説明

成形体の塗装方法

【課題】ハロゲン化炭化水素を用いずに成形体の被塗装面と塗料との接着性を向上させ、被塗装面への塗装を良好に行うことが可能な成形体の塗装方法を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂(A)と、エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)と、窒素含有基を有する界面活性剤(C)1質量部〜30質量部(ただし、オレフィン系樹脂(A)及びエチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)の総量を100質量部とする)と、を含有する樹脂組成物からなる成形体の被塗装面を所定温度で熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装面がオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物からなる成形体の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂は、極性が低いため、塗料や接着剤との接着性が低く、被塗装面へ塗装や接着、印刷等を行うことは困難である。そのため、オレフィン系樹脂からなる成形体の被塗装面への塗装を良好に行うために様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、被塗装面と塗料との接着性を向上させる方法、即ち被塗装面と塗料、又は接着剤との相溶性を向上させる方法として、被塗装面にプライマーを塗布してから塗料等を塗布する方法が挙げられる。
また、プライマーを塗布する前に、例えば1,1,1−トリクロルエタンのようなハロゲン化炭化水素溶剤で被塗装面を蒸気洗浄する方法が検討されている(特許文献1、非特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−247232
【非特許文献1】「塗装工学」 Vol.28 No.3(1993)−112(32)
【非特許文献2】「塗装工学」 Vol.32 No.6(1997)−249(41)等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらオゾン層破壊防止の観点から、ハロゲン化炭化水素の使用が制限されるようになっている。また、成形体の被塗装面と塗料との接着性については更なる改善が求められている。
【0006】
以上の課題に鑑み、本発明は、ハロゲン化炭化水素を用いずに成形体の被塗装面と塗料との接着性を向上させ、被塗装面への塗装を良好に行うことが可能な成形体の塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成が上記課題を達成し得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明はオレフィン系樹脂(A)と、エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)と、窒素含有基を有する界面活性剤(C)1質量部〜30質量部(ただし、オレフィン系樹脂(A)及びエチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)の総量を100質量部とする)と、を含有する樹脂組成物からなる成形体の被塗装面を所定温度で熱処理することを特徴とする成形体の塗装方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハロゲン化炭化水素を用いずに成形体の被塗装面と塗料との接着性をより向上させ、被塗装面への塗装を良好に行うことが可能な成形体の塗装方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る塗装方法は、所定の樹脂組成物の被塗装面を所定温度で熱処理することを特徴とする。以下、詳細に説明する。
[成形体]
本発明で用いられる成形体は、オレフィン系樹脂(A)と、エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)と、窒素含有基を有する界面活性剤(C)1質量部〜30質量部(ただし、オレフィン系樹脂(A)及びエチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)の総量を100質量部とする)と、を含有する樹脂組成物からなる。
【0010】
<オレフィン系樹脂(A)>
オレフィン系樹脂(A)(以下、(A)成分ともいう)としては特に限定されるものでなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンの単独重合体や、前記のα−オレフィンから選ばれる少なくとも2種類のα−オレフィンの共重合体が挙げられる。また、前記のα−オレフィンと他の不飽和単量体との共重合体が挙げられる。これらは単独重合体であっても、2種以上組み合わせた共重合体であってもよい。
上記オレフィン系樹脂として、好ましくはエチレン系樹脂又はプロピレン系樹脂であり、さらに好ましくはプロピレン系樹脂である。
【0011】
エチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン重合体等が挙げられる。
【0012】
オレフィン系樹脂としてプロピレン系樹脂を用いる場合には、得られる成形体の機械物性や外観等の観点から、以下のプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
(a)メルトインデックスが10g/10分〜100g/10分のプロピレン単独重合体。
(b)エチレン又は炭素数4〜6のα−オレフィンを0.5質量%〜8質量%含有し、メルトインデックスが10g/10分〜100g/10分のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体。
(c)エチレンを2質量%〜15質量%含有するメルトインデックスが10g/10分〜100g/10分のプロピレン−エチレンブロック共重合体であって、プロピレン−エチレン共重合部のエチレン含有量が20質量%〜60質量%であり、かつ、この共重合部の135℃テトラリン溶液での極限粘度が2g/10分〜10dl/gであるプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【0013】
ここで、(b)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、プロピレンと例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0014】
これらのプロピレン系樹脂は、通常チーグラー・ナッタ型触媒と呼称される三塩化チタン及びアルキルアルミニウム化合物との組み合わせ触媒の存在下で反応させて得ることができる。
【0015】
なお、上記プロピレン系樹脂は、後述する変性プロピレン系樹脂又は、変性プロピレン系樹脂とプロピレン系樹脂との混合物であってもよい。変性プロピレン系樹脂とは、前述のプロピレン系樹脂を、これに対して0.05質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%の範囲の不飽和カルボン酸又はその無水物によってグラフト変性させたものである。不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性された変性プロピレンにおけるグラフトモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。これらの中でも特に無水マレイン酸が好ましい。
【0016】
グラフトモノマーをプロピレン系樹脂にグラフトさせるには、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、プロピレン系樹脂、グラフトモノマー及びラジカル開始剤を押出機内で溶融混練してグラフトさせる方法。プロピレン系樹脂をキシレンなどの有機溶剤に溶かした後、窒素雰囲気下でラジカル発生剤を加えた攪拌下に加熱反応せしめ、反応後冷却、洗浄濾過、乾燥してグラフト化プロピレン系樹脂を得る方法。その他プロピレン系樹脂にグラフトモノマーの存在下で、紫外線等を照射する方法、あるいは、酸素やオゾンと接触させる方法などが挙げられる。
【0017】
<エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(B)>
本発明におけるエラストマー類(B)(以下、(B)成分ともいう)とは、ゴム状の弾性体を意味する。エラストマー類は、分子内に架橋点を有するゴムと、分子内に硬質層の分子グループにより分子を拘束状態にした熱可塑性エラストマーとを含む。
【0018】
エラストマーとしては、特に限定されないが、ポリオレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体)、脂肪族ポリエステルエラストマー(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート)、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸系エラストマー(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニルモノマーとの共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。
【0019】
エチレン−プロピレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状のα−オレフィン、分岐状のα−オレフィンが挙げられる。直鎖状のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等が挙げられる。分岐状のα−オレフィンとしては、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン等が挙げられる。
【0020】
これらのエラストマー類のうち、ポリオレフィン系エラストマーを用いることが好ましく、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを用いることがより好ましい。この上記エチレン−プロピレン系共重合体ゴムは、得られる成形体の衝撃強度の観点から、プロピレン含量が10質量%〜70質量%であり、かつ、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が10〜100であることが好ましい。
【0021】
<窒素含有基を有する界面活性剤(C)>
窒素含有基を有する界面活性剤(C)(以下、成分(C)ともいう)の窒素含有基としては、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基等が挙げられる。上記窒素含有基を有する界面活性剤(C)としては、アルキルジエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、オキシエチレン付加型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド誘導体、ポリオキシエチレン高級アルキル脂肪酸アミド等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0022】
アルキルジエタノールアミンとしては、ラウリルジエタノ−ルアミン、ミリスチルジエタノ−ルアミン等が挙げられる。ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドとしては、ヤシ油脂肪酸ジエトキシエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエトキシポリオキシエチレンアミド等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、例えばジアルキルエタノールアミドが挙げられる。オキシエチレン付加型界面活性剤としては、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレン分岐アルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。脂肪酸アルカノールアミドとしては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、椰子油脂脂肪酸モノエタノールアミド等が挙げられる。脂肪酸アルカノールアミド誘導体としては、ポリオキシエチレン高級脂肪酸モノエタノールアミドが挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤(C)は、水酸基含有基を更に含有することがより好ましい。具体的にはポリグリセリンアルキル脂肪酸モノエステル、ポリグリセリンアルキル脂肪酸ポリエステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アリキルグルコシド等であることが好ましい。このうち、水酸基含有プロピレン系オリゴマーを含有することが更に好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
有機酸モノグリセリドとしては、グリセリンコハク酸脂肪酸モノエステル、グリセリンクエン酸モノエステル等が挙げられる。
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールジカプリレート等が挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、1−メチルグリコシド、1−エチルグリコシド等が挙げられる。
【0024】
ここで、水酸基含有プロピレン系オリゴマーとは、水酸基を含有するプロピレンを主成分とするオリゴマーをいう。プロピレンを主成分とするオリゴマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂、特にプロピレン系樹脂の低分子量体が挙げられる。その具体例としては、数平均分子量(Mn)が2000〜20000であり、且つ、水酸基価が10〜60のポリプロピレンオリゴマーが好ましい。具体的には、三洋化成(株)製商品名ユーメックス(登録商標)1201H又はユーメックス(登録商標)1210等が挙げられる。
【0025】
樹脂組成物中の各成分の含有量は、(A)成分が10質量%〜95質量%、好ましくは20質量%〜90質量%であり、(B)成分が5質量%〜90質量%、好ましくは10質量%〜80質量%である(但し、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計を100質量%とする)。また、(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計100質量部に対し、1質量部〜30質量部、好ましくは2質量部〜20質量部、更に好ましくは3質量部〜15質量部である。
(C)成分の含有量を1質量部以上とすることにより、塗装性、接着性等を向上させることが可能となる。また、含有量を30質量部以下とすることにより、成形品の剛性及び耐熱性を向上させることが可能となる。
【0026】
上記樹脂組成物は、上述の成分以外に、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーや、無機フィラー等を含有していてもよい。無機フィラーとしてはタルク、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、酸化チタン、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、けいそう土等が挙げられる。無機フィラーの含有量は、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。
【0027】
また、樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を含ませてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、中和剤、核剤等が挙げられる。
【0028】
樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法等が挙げられる。さらに、圧縮成形法、ブロー成形法、射出ブロー成形法、シート成形法、熱成形(真空成形法や圧空成形法)、フィルム押出成形法等が挙げられる。
【0029】
[塗装方法]
上述のような方法により得られた成形体の被塗装面を120℃〜170℃で40分〜90分熱処理する。被塗装面を上記の条件で熱処理することにより、ハロゲン化炭化水素を用いずに成形体の被塗装面と塗料との接着性をより向上させ、被塗装面への塗装を良好に行うことが可能となる。
熱処理は、オ−ブン、電気式熱風乾燥炉、ガス式熱風乾燥炉、スーパードライヤー等により行うことが可能である。その際、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換して熱処理を行ってもよい。
【0030】
熱処理温度は120℃〜175℃であり、140℃〜170℃であることがよりこの好ましい。熱処理時間は40分〜90分であり、40分〜60分であることがより好ましく、50分〜60分であることが更に好ましい。
熱処理温度及び熱処理時間をそれぞれ120℃以上、40分以上とすることにより、塗料の密着性を向上させることが可能となる。また熱処理温度及び熱処理時間をそれぞれ170℃以下、60分以下とすることにより、熱による成形体の変形を防止することが可能となる。
【0031】
以上のような手順により被塗面を熱処理した後に塗料で塗装していく。塗料としては、アルキド樹脂を主成分とするアルキド樹脂塗料、アクリルアルキド樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料、メラミン尿素樹脂を主成分とするアミノアルキド樹脂塗料、メラミン焼き付け樹脂塗料、メラミン尿素樹脂塗料、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂を主成分とするウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、ポリエステルウレタン樹脂塗料、酢酸ビニル樹脂を主成分とする酢酸ビニルエマルジョン塗料、アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂塗料、アクリルエマルジョン塗料等が挙げられる。このうち、アクリル樹脂塗料、アクリルエマルジョン塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料を用いることが好ましく、ウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料を用いることがより好ましい。また、上記溶剤系塗料に拘わらず水系塗料を用いてもよい。
【0032】
また、被塗装面の上にプライマー層及び中塗り層を形成してもよい。プライマー層を形成するプライマーとしてはメラミン系プライマー、エポキシ系プライマー、アクリル系プライマー、塩素化オレフィン系プライマー等が挙げられる。このうち塩素化オレフィン系プライマーを用いることが好ましい。
中塗りに用いられる塗料としては、多液形塗料(溶剤系塗料)等が挙げられる。このうち溶剤系塗料を用いることが好ましい。
【0033】
塗料の塗装方法としては、刷毛塗り塗装方法、エアーレススプレー塗装方法あるいはエアースプレー塗装方法等が挙げられ、プライマー層、中塗り層及び上塗り層の3層を塗装し、使用した塗料に応じて、規定された温度で焼き付けをする方法、その他電着塗装や静電塗装等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
<塗装性(密着性)の評価>
各実施例及び各比較例のそれぞれ樹脂成形体表面に塗装を施し、該塗装済み成形品の塗膜にカミソリ刃にて一辺が2mmのゴバン目100ケ(10縦×10横)を刻み、その上に24mm幅のセロハンテープを圧着させた後、その端面をつかんで一気に引きはがした時の、残存したゴバン目数(残率(%))の割合を算出した。
【0036】
[実施例1]
エチレンを3.2質量%含有するメルトインデックスが30(g/10分)のプロピレン−エチレンブロック共重合体であって、プロピレン−エチレン共重合部のエチレン含有量が24.7質量%であり、且つ該共重合部の135℃テトラリン溶液での極限粘度が6.4dl/gであるプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂60質量部と、プロピレン含量45質量%、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)30であるエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム40質量部とをバンバリーミキサーにて180℃、8分間溶融混練を行った。その後、ロールを通してシートカッターにより切断して、マスターバッチペレット(以下MBと称す)を作成した。
【0037】
前記MBに対し、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂を追添し、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂46質量部、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム29質量部となるように配合し、更に、分子量12000、水酸基価21.5である水酸基含有ポリプロピレンオリゴマー、ユーメックス(登録商標)1201H(三洋化成(株)製)を5質量部、平均粒子径2.5μのタルク20質量部配合したものをヘンシェル型ミキサーで均一に予備混合した後、連続2軸混練機(日本製鋼所社製TEX44SS30BW−2V型)にて220℃で溶融混練してペレットを得た。
このペレットを用い、住友重機械(株)製の射出成形機ネオマット515/150にて220℃で100×400×3mmtの塗装テスト用平板を作成した。得られた平板を100mm口に切り出し、該樹脂成形品表面を岩田塗装機製電気式熱風乾燥炉で空気を120℃に加熱した炉内に40分間放置した後、該表面を常温(約25℃)に自然冷却して、日本ビーケミカル社製1液型ウレタン塗料〔フレキセン(登録商標)101〕でスプレー塗装し、120℃、40分焼き付け乾燥を行い、塗装成形品の初期密着度を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例1において予備加熱を行わない他は実施例1と同様に実施し、得られた塗装成形品の初期密着度を測定した。結果を表1示す。
【0039】
[実施例2]
実施例1において電気式熱風乾燥炉で空気を160℃に加熱した他は実施例1と同様に実施し、得られた塗装成形品の初期密着度を測定した。結果を表1示す。
【0040】
[比較例2]
実施例2において電気式熱風乾燥炉で空気を100℃に加熱した他は実施例2と同様に実施し、得られた塗装成形品の初期密着度を測定した。結果を表1示す。
【0041】
[実施例3]
実施例1において電気式熱風乾燥炉で空気を170℃に加熱した他は実施例1と同様に実施し、得られた塗装成形品の初期密着度を測定した。結果を表1示す。
【0042】
[比較例3]
実施例3において電気式熱風乾燥炉内に30分間放置した他は実施例3と同様に実施し、得られた塗装成形品の初期密着度を測定した。結果を表1示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂(A)と、エラストマー類(B)と、窒素含有基を有する界面活性剤(C)1質量部〜30質量部(ただし、オレフィン系樹脂(A)及びエラストマー類(B)の総量を100質量部とする)と、を含有する樹脂組成物からなる成形体の被塗装面を、120℃〜175℃で40分〜90分熱処理することを特徴とする成形体の塗装方法。
【請求項2】
前記窒素含有基を有する界面活性剤(C)は、水酸基含有基を更に有する請求項1に記載の成形体の塗装方法。
【請求項3】
前記窒素含有基を有する界面活性剤(C)は、水酸基含有プロピレン系オリゴマーを含有する請求項1又は2に記載の成形体の塗装方法。
【請求項4】
前記エラストマー類(B)は、ポリオレフィン系エラストマーを含有する請求項1から3いずれかに記載の成形体の塗装方法。

【公開番号】特開2009−291731(P2009−291731A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148908(P2008−148908)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】