以外のアルコールを含んでいてもよい。メタノールとこれら水およびアルコールとの合計量に対するメタノールの含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。また、メタノールガスは通常、窒素(N2)、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスなどで希釈されて用いられる。メタノールの気化は、通常反応前に蒸発器などにより行われる。
【0217】
メタノールの脱水反応の際の反応温度は、通常250℃以上、好ましくは270℃以上であり、通常450℃以下、好ましくは400℃以下である。反応圧力は、温度により異なるが、通常1×105Pa以上であり、通常50×105Pa以下、好ましくは30×105Pa以下である。
【0218】
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器を用いて行われ、そのときのメタノールのGHSV(ガス空間速度)は通常500h-1以上、150000h-1以下である。
反応により得られたジメチルエーテルは、そのまま使用することもできるが、必要に応じて、蒸留などの通常の方法で精製して使用してもよい
【0219】
(エチルベンゼン脱水素触媒)
本発明の成形体は、エチルベンゼン脱水素反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)に鉄を担持させた触媒(以下、エチルベンゼン脱水素触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、エチルベンゼン脱水素反応を効率よく促進することができる。
【0220】
エチルベンゼン脱水素反応とは、例えば、下記式(C8)に示すように、エチルベンゼンを触媒等で脱水素反応させてスチレンを生成させる反応をという。
C6H5C2H5 → C6H5C2H3 + H2 −113kJ/mol (C8)
【0221】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶層は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0222】
触媒担体としてのアルミナは、通常酸性点を有しているために炭素質物質の析出を促進し、スチームとの水性ガス反応による炭素質物質の除去が不充分であることが考えられるので、アルミナ担体に塩基性物質を添加し、熱処理することによって、その酸性点を中和しておくのが好ましい。
塩基性物質によるアルミナ担体の改質は、成形前および成形後のいずれでもよく、成形前に行う場合には、アルミナ粉末と塩基性物質とを混合し、混練後、成形して熱処理する。また、成形後に行う場合には、アルミナ成形体に塩基性物質を含浸、担持させた後、熱処理すれば良い。これらの操作は用いる塩基性物質の水溶性の難易等に応じ、適宜選択すれば良い。
【0223】
アルミナを改質するための塩基性物質としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、稀土類金属化合物等を掲げることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが、稀土類金属としてはランタン、セリウム等がそれぞれ使用可能である。
【0224】
塩基性物質の担持量は、全成分を酸化物に換算した場合、0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%である。
【0225】
塩基性物質を含有した担体の成形体は、ついで300〜1000℃、好ましくは350℃〜800℃で焼成する。
【0226】
塩基性物質を含有した触媒担体であるアルミナ成形体に対しては、鉄化合物を担持させ、熱処理する。鉄化合物としては、塩化鉄、硝酸鉄、水酸化鉄、硫酸鉄などが用いられる。これらの化合物は、水溶液の形態で、前記したアルミナ成型体に含浸法、浸漬法、スプレー法等によって担持され、ついで乾燥、焼成することによって最終触媒が得られる。最終触媒調製における焼成温度は500℃〜1000℃、好ましくは600℃〜900℃の範囲が適当である。
【0227】
エチルベンゼン脱水素触媒における鉄の担持量は、触媒全重量に対して酸化物(Fe2O3)換算で5〜15重量%、好ましくは6〜10重量%であるのがよい。鉄の担持量が5重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、15重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。
【0228】
エチルベンゼン脱水素触媒は、さらに、Cs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を担持することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。前記したCs、Mg、Ba、La等の酸化物の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して1〜6重量%、さらに好ましくは2〜5重量%であることが好ましい。
【0229】
前記したCs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を担持させるには、鉄化合物を担持させる前に行ってもよいし、鉄化合物を担持させる際に同時に、もしくは鉄化合物を担持させた後に行ってもよい。
【0230】
元素が複数である場合には、元素ごとに含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた含有溶液を用いるのがよい。さらには、前記した鉄化合物溶液の中にCs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を含有させて、鉄化合物およびCs、Mg、Ba、La等の酸化物の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0231】
エチルベンゼン脱水素触媒は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0232】
また、エチルベンゼン脱水素触媒は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましく、0.5〜300m2/gであるのがより好ましい。触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(鉄化合物)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、スチレン製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0233】
(スチレンの製造)
スチレンの製造方法は、前記したエチルベンゼン脱水素触媒の存在下、スチームで希釈されたエチルベンゼンを脱水素反応させることにより、スチレンを得るものであり、上述した式(C8)のような脱水素反応によって生成する。スチレンの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C8)の脱水素反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。エチルベンゼン脱水素触媒は、反応装置や容器に充填してスチレンの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくスチレンを生成させることができる。
【0234】
スチレンの製造方法は、エチルベンゼン脱水素触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、脱水素反応を適用する場合には、反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜800℃、好ましくは500〜700℃とし、反応圧力は0〜1MPa、好ましくは0.001〜0.5MPaとすることができる。また、LHSV(液空間速度)は、通常、0.1〜2.0h-1、好ましくは0.2〜1.5h-1とすることができる。
【0235】
また、反応管に供給するスチーム(STM)とエチルベンゼン(EB)との比(STM/EB)は、モル比で1.0〜20.0、好ましくは2.0〜18.0であるのが良い。
【0236】
このようにして、エチルベンゼン脱水素触媒を用いれば、高い収率で効率よくスチレンを製造できる。
【0237】
(選択的水素添加用触媒)
本発明の成形体は、選択的水素添加反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)にパラジウムを担持させた触媒(以下、選択的水素添加触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、選択的水素添加反応を効率よく促進することができる。
【0238】
触媒担体は、アルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶層は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0239】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0240】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(パラジウム)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、オレフィン化合物類の精製時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0241】
選択的水素添加触媒は、上述した触媒担体に、触媒成分としてパラジウムを担持させたものである。パラジウムの担持量は、金属パラジウムとして、触媒全重量に対して0.01〜5重量%であることが好ましい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、5重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するのであり、担持量は金属としての重量である。
【0242】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアンミンパラジウム類等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。
【0243】
(選択的水素添加によるオレフィン化合物類の精製)
オレフィン化合物類の精製方法は、前記した選択的水素添加触媒の存在下、ナフサのスチームクラッキング等で得られるオレフィン化合物類中に少量存在する高不飽和炭化水素化合物類であるアセチレン系炭化水素とジオレフィンを、選択的に水素添加するものである。
【0244】
オレフィン化合物には、エチレン、プロピレン、ブテン等が含まれ、アセチレン系炭化水素には、アセチレン、メチルアセチレン、エチルアセチレン等が含まれ、ジオフィレンには、プロパジエン、ブタジエン等が含まれる。
【0245】
オレフィン化合物類の精製方法で採用しうる具体的手法は、後述する反応式の水素添加反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。選択的水素添加触媒は、反応装置や容器に充填してオレフィン化合物類の精製方法に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくアセチレン系炭化水素とジオレフィンを選択的に水素添加して精製除去することができる。
【0246】
オレフィン化合物類の精製方法は、選択的水素添加触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件は気相反応と液相反応があり、また気相についてはフロントエンド方式とテールエンド方式がある。以下にその分類を示す。
【0247】
エチレン、プロピレンの混合オレフィン中のアセチレン、プロパジエン、メチルアセチレンの選択的水素添加の反応式は以下に示すものである(気相反応、フロントエンド方式)。
(アセチレン) C2H2 + H2 → C2H4
(メチルアセチレン) C3H4 + H2 → C3H6
(プロパジエン) C3H4 + H2 → C3H6
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、50〜150℃、反応圧力は0.5〜4MPa、GHSV(ガス空間速度)は、4000〜8000h-1であるのが良い。
【0248】
エチレンとプロピレンを分離した後、エチレン中のアセチレンをエチレンに選択的水素添加する反応はテールエンド方式の気相反応である。
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、20〜150℃、反応圧力は0.1〜3MPa、GHSV(ガス空間速度)は2000〜3500h-1であり、反応管に供給する水素/アセチレンのモル比は、1.0〜3.0であるのが良い。
【0249】
プロピレン中のプロパジエン、メチルアセチレンの、気相反応または液相反応による選択的水素添加の反応式は以下に示す通りである。
(メチルアセチレン) C3H4 + H2 → C3H6
(プロパジエン) C3H4 + H2 → C3H6
気相反応の場合、反応温度は通常、50〜120℃、反応圧力は0.4〜3MPa、GHSV(ガス空間速度)は1000〜3000h-1であり、(反応管に供給する水素)/(プロパジエン+メチルアセチレン)のモル比は、3.0以下であるのが良い。
また、液相反応の場合、反応温度は通常、20〜40℃、反応圧力は2〜7MPa、LHSV(液空間速度)は0.1〜10h-1であり、(反応管に供給する水素)/(プロパジエン+メチルアセチレン)のモル比は3.0以下であるのが良い。
【0250】
ブテン中のブタジエン、エチルアセチレンの選択的水素添加、および分解ガソリン中のジエン類の液相反応による選択的水素添加反応式は以下に示す通りである。
(ブタジエン) C4H6 + H2 → C4H8
(エチルアセチエン) C4H6 + H2 → C4H8
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、40〜150℃、反応圧力は1〜7MPa、LHSV(液空間速度)は0.1〜10h-1であり、(反応管に供給する水素)/(液体原料)の容積比は50〜350であるのが良い。
【0251】
(酸化触媒)
本発明の成形体は、酸化反応の触媒担体として好適に使用することができる。アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に白金族元素を担持させた触媒(以下、酸化触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、酸化反応を効率よく促進することができる。
【0252】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0253】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0254】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(白金族元素)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、排ガスの酸化分解時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0255】
酸化触媒は、上述した触媒担体に、白金族元素を担持させたものである。白金族元素はルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金から選ばれる金属であり、特にパラジウムを担持させたものが好ましい。
【0256】
パラジウムの担持量は、金属パラジウム換算で、触媒全重量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜40重量%、更に好ましくは0.01〜20重量%であることがよい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するのであり、担持量は金属としての重量である。また、他の白金族元素もパラジウムとほぼ同様の担持量でよい。
【0257】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアミンパラジウム類等の水溶性塩等が使用できる。
【0258】
<各種排ガスの酸化分解方法>
各種排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、各種排ガスを、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0259】
酸化分解方法で採用しうる具体的手法は、後述する各反応式の酸化分解反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。酸化触媒は、酸素の共存下にて、反応装置や容器に充填して各種排ガスの酸化分解方法に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく各種排ガスを酸化分解することができる。
【0260】
(ガス状含フッ素化合物の酸化分解方法)
ガス状含フッ素化合物の酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下で、パーフルオロ化合物およびフロンから選ばれる1種または2種以上の混合物であるガス状含フッ素化合物を、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0261】
ガス状含フッ素化合物には、フロンと、フッ化窒素、フッ化炭素、フッ化硫黄、フッ化炭化水素等を総称するパーフルオロ化合物と呼ばれる化合物がある。
フロンは、地球温暖化の要因であることが懸念されているにも係わらず、各種製造現場特に半導体製造工場から大気に排出されており、また半導体製造現場におけるエッチング工程や洗浄工程で良く使用されているパーフルオロ化合物も、地球温暖化係数が二酸化炭素の1000倍以上と大きく、その大気への排出はフロン同様、今後規制される可能性が非常に高い化合物である。さらに、パーフルオロ化合物は、フロンに比して分解がより困難なことも問題となっている。
【0262】
パーフルオロ化合物およびフロンから選ばれる1種または2種以上の混合物であるガス状含フッ素化合物中の四フッ化メタン、六フッ化エタン、八フッ化プロパンの酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(四フッ化メタンの分解) CF4 + 2H2O → CO2 + 4HF
(六フッ化エタンの分解) C2F6+1/2O2+3H20→ 2CO2+6HF
(八フッ化プロパンの分解)C3F8 + O2 + 4H2O → 3CO2+8HF
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、通常300〜1000℃、好ましくは400〜900℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、50000h-1以下、好ましくは100〜10000h-1であるのがよい。
【0263】
反応ガス中に含まれる含フッ素化合物の濃度は、3容量%以下とするのが良い。また、3容量%以上含まれる場合には、空気、窒素等の希釈ガスを添加して、濃度3容量%以下となるようにするのが良い。これは、反応ガス中に含まれる含フッ素化合物濃度が3容量%以上であると、触媒寿命に悪影響を与えることがあるからである。この他、反応ガス中には、酸素と水を含ませるが、このうち酸素は、パーフルオロ化合物の炭素を二酸化炭素および一酸化炭素に変換するために必要な量であれば特に制限はなく、空気が最も望ましい酸素源である。
水は、分解反応で生成するハロゲンをフッ化水素として触媒系外に排出するのに必要な成分であるだけでなく、アルミナ中のアルミニウムがフッ化アルミニウムとして触媒系外に逃散するのを抑制する働きをも有する。水の量は反応ガス中に含まれるハロゲン量と同量以上10倍以内すなわち、CF4であれば4〜40モル倍、C2F6であれば6〜60モル倍、C3F8であれば8〜80モル倍とすれば好適な結果を得ることができる。
【0264】
(一酸化炭素および水素を含む排ガスを酸化分解する方法)
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0265】
半導体製造工程において種々のガスが使用されるようになり、これらの工程からはCOやH2といった可燃性ガスが排出されることが多い。COは、可燃性ガスである上に、毒性が強く人体に有害であるため、これを含むガスを大気中に放出する前に処理が必要である。またH2は有害ガスではないが、COと同じく可燃性ガスであり、処理が必要である。
【0266】
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法は、CO及びH2を含む被処理ガスを、酸素の共存下で、酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中のCO及びH2は次式の反応によって酸化される。
一酸化炭素および水素を含む排ガス中の一酸化炭素、水素の酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(一酸化炭素の分解) CO + 1/2O2 → CO2
(水素の分解) H2 + 1/2O2 → H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、室温〜300℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、1〜20000h-1であるのがよい。
【0267】
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法において、上述の酸化触媒によるCO及びH2の酸化は、酸素の共存下で行う。酸素の添加量としては、排ガス中に含まれるCO及びH2を酸化するために必要なO2量と等量、好ましくは等量の2倍量程度の酸素を被処理ガスに添加することが好ましい。酸素添加の手段としては、空気を排ガス中に混合することによって行うことができる。
【0268】
(酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法)
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0269】
半導体工業における化合物半導体の成膜工程などで排出される酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスは、人が高濃度の蒸気を吸入すると中毒を起こす恐れがあり、また、爆発混合ガスを形成したり、静電気を帯電しやすく着火の危険性がある可燃性ガスのため、酸化分解させる処理が必要である。
【0270】
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、酸素の共存下で、酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中の酢酸n−ブチルは次式の反応によって二酸化炭素と水に酸化される。
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガス中の酢酸n−ブチルの酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(酢酸n−ブチルの分解)
CH3COOC4H9 + 8O2 → 6CO2 + 6H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、200〜400℃、好ましくは250〜350℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、100〜1000h-1であるのがよい。
【0271】
処理することができる排ガスの成分としては、半導体工業では、酢酸n−ブチル以外にも、n−オクタン、乳酸エチル、テトラヒドロフランなどがある。いずれも常温で液体であり、他の分野においても、常温で液体の有機化合物であれば本発明で処理することができる。
【0272】
(有機金属化合物を含む排ガスの酸化分解方法)
有機金属化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0273】
半導体工業における化合物半導体の反応工程、特に、MOCVD(有機金属気相堆積法)や他のCVD(化学気相成長、化学気相蒸着)プロセスにおいて、有機金属化合物を反応原料として用いる反応工程から排出される有機金属化合物を含む排ガスは、その液体原料、固体原料及びこれらの溶媒として用いる有機溶媒が、毒性が高いかあるいは安全性が確認されていないものが多い。そのため、使用後、上記の排ガスは、大気に放出するに先だって浄化処理する必要があった。
【0274】
酸化触媒は、酸素の共存下にて、有機金属化合物を含む有毒ガスを酸化分解することにより、浄化処理を行うものであり、有機金属化合物について特に制限されず、且つ、一般に浄化処理方法であった湿式法、燃焼法のように、装置の大型化、使用した吸収液の後処理、燃焼状態を維持するための高エネルギーコストといった問題も解決することが可能である。
【0275】
(アンモニアやアミン等の含窒素ガスを含む排ガスの酸化分解方法)
アンモニアやアミン等の含窒素ガスを含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0276】
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、150〜500℃、好ましくは200〜400℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、100〜50000h-1、好ましくは1000〜30000h-1であるのがよい。
【0277】
酸化触媒は、酸素の共存下、アンモニアやアミン等の含窒素ガスの他に、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、炭化水素類、一酸化炭素等の揮発性有機化合物(VOC)を含有した排ガス、例えば一般の工場や家庭から排出されるアンモニア及びアミン類等を含む排ガスの脱臭に用いることが可能である。特に、含窒素成分が1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下、その他揮発性有機化合物成分を1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下の排ガスの脱臭に用いると、本発明の効果が十分に発揮され得る。
【0278】
(炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法)
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、炭化水素を含み、酸素を還元性物質の完全酸化に必要な量よりも過剰に含む燃焼排ガスなどの排ガスを、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0279】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスは、例えば火力発電所や各種工場から多く排出されており、上記の排ガスは人体や環境に悪影響を与えるため、浄化処理が必要である。
例えば、炭化水素は、人が炭化水素の蒸気を吸引することで、急性の神経症状を発生したり、シックハウス症候群など慢性症状を引き起こす場合があるため、有害であるし、最も単純な構造の炭化水素であるメタンは、地球温暖化に関与する温室効果ガスである。
【0280】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法は、炭化水素を含み、酸素を還元性物質の完全酸化に必要な量よりも過剰に含む燃焼排ガスなどの排ガスを、酸素の共存下で、前記した酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中の炭化水素は次式の反応によって酸化される。
(炭化水素の分解)
CnHm +(n + 1/4m)O2 → nCO2 + 1/2mH2O
また、被処理ガスがメタンの場合、反応式は以下に示すものである。
(メタンの分解) CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、200℃〜350℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、1000〜10000h-1であるのがよい。
【0281】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法において、被処理ガス中の酸素濃度が極端に低い場合には、反応速度が低下するので、体積基準の酸素濃度として、2%以上であり、かつガス中の炭化水素などの還元性成分の酸化当量の5倍以上の酸素が存在することが好ましい。このとき排ガス中の酸素濃度が十分高くないときには、あらかじめ所要の量の空気を混ぜてもよい。
【0282】
(窒素酸化物除去触媒)
本発明の成形体は、窒素酸化物除去反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に白金族元素を担持させた触媒(以下、窒素酸化物除去触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、酸化反応を効率よく促進することができる。
【0283】
各種燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する方法として選択的接触還元法が広く用いられている。この方法は、アンモニア(NH3)、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを還元剤として、各種燃焼排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素(N2)、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)などに分解して除去するものである。この反応は、還元剤としてアンモニア(NH3)を用いる場合には以下の反応式(C9)〜(C11)で、還元剤として水素(H2)を用いる場合には以下の反応式(C12)、(C13)で、還元剤として一酸化炭素(CO)を用いる場合には以下の反応式(C14)で、還元剤として炭化水素(HC)のうち、例えばメタン(CH4)を用いる場合には以下の反応式(C15)、(C16)で、それぞれ表される。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O (C9)
6NO2+8NH3 → 7N2+12H2O (C10)
NO+NO2+2NH3 → 2N2+3H2O (C11)
2NO+2H2 → N2+2H2O (C12)
2NO2+4H2 → N2+4H2O (C13)
2NO+2CO → N2+2CO2 (C14)
4NO+CH4 → 2N2+2H2O+CO2 (C15)
2NO2+CH4 → N2+2H2O+CO2 (C16)
【0284】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔質耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、ρ型、χ型、γ型、η型、擬γ型、κ型およびδ型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0285】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0286】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が100m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(白金族元素)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、触媒の活性部位と排ガス中の窒素酸化物との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0287】
窒素酸化物除去触媒は、上述した触媒担体に、白金族元素を担持したものである。白金族元素はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、特に、パラジウムを担持させたものが好ましい。
【0288】
パラジウムの担持量は、金属パラジウム換算で、触媒全重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%であることがよい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、10重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。また、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するものであり、担持量は金属としての重量である。また、他の白金族元素もPdとほぼ同様の担持量でよい。
【0289】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム塩やパラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアンミンパラジウム類等の水溶性塩等が使用できる。
【0290】
窒素酸化物除去触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、銀、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデンなどの金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、通常、酸化物の形態で含まれる。
【0291】
(排ガス中の窒素酸化物の除去方法)
排ガス中の窒素酸化物の除去方法は、前記した窒素酸化物除去触媒の存在下、還元剤で排ガス中の窒素酸化物を分解除去するものである。
還元剤としては、例えば上述したアンモニア、水素、一酸化炭素、炭化水素類(メタン系)等が挙げられる。
【0292】
すなわち、窒素酸化物除去方法は、前記した窒素酸化物除去触媒の存在下、アンモニアなどの還元剤の共存下で、上述した式(C9)〜(C11)のような反応によって窒素酸化物を分解除去するものである。窒素酸化物の分解除去方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C9)〜(C16)の選択的接触還元法に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。窒素酸化物除去触媒は、反応装置や容器に充填して排ガス中の窒素酸化物除去に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく排ガス中の窒素酸化物を分解除去することができる。
【0293】
排ガス中の窒素酸化物は、一酸化窒素、二酸化窒素およびこれらの混合物であり、その濃度は通常0.001〜5容量%である。なお、排ガスは窒素酸化物の他に水や二酸化炭素なども含む。
【0294】
排ガス中の窒素酸化物の分解の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応圧力は、通常1×105Pa以上であり、通常50×105Pa以下、好ましくは30×105Pa以下である。
【0295】
排ガス中の窒素酸化物の分解反応は、通常、多管式または多管式でない固定床反応器を用いて行われ、そのときの窒素酸化物を含む排ガスのGHSV(ガス空間速度)は、通常100h-1以上、100000h-1以下である。
【0296】
(脱硫触媒)
本発明の成形体は、水素化脱硫反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)に周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の元素を担持させた触媒(以下、脱硫触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、脱硫反応を効率よく促進することができる。
【0297】
水素化脱硫反応は、水素の共存下、石油系炭化水素留分中の硫黄化合物を、100〜600℃の温度、1〜20MPaの圧力、0.1〜20/時の液空間速度(LHSV)、0.01〜2000Nm3/m3の水素/原料油の供給速度、の反応条件で反応させ除去するものであり、この反応は以下の反応式(C17)で表される。
R‐SH+H2 → R‐H+H2S (C17)
上記式において、Rは炭化水素基である。
【0298】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔質耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型およびθ型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0299】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が100m2/g未満であると、触媒の活性部位と石油系炭化水素中の硫黄化合物との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0300】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0301】
脱硫触媒は、上述した担体に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素を担持したものである。周期律表第VIA族の元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)から選ばれる金属であり、特にモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)を担持させたものが好ましい。周期律表第VIII族の元素としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、特に、コバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)を担持させたものが好ましい。
【0302】
周期律表第VIA族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物元素換算で1〜20重量%、好ましくは2〜18重量%、更に好ましくは5〜15重量%であることがよい。第VIA族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、20重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、第VIA族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、モリブデンおよびタングステンの担持比率は1:1でよい。
また、周期律表第VIII族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物換算で1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは3〜7重量%であることがよい。なお、第VIII族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、10重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。また、第VIII族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、コバルトおよびニッケルの担持比率は1:1でよい。
なお、周期律表第VIA族元素および第VIII族元素は、その一方、又は両元素を触媒担体上に担持させてもよい。
【0303】
触媒担体に周期律表第VIA族元素、第VIII族元素を担持させる方法は、特に制限はなく、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等の塩もしくは化合物を適当な溶媒に溶解した溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させ、ついで加熱処理(乾燥および焼成)する方法を採用すればよい。
第VIA族元素、第VIII族元素を担持する順番や、第VIA族元素、第VIII族元素の溶液の濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の第VIA族元素、第VIII族元素が担持されるように適宜設定すればよい。
【0304】
モリブデンの塩もしくは化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸等が使用でき、タングステンの塩もしくは化合物としては、例えば、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸等が使用でき、コバルトの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト等が使用でき、ニッケルの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル等が使用できる。
【0305】
<石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法>
石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した脱硫触媒を用い、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。
【0306】
すなわち、石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した脱硫触媒を用い、水素の共存下で、上述した式(C17)の反応によって石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C17)に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。石油系炭化水素中の硫黄化合物除去触媒は、反応装置や容器に充填して石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去することができる。
【0307】
石油系炭化水素としては、原油の常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、熱分解、接触分解および水素化処理などの石油精製工程で生成する留分が挙げられる。
【0308】
石油系炭化水素中の硫黄化合物としては、メタンチオールおよびエタンチオールなどのチオール類、ジメチルスルフィドおよびジエチルスルフィドなどの硫化物、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドなどの二硫化物、チオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類およびベンゾナフトチオフェン類などが挙げられる。
【0309】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは200℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応圧力は、通常1MPa以上、好ましくは2MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下である。
【0310】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解反応は、通常、多管式固定床反応器を用いて行われ、そのときの硫黄化合物を含む石油系炭化水素のLHSV(液空間速度)は、通常0.1h-1以上、20h-1以下であり、水素/原料油の供給速度は、通常0.01Nm3/m3以上、2000Nm3/m3以下である。
【実施例】
【0311】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。以下の実施例の記載中、「部」は質量部を表し、ガスの流量を表すml/分は、特記のない限りSTP基準である。
【0312】
〔実施例1〕
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]13241gを温水15000gに溶解し、これをA1液とする。また、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]6060g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]13096gおよび硝酸セシウム(CsNO3)585gを温水6000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]2910gを溶解し、これをB1液とする。
A1液を攪拌しながらこれにB1液を添加しスラリーを得、続いて噴霧乾燥し、乾燥物を得た。得られた乾燥物に、該乾燥物100質量部に対し三酸化アンチモン[Sb2O3]を2.5質量部、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を9質量部、純水32質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状の成形材料を得た。
この成形材料を図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:6.4mm、その溝21aの深さ:R1.3mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6.4mm、その溝22aの深さR1.3mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に示すように第一のダイ21を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msec停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
【0313】
〔実施例2〕
実施例1にて得たペースト状の成形材料を、図4(b)に示す押出成形機で、かつ図9に示すダイ(第1のダイ21´の径:6.4mm、その溝21´aの深さR1.3mm、その溝21´aの数:5個、第二のダイ22´の外径:30mm、第二のダイ22´の内径:6.4mm、その溝22´aの深さ:R1.3mm、その溝22´aの数;5個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図10に示すように、第一のダイ21´を回転速度60rpmにて144度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで144度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図8に示す成形体15を得た。
【0314】
〔比較例1〕
実施例1と同じペースト状の成形材料を図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:6.4mm、その溝21aの深さ:R1.3mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6.4mm、その溝22aの深さR1.3mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に実施例1と同じ成形材料を挿填し、モーター23bによって図5に破線で示すように第一のダイ21を回転速度40rpmで連続回転させながら、177mm/分で連続的に押出成形した。その後、実施例1と同様にして、ピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断した。
【0315】
実施例1、実施例2および比較例1でそれぞれ得られた成形体を、恒温恒湿槽(30℃、55%Rh)にて12時間乾燥した後、550℃で6時間焼成し、それぞれの成形品を得た。酸素を除く触媒組成は、Mo12Bi1.0Sb0.5Fe2.5Co7.5Cs0.6である。
【0316】
〔実施例3〕
(a)メタクロレインおよびメタクリル酸製造用触媒の製造方法
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]13241gを温水15000gに溶解し、これをA3液とする。また、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]6060g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]13096gおよび硝酸セシウム(CsNO3)585gを温水6000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]2910gを溶解し、これをB3液とする。
A3液を攪拌しながらこれにB3液を添加しスラリーを得、続いて噴霧乾燥し、乾燥物を得た。得られた乾燥物に、該乾燥物100質量部に対し三酸化アンチモン[Sb2O3]を2.5質量部、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を9質量部、純水32質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状の成形材料を得た。
図4(b)および図7(a)に示す押出成形機を用い(第一のダイ21の径:6mm、その溝21aの深さ:R1.5mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6mm、その溝22aの深さR1.5mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター13によって第一のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1200msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0317】
(b)焼成工程
得られた触媒前駆体は、545℃で6時間焼成した。酸素を除く触媒組成は、Mo12Bi0.96Sb0.48Fe2.4Co7.2Cs0.48Si2.20Al2.39である。
【0318】
(c)還元処理
(b)で得られた触媒原料をガラス管に充填し、ここに水素/窒素=5/95(容積比)の混合ガスを空間速度240h-1で供給し、345℃で8時間還元処理を行い、さらに、空気中にて350℃で3時間焼成し、還元処理触媒を得た。
【0319】
〔比較例2〕
実施例3と同じペースト状の成形材料を、打錠成型や押出成型等によって、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6mmであり、貫通孔40を持つ、図11に示す形状(リング状)に成形し、触媒前駆体とした。
次に、得られた触媒前駆体を、実施例3と同様にして焼成および還元処理を行い、触媒(リング状)を得た。
【0320】
〔実施例4〕
(イ)メタクロレインおよびメタクリル酸製造用触媒の製造方法
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]4414gを温水5000gに溶解し、これをA4液とする。一方、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]2020g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]4366gおよび硝酸セシウム[CsNO3]195gを温水2000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]970gを溶解し、これをB4液とする。
A4液を攪拌し、この中にB4液を添加してスラリーを得、次いでこのスラリーを気流乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物を得た。この乾燥物100質量部に対し、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を6質量部、純水33質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
この成形材料を、実施例3と同じ押出成形機を用い(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター13によって第一のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1200msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0321】
(ロ)焼成工程
得られた触媒前駆体は、525℃で6時間焼成した。この触媒は、モリブテン12原子に対してビスマス0.96原子、鉄2.4原子、コバルト7.2原子、セシウム0.48原子を含んでいる。
【0322】
(ハ)還元処理
(ロ)で得られた触媒原料をガラス管に充填し、ここに水素/窒素=5/95(容積比)の混合ガスを空間速度240h-1で供給し、375℃で8時間還元処理を行い、さらに、空気中にて350℃で3時間焼成し、還元処理触媒を得た。
【0323】
〔実施例5〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水32部、メチルセルロース4部、補強用繊維9部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
図4(b)に示す押出成形機で、かつ図12に示すダイ(第一のダイ26の径:5.9mm、その溝26aの深さ:R0.8mm、その溝26aの数:6個、第二のダイ27の外径:30mm、第二のダイ27の内径:5.9mm、その溝27aの深さR0.8mm、その溝27aの数:3個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図13に示すように第一のダイ26を回転速度60rpmで120度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで120度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが9〜10mmとなるように切断し、図14に示す成形体28を得た。
【0324】
図14(a)、(b)に示す成形体28は、所定の間隙で配置された6本の柱状部42と、前記複数の柱状部42の長手方向両端部に設けられ互いに隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部44とを備え、前記柱状部42の長手方向(すなわち後述する成形体28の押出方向)に複数の柱状部42で囲まれた貫通孔43を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体28の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部42間の間隔によって形成された開口45を有する形状を呈している。
【0325】
この実施形態では、6本の柱状部42はそれらの間に貫通孔43を形成するように等間隔で配列されている。そして、ブリッジ部44は、隣接する各柱状部42同士を接合するように各柱状部42を横切るように巻回している。また、隣接する柱状部42、42間には、それらの間の間隙に相当する幅を有する開口45が形成され、この開口45の上下はブリッジ部41が位置している。
【0326】
〔実施例6〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水32部、メチルセルロース4部、補強用繊維9部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
図4(b)に示す押出成形機で、かつ図15に示すダイ(第一のダイ29の径:5.4mm、その溝29aの深さ:R1.3mm、その溝29aの数:4個、第二のダイ30の外径:30mm、第二のダイ30の内径:5.4mm)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図16に示すように第一のダイ29を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図17に示す成形体31を得た。
【0327】
図17(a)、(b)に示す本発明の成形体31の形状は、筒体であり、筒体の長手方向(すなわち後述する成形体31の押出方向)に貫通孔53を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体28の押出方向と直交する方向)には、所定の間隔によって形成された開口54を有する形状を呈している。
【0328】
〔実施例7〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水33部、メチルセルロース4部、補強用繊維18部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。実施例3と同ダイスにて押出し、図1に示す成形体10を得た。
【0329】
〔実施例8〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水33部、メチルセルロース4部、補強用繊維6部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。実施例3と同ダイスにて押出し、図1に示す成形体10を得た。
【0330】
〔実施例9〕
40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム38.2kg、硝酸銅(II)3水和物10.2kg、85重量%リン酸24.2kgおよび70重量%硝酸25.2kgを溶解した(これをA9液と称する)。40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブテン酸アンモニウム4水和物297kgを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム8.19kgを懸濁させた(これをB9液と称する)。このB9液の中に、攪拌下、A9液を滴下した後、三酸化アンチモン10.2kgを加え、密封容器中で120℃にて17時間攪拌した。得られたスラリーのpHは6.3であった。このスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥した。得られた乾燥粉中の硝酸アンモニウムの含有量は12重量%であった。この乾燥粉100重量部に、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)4重量部、硝酸アンモニウム13重量部およびイオン交換水9重量部を加えて混練し、ペースト状にした。
次に、図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に示すように第一のダイ21を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
この成形体10を、温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で220℃にて22時間、空気気流中で250℃にて1時間の順に熱処理して、ケギン型ヘテロポリ酸塩を得た。この前駆体を、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0331】
〔実施例10〕
実施例9にて得られた成形体10を温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気を窒素に切り替え、435℃に昇温して、同温度で4時間保持した。
その後、70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0332】
〔比較例3〕
実施例4の成形材料を、前記した比較例2と同様の操作を行い、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6mmであり、貫通孔40を持つ、図11に示す形状(リング状)に成形し、触媒前駆体を得た。
次いで、得られた触媒前駆体を、実施例4と同様に、焼成および還元処理を行い、触媒(リング状)を得た。
【0333】
〔比較例4〕
実施例9にて得られた乾燥粉100重量部に、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)4重量部、硝酸アンモニウム13重量部およびイオン交換水9重量部を加えて混練し、ペースト状にした。図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7に示すダイ(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に破線で示すように第一のダイ21を回転速度40rpmで回転させながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断した。この成形体を、温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で220℃にて22時間、空気気流中で250℃にて1時間の順に熱処理して、ケギン型ヘテロポリ酸塩を得た。この前駆体を、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0334】
〔実施例11〕
ステアリン酸2質量部と水硬性アルミナ粉末100質量部を80℃で混合して得た粉末26.8質量部と、酸化チタン(IV)粉末42.0質量部と、マグネシアスピネル粉末15.7質量部とガラスフリット3.4質量部とメチルセルロース6.9質量部とを混合した。ついで、この混合物に対して、純水34部と、グリセリン0.35部と、セラミゾール(「C−08」、 日油(株)製)0.2部とを加えて混合した後、混練機を用いて混練し、ペースト状にした。図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径7.8mm、その溝21aの深さR1.8mm、その溝21aの数:4個、第2のダイ22の外径11mm、第2のダイ22の内径7.8mm、その溝22aの深さR1.8mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を装填し、モーター23によって図5に示すように第1のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら154mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが9〜11mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
得られた成形体は、120℃で3時間乾燥し、その後1250℃で5時間焼成し、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶を含む触媒担体を得た。
【0335】
実施例11で得られた成形体の全細孔容積は0.2mL/g、極大細孔半径は1.4μmだった。
【0336】
〔実施例12〕
実施例5と同じペースト状の成形材料を図7(a)、(b)に示す押出成形機を用い(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター23によって第一のダイ21を回転速度100rpmで180度回転させ、1000msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0337】
(成形性)
上記で得られた成形品の成形性について、成形直後の成形体をピアノ線で切断した際に成形体が潰れず形状が保たれたものを○とし、ピアノ線の切断により成形体が潰されたものを×として評価した。その結果を表1に示す。
【0338】
(落下強度試験)
切断した成形品を、垂直に立てられ下端に高さ30mmのシリコーンゴム製の栓をした内径30.0mm、長さ5mの鉄パイプ中の上端から落下させ、次に落下した成形品を篩にかけ、粉砕品、半割れ品および良品に篩別し、良品の割合にて評価した。粉砕品、半割れ品および良品の割合は、以下の基準にて評価した。
粉砕品:8メッシュ以下(−8#)〔8メッシュの篩(目開き2.36mm)を通過したものの割合(質量%)〕
半割品:8メッシュ以上4メッシュ以下(+8#〜−4#)〔4メッシュの篩(目開き4.75mm)を通過し、8メッシュ篩(目開き2.36mm)を通過しないものの割合(質量%)〕
良品:4メッシュ上(+4#)〔4メッシュの篩(目開き4.75mm)を通過しないものの割合(質量%)〕
その結果を表1に示す。
【0339】
【表1】
【0340】
表1から、実施例1〜10で得られた非螺旋状の成形品は、比較例1および比較例4の螺旋状の成形品よりも高い落下強度を有していることがわかる。
【0341】
実施例1〜10および比較例1〜4にて得られた触媒の形状および寸法は、表2に示す通りであった。表2中に示す嵩比重については、以下の手順により測定した。
1.内径36mmφの200mlシリンダーに正確に量り取った60g(重量)の触媒を充填する。
2.約20mmの高さからマットの上に100回タッピングする。
3.シリンダーの目盛りを読み取り、(2)式にて嵩比重を計算する。
嵩比重=重量(g)/ 読み取り容積(ml) (2)
また、表2に示す横穴については、柱状部と柱状部同士を接合するブリッジ部とにより形成された成形体周面の開口部を表す。
【0342】
【表2】
【0343】
(活性評価)
実施例3にて得られた触媒3.0mlを、30.0gのシリコンカーバイト(14メッシュ)とともに、内径18mmのガラス製反応管に充填し、イソブチレン:酸素:窒素:スチーム=1:2.2:6.2:2のモル比の原料ガスを供給し、反応温度390℃、空間速度SV=1750h-1(STP:Standard Temperature and Pressure)の反応条件で反応を行った。その結果を表3に示す。
【0344】
【表3】
【0345】
表3に示すように、実施例3,4における触媒は、各反応温度での転化率および選択率が比較例2、3における触媒の選択率を上回る結果となった。
【0346】
(圧力損失の測定)
実施例3および比較例2の成形体焼成物をSUS製パイプに充填した時の圧力損失を次のようにして測定した。すなわち、内径25mmφのSUS製パイプの一方の口を塞ぐ為、網を張り、他方の開口部には通気用の配管および圧検出用のデジタル式差圧計を備えたゴム栓を嵌合し、測定を行った。触媒充填前の反応管に流量15L/分の空気を流し、大気圧との差圧を測定し、これをブランク値とした。続いて、触媒を1380mmの高さで充填した反応管に、先と同様、流量15L/分の空気を流し、大気圧との差圧をデジタル式差圧計を用いて測定し、この値とブランク値との差分ΔPを、触媒充填後の反応管の圧力損失とした。その結果を表4に示す。
【0347】
【表4】
【0348】
(加熱前成形体の耐圧強度およびその変動係数)
実施例11の成形体の中から、無作為に22個サンプリングし、測定試料とした。ついで、先端にゲージアタッチメント(型番:012B)を取り付けた、アイコーエンジニアリング(株)製のデジタルプッシュプルゲージ(「Model.RX−50」)を、同社製の電動スタンド(「Model.1307」)に固定した。ついで、該電動スタンドの昇降台中央に1個の成形体を静置したのち、60mm/分の一定速度で昇降台ごと上昇させ、前記プッシュプルゲージ先端に取り付けられたゲージアタッチメントに押し当てて、前記成形体が崩壊した時の荷重を前記プッシュプルゲージのピークホールド機能により読み取った。この測定を22個の成形体を用いて実施し、最大値と最小値を除いた20個の測定値の平均値を加熱前成形体の耐圧強度CSbとした。同様に標準偏差も算出し、これを前記成形体の耐圧強度CSbで割って加熱前成形体の変動係数CVCSbを求めた。ここで、該成形体の軸方向と垂直な方向にプッシュプルゲージ先端のゲージアタッチメントを押し当てて測定した。
(加熱後成形体の耐圧強度およびその変動係数)
上記と同様の方法にて別に22個の加熱前の成形体をサンプリングし、これをルツボに入れて電気炉に仕込んだ。その後、空気中、毎分300℃の速度で1200℃まで昇温し2時間保持した後、電気炉の扉を空け、ルツボを取り出し、ルツボ中の該成形体22個全てを常温の水が入ったステンレス製ビーカーに直ちに投入した。ついで、適当な目開きの篩などで水分を分離して回収した該成形体を、熱風循環式乾燥機にて200℃で3時間乾燥した後、上記と同様の方法で加熱後成形体の耐圧強度CSaと変動係数CVCSaを夫々求めた。その結果を表5に示す。
【0349】
【表5】
【符号の説明】
【0350】
10:成形体、11:ブリッジ部、12:柱状部、13:貫通孔、14:開口、15:成形体、16:ブリッジ部、17:柱状部、18:開口、19:貫通孔、20:押出成形機、21:第一のダイ、21a :第一のダイの溝、22:第二のダイ、22a:第二のダイの溝、23:回転手段、23a:回転軸23b:モーター、24:切断手段、25:流路、26:第一のダイ、26a :第一のダイの溝、27:第二のダイ、27a :第二のダイの溝、28:成形体、29:第一のダイ、29a :第一のダイの溝、30:第二のダイ、30a:第二のダイの溝、31:成形体、40:貫通孔、41:成形体、42:柱状部、43:貫通孔、44:ブリッジ部、45:開口、53:貫通孔、54:開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、触媒、触媒担体、吸着剤、乾燥剤、調湿材等として有用な成形体およびその製造方法、並びに、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒と、この触媒を用いた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法、並びにメタクリル酸製造用触媒と、この触媒を用いたメタクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロピレン、イソブチレン、ターシャリーブチルアルコール等を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒としては、モリブデン、ビスマス、鉄、ニッケルおよびコバルトを含有する複合酸化物を使用するのが有効であることが知られている(特許文献1)。
【0003】
このような触媒や触媒担体には、円柱状や円筒状等の形状に成形された成形体が使用されてきた。このような成形体は、これまでから固定床反応装置における触媒反応に汎用されており、一般に、触媒や触媒担体である成形体を反応管に充填し、該反応管にガス等を通じさせる方法において使用されていた。
【0004】
ところが、円柱状や円筒状の成形体を反応管に充填してガス等を通した場合、反応管の入り口と出口とで圧力差、すなわち圧力損失が生じる。この圧力差が大きくなると、目的生成物の選択性が低下するといった問題を生じることがある。
【0005】
そこで、触媒成形体の形状を工夫して、圧力損失等の問題を解決するために、本発明者らは、先に、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するコイル状筒材に、該コイル状筒材の軸方向に沿って柱状部が接合された形状の成形体を開発した(特許文献2)。
【0006】
この成形体は、例えば固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際にいかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができるという利点を有するが、その構造上、押出成形時、特に成形直後の切断時に潰れやすいという問題があった。
また、固定床反応装置等の装置や反応管等の各種容器に充填した際にも、成形体が割れて圧力損失増加に繋がる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−117866号公報
【特許文献2】特開2008−201130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際の圧力損失が小さく、しかも製造工程での切断時や、上記各種容器等へ充填した際にも、潰れたり、割れたりしない高い強度を有する成形体およびその製造方法を提供することである。
本発明の他の課題は、前記成形体からなる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒、および不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造しうる方法を提供することである。
また、本発明のさらに他の課題は、前記成形体からなるメタクリル酸製造用触媒、およびメタクリル酸を収率良く製造しうる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、所定の間隔で配置された複数の柱状部と、隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部を備えた成形体を使用する場合には、全面に貫通孔または開口が形成されているので、圧力損失が小さくなり、しかも構造上、充分な強度を有するため、成形直後の成形体の切断を行っても、成形体が潰れにくく、従って工業的な生産が可能となり、かつ固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填しても、割れが少ないので、圧力損失増加に繋がる恐れがなくなるという新たな事実を見出した。
また本発明者らは、上記成形体からなり、触媒成分として特定の複合酸化物を用いた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒を使用する場合、上記した事実により、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造することができ、さらに、上記成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を使用する場合においても、前記と同様にメタクリル酸を収率良く製造することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の成形体は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有することを特徴とする。
本発明に係る成形体の製造方法は、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、(イ)前記第一および第二のダイをそれらの溝同士が重なり合う位置から該第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士が重なり合う位置まで回転させてブリッジ部を成形し、(ロ)ついで前記第一および第二のダイのいずれか一方の回転を停止させて前記柱状部を成形し、(ハ)再び第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士が重なり合う位置まで回転させて前記ブリッジ部を成形する動作を繰り返して成形体を成形することを特徴とする。
前記押出成形機から押出された前記柱状部は、前記ブリッジ部を含む所定の長さで切断される。
【0011】
また、本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、以下の構成を有する。
(1)少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブテン、ビスマス、鉄を含有し、さらにニッケルおよび/またはコバルトを含有する複合酸化物であることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(2)前記複合酸化物が、下記一般式(I)
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、0≦e≦10、0≦f≦10、0<g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)で示されるものである前記(1)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(3)前記複合酸化物が、その前駆体を分子状酸素含有ガスの雰囲気下で焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理したものである前記(1)または(2)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(4)前記焼成が300〜600℃で行われる前記(3)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(5)前記熱処理が200〜600℃で行われる前記(3)または(4)に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
(6)前記還元性物質が水素、アンモニア、一酸化炭素、炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、炭素数1〜6のアルデヒドおよび炭素数1〜6のアミンから選ばれる化合物である前記(3)〜(5)のいずれかに記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【0012】
本発明に係る不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法は、上記の(1)〜(6)のいずれかに記載の触媒の存在下、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素とを気相接触酸化するものである。
【0013】
また、本発明のメタクリル酸製造用触媒は、以下の構成を有する。
(7)少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒。
(8)前記ヘテロポリ酸化合物が、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む前記(7)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
(9)前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第一焼成し、次いで酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである前記(7)または(8)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
(10)前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第一焼成し、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである前記(7)または(8)に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【0014】
本発明に係るメタクリル酸の製造方法は、前記(7)〜(10)のいずれかに記載の触媒の存在下、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と分子状酸素とを気相接触酸化するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成形体によれば、成形体の全体に貫通孔および開口が形成されているので、例えば固定床式反応装置等の装置や各種容器に充填した際にいかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができ、またこのような成形体を押出成形法によって容易に提供することができるという効果がある。
さらに、本発明の成形体は、隣接する柱状部同士がブリッジ部により互いに接合されているため、成形体の強度が向上しており、従って押出成形直後に成形体を切断する際に潰れにくく、また固定床反応装置等の装置や反応管等の各種容器に充填した際にも割れにくいという効果がある。
よって、本発明の成形体は、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等として有用であり、とりわけ触媒もしくは触媒担体として用いると、高い触媒性能を効率よく発揮することができる。
また、前記成形体からなり、少なくともモリブデン、ビスマス、鉄、ニッケルおよびコバルトを含有する複合酸化物を触媒成分とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素と気相接触酸化させて、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を収率良く製造することができるという効果がある。
さらに、前記成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブデンを含むヘテロポリ酸化物からなるメタクリル酸製造用触媒は、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン、およびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクリル酸を収率良く製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の成形体の一実施形態を示す概略正面図であり(但し、この実施形態における側面図および背面図は正面図と同じである)、(b)は(a)の成形体を上側から見た概略平面図である。
【図2】(a)は、図1(b)のX−X線概略断面図であり、(b)は、図1(b)のY−Y線概略断面図である。
【図3】本発明の成形体の他の実施形態を示す概略正面図である(但し、この実施形態における側面図および背面図は正面図と同じである)。
【図4】(a)は、本発明の成形体を製造するための押出成形機における押出し孔部の一例を示す概略拡大断面図であり、(b)は(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
【図5】図4に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図6】押出成形機より押出された成形体の切断位置を説明するための説明図である。
【図7】(a)は、本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部の他の例を示す概略拡大断面図であり、(b)は(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
【図8】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す概略正面図であり、(b)は(a)の成形体を上側から見た概略平面図である。
【図9】図8に示す成形体を製造する押出成形機における押出し孔部を示す概略拡大図である。
【図10】図9に示す押出し孔部を有する押出成形機を用いて第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図11】(a)は、比較例2および3で作製した触媒を上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の触媒を示す概略正面図である。
【図12】本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部のさらに他の例を示す概略拡大断面図である。
【図13】図12に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図14】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の成形体の概略正面図である。
【図15】本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部のさらに他の例を示す概略拡大断面図である。
【図16】図15に示す押出成形機を用いて、第一および第二のダイのいずれか一方の回転および停止を繰り返して成形体を成形する動作を説明するためのグラフである。
【図17】(a)は、本発明の成形体におけるさらに他の一実施形態を示す上側から見た概略平面図であり、(b)は(a)の成形体の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(成形体)
以下、図面を用いて、本発明の成形体を説明する。図1(a)は、本発明の成形体の一実施形態を示す概略側面図であり、図1(b)は、図1(a)の成形体の概略平面図である。図2(a)は、図1(b)のX−X線概略断面図であり、図2(b)は図1(b)のY−Y線概略断面図である。
【0018】
図1(a)、(b)および図2(a)、(b)に示す本発明の成形体10は、所定の間隙で配置された複数の柱状部12と、前記複数の柱状部12の長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部11とを備え、前記柱状部12の長手方向(すなわち後述する成形体10の押出方向)に複数の柱状部12で囲まれた貫通孔13を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体10の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部12間の間隔によって形成された開口14を有する形状を呈している。
【0019】
この実施形態では、4本の柱状部12はそれらの間に貫通孔13を形成するように等間隔で配列されている。そして、ブリッジ部11は、隣接する各柱状部12同士を接合するように各柱状部12を横切るように巻回している。また、隣接する柱状部12、12間には、それらの間の間隙に相当する幅を有する開口14が形成され、この開口14の上下はブリッジ部11が位置している。
ここで言う柱状部12、12の間隙、すなわち開口14の幅Wは、成形体の大きさ等によって変動するため特に限定されないが、通常、0.1〜49mm、好ましくは1〜28mm程度がよい。
【0020】
柱状部12の横断面形状は、円形に制限されるものではなく、例えば、半円形、三角形、矩形等のいずれであってもよい。
また、ブリッジ部11の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、半円形、円形、三角形、矩形等のいずれであってもよい。また、その太さは、巻回したときに隣接する柱状部12、12同士を高い強度で接合できる限り、特に制限はない。
【0021】
なお、柱状部12の数は、図1に示されるように、4本に限定されるものではなく、3本〜9本であればよい。さらに好ましくは奇数であるのがよい。例えば、図8(a)、(b)は、5本の柱状部17を等間隔で配列し、それらの間をブリッジ部16で接合した本発明の他の実施形態を示している。このような成形体であっても周面に開口18が、上下面に貫通孔19をそれぞれ形成することができる。
また、間隙は各柱状部12間に必ず形成されていなければならないわけではなく、例えば、間隙は少なくとも一つであって、他の部位は柱状部12同士が間隙なく接合されていてもよい。
また、柱状部12の長さ(すなわち成形体10の高さ)は1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、柱状部12の径は、成形体の強度を考慮して0.2〜24mm、好ましくは1〜14mm程度がよい。また、成形体10の外径D1は、1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、成形体10の内径(すなわち貫通孔13の径D2)は0.1〜49mm、好ましくは1〜28mm程度がよい。但し、D2=D1×90〜10%、好ましくは30〜80%であるのがよい。
【0022】
また、図1、図2に示す成形体10の場合、柱状部12は、ブリッジ部11の外周から一部が外方に突出するように設けられているが、ブリッジ部11の内周から一部が内方に突出するように設けられていてもよい。
【0023】
また、図1、図2に示す成形体10は、柱状部12の両端部にブリッジ部11を設けたものであるが、図3に示すように、柱状部12の両端部の他、中央部にもブリッジ部11を設けてもよい。つまり、本発明におけるブリッジ部11は、柱状部12の長手方向に間隔をもって複数段にわたって設けることもできる。
【0024】
以上のように、本発明の成形体は、その形状に特徴を有するものであり、従って、成形体を構成する成形材料の種類や組成等に関しては、何ら制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
例えば、本発明の成形体を触媒として用いる場合には、水酸化アルミニウム(ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト)、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、α−アルミナ、シリカ、チタニア(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)、ゼオライト等の金属酸化物、モリブデン、コバルト、ビスマス等を主成分とする複合金属酸化物、モリブデン、バナジウム、リン等からなるヘテロポリ酸などを用いることができる。
本発明の成形体を触媒担体として用いる場合には、コージュライト、ムライト、水酸化アルミニウム(ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト)、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、α−アルミナ、シリカ、チタニア(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)、ジルコニア、セリア等の金属酸化物、シリカ-アルミナ、マグネシアスピネル、カルシアスピネル、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム、ゼオライトなどを用いることができる。
本発明の成形体を吸着剤、乾燥材、調湿材等として用いる場合には、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ(χ、κ、γ、δ、ρ、η、擬γ、θ-アルミナ)、シリカ−アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、アパタイト、珪藻土などを用いることができる。
また、本発明の成形体は、これら成形材料のほか、種々のプラスチック材料等を用いて形成することもできる。
【0025】
本発明の成形体は、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等として用いられる。特に、触媒もしくは触媒担体として種々の形態の触媒反応に用いる場合、本発明の効果をより有効に活用することに鑑みると、固定床式反応装置等の反応装置や容器に充填して用いることが好ましい。つまり、本発明の成形体は、いかなる向きで無造作に充填されていても圧力損失を小さく抑えることができ、しかも高い強度を有しているので、固定床式反応装置において反応管に充填した場合にも、触媒性能を効率よく発現させることができるのである。
【0026】
以上のような形状の本発明の成形体は、例えば、以下に詳述する本発明の製造方法により製造することができるが、本発明の成形体を製造する方法はこれに限定されるわけではない。
なお、本発明の成形体は、例えば以下に記述する本発明の製造方法により成形された後、必要に応じて、焼成を施すこともできる。
【0027】
(成形体の製造方法)
本発明の成形体は、例えば、外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイを嵌入し内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、第一のダイと第二のダイのいずれか一方の回転と停止を繰り返しながら成形材料を押出す押出成形方法によって作成することができる。以下、この押出成形方法と該方法で用いられる押出成形機とについて、図面を用いて詳しく説明するが、本発明の成形方法は勿論、該方法に限定されるものではない。
【0028】
図4(a)は、本発明の成形体を製造する押出成形機における押出し孔部の一例を示す概略拡大断面図であり、図4(b)は、図4(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
図4に示す押出成形機20は、外周面に2つの溝21aを有する第一のダイ21と、該第一のダイ21を嵌入し内周面に第一のダイ21と複数の溝22aを有するリング状ないし筒状の第二のダイ22とを備えている。詳しくは、第一のダイ21と第二のダイ22は、第二のダイ22に第一のダイ21を嵌入した状態で、ともに押出成形機20の前面に取り付けられており、この第一のダイ21が有する溝21aと第二のダイ22が有する溝22aとから成形材料が連続的に押し出されるようになっている。
【0029】
第一のダイ21およびその溝21a、並びに第二のダイ22およびその溝22aの寸法は、特に制限されるものではないが、例えば、第一のダイ21の外径は0.3〜48mm、好ましくは2.0〜29mm程度がよく、溝21aの深さは、R0.1〜R12mm、好ましくはR0.5〜R7mm程度がよい。また、第二のダイ22の外径は1〜150mm、好ましくは2〜100mm程度がよく、内径は0.3〜48mm、好ましくは2.0〜29mm程度がよく、溝22aの深さは、R0.1〜R12mm、好ましくはR0.5〜R7mm程度がよい。ここで、Rは曲率半径であることを意味している(以下同じ)。なお、図4に示す実施形態においては、溝22aの数は4個、溝21aの数は2個となっているが、これに限定されるわけではなく、溝21a、溝22aの数は、それぞれ得ようとする成形体の柱状部12の数等に応じて、適宜設定されるものである。
【0030】
さらに、押出成形機20は、前記第一のダイ21を回転させる回転手段23をも備えている。この回転手段23は、特に制限されるものではなく、例えばモーターなど通常の回転手段を採用すればよい。具体的には、図4に示す実施形態においては、第一のダイ21に固定した回転軸23aをモーター23bで回転駆動させることにより、第一のダイ21を回転させるようになっている。この場合、第一のダイ21の2つの溝21aが第二のダイ22の4つの溝22aのいずれかと合わさった時、それぞれの溝から押出された成形材料により柱状部12が形成されることとなり、第一のダイ21の2つの溝21aと第二のダイ22の4つの溝22aがずれた時には、第一のダイ21の2つの溝21aのみから押出された成形材料によりブリッジ部11が形成されることとなる。
【0031】
なお、図4に示す実施形態とは逆に、回転手段23が第二のダイ22を回転させるものである場合には、第一のダイ21の溝21aから押出された成形材料により柱状部12が形成され、第二のダイ22の溝22aから押出された成形材料によりブリッジ部11が形成されることとなり、得られる成形体は、ブリッジ部11の内周面(すなわち、貫通孔13内)に柱状部12の一部が突出したものとなる。
【0032】
図4に示す押出成形機20を用いて成形体10を作成するための成形材料の押出し操作は、例えば、次の(イ)〜(ニ)の順で行われる。
(イ)前記第一のダイ21および第二のダイ22の溝、21a、22aから成形材料を押出しながら、それらの溝21a、22a同士が重なり合う位置Mから該第一のダイ21を、次の前記第一および第二のダイ21,22の溝21a、22a同士が重なり合う位置Nまで180度回転させて前記ブリッジ部を成形する。
(ロ)ついで前記位置Nで第一および第二のダイ21,22の回転を停止させて前記柱状部を成形する。
(ハ)再び第一のダイ21を、位置Nから、もとの前記位置Mまで180度回転させて前記ブリッジ部を成形する。
(ニ)ついで、前記位置Mで第一および第二のダイ21,22の回転を停止させて前記柱状部12を成形する。
【0033】
以上の押出し操作を繰り返して成形体10を連続的に押出成形する。
図5は、以上の成形時間と第一のダイ21の回転角度との関係を示している。図5では、後述する比較例1、4についての成形時間と回転角度との関係も併せて示している。
本発明における、前記した回転および停止の操作は、例えばシーケンス制御により行うことができる。ここで、第一のダイ21の回転停止時間は、目的とする柱状部12の長さに応じて調整可能である。
【0034】
ブリッジ部11を成形する場合、第一のダイ21の回転速度は重要であり、当該回転速度が成形材料の成形機20からの押出速度に比べて遅い場合には、ブリッジ部11が螺旋状になってしまうおそれがある。従って、通常、第一のダイ21の回転速度は、成形材料の押出速度に対して2倍以上、好ましくは4〜10倍であるのが好ましい。また、成形材料の押出速度は、通常、1〜2000mm/分、好ましくは10〜1000mm/分であるのがよい。この回転速度は、第二のダイ22を回転させる場合も同様である。
【0035】
押出成形機20は、このほかに、第一および第二のダイ21、22から押し出された成形材料を切断する切断手段24をも有している。この切断手段24にて所定長さに切断することにより、成形体10が連続的に得られるのである。
切断手段24は、特に制限されるものではなく、例えば、カッターナイフや2つのガイドローラ間に張りわたされた線材(ピアノ線など)といった従来公知の切断手段を採用すればよい。
これらの切断手段24はダイ21、22の押出し孔の前面を横切るようにモーター等で駆動させればよいが、好ましくはダイ21、22の前面に接触ないし近接して横切らせるのがよい。
【0036】
連続的に押出された成形体の切断位置は、例えば図1,2に示すような成形体10では、図6に示すようにブリッジ部11を2つに分割する位置X1,X2,X3…で切断して、柱状部12の長手方向両端部にそれぞれブリッジ部11,11を形成している。矢印Yは成形体の押出し方向を示している。尚、図3に示すような成形体を得る場合は、位置X1で切断後、位置X3で切断すればよい。
【0037】
また、本発明における成形体を製造する押出成形機には、溝21aと溝22aから押出される成形材料の押出し速度を制御するために、流量制御弁(図示せず)が設けられていてもよい。
【0038】
図7(a)、(b)は本発明に係る成形体の製造方法の他の例を示している。同図に示すように、この実施形態では、第一のダイ21の溝21aと、第二のダイ22の溝22aとが同数(4つ)形成されている。従って、押出操作にあたっては、前記(イ)および(ハ)における第一のダイ21と第二のダイ22のいずれか一方を90度回転させればよい。その他は、前述の実施形態と同じである。なお、図4(a),(b)と同じ構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
こうして得られる成形体は、所定の間隙で配置された複数の柱状部12と、前記複数の柱状部12の長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部11と、を備え、前記柱状部12の長手方向に複数の柱状部12で囲まれた貫通孔13を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体10の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部12間の間隔によって形成された開口14を有している。
また、この成形体は、触媒として用いられた際、従来の製造方法で製造された触媒より大きな表面積および適度な強度を持つため、固定床多管式反応装置および各種容器等に充填された場合の圧力損失が小さくなり、優れた触媒活性を有している。
【0040】
本発明の成形体は、次に述べる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造とメタクリル酸製造のみならず、エチレンオキシド製造、プロピレンオキシド製造、1,2−ジクロロエタン製造、合成ガス製造、水素製造、天然ガス改質、灯油改質、ジメチルエーテル改質、ジメチルエーテル製造、エチルベンゼン脱水素、選択水素化、酸化、脱硝、水素化脱硫などの触媒、触媒前駆体または触媒担体としても好適に使用しうるものである。
【0041】
<不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒>
(触媒の製造)
本発明に係る不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブデン、ビスマス、鉄を必須とする複合酸化物からなるものである。この複合酸化物には、モリブデン、ビスマス、鉄以外の元素が含まれていてもよく、例えば、ニッケル、コバルト、カリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム等が含まれていても良い。
【0042】
かかる複合酸化物の好ましい例は、下記一般式(I)で示すことができる。
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、1≦e≦10、1≦f≦10、1≦g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)
【0043】
中でも、下記の組成(酸素原子を除く)を有するものが好ましく用いられる。
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Co5-10Cs0.01-1 (I−1)
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Co5-10Sb0.1-5K0.01-1 (I−2)
Mo12Bi0.1-5Fe0.5-5Ni5-10Sb0.1-5Si0.1-5Tl0.01-1 (I−3)
【0044】
上記触媒の原料としては、通常、上記触媒に含まれる各元素の化合物、例えば、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、オキソ酸やそのアンモニウム塩、ハロゲン化物等が、所望の原子比を満たすような割合で用いられる。
例えば、モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム等が、ビスマス化合物としては、酸化ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス等が、鉄化合物としては、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が、それぞれ使用できる。
【0045】
上記の触媒原料から調製される触媒前駆体は、分子状酸素含有ガスの雰囲気下に焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理される。
この触媒前駆体は、通常、触媒原料を水中で混合して水溶液又は水性スラリーを得、次いでこの水溶液又は水性スラリーを乾燥することにより調製することができる。
また、この乾燥は、例えば、ニーダー、箱型乾燥機、ドラム型通気乾燥装置、スプレードライヤー、気流乾燥機等を用いて行うことができる。
【0046】
前記で得た触媒前駆体は、分子状酸素含有ガスの雰囲気下にて焼成する。このガス中の分子状酸素濃度は、通常1〜30容量%、好ましくは10〜25容量%である。
分子状酸素源としては、通常、空気や純酸素が使用され、これが必要に応じて窒素、二酸化炭素、水、ヘリウム、アルゴン等で希釈されて、分子状酸素含有ガスとして使用される。
焼成温度は、通常300〜600℃、好ましくは400〜550℃である。また、焼成時間は、通常5分〜40時間、好ましくは1時間〜20時間である。
【0047】
本発明では、上記焼成により得られた触媒を、還元性物質の存在下で熱処理する(以下、この還元性物質の存在下での熱処理を単に還元処理ということがある)。かかる還元処理により、触媒の活性を効果的に向上させることができる。
【0048】
還元性物質としては、例えば、水素、アンモニア、一酸化炭素、炭化水素、アルコール、アルデヒド、アミン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることができる。ここで、炭化水素、アルコール、アルデヒドおよびアミンは、それぞれ、その炭素数が1〜6程度であるのがよく、かかる炭化水素の例としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、α−ブチレン、β−ブチレン、イソブチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン等が挙げられ、アルコールの例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、メタリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール、フェノール等が挙げられる。
また、アルデヒドの例としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドなどの飽和脂肪族アルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクロレインなどの不飽和脂肪族アルデヒド等が挙げられ、アミンの例としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの飽和脂肪族アミン、アリルアミン、ジアリルアミンなどの不飽和脂肪族アミン、アニリン等が挙げられる。
【0049】
還元処理は、通常、上記還元性物質を含むガスの雰囲気下で触媒を熱処理することにより行われる。
このガス中の還元性物質の濃度は、通常0.1〜50容量%、好ましくは1〜50容量%、さらに好ましくは3〜30容量%であり、このような濃度になるように、還元性物質を窒素、二酸化炭素、水、ヘリウム、アルゴン等で希釈すればよい。なお、分子状酸素は、還元処理の効果を損なわない範囲で存在させてもよいが、通常は存在させないのがよい。
【0050】
還元処理の温度は、通常200〜600℃、好ましくは300〜500℃である。また、還元処理の時間は、通常5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間である。
還元処理は、触媒を管型や箱型等の容器に入れ、ここに還元性物質を含むガスを流通させながら行うのが好ましく、その際、容器から排出されたガスは必要により循環再使用してもよい。
例えば、触媒を気相接触酸化用の反応管に充填し、ここに還元性物質を含むガスを流通させて還元処理を行った後、引き続き気相接触酸化を行うことも可能である。
【0051】
還元処理により、通常、触媒の質量減少が見られるが、これは、触媒が格子酸素を失うためと考えられる。そして、この質量減少率は、0.05〜6%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5%である。還元が進み過ぎて質量減少率があまり高くなると、触媒活性が反って低下することがある。この場合は、再度、分子状酸素含有ガスの雰囲気下での焼成を行って、質量減少率を下げるのがよい。なお、質量減少率は、次式により求められる。
【0052】
質量減少率(%)=(還元処理前の触媒の質量−還元処理後の触媒の質量)/還元処理前の触媒の質量×100
【0053】
還元処理の際、用いる還元性物質の種類や熱処理条件等によっては、還元性物質自身や還元性物質由来の分解生成物等が還元処理後の触媒に残存することがある。このような場合は、別途、触媒中の該残存物質量を測定し、これを該残存物込みの触媒質量から差し引いて、還元処理後の質量を算出すればよい。該残存物は、典型的には炭素であるので、例えば、全炭素(TC:total carbon)測定等により、その質量を求めればよい。
【0054】
なお、本発明に係る触媒の成形は、触媒前駆体の段階で行ってもよく、また焼成後に行ってもよく、還元処理を行った後に成形をしてもよい。
【0055】
<不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造>
この触媒を用いて、プロピレンを分子状酸素により気相接触酸化することで、アクロレインおよびアクリル酸を収率良く製造することができる。また、イソブチレンやターシャリーブチルアルコールを分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクロレインおよびメタクリル酸を収率良く製造することができる。
【0056】
この気相接触酸化反応は、通常、固定床多管式反応器に触媒を充填し、ここにプロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる原料化合物と分子状酸素とを含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床での反応も可能である。
分子状酸素源としては、通常、空気が用いられ、原料ガス中には、原料化合物および分子状酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれる。
【0057】
反応温度は通常250〜400℃であり、反応圧力は減圧でも可能であるが、通常100〜500kPaである。原料化合物に対する分子状酸素の量は通常1〜3モル倍である。また、原料ガスの空間速度SVは、STP(standard temperature and pressure)基準で、通常500〜5000/時である。
【0058】
<ヘテロポリ酸化物からなるメタクリル酸製造用触媒>
(触媒の製造)
本発明に係るメタクリル酸製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなる触媒であり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)からなるものが好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものである。
【0059】
上記触媒のヘテロポリ酸化合物は、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、X元素ということがある)と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、Y元素ということがある)が含まれるのが望ましい。通常、モリブデン12原子に対して、リン、バナジウム、X元素およびY元素が、それぞれ3原子以下の割合で含まれる触媒が、好適に用いられる。
【0060】
上記触媒の原料としては、通常、上記触媒に含まれる各元素を含む化合物、例えば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が、所望の原子比を満たすような割合で用いられる。
例えば、リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が用いられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が用いられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸塩、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が用いられる。また、X元素を含む化合物としては、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられ、Y元素を含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられる。
【0061】
本発明では、上記触媒原料を水中で混合して、触媒の原料を含む水性混合物を得、これを乾燥した後、酸化性ガス雰囲気下に所定温度で第一段焼成を行う。かかる乾燥は、スプレードライヤー等を用いた噴霧乾燥により行うのが好ましい。また、上記乾燥後、該乾燥物を後述するように所定形状に成形した後、第一段焼成を行ってもよく、上記乾燥後、該乾燥物を熱処理(前焼成)した後、成形し、次いで第一段焼成を行ってもよく、上記乾燥後、該乾燥物を成形し、次いで熱処理(前焼成)した後、第一段焼成を行ってもよい。かかる成形を行う場合、必要に応じて成形助剤を用いるのが好ましい。また、かかる乾燥物の熱処理(前焼成)を行う場合、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下に、180〜300℃程度の温度で行うのが好ましい。
【0062】
また、触媒原料としてアンモニウム化合物を用いたり、アンモニアやアンモニウム塩を添加したりして、アンモニウム根を含む水性混合物を得、これを乾燥した後、熱処理してから成形するか、成形してから熱処理すると効果的である。これらの処方によれば、該熱処理の際、ケギン型へテロポリ酸塩の構造を形成することができ、こうして得られるケギン型ヘテロポリ酸塩は、本発明による焼成に対し、特に好適な対象となる。
【0063】
本発明では、上記乾燥後、酸化性ガスの雰囲気下に所定の温度で第一段焼成した後、所定量の水を含む非酸化性ガスの雰囲気下に所定温度まで昇温し、次いで、非酸化性ガスの雰囲気下に所定の温度で第二段焼成を行う。このような一連の成形・焼成・昇温・焼成操作を行うことにより、良好なメタクリル酸収率を与え、優れた触媒寿命を有するメタクリル酸製造用触媒を製造することができる。
【0064】
第一段焼成で用いられる酸化性ガスは、酸化性物質を含むガスであり、典型的には、酸素含有ガスが挙げられ、その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。尚、第一段焼成で用いられる酸化性ガスには、必要に応じて0.1〜10容量%の水分を存在させてもよく、0.5〜5容量%の水分を存在させるのがより好ましい。
【0065】
第一段焼成の温度は、300〜400℃であり、好ましくは360〜400℃である。
第一段焼成の温度が、300℃未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがあり、一方、400℃を越えると、触媒が分解・焼結しやすいため、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0066】
第一段焼成後、所定量の水を含む非酸化性ガスの雰囲気下に420℃以上に昇温する。
ここでいう非酸化性ガスは、実質的に酸素などの酸化性物質を含有しないガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。かかる非酸化性ガスに含まれる水の含有量は、0.1〜10容量%であり、好ましくは0.5〜5容量%である。該含有量が0.1容量%未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0067】
上記昇温後、非酸化性ガスの雰囲気下に所定温度で第二段焼成を行う。第二段焼成の温度は、400〜500℃であり、好ましくは420〜450℃である。第二段焼成の温度が、400℃未満であると、得られる触媒の活性が十分にならないことがあり、一方、500℃を越えると、触媒が分解・焼結しやすいため、得られる触媒の活性が十分にならないことがある。
【0068】
第二段焼成で用いられる非酸化性ガスは、先と同様、実質的に酸素などの酸化性物質を含有しないガスであるが、この第二段焼成で用いられる非酸化性ガスには、水が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。水が含まれている場合、水の含有量は、通常0.1〜10容量%であり、好ましくは0.5〜5容量%である。
【0069】
各焼成時間はそれぞれ適宜調整されるが、通常1〜20時間程度である。また、昇温時間は、通常0.5〜10時間程度である。各焼成や昇温の際の雰囲気ガスとして、使用されるガスを流通させながら行うのが望ましい。尚、酸化性ガスによる第一段焼成と非酸化性ガスによる第二段焼成の順番は入れ替えても良い。
【0070】
<メタクリル酸の製造>
前記したヘテロポリ酸からなる触媒を用いて、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を分子状酸素により気相接触酸化することで、メタクリル酸を収率良く製造することができる。
【0071】
メタクリル酸の製造は、通常固定床多環式反応器に上記触媒を充填し、これに原料化合物と酸素を含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床のような反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気が用いられ、また原料ガス中には、原料化合物および酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれうる。
【0072】
メタクロレインを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は、500〜5000/時(STP基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPaの条件下に反応が行われる。なお、原料のメタクロレインは必ずしも高純度の精製品である必要は無く、例えば、イソブチレンの気相接触反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを用いることもできる。
【0073】
また、イソブタンを原料として用いる場合、通常、原料ガスの中のイソブタン濃度は、1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000/h(STP基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPaの条件下に反応が行われる。イソ酪酸やイソブチルアルデヒドを原料として用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合と、ほぼ同様の反応条件が採用される。
【0074】
<チタン酸アルミニウム系結晶成形体>
本発明の成形体は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がチタン酸アルミニウム結晶を含むものである。
【0075】
本発明において、チタン酸アルミニウム系結晶を含む成形体は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成することにより製造され、原料混合物には更にマグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含んでいてもよい。「チタン酸アルミニウム系結晶を含む」とは、成形体を構成する結晶相にチタン酸アルミニウム系結晶相が存在していることを意味し、チタン酸アルミニウム系結晶相は、例えば、チタン酸アルミニウム結晶相、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相などであってよく、その他の結晶相が含まれていてもよい。
【0076】
前記成形体には、少なくともチタン、アルミニウムの元素が含まれており、これに加えてマグネシウム、ケイ素が含まれていることがある。さらに、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素以外の元素が含まれていてもよく、例えばジルコニウム、タングステン、セリウム、ナトリウム、鉄等が含まれていてもよい。
【0077】
<アルミニウム源粉末>
本発明において用いられる原料混合物に含有されるアルミニウム源粉末は、成形体を構成するアルミニウム元素を含む化合物の粉末である。アルミニウム源粉末としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、擬γ型、δ型、θ型、α型、ρ型、η型、χ型、κ型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。
【0078】
本発明で用いられるアルミニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0079】
アルミニウム塩は、無機酸とのアルミニウム無機塩であってもよいし、有機酸とのアルミニウム有機塩であってもよい。
アルミニウム無機塩として具体的には、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
アルミニウム有機塩として具体的には、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0080】
また、アルミニウムアルコキシドとして具体的には、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0081】
水酸化アルミニウムとしては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などの結晶型の水酸化アルミニウムが挙げられ、不定形(アモルファス)の水酸化アルミニウムであってもよい。
アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物なども挙げられる。
【0082】
本発明において、アルミニウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記のなかでも、アルミニウム源粉末としてはアルミナ粉末が好ましく用いられる。なお、アルミニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0084】
アルミニウム源粉末の粒径は特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が、0.1〜100μm、好ましくは1〜60μmの範囲のものが使用できる。アルミニウム源粉末の粒径が100μmより大きいと、例えば、造粒や押出しなどの湿式成形において、アルミニウム源粉末の保水力が低下して成形が困難となる。また、0.1μmより小さいと、粉末が気相中に浮遊し易くなり取扱いが困難になる。
【0085】
なお、本発明において用いられるアルミニウム源粉末は、上記粒径の範囲を満たす限りにおいてシングルモーダルな粒径分布を有していてもよく、バイモーダルな粒径分布を有していてもよく、あるいはそれ以上の粒径ピークを有するものであってもよい。
【0086】
上記粒径範囲を満たすアルミニウム源粉末としては、市販品をそのまま用いることもできるし、あるいは、市販品のアルミニウム源粉末に対して、粉砕、解砕、分級、篩別、造粒などの処理を施して上記粒径範囲を満たすアルミニウム源粉末を得てもよい。
【0087】
<チタニウム源粉末>
上記原料混合物に含有されるチタニウム源粉末は、成形体を構成するチタン元素を含む化合物の粉末であり、かかる化合物としては、例えば、酸化チタンの粉末が挙げられる。
酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。
酸化チタン(IV)としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などの結晶型の酸化チタン(IV)が挙げられ、不定形(アモルファス)の酸化チタン(IV)であってもよい。なかでも、より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0088】
本発明で用いられるチタニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよい。
かかる化合物としては、例えば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0089】
チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。
チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0090】
本発明において、チタニウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記のなかでも、チタニウム源粉末としては酸化チタン粉末が好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)粉末である。なお、チタニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0092】
チタニウム源粉末の粒径は特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜25μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、チタニウム源粉末のD50が、1〜20μmの範囲内であるチタニウム源粉末を用いることが好ましく、これにより、焼成時に無作為に発生するチタン酸アルミニウムまたはチタン酸アルミニウムマグネシウムの核生成を効果的に抑制し、かつチタン酸アルミニウムまたはチタン酸アルミニウムマグネシウムの粒成長を進行させることができるので、より均質なチタン酸アルミニウム結晶相またはチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相の組織構造を形成することができる。均質なチタン酸アルミニウム系結晶の組織構造の形成は、耐熱性および機械的強度のばらつきの低減に寄与する。なお、チタニウム源粉末はバイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタニウム源粉末を用いる場合においては、レーザ回折法により測定される粒径が大きい方のピークを形成する粒子の粒径は、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0093】
レーザ回折法により測定されるチタニウム源粉末のモード径は特に限定されず、0.3〜60μmの範囲内であってもよい。
【0094】
上記原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との含有量比は、モル比で35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。このような範囲内で、チタニウム源粉末をアルミニウム源粉末に対して過剰に用いると、速やかにチタン酸アルミニウム化反応(チタン酸アルミニウムマグネシウム化反応を含む)が進行するため有利である。
【0095】
<マグネシウム源粉末>
上記原料混合物は、マグネシウム源粉末を含有していてもよい。マグネシウム源粉末は、成形体を構成するマグネシウム元素を含む化合物の粉末であり、かかる化合物としては、例えば、マグネシア(酸化マグネシウム MgO)の粉末のほか、空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末が挙げられる。後者の例としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0096】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0097】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
【0098】
また、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることもできる。このような化合物としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl2O4)が挙げられる。なお、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いる場合、原料混合物中におけるアルミニウム源粉末のAl2O3(アルミナ)換算量および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物粉末に含まれるAl成分のAl2O3(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源粉末のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が35:65〜45:55、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0099】
本発明において、マグネシウム源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0100】
マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、マグネシウム源粉末のD50は3〜20μmの範囲内であることが好ましく、これにより、より均質なチタン酸アルミニウムマグネシウム系結晶の組織構造を形成することができる。均質な組織構造の形成は、耐熱性および機械的強度のムラの低減に寄与する。
【0101】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源粉末の含有量をこの範囲内に調整することにより、成形体の機械的強度および耐熱性を向上させ得る。
【0102】
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末が含まれる原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。
【0103】
<ケイ素源粉末>
上記原料混合物に含有されるケイ素源粉末は、主にチタン酸アルミニウム系結晶(例えばチタン酸アルミニウム結晶、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶など)からなる複合化されたケイ酸ガラス相を形成する化合物の粉末である。成形体にケイ酸ガラス相を含有させることにより該成形体の耐熱性を向上させることができる。ケイ素源粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)の粉末が挙げられる。
【0104】
また、ケイ素源粉末は、空気中で焼成することによりシリカ(SiO2)に導かれる化合物の粉末であってもよい。
かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、シリコン樹脂、長石、ガラスフリット、ガラスファイバーなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源粉末として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることも好ましい。
【0105】
ガラスフリットを用いる場合、得られる成形体の耐熱性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。本発明において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0106】
上記ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50質量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al2O3〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0107】
本発明において、ケイ素源粉末としては1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0108】
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものを用いることができる。なかでも、ケイ素源粉末のD50は1〜20μmの範囲内であるものを用いることが好ましく、これにより、原料混合物の成形体の充填率が向上し、機械的強度および耐熱性のより高い焼成体を得ることができる。
【0109】
本発明においては、良好な機械的強度および耐熱性を有する成形体を得るために、ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下とされ、好ましくは4質量%以下とされる。また、ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、2質量%以上とすることが好ましい。原料混合物に含まれる無機成分とは、成形体を構成する元素を含む成分であり、典型的には、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末である。ただし、原料混合物に含まれる添加剤(造孔剤、バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤等)が無機成分を含む場合、それらも含まれる。ケイ素源粉末の含有量が原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%を超える場合あるいは2質量%未満である場合、良好な機械的強度および耐熱性が得られない場合がある。
【0110】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびケイ素源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。
【0111】
原料混合物に、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末が含まれる場合、原料混合物中におけるAl2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜45:55の範囲内である。原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al2O3(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。
【0112】
また、本発明では、上記マグネシアスピネル(MgAl2O4)などの複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料粉末として用いることができる。この場合、そのような化合物はそれぞれの金属源化合物を混合したものと同じであると考えることができ、このような考えに基づき、原料混合物中におけるアルミニウム源原料、チタニウム源原料、マグネシウム源原料およびケイ素源原料の含有量が前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内に調整される。
【0113】
また、原料混合物にはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウム自体が含まれていてもよく、例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、該チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタニウム源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
【0114】
<造孔剤>
また、上記原料混合物は造孔剤を含むことができる。本発明においては、造孔剤の粒径としては特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が10〜50μmの範囲内であるものが用いられる。
【0115】
造孔剤の種類(構成材料)は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類およびこれら樹脂類の中空粒子;アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、変性ポリアルキレンオキサイド、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体架橋物等の吸水性樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン、コーンスターチなどの植物系材料;グラファイト等の炭素材などが挙げられる。また、造孔剤は原料混合物に含まれる無機成分になり得るものであってもよく、このようなものとしては、例えば、アルミナ中空ビーズ、チタニア中空ビーズ、中空ガラス粒子などが挙げられる。これらの造孔剤は、市販品をそのまま用いることもできるし、適宜篩分けしたものを用いてもよい。
【0116】
原料混合物に含まれる造孔剤の含有量は、原料混合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.2〜25質量部である。
造孔剤の含有量が0.1質量部未満であると細孔が形成されず、造孔剤の添加効果を得ることができない。また、50質量部を超えると得られる成形体の強度が低下する。
【0117】
本発明においては、上記原料混合物を本発明の成形体の形状に成形した後、得られた成形体を焼成することにより、チタン酸アルミニウム系結晶相を含む成形体を得る。
本発明においては、上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末および任意で使用される造孔剤を含む原料混合物を成形して成形体を得た後、当該成形体を焼成することにより、チタン酸アルミニウム系結晶を含む成形体を得る。
【0118】
原料混合物の成形に用いる成形機としては、例えば、前述した押出成形機20などが挙げられる。押出成形を行なう際には、原料混合物に、例えば、バインダ、潤滑剤および可塑剤、分散剤、ならびに溶媒などの、造孔剤以外の他の添加剤を添加して成形することができる。
【0119】
上記バインダとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス;EVA、ポリエチレン、ポリスチレン、液晶ポリマー、エンジニアプラスチックなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
バインダの添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。
【0120】
上記潤滑剤および可塑剤としては、例えば、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。
潤滑剤および可塑剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、10質量部以下であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0121】
上記分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
分散剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0122】
また、上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。
溶媒の使用量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0123】
成形に供される原料混合物は、上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末および任意で使用される造孔剤、ならびに上記の各種他の添加剤を混合(混練)することにより得ることができる。
【0124】
成形体の焼成における焼成温度は、通常、1200℃以上、好ましくは1300℃以上である。また、焼成温度は、通常、1700℃以下、好ましくは1600℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時〜500℃/時である。ケイ素源粉末を用いる場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けると、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができるため有利である。焼成工程には、バインダや造孔剤等を燃焼により除去するための仮焼(脱脂)工程が含まれる。脱脂は、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(例えば、150〜600℃の温度範囲)になされる。脱脂工程においては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0125】
焼成は、通常、大気中、もしくは穏やかな燃焼を行なわせるためにより低い酸素分圧中で行なわれるが、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末、バインダや造孔剤等の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0126】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0127】
焼成に要する時間は、原料混合物の成形体がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、原料混合物の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。以上のようにして、主にチタン酸アルミニウム系結晶から構成される成形体を得ることができる。
【0128】
前記のようにして得られた本発明の成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.1mL/g以上であり、かつ、極大細孔半径が1μm以上であるのが好ましい。
【0129】
本発明の成形体は、耐圧強度が5daN以上であり、加熱前の成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体との耐圧強度の比が下記式(A)を満たし、かつ、前記夫々の成形体(加熱前の成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体)の耐圧強度の変動係数の比が下記式(B)を満たす。
CSa/CSb≧0.4 (A)
CVCSa/CVCSb≦2.5 (B)
(式中、CSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度であり、CSbは加熱前成形体の耐圧強度であり、CVCSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度の変動係数であり、CVCSbは加熱前成形体の耐圧強度の変動係数である。)
【0130】
(エチレンオキシド製造用触媒)
本発明の成形体は、エチレンオキシド製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、該触媒担体(成形体)に銀を担持させた触媒(以下、エチレンオキシド製造用触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、エチレンオキシドを効率よく製造することができる。
【0131】
触媒担体を構成する成形材料(担体材料)としては、特に制限されるものではなく、例えば、アルミナ、炭化珪素、チタニア、ジルコニア、マグネシア等の多孔性耐火物を用いることができる。好ましくは、触媒担体は、α−アルミナを主成分とするのがよく、具体的には、成形材料の全重量の90重量%以上がα−アルミナであるのがよい。
また、触媒担体には、シリカを含有させることもできる。シリカを含有させる場合、その含有量は、触媒担体の成形材料の全重量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0132】
なお、アルミナ等の成形材料にはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、エチレンオキシド製造用触媒は充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0133】
触媒担体は、10%を超える吸水率を有するものであることが、触媒成分(銀や後述する促進剤成分等)を含浸させ易い点で、好ましい。触媒担体の吸水率は、高いほど好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であるのがよい。ただし、触媒担体の吸水率があまりに高すぎると、触媒強度が低下する恐れがあるので、その上限は、通常80%以下、好ましくは70%以下であるのがよい。
【0134】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において細孔半径0.3μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。細孔半径0.3μm以上の細孔が0.05mL/g未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0135】
触媒担体は、窒素吸着一点法による比表面積測定において0.01〜10m2/gの比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が0.01m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(銀や後述する促進剤成分)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、エチレンオキシドの製造時にエチレンオキシド製造用触媒の活性部位とガスとの接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。一方、触媒担体の比表面積が10m2/gを超えると、生成したエチレンオキシドの逐次酸化が顕著となり、選択性が低下するおそれがある。
【0136】
エチレンオキシド製造用触媒は、触媒担体に、触媒成分として銀を担持させたものである。
銀の担持量は、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは5〜25重量%。さらに好ましくは8〜20重量%であるのがよい。銀の担持量が1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、銀の凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持された銀は触媒担体上で通常、金属銀の形態で存在するのであり、担持量は金属銀としての重量である。
【0137】
触媒担体に銀を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、銀塩、銀化合物、または銀錯体を適当な溶媒に溶解した銀溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。銀溶液の銀濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の銀が触媒担体に担持されるように適宜設定すればよい。
【0138】
エチレンオキシド製造用触媒は、さらに、希土類金属、マグネシウム、レニウムおよびアルカリ金属からなる群より選ばれる1種以上の促進剤成分をも含有することが、触媒性能を向上させるうえで、好ましい。加えて、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)を含有させると、エチレンの気相接触酸化において、副反応としてエチレンオキシドの異性化が起こるのを抑制することができるという利点も得られる。
【0139】
促進剤成分としては、特に、レニウムおよびアルカリ金属が好ましく、とりわけ、好ましいアルカリ金属としては、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、最も好ましいアルカリ金属はセシウムである。また、補助促進剤として、硫黄、タリウム、モリブデン、タングステン、クロムなどを併用することができ、特に、レニウムを促進剤成分として用いる場合には、これら補助促進剤の併用が望ましい。
【0140】
促進剤成分や補助促進剤の含有量は、その種類や組み合わせ、触媒担体の物性の違いなどによって異なるので、それらに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、レニウムの含有量は、金属として触媒全重量に対し、好ましくは10〜20000重量ppm、より好ましくは30〜10000重量ppmであるのがよい。他方、アルカリ金属の含有量は、金属として触媒全重量に対し、好ましくは10〜20000重量ppm、より好ましくは15〜10000重量ppmであるのがよい。なお、促進剤成分として含有させるアルカリ金属がナトリウムであり、触媒担体中にもナトリウムが含有されている場合には、その合計含有量が前記範囲内となるようにすることが望ましい。
【0141】
促進剤成分や補助促進剤を含有させるには、例えば、銀と同様に、所望の元素を含む塩、化合物、錯体等を適当な溶媒に溶解させた溶液(以下、「促進剤成分等含有液」と称することもある)を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、促進剤成分等含有液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、銀を担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、銀を担持させる際に同時に行ってもよいし、銀を担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、銀を担持させる際に同時に行うことが好ましい。ただし、促進剤成分としてレニウムを用い、かつ上述した補助促進剤を併用するときには、銀を担持させる前もしくは銀を担持させるのと同時に補助促進剤を含有させる(補助促進剤溶液を接触もしくは含浸させる)とともに、少なくとも触媒担体の一部に銀を担持させた後にレニウムを含有させる(レニウム溶液を接触もしくは含浸させる)ことが、触媒活性の点で望ましい。
【0142】
レニウムを促進剤成分とする場合、これを含んだ促進剤成分等含有液の調製に用いることのできるレニウムを含む塩、化合物、錯体等の例としては、ハロゲン化レニウムなどのレニウム塩、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物および酸等が挙げられる。これらの中でも、過レニウム酸塩が好ましく、より好ましくは過レニウム酸アンモニウムがよい。
他方、アルカリ金属を促進剤成分とする場合、これを含んだ促進剤成分等含有液の調製に用いることのできるアルカリ金属を含む塩、化合物、錯体等の例としては、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、重炭酸塩、修酸塩およびカルボン酸塩等が挙げられる。
【0143】
促進剤成分等含有液は、促進剤成分または補助促進剤とする元素ごとに調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた促進剤成分等含有液を用いるのがよい。さらには、銀溶液の中に促進剤成分または補助促進剤とする元素を含有させて、銀、促進剤成分および補助促進剤の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0144】
なお、エチレンオキシド製造用触媒には、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体に銀溶液または促進剤成分等含有液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0145】
(エチレンオキシドの製造方法)
エチレンオキシドの製造方法は、エチレンオキシド製造用触媒の存在下、エチレンを分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化する。エチレンオキシド製造用触媒は、固定床式反応装置等の反応装置や容器に充填して気相接触酸化反応に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくエチレンオキシドを生成させることができる。
【0146】
エチレンオキシドの製造方法は、エチレンオキシド触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、その反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃とし、反応圧力は、通常0〜40kg/cm2G、好ましくは10〜30kg/cm2Gとし、空間速度は、通常1,000〜30,000hr-1(STP)、好ましくは3,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。触媒に接触させる原料ガスとしては、例えば、エチレン0.5〜50容量%、酸素1〜20容量%、炭酸ガス0〜20容量%、残部の不活性ガス(窒素、アルゴン、水蒸気等)および低級炭化水素類(メタン、エタン等)からなり、さらに反応抑制剤としての二塩化エチレン、塩化ジフェニル等のハロゲン化物を0.1〜50容量ppm含有するものを用いることができる。また、分子状酸素含有ガスとしては、通常、空気、酸素および富化空気などが用いられる。
【0147】
(合成ガス製造用触媒I)
本発明の成形体は、合成ガス製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、本発明の合成ガス製造用触媒Iは、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、ニッケルが担持されている。
本発明の合成ガス製造用触媒Iを合成ガス製造に用いることで、合成ガスを効率よく製造することができる。
【0148】
ここで、合成ガスとは、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスであり、例えば、メタンガス、天然ガス、LPG、ナフサ等の炭化水素類を原料として、水蒸気改質法(SR法)、自己熱改質法(ATR法)、もしくはこれらを組合わせた複合改質法等によって工業的に製造されているガスのことをいう。
これら改質法においては、例えば炭化水素類がメタンである場合、下記式(C1)に示す反応(水蒸気改質反応)によって、水素と一酸化炭素とを含む混合ガス(合成ガス)が得られる。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (C1)
得られた合成ガスは、工業用水素、アンモニア、メタノール、炭化水素液体燃料(GTL)、ジメチルエーテル、都市ガス向けの中高カロリーガス製造用などの原料ガスとして利用される。
【0149】
本発明において、触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0150】
触媒担体(成形体)は、カルシウムを酸化物(CaO)換算で0.1〜30重量%含むものであることが好ましく、さらに好ましくは、この触媒担体中のカルシウムの少なくとも一部はアルミナと化合物を形成しているのがよい。これにより、触媒表面上への炭素析出を抑制することができる。触媒担体中のカルシウムとアルミナとが形成する化合物としては、例えば、各種アルミン酸カルシウム(例えば、CaO・6Al2O3(ハイボナイト)、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3など)が挙げられる。
【0151】
なお、触媒担体(成形体)は、触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0152】
触媒担体(成形体)は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.20mL/g以上であり、細孔半径0.01μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。全細孔容積が0.20mL/g未満であったり、細孔半径0.01μm以上の細孔が0.05mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0153】
触媒担体(成形体)は、窒素吸着一点法による比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルなど)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、合成ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0154】
本発明の合成ガス製造用触媒Iは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルを担持させたものである。
ニッケルの担持量は、触媒全重量に対して0.1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは1〜40重量%。さらに好ましくは2〜30重量%であるのがよい。ニッケルの担持量が0.1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、ニッケルの凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたニッケルは触媒担体上で通常、酸化物(酸化ニッケル)の形態で存在するのであり、担持量は酸化ニッケルとしての重量である。
【0155】
触媒担体にニッケルを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルの塩、化合物もしくは錯体等(硝酸ニッケルなど)を適当な溶媒に溶解したニッケル溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。ニッケル溶液のニッケル濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のニッケルが担持されるように適宜設定すればよい。例えば、硝酸ニッケルの溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させた場合には、その後、必要に応じて、乾燥、焼成を施すことにより、硝酸ニッケルを酸化ニッケルに転化させることができる。
【0156】
本発明の合成ガス製造用触媒Iは、さらに、白金族元素をも含有することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。とりわけ、白金族元素として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素を含有することが特に好ましい。
白金族元素の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0157】
白金族元素を含有させるには、例えば、ニッケルと同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた白金族元素含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、白金族元素含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、ニッケルを担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、ニッケルを担持させる際に同時に行ってもよいし、ニッケルを担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、ニッケルを担持させる際に同時に行うことが好ましい。
【0158】
白金族元素が複数である場合には、元素ごとに白金族元素含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた白金族元素含有溶液を用いるのがよい。さらには、ニッケル溶液の中に白金族元素を含有させて、ニッケルおよび白金族元素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
なお、担持された白金族元素は、酸化物、水酸化物、金属等の形態で、触媒担体の表面から1mm以内の深さ領域に60%以上存在することが望ましい。
【0159】
なお、本発明の合成ガス製造用触媒Iには、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体にニッケル溶液または白金族元素含有溶液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0160】
(合成ガスの製造方法)
本発明の合成ガスの製造方法は、本発明の合成ガス製造用触媒Iの存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させることにより、合成ガス(一酸化炭素と水素とを含む混合ガス)を得るものであり、例えば、炭化水素類がメタンである場合には、上述した式(C1)のような水蒸気改質反応によって、一酸化炭素と水素とが生成する。本発明の合成ガスの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C1)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、例えば、水蒸気改質法、自己熱改質法、もしくはこれらを組合わせた複合改質法が挙げられる。いずれの手法を採用した場合にも、本発明の合成ガス製造用触媒Iは、反応装置や容器に充填して合成ガスの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく合成ガスを生成させることができる。
【0161】
炭化水素類は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ等の1種または2種以上の中から、得ようとする合成ガスの組成(一酸化炭素と水素との比率)等に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、例えば、メタンガス、天然ガス(通常、メタンが主成分である)、LPG(通常、プロパンやペンタンが主成分である)、ナフサ等を用いることができる。
【0162】
本発明の合成ガスの製造方法は、本発明の合成ガス製造用触媒Iを用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、その反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜1,200℃、好ましくは500〜1,100℃とし、反応圧力は、通常10〜70bar、好ましくは15〜60barとすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、1,000〜10,000hr-1(STP)、好ましくは2,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。
【0163】
(合成ガス製造用触媒II)
本発明の成形体は、合成ガス製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、マグネシアスピネルを主成分とする触媒担体(成形体)にニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒IIは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、合成ガスを効率よく製造することができる。なお、合成ガスとは、前述した合成ガスと同様である。
【0164】
本発明において、触媒担体はマグネシアスピネルを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がマグネシアスピネルであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするマグネシアスピネル(MgAl2O4)は、酸化マグネシウム(MgO)およびα−アルミナ(α−Al2O3)のいずれか一方または両方を含有してもよい。
【0165】
触媒担体は、前記と同様に、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.20mL/g以上であり、細孔半径0.01μm以上の細孔を0.05mL/g以上有するものであることが好ましい。
【0166】
前記触媒担体は、窒素吸着一点法による比表面積測定において1m2/g以上の比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜100m2/gであるのがよい。触媒担体の比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルなど)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、合成ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0167】
合成ガス製造用触媒IIは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルを担持させたものである。ニッケルの担持量は、前記と同様に、触媒全重量に対して0.1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは1〜40重量%。さらに好ましくは2〜30重量%であるのがよい。
その他は、前記した合成ガス製造用触媒Iと同様である。
【0168】
(水素製造触媒I)
本発明の成形体は、水素製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)にニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させた水素製造触媒Iは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、燃料電池などに使用される水素を効率よく製造することができる。
【0169】
水素としては、従来から、メタンガス、天然ガス(都市ガス)、プロパンガス、LPG、GTL合成液体燃料、軽油、重油、灯油、ナフサ等の各種炭化水素類を原料とし、これを、触媒の存在下、水蒸気改質法(SR法)、自己熱改質法(ATR法)、もしくはこれらを組合せた複合改質法等により改質することにより得られる水素リッチ改質ガスが使用されている。このような水素リッチ改質ガスは、例えば、メタンを原料とする場合、下記式(C2)に示す水蒸気改質反応によって水素と一酸化炭素の混合ガスを得、これを、必要に応じて、下記式(C3)に示すCO転化反応に付すことによって得られる。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (C2)
CO + H2O → CO2 + H2 (C3)
【0170】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0171】
触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0172】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、極大細孔半径が0.001μm以上であり、かつ累積細孔容積が0.10mL/g以上であるものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0173】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体のBET比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(ニッケルや白金族元素など)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、水素製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0174】
水素製造触媒Iは、上述した触媒担体に、触媒成分としてニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させたものである。
ニッケルの担持量は、触媒全重量に対して2〜60重量%であることが好ましい。より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%であるのがよい。ニッケルの担持量が2重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、60重量%を超えると、ニッケルの凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたニッケルは触媒担体上で通常、酸化物(酸化ニッケル)の形態で存在するのであり、前記担持量は酸化ニッケルとしての重量である。
【0175】
触媒担体にニッケルを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルの塩、化合物もしくは錯体等(硝酸ニッケルなど)を適当な溶媒に溶解したニッケル含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。ニッケル含有溶液のニッケル濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のニッケルが担持されるように適宜設定すればよい。例えば、硝酸ニッケルの溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させた場合には、その後、必要に応じて、乾燥、焼成を施すことにより、硝酸ニッケルを酸化ニッケルに転化させることができる。
【0176】
白金族元素は、ロジウム、ルテニウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。より好ましくは、2種以上の白金族元素を併用するのがよい。
白金族元素の含有量は、触媒全重量に対して0.05〜20重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜15重量%。さらに好ましくは0.1〜2重量%であるのがよい。白金族元素の担持量が0.05重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、20重量%を超えると、白金族元素の凝集が起こり、触媒活性の低下を招くおそれがある。2種以上の白金族元素を併用する場合には、その合計担持量が前記範囲であればよい。なお、担持された白金族元素は担体上で通常、酸化物、水酸化物、金属等の形態で存在するが、担持量は金属としての重量である。
【0177】
触媒担体に白金族元素を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、ニッケルと同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた白金族元素含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。白金族元素が2種以上である場合には、元素ごとに白金族元素含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた白金族元素含有溶液を用いるのがよい。
【0178】
触媒成分としてニッケルと白金族元素の両方を担持させる場合には、前述したニッケル含有溶液と白金族元素含有溶液とをそれぞれ調製し、それらを順に触媒担体に接触もしくは含浸させてもよいが、好ましくは、ニッケルと白金族元素の両方を含有する溶液を調製し、ニッケルおよび白金族元素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0179】
なお、水素製造触媒Iには、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体にニッケル含有溶液、白金族元素含有溶液、またはニッケルと白金族元素の両方を含有する溶液を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0180】
(水素の製造方法)
水素の製造方法は、水素製造触媒Iの存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させる事により、炭化水素類を改質し、水素として水素リッチ改質ガスを得るものである。例えば、炭化水素類がメタンである場合には、上述した式(C2)のような水蒸気改質反応によって、一酸化炭素を含む水素リッチ改質ガスが生成する。水素の製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C2)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、例えば、水蒸気改質法、自己熱改質法、もしくはこれらを組合せた複合改質法が挙げられる。いずれの手法を採用した場合にも、水素製造触媒Iは、反応装置や容器に充填して水素の製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく燃料電池用水素を生成させることができる。
【0181】
炭化水素類は、特に制限されないが、例えば、メタンガス、天然ガス(通常、メタンが主成分である)、プロパンガス、LPG(通常、プロパンやペンタンが主成分である)、GTL合成液体燃料、軽油、重油、灯油、ナフサ等を用いることができる。炭化水素類は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0182】
水素の製造方法は、水素製造触媒Iを用いて炭化水素類を改質する点を除けば、常法に従って行うことができる。したがって、前述した炭化水素類の改質に際し、その反応条件等は特に制限されるものではないが、例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜1,200℃、好ましくは500〜1,100℃とし、反応圧力は、通常10〜70bar、好ましくは15〜60barとすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、1,000〜10,000hr-1(STP)、好ましくは2,000〜8,000hr-1(STP)とすることができる。
【0183】
水素の製造方法においては、前述した通り炭化水素類と水蒸気とを反応させた後、必要に応じて、一酸化炭素を低減する処理を行うことができる。これにより、さらに水素濃度を高めることができるとともに、燃料電池の電極の被毒を抑制することができる。一酸化炭素を低減する処理としては、例えば、上述した式(C3)のCO転化反応のほか、吸着材を充填したPSA装置等により一酸化炭素を吸着分離する処理などが挙げられる。
【0184】
(水素製造触媒II)
本発明の成形体は、水素製造の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、マグネシアスピネルを主成分とする該触媒担体(成形体)にニッケルおよび白金族元素の少なくとも一方を担持させた水素製造触媒IIは、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、燃料電池などに使用される水素を効率よく製造することができる。
【0185】
触媒担体はマグネシアスピネル(MgAl2O4)を主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がマグネシアスピネルであるのがよい。かかる触媒担体は、酸化マグネシウム(MgO)およびα−アルミナ(α−Al2O3)のいずれか一方または両方を含有していてもよい。
その他は、前記した水素製造触媒Iと同様である。
【0186】
(ジメチルエーテル改質触媒)
本発明の成形体は、ジメチルエーテルの改質の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に銅を担持させた触媒(以下、ジメチルエーテル改質触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、ジメチルエーテルの改質を効率よく製造することができる。
【0187】
ジメチルエーテルは、工業用水素、アンモニア、メタノールなどの各種原料ガスの製造、および燃料電池用水素等として利用されている水素含有ガスを製造するために、原料炭化水素とともに、下記反応式(C4)、(C5)に示すような水蒸気改質反応に使用される。
ジメチルエーテルを原料炭化水素類に使用することの利点は、脱硫処理が不要であり、かつ、常温でプロパンよりも低い圧力で液化するため、貯蔵や運搬等の取扱いが容易なこと等が挙げられる。
CH3OCH3 + H2O → 2CH3OH (C4)
CH3OH + H2O → 3H2 + CO2 (C5)
【0188】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には、触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶相は、ベーマイト、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうちの1種以上であることが好ましい。
【0189】
なお、触媒担体の成形材料の主成分であるアルミナにはナトリウムが含まれることがあるが、触媒担体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下であることが好ましい。触媒担体中のナトリウム含有量が前記範囲を超えると、触媒担体表面の塩基点が多くなるため、触媒として用いた際に充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0190】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0191】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。より好ましくは、2〜300m2/gであるのがよい。触媒担体のBET比表面積が1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(銅)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、水素含有ガス製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0192】
ジメチルエーテル改質触媒は、上述した触媒担体に、触媒成分として銅を担持させたものである。銅の担持量は、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは2〜25重量%であるのがよい。銅の担持量が1重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持された銅は触媒担体上で通常、金属銅の形態で存在するのであり、担持量は金属銅としての重量である。
【0193】
触媒担体に銅を担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、銅塩、銅化合物等を適当な溶媒に溶解した銅溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。銅溶液の銅濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の銅が担持されるように適宜設定すればよい。
銅化合物としては、例えば酢酸銅等の有機酸の水溶性塩、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。
【0194】
ジメチルエーテル改質触媒は、さらに、亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。
亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して1〜50重量%であることが好ましい。
【0195】
亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有させるには、例えば、銅と同様に、所望の元素を含む塩、化合物もしくは錯体等を適当な溶媒に溶解させた亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のいずれか1種類以上の含有溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる方法を採用すればよい。このとき、上記した各含有溶液を触媒担体に接触もしくは含浸させる処理は、銅を担持させる前の触媒担体に対して行ってもよいし、銅を担持させる際に同時に行ってもよいし、銅を担持させた後の触媒担体に対して行ってもよいが、一般的には、銅を担持させる際に同時に行うことが好ましい。
【0196】
元素が複数である場合には、元素ごとに含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた含有溶液を用いるのがよい。さらには、前記した銅溶液の中に亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を含有させて、銅および亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0197】
なお、ジメチルエーテル改質触媒には、必要に応じ、焼成処理が施されていてもよい。焼成処理は、例えば、触媒担体の成形材料を成形して本発明の成形体の形状の触媒担体とした段階、もしくは触媒担体に銅溶液または亜鉛、アルミニウム、クロム、硼素のうち、いずれか1種類以上を接触もしくは含浸させた段階で、常法に従い適宜行えばよい。
【0198】
(水素含有ガスの製造方法)
水素含有ガスの製造方法は、前記したジメチルエーテル改質触媒の存在下、ジメチルエーテルと水蒸気とを反応させることにより、水素含有ガス(二酸化炭素と水素とを含む混合ガス)を得るものであり、上述した式(C4)、(C5)のような水蒸気改質反応によって、二酸化炭素と水素とが生成する。水素含有ガスの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C4)、(C5)の水蒸気改質反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。ジメチルエーテル改質触媒は、反応装置や容器に充填して水素含有ガスの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく水素含有ガスを生成させることができる。
【0199】
水素含有ガスの製造方法は、ジメチルエーテル改質触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、水蒸気改質法を適用する場合には、反応装置として加熱炉式反応器等を用い、反応温度は、通常100〜700℃、好ましくは150〜600℃とし、反応圧力は、常圧とすることができる。また、反応を固定床反応方式で行なう場合には、空間速度は、通常、10〜1,000,000hr-1(STP)、好ましくは100〜10,000hr-1(STP)とすることができる。
【0200】
尚、反応管に供給する水蒸気とジメチルエーテル(DME)との比(H2O/DME)は、モル比で1〜20、好ましくは3〜10であるのが良い。
【0201】
(ジメチルエーテル製造用触媒)
本発明の成形体は、所定の成形材料からなるジメチルエーテル製造用触媒として好適に使用することができる。
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、さらにシリカとマグネシウム元素とを含有する。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒をジメチルエーテル製造に用いることで、ジメチルエーテルを効率よく製造することができる。
【0202】
ジメチルエーテル製造は、下記式(C6)に示すように、ジメチルエーテル〔CH3OCH3〕は、ジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノール〔CH3OH〕を脱水反応させて製造される。
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (C6)
【0203】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、アルミナを主成分とする。アルミナは、アルミニウムの酸化物であって、通常は化学式(C7)
Al2O3・nH2O〔0≦n≦0.5〕 (C7)
で示されるものであり、χ、γ、ηなどの結晶構造を有する活性アルミナが用いられる。活性アルミナは、χ、γ、η以外の結晶構造、例えばκ、δ、ρなどの結晶構造を含んでいてもよい。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるアルミニウム含有量は、ジメチルエーテル製造用触媒の全体を基準として酸化物(Al2O3)換算で通常80重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
【0204】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、シリカを含有する。これにより、例えば反応時、高温高圧水蒸気雰囲気に曝された際にBET比表面積が低下することを抑制できる。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるシリカの含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で、0.5重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.8重量部以上である。シリカの含有量が前記範囲よりも少ないと、高温高圧水蒸気雰囲気下においてアルミナの水酸化アルミニウム化が進行し、ジメチルエーテル製造用触媒のBET比表面積が低下する傾向がある。一方、シリカの含有量の上限は特に制限されないが、一定量を超えると、それ以上過剰に含有させてもBET比表面積の低下抑制効果のさらなる向上は期待できないので、経済的観点から、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下であるのがよい。
【0205】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒にシリカを含有させる際のシリカ源としては、特に制限されないが、例えば、酸性シリカゾル、中性シリカゾルなどのシリカゾル液、シリカ粉末、オルトケイ酸テトラエチルなどのケイ素アルコキシド等を用いることができる。シリカ源としては、これらの中でも特に、アルミニウムおよびマグネシウム以外の金属分を含まないものが好ましい。
【0206】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、マグネシウム元素を含有する。これにより、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させることが可能になる。なお、本発明のジメチルエーテル製造用触媒中に含まれるマグネシウム元素は、通常、酸化マグネシウム(MgO)の形態となっている。
【0207】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒におけるマグネシウム元素の含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、Mg換算で、0.01〜1.2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。マグネシウム元素の含有量が前記範囲よりも少ないと、マグネシウム元素の含有効果が不充分となり、長時間反応に供すると充分に反応率を維持できないおそれがある。一方、マグネシウム元素の含有量が前記範囲よりも多いと、反応開始時(初期)の反応率が低下する傾向があり、効率的にジメチルエーテルを製造するうえでは不利となる場合がある。
【0208】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒にマグネシウム元素を含有させる際のマグネシウム源としては、特に制限されないが、例えば、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の各種マグネシウム塩のほか、酸化マグネシウムの粉末等を用いることができる。
【0209】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、チタン、セリウム、ジルコニウム、亜鉛など、アルミニウムおよびマグネシウム以外の金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、通常、酸化物の形態で含まれる。
【0210】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、ナトリウム含有量が触媒全体を基準として酸化物(Na2O)換算で、通常0.01重量%以下であり、理想的にはナトリウムを実質的に含まない(0重量%)のがよい。ナトリウム含有量が0.01重量%を超えると、反応率が低下する傾向がある。
【0211】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、その使用前においてBET比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、通常は300m2/g以下である。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積が、通常0.3cm3/g以上であり、通常は3.0cm3/g以下である。また、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積が、1.8nm〜100μmの細孔の累積容積に対して10%〜60%、さらには15%〜50%程度であることが好ましい。
【0212】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、例えば、i)シリカ源およびマグネシウム源を含む溶液(好ましくは水溶液)をアルミナ前駆体に充分に吸収させた後、本発明の成形体の形状に成形し、焼成する方法、ii)シリカ源、マグネシウム源およびアルミナ前駆体を予め粉体として混合し、本発明の成形体の形状に成形した後、焼成する方法、等により製造することができる。いずれの方法においても、アルミナ前駆体としては、特に制限はなく、従来公知の方法で得られたものを使用してもよいし、市販の水酸化アルミニウムや水酸化酸化アルミニウム等を使用してもよい。また、焼成に際しては、特に制限はないが、焼成温度は通常400℃〜1100℃程度、焼成時間は通常2時間〜24時間程度とし、通常、空気雰囲気中で行われる。
【0213】
i)の方法において、前記溶液をアルミナ前駆体に吸収させるには、前記溶液中にアルミナ前駆体を含浸させるか、アルミナ前駆体に前記溶液をスプレー等により塗布するなどの手段を採用すればよい。また、前記i)の方法において、前記シリカ源および前記マグネシウム源を含む溶液をアルミナ前駆体に吸収させる際には、前記シリカ源と前記マグネシウム源の両方を含む溶液を用いてもよいし、前記シリカ源を含む溶液と前記マグネシウム源を含む溶液とを各々別に吸収させるようにしてもよい。他方、前記ii)の方法における混合手段は、特に制限されるものではなく、例えば、ミキサーのように粉体を攪拌する手段を採用してもよいし、ミルのように粉砕しながら混合する手段を採用してもよい。
なお、前記i)の方法と前記ii)の方法とは、適宜組合せることもでき、例えば、前記シリカ源および前記マグネシウム源の一方を粉体としてアルミナ前駆体と混合した後、得られた混合物に前記シリカ源および前記マグネシウム源のもう一方の溶液を吸収させるようにしてもよい。
【0214】
なお、本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法は、上述の方法に限定されるものではなく、アルミナ前駆体を本発明の成形体の形状に成形し、焼成した後にシリカ源およびマグネシウム源を付与する方法でも製造することができる。
【0215】
(ジメチルエーテルの製造方法)
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下、メタノールの脱水反応によりジメチルエーテルを得るものであり、上述した式(C6)のような脱水反応によって生成する。本発明のジメチルエーテルの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C6)の脱水反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。具体的には、メタノールを気化させたメタノールガスを脱水反応温度で触媒と接触させればよい。本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、反応装置や容器に充填してジメチルエーテルの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくジメチルエーテルを生成させることができる。
【0216】
メタノールガスは、全量がメタノールである純メタノールガスであってもよいが、水(水蒸気)や、エタノール、イソプロパノール等のようなメタノール以外のアルコールを含んでいてもよい。メタノールとこれら水およびアルコールとの合計量に対するメタノールの含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。また、メタノールガスは通常、窒素(N2)、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスなどで希釈されて用いられる。メタノールの気化は、通常反応前に蒸発器などにより行われる。
【0217】
メタノールの脱水反応の際の反応温度は、通常250℃以上、好ましくは270℃以上であり、通常450℃以下、好ましくは400℃以下である。反応圧力は、温度により異なるが、通常1×105Pa以上であり、通常50×105Pa以下、好ましくは30×105Pa以下である。
【0218】
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器を用いて行われ、そのときのメタノールのGHSV(ガス空間速度)は通常500h-1以上、150000h-1以下である。
反応により得られたジメチルエーテルは、そのまま使用することもできるが、必要に応じて、蒸留などの通常の方法で精製して使用してもよい
【0219】
(エチルベンゼン脱水素触媒)
本発明の成形体は、エチルベンゼン脱水素反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)に鉄を担持させた触媒(以下、エチルベンゼン脱水素触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、エチルベンゼン脱水素反応を効率よく促進することができる。
【0220】
エチルベンゼン脱水素反応とは、例えば、下記式(C8)に示すように、エチルベンゼンを触媒等で脱水素反応させてスチレンを生成させる反応をという。
C6H5C2H5 → C6H5C2H3 + H2 −113kJ/mol (C8)
【0221】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶層は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0222】
触媒担体としてのアルミナは、通常酸性点を有しているために炭素質物質の析出を促進し、スチームとの水性ガス反応による炭素質物質の除去が不充分であることが考えられるので、アルミナ担体に塩基性物質を添加し、熱処理することによって、その酸性点を中和しておくのが好ましい。
塩基性物質によるアルミナ担体の改質は、成形前および成形後のいずれでもよく、成形前に行う場合には、アルミナ粉末と塩基性物質とを混合し、混練後、成形して熱処理する。また、成形後に行う場合には、アルミナ成形体に塩基性物質を含浸、担持させた後、熱処理すれば良い。これらの操作は用いる塩基性物質の水溶性の難易等に応じ、適宜選択すれば良い。
【0223】
アルミナを改質するための塩基性物質としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、稀土類金属化合物等を掲げることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが、稀土類金属としてはランタン、セリウム等がそれぞれ使用可能である。
【0224】
塩基性物質の担持量は、全成分を酸化物に換算した場合、0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%である。
【0225】
塩基性物質を含有した担体の成形体は、ついで300〜1000℃、好ましくは350℃〜800℃で焼成する。
【0226】
塩基性物質を含有した触媒担体であるアルミナ成形体に対しては、鉄化合物を担持させ、熱処理する。鉄化合物としては、塩化鉄、硝酸鉄、水酸化鉄、硫酸鉄などが用いられる。これらの化合物は、水溶液の形態で、前記したアルミナ成型体に含浸法、浸漬法、スプレー法等によって担持され、ついで乾燥、焼成することによって最終触媒が得られる。最終触媒調製における焼成温度は500℃〜1000℃、好ましくは600℃〜900℃の範囲が適当である。
【0227】
エチルベンゼン脱水素触媒における鉄の担持量は、触媒全重量に対して酸化物(Fe2O3)換算で5〜15重量%、好ましくは6〜10重量%であるのがよい。鉄の担持量が5重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、15重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。
【0228】
エチルベンゼン脱水素触媒は、さらに、Cs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を担持することが、触媒活性を増大させるうえで好ましい。前記したCs、Mg、Ba、La等の酸化物の含有量は、特に制限されないが、触媒全重量に対して1〜6重量%、さらに好ましくは2〜5重量%であることが好ましい。
【0229】
前記したCs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を担持させるには、鉄化合物を担持させる前に行ってもよいし、鉄化合物を担持させる際に同時に、もしくは鉄化合物を担持させた後に行ってもよい。
【0230】
元素が複数である場合には、元素ごとに含有溶液を調製し、順次触媒担体に接触もしくは含浸させることもできるが、好ましくは、複数の元素を一つの溶媒に存在させた含有溶液を用いるのがよい。さらには、前記した鉄化合物溶液の中にCs、Mg、Ba、La等の酸化物のうち、いずれか1種類以上を含有させて、鉄化合物およびCs、Mg、Ba、La等の酸化物の全てを纏めて触媒担体に接触もしくは含浸させることが好ましい。
【0231】
エチルベンゼン脱水素触媒は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0232】
また、エチルベンゼン脱水素触媒は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましく、0.5〜300m2/gであるのがより好ましい。触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(鉄化合物)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、スチレン製造時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0233】
(スチレンの製造)
スチレンの製造方法は、前記したエチルベンゼン脱水素触媒の存在下、スチームで希釈されたエチルベンゼンを脱水素反応させることにより、スチレンを得るものであり、上述した式(C8)のような脱水素反応によって生成する。スチレンの製造方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C8)の脱水素反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。エチルベンゼン脱水素触媒は、反応装置や容器に充填してスチレンの製造に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくスチレンを生成させることができる。
【0234】
スチレンの製造方法は、エチルベンゼン脱水素触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件等は特に制限されるものではない。例えば、脱水素反応を適用する場合には、反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、通常400〜800℃、好ましくは500〜700℃とし、反応圧力は0〜1MPa、好ましくは0.001〜0.5MPaとすることができる。また、LHSV(液空間速度)は、通常、0.1〜2.0h-1、好ましくは0.2〜1.5h-1とすることができる。
【0235】
また、反応管に供給するスチーム(STM)とエチルベンゼン(EB)との比(STM/EB)は、モル比で1.0〜20.0、好ましくは2.0〜18.0であるのが良い。
【0236】
このようにして、エチルベンゼン脱水素触媒を用いれば、高い収率で効率よくスチレンを製造できる。
【0237】
(選択的水素添加用触媒)
本発明の成形体は、選択的水素添加反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)にパラジウムを担持させた触媒(以下、選択的水素添加触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、選択的水素添加反応を効率よく促進することができる。
【0238】
触媒担体は、アルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶層は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0239】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0240】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(パラジウム)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、オレフィン化合物類の精製時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0241】
選択的水素添加触媒は、上述した触媒担体に、触媒成分としてパラジウムを担持させたものである。パラジウムの担持量は、金属パラジウムとして、触媒全重量に対して0.01〜5重量%であることが好ましい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、5重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するのであり、担持量は金属としての重量である。
【0242】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアンミンパラジウム類等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。
【0243】
(選択的水素添加によるオレフィン化合物類の精製)
オレフィン化合物類の精製方法は、前記した選択的水素添加触媒の存在下、ナフサのスチームクラッキング等で得られるオレフィン化合物類中に少量存在する高不飽和炭化水素化合物類であるアセチレン系炭化水素とジオレフィンを、選択的に水素添加するものである。
【0244】
オレフィン化合物には、エチレン、プロピレン、ブテン等が含まれ、アセチレン系炭化水素には、アセチレン、メチルアセチレン、エチルアセチレン等が含まれ、ジオフィレンには、プロパジエン、ブタジエン等が含まれる。
【0245】
オレフィン化合物類の精製方法で採用しうる具体的手法は、後述する反応式の水素添加反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。選択的水素添加触媒は、反応装置や容器に充填してオレフィン化合物類の精製方法に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よくアセチレン系炭化水素とジオレフィンを選択的に水素添加して精製除去することができる。
【0246】
オレフィン化合物類の精製方法は、選択的水素添加触媒を用いる点を除けば、常法に従って行うことができ、反応条件は気相反応と液相反応があり、また気相についてはフロントエンド方式とテールエンド方式がある。以下にその分類を示す。
【0247】
エチレン、プロピレンの混合オレフィン中のアセチレン、プロパジエン、メチルアセチレンの選択的水素添加の反応式は以下に示すものである(気相反応、フロントエンド方式)。
(アセチレン) C2H2 + H2 → C2H4
(メチルアセチレン) C3H4 + H2 → C3H6
(プロパジエン) C3H4 + H2 → C3H6
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、50〜150℃、反応圧力は0.5〜4MPa、GHSV(ガス空間速度)は、4000〜8000h-1であるのが良い。
【0248】
エチレンとプロピレンを分離した後、エチレン中のアセチレンをエチレンに選択的水素添加する反応はテールエンド方式の気相反応である。
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、20〜150℃、反応圧力は0.1〜3MPa、GHSV(ガス空間速度)は2000〜3500h-1であり、反応管に供給する水素/アセチレンのモル比は、1.0〜3.0であるのが良い。
【0249】
プロピレン中のプロパジエン、メチルアセチレンの、気相反応または液相反応による選択的水素添加の反応式は以下に示す通りである。
(メチルアセチレン) C3H4 + H2 → C3H6
(プロパジエン) C3H4 + H2 → C3H6
気相反応の場合、反応温度は通常、50〜120℃、反応圧力は0.4〜3MPa、GHSV(ガス空間速度)は1000〜3000h-1であり、(反応管に供給する水素)/(プロパジエン+メチルアセチレン)のモル比は、3.0以下であるのが良い。
また、液相反応の場合、反応温度は通常、20〜40℃、反応圧力は2〜7MPa、LHSV(液空間速度)は0.1〜10h-1であり、(反応管に供給する水素)/(プロパジエン+メチルアセチレン)のモル比は3.0以下であるのが良い。
【0250】
ブテン中のブタジエン、エチルアセチレンの選択的水素添加、および分解ガソリン中のジエン類の液相反応による選択的水素添加反応式は以下に示す通りである。
(ブタジエン) C4H6 + H2 → C4H8
(エチルアセチエン) C4H6 + H2 → C4H8
反応装置として固定床流通式反応器等を用い、反応温度は通常、40〜150℃、反応圧力は1〜7MPa、LHSV(液空間速度)は0.1〜10h-1であり、(反応管に供給する水素)/(液体原料)の容積比は50〜350であるのが良い。
【0251】
(酸化触媒)
本発明の成形体は、酸化反応の触媒担体として好適に使用することができる。アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に白金族元素を担持させた触媒(以下、酸化触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、酸化反応を効率よく促進することができる。
【0252】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔性耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0253】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0254】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が0.1m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(白金族元素)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、排ガスの酸化分解時に触媒の活性部位と原料との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0255】
酸化触媒は、上述した触媒担体に、白金族元素を担持させたものである。白金族元素はルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金から選ばれる金属であり、特にパラジウムを担持させたものが好ましい。
【0256】
パラジウムの担持量は、金属パラジウム換算で、触媒全重量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜40重量%、更に好ましくは0.01〜20重量%であることがよい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると、充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するのであり、担持量は金属としての重量である。また、他の白金族元素もパラジウムとほぼ同様の担持量でよい。
【0257】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアミンパラジウム類等の水溶性塩等が使用できる。
【0258】
<各種排ガスの酸化分解方法>
各種排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、各種排ガスを、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0259】
酸化分解方法で採用しうる具体的手法は、後述する各反応式の酸化分解反応に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。酸化触媒は、酸素の共存下にて、反応装置や容器に充填して各種排ガスの酸化分解方法に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく各種排ガスを酸化分解することができる。
【0260】
(ガス状含フッ素化合物の酸化分解方法)
ガス状含フッ素化合物の酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下で、パーフルオロ化合物およびフロンから選ばれる1種または2種以上の混合物であるガス状含フッ素化合物を、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0261】
ガス状含フッ素化合物には、フロンと、フッ化窒素、フッ化炭素、フッ化硫黄、フッ化炭化水素等を総称するパーフルオロ化合物と呼ばれる化合物がある。
フロンは、地球温暖化の要因であることが懸念されているにも係わらず、各種製造現場特に半導体製造工場から大気に排出されており、また半導体製造現場におけるエッチング工程や洗浄工程で良く使用されているパーフルオロ化合物も、地球温暖化係数が二酸化炭素の1000倍以上と大きく、その大気への排出はフロン同様、今後規制される可能性が非常に高い化合物である。さらに、パーフルオロ化合物は、フロンに比して分解がより困難なことも問題となっている。
【0262】
パーフルオロ化合物およびフロンから選ばれる1種または2種以上の混合物であるガス状含フッ素化合物中の四フッ化メタン、六フッ化エタン、八フッ化プロパンの酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(四フッ化メタンの分解) CF4 + 2H2O → CO2 + 4HF
(六フッ化エタンの分解) C2F6+1/2O2+3H20→ 2CO2+6HF
(八フッ化プロパンの分解)C3F8 + O2 + 4H2O → 3CO2+8HF
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、通常300〜1000℃、好ましくは400〜900℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、50000h-1以下、好ましくは100〜10000h-1であるのがよい。
【0263】
反応ガス中に含まれる含フッ素化合物の濃度は、3容量%以下とするのが良い。また、3容量%以上含まれる場合には、空気、窒素等の希釈ガスを添加して、濃度3容量%以下となるようにするのが良い。これは、反応ガス中に含まれる含フッ素化合物濃度が3容量%以上であると、触媒寿命に悪影響を与えることがあるからである。この他、反応ガス中には、酸素と水を含ませるが、このうち酸素は、パーフルオロ化合物の炭素を二酸化炭素および一酸化炭素に変換するために必要な量であれば特に制限はなく、空気が最も望ましい酸素源である。
水は、分解反応で生成するハロゲンをフッ化水素として触媒系外に排出するのに必要な成分であるだけでなく、アルミナ中のアルミニウムがフッ化アルミニウムとして触媒系外に逃散するのを抑制する働きをも有する。水の量は反応ガス中に含まれるハロゲン量と同量以上10倍以内すなわち、CF4であれば4〜40モル倍、C2F6であれば6〜60モル倍、C3F8であれば8〜80モル倍とすれば好適な結果を得ることができる。
【0264】
(一酸化炭素および水素を含む排ガスを酸化分解する方法)
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0265】
半導体製造工程において種々のガスが使用されるようになり、これらの工程からはCOやH2といった可燃性ガスが排出されることが多い。COは、可燃性ガスである上に、毒性が強く人体に有害であるため、これを含むガスを大気中に放出する前に処理が必要である。またH2は有害ガスではないが、COと同じく可燃性ガスであり、処理が必要である。
【0266】
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法は、CO及びH2を含む被処理ガスを、酸素の共存下で、酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中のCO及びH2は次式の反応によって酸化される。
一酸化炭素および水素を含む排ガス中の一酸化炭素、水素の酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(一酸化炭素の分解) CO + 1/2O2 → CO2
(水素の分解) H2 + 1/2O2 → H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、室温〜300℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、1〜20000h-1であるのがよい。
【0267】
一酸化炭素および水素を含む排ガスの酸化分解方法において、上述の酸化触媒によるCO及びH2の酸化は、酸素の共存下で行う。酸素の添加量としては、排ガス中に含まれるCO及びH2を酸化するために必要なO2量と等量、好ましくは等量の2倍量程度の酸素を被処理ガスに添加することが好ましい。酸素添加の手段としては、空気を排ガス中に混合することによって行うことができる。
【0268】
(酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法)
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0269】
半導体工業における化合物半導体の成膜工程などで排出される酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスは、人が高濃度の蒸気を吸入すると中毒を起こす恐れがあり、また、爆発混合ガスを形成したり、静電気を帯電しやすく着火の危険性がある可燃性ガスのため、酸化分解させる処理が必要である。
【0270】
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、酸素の共存下で、酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中の酢酸n−ブチルは次式の反応によって二酸化炭素と水に酸化される。
酢酸n−ブチル等の揮発性有機化合物を含む排ガス中の酢酸n−ブチルの酸化分解の反応式は以下に示すものである。
(酢酸n−ブチルの分解)
CH3COOC4H9 + 8O2 → 6CO2 + 6H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、200〜400℃、好ましくは250〜350℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、100〜1000h-1であるのがよい。
【0271】
処理することができる排ガスの成分としては、半導体工業では、酢酸n−ブチル以外にも、n−オクタン、乳酸エチル、テトラヒドロフランなどがある。いずれも常温で液体であり、他の分野においても、常温で液体の有機化合物であれば本発明で処理することができる。
【0272】
(有機金属化合物を含む排ガスの酸化分解方法)
有機金属化合物を含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下で行うものである。
【0273】
半導体工業における化合物半導体の反応工程、特に、MOCVD(有機金属気相堆積法)や他のCVD(化学気相成長、化学気相蒸着)プロセスにおいて、有機金属化合物を反応原料として用いる反応工程から排出される有機金属化合物を含む排ガスは、その液体原料、固体原料及びこれらの溶媒として用いる有機溶媒が、毒性が高いかあるいは安全性が確認されていないものが多い。そのため、使用後、上記の排ガスは、大気に放出するに先だって浄化処理する必要があった。
【0274】
酸化触媒は、酸素の共存下にて、有機金属化合物を含む有毒ガスを酸化分解することにより、浄化処理を行うものであり、有機金属化合物について特に制限されず、且つ、一般に浄化処理方法であった湿式法、燃焼法のように、装置の大型化、使用した吸収液の後処理、燃焼状態を維持するための高エネルギーコストといった問題も解決することが可能である。
【0275】
(アンモニアやアミン等の含窒素ガスを含む排ガスの酸化分解方法)
アンモニアやアミン等の含窒素ガスを含む排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0276】
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、150〜500℃、好ましくは200〜400℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、100〜50000h-1、好ましくは1000〜30000h-1であるのがよい。
【0277】
酸化触媒は、酸素の共存下、アンモニアやアミン等の含窒素ガスの他に、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、炭化水素類、一酸化炭素等の揮発性有機化合物(VOC)を含有した排ガス、例えば一般の工場や家庭から排出されるアンモニア及びアミン類等を含む排ガスの脱臭に用いることが可能である。特に、含窒素成分が1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下、その他揮発性有機化合物成分を1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下の排ガスの脱臭に用いると、本発明の効果が十分に発揮され得る。
【0278】
(炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法)
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法は、前記した酸化触媒の存在下、炭化水素を含み、酸素を還元性物質の完全酸化に必要な量よりも過剰に含む燃焼排ガスなどの排ガスを、酸素の共存下にて、酸化分解するものである。
【0279】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスは、例えば火力発電所や各種工場から多く排出されており、上記の排ガスは人体や環境に悪影響を与えるため、浄化処理が必要である。
例えば、炭化水素は、人が炭化水素の蒸気を吸引することで、急性の神経症状を発生したり、シックハウス症候群など慢性症状を引き起こす場合があるため、有害であるし、最も単純な構造の炭化水素であるメタンは、地球温暖化に関与する温室効果ガスである。
【0280】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法は、炭化水素を含み、酸素を還元性物質の完全酸化に必要な量よりも過剰に含む燃焼排ガスなどの排ガスを、酸素の共存下で、前記した酸化触媒と接触させることにより、被処理ガス中の炭化水素は次式の反応によって酸化される。
(炭化水素の分解)
CnHm +(n + 1/4m)O2 → nCO2 + 1/2mH2O
また、被処理ガスがメタンの場合、反応式は以下に示すものである。
(メタンの分解) CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
反応装置は特に制限されるものではなく、流通式(流動床、固定床)あるいはバッチ式、好ましくは多管ではない固定床流通式反応器等を用い、反応温度は、200℃〜350℃とし、反応圧力は常圧〜1MPa、GHSV(ガス空間速度)は、1000〜10000h-1であるのがよい。
【0281】
炭化水素を含む酸素過剰な排ガスの酸化分解方法において、被処理ガス中の酸素濃度が極端に低い場合には、反応速度が低下するので、体積基準の酸素濃度として、2%以上であり、かつガス中の炭化水素などの還元性成分の酸化当量の5倍以上の酸素が存在することが好ましい。このとき排ガス中の酸素濃度が十分高くないときには、あらかじめ所要の量の空気を混ぜてもよい。
【0282】
(窒素酸化物除去触媒)
本発明の成形体は、窒素酸化物除去反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする該触媒担体(成形体)に白金族元素を担持させた触媒(以下、窒素酸化物除去触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、酸化反応を効率よく促進することができる。
【0283】
各種燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する方法として選択的接触還元法が広く用いられている。この方法は、アンモニア(NH3)、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを還元剤として、各種燃焼排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素(N2)、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)などに分解して除去するものである。この反応は、還元剤としてアンモニア(NH3)を用いる場合には以下の反応式(C9)〜(C11)で、還元剤として水素(H2)を用いる場合には以下の反応式(C12)、(C13)で、還元剤として一酸化炭素(CO)を用いる場合には以下の反応式(C14)で、還元剤として炭化水素(HC)のうち、例えばメタン(CH4)を用いる場合には以下の反応式(C15)、(C16)で、それぞれ表される。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O (C9)
6NO2+8NH3 → 7N2+12H2O (C10)
NO+NO2+2NH3 → 2N2+3H2O (C11)
2NO+2H2 → N2+2H2O (C12)
2NO2+4H2 → N2+4H2O (C13)
2NO+2CO → N2+2CO2 (C14)
4NO+CH4 → 2N2+2H2O+CO2 (C15)
2NO2+CH4 → N2+2H2O+CO2 (C16)
【0284】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔質耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、ρ型、χ型、γ型、η型、擬γ型、κ型およびδ型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0285】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0286】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が100m2/g未満であると、充分な量の触媒成分(白金族元素)を担持させ難くなるおそれがあると同時に、触媒の活性部位と排ガス中の窒素酸化物との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0287】
窒素酸化物除去触媒は、上述した触媒担体に、白金族元素を担持したものである。白金族元素はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、特に、パラジウムを担持させたものが好ましい。
【0288】
パラジウムの担持量は、金属パラジウム換算で、触媒全重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%であることがよい。パラジウムの担持量が0.01重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、10重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。また、担持されたパラジウムは触媒担体上で通常、金属の形態で存在するものであり、担持量は金属としての重量である。また、他の白金族元素もPdとほぼ同様の担持量でよい。
【0289】
触媒担体にパラジウムを担持させる方法は、特に制限はないが、例えば、パラジウム塩、パラジウム化合物等を適当な溶媒に溶解したパラジウム溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させる、ついで加熱処理(乾燥および焼成)、還元処理する方法を採用すればよい。加熱処理は通常空気中で行われ、また還元処理は通常気相中、水素によって加熱下に行われる。パラジウム溶液のパラジウム濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量のパラジウムが担持されるように適宜設定すればよい。
パラジウム塩やパラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム等の有機酸の水溶性塩、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸塩類、ジクロロジアンミンパラジウム、パラジウムのアンミン錯塩類、及びジニトロポリアンミンパラジウム類等の水溶性塩等が使用できる。
【0290】
窒素酸化物除去触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、銀、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデンなどの金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、通常、酸化物の形態で含まれる。
【0291】
(排ガス中の窒素酸化物の除去方法)
排ガス中の窒素酸化物の除去方法は、前記した窒素酸化物除去触媒の存在下、還元剤で排ガス中の窒素酸化物を分解除去するものである。
還元剤としては、例えば上述したアンモニア、水素、一酸化炭素、炭化水素類(メタン系)等が挙げられる。
【0292】
すなわち、窒素酸化物除去方法は、前記した窒素酸化物除去触媒の存在下、アンモニアなどの還元剤の共存下で、上述した式(C9)〜(C11)のような反応によって窒素酸化物を分解除去するものである。窒素酸化物の分解除去方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C9)〜(C16)の選択的接触還元法に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。窒素酸化物除去触媒は、反応装置や容器に充填して排ガス中の窒素酸化物除去に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく排ガス中の窒素酸化物を分解除去することができる。
【0293】
排ガス中の窒素酸化物は、一酸化窒素、二酸化窒素およびこれらの混合物であり、その濃度は通常0.001〜5容量%である。なお、排ガスは窒素酸化物の他に水や二酸化炭素なども含む。
【0294】
排ガス中の窒素酸化物の分解の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応圧力は、通常1×105Pa以上であり、通常50×105Pa以下、好ましくは30×105Pa以下である。
【0295】
排ガス中の窒素酸化物の分解反応は、通常、多管式または多管式でない固定床反応器を用いて行われ、そのときの窒素酸化物を含む排ガスのGHSV(ガス空間速度)は、通常100h-1以上、100000h-1以下である。
【0296】
(脱硫触媒)
本発明の成形体は、水素化脱硫反応の触媒担体として好適に使用することができる。すなわち、アルミナを主成分とする触媒担体(成形体)に周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の元素を担持させた触媒(以下、脱硫触媒という場合がある。)は、高い触媒性能を効率よく発揮することができ、脱硫反応を効率よく促進することができる。
【0297】
水素化脱硫反応は、水素の共存下、石油系炭化水素留分中の硫黄化合物を、100〜600℃の温度、1〜20MPaの圧力、0.1〜20/時の液空間速度(LHSV)、0.01〜2000Nm3/m3の水素/原料油の供給速度、の反応条件で反応させ除去するものであり、この反応は以下の反応式(C17)で表される。
R‐SH+H2 → R‐H+H2S (C17)
上記式において、Rは炭化水素基である。
【0298】
触媒担体はアルミナを主成分とする多孔質耐火物からなるものであり、具体的には触媒担体の成形材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、触媒担体の主成分とするアルミナの結晶形は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型およびθ型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0299】
触媒担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
触媒担体のBET比表面積が100m2/g未満であると、触媒の活性部位と石油系炭化水素中の硫黄化合物との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0300】
触媒担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0301】
脱硫触媒は、上述した担体に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素を担持したものである。周期律表第VIA族の元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)から選ばれる金属であり、特にモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)を担持させたものが好ましい。周期律表第VIII族の元素としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、特に、コバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)を担持させたものが好ましい。
【0302】
周期律表第VIA族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物元素換算で1〜20重量%、好ましくは2〜18重量%、更に好ましくは5〜15重量%であることがよい。第VIA族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、20重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、第VIA族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、モリブデンおよびタングステンの担持比率は1:1でよい。
また、周期律表第VIII族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物換算で1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは3〜7重量%であることがよい。なお、第VIII族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、10重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。また、第VIII族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、コバルトおよびニッケルの担持比率は1:1でよい。
なお、周期律表第VIA族元素および第VIII族元素は、その一方、又は両元素を触媒担体上に担持させてもよい。
【0303】
触媒担体に周期律表第VIA族元素、第VIII族元素を担持させる方法は、特に制限はなく、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等の塩もしくは化合物を適当な溶媒に溶解した溶液を、触媒担体に接触もしくは含浸させ、ついで加熱処理(乾燥および焼成)する方法を採用すればよい。
第VIA族元素、第VIII族元素を担持する順番や、第VIA族元素、第VIII族元素の溶液の濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の第VIA族元素、第VIII族元素が担持されるように適宜設定すればよい。
【0304】
モリブデンの塩もしくは化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸等が使用でき、タングステンの塩もしくは化合物としては、例えば、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸等が使用でき、コバルトの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト等が使用でき、ニッケルの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル等が使用できる。
【0305】
<石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法>
石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した脱硫触媒を用い、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。
【0306】
すなわち、石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した脱硫触媒を用い、水素の共存下で、上述した式(C17)の反応によって石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(C17)に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。石油系炭化水素中の硫黄化合物除去触媒は、反応装置や容器に充填して石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去することができる。
【0307】
石油系炭化水素としては、原油の常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、熱分解、接触分解および水素化処理などの石油精製工程で生成する留分が挙げられる。
【0308】
石油系炭化水素中の硫黄化合物としては、メタンチオールおよびエタンチオールなどのチオール類、ジメチルスルフィドおよびジエチルスルフィドなどの硫化物、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドなどの二硫化物、チオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類およびベンゾナフトチオフェン類などが挙げられる。
【0309】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは200℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応圧力は、通常1MPa以上、好ましくは2MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下である。
【0310】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解反応は、通常、多管式固定床反応器を用いて行われ、そのときの硫黄化合物を含む石油系炭化水素のLHSV(液空間速度)は、通常0.1h-1以上、20h-1以下であり、水素/原料油の供給速度は、通常0.01Nm3/m3以上、2000Nm3/m3以下である。
【実施例】
【0311】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。以下の実施例の記載中、「部」は質量部を表し、ガスの流量を表すml/分は、特記のない限りSTP基準である。
【0312】
〔実施例1〕
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]13241gを温水15000gに溶解し、これをA1液とする。また、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]6060g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]13096gおよび硝酸セシウム(CsNO3)585gを温水6000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]2910gを溶解し、これをB1液とする。
A1液を攪拌しながらこれにB1液を添加しスラリーを得、続いて噴霧乾燥し、乾燥物を得た。得られた乾燥物に、該乾燥物100質量部に対し三酸化アンチモン[Sb2O3]を2.5質量部、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を9質量部、純水32質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状の成形材料を得た。
この成形材料を図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:6.4mm、その溝21aの深さ:R1.3mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6.4mm、その溝22aの深さR1.3mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に示すように第一のダイ21を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msec停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
【0313】
〔実施例2〕
実施例1にて得たペースト状の成形材料を、図4(b)に示す押出成形機で、かつ図9に示すダイ(第1のダイ21´の径:6.4mm、その溝21´aの深さR1.3mm、その溝21´aの数:5個、第二のダイ22´の外径:30mm、第二のダイ22´の内径:6.4mm、その溝22´aの深さ:R1.3mm、その溝22´aの数;5個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図10に示すように、第一のダイ21´を回転速度60rpmにて144度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで144度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図8に示す成形体15を得た。
【0314】
〔比較例1〕
実施例1と同じペースト状の成形材料を図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:6.4mm、その溝21aの深さ:R1.3mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6.4mm、その溝22aの深さR1.3mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に実施例1と同じ成形材料を挿填し、モーター23bによって図5に破線で示すように第一のダイ21を回転速度40rpmで連続回転させながら、177mm/分で連続的に押出成形した。その後、実施例1と同様にして、ピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断した。
【0315】
実施例1、実施例2および比較例1でそれぞれ得られた成形体を、恒温恒湿槽(30℃、55%Rh)にて12時間乾燥した後、550℃で6時間焼成し、それぞれの成形品を得た。酸素を除く触媒組成は、Mo12Bi1.0Sb0.5Fe2.5Co7.5Cs0.6である。
【0316】
〔実施例3〕
(a)メタクロレインおよびメタクリル酸製造用触媒の製造方法
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]13241gを温水15000gに溶解し、これをA3液とする。また、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]6060g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]13096gおよび硝酸セシウム(CsNO3)585gを温水6000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]2910gを溶解し、これをB3液とする。
A3液を攪拌しながらこれにB3液を添加しスラリーを得、続いて噴霧乾燥し、乾燥物を得た。得られた乾燥物に、該乾燥物100質量部に対し三酸化アンチモン[Sb2O3]を2.5質量部、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を9質量部、純水32質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状の成形材料を得た。
図4(b)および図7(a)に示す押出成形機を用い(第一のダイ21の径:6mm、その溝21aの深さ:R1.5mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:6mm、その溝22aの深さR1.5mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター13によって第一のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1200msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0317】
(b)焼成工程
得られた触媒前駆体は、545℃で6時間焼成した。酸素を除く触媒組成は、Mo12Bi0.96Sb0.48Fe2.4Co7.2Cs0.48Si2.20Al2.39である。
【0318】
(c)還元処理
(b)で得られた触媒原料をガラス管に充填し、ここに水素/窒素=5/95(容積比)の混合ガスを空間速度240h-1で供給し、345℃で8時間還元処理を行い、さらに、空気中にて350℃で3時間焼成し、還元処理触媒を得た。
【0319】
〔比較例2〕
実施例3と同じペースト状の成形材料を、打錠成型や押出成型等によって、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6mmであり、貫通孔40を持つ、図11に示す形状(リング状)に成形し、触媒前駆体とした。
次に、得られた触媒前駆体を、実施例3と同様にして焼成および還元処理を行い、触媒(リング状)を得た。
【0320】
〔実施例4〕
(イ)メタクロレインおよびメタクリル酸製造用触媒の製造方法
モリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]4414gを温水5000gに溶解し、これをA4液とする。一方、硝酸鉄(III)[Fe(NO3)3・9H2O]2020g、硝酸コバルト[Co(NO3)2・6H2O]4366gおよび硝酸セシウム[CsNO3]195gを温水2000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO3)3・5H2O]970gを溶解し、これをB4液とする。
A4液を攪拌し、この中にB4液を添加してスラリーを得、次いでこのスラリーを気流乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物を得た。この乾燥物100質量部に対し、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)を6質量部、純水33質量部、メチルセルロース4質量部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
この成形材料を、実施例3と同じ押出成形機を用い(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター13によって第一のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1200msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0321】
(ロ)焼成工程
得られた触媒前駆体は、525℃で6時間焼成した。この触媒は、モリブテン12原子に対してビスマス0.96原子、鉄2.4原子、コバルト7.2原子、セシウム0.48原子を含んでいる。
【0322】
(ハ)還元処理
(ロ)で得られた触媒原料をガラス管に充填し、ここに水素/窒素=5/95(容積比)の混合ガスを空間速度240h-1で供給し、375℃で8時間還元処理を行い、さらに、空気中にて350℃で3時間焼成し、還元処理触媒を得た。
【0323】
〔実施例5〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水32部、メチルセルロース4部、補強用繊維9部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
図4(b)に示す押出成形機で、かつ図12に示すダイ(第一のダイ26の径:5.9mm、その溝26aの深さ:R0.8mm、その溝26aの数:6個、第二のダイ27の外径:30mm、第二のダイ27の内径:5.9mm、その溝27aの深さR0.8mm、その溝27aの数:3個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図13に示すように第一のダイ26を回転速度60rpmで120度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで120度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが9〜10mmとなるように切断し、図14に示す成形体28を得た。
【0324】
図14(a)、(b)に示す成形体28は、所定の間隙で配置された6本の柱状部42と、前記複数の柱状部42の長手方向両端部に設けられ互いに隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部44とを備え、前記柱状部42の長手方向(すなわち後述する成形体28の押出方向)に複数の柱状部42で囲まれた貫通孔43を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体28の押出方向と直交する方向)には、前記複数の柱状部42間の間隔によって形成された開口45を有する形状を呈している。
【0325】
この実施形態では、6本の柱状部42はそれらの間に貫通孔43を形成するように等間隔で配列されている。そして、ブリッジ部44は、隣接する各柱状部42同士を接合するように各柱状部42を横切るように巻回している。また、隣接する柱状部42、42間には、それらの間の間隙に相当する幅を有する開口45が形成され、この開口45の上下はブリッジ部41が位置している。
【0326】
〔実施例6〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水32部、メチルセルロース4部、補強用繊維9部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。
図4(b)に示す押出成形機で、かつ図15に示すダイ(第一のダイ29の径:5.4mm、その溝29aの深さ:R1.3mm、その溝29aの数:4個、第二のダイ30の外径:30mm、第二のダイ30の内径:5.4mm)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図16に示すように第一のダイ29を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図17に示す成形体31を得た。
【0327】
図17(a)、(b)に示す本発明の成形体31の形状は、筒体であり、筒体の長手方向(すなわち後述する成形体31の押出方向)に貫通孔53を有し、かつ周面(すなわち後述する成形体28の押出方向と直交する方向)には、所定の間隔によって形成された開口54を有する形状を呈している。
【0328】
〔実施例7〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水33部、メチルセルロース4部、補強用繊維18部、三酸化アンチモン2.5部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。実施例3と同ダイスにて押出し、図1に示す成形体10を得た。
【0329】
〔実施例8〕
実施例3において得られた乾燥物100部に対し、純水33部、メチルセルロース4部、補強用繊維6部を混合した成形材料を混練機で混練し、ペースト状にした。実施例3と同ダイスにて押出し、図1に示す成形体10を得た。
【0330】
〔実施例9〕
40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム38.2kg、硝酸銅(II)3水和物10.2kg、85重量%リン酸24.2kgおよび70重量%硝酸25.2kgを溶解した(これをA9液と称する)。40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブテン酸アンモニウム4水和物297kgを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム8.19kgを懸濁させた(これをB9液と称する)。このB9液の中に、攪拌下、A9液を滴下した後、三酸化アンチモン10.2kgを加え、密封容器中で120℃にて17時間攪拌した。得られたスラリーのpHは6.3であった。このスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥した。得られた乾燥粉中の硝酸アンモニウムの含有量は12重量%であった。この乾燥粉100重量部に、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)4重量部、硝酸アンモニウム13重量部およびイオン交換水9重量部を加えて混練し、ペースト状にした。
次に、図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に示すように第一のダイ21を回転速度60rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
この成形体10を、温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で220℃にて22時間、空気気流中で250℃にて1時間の順に熱処理して、ケギン型ヘテロポリ酸塩を得た。この前駆体を、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0331】
〔実施例10〕
実施例9にて得られた成形体10を温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気を窒素に切り替え、435℃に昇温して、同温度で4時間保持した。
その後、70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0332】
〔比較例3〕
実施例4の成形材料を、前記した比較例2と同様の操作を行い、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6mmであり、貫通孔40を持つ、図11に示す形状(リング状)に成形し、触媒前駆体を得た。
次いで、得られた触媒前駆体を、実施例4と同様に、焼成および還元処理を行い、触媒(リング状)を得た。
【0333】
〔比較例4〕
実施例9にて得られた乾燥粉100重量部に、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、「RFC400−SL」)4重量部、硝酸アンモニウム13重量部およびイオン交換水9重量部を加えて混練し、ペースト状にした。図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7に示すダイ(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を挿填し、モーター23によって図5に破線で示すように第一のダイ21を回転速度40rpmで回転させながら177mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断した。この成形体を、温度90℃、湿度30%RHにて3時間乾燥した後、空気気流中で220℃にて22時間、空気気流中で250℃にて1時間の順に熱処理して、ケギン型ヘテロポリ酸塩を得た。この前駆体を、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却し、触媒を得た。
【0334】
〔実施例11〕
ステアリン酸2質量部と水硬性アルミナ粉末100質量部を80℃で混合して得た粉末26.8質量部と、酸化チタン(IV)粉末42.0質量部と、マグネシアスピネル粉末15.7質量部とガラスフリット3.4質量部とメチルセルロース6.9質量部とを混合した。ついで、この混合物に対して、純水34部と、グリセリン0.35部と、セラミゾール(「C−08」、 日油(株)製)0.2部とを加えて混合した後、混練機を用いて混練し、ペースト状にした。図4(b)に示す押出成形機で、かつ図7(a)に示すダイ(第一のダイ21の径7.8mm、その溝21aの深さR1.8mm、その溝21aの数:4個、第2のダイ22の外径11mm、第2のダイ22の内径7.8mm、その溝22aの深さR1.8mm、その溝22aの数:4個)を用いて、該ダイの流路25に前記成形材料を装填し、モーター23によって図5に示すように第1のダイ21を回転速度90rpmで180度回転させ、1250msc停止、さらに回転速度60rpmで180度回転させ、上記動作を繰り返しながら154mm/分で押出した。成形直後の成形体をピアノ線により長さが9〜11mmとなるように切断し、図1に示す成形体10を得た。
得られた成形体は、120℃で3時間乾燥し、その後1250℃で5時間焼成し、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶を含む触媒担体を得た。
【0335】
実施例11で得られた成形体の全細孔容積は0.2mL/g、極大細孔半径は1.4μmだった。
【0336】
〔実施例12〕
実施例5と同じペースト状の成形材料を図7(a)、(b)に示す押出成形機を用い(第一のダイ21の径:4.6mm、その溝21aの深さ:R1.2mm、その溝21aの数:4個、第二のダイ22の外径:30mm、第二のダイ22の内径:4.6mm、その溝22aの深さR1.2mm、その溝22aの数:4個)の流路25に挿填し、モーター23によって第一のダイ21を回転速度100rpmで180度回転させ、1000msc停止、さらに回転速度90rpmで180度回転させ、上記動作を繰返しながら222mm/分で押出した。成形直後の触媒をピアノ線により長さが8〜9mmとなるように切断し、図1に示す形状に成形したものを触媒前駆体とした。
【0337】
(成形性)
上記で得られた成形品の成形性について、成形直後の成形体をピアノ線で切断した際に成形体が潰れず形状が保たれたものを○とし、ピアノ線の切断により成形体が潰されたものを×として評価した。その結果を表1に示す。
【0338】
(落下強度試験)
切断した成形品を、垂直に立てられ下端に高さ30mmのシリコーンゴム製の栓をした内径30.0mm、長さ5mの鉄パイプ中の上端から落下させ、次に落下した成形品を篩にかけ、粉砕品、半割れ品および良品に篩別し、良品の割合にて評価した。粉砕品、半割れ品および良品の割合は、以下の基準にて評価した。
粉砕品:8メッシュ以下(−8#)〔8メッシュの篩(目開き2.36mm)を通過したものの割合(質量%)〕
半割品:8メッシュ以上4メッシュ以下(+8#〜−4#)〔4メッシュの篩(目開き4.75mm)を通過し、8メッシュ篩(目開き2.36mm)を通過しないものの割合(質量%)〕
良品:4メッシュ上(+4#)〔4メッシュの篩(目開き4.75mm)を通過しないものの割合(質量%)〕
その結果を表1に示す。
【0339】
【表1】
【0340】
表1から、実施例1〜10で得られた非螺旋状の成形品は、比較例1および比較例4の螺旋状の成形品よりも高い落下強度を有していることがわかる。
【0341】
実施例1〜10および比較例1〜4にて得られた触媒の形状および寸法は、表2に示す通りであった。表2中に示す嵩比重については、以下の手順により測定した。
1.内径36mmφの200mlシリンダーに正確に量り取った60g(重量)の触媒を充填する。
2.約20mmの高さからマットの上に100回タッピングする。
3.シリンダーの目盛りを読み取り、(2)式にて嵩比重を計算する。
嵩比重=重量(g)/ 読み取り容積(ml) (2)
また、表2に示す横穴については、柱状部と柱状部同士を接合するブリッジ部とにより形成された成形体周面の開口部を表す。
【0342】
【表2】
【0343】
(活性評価)
実施例3にて得られた触媒3.0mlを、30.0gのシリコンカーバイト(14メッシュ)とともに、内径18mmのガラス製反応管に充填し、イソブチレン:酸素:窒素:スチーム=1:2.2:6.2:2のモル比の原料ガスを供給し、反応温度390℃、空間速度SV=1750h-1(STP:Standard Temperature and Pressure)の反応条件で反応を行った。その結果を表3に示す。
【0344】
【表3】
【0345】
表3に示すように、実施例3,4における触媒は、各反応温度での転化率および選択率が比較例2、3における触媒の選択率を上回る結果となった。
【0346】
(圧力損失の測定)
実施例3および比較例2の成形体焼成物をSUS製パイプに充填した時の圧力損失を次のようにして測定した。すなわち、内径25mmφのSUS製パイプの一方の口を塞ぐ為、網を張り、他方の開口部には通気用の配管および圧検出用のデジタル式差圧計を備えたゴム栓を嵌合し、測定を行った。触媒充填前の反応管に流量15L/分の空気を流し、大気圧との差圧を測定し、これをブランク値とした。続いて、触媒を1380mmの高さで充填した反応管に、先と同様、流量15L/分の空気を流し、大気圧との差圧をデジタル式差圧計を用いて測定し、この値とブランク値との差分ΔPを、触媒充填後の反応管の圧力損失とした。その結果を表4に示す。
【0347】
【表4】
【0348】
(加熱前成形体の耐圧強度およびその変動係数)
実施例11の成形体の中から、無作為に22個サンプリングし、測定試料とした。ついで、先端にゲージアタッチメント(型番:012B)を取り付けた、アイコーエンジニアリング(株)製のデジタルプッシュプルゲージ(「Model.RX−50」)を、同社製の電動スタンド(「Model.1307」)に固定した。ついで、該電動スタンドの昇降台中央に1個の成形体を静置したのち、60mm/分の一定速度で昇降台ごと上昇させ、前記プッシュプルゲージ先端に取り付けられたゲージアタッチメントに押し当てて、前記成形体が崩壊した時の荷重を前記プッシュプルゲージのピークホールド機能により読み取った。この測定を22個の成形体を用いて実施し、最大値と最小値を除いた20個の測定値の平均値を加熱前成形体の耐圧強度CSbとした。同様に標準偏差も算出し、これを前記成形体の耐圧強度CSbで割って加熱前成形体の変動係数CVCSbを求めた。ここで、該成形体の軸方向と垂直な方向にプッシュプルゲージ先端のゲージアタッチメントを押し当てて測定した。
(加熱後成形体の耐圧強度およびその変動係数)
上記と同様の方法にて別に22個の加熱前の成形体をサンプリングし、これをルツボに入れて電気炉に仕込んだ。その後、空気中、毎分300℃の速度で1200℃まで昇温し2時間保持した後、電気炉の扉を空け、ルツボを取り出し、ルツボ中の該成形体22個全てを常温の水が入ったステンレス製ビーカーに直ちに投入した。ついで、適当な目開きの篩などで水分を分離して回収した該成形体を、熱風循環式乾燥機にて200℃で3時間乾燥した後、上記と同様の方法で加熱後成形体の耐圧強度CSaと変動係数CVCSaを夫々求めた。その結果を表5に示す。
【0349】
【表5】
【符号の説明】
【0350】
10:成形体、11:ブリッジ部、12:柱状部、13:貫通孔、14:開口、15:成形体、16:ブリッジ部、17:柱状部、18:開口、19:貫通孔、20:押出成形機、21:第一のダイ、21a :第一のダイの溝、22:第二のダイ、22a:第二のダイの溝、23:回転手段、23a:回転軸23b:モーター、24:切断手段、25:流路、26:第一のダイ、26a :第一のダイの溝、27:第二のダイ、27a :第二のダイの溝、28:成形体、29:第一のダイ、29a :第一のダイの溝、30:第二のダイ、30a:第二のダイの溝、31:成形体、40:貫通孔、41:成形体、42:柱状部、43:貫通孔、44:ブリッジ部、45:開口、53:貫通孔、54:開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有することを特徴とする成形体。
【請求項2】
外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、
(イ)前記第一および第二のダイをそれらの溝同士を重ね合わせた位置から該第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士を重ね合わせる位置まで回転させてブリッジ部を成形し、
(ロ)ついで前記第一および第二のダイのいずれか一方の回転を停止させて柱状部を成形し、
(ハ)再び第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士を重ね合わせる位置まで回転させてブリッジ部を成形する動作を繰り返して成形体を成形する、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成形体の製造方法にて、押出成形機から出た前記柱状部を、前記ブリッジ部を含む所定の長さで切断することを特徴とする請求項2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブテン、ビスマス、鉄を含有し、さらにニッケルおよび/またはコバルトを含有する複合酸化物であることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項5】
前記複合酸化物が、下記一般式(I)
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、0≦e≦10、0≦f≦10、0<g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)
で示されるものである請求項4に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項6】
前記複合酸化物が、その前駆体を分子状酸素含有ガスの雰囲気下で焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理したものである請求項4または5に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項7】
前記焼成が300〜600℃で行われる請求項6に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項8】
前記熱処理が200〜600℃で行われる請求項6または7に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項9】
前記還元性物質が水素、アンモニア、一酸化炭素、炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、炭素数1〜6のアルデヒドおよび炭素数1〜6のアミンから選ばれる化合物である請求項6〜8のいずれかに記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれかに記載の触媒の存在下、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素とを気相接触酸化する、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法。
【請求項11】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒。
【請求項12】
前記ヘテロポリ酸化合物が、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項11に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項13】
前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第一焼成し、次いで酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである請求項11または12に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項14】
前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第一焼成し、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである請求項11または12に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の触媒存在下、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を、分子状酸素により気相接触酸化することを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
【請求項16】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がチタン酸アルミニウム系結晶を含むことを特徴とする成形体。
【請求項17】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末およびチタニウム源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内である請求項16に記載の成形体。
【請求項18】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、およびケイ素源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、原料混合物に含まれる前記ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下である、請求項16に記載の成形体。
【請求項19】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内である、請求項16に記載の成形体。
【請求項20】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内であり、前記原料混合物に含まれる前記ケイ素源粉末の含有量は、前記原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下である、請求項16に記載の成形体。
【請求項21】
前記ケイ素源粉末は、長石あるいはガラスフリット、またはそれらの混合物からなる粉末である請求項18または20に記載の成形体。
【請求項22】
前記原料混合物は、造孔剤をさらに含む請求項17〜21のいずれかに記載の成形体。
【請求項23】
水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.1mL/g以上であり、かつ、極大細孔半径が1μm以上である、請求項17〜22のいずれかに記載の成形体。
【請求項24】
耐圧強度が5daN以上であり、加熱前成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体との耐圧強度の比が下記式(A)を満たし、かつ、前記夫々の成形体の耐圧強度の変動係数の比が下記式(B)を満たす請求項16〜23のいずれかに記載の成形体。
CSa/CSb≧0.4 (A)
CVCSa/CVCSb≦2.5 (B)
(式中、CSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度であり、CSbは加熱前成形体の耐圧強度であり、CVCSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度の変動係数であり、CVCSbは加熱前成形体の耐圧強度の変動係数である。)
【請求項25】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、ニッケルが担持されてなることを特徴とする合成ガス製造用触媒。
【請求項26】
ニッケルの担持量が触媒全重量の0.1〜50重量%である請求項25に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項27】
前記成形体がカルシウムを酸化物(CaO)換算で0.1〜30重量%含む請求項25または26に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項28】
前記成形体中のカルシウムの少なくとも一部はアルミナと化合物を形成している請求項27に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項29】
前記アルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうち1種以上である請求項25〜28のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項30】
前記成形体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下である請求項25〜29のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項31】
前記成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.10mL/g以上であり、かつ細孔半径0.01μm以上の細孔を0.01mL/g以上有するものである請求項25〜30のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項32】
前記成形体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において、1m2/g以上のBET比表面積を有するものである請求項25〜31のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項33】
さらに白金族元素をも含有する請求項25〜32のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項34】
前記白金族元素は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項25〜33のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項35】
前記白金族元素の含有量は触媒全重量に対して0.1〜10重量%である請求項33または34に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項36】
請求項25〜35のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒の存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させることを特徴とする合成ガスの製造方法。
【請求項37】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、さらにシリカとマグネシウム元素とを含有することを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項38】
前記触媒中のシリカの含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で0.5重量部以上である請求項37に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項39】
前記触媒中のマグネシウム元素の含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、Mg換算で0.01〜1.2重量部である請求項37または38に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項40】
請求項37〜39のいずれかに記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させることを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
【請求項41】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体であって、該成形体がアルミナを主成分とすることを特徴とする成形体。
【請求項42】
前記アルミナの結晶相は、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうち1種以上である請求項41に記載の成形体。
【請求項43】
前記成形体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下である請求項41または42に記載の成形体。
【請求項44】
前記成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、細孔半径0.0001μm以上の細孔を0.01mL/g以上有するものである請求項41〜43のいずれかに記載の成形体。
【請求項45】
前記成形体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において、0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものである請求項41〜44のいずれかに記載の成形体。
【請求項1】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有することを特徴とする成形体。
【請求項2】
外周面に複数の溝を有する第一のダイと、該第一のダイが嵌入され内周面に複数の溝を有するリング状ないし筒状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、
(イ)前記第一および第二のダイをそれらの溝同士を重ね合わせた位置から該第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士を重ね合わせる位置まで回転させてブリッジ部を成形し、
(ロ)ついで前記第一および第二のダイのいずれか一方の回転を停止させて柱状部を成形し、
(ハ)再び第一のダイと第二のダイの少なくとも一方を、次の前記第一および第二のダイの溝同士を重ね合わせる位置まで回転させてブリッジ部を成形する動作を繰り返して成形体を成形する、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成形体の製造方法にて、押出成形機から出た前記柱状部を、前記ブリッジ部を含む所定の長さで切断することを特徴とする請求項2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともモリブテン、ビスマス、鉄を含有し、さらにニッケルおよび/またはコバルトを含有する複合酸化物であることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項5】
前記複合酸化物が、下記一般式(I)
MoaBibFecAdBeCfDgOx (I)
(式中、Mo、BiおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはマンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、スズおよび鉛から選ばれる元素を表し、Cはリン、ホウ素、ヒ素、テルル、タングステン、アンチモン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる元素を表し、Dはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる元素を表し、a=12としたとき、0<b≦10、0<c≦10、1≦d≦10、0≦e≦10、0≦f≦10、0<g≦2であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。)
で示されるものである請求項4に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項6】
前記複合酸化物が、その前駆体を分子状酸素含有ガスの雰囲気下で焼成した後、還元性物質の存在下で熱処理したものである請求項4または5に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項7】
前記焼成が300〜600℃で行われる請求項6に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項8】
前記熱処理が200〜600℃で行われる請求項6または7に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項9】
前記還元性物質が水素、アンモニア、一酸化炭素、炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、炭素数1〜6のアルデヒドおよび炭素数1〜6のアミンから選ばれる化合物である請求項6〜8のいずれかに記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸製造用触媒。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれかに記載の触媒の存在下、プロピレン、イソブチレンおよびターシャリーブチルアルコールから選ばれる化合物と分子状酸素とを気相接触酸化する、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の製造方法。
【請求項11】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、触媒成分が少なくともリンおよびモリブテンを含むヘテロポリ酸化合物からなることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒。
【請求項12】
前記ヘテロポリ酸化合物が、さらにバナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、亜鉛、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項11に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項13】
前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第一焼成し、次いで酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである請求項11または12に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項14】
前記ヘテロポリ酸化合物は、その前駆体を酸化性ガスの雰囲気下に300〜400℃で第一焼成し、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に400〜500℃で第二焼成を行うことにより、得られたものである請求項11または12に記載のメタクリル酸製造用触媒。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の触媒存在下、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタンおよびイソ酪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を、分子状酸素により気相接触酸化することを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
【請求項16】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がチタン酸アルミニウム系結晶を含むことを特徴とする成形体。
【請求項17】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末およびチタニウム源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内である請求項16に記載の成形体。
【請求項18】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、およびケイ素源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、原料混合物に含まれる前記ケイ素源粉末の含有量は、原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下である、請求項16に記載の成形体。
【請求項19】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内である、請求項16に記載の成形体。
【請求項20】
前記チタン酸アルミニウム系結晶が、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含む原料混合物を焼成したものであり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末とのモル比は、35:65〜45:55の範囲内であり、前記原料混合物中におけるAl2O3換算での前記アルミニウム源粉末とTiO2換算での前記チタニウム源粉末との合計量に対するMgO換算での前記マグネシウム源粉末の量は、モル比で0.03〜0.15の範囲内であり、前記原料混合物に含まれる前記ケイ素源粉末の含有量は、前記原料混合物に含まれる無機成分中、5質量%以下である、請求項16に記載の成形体。
【請求項21】
前記ケイ素源粉末は、長石あるいはガラスフリット、またはそれらの混合物からなる粉末である請求項18または20に記載の成形体。
【請求項22】
前記原料混合物は、造孔剤をさらに含む請求項17〜21のいずれかに記載の成形体。
【請求項23】
水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.1mL/g以上であり、かつ、極大細孔半径が1μm以上である、請求項17〜22のいずれかに記載の成形体。
【請求項24】
耐圧強度が5daN以上であり、加熱前成形体と、該成形体を1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体との耐圧強度の比が下記式(A)を満たし、かつ、前記夫々の成形体の耐圧強度の変動係数の比が下記式(B)を満たす請求項16〜23のいずれかに記載の成形体。
CSa/CSb≧0.4 (A)
CVCSa/CVCSb≦2.5 (B)
(式中、CSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度であり、CSbは加熱前成形体の耐圧強度であり、CVCSaは1200℃で2時間加熱した直後に常温の水中に投入し、乾燥して得られた成形体の耐圧強度の変動係数であり、CVCSbは加熱前成形体の耐圧強度の変動係数である。)
【請求項25】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、ニッケルが担持されてなることを特徴とする合成ガス製造用触媒。
【請求項26】
ニッケルの担持量が触媒全重量の0.1〜50重量%である請求項25に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項27】
前記成形体がカルシウムを酸化物(CaO)換算で0.1〜30重量%含む請求項25または26に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項28】
前記成形体中のカルシウムの少なくとも一部はアルミナと化合物を形成している請求項27に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項29】
前記アルミナの結晶相は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうち1種以上である請求項25〜28のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項30】
前記成形体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下である請求項25〜29のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項31】
前記成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、全細孔容積が0.10mL/g以上であり、かつ細孔半径0.01μm以上の細孔を0.01mL/g以上有するものである請求項25〜30のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項32】
前記成形体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において、1m2/g以上のBET比表面積を有するものである請求項25〜31のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項33】
さらに白金族元素をも含有する請求項25〜32のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項34】
前記白金族元素は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項25〜33のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項35】
前記白金族元素の含有量は触媒全重量に対して0.1〜10重量%である請求項33または34に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項36】
請求項25〜35のいずれかに記載の合成ガス製造用触媒の存在下、炭化水素類と水蒸気とを反応させることを特徴とする合成ガスの製造方法。
【請求項37】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体からなり、該成形体がアルミナを主成分とし、さらにシリカとマグネシウム元素とを含有することを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項38】
前記触媒中のシリカの含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、SiO2換算で0.5重量部以上である請求項37に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項39】
前記触媒中のマグネシウム元素の含有量は、Al2O3換算で100重量部のアルミナに対して、Mg換算で0.01〜1.2重量部である請求項37または38に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項40】
請求項37〜39のいずれかに記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させることを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
【請求項41】
少なくとも一つの間隙をもって配置された複数の柱状部と、これら複数の柱状部の少なくとも長手方向両端部に設けられ隣接する柱状部同士を接合するブリッジ部とを備え、前記複数の柱状部で囲設された貫通孔を有し、かつ周面に前記柱状部間の間隙によって形成された開口を有する成形体であって、該成形体がアルミナを主成分とすることを特徴とする成形体。
【請求項42】
前記アルミナの結晶相は、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型およびα型のうち1種以上である請求項41に記載の成形体。
【請求項43】
前記成形体中のナトリウム含有量は酸化物(Na2O)換算で0.5重量%以下である請求項41または42に記載の成形体。
【請求項44】
前記成形体は、水銀圧入法による細孔容積測定において、細孔半径0.0001μm以上の細孔を0.01mL/g以上有するものである請求項41〜43のいずれかに記載の成形体。
【請求項45】
前記成形体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において、0.1m2/g以上のBET比表面積を有するものである請求項41〜44のいずれかに記載の成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−140210(P2011−140210A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141497(P2010−141497)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]