説明

成形体及び磁気治療具

【課題】人脂等による変形を長期間にわたって防止できる成形体、及び、耐久性に優れた磁気治療具を提供すること。
【解決手段】磁性粉及びゴムを含有する芯材11と、芯材11の外周面に配置され、トリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴムを含有する中間層12と、中間層12の外周面に配置され、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層13とを備え、中間層12と外層13との合計厚さが外層13の外径に対して0.1〜0.2である成形体2、並びに、成形体2と、この成形体2の両端部2A及び2Bに装着された連結具3(15及び16)とを備えて成る磁気治療具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形体及び磁気治療具に関し、さらに詳しくは、人脂等による変形を長期間にわたって防止できる成形体、及び、耐久性に優れた磁気治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活におけるストレスや運動不足等により、肩こり、腰痛等の症状を訴える人が増加してきており、このような状況を反映して、皮膚等に直接接触させる小型磁石の磁気効果を利用して前記症状を改善する磁気治療具に対する関心が高まっている。このような磁気治療具は、磁場を付与して首や肩等の血行を良くし、皮膚温度を上げることによって前記症状が緩和されると一般に考えられている。したがって、磁気治療具は高い表面磁束密度を有していることが重要である。
【0003】
このような磁気治療具は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等に磁性材料を混合し、磁性成形品を得ることによって製造されており、現在に至るまで様々なものが開発されている。通常、磁気治療具に使用される磁性成形品は、磁性材料と樹脂等の混合材料で形成された芯材と、この芯材の保護、意匠性の向上、肌感触の向上等のために芯材の外周面を被覆する外層を有している。
【0004】
磁気治療具として、例えば、特許文献1には、「ネックレス等に用いられて身体に血行促進作用を及ぼす磁気治療器具において、所定の方向に延びて、シリコーンゴムと磁性粉との混合物により形成されるとともに着磁された可撓性を有する長尺な磁石部と、シリコーンゴムにより形成されるとともに前記磁石部の外周をその全域にわたって被覆する可撓性を有する被覆部とを備えたことを特徴とする磁気治療器具」が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「Sm−Fe−N系磁性粉を含むシリコーンゴム組成物により形成された内層部と、該内層部を被覆する外層部とを有する少なくとも二層構造の磁性成形品であって、該外層部がシリコーンゴム組成物により形成されており、該磁性成形品の引張強度が3〜10MPa、伸びが100〜600%であることを特徴とする磁性成形品」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−173405号公報
【特許文献2】特開2009−22341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような磁気治療具を装着すると、使用者の汗、脂類等の人脂(この発明において、人脂等と称する。)が磁気治療具に浸入又は浸透することがある。特に、磁気治療具を長期間にわたって連続して又は断続的に装着すると、また磁気治療具を運動中又は夏季等の発汗しやすい状態で装着すると、人脂等が磁気治療具に浸入又は浸透しやすくなる。このように人脂等が磁気治療具に浸入又は浸透すると、膨潤して変形例えば膨出し、場合によってはこの変形した部分例えば膨出部が破損して磁気治療具の耐久性が低下することがある。すなわち、人脂等が浸入又は浸透した磁気治療具は意匠性及び装着性を損ない、この膨出部が破損すると浸入又は浸透した人脂等が流出する。
【0008】
したがって、この発明の課題は、人脂等による変形を長期間にわたって防止できる成形体、及び、耐久性に優れた磁気治療具を提供することに、ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の発明者らは、人脂等が成形体の芯材近傍に侵入又は浸透すると、芯材に含まれる磁性粉と接触して変質等した人脂等が芯材近傍に滞留することによって、成形体の耐久性が低下するのではないかの推測の下に、芯材の周囲にトリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴムを含有する中間層を設け、この中間層と外径との厚さを特定の範囲に設定すると、変質等して芯材近傍に滞留しやすい人脂等の芯材近傍への浸入又は浸透を抑制して成形体の変形又は破損を防止できることを見出した。
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、磁性粉及びゴムを含有する芯材と前記芯材の外周面に配置され、トリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴムを含有する中間層と前記中間層の外周面に配置され、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層とを備え、前記中間層と前記外層との合計厚さが前記外層の外径に対して0.1〜0.2である成形体であり、
請求項2は、前記芯材に含有される前記ゴムはシリコーンゴムである請求項1に記載の成形体であり、
請求項3は、前記成形体は100℃のパルミチン酸に168時間浸漬されたときの質量変化率が±10%以内である請求項1又は2に記載の成形体であり、
請求項4は、前記成形体は前記磁性粉が着磁されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体であり、
請求項5は、請求項4に記載の成形体とこの成形体の両端部に装着された連結具とを備えて成る磁気治療具であり、
請求項6は、前記連結具は前記成形体の一端部に装着された第1連結具と前記成形体の他端部に装着され、前記第1連結具に着脱可能に連結する第2連結具とを備えて成る請求項5に記載の磁気治療具である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る成形体は、磁性粉及びゴムを含有する芯材とトリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴムを含有する中間層とトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層とを備え、中間層と外層との合計厚さが外層の外径に対して0.1〜0.2であるから、成形体が変形又は破損するほどの人脂等の芯材近傍への浸入又は浸透を防止できる。したがって、この発明によれば人脂等による変形を長期間にわたって防止できる成形体を提供することができる。
【0012】
また、この発明に係る磁気治療具は、この発明に係る成形体を備えてなるから、耐久性に優れた磁気治療具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明に係る磁気治療具の一例である磁気治療具を示す概略正面図である。
【図2】図2は、この発明に係る磁気治療具の一例である磁気治療具の軸線に垂直な断面を示す概略断面図である。
【図3】図3は、従来の磁気治療具の一例である磁気治療具の軸線に垂直な断面を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る成形体は、特定の芯材と特定の中間層と特定の外層とを備え、中間層がトリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴム(フロロシリコーンゴムと称することがある。)を含有している。このように中間層がフロロシリコーンゴムを含有していると、このフロロシリコーンゴムを含有する中間層によって成形体が変形又は破損するほどの人脂等の芯材近傍への浸入又は浸透を防止できる。なお、フロロシリコーンゴム等については後述する。
【0015】
この発明に係る成形体は、中間層と外層との合計厚さが外層すなわち成形体の外径に対して0.10〜0.20の範囲内にある。換言すると、成形体の外径に対する芯材の直径の比(芯材直径/成形体外径)が0.60〜0.80の範囲内に調整されている。このように成形体の外径に対する合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)が0.10未満であると中間層と外層との合計厚さが薄くなるから着磁した成形体の外表面から放射される磁束密度(表面磁束密度とも称する。)は高くなるものの人脂等の浸入又は浸透を効果的に防止できず、成形体の耐久性に劣ることがある。一方、前記合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)が0.20を超えると人脂等の浸入又は浸透を防止できるものの着磁した成形体が高い表面磁束密度を発現できないことがある。このように互いに相反する特性である表面磁束密度と耐久性とを高い水準で両立させることができる点で、前記合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)は、0.11〜0.17であるのが好ましく、0.125〜0.15であるのが特に好ましい。
【0016】
このように、前記構成を有するこの発明に係る成形体は、成形体が変形又は破損するほどの人脂等の芯材近傍への浸入又は浸透を防止できるうえ、着磁されると高い表面磁束密度を発現するから、磁気治療具の磁気成形体として有用であり、磁気成形体としてこの発明に係る成形体を利用したこの発明に係る磁気治療具は高い耐久性を発揮する。ここで、磁気治療具としては、例えば、磁気ネックレス、磁気ブレスレット等の装身具、磁気枕及び磁気マットレス等の寝具、貼付型磁気治療器、並びに、磁気サポーター等の幅広い磁気治療器具等が挙げられる。
【0017】
この発明に係る成形体は芯材と中間層と外層とを備えており、この発明に係る磁気治療具はこの発明に係る成形体を備えている。したがって、以下に、この発明に係る成形体及びこの発明に係る磁気治療具を併せて説明する。
【0018】
この発明に係る磁気治療具の一例である磁気治療具1は、図1及び図2に示されるように、成形体2と連結具3とを備え、例えば、磁気ネックレスとして装用される。この磁性治療具1は、磁気治療具としての機能を発揮するためには、その外表面の表面磁束密度が40ミリテスラ(mT)以上であるのが好ましく、40〜200ミリテスラ(mT)であるのが特に好ましい。表面磁束密度は、後述する磁性粉の含有量、磁性粉を構成する各原子の配合割合、外層の厚さ等を変更することによって、調整できる。磁気治療具1の外周面から放出される磁束密度すなわち表面磁束密度は、例えば、ガウスメーター(電子磁気工業株式会社製 機種:GM4002)及びトランスバース型プローブ(電子磁気工業株式会社製 機種:T−402)にて測定できる。
【0019】
この成形体2は、この発明に係る成形体の一例の成形体であり、図1及び図2に示されるように、磁性粉及びゴム(以下、芯材用ゴムと称することがある。)を含有する芯材11と、芯材11の外周面に配置され、フロロシリコーンゴムを含有する中間層12と、中間層12の外周面に配置され、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層13とを備え、一方向すなわち軸線方向に延在する線状の長尺体とされ、軸線方向に垂直な断面が略円形になっている。したがって、この成形体2は長尺成形体と称することもできる。
【0020】
芯材11は、図1及び図2に示されるように、一方向すなわち軸線方向に延在する線状の中実長尺体であり、軸線方向に垂直な断面が略円形になっている。この芯材11は、ゴムを含有する屈曲自在な長尺体すなわち可撓性を有する長尺体である。この長尺体は用途等に応じて適宜の外径及び軸線長さに調整される。
【0021】
芯材11は、磁気治療具1としたときに高い表面磁束密度を発現すると共に高い耐久性を発揮する点で、磁気治療具1すなわち成形体2又は外層13の外径に対する直径の比(芯材直径/成形体外径)が0.60〜0.80に調整されており、0.67〜0.78に調整されているのが好ましく、0.70〜0.75に調整されているのが特に好ましい。芯材11の直径は、前記比を満たすように、例えば、1.5〜4.4mmの範囲から選択され、好ましくは2〜4mmの範囲から選択される。
【0022】
この芯材11は、芯材用ゴム及び磁性粉を含有する所謂「ゴム磁石」で形成され、可撓性を有している。芯材用ゴムは、特に限定されず、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。芯材用ゴムは、これらの中でも、芯材11と中間層12とが強固に密着して磁気治療具1の耐久性が向上する点でシリコーンゴムであるのが好ましい。このシリコーンゴムは、公知のシリコーンゴムであれば特に限定されることなく用いることができ、例えば、トリフルオロアルキル基等のフッ素原子含有基を有するシリコーンゴム、フッ素原子無含有のシリコーンゴム等が挙げられ、フッ素原子無含有のシリコーンゴムとして、ジメチル系シリコーンゴム、メチルビニル系シリコーンゴム、メチルビニルフェニル系シリコーンゴム及びメチルフロロアルキル系シリコーンゴム等が挙げられる。
【0023】
芯材11が含有する磁性粉は、着磁されたときに磁力を発生するものであればよく、例えば、希土類金属系磁性材料等が挙げられる。希土類金属系磁性材料としては、例えば、SmCo型、SmCo17型等の希土類コバルト(サマリウムコバルト)系磁性材料、NdFe14B等の希土類ネオジウム系磁性材料、SmFe14等の希土類サマリウム鉄窒素系磁性材料等が挙げられる。この希土類サマリウム鉄窒素系磁性材料は、錆びにくく高温時での減磁が少なく、比較的少ない量でも高磁力を発生することができ、また粒子径の小さいものが得られる点で好ましい。この希土類サマリウム鉄窒素系磁性材料を構成する各元素の配合量はSm元素100質量部に対し、Fe元素が207〜375質量部、N元素が6〜25質量部であるのが好ましく、Sm元素100質量部に対し、Fe元素が272〜327質量部、N元素が12〜18質量部であるのが特に好ましい。希土類サマリウム鉄窒素系磁性材料は異方性であっても等方性であってもよい。
【0024】
磁性材料は、通常、粉末状、顆粒状等として含有され、その粒径は、例えば、0.5〜30μmに調整される。粒径が前記範囲内にあると、芯材11の外周面に大きな凹凸が形成されにくく外層12との高い密着性を確保できる。この粒径は、レーザー回析式粒度分布計法に従って測定条件分散圧2.6bar、分散媒体N2、試料2gで測定した値である。
【0025】
磁性粉は、ゴムと磁性粉との合計質量に対するゴムと磁性粉との質量比((ゴム/合計質量):(磁性粉/合計質量))すなわち(ゴム:磁性粉)が2.3:7.7〜0.9:9.1の割合で含有されている。すなわち、磁性粉は、ゴムとの合計質量を100質量部としたときに77〜91質量部の割合で含有されている。磁性粉の質量比(ゴム:磁性粉)が2.3:7.7未満であると、高い磁力を発揮する磁性粉を用いても磁気治療具1としたときの高い表面磁束密度を発現させることができないことがあり、一方、質量比(ゴム:磁性粉)が0.9:9.1を超えると、高い表面磁束密度を発現させることができるものの芯材11自体の可撓性が損なわれることがある。したがって、この発明において、可撓性が問われない磁気治療具、例えば、磁気枕及び磁気マットレス等の寝具、貼付型磁気治療器等に用いられる場合には、磁性粉の質量比(ゴム:磁性粉)は0.9:9.1を超えてもよい。磁気治療具1としたときの表面磁束密度と可撓性とを高い水準で両立できる点で、磁性粉は質量比(ゴム:磁性粉)が1.8:8.2〜1.1:8.9であるのが好ましい。
【0026】
芯材11は、ゴム及び磁性粉に加えて通常ゴム組成物に添加される各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、分散剤、発泡剤、加硫剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、可塑剤、難燃性向上剤、離型剤等が挙げられる。
【0027】
芯材11は、ゴムと磁性粉とを主成分として含有している。ここで、「主成分として」とは、芯材11に含有される全成分の合計質量に対してゴムと磁性粉とが合計で50質量%以上含有されていることを意味する。芯材11に含有される芯材用ゴム及び磁性粉の含有率は所望する磁気治療具1の表面磁束密度及び外径、外層13の厚さ、中間層12の厚さ等の寸法設定によって決定される。例えば、この芯材11は、ゴムと磁性粉とを前記合計質量に対して合計で85質量%以上含有しているのが好ましく、合計で90〜97質量%含有しているのが特に好ましい。
【0028】
中間層12は、図1及び図2に示されるように、一方向すなわち軸線方向に延在する1層構造の管状長尺体に形成され、その外表面の軸線方向に垂直な断面が略円形になっている。中間層12は、芯材11の外周面に配置され、すなわち、中間層は芯材11の外周面全体を被覆している。この中間層12はフロロシリコーンゴムを含有する屈曲自在な長尺体すなわち可撓性を有する長尺体である。この長尺体は用途等に応じて適宜の外径及び軸線長さに調整される。中間層12の外径は、磁気治療具1が装身具として用いられる場合には、例えば、2〜4.9mmに調整され、より具体的には、2.4〜4.1mmに調整される。中間層12の厚さは、後述する合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)を満たすように、例えば、0.1〜0.6mmの範囲から、好ましくは0.15〜0.45mmの範囲から、選択される。
【0029】
この中間層12は、フロロシリコーンゴムを含有している。中間層12がフロロシリコーンゴムを含有していると、このフロロシリコーンゴムによって中間層12よりも内部に人脂等の浸入又は浸透を防止できる。ここで、中間層12は、この発明の目的を損なわない範囲で、フロロシリコーンゴムに加えて、他のゴム、例えば、芯材11に含有されるゴム、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴム等を含有していてもよく、フロロシリコーンゴムのみを含有しているのが好ましい。
【0030】
中間層12は、フロロシリコーンゴムを含有しているから、芯材用ゴムがシリコーンゴムである場合の芯材11、及び、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層13と強固に密着して磁気治療具1の耐久性に大きく貢献する。
【0031】
フロロシリコーンゴムは、3つの水素原子、特に末端メチル基の3つの水素原子がフッ素原子で置換されたプロピル基を含有するシロキサン繰り返し単位を含むフロロシリコーンゴムであれば特に限定されることなく公知のものを採用でき、例えば後述する中間層用ゴム組成物の成分(I)を硬化してなるフロロシリコーンゴム、所望により成分(I)と成分(III)とを硬化してなるフロロシリコーンゴムが挙げられる。フロロシリコーンゴムは人脂等に対する耐性を有しており、中間層12及び中間層12よりも内部に人脂等が浸入又は浸透して芯材11の外周面近傍に溜まることを効果的に防止できる。したがって、中間層12がフロロシリコーンゴムを含有していると、人脂等の浸入又は浸透による芯材11と中間層12との剥離を防止でき、成形体2が高い耐久性を発揮する。
【0032】
中間層12は、フロロシリコーンゴムに加えて通常ゴム組成物に添加される各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、分散剤、発泡剤、加硫剤、老化防止剤、酸化防止剤、後述する中間層用ゴム組成物の成分(II)等の充填材、顔料、着色剤、加工助剤、可塑剤、難燃性向上剤、離型剤等が挙げられる。
【0033】
中間層12は、フロロシリコーンゴムを主成分として含有している。ここで、「主成分として」とは、中間層12に含有される全成分の合計質量に対してフロロシリコーンゴムの含有率が最も多いことを意味する。中間層12に含有されるフロロシリコーンゴムの含有率は物性強度等によって決定される。例えば、中間層12は、フロロシリコーンゴムを前記合計質量に対して50質量%以上含有しているのが好ましく、60〜80質量%含有しているのが特に好ましい。ここで、フロロシリコーンゴムは後述する中間層用ゴム組成物が硬化して成るゴムである。
【0034】
外層13は、図1及び図2に示されるように、一方向すなわち軸線方向に延在する1層構造の管状長尺体に形成され、その外表面の軸線方向に垂直な断面が略円形になっている。外層13は、中間層12の外周面に配置され、すなわち、外層13は中間層12の外周面全体を被覆すると共に成形体2の最外層を構成している。この外層13は、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する屈曲自在な長尺体すなわち可撓性を有する長尺体である。この長尺体は用途等に応じて適宜の外径及び軸線長さに調整される。外層13の外径すなわち成形体又は磁気治療具1の外径は、磁気治療具1が装身具として用いられる場合には、例えば、2.5〜5.5mmに調整され、より具体的には、3〜4.5mmに調整される。外層13の厚さは、後述する合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)を満たすように、例えば、0.1〜0.6mmの範囲から、好ましくは0.15〜0.45mmの範囲から、選択される。
【0035】
この外層13は、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有している。外層13がトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有していると、中間層12と外層13とが強固に密着して磁気治療具1の耐久性に大きく貢献すると共に、長期間装用してもかぶれにくく比較的柔軟で装用性に優れる。ここで、外層13は、この発明の目的を損なわない範囲で、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムに加えて、他のゴム、例えば、芯材11に含有されるゴム、フロロシリコーンゴム等を含有していてもよく、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムのみを含有しているのが好ましい。
【0036】
トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムは、トリフロロプロピル基を含有していないシリコーンゴムであればよく、公知のシリコーンゴムを特に制限されることなく用いることができる。このようなトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムは、例えば、後述する外層用ゴム組成物のゴム成分が硬化して成るゴムであり、具体的には、汎用されるジメチル系シリコーンゴム、メチルビニル系シリコーンゴム、メチルビニルフェニル系シリコーンゴム及びメチルフロロアルキル系シリコーンゴム等が挙げられる。
【0037】
外層13は、ゴムに加えて通常ゴム組成物に添加される各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、分散剤、発泡剤、加硫剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、可塑剤、難燃性向上剤、離型剤等が挙げられる。
【0038】
外層13は、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを主成分として含有している。ここで、「主成分として」とは、外層13に含有される全成分の合計質量に対してトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムの含有率が最も多いことを意味する。外層13に含有されるトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムの含有率は物性強度等によって決定される。例えば、外層13は、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを前記合計質量に対して50質量%以上含有しているのが好ましく、60〜80質量%含有しているのが特に好ましい。
【0039】
中間層12及び外層13は、外層13の外径すなわち成形体2又は磁気治療具1の外径に対する中間層12及び外層13の合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)が0.10〜0.20に調整され、好ましくは0.11〜0.17に調整され、特に好ましくは0.125〜0.15に調整されている。換言すると、中間層12及び外層13は、十分な表面磁束密度を損なわない範囲で、成形体2の外径に対する芯材11の直径の比(芯材直径/成形体外径)が0.60〜0.80に調整され、好ましくは0.67〜0.78に調整され、特に好ましくは0.70〜0.75に調整されている。このように、中間層12及び外層13は、外層13の外径を一定にして厚さが比較的厚くされるのが好ましい。具体的には、成形体2は、外層13の外径を一定にして、芯材11の直径が小さく、かつ、中間層12及び外層13の合計厚さが厚くされているのが好ましい。前記合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)が前記範囲内に調整されていると、表面磁束密度と耐久性とを高い水準で両立させることができる。中間層12と外層13との合計厚さは、前記合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)を満たすように、例えば、好ましくは0.25〜1.1mmの範囲から選択され、特に好ましくは0.3〜0.9mmの範囲から選択される。
【0040】
芯材11、中間層12及び外層13を有する成形体2は、芯材11、中間層12及び外層13がそれぞれ芯材用ゴム、フロロシリコーンゴム及びトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有しているから全体として可撓性を有している。成形体2の可撓性は、通常、磁気治療具1として使用されるのに要求される程度であればよく、特に限定さなれない。また、この成形体2は、磁性を帯びていてもいなくてもよいが、磁気治療具1を構成する際には芯材11に含有されている磁性粉が着磁されて磁性を帯びているのがよい。成形体2が磁性を帯びている場合には、この成形体2は磁性成形体とも称することができ、磁気治療具1の表面磁束密度が40ミリテスラ(mT)以上となるような磁力を有していることが重要である。成形体2の磁力は後述する磁性粉の含有量、磁性粉を構成する各原子の配合割合等を変更することによって、調整できる。
【0041】
この発明の発明者は、人脂等による磁気治療具1の耐久性を100℃のパルミチン酸(ヘキサデカン酸)に168時間浸漬されたときの質量変化率が±10%以下であって外層13に破れ等の損傷が発生しないと磁気治療具1の耐久性を有効に評価できること、そして、前記構成を有する成形体2がこの質量変化率が±10%以下であって外層13に破れ等の損傷が発生しないことを、見出した。したがって、この成形体2は、成形体2及び磁気治療具1としたときの耐久性に優れる点で、100℃のパルミチン酸に168時間浸漬されたときの質量変化率が±10%以下であるのが好ましく、±7%以下であるのが特に好ましい。また、このとき外層13に破れ、割れ等の損傷が発生しないのが好ましい。この質量変化率は、100℃のパルミチン酸に浸漬する前の成形体2の質量W1と、100℃のパルミチン酸に168時間浸漬した後の成形体2の質量W2とから、式:[(W2−W1)/W1]×100(%) によって求めることができる。なお、パルミチン酸に168時間浸漬した後の成形体2の質量W2は、パルミチン酸中から取り出した後に、ペーパー等でパルミチン酸をふき取り常温で5分程度放置した後に測定した重量である。
【0042】
連結具3は、図1に示されるように、成形体2の両端部に装着されている。この連結具3は、例えば、管体、楕円体、球体等の形状に成形され、身体への傷害防止のため、身体に接触する部分がゴム等の弾性材料やSUS等の金属材料で形成され、具体的には、成形体2の一端部2Aに装着された第1連結具15と、成形体2の他端部2Bに装着され、第1連結具15に着脱可能に連結する第2連結具16とを有している。第1連結具15は、一方の端部に一端部2Aが内挿される軸穴(図1において図示しない。)と、他方の端部すなわち自由端部に突起部15Aとを有する管状体であり、雄型連結具とも称される。第2連結具16は、一方の端部に他端部2Bが内挿される軸穴(図1において図示しない。)と、他方の端部すなわち自由端部に突起部15Aが挿脱自在に挿嵌される凹部又は穴部16Aとを有する管状体であり、雌型連結具とも称される。
【0043】
この磁気治療具1は、第1連結具15と第2連結具16とを連結してリングにして患者の首に架けると、成形体2の可撓性によってその外周面が首周りの肌に密着する。磁気治療具1をこのようにして長期間装用しても、磁気治療具1は前記成形体2を備えているから高い表面磁束密度を維持しつつ耐久性にも優れている。
【0044】
この発明に係る成形体及びこの発明に係る磁気治療具の製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称する。)を、成形体2及び磁気治療具1を製造する方法を例に挙げて、説明する。
【0045】
この発明に係る製造方法においては、芯材11を形成するゴム組成物(芯材用ゴム組成物とも称する。)、中間層12を形成するゴム組成物(中間層用ゴム組成物とも称する。)及び外層13を形成するゴム組成物(外層用ゴム組成物とも称する。)を準備する。芯材用ゴム組成物は前記芯材用ゴムと磁性粉とを含有していればよく、中間層用ゴム組成物はフロロシリコーンゴムを含有していればよく、外層用ゴム組成物はトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有していればよい。これらの組成物に含有される各ゴム及び磁性粉は前記した通りである。これらの組成物に含有される各ゴムは、同種のゴムすなわちシリコーンゴムであるのが好ましく、ゴム以外の成分及び含有量は同一でも異なっていてもよい。シリコーンゴムを含有する芯材用ゴム組成物、フロロシリコーンゴムを含有する中間層用ゴム組成物及びトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層用ゴム組成物はそれぞれラジカル反応型、付加反応型等のいずれであってもよいが、成形体2の物理的強度や圧縮歪み特性の低下の防止、着色による黄変の防止、可使時間の長さ、成形加工性等の点を考慮すると、付加反応型シリコーンゴム組成物が好適である。
【0046】
芯材用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物は、ゴム又は未加硫の生ゴム、加硫剤又は架橋剤及び所望により各種添加剤を含有し、芯材用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物がシリコーンゴムを含有するシリコーンゴム組成物である場合には、このシリコーンゴム組成物は、具体的には、主成分であるシリコーンゴム又はシリコーン生ゴム、架橋剤及び所望により充填剤等を含有して成る。シリコーンゴムの種類は、特に制限されず、汎用されるジメチル系シリコーンゴム、メチルビニル系シリコーンゴム、メチルビニルフェニル系シリコーンゴム及びメチルフロロアルキル系シリコーンゴム等のいずれをも使用することができる。シリコーンゴム組成物が付加反応型シリコーンゴム組成物である場合には、シリコーンゴムは、1分子中に少なくとも2個のビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基を含むアルケニル基含有シリコーンゴムであることが重要である。また、シリコーンゴムの性状についても特に限定されないが、重合度が3,000未満では押出加工性が劣るようになり、得られる成形品の機械的強度が弱く、成形加工性の劣るものとなることがあるので、重合度が3,000以上であって、本質的に直線状のジオルガノポリシロキサンであるのが望ましく、一部に分枝構造を含むものであってもよい。
【0047】
シリコーンゴム組成物に含有される硬化剤は、シリコーンゴムの硬化に使用される公知のものであればよく、例えば、ラジカル反応に使用されるジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物、付加反応硬化剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒とを含むもの、縮合硬化剤として多官能のアルコキシシラン又はシロキサンと有機金属酸塩とを含むもの等が例示される。硬化剤の含有量すなわち添加量は通常公知のシリコーンゴムと同様にすればよい。
【0048】
シリコーンゴム組成物が付加反応型シリコーンゴム組成物である場合に、硬化剤として使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、1分子中にヒドロシリル基を平均2個以上、好ましくは3個以上有することが重要である。具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサンとジメチルハイドロジェンポリシロキサンとの共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンとの共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン及びジフェニルポリシロキサンとの共重合体等が例示される。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、シリコーンゴム成分中に存在するケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル基を0.5〜4個供給するに足りる量であるのが好ましく、通常、シリコーンゴム100質量部に対して0.5〜6.6質量部の範囲であるのが好ましい。
【0049】
付加反応型シリコーンゴム組成物に配合される白金系触媒は、シリコーンゴムに含まれるアルケニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるヒドロシリル基との付加反応を促進させる硬化触媒であり、公知の白金系触媒を特に制限されることなく使用できる。このような白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とオレフィン、白金とケトン、白金とビニルシロキサンとの錯塩、アルミナ又はシリカ等の担体に白金を担持させたもの、白金黒等が例示される。本発明において、白金系触媒は、通常、シリコーンゴム100質量部に対して0.1〜1.7質量部で配合されるのが好ましい。
【0050】
芯材用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物に所望により含有される充填剤は、シリコーンゴム成形品の補強に使用されるものであることから、通常、比表面積が50m/g以上であるのが好ましい。このような充填剤としては、煙霧質シリカ、フュームドシリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウム、けいそう土、二酸化チタン、クレイ等が例示され、その表面がジメチルジクロロシラン、シラン、シロキサン、シラザン等で予め疎水化処理されたものであってもよい。なお、この充填剤は後述する中間層用ゴム組成物のシリカ系充填剤(II)でもよい。充填剤の含有量は、シリコーンゴム100質量部に対して、通常、25〜65質量部であるのが好ましく、33〜53質量部であるのが特に好ましい。充填剤の含有量が25質量部未満であると、形成される芯材11及び/又は外層12が所望の強度を発揮しないこと、又は、十分な加工性が得らないことがある。一方、充填剤の含有量が65質量部を超えると、シリコーン組成物への充填剤の配合が困難になることがあり、また、充填剤を配合できたとしてもシリコーン組成物が硬くなって成形加工性が低下し、硬化物の強度が劣ることがある。
【0051】
芯材用ゴム組成物は、ゴムと磁性粉との質量比(ゴム:磁性粉)が2.3:7.7〜0.9:9.1の割合となるように、磁性粉を含有している。
【0052】
中間層用ゴム組成物は、フロロシリコーンゴムを含有するフロロシリコーンゴム組成物であればよく、通常フロロシリコーンゴムと、所望により架橋剤及び充填剤、所望により各種添加剤等を含有して成る。このフロロシリコーンゴム組成物は、例えば、下記成分(I)、成分(II)、成分(III)及び成分(IV)を含有する有機過酸化物フロロシリコーンゴム組成物であるのが好ましい。
【0053】
フロロシリコーンゴム組成物における成分(I)は、下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0054】
SiO(4−a−b−c)/2 (1)
【0055】
平均組成式(1)において、Rはトリフロロプロピル基であり、フッ素原子は1位〜3位のどの炭素原子に結合してもよいが、典型的には3,3,3−トリフロロプロピル基が用いられる。Rは炭素数2〜8、好ましくは2〜4の非置換又は置換の一価脂肪族不飽和炭化水素基、特には脂肪族不飽和二重結合を有する炭化水素基であり、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。Rは炭素数1〜8の非置換の一価脂肪族飽和炭化水素基又は炭素数6〜8の一価芳香族炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。a、b及びcは正数で、aは0.96〜1.01、bは0.0001〜0.005、cは0.96〜1.06で、a+b+cは1.98〜2.02を満足するものであり、好ましくは、aは0.98〜1.01、bは0.0005〜0.005、cは0.98〜1.01で、a+b+cは1.99〜2.01を満足する正数である。
【0056】
このオルガノポリシロキサン(I)において、Rとしてのアルケニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基は、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜50個、好ましくは2〜20個程度)有することが必要であり、またR〜Rの合計の0.02〜1モル%程度であることが好ましい。Rとしてのアルケニル基が1モル%よりも多いと、ゴム硬度が実用以上に上昇し、又は脆くなって引張強度、引裂き強度等の機械的強度が低下するといった問題が生じる場合がある。Rの一価脂肪族不飽和炭化水素基は分子鎖の末端に存在するもの(すなわち、分子鎖末端のケイ素原子に結合するもの)であっても、分子側鎖に存在するもの(すなわち、分子鎖非末端のケイ素原子に結合するもの)であっても、該末端と該側鎖の両方に存在するものであってもよい。なお、成分(I)のオルガノポリシロキサンはRとして水酸基を含んでも含まなくてもよく、水酸基を含む場合、水酸基であるRの量は全Rの通常0.001〜10モル%、好ましくは0.02〜2モル%程度である。
【0057】
また、このオルガノポリシロキサン(I)は、25℃における粘度が10,000mPa・s以上のものが好ましい。より好ましくは100,000〜100,000,000mPa・sであり、特に好ましいのは、該粘度の下限が1,000,000mPa・s以上、とりわけ10,000,000mPa・s以上であり、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状である。なお、この粘度値は、回転粘度計による測定値である。
【0058】
成分(I)の重合度は、重量平均重合度として、500以上であることが好ましく、より好ましくは1,000以上である。重合度の上限は、特に制限されないが、重量平均重合度として、例えば100,000以下、好ましくは10,000以下程度であればよい。なお、重量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算値として求めることができる。
【0059】
このオルガノポリシロキサン(I)は、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰返しからなり、分子鎖両末端がシラノール基(すなわち、ヒドロキシジオルガノシロキシ基中の水酸基)又はトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的である。
【0060】
オルガノポリシロキサン(I)として、例えば、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、片末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖・片末端シラノール基封鎖メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0061】
このオルガノポリシロキサン(I)は、例えば、特開昭62−174260号公報に記載されているように、シロキサンオリゴマーを開始剤としてトリ(トリフロロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンを開環重合することにより製造することができる。
【0062】
フロロシリコーンゴム組成物における成分(II)は、シリカ系充填剤である。このシリカ系充填剤は、機械的強度の優れたシリコーンゴムコンパウンドを得るために必須とされるもの(補強性充填剤)であるが、この目的のためにはBET比表面積が50m/g以上、好ましくは100〜400m/gである。このシリカ系充填剤としては煙霧質シリカ(乾式シリカ)、焼成シリカ、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示される。また、これらの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよい。これらのシリカは単独でも2種類以上併用してもよい。なお、このシリカ系充填剤の含有量は、前記オルガノポリシロキサン(I)100質量部に対して好ましくは2〜100質量部、より好ましくは5〜60質量部である。前記含有量が2質量部未満では十分な補強効果が得られないことがあり、一方、100質量部を超えると加工性が悪くなり、また、得られるシリコーンゴムの物理特性が低下することがある。
【0063】
フロロシリコーンゴム組成物における成分(III)は、オルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンは、トリフロロプロピルメチルシロキシ基を有する繰り返し単位を主鎖に有し、分子中に架橋点を有さない下記一般式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンオイルである。
【0064】
【化1】

【0065】
一般式(2)において、R〜Rは、炭素数1〜8の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、又は、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した置換炭化水素基、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R〜Rはそれぞれ、同一でも異なってもよい。一般式(2)において、pは0〜8であり、qは4〜100であり、8〜80であるのが好ましい。また、p+qは4〜100であり、8〜80であるのが好ましく、q/(p+q)は0.9以上の正数である。q/(p+q)が小さすぎると満足な耐燃料油性が得られないことがある。
【0066】
この直鎖状オルガノポリシロキサンオイルは、25℃における粘度が、通常50〜10,000cStであるのがよい。
【0067】
一般式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンオイルは、下記式で表されるオルガノポリシロキサンであるのが好ましく、これらは1種類を単独でも2種類以上を組み合せて用いてもよい。なお、下記式において、Phはフェニル基を示す。
【0068】
【化2】

【0069】
オルガノポリシロキサン(III)の含有量は、オルガノポリシロキサン(I)100質量部に対して0.5〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのが特に好ましい。含有量が0.5質量部よりも少ないと膨潤低減の効果が見られないことがあり、一方、含有量が100質量部を超えると、フロロシリコーンゴム組成物が粘着して加工性が低下し、又は、十分な引張強さ、引裂強さ等の機械的強度を有する硬化物が得られなくなることがある。
【0070】
フロロシリコーンゴム組成物における成分(IV)は、有機過酸化物加硫剤である。この有機過酸化物加硫剤(IV)は、前記フロロシリコーンゴム組成物に添加して常法により加硫硬化させることで硬化物を与える。有機過酸化物加硫剤(IV)として、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキシン等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この有機過酸化物加硫剤(IV)の含有量は、フロロシリコーンゴム組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましい。
【0071】
芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物は、この発明の効果を損なわない限りにおいて、シリコーンゴム以外のゴム、粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、熱可塑性樹脂、低分子シロキサンエステル、シラノール、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール封鎖低分子シロキサン等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、顔料、分散剤、発泡剤、加硫剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、着色剤、加工助剤、可塑剤、難燃性向上剤例えば白金化合物、受酸剤、熱伝導向上剤、離型剤等を、必要に応じて、含有していてもよい。
【0072】
芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物は、各成分の種類及び含有量を適宜に設定することができ、ゴムの種類及び磁性粉の有無以外の成分及びその含有量は同一でも異なっていてもよい。
【0073】
この発明に係る製造方法においては、準備した芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物を、押出成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等の通常の方法で長尺状に成形、加工する。芯材11と中間層12と外層13とを強固に密着させることができ、また、様々な形状(特に長尺体)、大きさを有する成形体を連続的に作製できる点で、押出成形が好ましく、共押出成形が特に好ましい。
【0074】
この発明に係る製造方法においては、このようにして芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物を成形した後に、芯材用ゴム組成物を順に中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物で被覆した状態で加熱加硫する。芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物の加硫は、例えば、常圧熱気加硫、蒸気連続加硫、電子線加硫、プレス熱加硫、高周波加硫等を採用できる。その中でも特に常圧熱気加硫(HAV)が好ましい。加硫温度及び加硫時間は芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物に応じて適宜に設定され、例えば、芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物が付加反応型シリコーンゴム組成物である場合には、加硫温度を400〜700℃に、加硫時間を5〜60秒間に設定できる。
【0075】
この発明に係る製造方法においては、通常、このようにして芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物を加硫して成形体とするが、必要に応じて、芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物を二次加硫することもできる。二次加硫は、適宜の加熱条件を採用でき、例えば、芯材用ゴム組成物、中間層用ゴム組成物及び外層用ゴム組成物が付加反応型シリコーンゴム組成物である場合には、二次加硫温度を50〜120℃、好ましくは80〜100℃に、二次加硫時間を1分以上24時間以下、好ましくは1〜6時間に設定できる。
【0076】
この発明に係る製造方法においては、成形体2の製造中又は製造後に磁性粉を着磁する。磁性粉の着磁は、適当な着磁装置を用いて例えば30〜60kOe程度の磁場を付与して行うことができ、又は、例えば押出成形機の金型内に磁界装置を内蔵させて押出成形中に行うこともできる。
【0077】
この発明に係る製造方法においては、連結具3を準備する。この連結具3は前記ゴムを含有するゴム組成物を成形して作製される。作製した連結具3を成形体2の両端部に装着して、磁気治療具1が製造される。
【0078】
この発明に係る成形体は、磁性粉及びゴムを含有する芯材とフロロシリコーンゴムを含有する中間層とトリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層とを備え、中間層と外層との合計厚さが外層の外径に対して0.1〜0.2であるから、成形体が変形又は破損するほどの人脂等の芯材近傍への浸入又は浸透を防止できる。そして、この発明に係る磁気治療具は、この発明に係る成形体を備えているから、耐久性に優れている。
【0079】
通常、成形体及び磁気治療具において、芯材に含有される磁性粉の含有量を多くすると高い磁性密度を発揮するものの、芯材すなわち成形体及び磁気治療具の柔軟性が損なわれて硬くなること、芯材を被覆する層との接着強度が小さく成形体及び磁気治療具の耐久性が低下すること、また、人体に装着したとき肌に対するフィット感が低下すること等の問題が生じる。さらに、芯材における磁性粉の含有量を多くするために、芯材の直径を大きくすると成形体及び磁気治療具の外径及び質量も必然的に大きくなって、使用者への負担が増大すること、また、成形体及び磁気治療具が破損しやすく実用的な強度を保てなくなること等の問題が生じる。一方で、成形体及び磁気治療具の耐久性を向上させるために芯材を被覆する層を肉厚にすると、成形体及び磁気治療具の表面磁束密度が大きく低下することになる。このように、磁性粉の含有量、芯材の直径及び芯材を被覆する層の厚さは、磁性密度、柔軟性、耐久性、フィット感、使用者への負担及び実用的な強度等に影響を与え、磁性密度と、柔軟性、耐久性、フィット感、使用者への負担及び/又は実用的な強度とは互いにトレードオフの関係にある特性である。ところが、芯材とフロロシリコーンゴムを含有する中間層と外層とを備え、かつ中間層と外層との合計厚さが外層の外径に対して0.10〜0.20であるこの発明によれば、トレードオフの関係にあるこれらの特性をいずれも満足できる程度まで向上させることができる。
【0080】
この発明に係る成形体及び磁気治療具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、成形体2は、芯材11と中間層12と外層13とを備えているが、この発明において、成形体は、芯材と中間層との間、及び/又は、中間層と外層との間に接着層層等を有していてもよい。この発明においては、製造容易性等を考慮すると、成形体は芯材と中間層と外層とからなるのが好ましい。また、成形体2は、1層構造の中間層12及び外層13を備えているが、この発明において、成形体は、2層以上の積層構造の中間層及び/又は外層を備えていてもよい。この場合における外層の外径は最外層の外径すなわち外表面を構成する層の外径とする。さらに、成形体2は、芯材11の外周面全体を被覆する中間層12を備え、中間層12の外周面全体を被覆する外層13を備えているが、この発明において、成形体は、芯材の外周面の一部を被覆する中間層を備えていてもよく、また、中間層の外周面の一部を被覆する外層を備えていてもよい。また、成形体2は、その軸線方向に垂直な断面が略円形になっているが、この発明において、成形体は、その軸線方向に垂直な断面が楕円形、不定形、多角形例えば四角形、三角形になっていてもよい。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
シリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、疎水性フュームドシリカ(商品名「アエロジルR974」、日本アエロジル株式会社製)36質量部と、シリカ分散剤として両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン4質量部とをニーダーミキサーで均一に混合し、150℃で2時間熱処理してシリコーンゴムコンパウンドを調製した。
【0083】
窒素パージ下で、調製したシリコーンゴムコンパウンド100質量部と、このシリコーンゴムコンパウンド中のシリコーン生ゴムとの質量比(ゴム:磁性粉)が1.6:8.4となる割合(具体的には380質量部)の磁性粉(化合物名「SmFeN」、商品名「SmFeN微粉」、前記測定方法による粒径1〜10μm、住友金属鉱山株式会社製)とを、ニーダーミキサーを用いて混練した。得られた混練物を、80メッシュのスクリーンを備えたストレーナー装置を使用して、油圧シリンダーで押し出し、このスクリーンを通過させて磁性粉凝集物を除去した。次いで、この磁性粉凝集物を除去した混練物に、白金系触媒(商品名「C−25A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−25B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部を配合し、ミキシングロールで混練して、芯材用付加反応型シリコーンゴム組成物を調製した。
【0084】
前記シリコ−ンゴムコンパウンド100質量部と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−25B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部と、白金系触媒(商品名「C−25A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、顔料(商品名「KE−カラーBB」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とをミキシングロールで混練して、外層用付加反応型シリコーンゴム組成物を調製した。
【0085】
下記式(10)(式(10)中、p+q(すなわち重合度)は約4,000であり、q/(p+q)(すなわち全シロキサン単位に対するビニル基含有シロキサン単位)の割合は0.3±0.05モル%である。)で示される室温(25℃)において生ゴム状のオルガノポリシロキサン(I)を100質量部、乾式シリカ(II)(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル200)25質量部、及び、分散剤としてジフェニルシランジオール6質量部を加えて均一に混練りし、150℃で4時間熱処理した後、2本ロールで釈解、可塑化してベースコンパウンドを得た。
【0086】
【化3】

【0087】
このベースコンパウンド100質量部と下記式で示されるオルガノポリシロキサン(III)1質量部とを2本ロールで配合した後、この配合物100質量部に1.5質量部のジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(IV)50%含有ペースト(加硫剤)を加えて2本ロールで配合して、中間層用有機過酸化物シリコーンゴム組成物を調製した。
【0088】
【化4】

【0089】
作製した外層用付加反応型シリコーンゴム組成物、中間層用有機過酸化物シリコーンゴム組成物及び芯材用付加反応型シリコーンゴム組成物をそれぞれ、外層用押出機(一軸押出機)、中間層用押出機(一軸押出機)及び芯材用押出機(一軸押出機)に投入して押出し、第1表に示す各直径又は各外径となるようにダイス開口径を調整したクロスヘッド型押出機のダイス(三層クロスヘッド)において芯材11を中間層12で被覆すると共に中間層12を外層13で被覆しながら三層共押出成形を行った。共押出成形を580℃のオーブン中で10秒間加熱して常圧熱気加硫(HAV)硬化させて加硫させた。
【0090】
次いで、この成形体2を二次加硫せずに、軸線長さが485mmとなるように切断した後に、着磁装置にて55kOeの磁場を付与して磁性粉を着磁した。このようにして、芯材11の直径が3.0mm(外層13の外径に対する芯材の直径の比(芯材直径/成形体外径)=0.75)、中間層12の外径3.5mm、中間層12の厚さが0.25mm(外層13の外径に対する中間層12の内径の比(内径/外径)=0.75)、外層13の外径4.0mm、外層13の厚さが0.25mmの磁性成形体2を得た。この磁性成形体2において、中間層12と外層13との合計厚さは0.50mmであり、外層13の外径に対する合計厚さの比(合計厚さ/成形体外径)は0.125であった。
【0091】
この磁性成形体2の両端部にシリコーンゴム製の連結具3を装着して図1及び図2に示される磁気治療具1を製造した。
【0092】
(実施例2〜5)
前記外層用付加反応型シリコーンゴム組成物、前記中間層用有機過酸化物シリコーンゴム組成物及び前記芯材用付加反応型シリコーンゴム組成物それぞれの吐出量を調整して、芯材11の直径、中間層12の外径及び外層13の外径それぞれを第1表に示す値に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして磁気治療具1をそれぞれ製造した。
【0093】
(実施例6〜9)
ダイス開口径を調整して、芯材11の直径、中間層12の外径及び外層13の外径それぞれを第1表に示す値に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして磁気治療具1をそれぞれ製造した。
【0094】
(比較例1)
前記芯材用シリコーンゴム組成物及び前記外層用シリコーンゴム組成物それぞれを芯材用押出機(一軸押出機)及び外層用押出機(一軸押出機)に投入して押出し、第1表に示す芯材の直径及び外径となるようにダイス開口径を調整したクロスヘッド型押出機のダイス(二層クロスヘッド)において芯材を外層で被覆しながら二層共押出成形を行ったこと以外は実施例1と基本的に同様にして図3に示される磁気治療具を製造した。比較例1の磁気治療具における成形体5は、図3に示されるように、芯材21とその外周面を被覆する外層22とを備えて成り、芯材21の直径が3.8mm(外層22の外径に対する直径の比(芯材直径/成形体外径)=0.95)、外層22の外径4.0mm、外層22の厚さが0.10mm(外径に対する外層のみの厚さの比(合計厚さ/成形体外径)=0.025)であった。
【0095】
(比較例2及び3)
前記外層用付加反応型シリコーンゴム組成物、前記中間層用有機過酸化物シリコーンゴム組成物及び前記芯材用付加反応型シリコーンゴム組成物それぞれの吐出量を調整して、芯材11の直径、中間層12の外径及び外層13の外径それぞれを第1表に示す値に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして磁気治療具をそれぞれ製造した。
(比較例4及び5)
ダイス開口径を調整して、芯材11の直径、中間層12の外径及び外層13の外径それぞれを第1表に示す値に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして磁気治療具をそれぞれ製造した。
【0096】
(表面磁束密度の測定)
実施例1〜9及び比較例1〜5の磁気治療具における表面磁束密度をガウスメーター(電子磁気工業株式会社製 機種:GM4002)及びトランスバース型プローブ(電子磁気工業株式会社製 機種:T−402)を用いて測定した結果を第1表に示す。なお、比較例3及び比較例4は表面磁束密度が31(mT)又は35(mT)と小さく、磁気治療具として十分な機能を発揮しないことが容易に予想された。
【0097】
(パルミチン酸浸漬評価試験)
実施例1〜9及び比較例1〜5の磁気治療具それぞれを5検体ずつ準備して、それぞれの質量を測定して平均質量W1を算出した。次いで、これら5検体を100℃に保持されたパルミチン酸中に168時間にわたって浸漬した後、パルミチン酸中から取り出した。各検体の表面に付着したパルミチン酸をペーパー等で拭いて除去した後、各検体の質量を測定して平均質量W2を算出した。式:[(W2−W1)/W1]×100(%)から、各磁気治療具における質量変化率を算出した。また、質量を測定した後に各検体に外観損傷(破れ等)があるか否かを目視にて確認した。評価は、5検体のすべての外層に破れがなく外観に損傷もなかった場合を「○」、5検体のすべての外層に破れがなかったものの、5検体のうち少なくとも1つの検体の外層が凸状に膨出していた場合を「△」、5検体のうち少なくとも1つの検体の外層に破れがあり外観が損傷していた場合を「×」とした。これらの結果を第1表に示す。
【0098】
(磁気治療具としての特性評価)
実施例1〜9の磁気治療具は、表面磁束密度、柔軟性、フィット感、芯材と外層との接着強度及び実用的な物性強度のいずれも満足できた。なお、比較例5は外径が大きく重すぎて装用性に劣った。
【0099】
【表1】

【符号の説明】
【0100】
1 磁気治療具
2、5 成形体(磁性成形体)
2A 一端部
2B 他端部
3 連結具
11、21 芯材
12、22 中間層
13 外層
15 第1連結具
15A 突起部
16 第2連結具
16A 凹部又は穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉及びゴムを含有する芯材と、
前記芯材の外周面に配置され、トリフロロプロピル基を含有するシリコーンゴムを含有する中間層と、
前記中間層の外周面に配置され、トリフロロプロピル基無含有のシリコーンゴムを含有する外層とを備え、
前記中間層と前記外層との合計厚さが前記外層の外径に対して0.1〜0.2である成形体。
【請求項2】
前記芯材に含有される前記ゴムは、シリコーンゴムである請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記成形体は、100℃のパルミチン酸に168時間浸漬されたときの質量変化率が±10%以内である請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記成形体は、前記磁性粉が着磁されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
請求項4に記載の成形体と、この成形体の両端部に装着された連結具とを備えて成る磁気治療具。
【請求項6】
前記連結具は、前記成形体の一端部に装着された第1連結具と、前記成形体の他端部に装着され、前記第1連結具に着脱可能に連結する第2連結具とを備えて成る請求項5に記載の磁気治療具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245101(P2012−245101A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117945(P2011−117945)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】