説明

成形体を製造する方法および未焼成材料

【課題】高精度をもって容易な方法で加工することができる成形体、特に義歯または該義歯の部分を製造することができるセラミック未焼成材料、及び高精密な成形体の製造方法の提供。
【解決手段】金属粉末およびバインダから混合物を製造し、該混合物を圧縮して未焼成材料を形成し、該未焼成材料を室温から脱バインダ開始温度Tへ加熱し、未焼成材料を加熱速度Rで脱バインダ開始温度Tから脱バインダ終了温度Tへ制御して加熱することによって未焼成材料を脱バインダし、脱バインダされた未焼成材料を予備焼結し、冷却することであって、少なくとも加熱速度RHVS、予備焼結終了温度TVSおよび冷却速度RKVSを、ブランクを形成する予備焼結された未焼成材料が、予備焼結後に16%と22%の間の表面気孔率を有するように調整し、ブランクを切削加工し、および加工されるブランクを高密度焼結して成形体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、特に義歯または該義歯の部分を、金属粉末を混合することによって製造する方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、義歯または該義歯の部分を製造するための未焼成材料に関する。
【背景技術】
【0003】
最近では、クラウンまたはブリッジのような義歯を製造するために、CAD/CAM技術(Computer-Aided Design,Computer Aided Manufacturing)を用いる。該技術は、特に、セラミックの分野で用いられる。例えば、特許文献1を参照することができる。
【0004】
特許文献2からは、義歯を製造するための方法を読み取ることができる。セラミックからなる予備焼結されたブランクを、フライス切削法によって加工し、次に、高密度焼結する。
【0005】
特許文献3は、義歯を製造するためのCAD/CAMフライス切削法が公知である。この目的のために、まず、金属粉末をバインダと混合し、次に、金属粉末射出成形法によって、ブランクを製造する。このブランクから、フライス切削加工によって、成形体を製造する。成形体は、ブランクの焼結中に生じる収縮を考慮して製造される義歯である。
【0006】
特許文献4によれば、歯科用合金から成形体を製造する。この成形体は、熱間静水圧圧縮成形によって高密度焼結された歯科用合金粉末からなる。
【0007】
特許文献5からは、成形体を粉末冶金的に製造することが公知であり、加工のための成形体は、連続気泡であり、高密度焼結されていない。最終形状の製造後にはじめて、他の作業段階では、浸潤法によって、成形体の連続気泡を、第2の合金で閉じる。2つの合金の使用が欠点である。
【0008】
特許文献6からは、歯科修復物をフリーフォーミングで、特にラピッドプロトタイピング法で製造するための方法を読み取ることができる。材料としては、特に、非酸化材料からなる粉末を用いる。貴金属を用いることは好ましい。
【0009】
非特許文献1には、修復物を製造するための方法が記載される。修復物の製造のために、生体適合性のコバルト・クロム・モリブデン合金を潤滑剤と混合し、潤滑剤を焼却除去するための温度に加熱し、次に完全焼結する。
【0010】
特許文献7からは、焼結体を製造するための方法が公知である。出発材料として、鉄またはニッケルのような金属粉末を用いる。
【0011】
1%までの有機バインダを含有する鉄粉混合物を、特許文献8に記載の焼結成形体を製造するために、用いる。予備焼結および冷却後に、最終焼結を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP-B-1 067 880
【特許文献2】DE-C-199 38 144
【特許文献3】WO-2009/120749
【特許文献4】EP-A-764 062
【特許文献5】DE-A-103 52 231
【特許文献6】US-A-2005/0023717
【特許文献7】US-A-4,996,022
【特許文献8】AT-A-505 698
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rodrigues et al.: ”Powder metallurgical Processing of Co-28%Cr-6%Mo for dental implants: Physical, cheanical and electrochemical properties” Powder Technology, 2006(2011), 233-238
【発明の概要】
【0014】
明細書の最初の部分に記載のタイプの方法および予備焼結された未焼成材料(Gruenling)を、以下のように、すなわち、極めて少ない許容差をもって製造可能であり、かつ、問題なく、湿式または乾式に加工されることができ、成形体をセラミック材料で外装する可能性が意図されている成形体、特に義歯または該義歯の部分を提供することができるように、改善するという課題が、本発明の基礎になっている。この場合、従来の技術の欠点を回避することが意図される。
【0015】
更に、高精度をもって容易な方法で加工することができ、次に、高精密な成形体、特に義歯または該義歯の部分を製造することができる未焼成材料を提供することができることが意図される。
【0016】
本発明によれば、上記課題は、成形体、特に義歯または該義歯の部分を製造する方法であって、
以下の製造工程、すなわち、
金属粉末およびバインダから混合物を製造すること、
該混合物を圧縮して未焼成材料を形成すること、
該未焼成材料を室温から脱バインダ開始温度Tへ加熱すること、
未焼成材料が損傷しないように、未焼成材料を加熱速度Rで脱バインダ開始温度Tから脱バインダ終了温度Tへ制御して加熱することによって、未焼成材料を脱バインダすること、
脱バインダされた未焼成材料を予備焼結することであって、該未焼結材料を加熱速度RHVSで予備焼結温度TVSに加熱すること、
未焼成材料を予備焼結温度TVSから冷却速度RKVSで冷却することであって、少なくとも加熱速度RHVS、予備焼結温度TVSおよび冷却速度RKVSは、ブランクを形成する予備焼結された未焼成材料が、予備焼結後に16%と22%の間の表面気孔率を有するように、互いに調整され、
ブランクを切削加工すること、および
加工されたブランクを高密度焼結して、成形体を形成すること、を有する方法によって、解決される。
【0017】
この場合、「表面気孔率」は、金属顕微鏡用切片の作成の際に材料で満たされていない面の割合を意味する。
【0018】
金属粉末として、歯科用金属合金を、コバルト・クロム合金またはニッケル・クロム合金として用いることが、特に提案されている。
【0019】
コバルト・クロム合金の場合には、組成を以下のように選択するほうがよい。すなわち、
コバルト: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
但し、合計は100重量%である。
【0020】
更に、以下の組成のニッケル・クロム合金を用いる可能性もある。すなわち、
ニッケル: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
但し、合計は100重量%である。
【0021】
他の元素としては、特に、マンガン、シリコン、コバルト・クロム合金の場合にはニッケル、ニッケル・クロム合金の場合にはコバルト、ベリリウム、カドミウム、鉛、鉄、アルミニウム、チタン、炭素、窒素、酸素、イオウならびに他の元素が適切であり、1%未満の重量%を有する。
【0022】
未焼成材料に圧縮された混合物が、容積気孔率に対応し、かつ16%と22%の間、好ましくは、18%と20%の間にある表面気孔率を有することが、特に提案されている。この場合、気孔率は、金属粉末粒子同士の間で空気またはバインダで充填されている、未焼成材料の領域によって形成される。
【0023】
未焼成材料を予備焼結温度TVSに加熱した後に、未焼成材料を、保持時間tVSに亘って予備焼結温度TVSに保持し、次に、冷却速度RKVSで冷却することが特に提案されている。
【0024】
実際また、未焼成材料を、冷却速度RKVSで温度Tに冷却し、但し、特に、T≦Tであって、450℃≦T≦650℃、好ましくはTが約600℃であることが特に提案される。
【0025】
この場合、脱バインダおよび予備焼結を、酸素の排除の下で、特に、不活性雰囲気または特に好ましくはアルゴン雰囲気の中で行なうほうがよい。還元雰囲気または真空も、適切である。
【0026】
脱バインダのために、未焼成材料を、脱バインダ開始温度Tへ加熱し、但し、350℃≦T≦550℃であることは好ましい。温度Tに達した後、特に、温度T≒450℃に達した後に、次に、緩慢な加熱を行なう。脱バインダプロセス中には、加熱速度は20K/minを越えないことが意図される。加熱速度が1K/minないし5K/minであることは好ましい。500℃より上、特に550℃より上ないし脱バインダ終了温度Tまでの範囲では、但し、550℃≦T≦650℃であり、特にT≒600℃であって、加熱速度を、特に1K/minと5K/minの間に選択することが特に提案されている。脱バインダ終了温度Tに達した後に、次に、未焼成材料を、時間tに亘って保持し、但し、1min≦t≦20minであるほうがよい。しかしながら、このことは必ずしも必要というわけではなく、実質的に加熱速度に依存している。
【0027】
例として挙げてあるのであって、保護が限定されるわけではない好ましいパラメータに依存せずに、この場合、脱バインダを制御下で行なうように、加熱を行なわねばならない。制御下で行なわないならば、未焼成材料が損傷を受け、従って使用不可能になるだろう。通常の当業者は、未焼成材料を損なうことのない、制御下でのこのような加熱を、必要な場合には、簡単な試みを行なった後に、容易に行なうことができる。
【0028】
脱バインダ後に、予備焼結終了温度TVSへの加熱を行なう。基本的には、任意の加熱速度RHVSを選択することができる。
【0029】
予備焼結された未焼成材料の、16%と22%の間の、特に、18%と20%の間の所望の表面気孔率を達成するために、本発明では、予備焼結終了温度TVS、加熱速度RHVS、必要な場合には、予備焼結終了温度TVSにおける保持時間tVSおよび冷却速度RKVSの調整を行なう。例えば1K/minと10K/minとの間の加熱速度によって、予備焼結終了温度TVSへ非常に緩慢に加熱する際には、脱バインダされた未焼成材料を、時間tVSに亘って、予備焼結終了温度に保持する必要はない。
【0030】
冷却速度によっても、保持時間tVSへ影響を及ぼすことができる。極端な場合、予備焼結終了温度TVSの達成後に直ぐに冷却を行なうことができる。
【0031】
10%と22%の間の、特に、18%と20%の間の所望の表面気孔率または容積気孔率を達成するためのパラメータの調整は、以下に例示するデータを用いて行なうことができる。
【0032】
つまりは、予備焼結終了温度TVSが650℃と750℃の間の範囲にあるとき、加熱速度RHVSおよび/または冷却速度RKVSは、1K/minと200K/minとの間、好ましくは1K/minと50K/minとの間、特に好ましくは1K/minと20K/minとの間にあるほうがよい。予備焼結終了温度TVSの達成後に、保持時間tVSを、10minと200minの間に、特に30minと100minの間に、特に好ましくは50minと80minとの間に保持するほうがよい。
【0033】
予備焼結終了温度TVSが750℃と850℃の間の範囲にあるとき、加熱速度RHVSおよび/または冷却速度RKVSは、5K/minと200K/minとの間、特に5K/minと20K/minとの間にあるほうがよい。予備焼結終了温度TVSの達成後に、保持時間tVSを、5minと60minとの間に、特に10minと30minとの間に選択することができることは好ましい。
【0034】
しかしながら、予備焼結終了温度TVSを850℃と950℃の間の範囲に定める可能性もある。この場合、加熱速度RHVSおよび/または冷却速度RKVSは、15K/minと200K/minとの間、好ましくは15K/minと50K/minとの間にあるほうがよい。予備焼結終了温度TVSにおける好ましい保持時間tVSは、5minと30minとの間、特に10minと20minとの間の範囲にある。
【0035】
予備焼結されたブランクの所望の表面気孔率または容積気孔率を達成するために、予備焼結終了温度TVSが、950℃と1100℃の間の範囲にあってもよい。この場合には、加熱速度RHVSおよび/または冷却速度RKVSは、30K/minと200K/minとの間、好ましくは30K/minと100K/minとの間にあるほうがよい。このようなパラメータのために、保持時間tVSを決定することは好ましく、但し、5min≦tVS≦20minである。
【0036】
前記組成のコバルト・クロム合金の場合に、予備焼結終了温度を650℃と750℃の間に、前記予備焼結終了温度TVSにおける保持時間を50minと70minとの間に選択する。加熱速度は10K/minと30K/minとの間にある。
【0037】
換言すれば、ブランクともいわれる予備焼結された未焼成材料の、16%と22%との間の表面気孔率が生じるように、互いに調整され得る種々の加熱速度、予備焼結終了温度、保持時間および冷却速度を選択することができる。
【0038】
特には、18%と22%との間の表面気孔率が生じるように、パラメータの調整を行なうほうがよい。
【0039】
脱バインダ前の未焼成材料が、予備焼結後の表面気孔率よりも最大限5%上回る気孔率を有することが、特に提案されている。特には、差異が2%未満であるほうがよい。
【0040】
従って、本発明は、成形体の製造のために、16%と27%の間、特に18%と22%との間にある気孔率を有する圧縮された未焼成材料を用いることを特徴とする。
【0041】
圧縮されてはいるが脱バインダされていない未焼成材料の気孔率が、基本的には、予備焼結された未焼成材料の、従ってブランクの気孔率を上回るとき、同様に、気孔率が同じであってもよい。このことによっては、本発明を逸脱しない。
【0042】
加熱速度と、予備焼結終了温度と、保持時間と、冷却速度との間の相関関係がある。例えば、加熱速度および冷却速度が低いときは、短い保持時間を調整しなければならず、逆の場合も同じである。すべての速度および保持時間を、尺度として、予備焼結終了温度の選択によって決定する。5minより下の保持時間は、適切でない。何故ならば、特に、ブランクが大きくて、かつ保持時間が短いときは、均等な十分な加熱および予備焼結を保証することができない。60minを越える保持時間は、同様に不都合である。何故ならば、比較的長い滞留時間は、酸化層の望ましくない形成を促進するからである。
【0043】
適切な表面気孔率を有する成形体は、特に、義歯または義歯の部分を製造することができるための、極めて良好な加工挙動を示す。ツールの磨耗の少ないときは、精密加工を行なうことができる。
【0044】
ブランクを室温へ冷却した後に、次に、切削加工をして成形体を形成する。切削加工としては、スライス切削および研削を挙げることができる。
【0045】
最後に、高密度焼結の処置を実行する。
【0046】
金属粉末としては、ニッケル・クロムベースのまたはコバルト・クロムベースの粉末、特に、コバルト・クロム合金、好ましくはコバルト・クロム・モリブデン合金の形態の歯科用合金粉末を用いることが、特に提案されている。
【0047】
バインダとしては、蝋および/またはセルロースをベースにしたバインダを挙げることができることは好ましい。
【0048】
16%と22%との間の、特に、18%と20%との間の表面気孔率を達成するために、
関係式
【数1】

【0049】
に従って、未焼成材料を、予備焼結終了温度TVSに、時間tVSに亘って保持することが、特に提案されている。
【0050】
この場合、tは、方程式
【数2】

【0051】
に従って、計算される。
【0052】
但し、
c=予備焼結後の未焼成材料の所望の表面気孔率、
=脱バインダ後の未焼成材料の表面気孔率、
=材料定数(単位min)、
=材料定数(単位ケルビン)、
VS=保持時間tVSにおける予備焼結終了温度であって、但し、650℃≦TVS≦1100℃である。
【0053】
、すなわち、脱バインダ後の未焼成材料の表面気孔率を、測定結果の補間によって決定することができる。基本的には、関係式は、c−c<5%、特にc−c<2%として成り立つ。他の周辺条件として、c<cを挙げることは好ましい。
【0054】
材料定数tも、測定結果の補間によって決定することができる。コバルト・クロムまたは同等な材料をベースにした金属粉末を用いるとき、t=0.0125minが生じる。
【0055】
材料定数Tは、コバルト・クロムまたは該コバルト・クロムと同等な材料をベースにした金属粉末を用いるとき、T=11000Kである。
【0056】
摂氏でなくケルビンで表示されるTVSを上記の式に挿入することができることに注意する必要がある。
【0057】
予備焼結を、この関連に基づいて、予備焼結終了温度を保持時間tVSに亘って保持することによって行なうとき、冷却速度および加熱速度を、大部分の予備焼結が保持時間中になされるほどに短時間に選択することができる。特には、ほぼ一定の加熱速度RHVSによる加熱時間およびほぼ一定の冷却速度RKVSによる冷却時間の際には、650℃と予備焼結終了温度TVSとの間における加熱時間および予備焼結終了温度TVSと650℃との間における冷却時間は、合計で2t未満であるほうがよい。すなわち、
【数3】

【0058】
が成り立ち、
但し、摂氏で表示される温度を用いることができる。更に、予備焼結終了温度TVSおよびcとcとの間の差が、マイナスの加熱速度および冷却速度が除外されるように、互いに調整されているという周辺条件を保つことができる。実際また、最大限の予備焼結終了温度TVSは1100℃未満であるほうがよい。
【0059】
従って、式(3)は、コバルト・クロムまたは該コバルト・クロムと同等な材料をベースにした金属粉末を用いるとき、16%と22%との間の表面気孔率を有する予備焼結されたブランクを製造するための、挙げられたパラメータを基礎にして、保持されるところの条件を表わす。
【0060】
驚いたことには、予備焼結されたブランクが、現存の表面気孔率にも係わらず、所望の精度をもって加工することができるのみならず、高密度焼結後に、表面気孔率が残っているにもかかわらず、全く気泡のない外装が可能であることも明らかになった。このことの原因は、本発明に係わる予備焼結処置の際に、挙げられたパラメータを用いて、残りの表面気孔率が得られ、この表面気孔率が、高密度焼結後に、まとまった系(verbundenes System)を表わさず、分散されていることにあるだろう。このことによって、既述のように、気泡のないセラミック製の外装の可能性が提供されるだけでなく、必要な耐腐蝕性が保証される。更に、加工後に、該加工に続く高密度焼結後に、必要な寸法精度、すなわち、均等なかつ全く適切な収縮が生じることが明らかになった。
【0061】
本発明の実施の形態では、金属粉末およびバインダからなる混合物を、軸方向にまたは静水圧で、圧力pでプレスするほうがよく、但し、100MPa≦p≦1000MPa、特に200MPa≦p≦600MPaであることが提案されている。
【0062】
更に、未焼成材料または脱バインダされた未焼成材料を、脱バインダおよび予備焼結された未焼成材料としても、不活性雰囲気またはフォーミング・ガス雰囲気または真空中で加熱することが、提案されていることは好ましい。この措置によって、表面に、非常に薄い層が生じるが、例えば研磨によって問題なく除去され、残りの表面気孔率が、高密度焼結後に、光沢を損なうことがないことが保証されている。
【0063】
かくして製造されたブランクを、次に、特に、乾式または湿式で加工するツールによって加工することができる。特にCAM技術では、ブランクから、ブランクの寸法に応じて、所望の数の成形体、特に義歯、例えばクラウンまたはブリッジを、フライス切削でまたは研磨で作り出す。倣いフライス切削も可能である。
【0064】
本発明は、義歯または該義歯の部分を製造するために定められた未焼成材料において、該未焼成材料が、歯科用金属合金からなる予備焼結された未焼成材料であり、かつ、16%と22%の間の表面気孔率を有することを特徴とする。この場合、歯科用金属合金が、ニッケル・クロム合金またはコバルト・クロム合金であることが特に提案されている。
【0065】
特に提案されているように、歯科用合金粉末としては、50重量%ないし70重量%のコバルト、20重量ないし35重量%のクロム、0重量%ないし10重量%のモリブデン、0重量%ないし20重量%のタングステン、10重量%未満の1つまたは複数の他の元素、特に、マンガン、シリコン、ニッケル、ベリリウム、カドミウム、鉛、鉄、アルミニウム、チタン、酸素、窒素、イオウのグループからなる元素の、および、必要な場合には、1%未満の重量%を有する他の元素の混合物を用い、合計は100重量%である。
【0066】
しかしながら、本発明は、歯科用合金粉末として、50重量%ないし70重量%のニッケル、20重量ないし35重量%のクロム、0重量%ないし10重量%のモリブデン、0重量%ないし20重量%のタングステン、10重量%未満の1つまたは複数の他の元素の、特に、マンガン、シリコン、コバルト、ベリリウム、カドミウム、鉛、鉄、アルミニウム、チタン、酸素、窒素、イオウのグループからなる元素の、および、必要な場合には、1%未満の重量%を有する他の元素の混合物を用い、但し、合計は100重量%であることを特徴とする。
【0067】
本発明の複数の他の詳細、利点および特徴は、複数の請求項と、これらの請求項から読み取れる複数の特徴とからのみならず、複数の好ましい実施の形態の以下の記述からも明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
義歯を製造するために、以下の組成、すなわち、
26ないし30重量%のCr、
5ないし7重量%のMo、
合計で、0.01と1.5重量%の間の、元素Mn,Si,Fe,C,Niの、少なくとも1つの元素、
残りのCo(61.5重量%ないし68.99重量%)の金属合金を用いた。総計は100重量%である。粉末を製造するために、まず、金属合金を製造し、溶融し、続いて噴霧した。平均的な粒度は、5μmと50μmの間にあった。続いて、約2重量%の金属粉末に、蝋をベースにしたバインダを添加した。かくして製造された混合物を用いて、軸方向圧縮によって、ディスク形状を有する未焼成材料を製造した。直径は、約10cmであり、厚みは、約1cmであった。他の寸法も、同様に適切である。
【0069】
続いて、脱バインダを行なった。この目的のために、未焼成材料を、まず、任意の加熱速度で450℃に加熱した。450℃より上では、ゆっくりした加熱を行なった。好ましい加熱速度として、3K/minを選択した。約60℃である温度Tに達した後に、未焼成材料を、約10分の時間tに亘って保持した。これらのパラメータは、バインダを除去するためには、基本的に十分であった。
【0070】
CoCrMoブランクを製造するために、次に、脱バインダされた未焼成材料を予備焼結した。この目的のために、二者択一により、未焼成材料を、90K/minの範囲の加熱速度で、約800℃の範囲の温度に迅速に加熱し、かつ、この温度に、約20minの時間に亘って保持した。続いて、初めは同じで続いて低い速度で冷却を行なった。
【0071】
この方法によって、以下の式が、方程式(1),(2)および(3)に基づく関係式または条件に対応した。すなわち、
【数4】

【0072】
従って、t/2<tVS<2t、ここでは9min<tVS<36minおよび
【数5】

【0073】
かくして製造されたブランクの顕微鏡写真は、16%と22%の間の、最大限で18%と20%の間の範囲にある開放表面気孔率が生じたことを示した。かようなブランクは、ツールの高い磨耗の危険性は生ぜず、従って、加工の精度は損なわれなることなく、容易に加工された。
【0074】
表面気孔率によって、CAM装置による容易な加工が可能であった。この目的のために、ブランクをホルダによってCAM装置に固定した。続いて、切削加工を行なった。ブランクの領域を、湿式および乾式装置の中で加工した。乾式のフライス切削を行なったとき、加工中に生じた粉塵を、クラスH電気掃除機によって除去した。湿式法を用いたとき、研削加工をした。特に湿式加工の際には、全然欠点が表われなかった。
【0075】
ブランクから加工された物体は、この場合、完全焼結の際に生じる収縮を考慮に入れる寸法を有した。この場合、収縮後に検知されたことは、収縮が均等にかつぴったりの精度で行なわれたことである。表面気孔率が残っているにもかかわらず、成形体の表面を研磨し、あるいは、通常の方法で、セラミック製の全く気泡を有さない外装を付着した。
【0076】
義歯の製造に基づいて本発明を説明したが、このことによって、本発明は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体、特に義歯または該義歯の部分を製造する方法において、
以下の製造工程、すなわち、
金属粉末およびバインダから混合物を製造すること、
該混合物を圧縮して未焼成材料を形成すること、
該未焼成材料を室温から脱バインダ開始温度Tへ加熱すること、
前記未焼成材料が損傷しないように、前記未焼成材料を加熱速度Rで脱バインダ開始温度Tから脱バインダ終了温度Tへ制御して加熱することによって、前記未焼成材料を脱バインダすること、
前記脱バインダされた未焼成材料を、加熱速度RHVSで予備焼結温度TVSに予備焼結すること、
前記未焼成材料を、予備焼結温度TVSから冷却速度RKVSで冷却することであって、少なくとも前記加熱速度RHVS、前記予備焼結温度TVSおよび前記冷却速度RKVSは、ブランクを形成する前記予備焼結された未焼成材料が、予備焼結後に16%と22%の間の表面気孔率を有するように、互いに調整され、
前記ブランクを切削加工すること、および
前記加工されたブランクを高密度焼結して、前記成形体を形成すること、を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記未焼成材料を、該未焼成材料を前記予備焼結温度TVSに加熱した後に、保持時間tVSに亘って、該予備焼結温度TVSに保持し、次に、前記冷却速度RKVSで冷却し、好ましくは、前記未焼成材料を前記冷却速度RKVSで温度Tに冷却し、但し、450℃≦T≦650℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記未焼成材料を、脱バインダのために、前記脱バインダ開始温度Tへ加熱し、但し、350℃≦T≦550℃であって、次に、前記脱バインダ開始温度Tと前記脱バインダ終了温度Tとの間の温度範囲で、但し、550℃≦T≦650℃であり、しかも、T>Tであって、加熱速度Rで、但し、1K/min≦R≦5K/minであって、前記脱バインダ終了温度Tに加熱し、特に前記未焼成材料を、時間tに亘って、前記脱バインダ終了温度Tに保持し、但し、1min≦t≦20minであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮された未焼成材料として、16%と27%の間、特に18%と22%との間にある表面気孔率を有する未焼成材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属粉末としては、ニッケル・クロム合金またはコバルト・クロム合金を用い、コバルト・クロム合金の場合、以下の組成を選択し、すなわち、
コバルト: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
但し、合計は100重量%であり、
ニッケル・クロム合金の場合には、以下の組成を用い、すなわち、
ニッケル: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
但し、合計は100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記未焼成材料を、前記予備焼結終了温度TVSに、保持時間tVSに亘って保持し、但し、特に650℃≦TVS≦1100℃であって、TVSを高く選択すればするほど、前記保持時間tVSを一層短く調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
予備焼結終了温度TVSでは、但し、650℃≦TVS≦750℃であって、前記保持時間tVSを調整し、但し、10min≦tVS≦200min、特に30min≦tVS≦100min、特に好ましくは50min≦tVS≦80minであって、好ましくは、前記加熱速度RHVSおよび前記冷却速度RKVSを、夫々、1K/min≦RHVS≦200K/min、特に1K/min≦RHVS≦50K/min、特に好ましくは1K/min≦RHVS≦20K/min、および1K/min≦RKVS≦200K/min、特に1K/min≦RKVS≦50K/min、特に好ましくは1K/min≦RKVS≦20K/minに調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
予備焼結終了温度TVSでは、但し、750℃≦TVS≦850℃であって、前記保持時間tVSを調整し、但し、5min≦tVS≦60min、好ましくは10min≦tVS≦30minであって、好ましくは、前記加熱速度RHVSおよび前記冷却速度RKVSを、夫々、5K/min≦RHVS≦200K/min、好ましくは5K/min≦RHVS≦20K/min、および5K/min≦RKVS≦200K/min、特に好ましくは5K/min≦RKVS≦20K/minに調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
予備焼結終了温度TVSでは、但し、850℃≦TVS≦950℃であって、前記保持時間tVSを調整し、但し、5min≦tVS≦30min、特に10min≦tVS≦20minであって、好ましくは、前記加熱速度RHVSおよび前記冷却速度RKVSを、夫々、15K/min≦RHVS≦200K/min、特に15K/min≦RHVS≦50K/min、および15K/min≦RKVS≦200K/min、特に15K/min≦RKVS≦50K/minに調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
予備焼結終了温度TVSでは、但し、950℃≦TVS≦1100℃であって、前記保持時間tVSを調整し、但し、5min≦tVS≦20min、好ましくは、前記加熱速度RHVSおよび前記冷却速度RKVSを、夫々、30K/min≦RHVS≦200K/min、特に30K/min≦RHVS≦100K/min、および30K/min≦RKVS≦200K/min、特に30K/min≦RKVS≦100K/minに調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記未焼成材料を、ケルビンで表示された前記予備焼結終了温度TVSに、時間tVSに亘って保持し、但し、
【数1】

であって、
但し、
【数2】

であって、
但し、
c=予備焼結後の前記未焼成材料の所望の表面気孔率であって、但し、16%<c<22%、特に18%<c<20%であって、
=脱バインダ後の前記未焼成材料の表面気孔率であって、但し、c−c<5%、好ましくはc−c<2%、特に、c>cであって、
=材料定数であって、但し、t=0.0125minであり、
=材料定数であって、但し、T=11000Kであり、
VS=保持時間tVSにおける予備焼結終了温度であって、但し、650℃≦TVS≦1100℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ほぼ一定の加熱速度RHVSによる前記加熱時間およびほぼ一定の冷却速度RKVSによる前記冷却時間を、650℃と摂氏度で表示される前記予備焼結終了温度TVSとの範囲で調整して、かくして、前記加熱時間および冷却時間の合計は、以下の条件を満たし、すなわち、
【数3】

但し、
【数4】

VSおよびc−cを、マイナスの加熱速度および冷却速度が除外されるように、互いに調整することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属合金を粉末に形成すべく噴霧し、混合物を製造するために、蝋および/またはセルロースをベースにしたバインダと混合すること、好ましくは、前記未焼成材料を、前記金属合金および前記バインダからなる混合物の静水圧プレス成形または軸方向プレス成形によって、圧力pで、但し、100MPa≦p≦1000MPa、特に200MPa≦p≦600MPaであって、あるいは、金属粉末射出成形法によって製造すること、および、好ましくは、脱バインダおよび予備焼結および好ましくは冷却を、酸素の排除の下で、特に、不活性雰囲気または還元雰囲気、例えばフォーミング・ガス雰囲気の中でまたは真空で行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
義歯または該義歯の部分を製造するために定められた未焼成材料において、
前記未焼成材料は、予備焼結された未焼成材料であり、歯科用金属合金からなり、かつ、16%と22%の間の表面気孔率を有することを特徴とする未焼成材料。
【請求項15】
前記予備焼結された未焼成材料は、18%と20%の間の表面気孔率を有することを特徴とする請求項14に記載の未焼成材料。
【請求項16】
前記歯科用金属合金は、ニッケル・クロム合金、またはコバルト・クロム合金であり、該歯科用金属合金は、ニッケル・クロム合金として、好ましくは、
ニッケル: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
を含み、
あるいは、前記歯科用金属合金は、コバルト・クロム合金として、好ましくは、
コバルト: 50重量%ないし70重量%
クロム: 20重量ないし35重量%
モリブデン: 0重量%ないし10重量%
タングステン: 0重量%ないし20重量%
他の元素: 10重量%未満、
を含み、但し、合計は100重量%であることを特徴とする請求項14に記載の未焼成材料。

【公開番号】特開2012−101070(P2012−101070A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245262(P2011−245262)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(504013395)デグデント・ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】