成形体の前処理方法、接着物品及びその製造方法、並びに塗装物品及びその製造方法
【課題】樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には、繊維を損傷させずに表層の樹脂層のみを微細に粗面化できる成形体の前処理方法を提供するとともに接着対象物又は塗膜との密着性に優れた、物品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する前処理工程を施す。前記前処理面に接着剤又は塗膜を塗布する。
【解決手段】樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する前処理工程を施す。前記前処理面に接着剤又は塗膜を塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含む成形体の接着又は塗装のための前処理方法、接着物品及びその製造方法、並びに塗装物品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック等の樹脂を含む複合材は、軽量で高強度であるため、航空機、自動車、船舶等の構造部材として広く用いられている。このような複合材からなる部材は、必要に応じて、他の部材と接着されたり、表面に塗装が施されたりして、用いられる(例えば、特許文献1参照)。この際、接着を強固なものとするために、あるいは塗装により形成された塗膜の密着性を高めるために、部材の被接着面又は被塗装面に前処理が行われる。このような接着前処理又は塗装前処理としては、サンディング、グリットブラスト等の方法が広く採用されている。また、接着前処理としては、ピールプライ法も採用されている。
【0003】
上記前処理はいずれも、部材の被接着面又は被塗装面を粗面化するとともに,新生面により表面の活性化を図るために行われる。サンディングは、サンドペーパー等の研磨媒体によって、部材表面を研磨する方法である。グリットブラストは、グリットと呼ばれる尖鋭な稜角をもつ粒を、圧縮空気等によって部材表面に吹き付ける方法である。ピールプライ法は、部材表面に剥離層(ピールプライ)を接着した後に、これを剥離する方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−62873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンディングやグリットブラストによる前処理を行うと、複合材表面の樹脂層を除去してしまい、内部の繊維を損傷させることが避けられない。その結果、接着又は塗装の際の接着対象物又は塗膜との密着性が低下してしまうとともに,複合材の強度が低下する恐れもある。また、塗装前処理の場合には、表面が荒れ、塗装肌が悪くなる問題も生じている。一方、ピールプライ法は、剥離面の残渣の問題があるとともに、付帯作業量が多く、廃棄物が発生する問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、従来のサンディングやグリットブラスト等による接着及び塗装前処理方法と異なり、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化できる成形体の前処理方法を提供することを目的とする。また本発明は、接着対象物又は塗膜との密着性が優れた、接着物品及びその製造方法並びに塗装物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の成形体の前処理方法は、樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する工程を有している。
この成形体の前処理方法によれば、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化することができる。
【0008】
本発明の接着物品の製造方法は、前記前処理方法を施した前記成形体の前記面に接着剤を塗布する工程を有している。また、本発明の接着物品は、この製造方法により前記接着剤が塗布された前記面に、接着対象物が接着されてなるものである。
この接着物品は、成形体と接着対象物との密着性が優れている。
【0009】
本発明の塗装物品の製造方法は、前記前処理方法を施した前記成形体の前記面に塗料を塗布する工程を有している。又、本発明の塗装物品は、この製造方法により、前記成形体の前記面上に前記塗料が硬化した塗膜が形成されてなるものである。
この塗装物品は、成形体と塗膜との密着性が優れ、塗装肌も良好である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形体の前処理方法によれば、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化することができる。また、前記前処理方法を施した成形体は、その微細に粗面化された表面に接着剤や塗料が強固に機械的結合をすることにより、接着又は塗装した際に、接着対象物又は塗膜との密着性が良好となる。また、本発明の成形体の前処理方法によれば、表面の汚染層を均一に除去することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の前処理方法で処理対象となる樹脂成形体としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維又はボロン繊維等の無機繊維やナイロン繊維、ビニロン繊維、又はアラミド繊維等の有機繊維を不飽和ポリエステル又はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に配合させた繊維強化プラスチック(FRP)や、前記各繊維をポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はABS樹脂等の熱可塑性樹脂に配合した熱可塑性強化プラスチック(FRTP)等の、樹脂をマトリックスとした複合材料が好適に採用される。ただし、本発明はこれに限定されず、樹脂のみからなる材料も本発明の前処理方法で処理対象となり得る。
【0013】
本発明の前処理方法において用いられる粒子(投射材)としては、金属、セラミックス、ガラス等の硬質粒子が挙げられ、なかでもアルミナ、シリカ、炭化ケイ素、ジルコニア粒子等のセラミックス粒子を好適に用いることができる。本発明において用いられる粒子の形状は特に限定されず、略球形の粒子を用いてもよいし、また前記アルミナ、炭化ケイ素粒子等の尖鋭な稜角を有する粒子を用いてもよい。
【0014】
この投射材の平均粒径は200μm以下であり、10μm以上100μm以下が特に好ましい。投射材の平均粒径が200μmより大きいと、投射材粒子の過大な運動エネルギーにより成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。また、投射材の平均粒径が10μmより小さいと、安定した噴射状態を得ることが困難となる。
【0015】
前記投射材粒子を、樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に投射することにより、本発明の成形体の前処理方法が行われる。粒子を処理対象物の表面に投射して粗面を形成する処理を一般に「ショットブラスト」ともいう。ショットブラストの際の噴射速度は、例えば圧縮空気の噴射圧力により規定される。本発明において、ショットブラストの際の噴射圧力は0.1MPa以上1MPa以下が好ましく、0.3MPa以上0.6MPa以下がより好ましい。噴射圧力が1MPaより大きいと、投射材粒子の過大な運動エネルギーにより成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。また、噴射圧力が0.1MPaより小さいと安定した噴射状態を得ることが困難となる。
【0016】
本発明において、ショットブラストのカバレージは、好ましくは100%以上1000%以下、より好ましくは100%以上500%以下である。カバレージが100%未満では、成形体表面が十分に粗面化/活性化されず、成形体の被処理面と接着対象物又は塗膜との密着性の向上効果が得られない。また、カバレージが1000%を超えると、成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。
【0017】
上記の条件で前処理を行った成形体の被処理面の算術平均表面粗さRaは、0.3μm以上2μm以下となることが好ましい。被処理面の表面粗さが0.3μmより小さいと、成形体表面が十分に粗面化/活性化されず,成形体の被処理面と接着対象物又は塗膜との密着性の向上効果が得られないので好ましくない。また、被処理面の表面粗さが2μmより大きいと、前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので好ましくない。
【0018】
本発明の接着物品の製造方法においては、上記の前処理を行った成形体の被処理面に接着剤が塗布される。
接着剤としては、一般に樹脂の接着に用いられる接着剤であれば特に限定されず、例えば、エポキシ系接着剤、合成ゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤、ホットメルト等を用いることができる。また、成形体を形成する樹脂及び接着剤の両方と親和性を有する下地処理剤(プライマー)を成形体の被処理面に塗布してから、接着剤を塗布してもよい。
本発明の接着物品は、前記接着剤を成形体の被処理面に塗布した後に、その塗布面に接着対象物が接着されて形成される。接着対象物も樹脂を含む成形体である場合には、この接着対象物の被接着面にも、上記と同様に本発明の前処理方法が施されることが好ましい。
【0019】
本発明の塗装物品の製造方法においては、上記の前処理を行った成形体の被処理面に塗料が塗布される。
塗料としては、一般に樹脂の塗装に用いられる塗料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、アルキド系塗料、エポキシ系塗料等を用いることができる。また、成形体を形成する樹脂及び塗料の両方と親和性を有する下地処理剤(プライマー)を成形体の被処理面に塗布してから、塗料を塗布してもよい。
本発明の塗装物品は、前記塗料を成形体の被処理面に塗布した後に、この塗料が硬化した塗膜となって、形成される。
【0020】
次に、実施例および比較例を用いて、本発明による成形体の前処理方法、接着物品及びその製造方法、並びに塗装物品及びその製造方法についてさらに詳述する。
【0021】
[接着性評価試験1(層間破壊靱性試験)]
(比較例1)
2枚の短冊状の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)片(寸法350mm×25mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。各供試体の片面の端部から約300mmの位置までエポキシ系接着剤を塗布し、接着剤を塗布した側の接着剤塗布面同士を向かい合わせて、塗布面同士を接着した。
接着剤が硬化した後に、ダブル・カンチレバー・ビーム(DCB)法により層間破壊靱性試験を行った。すなわち、各供試体において、接着部分と反対側のそれぞれの端部に、接着面と略垂直方向の互いに離間する向きに荷重を与え、硬化した接着剤層において層間剥離が起こったときの靱性値を測定した。図1は、DCB法の概略図である。
同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0022】
(比較例2)
比較例1と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: アルミナ不定形粒子、#230
噴射圧力: 0.3MPa
カバレージ: 100%
各供試体のショットブラスト被処理面の端部から約300mmの位置まで、比較例1で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例1と同様に塗布面同士を接着した。比較例1と同様にDCB法により層間破壊靱性試験を行い、靱性値を測定した。同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0023】
(実施例1)
比較例1と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: セラミックス球形粒子(アルミナ、シリカ)、
#400(平均粒径50μm以下)
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
各供試体のショットブラスト被処理面の端部から約300mmの位置まで、比較例1で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例1と同様に塗布面同士を接着した。比較例1と同様にDCB法により層間破壊靱性試験を行い、靱性値を測定した。同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記層間破壊靱性試験においては、靱性値の値が大きいほど密着性が供試体同士の密着性が高いことを表す。本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例1)は密着性が優れていることが分かる。
【0026】
[接着性評価試験2(圧縮層間剪断試験)]
(比較例3)
2枚の短冊状の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)片(寸法80mm×15mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。各供試体の片面全面にエポキシ系接着剤を塗布し、接着剤を塗布した側の接着剤塗布面同士を向かい合わせて、塗布面同士を接着した。接着剤が硬化した後に,図2に示すように,供試体の両側から接着面まで切り欠きを設けた。
図2に示す圧縮荷重を与え、切り欠き部において層間剥離が起こったときの剪断強度値を測定した。図2は、この圧縮層間剪断試験の概略図である。同様の試験を計5回行った。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0027】
(比較例4)
比較例3と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面を#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いて水が弾かなくなるまで研磨したものを供試体とした。
比較例3で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例3と同様に塗布面同士を接着した。比較例3と同様に圧縮層間剪断試験を行い、剪断強度値を測定した。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0028】
(実施例2)
比較例3と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: 炭化ケイ素不定形粒子、#400
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
比較例3で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例3と同様に塗布面同士を接着した。比較例3と同様に圧縮層間剪断試験を行い、剪断強度値を測定した。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
上記圧縮層間剪断試験においても、本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例2)は密着性が優れていることが分かる。
【0031】
[塗膜密着性評価試験]
(比較例5)
CFRP片(寸法 200mm×100mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。供試体の片面に複合材塗装用のプライマーをスプレー塗装し、クロスカット法により塗装面に粘着テープを貼付後、剥離して、粘着テープと共に剥離された塗膜の面積百分率を測定することにより、塗膜密着性を評価した。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0032】
(比較例6)
比較例5と同様のCFRP片の片面を、#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いて水が弾かなくなるまで研磨したものを、供試体とした。
供試体のサンディング被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0033】
(実施例3)
比較例5と同様のCFRP片の片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: セラミックス球形粒子(アルミナ、シリカ)、
#400(平気粒径50μm以下)
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
供試体のショットブラスト被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0034】
(実施例4)
比較例5と同様のCFRP片の片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: 炭化ケイ素不定形粒子、#400
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
供試体のショットブラスト被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
上記塗膜密着性評価試験においては、本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例3及び4)は塗膜密着性が優れていることが分かる。
【0037】
[断面光学顕微鏡観察結果]
比較例1、比較例3及び比較例5で用いた供試体(接着前)と同様の無処理のCFRP並びに実施例2及び実施例4で用いた供試体(ショットブラスト後、接着前)と同様のCFRPの断面光学顕微鏡写真を、それぞれ図3及び図4に示す。
図3及び図4より、本発明によるショットブラスト後はCFRPの表面が粗面化されていることが分かるが、あくまでも表層の樹脂層の表面のみが荒れており、繊維に損傷がないことが分かる。
【0038】
[表面SEM観察結果]
実施例2及び実施例4のショットブラストで用いた炭化ケイ素不定形粒子#400及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を、それぞれ図5及び図6に示す。図6より、CFRPの表面は粗面化されているものの、繊維に損傷がないことが分かる。
【0039】
実施例1及び実施例3のショットブラストで用いたセラミックス球形粒子#400及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真を、それぞれ図7及び図8に示す。図8より、CFRPの表面は粗面化されているものの、繊維に損傷がないことが分かる。
【0040】
比較例2のショットブラストで用いたアルミナ不定形粒子#230及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真を、それぞれ図9及び図10に示す。図10より、CFRP内部の繊維が露出し、損傷していることが分かる。
【0041】
比較例4及び比較例6の方法により、#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いてサンディング処理されたCFRP表面のSEM写真を、図11に示す。図11より、CFRP内部の繊維が露出し、損傷していることが分かる。
図5から図11より、ショットブラスト処理されたCFRP表面の形態は、粒子の大きさや形状に対応していることが分かる。
図12に、表面処理を行っていないCFRPの表面SEM写真を示す。
【0042】
[表面粗さ測定結果]
実施例1及び実施例3の方法により、セラミックス球形粒子#400を用いてショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を図13に示す。また、実施例2及び実施例4の方法により、炭化ケイ素不定形粒子#400を用いてショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を図14に示す。さらに、無処理のCFRPの表面粗さの測定結果を図15に示す。炭化ケイ素不定形粒子#400でショットブラスト処理した方が表面が荒れているものの、いずれのショットブラスト処理においても表面粗さは数μmのレベルであり、表層樹脂層の表面のみの粗面化が可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ダブル・カンチレバー・ビーム法の概略図である。
【図2】圧縮層間剪断試験の概略図である。
【図3】無処理のCFRPの断面光学顕微鏡写真である。
【図4】実施例2及び実施例4で用いた供試体と同様のCFRPの断面光学顕微鏡写真である。
【図5】実施例2及び実施例4のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図6】図5の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図7】実施例1及び実施例3のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図8】図7の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図9】比較例2のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図10】図9の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図11】比較例4及び比較例6のサンディング処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図12】無処理のCFRPの表面SEM写真である。
【図13】実施例1及び実施例3の方法によりショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【図14】実施例2及び実施例4の方法によりショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【図15】無処理のCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含む成形体の接着又は塗装のための前処理方法、接着物品及びその製造方法、並びに塗装物品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック等の樹脂を含む複合材は、軽量で高強度であるため、航空機、自動車、船舶等の構造部材として広く用いられている。このような複合材からなる部材は、必要に応じて、他の部材と接着されたり、表面に塗装が施されたりして、用いられる(例えば、特許文献1参照)。この際、接着を強固なものとするために、あるいは塗装により形成された塗膜の密着性を高めるために、部材の被接着面又は被塗装面に前処理が行われる。このような接着前処理又は塗装前処理としては、サンディング、グリットブラスト等の方法が広く採用されている。また、接着前処理としては、ピールプライ法も採用されている。
【0003】
上記前処理はいずれも、部材の被接着面又は被塗装面を粗面化するとともに,新生面により表面の活性化を図るために行われる。サンディングは、サンドペーパー等の研磨媒体によって、部材表面を研磨する方法である。グリットブラストは、グリットと呼ばれる尖鋭な稜角をもつ粒を、圧縮空気等によって部材表面に吹き付ける方法である。ピールプライ法は、部材表面に剥離層(ピールプライ)を接着した後に、これを剥離する方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−62873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンディングやグリットブラストによる前処理を行うと、複合材表面の樹脂層を除去してしまい、内部の繊維を損傷させることが避けられない。その結果、接着又は塗装の際の接着対象物又は塗膜との密着性が低下してしまうとともに,複合材の強度が低下する恐れもある。また、塗装前処理の場合には、表面が荒れ、塗装肌が悪くなる問題も生じている。一方、ピールプライ法は、剥離面の残渣の問題があるとともに、付帯作業量が多く、廃棄物が発生する問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、従来のサンディングやグリットブラスト等による接着及び塗装前処理方法と異なり、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化できる成形体の前処理方法を提供することを目的とする。また本発明は、接着対象物又は塗膜との密着性が優れた、接着物品及びその製造方法並びに塗装物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の成形体の前処理方法は、樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する工程を有している。
この成形体の前処理方法によれば、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化することができる。
【0008】
本発明の接着物品の製造方法は、前記前処理方法を施した前記成形体の前記面に接着剤を塗布する工程を有している。また、本発明の接着物品は、この製造方法により前記接着剤が塗布された前記面に、接着対象物が接着されてなるものである。
この接着物品は、成形体と接着対象物との密着性が優れている。
【0009】
本発明の塗装物品の製造方法は、前記前処理方法を施した前記成形体の前記面に塗料を塗布する工程を有している。又、本発明の塗装物品は、この製造方法により、前記成形体の前記面上に前記塗料が硬化した塗膜が形成されてなるものである。
この塗装物品は、成形体と塗膜との密着性が優れ、塗装肌も良好である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形体の前処理方法によれば、樹脂を含有する成形体表面を損傷せずに表面を微細に粗面化し、とりわけ成形体が複合材である場合には繊維を損傷させずに表層の樹脂層表面のみを微細に粗面化することができる。また、前記前処理方法を施した成形体は、その微細に粗面化された表面に接着剤や塗料が強固に機械的結合をすることにより、接着又は塗装した際に、接着対象物又は塗膜との密着性が良好となる。また、本発明の成形体の前処理方法によれば、表面の汚染層を均一に除去することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の前処理方法で処理対象となる樹脂成形体としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維又はボロン繊維等の無機繊維やナイロン繊維、ビニロン繊維、又はアラミド繊維等の有機繊維を不飽和ポリエステル又はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に配合させた繊維強化プラスチック(FRP)や、前記各繊維をポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はABS樹脂等の熱可塑性樹脂に配合した熱可塑性強化プラスチック(FRTP)等の、樹脂をマトリックスとした複合材料が好適に採用される。ただし、本発明はこれに限定されず、樹脂のみからなる材料も本発明の前処理方法で処理対象となり得る。
【0013】
本発明の前処理方法において用いられる粒子(投射材)としては、金属、セラミックス、ガラス等の硬質粒子が挙げられ、なかでもアルミナ、シリカ、炭化ケイ素、ジルコニア粒子等のセラミックス粒子を好適に用いることができる。本発明において用いられる粒子の形状は特に限定されず、略球形の粒子を用いてもよいし、また前記アルミナ、炭化ケイ素粒子等の尖鋭な稜角を有する粒子を用いてもよい。
【0014】
この投射材の平均粒径は200μm以下であり、10μm以上100μm以下が特に好ましい。投射材の平均粒径が200μmより大きいと、投射材粒子の過大な運動エネルギーにより成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。また、投射材の平均粒径が10μmより小さいと、安定した噴射状態を得ることが困難となる。
【0015】
前記投射材粒子を、樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に投射することにより、本発明の成形体の前処理方法が行われる。粒子を処理対象物の表面に投射して粗面を形成する処理を一般に「ショットブラスト」ともいう。ショットブラストの際の噴射速度は、例えば圧縮空気の噴射圧力により規定される。本発明において、ショットブラストの際の噴射圧力は0.1MPa以上1MPa以下が好ましく、0.3MPa以上0.6MPa以下がより好ましい。噴射圧力が1MPaより大きいと、投射材粒子の過大な運動エネルギーにより成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。また、噴射圧力が0.1MPaより小さいと安定した噴射状態を得ることが困難となる。
【0016】
本発明において、ショットブラストのカバレージは、好ましくは100%以上1000%以下、より好ましくは100%以上500%以下である。カバレージが100%未満では、成形体表面が十分に粗面化/活性化されず、成形体の被処理面と接着対象物又は塗膜との密着性の向上効果が得られない。また、カバレージが1000%を超えると、成形体表面を損傷してしまい、特に成形体が前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので、好ましくない。
【0017】
上記の条件で前処理を行った成形体の被処理面の算術平均表面粗さRaは、0.3μm以上2μm以下となることが好ましい。被処理面の表面粗さが0.3μmより小さいと、成形体表面が十分に粗面化/活性化されず,成形体の被処理面と接着対象物又は塗膜との密着性の向上効果が得られないので好ましくない。また、被処理面の表面粗さが2μmより大きいと、前述の複合材料の場合は内部の繊維を損傷してしまうので好ましくない。
【0018】
本発明の接着物品の製造方法においては、上記の前処理を行った成形体の被処理面に接着剤が塗布される。
接着剤としては、一般に樹脂の接着に用いられる接着剤であれば特に限定されず、例えば、エポキシ系接着剤、合成ゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤、ホットメルト等を用いることができる。また、成形体を形成する樹脂及び接着剤の両方と親和性を有する下地処理剤(プライマー)を成形体の被処理面に塗布してから、接着剤を塗布してもよい。
本発明の接着物品は、前記接着剤を成形体の被処理面に塗布した後に、その塗布面に接着対象物が接着されて形成される。接着対象物も樹脂を含む成形体である場合には、この接着対象物の被接着面にも、上記と同様に本発明の前処理方法が施されることが好ましい。
【0019】
本発明の塗装物品の製造方法においては、上記の前処理を行った成形体の被処理面に塗料が塗布される。
塗料としては、一般に樹脂の塗装に用いられる塗料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、アルキド系塗料、エポキシ系塗料等を用いることができる。また、成形体を形成する樹脂及び塗料の両方と親和性を有する下地処理剤(プライマー)を成形体の被処理面に塗布してから、塗料を塗布してもよい。
本発明の塗装物品は、前記塗料を成形体の被処理面に塗布した後に、この塗料が硬化した塗膜となって、形成される。
【0020】
次に、実施例および比較例を用いて、本発明による成形体の前処理方法、接着物品及びその製造方法、並びに塗装物品及びその製造方法についてさらに詳述する。
【0021】
[接着性評価試験1(層間破壊靱性試験)]
(比較例1)
2枚の短冊状の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)片(寸法350mm×25mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。各供試体の片面の端部から約300mmの位置までエポキシ系接着剤を塗布し、接着剤を塗布した側の接着剤塗布面同士を向かい合わせて、塗布面同士を接着した。
接着剤が硬化した後に、ダブル・カンチレバー・ビーム(DCB)法により層間破壊靱性試験を行った。すなわち、各供試体において、接着部分と反対側のそれぞれの端部に、接着面と略垂直方向の互いに離間する向きに荷重を与え、硬化した接着剤層において層間剥離が起こったときの靱性値を測定した。図1は、DCB法の概略図である。
同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0022】
(比較例2)
比較例1と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: アルミナ不定形粒子、#230
噴射圧力: 0.3MPa
カバレージ: 100%
各供試体のショットブラスト被処理面の端部から約300mmの位置まで、比較例1で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例1と同様に塗布面同士を接着した。比較例1と同様にDCB法により層間破壊靱性試験を行い、靱性値を測定した。同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0023】
(実施例1)
比較例1と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: セラミックス球形粒子(アルミナ、シリカ)、
#400(平均粒径50μm以下)
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
各供試体のショットブラスト被処理面の端部から約300mmの位置まで、比較例1で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例1と同様に塗布面同士を接着した。比較例1と同様にDCB法により層間破壊靱性試験を行い、靱性値を測定した。同様の試験を計5回行った。得られた靱性値の平均値を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記層間破壊靱性試験においては、靱性値の値が大きいほど密着性が供試体同士の密着性が高いことを表す。本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例1)は密着性が優れていることが分かる。
【0026】
[接着性評価試験2(圧縮層間剪断試験)]
(比較例3)
2枚の短冊状の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)片(寸法80mm×15mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。各供試体の片面全面にエポキシ系接着剤を塗布し、接着剤を塗布した側の接着剤塗布面同士を向かい合わせて、塗布面同士を接着した。接着剤が硬化した後に,図2に示すように,供試体の両側から接着面まで切り欠きを設けた。
図2に示す圧縮荷重を与え、切り欠き部において層間剥離が起こったときの剪断強度値を測定した。図2は、この圧縮層間剪断試験の概略図である。同様の試験を計5回行った。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0027】
(比較例4)
比較例3と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面を#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いて水が弾かなくなるまで研磨したものを供試体とした。
比較例3で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例3と同様に塗布面同士を接着した。比較例3と同様に圧縮層間剪断試験を行い、剪断強度値を測定した。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0028】
(実施例2)
比較例3と同様の2枚のCFRP片のそれぞれにおいて、片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: 炭化ケイ素不定形粒子、#400
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
比較例3で用いたものと同様のエポキシ系接着剤を塗布し、比較例3と同様に塗布面同士を接着した。比較例3と同様に圧縮層間剪断試験を行い、剪断強度値を測定した。得られた剪断強度値を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
上記圧縮層間剪断試験においても、本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例2)は密着性が優れていることが分かる。
【0031】
[塗膜密着性評価試験]
(比較例5)
CFRP片(寸法 200mm×100mm×4.5mm)を、表面の前処理を行わずに供試体として用いた。供試体の片面に複合材塗装用のプライマーをスプレー塗装し、クロスカット法により塗装面に粘着テープを貼付後、剥離して、粘着テープと共に剥離された塗膜の面積百分率を測定することにより、塗膜密着性を評価した。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0032】
(比較例6)
比較例5と同様のCFRP片の片面を、#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いて水が弾かなくなるまで研磨したものを、供試体とした。
供試体のサンディング被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0033】
(実施例3)
比較例5と同様のCFRP片の片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: セラミックス球形粒子(アルミナ、シリカ)、
#400(平気粒径50μm以下)
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
供試体のショットブラスト被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0034】
(実施例4)
比較例5と同様のCFRP片の片面に以下の条件でショットブラストを行ったものを供試体とした。
投射材: 炭化ケイ素不定形粒子、#400
噴射圧力: 0.5MPa
カバレージ: 100%
供試体のショットブラスト被処理面に比較例5で用いたものと同様のプライマーをスプレー塗装し、比較例5と同様に塗膜密着性試験を行った。
塗膜密着性評価試験の結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
上記塗膜密着性評価試験においては、本発明によるショットブラストを行った供試体(実施例3及び4)は塗膜密着性が優れていることが分かる。
【0037】
[断面光学顕微鏡観察結果]
比較例1、比較例3及び比較例5で用いた供試体(接着前)と同様の無処理のCFRP並びに実施例2及び実施例4で用いた供試体(ショットブラスト後、接着前)と同様のCFRPの断面光学顕微鏡写真を、それぞれ図3及び図4に示す。
図3及び図4より、本発明によるショットブラスト後はCFRPの表面が粗面化されていることが分かるが、あくまでも表層の樹脂層の表面のみが荒れており、繊維に損傷がないことが分かる。
【0038】
[表面SEM観察結果]
実施例2及び実施例4のショットブラストで用いた炭化ケイ素不定形粒子#400及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を、それぞれ図5及び図6に示す。図6より、CFRPの表面は粗面化されているものの、繊維に損傷がないことが分かる。
【0039】
実施例1及び実施例3のショットブラストで用いたセラミックス球形粒子#400及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真を、それぞれ図7及び図8に示す。図8より、CFRPの表面は粗面化されているものの、繊維に損傷がないことが分かる。
【0040】
比較例2のショットブラストで用いたアルミナ不定形粒子#230及びこれを用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真を、それぞれ図9及び図10に示す。図10より、CFRP内部の繊維が露出し、損傷していることが分かる。
【0041】
比較例4及び比較例6の方法により、#400の炭化ケイ素サンドペーパーを用いてサンディング処理されたCFRP表面のSEM写真を、図11に示す。図11より、CFRP内部の繊維が露出し、損傷していることが分かる。
図5から図11より、ショットブラスト処理されたCFRP表面の形態は、粒子の大きさや形状に対応していることが分かる。
図12に、表面処理を行っていないCFRPの表面SEM写真を示す。
【0042】
[表面粗さ測定結果]
実施例1及び実施例3の方法により、セラミックス球形粒子#400を用いてショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を図13に示す。また、実施例2及び実施例4の方法により、炭化ケイ素不定形粒子#400を用いてショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を図14に示す。さらに、無処理のCFRPの表面粗さの測定結果を図15に示す。炭化ケイ素不定形粒子#400でショットブラスト処理した方が表面が荒れているものの、いずれのショットブラスト処理においても表面粗さは数μmのレベルであり、表層樹脂層の表面のみの粗面化が可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ダブル・カンチレバー・ビーム法の概略図である。
【図2】圧縮層間剪断試験の概略図である。
【図3】無処理のCFRPの断面光学顕微鏡写真である。
【図4】実施例2及び実施例4で用いた供試体と同様のCFRPの断面光学顕微鏡写真である。
【図5】実施例2及び実施例4のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図6】図5の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図7】実施例1及び実施例3のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図8】図7の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図9】比較例2のショットブラストで用いた投射材のSEM写真である。
【図10】図9の投射材を用いてショットブラスト処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図11】比較例4及び比較例6のサンディング処理されたCFRP表面のSEM写真である。
【図12】無処理のCFRPの表面SEM写真である。
【図13】実施例1及び実施例3の方法によりショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【図14】実施例2及び実施例4の方法によりショットブラスト処理されたCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【図15】無処理のCFRPの表面粗さの測定結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する工程を有する、成形体の前処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の前処理方法を施した前記成形体の前記面に接着剤を塗布する工程を有する、接着物品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の前処理方法を施した前記成形体の前記面に塗料を塗布する工程を有する、塗装物品の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法により前記接着剤が塗布された前記面に、接着対象物が接着されてなる、接着物品。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法により、前記成形体の前記面上に前記塗料が硬化した塗膜が形成されてなる、塗装物品。
【請求項1】
樹脂を含む成形体の表面の少なくとも一部の面に、平均粒径が200μm以下の粒子を投射する工程を有する、成形体の前処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の前処理方法を施した前記成形体の前記面に接着剤を塗布する工程を有する、接着物品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の前処理方法を施した前記成形体の前記面に塗料を塗布する工程を有する、塗装物品の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法により前記接着剤が塗布された前記面に、接着対象物が接着されてなる、接着物品。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法により、前記成形体の前記面上に前記塗料が硬化した塗膜が形成されてなる、塗装物品。
【図1】
【図2】
【図13】
【図14】
【図15】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図13】
【図14】
【図15】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−244980(P2007−244980A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70796(P2006−70796)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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