説明

成形体の製造方法

【課題】端面が凸状に湾曲した触媒等の成形体を高い生産性で製造する方法を提供する。
【解決手段】押出し機11のダイ12に設けた押出し口から成形体を連続的に押出しながら、押出した成形体の全周から軸心に向かってスリット33から断続的に気体と液体の混合物からなる流体パルスを噴出させて、成形体16を所定寸法ごとに切断する成形体16を製造する方法であって、前記流体パルスの吐出圧が0.1MPa以下であり、かつ流体パルスを噴出させるスリット33の幅が1.5mmより大きくして、凸状に湾曲した端面を有する成形体16を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸状に湾曲した端面を有する、触媒や触媒担体等の成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、形状が凸状に湾曲した端面を有する触媒が記載されている。特許文献1によれば、このような触媒は、球形、円筒形、スポークリング状等の形状を有する触媒に比べて、触媒の活性、多管式反応器への充填の容易さ、触媒層圧力損失、強度の高さ等といった工業用触媒として要求される多くの特性を持っているとされている。また、特許文献2にも同様な形状の触媒が記載されている。
【0003】
しかしながら、前記のような端面が凸状に湾曲した触媒は、打錠成型法で製造されているため、生産性が低いという問題があり、実用化が困難であった。特に、打錠成型法では、外径が3mm以下の小径成形体を製造することが困難であった。
【0004】
そのため、端面が凸状に湾曲した触媒を効率よく生産するための製造方法の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−145093号公報
【特許文献2】特開昭61−141933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、端面が凸状に湾曲した触媒等の成形体を高い生産性で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、押出成形機から成形材をダイにて連続的に押出しながら、押出した成形体の全周から軸心に向かって断続的に流体パルスを所定幅のスリットから所定の圧力で噴出させて、成形体を切断する場合は、成形体が変形したり、破損したりすることなく、端面が凸状に湾曲した成形体、特に小径の成形体を高い生産性で効率よく生産できるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る成形体の製造方法は以下の構成からなる。
(1)押出成形機のダイに設けた押出し口から成形体を連続的に押出しながら、押出した成形体の全周から軸心に向かってスリットから断続的に気体と液体の混合物からなる流体パルスを噴出させて、成形体を所定寸法ごとに切断する成形体を製造する方法であって、前記流体パルスの吐出圧が0.1MPa以下であり、かつ流体パルスを噴出させるスリットの幅が1.5mmより大きいことを特徴とする、凸状に湾曲した端面を有する成形体の製造方法。
(2)前記ダイは、前記押出し口を通りかつ前記スリットから突出しない棒体を備えている前記(1)記載の成形体の製造方法。
(3)前記ダイの押出し口から押出された成形体の長さを検出するセンサを備え、このセンサからの入力信号に基づいて前記流体パルスの噴出および停止と、押出し成形機の押出し流路内に設けられた流量制御手段の出力を調整して成形体の長さを調節する前記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)前記成形体は、外径が3mm以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凸状に湾曲した端面を有する成形体、特に小径の成形体を押出成形によって高い生産性で効率よく製造できるという効果がある。また、得られる成形体は、その形状から、強度が高く、触媒として固定床式反応装置や反応管等の各種容器に充填する際に、成形体同士の接触や、成形体と反応管内壁との接触により、成形体同士の端面が、割れたり、欠けたりすることがないので、圧力損失の増加がなく、反応成績の向上がもたらされるという効果が得られる。
また、製造される成形体の長さは、センサにより検出され、流体カッターの起動停止および押出成形機内の流路に設けられた流量制御手段の出力を調整するため、成形体の長さを自在に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法を実施するための成形装置の一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明の製造方法を実施するための成形装置全体を示す説明図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ本発明の製造方法で得られた成形体の一例を示す平面図および正面図である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ本発明の製造方法において流体パルスにより成形体を切断する方法の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る成形体の製造方法は、凸状に湾曲した端面を有する成形体を製造するものであり、押出成形機のダイに設けた押出し口から筒状の成形体を連続的に押出しながら、押出した成形体の全周から軸心に向かって、断続的に気体と液体の混合物からなる流体パルスを噴出させて、成形体を所定寸法ごとに切断して成形体を得る。
【0012】
まず、図1、図2に基づいて本発明において使用する成形装置を説明する。この成形装置10は、図2に示すように、押出し機11と、その押出し機11の先端に取り付けられるダイ12とを備えている。ダイ12から押出された成形体16は乾燥機15にて乾燥させる。押出し機11は、成形材料を所定の圧力に加圧あるいは加熱・加圧して、ダイ12から押し出すことができるものであればよく、例えばスクリュー押出し機などが用いられる。
【0013】
前記ダイ12は、図1に示すように、一端に押出し口20を有する円筒状の形態を備えたものである。この実施形態では、中空製品を製造するために押出し口20の中心に中心棒21(棒体)が設けられる。この中心棒21は、後端(図1の左側)が放射状に配される複数のサポートでダイ12の内面に固定されており、先端はダイの押出し口20から前方に突出し、後述するスリット29まで延びている。
【0014】
前記ダイ12の先端部は円錐形に形成されている。そして外表面の周囲にリング状の保持部材26が取り付けられ、その周囲に円錐状の底部27を備えた有底筒状のキャップ28がネジ締めされている。キャップ28の底部の中心には、ダイ12の押出し口20と略同径の開口部29が形成されている。中心棒21はダイの押出し口20を経て、その前端はキャップ28の開口部29から突出していない。また、中心棒21は、その断面形状として各種形状を採用でき、例えば円形、楕円形等が挙げられる。保持部材26の基端側は半径方向内側に突出する当接部30が設けられ、それにより保持部材26の内面とダイ12の外表面との間には、環状の隙間31が形成される。さらにキャップ28の円錐状の底部27の内面とダイ12の先端部との間にも、円錐状の隙間32が形成され、その隙間32の内周側は開口して、環状のスリット33となっている。このようにダイ12の外面と保持部材26およびキャップ28は、スリット33を備えた流体カッター13を構成している。スリット33の幅、すなわち押出方向の開口長さは、特に限定されるものではないが、1.5mm以上、5mm以下であるのがよく、好ましくは、2mm以上、4mm以下であるのがよい。保持部材26には、液体供給配管35および気体供給配管36が接続されている。これらの配管35、36から供給される液体と気体とにより、ミストの流体パルスがスリット33から噴出される。
【0015】
図2に示すように、気体供給配管36は電磁弁37を経て気体供給装置39(気体加圧装置、ポンプ等を含む)に接続されている。液体供給配管35も電磁弁37´を経て液体供給装置42に接続されている。また、図1に示すキャップ28の開口部29の外側近傍には、前記流体カッター13によって所定長さに切断され該開口部29を通って前方に押し出された成形体16の長さを検知するためのセンサ40が設置されている。このセンサ40は気体供給配管36の電磁弁37、液体供給配管35の電磁弁37´、および押出し機11内の流路に設けた流量制御手段14(流量制御弁等)を駆動させる駆動源41(モーター等)に電気的に接続され、センサーからの検知信号に基づき、電磁弁37、電磁弁37´の開閉および駆動源41の駆動を制御するように構成されている。
【0016】
電磁弁37、電磁弁37´の開いている時間は、押出し機11の押出し速度や押出される材料の粘性などによって異なるが、通常0.05〜1.0秒程度であり、流体パルスを噴射する間隔は0.1〜10秒程度であるのがよい。流体パルスの吐出圧は0.1MPa以下であるのがよい。
また、流量制御手段14については、1つの押出し機11にダイ12が複数取り付けられている場合、成形体16の長さが設定値よりも長い場合には、押出し成形機11の流路内における流量制御手段14の開き度合いを広くして成形体16の流速を遅くし、これとは逆に成形体16の長さが設定値よりも短い場合には、流路内における流量制御手段14の開き度合いを広くして成形体16の流速を早くするように制御する。但し、押出し機11に対し、ダイ12が1つである場合は、流量制御手段14による制御に代えて、押出し機11のスクリュー回転数を制御するようにしてもよい。
【0017】
つぎに上記のごとく構成される成形装置10を用いて、凸状に湾曲した端面を有する成形体を製造する方法を説明する。図1に示すように、押出し機11で軟質成形材料を押し出すと、ダイ12の押出し口20から、中心棒21の外径で定まる貫通孔を備えた筒状の連続成形体が押し出される。連続成形体の押出し圧は、特に制限されるものではないが、1.0〜3.0MPa、好ましくは1.5〜2.5Mpa程度が好ましい。
そして、所定長さまで押し出された時点で成形体の長さを検出したセンサ40により電磁弁37および37´が開き、気体(加圧空気など)は気体供給管36を通り、また液体(加圧水など)は液体供給管35をそれぞれ通って供給され、隙間31、32の内部にて混合された後、スリット33からミストの流体パルスとなって噴出される。この場合、気体と液体との混合は、体積比で1:0.01〜1:10程度が適切である。
【0018】
このとき連続成形物52の外周はキャップ28の底部でほぼ気密に囲まれており、中心孔は中心棒21で塞がれているので、流体パルスの圧力で連続成形物52が切断される。そして切断された成形体16は流体の圧力で開口29から飛び出していく。その後は前述と同様につぎの連続成形物が押し出される。
【0019】
このように流体パルスを用いて連続成形物を切断すると、ほぼ瞬間的に切断が完了するので、乾燥前であっても、連続成形物であっても形が崩れることがない。また乾燥前に切断するので、切断屑が発生しない。
【0020】
さらに、この実施形態では、流体パルスを用いて連続成形物を切断して得られた成形体16は、図3に示すように、貫通孔60を有すると共に、端面61が凸状に湾曲されている。切断された端面61が凸状に湾曲されるメカニズムについては、図4(a)に示すように、前記スリット33から斜めに噴出された流体パルス(矢印Aで示す)が、連続成形物62に当って、この連続成形物62をV字形ないしU字形にえぐるようにして切断するためであろうと考えられる。
【0021】
また、流体パルスはスリット33から垂直に連続成形物に噴出させる場合も、図4(b)に示すように、流体パルスが矢印Aで示すように連続成形物62をV字形ないしU字形にえぐるようにして切断するために、切断端面が凸状に湾曲された成形体16が得られると考えられる。
【0022】
成形体16の切断端面を凸状に湾曲させるうえで、前記流体パルスの吐出圧が0.1MPa以下であり、かつ流体パルスを噴出させるスリットの幅が1.5mmより大きいのが好ましい。吐出圧が0.1MPaを超えるとき、またはスリットの幅が1.5mm以下であるときは、いずれも切断端面が充分に凸状に湾曲された成形体16を得ることができなくなる。
【0023】
また、前記押出し口20を通って前方に延びる中心棒21は前記スリット33から突出しないのが、切断端面が充分に凸状に湾曲された成形体16を得るうえで好ましい。その理由は、スリット33を通過して切断された成形体16に中心棒21が挿通されたままであると、成形体16が開口部29から飛び出しにくくなるために、切断端面が充分に凸状に湾曲された成形体16を得ることができなくなるおそれがあるためである。
【0024】
本発明における前記成形体16を製造するための成形材料の種類や組成等に関しては、何ら制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、成形体16を触媒として用いる場合には、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属酸化物、モリブデン、コバルト、ビスマス等を主成分とする複合金属酸化物、モリブデン、バナジウム、リン等からなるヘテロポリ酸などを用いることができる。成形体16を触媒担体として用いる場合には、コージュライト、ムライト、擬ベーマイト、シリカ・アルミナ、ジルコニア、マグネシアスピネル、痾−アルミナ、シリカなどを用いることができる。成形体16を吸着剤、乾燥材、調湿材等として用いる場合には、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、アパタイト、珪藻土などを用いることができる。また、成形体16は、これら材料のほか、種々のプラスチック材料等を用いて形成することもできる。
【0025】
本発明で得られる成形体16は、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等として用いられる。特に、触媒もしくは触媒担体として種々の形態の触媒反応に用いる場合、本発明の効果をより有効に活用することに鑑みると、固定床式反応装置等の反応装置や容器に充填して用いることが好ましい。つまり、成形体16は、凸状に湾曲した端面を有するので、従来のように充填時に角が欠けることがなく、圧力損失を小さく抑えることができるという効果を有しているので、固定床式反応装置において反応管に充填した場合にも、触媒性能を効率よく発現させることができるのである。
【0026】
なお、上記の実施形態では、筒状ないしリング状の成形体16を製造しているが、例えば、貫通孔の無い柱状の成形体なども、同様にして製造することができる。
【0027】
前記実施形態では流体パルスとして空気と水の混合物を使用しているが、成形体の種類によっては、他の気体と液体を用いてもよい。例えば、窒素ガスと水、窒素ガスと有機溶剤等が挙げられる。また、前述の実施形態では、センサ40により成形体の長さを検出し、成形体の切断を調節しているが、例えばタイマーおよびシーケンサ等で、所定の時間間隔で流体パルスを噴出させるようにしてもよい。
【0028】
さらに前述の実施形態では、1台の押出し機11に1個のダイ12を取り付けているが、量産する場合は複数個のダイ12を取り付けて使用するのが好ましい。また、押出し方向は水平方向だけでなく、下向きに押し出すようにしてもよい。また、前述の実施形態ではダイ12の表面を流体カッターに利用しているが、もちろんダイとは別個に設けることもできる。
【0029】
以上のように、本発明の製造方法は、端面が凸状に湾曲して成形体を押出し成形によって得ることができるため、高い生産性で製造可能となり、しかも外径が3mm以下の小径の成形体も容易に製造することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10:成形装置、11:押出し機、12:ダイ、13:流体カッター、14:流量制御手段、15:乾燥機、16:成形体、20:押出し口、21:中心棒(棒体)、26:保持部材、28:キャップ、29:開口部、31:隙間、32:隙間、33:スリット、35:液体供給配管、36:気体供給配管
37:電磁弁、37´:電磁弁、39:気体供給装置、42:液体供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形機のダイに設けた押出し口からから成形体を連続的に押出しながら、押出した成形体の全周から軸心に向かってスリットから断続的に気体と液体の混合物からなる流体パルスを噴出させて、成形体を所定寸法ごとに切断する成形方法であって、
前記流体パルスの吐出圧が0.1MPa以下であり、かつ流体パルスを噴出させるスリットの幅が1.5mmより大きいことを特徴とする、凸状に湾曲した端面を有する成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ダイは、前記押出し口を通りかつ前記スリットから突出しない棒体を備えている請求項1記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ダイの押出し口から押出された成形体の長さを検出するセンサを備え、このセンサからの入力信号に基づいて前記流体カッターの起動停止を行うと共に、押出し成形機の押出し流路内に設けられた流量制御手段の出力を調整して成形体の長さを調節する、前記請求項1または2記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成形体は、外径が3mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20371(P2011−20371A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167781(P2009−167781)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】