説明

成形体

【課題】酸素吸収速度、持続性等の酸素吸収性能が優れた酸素吸収性包装容器を提供する。
【解決手段】H−NMR測定から算出した共役樹脂酸量が30質量%以上であるロジン及び/又はその誘導体と、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種類以上の金属原子(金属塩、金属錯体)、並びに少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物を少なくとも一部に使用してなる樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、医薬品、飲料、食品、化学品などの包装材として、金属缶、ガラス瓶、あるいは熱可塑性樹脂からなる容器や成形体などが使用されている。中でも熱可塑性樹脂からなる容器や成形体はその軽量性、成形性、ヒートシールなどの包装生産性、コストの面で優越しており、最も大量に使用されている。しかしながら、一般に熱可塑性樹脂からなる容器や成型体は、包装材として優れているが、容器壁を通しての酸素透過が無視し得ないオーダーで生じ、内容物の保存性の点で課題が残っている。
【0002】
容器外からの酸素透過を防止するために、熱可塑性樹脂の容器や成形体では、容器壁を多層構造とし、そのうちの少なくとも1層として、ポリメタキシリレンアジパミド(以下「N−MXD6」という)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルあるいはアルミ箔等の酸素バリア性の層を設けることが行われている。しかし、容器外から進入してくるわずかながらの酸素を十分に遮断できないだけでなく、容器内に残存する酸素によってビール等の酸素に敏感な内容物の劣化を防止できない。
【0003】
容器内の酸素を除去するため、酸素吸収剤の使用が古くから行われている。例えば、特許文献1及び2には、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体および酸素吸収フィルムが記載されている。特許文献3には、ポリアミド等の高分子材料にコバルト等の金属系触媒を添加した容器内外の酸素を吸収する包装用酸素捕集障壁が記載されている。特許文献4には、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物及びコバルト等の遷移金属触媒を含む酸素掃除去層と、ポリアミド等の酸素遮断層とを有する製品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−72851号公報
【特許文献2】特開平4−90848号公報
【特許文献3】特許第2991437号公報
【特許文献4】特開平5−115776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は酸素吸収速度、持続性等の酸素吸収性能が優れた酸素吸収性包装容器等の成形体を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、H−NMR測定から算出した共役樹脂酸量が30質量%以上であるロジン及び/又はその誘導体と、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種類以上の金属原子、並びに少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物を少なくとも一部に使用してなることを特徴とする成形体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素吸収速度、持続性等の酸素吸収性能に優れ、機械物性低下も少ない、酸素吸収性包装容器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0009】
(ロジン及びロジン誘導体)
本発明におけるロジンは、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、精製ロジンなどのことであり、ロジン誘導体は、これらロジンとの反応物であるロジンエステル、ロジンアミド、ロジンの金属塩等のことである。また、α,β−不飽和カルボン酸とロジンとの付加物も使用することができる。
【0010】
本発明の酸素吸収性能を得るためには、共役二重結合を持つロジンを含有する必要があり、共役二重結合を持つロジン中の化学成分としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、特に強力な酸素吸収性能が必要な場合は、共役二重結合を持つロジンを精製により取り出し、用いることも可能である。
【0011】
これらの共役二重結合の量を定量的に示す指標として、共役樹脂酸量を用いる。この共役樹脂酸量は、核磁気共鳴分光法(NMR)により、求めることができる。具体的には、プロトンNMR(H−NMR)測定結果の7ppm付近の吸収は芳香族系、5〜6ppm付近の吸収は共役酸系の樹脂酸に夫々由来するため、全体のプロトン吸収に対するそれぞれのプロトン吸収比率を算出することでロジン及び/又はロジン誘導体中の共役樹脂酸量が求められる。
この指標から良好な酸素吸収性能を得るためには、共役樹脂酸量が、30質量%以上であることが好ましく、特に好ましいのは50質量%以上である。
【0012】
本発明で得られる酸素吸収性能は、共役二重結合を持つロジン中の共役二重結合が酸化されることによって、雰囲気内の酸素が消費されることによるものである。また、酸化反応触媒として、後述の金属触媒化合物を用いることにより、酸化が促進され良好な酸素吸収性能が得られる。
【0013】
本発明の成形体は、天然物由来のロジンを用いていることから、酸素吸収後の分解生成物もロジンの誘導体であるため、酸素吸収性樹脂組成物による臭気などの分解生成物が食品包装等に用いる場合、内容物に及ぼす影響は小さい。
【0014】
本発明において使用できる前記精製ロジンとは、蒸留、吸着、溶媒抽出、晶析など種々の処理により精製したロジンをいう。
【0015】
また前記α,β−不飽和カルボン酸とロジンとの付加反応物において、α,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。そしてこれらをディールス・アルダー反応させることによりロジンに付加させた樹脂を使用することができる。
【0016】
前記ロジンエステルは、ロジンとポリオール成分をエステル化反応させることにより得られる。エステル化反応は、公知の方法、例えば、不活性ガスの雰囲気下にロジンとポリオールとを200〜300℃に加熱し、生成した水を系外に除去することによって行うことができる。
【0017】
このエステル化反応は、エステル化触媒の存在下で行うことができる。エステル化触媒としてはリン酸、p-トルエンスルホン酸、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウムなどの公知の触媒が挙げられる。
【0018】
ロジンをエステル化するポリオール成分としては、特に限定されないが、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールのような1価のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価のアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価のアルコール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどの6価のアルコールが挙げられる。これらのポリオール成分の中でもロジンのハンドリング性等を考慮すると、ペンタエリスリトール又はグリセリンを使用することが好ましい。
【0019】
(金属)
本発明の包装容器に含まれる金属原子は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子である。
【0020】
本発明においては、前記金属原子を含有する化合物(以下、金属触媒化合物と称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は前記金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は金属錯体の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。中でも、酸素吸収機能が良好であることから、前記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体が好ましい。
上記金属触媒化合物は、一種以上を添加することができるが、金属原子としてコバルトを含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。
【0021】
(熱可塑性樹脂)
本発明包装容器で使用する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また本発明ではこれらの熱可塑性樹脂とゴムを併用することができる。
【0022】
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、エチレン− 酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等のその他のエチレン共重合体; これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0023】
前記ポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、又は環状エステルから成るものをいう。
【0024】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5− ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4 ’−ビフェニルジカルボン酸、4,4 ’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4 ’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ) エタン−p ,p ’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸などに例示される金属スルホネ−ト基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
【0025】
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合しても良い。
【0026】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4 ,3’,4 ’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0027】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4 ’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ) ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC 、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0028】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ− ル、ヘキサントリオールなどが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0029】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0030】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが例示される。
【0031】
本発明で用いられるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0032】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。
【0033】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0034】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0035】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0036】
本発明に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0037】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0038】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0039】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等などの他成分を共重合しても構わない。
【0040】
特にポリエステル全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせは透明性と成形性を両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換) 反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル% 以下)含んでも良いことは言うまでも無い。
【0041】
本発明で使用するポリアミドは、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミド、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミドなどが挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
【0042】
前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が使用できる。
【0043】
前記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体が使用できる。さらに、脂環族のジアミンであってもよい。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス( アミノメチル) シクロヘキサン、1,4−ビス( アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0044】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0045】
また、前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル) ベンゼンなどが挙げられる。
【0046】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0047】
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10) 等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
【0048】
また、前記ポリアミドの共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0049】
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0050】
前記ポリアミドは、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法などによって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1 段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0051】
ポリビニルアルコールの具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びその部分若しくは完全鹸化物等を挙げることができる。さらに、その変性品を用いても構わない。
【0052】
これらの熱可塑性樹脂と併用しうるゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ゴム、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリ(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム、アクリルゴム、ポリアミド系エラストマー等を例示することができる。
【0053】
(酸素吸収促進物質)
本発明の包装容器の酸素吸収速度を向上させる手段して、包装容器を構成する酸素吸収性樹脂組成物と酸素との接触面積を広げる効果を付与することが好ましく、こうした効果を持つ酸素吸収促進物質を添加しても良い。具体的な酸素吸収促進物質としては、担体物質、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、活性炭、モレキュラーシーブス等の合成ゼオライト、モルデナイト、エリオナイト等の天然ゼオライト、パーライト、活性白土等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等の層状化合物等が挙げられる。
【0054】
(酸素吸収性樹脂組成物)
本発明の成形体を構成する酸素吸収性樹脂組成物の作成方法は特に制限されない。一般的な方法としては、ロジン及び/又はロジン誘導体と上記の熱可塑性樹脂及び上記の金属触媒化合物等を単軸もしくは、多軸の押出機にて溶融混合したペレットを作成する方法や、所望の成形体を成形する際に、ロジン及び/又はロジン誘導体と上記の熱可塑性樹脂及び上記の金属等とをドライブレンドしたものを直接、成形機に投入して本発明の成形体を成形しても良い。さらに、純度の非常に高いロジン及び/又はロジン誘導体を所望の熱可塑性樹脂の重合前もしくは重合途中で添加する方法等も挙げられる。
【0055】
ロジン及び/又はロジン誘導体の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは2質量部以上、更に好ましくは、5質量部以上である。この含有量が0.5質量部未満であると、十分な酸素吸収性能が付与されない傾向にある。また、この含有量が、50質量部以下であると、熱可塑性樹脂からなる成形体そのものの性質が保持されるので好ましい。但し、粉砕物として用いる場合は、50質量部を超えても良い。
【0056】
前記金属原子の濃度は特に制限はないが、ロジン及び/又はロジン誘導体100質量部に対して0.0005質量部(5ppm)以上が好ましく、より好ましくは0.001質量部(10ppm)以上である。通常は、1質量部(10000ppm)以下である。金属原子の添加量が5ppm以上であれば、本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる包装容器の酸素吸収機能が十分に発現する。金属触媒化合物(金属原子)を添加する方法は特に限定されず、任意の方法で添加することができる。
【0057】
本発明においてロジン及び/又はロジン誘導体と熱可塑性樹脂とを押出機等で溶融混合する場合、ロジン及び/又はロジン誘導体の軟化点(SP)は、高い方が熱可塑性樹脂と溶融混合する際には好ましい。具体的なSPは、溶融混合する熱可塑性樹脂の成形温度にもよるが、80℃以上が好ましく、より好ましくは、90℃以上である。80℃以下であると、ロジン及び/又はロジン誘導体が押出機のフィーダー下部で軟化し熱可塑性樹脂とブロッキングを起こし、押出機内へ樹脂の食込みが生じる。押出機内への樹脂の食込みがあると、安定した厚みの包装容器が得られない。
軟化点は、ロジン及び/又はロジン誘導体をエステル化する割合を高くすることで高くすることができる。但し、軟化点を高くするためのエステル化により、ロジンの含有率が少なくするとロジン及び/又はロジン誘導体中の共役樹脂酸量が、少なくなり、十分な酸素吸収性能が発現しなくなる。
ロジン及び/又はロジン誘導体をSP以上で可塑化して特殊なフィーダー等で投入する場合や、押出機の途中に専用の投入口を使用する場合はこの限りではない。
【0058】
(成形体)
本発明の成形体は、前記酸素吸収性樹脂組成物を少なくとも一部に使用してなるものであり、フィルム、シート等の包装材料や、パウチ、カップ、トレイ、ボトル等の中空容器が挙げられる。フィルムやシートはシュリンクフィルムやケーシングとして利用することもできる。本発明の成形体は、前記酸素吸収性樹脂組成物からなる単層構造でも、他の材料との多層構造であってもよい。
【0059】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体は、流通時等の使用前に、酸素吸収機能を抑制するように、リン系やヒンダートフェノール系等の一般的に熱可塑性樹脂に使用される酸化防止剤を含有しても良い。本発明の成形体中の酸化防止剤の含有量は、好ましくは500ppm 以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。この含有量が多すぎると、酸素吸収性能を低下させる傾向にある。
酸化防止剤を含有する成形体は、押出成形時の加工性が良好で平滑なフィルムに成形しやすく、酸素吸収性能や機械的強度の低下が小さい。
酸化防止剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物を得るには、ロジン及び/ロジン誘導体に予め酸化防止剤を添加しておいてもよく、酸素吸収性樹脂組成物を調製するときに、酸化防止剤を配合してもよい。
【0060】
本発明の成形体には、本発明の効果を本質的に損なわない限り、酸素吸収性を高める作用を有する触媒、光開始剤、熱安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、乾燥剤、脱臭剤、帯電防止剤、粘着防止剤、防曇剤、表面処理剤等の添加剤を配合することができる。
これらの添加剤は、熱可塑性樹脂の分野で従来公知のものの中から、目的に応じて、適宜選択し、適量配合することができる。
また、添加剤の配合方法は、特に制限されず、ロジン及び/又はロジン誘導体を構成する各成分を、溶融混練したり、溶液状態で混合した後に溶媒を除去したりすることにより行なうことができる。
【0061】
本発明の成形体を使用するにあたり、エネルギー線を照射して、酸素吸収反応の開始を促進したり、酸素吸収速度を高めたりすることができる。エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、γ線等を利用可能である。照射エネルギー量は、用いるエネルギー線の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0062】
本発明の成形体は、前記酸素吸収性樹脂組成物を含む少なくとも一層と、他の樹脂の層からなる積層体の形で酸素吸収性の中空容器として使用することが好ましい。
【0063】
前記中空容器は、上記の酸素吸収性樹脂組成物からなる層(以下、酸素吸収層という)を少なくとも一層有している。
前記中空容器を構成する酸素吸収層以外の層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等の無機材料或いは紙等から、その使用態様や要求される機能により適宜選択できる。例えば、上述の本発明で使用できる熱可塑性樹脂の一例として列挙した熱可塑性樹脂、金属箔、無機蒸着フィルムを挙げることができる。
前記中空容器においては、酸素吸収性能をより高めるために、少なくとも酸素吸収層の外側には酸素バリア層を設けることが好ましい。このような構成にすることにより、外部から容器内に透過する酸素及び容器内に残存した酸素を効果的に吸収し、容器内の酸素濃度を長期間にわたって低く抑えることができる。
酸素バリア層には、前記した熱可塑性樹脂の中でも、酸素バリア性に優れる樹脂(酸素バリア性樹脂)を使用することが好ましい。酸素バリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。酸素バリア性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリグリコール酸等を挙げることができる。また、上記の酸素バリア性樹脂や他のポリアミド等に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合したナノコンポジット材も好適に使用できる。
【0064】
また、特に前記中空容器がパウチ等のフィルム容器の場合には、アルミニウムなどの軽金属箔、鉄箔、ブリキ箔、表面処理鋼箔等の金属箔、蒸着法により二軸延伸PETフィルム等の基材に形成された金属薄膜や金属酸化物薄膜、又はダイヤモンドライクカーボン薄膜を酸素バリア層として用いることができる。また、二軸延伸PETフィルム等の基材フィルムに酸素バリアコーティングを施したバリアコーティングフィルムを使用することもできる。
金属薄膜を構成する材料としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、錫、銅、珪素等が挙げられ、特にアルミニウムが好ましい。
金属酸化物薄膜を構成する材料としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどが挙げられ、特にシリカとアルミナが好ましい。なお、用いられる材料は2種以上を併用してもよく、同種或いは異種材料で積層されていてもよい。
このような薄膜の蒸着は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション等の物理気相成長法(PVD法)、或いはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等の公知の方法によって行われる。
酸素バリアコーティングを構成する材料としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、多糖類等の高水素結合性樹脂や、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシアミン等が挙げられる。またこれらの材料に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合することも好ましい。
【0065】
また、本発明の成形体として、上述の酸素バリア性樹脂に前記酸素吸収性樹脂組成物を配合した酸素吸収性バリア層を有するものも好ましい。この場合、必ずしも他に酸素バリア単独層および酸素吸収単独層を設ける必要が無いため、層構造を単純化できる。
【0066】
本発明の成形体の製造には、それ自体公知の成形法を用いることができる。
例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで多層フィルム、多層シート、多層パリソン又は多層パイプ等が成形できる。また、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、同時射出法や逐次射出法等の共射出成形によりボトル成型用の多層プリフォームを製造することができる。このような多層フィルム、パリソン、プリフォームをさらに加工することにより、酸素吸収性多層容器を得ることができる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態のパウチや、トレイ・カップの蓋材として用いることができる。パウチとしては、例えば、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。また、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができる。また、予め形成された単層及び多層フィルムをドライラミネーションによって積層することもできる。例えば、熱可塑性樹脂層/酸素吸収層/熱可塑性樹脂(シーラント)層から成る3層共押出フィルムに透明蒸着フィルムをドライラミネーションにより積層する、ドライラミネートにより積層した2軸延伸PETフィルム/アルミ箔の2層フィルムに酸素吸収層/シーラント層の2層をアンカー剤を介して押出コートする、又はドライラミネートにより積層したバリアコーティングフィルム/ポリエチレンの2層フィルムにポリエチレン単層フィルムをポリエチレンベースの酸素吸収性樹脂組成物を介してサンドイッチラミネーションする方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルやチューブを成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
前記中空容器は、容器壁を介して外部から透過してくる酸素を有効に遮断し、容器内に残存した酸素を吸収する。そのため、容器内の酸素濃度を長期間低いレベルに保ち、内容物の酸素が係わる品質低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
【0068】
前記中空容器には、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、ゼリー、プリン等に代表される高水分食品、乾燥野菜、コーヒー豆、コーヒー粉、お茶、穀物を原料としたお菓子等に代表される低水分食品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤、半導体集積回路並びに電子デバイス等、種々の物品を収納することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
(ロジンエステルの製造方法)
温度計、攪拌機、水抜き管、窒素導入管を付した60lのSUS製反応容器に中国産ガムロジンを36kg仕込み、窒素気流下ロジンを溶融し、200℃まで昇温した。200℃にてペンタエリスリトールを3kg加え、275℃まで昇温して、同温度で12時間反応してロジンエステル(ロジンエステル1)を得た。
【0071】
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリアミド6(宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1024B)25kgにロジンエステル1を1.25kg(ポリアミド100質量部に対して添加量で5質量部、以下同様)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度230℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0072】
(無延伸フィルムの製造方法)
上記酸素吸収性樹脂組成物のペレットを25mmφ単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製)により、押出温度230℃、スクリュー回転数60rpm、引き取り速度1.2m/minで製膜し、幅200mm、厚み145〜155μmの無延伸フィルムを作製した。
【0073】
(2軸延伸フィルムの製造方法)
無延伸フィルムを(株)東洋精機製作所製の二軸延伸装置(テンター法)を用いて、延伸温度80℃ でMD方向に3倍、TD方向に3倍延伸し、210℃で30秒熱固定した2軸延伸フィルムを得た。
【0074】
実施例2
ロジンエステル1の添加量を10質量部にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0075】
実施例3
ステアリン酸コバルトを1.3mg(コバルト含有量で約5ppm)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0076】
実施例4
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0077】
実施例5
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0078】
実施例6
ペンタエリスリトールの代わりにグリセリン4.7kgを使用したロジンエステル(ロジンエステル2)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0079】
実施例7
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリアミド6(宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1024B)12.5kgとポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン S6007)12.5kgにロジンエステル1を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度260℃にて酸素吸収性樹脂組成物(ポリアミド6/ポリアミドMXD6=50/50)を得た。
【0080】
(無延伸フィルムの製造方法)
上記酸素吸収性樹脂組成物のペレットを25mmφ単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製)により、押出温度260℃、スクリュー回転数60rpm、引き取り速度1.2m/minで製膜し、幅200mm、厚み145〜155μmの無延伸フィルムを作製した。
【0081】
(2軸延伸フィルムの製造方法)
無延伸フィルムを(株)東洋精機製作所製の二軸延伸装置(テンター法)を用いて、延伸温度130℃ でMD方向に3倍、TD方向に3倍延伸し、210℃で30秒熱固定した2軸延伸フィルムを得た。
【0082】
実施例8
ポリアミド6(宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1024B)17.5kgとポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン S6007)7.5kgとした酸素吸収性樹脂組成物(ポリアミド6/ポリアミドMXD6=70/30)としたこと以外は、実施例7と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0083】
実施例9
ポリアミド6(宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1024B)2.5kgとポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン S6007)22.5kgとした酸素吸収性樹脂組成物(ポリアミド6/ポリアミドMXD6=10/90)としたこと以外は、実施例7と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0084】
実施例10
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン S6007)25kgにロジンエステル1を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度260℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0085】
(無延伸フィルムの製造方法)
上記酸素吸収性樹脂組成物のペレットを25mmφ単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製)により、押出温度260℃、スクリュー回転数60rpm、引き取り速度1.2m/minで製膜し、幅200mm、厚み145〜155μmの無延伸フィルムを作製した。
【0086】
(2軸延伸フィルムの製造方法)
無延伸フィルムを(株)東洋精機製作所製の二軸延伸装置(テンター法)を用いて、延伸温度140℃ でMD方向に3倍、TD方向に3倍延伸し、210℃で30秒熱固定した2軸延伸フィルムを得た。
【0087】
実施例11
ロジンエステル1の添加量を10質量部にしたこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0088】
実施例12
ステアリン酸コバルトを1.3mg(コバルト含有量で約5ppm)としたこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0089】
実施例13
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0090】
実施例14
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0091】
実施例15
ロジンエステル2としたこと以外は実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0092】
実施例16
温度計、攪拌機、水抜き管、窒素導入管を付した60lのSUS製反応容器に中国産ガムロジンを27.6kg仕込み、窒素気流下ロジンを溶融し、160℃まで昇温した。160℃でフマル酸を5kg加えて200℃まで1時間かけて昇温した。
次いで、そのままの温度で2時間反応させた後、200℃にてペンタエリスリトールを4.6kg加え、275℃まで昇温して、同温度で8時間反応したこと以外は実施例1と同様の方法でロジンエステル(ロジンエステル3)を得た。
このロジンエステル3を用いた以外は、実施例10と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0093】
比較例1
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0094】
比較例2
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例7と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0095】
比較例3
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例8と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0096】
比較例4
ロジンエステルを添加しないこと以外は、実施例8と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0097】
比較例5
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例9と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0098】
比較例6
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0099】
比較例7
ロジンエステルを添加しないこと以外は、実施例10と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得た。
【0100】
比較例8
(ロジンエステルの製造方法)
温度計、攪拌機、水抜き管、窒素導入管を付した60lのSUS製反応容器に不均化ガムロジン(G-100F、ハリマ化成(株))を30kg仕込み、窒素気流下ロジンを溶融し、200℃まで昇温した。200℃にてペンタエリスリトールを3kg加え、275℃まで昇温して、同温度で12時間反応してロジンエステル(ロジンエステル4)を得た。このロジンエステル4を用いたこと以外は、実施例10と同様の方法2軸延伸フィルムを得た。
【0101】
実施例17
(ロジンエステルの製造方法)
温度計、攪拌機、水抜き管、窒素導入管を付した60lのSUS製反応容器に中国産ガムロジンを27.6kg仕込み、窒素気流下ロジンを溶融し、160℃まで昇温した。160℃でフマル酸を3.6kg加えて200℃まで1時間かけて昇温した。次いで、そのままの温度で2時間反応させた後、200℃にてペンタエリスリトールを6.5kg加え、275℃まで昇温して、同温度で8時間反応してロジンエステル(ロジンエステル5)を得た。
【0102】
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリエチレンテレフタレート(Invista社製、グレード:1101E)25kgにロジンエステル5を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度260℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0103】
(PET単層ボトルの製造方法)
予め150℃で4時間乾燥(除湿乾燥機使用、露点−40℃)し、水分を94ppmに調整した上記酸素吸収性樹脂組成物を、背圧4.0MPa、スクリュー回転数150rpm、射出速度100cc/sec、樹脂温度280℃、金型温度15℃の条件にてプリフォーム(長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、質量27g)を射出成形した(装置:(株)名機製作所製 M200PDM−MJ)。
このプリフォームを、ブロー成形装置((株)フロンティア製EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形して、高さ223mm、同径65mm、容量500mL、平均厚さ約300μmのPET単層ボトルを得た。
なお、二軸延伸ブロー条件は、下記の通りである。
(2軸延伸ブロー成形条件)
プリフォーム加熱温度:101℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.7MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.34sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
【0104】
実施例18
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン S6007)25kgにロジンエステル5を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を13.3mg(コバルト含有量で約50ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度260℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0105】
(PETブレンドボトルの製造方法)
予め150℃で4時間乾燥(除湿乾燥機使用、露点−40℃)し、水分を94ppmに調整したポリエチレンテレフタレート(Invista社製、グレード:1101E、固有粘度0.80)95質量部に対し、上記酸素吸収性樹脂組成物5質量部をタンブラーにより混合したもの(PET/(ロジンエステル及びステアリン酸コバルト添加ポリアミドMXD6)=95/5、水分130ppm)を、背圧4.0MPa、スクリュー回転数150rpm、射出速度100cc/sec、樹脂温度280℃、金型温度15℃の条件にてプリフォーム(長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、質量27g)を射出成形した(装置:(株)名機製作所製 M200PDM−MJ)。
このプリフォームを、ブロー成形装置((株)フロンティア製EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形して、高さ223mm、同径65mm、容量500mL、平均厚さ約300μmのPETブレンドボトルを得た。
なお、二軸延伸ブロー条件は、実施例17と同じである。
【0106】
実施例19
ステアリン酸コバルトを53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0107】
実施例20
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0108】
実施例21
ロジンエステル5の添加量を10質量部にしたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0109】
実施例22
ロジンエステル2としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0110】
実施例23
ロジンエステル1としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0111】
実施例24
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0112】
実施例25
PET/(ロジンエステル及びステアリン酸コバルト添加ポリアミドMXD6)=97/3(質量%)としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0113】
実施例26
PET/(ロジンエステル及びステアリン酸コバルト添加ポリアミドMXD6)=90/10(質量%)としたこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0114】
実施例27
(PET多層ボトルの製造方法)
ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層(ポリエステル層:ポリエチレンテレフタレート(Invista社製、グレード:1101E、固有粘度0.80、水分0.4ppm)、バリア層:酸素吸収性樹脂組成物(実施例18で試作したものと同等品:ポリアミドMXD6にロジンエステル5(5質量部)、ステアリン酸コバルト53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)、水分121ppm)からなる3層プリフォーム(長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、質量27g、プリフォーム中のバリア樹脂の割合:5質量%)を射出成形した(装置:(株)名機製作所製 M200PDM−MJ)。
得られたプリフォームを加熱し2軸延伸ブロー成形を行い、多層PETボトル(全長223mm、外径65mm、内容積500ml、底部形状はペタロイドタイプ)を得た。
なお、3層プリフォーム及び2軸延伸ブロー成形条件は、下記のとおりである。
(3層プリフォーム成形条件)
スキン側射出シリンダー温度:270℃
コア側射出シリンダー温度 :260℃
金型内樹脂流路温度 :270℃
金型冷却水温度 :15℃
(2軸延伸ブロー成形条件)
プリフォーム加熱温度:101℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.7MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.34sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
【0115】
実施例28
ステアリン酸コバルトを13.3mg(コバルト含有量で約50ppm)としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0116】
実施例29
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0117】
実施例30
ロジンエステル5の添加量を10質量部としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0118】
実施例31
ロジンエステル2としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0119】
実施例32
ロジンエステル3としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0120】
実施例33
ロジンエステル1としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0121】
実施例34
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0122】
実施例35
プリフォーム中のバリア樹脂の割合を3質量%としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0123】
実施例36
プリフォーム中のバリア樹脂の割合を10質量%としたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0124】
比較例9
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例17と同様の方法で、PET単層ボトルを得た。
【0125】
比較例10
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0126】
比較例11
ロジンエステルを添加しないこと以外は、実施例18と同様の方法で、PETブレンドボトルを得た。
【0127】
比較例12
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0128】
比較例13
ロジンエステルを添加しないこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0129】
比較例14
ロジンエステル4を用いたこと以外は、実施例27と同様の方法で、PET多層ボトルを得た。
【0130】
実施例37
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ社製、商品名;ノバテックPP、グレード名;FY6、メルトインデックス;2.3)25kgにロジンエステル1を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度220℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
(PP単層カップの製造方法)
単軸押出機(L/D:30mm、フルフライトスクリュー)、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えたシート製造装置を用い、上記酸素吸収性樹脂組成物を230℃で押出し、700μmのPP単層シートを製造した。次いで、プラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、口径62mm×底径52mm×深さ28mm、表面積73cm、容積70mlのPP単層カップを得た。
【0131】
実施例38
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)(株式会社クラレ製 エバール F101B、エチレン共重合率:32mol%))25kgにロジンエステル1を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度220℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0132】
(PP多層カップの製造方法)
3台の押出機(L/D:30mm、フルフライトスクリュー)、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からPP(日本ポリプロ株式会社社製、ノバテックPP、FY6、メルトインデックス;2.3)を240℃で、2台目の押出機から接着性樹脂(三菱化学株式会社製、モディック、P604V)を230℃で、3台目の押出機から上記酸素吸収性樹脂組成物を220℃でそれぞれ押出し、フィードブロックを介してPP層/接着性樹脂層/ガスバリヤー層/接着性樹脂層/PP層の3種5層構造の多層シートを製造した。なお各層の厚みは、425/25/80/25/425(μm)とした。次いで、プラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、口径62mm×底径52mm×深さ28mm、表面積73cm、容積70mlのPP多層カップを得た。
【0133】
実施例39
ステアリン酸コバルトを13.3mg(コバルト含有量で約50ppm)としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0134】
実施例40
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0135】
実施例41
ロジンエステル1の添加量を10質量部としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0136】
実施例42
ロジンエステル2としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0137】
実施例43
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0138】
実施例44
ロジンエステル5としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0139】
実施例45
(酸素吸収性樹脂組成物の製造方法)
ポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン K6007C)25kgにロジンエステル1を1.25kg(添加量で5質量部)及びステアリン酸コバルト(関東化学株式会社製試薬)を53.1mg(コバルト含有量で約200ppm)を入れ、ドライブレンドした後、L/Dが37mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製)により、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、押出温度220℃にて酸素吸収性樹脂組成物を得た。
【0140】
(PP多層カップの製造方法)
3台の押出機(L/D:30mm、フルフライトスクリュー)、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からPP(日本ポリプロ株式会社社製、ノバテックPP、FY6、メルトインデックス;2.3)を240℃で、2台目の押出機から接着性樹脂(三菱化学株式会社製、モディック、P604V)を230℃で、3台目の押出機から上記酸素吸収性樹脂組成物を260℃でそれぞれ押出し、フィードブロックを介してPP層/接着性樹脂層/ガスバリヤー層/接着性樹脂層/PP層の3種5層構造の多層シートを製造した。なお各層の厚みは、425/25/80/25/425(μm)とした。次いで、プラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、口径62mm×底径52mm×深さ28mm、表面積73cm、容積70mlのPP多層カップを得た。
【0141】
実施例46
ステアリン酸コバルトを13.3mg(コバルト含有量で約50ppm)としたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0142】
実施例47
ステアリン酸コバルトを212.4mg(コバルト含有量で約800ppm)としたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0143】
実施例48
ロジンエステル1の添加量を10質量部としたこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0144】
実施例49
ロジンエステル2としたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0145】
実施例50
添加する金属触媒化合物を酢酸Mnとしたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0146】
実施例51
ロジンエステル5としたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0147】
実施例52
ロジンエステル3としたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0148】
比較例15
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例37と同様の方法で、PP単層カップを得た。
【0149】
比較例16
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例38と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0150】
比較例17
ロジンエステル及びステアリン酸コバルトを添加しないこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0151】
比較例18
ロジンエステルを添加しないこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0152】
比較例19
ロジンエステル4を用いたこと以外は、実施例45と同様の方法で、PP多層カップを得た。
【0153】
実施例及び比較例で得られたロジンエステルの共役樹脂酸量及び酸素吸収量を以下の方法で測定した2軸延伸フィルムでの結果を表1、PETボトルでの結果を表2及びカップでの結果を表3に示す。なお、表中の熱可塑性樹脂の略号はそれぞれ以下の通りである。
PA6:ポリアミド6
PAMXD6:ポリアミドMXD6
PET:ポリエチレンテレフタレート
PP:ポリプロピレン
AD:接着性樹脂
EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体
【0154】
(共役樹脂酸量の測定)
ロジン誘導体を重クロロホルムに溶解し(10%溶液)、プロトンNMRにより測定する。測定結果のプロトンNMR7ppm付近の吸収は芳香族系、5〜6ppm付近の吸収は共役酸系の樹脂酸に夫々由来するため、全体のプロトン吸収に対するそれぞれのプロトン吸収比率を算出することでロジン又はロジン誘導体中の共役樹脂酸量(質量%)が求められる。
【0155】
(2軸延伸フィルムの酸素透過係数)
ASTM D3985に準じた方法で行った。測定装置は、モダンコントロールズ社製(型式:OX−TRAN 2/21SH)のものを使用した。測定条件は、温度:23℃、相対湿度:60%にて測定した。酸素透過係数の単位は、cc・mm/(m・day・atm)である。
【0156】
(PETボトルの酸素透過率)
ASTM D3985に準じた方法で行った。測定装置は、モダンコントロールズ社製(型式:OX−TRAN 2/61)のものを使用した。測定条件は、温度:23℃、相対湿度:ボトル外60%、ボトル内100%、にて測定した。酸素透過率の単位は、cc/(0.21atm・bottle・day)である。
【0157】
(カップの酸素透過係数)
カップを121℃30分のレトルト処理を行った後、ASTM D3985に準じた方法で行った。測定装置は、モダンコントロールズ社製(型式:OX−TRAN 2/61)のものを使用した。測定条件は、温度:23℃、相対湿度:ボトル外60%、ボトル内100%、にて測定した。酸素透過係数の単位は、cc・mm/(0.21atm・package・day)である。レトルト処理後から、14日間測定を実施した。
なお、PP単層カップでは、PPの酸素バリア性が低いために、本手法による測定は行っていない。
【0158】
(ニンジンの色調)
カップ内に、1cm角に切断したニンジンと蒸留水を充填した後、シリカ蒸着PET(12μm)/接着剤/ポリプロピレン(70μm)からなるフィルムでカップのフランジ部分をヒートシーラーにて、ヒートシールした後、121℃30分のレトルト処理を行った。このカップを、23℃50%RHの環境にて、保管し、カップの写真撮影並びに、色調観察を実施した。色調の判断としては、下記の通りである。
◎:レトルト直後と同等の色調
○:ニンジン赤みがやや薄くなった状態
△:ニンジンの赤みがかなり薄くなり、白っぽくなった状態
×:ニンジンが、茶褐色になった状態
【0159】
ロジンエステルと金属触媒化合物を添加した成形体は、酸素吸収により、非常に低い酸素透過率又は酸素透過係数を示した(実施例1から52)。また、金属触媒化合物を添加することだけでも酸素吸収性能を示すポリアミドMXD6(比較例7、13、18)及びポリアミドMXD6と他の熱可塑性樹脂とのブレンド物(比較例4、11)では、ロジンエステルを添加することで、非常に良好な酸素吸収性能を示すことがわかった(実施例8、10から16、18から36、45から52)。一方、共役樹脂酸を全く含まないロジンエステルを用いても、金属触媒化合物を添加したことによる酸素吸収性能以上の効果を示さなかった(比較例8、14、19)。さらに、レトルト処理を実施したカップの系において、EVOH系では、レトルト処理をすることにより、レトルト処理直後は、酸素透過係数が悪化し、時間の経過に伴い、樹脂そのものの酸素透過係数に戻るが、ロジンエステルと金属触媒化合物を添加することで、酸素透過係数の悪化を抑制できる(実施例38から44及び比較例16)。そのため、ニンジンの色調においても、酸化によるニンジンの色調の悪化を抑制できている。一方、ポリアミドMXD6系においても、ロジンエステルと金属触媒化合物を添加することで、非常に良好に酸素透過係数の悪化を抑制でき、かつニンジンの色調からも明らかである(実施例45から52、比較例17から19)。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の成形体は、優れた酸素吸収性能を持ち合わせ、様々な包装形態にて、食品、飲料、医薬品や電子材料等の酸素による品質劣化を防ぐ用途に好適である。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
H−NMR測定から算出した共役樹脂酸量が30質量%以上であるロジン及び/又はその誘導体と、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種類以上の金属原子、並びに少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物を少なくとも一部に使用してなることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記ロジン及び/又はその誘導体に対する金属原子の量が、5ppm以上である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ロジン及び/又はその誘導体がロジンエステルである請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記ロジンエステルのポリオール成分がグリセリン又はペンタエリスリトールである請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
さらに担体物質を含む請求項1〜4のいずれかに記載の成形体。
【請求項6】
熱可塑性樹脂100質量部に対する前記ロジン及び/又はその誘導体の含有量が0.5質量部以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の成形体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれかに記載の成形体。
【請求項8】
パウチ、カップ、トレイ及びボトルから選ばれる少なくとも一種の中空容器である、請求項1〜7のいずれかに記載の成形体。
【請求項9】
フィルム又はシートである請求項1〜7のいずれかに記載の成形体。

【公開番号】特開2011−225638(P2011−225638A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93904(P2010−93904)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】