説明

成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物

【課題】 成形加工機洗浄用の洗浄剤として優れた熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 MFRが0.1〜1.0g/10分のポリプロピレン樹脂100質量部に対し、
(A)エチレン・アクリル系共重合体5〜60質量部、
(B)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂2〜60質量部、
(C)界面活性剤1〜10質量部を含有する、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機、射出成形機等の成形加工機の洗浄性が良い成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体に無機充填剤、化学発泡剤を配合したパージ剤が開示され、特許文献2には、ポリエチレンと、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、無機充填剤、化学発泡剤、スリップ剤とからなるパージ剤が開示されている。これらのパージ剤は、オレフィン系樹脂のパージを目的としているが、洗浄性が十分ではなく、また無機充填剤も配合されているため、ポリプロピレン樹脂への置換は容易ではなかった。
【0003】
特許文献3には、ポリオレフィン系樹脂とアクリル系共重合体、有機スルホン酸の中性塩、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の混合物を混合した洗浄用樹脂組成物が開示されているが、やはり洗浄性が十分ではなかった。
【0004】
特許文献4には、オレフィン系熱可塑性樹脂に、不飽和基含有カルボン酸誘導体変性オレフィン系樹脂、ポリアルキレンオキシドまたはポリアルキレングリコール界面活性剤、脂肪酸の金属塩を含有する成形機洗浄用樹脂組成物が開示されているが、洗浄性が十分ではなかった。
【0005】
特許文献5には、ポリアミドおよびエチレン・不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、周期律表第II族の金属塩を含有するパージング剤が開示されているが、ポリプロピレン樹脂への置換は容易ではなかった。
【特許文献1】特許3179190号公報
【特許文献2】特許3179253号公報
【特許文献3】特開平4−246443号公報
【特許文献4】特開平7−329113号公報
【特許文献5】特許3784506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂の成形に使用する成形加工機洗浄性が良く、洗浄後におけるポリプロピレン樹脂への置換性が良い成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、課題の解決手段として、
MFRが0.1〜1.0g/10分のポリプロピレン樹脂100質量部に対し、
(A)エチレン・アクリル系共重合体5〜60質量部、
(B)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂2〜60質量部、
(C)界面活性剤1〜10質量部を含有する、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の成形に使用する成形加工機洗浄性が良く、洗浄後におけるポリプロピレン樹脂への置換性が良い、即ち、洗浄後に残留する組成物の除去性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<ポリプロピレン樹脂>
ポリプロピレン樹脂は、MFRが0.1〜1.0g/10分のものであり、好ましくは0.2〜0.8g/10分、より好ましくは0.3〜0.7g/10分のものである。MFRは、ISO 1133 に記載の方法に従い、測定温度 230℃、荷重 2.16kg の条件で測定した値である。
【0010】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマーとブロックコポリマーの混合物であるものが好ましく、ホモポリマーとブロックコポリマーの質量比は1/9〜9/1が好ましく、より好ましくは2/8〜8/2であり、さらに好ましくは3/7〜7/3である。
【0011】
ポリプロピレン樹脂は、プロピレンとエチレンのブロックコポリマーであってもよく、その場合には、プロピレン単位の量が50モル%を超えることが好ましい。
【0012】
<(A)エチレン・アクリル系共重合体>
(A)成分は、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタクリレート共重合体(EMA)、エチレン−ブチルアクリレート(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)等を挙げることができる。
【0013】
具体的には、三井デュポンポリケミカル(株)製のEVAFLEX(EEA)、日本ユニカー社製の日本ユニカーEVA、日本ポリオレフィン(株)のレクスパール(EMA)、ATOFINAのLOTRYL(EMA,EBA)、住友化学(株)製のアクリフト(EMMA)等を挙げることができる。
【0014】
組成物中における(A)成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜60質量部であり、好ましくは10〜50質量部、より好ましくは15〜40質量部である。
【0015】
<(B)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂>
(B)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等を用いることができる。
【0016】
組成物中における(B)成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して2〜60質量部であり、好ましくは10〜50質量部、より好ましくは15〜40質量部である。
【0017】
<(C)界面活性剤>
(C)成分の界面活性剤は、成形加工機洗浄用の洗浄剤の成分として公知の界面活性剤を用いることができるが、アルカンスルホン酸の金属塩、α-オレフィンスルホン酸の金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩から選択される1以上が好ましい。
【0018】
組成物中における(C)成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。
【0019】
<(D)ポリエチレン樹脂>
本発明の組成物には、洗浄効果を高めるため、更にポリエチレン樹脂を配合することができる。(D)成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し0〜30質量部が好ましく、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0〜10質量部である。
【0020】
なお、プロピレンとエチレンのブロックコポリマーを配合した場合でも、(D)成分としてポリエチレン樹脂を配合した場合と同様な効果を得ることができる。
【0021】
<その他の成分>
本発明の組成物は、更にガラスファイバー、ロックウール等の公知の無機フィラーを配合することができる。無機フィラーの含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.5〜150重量部が好ましく、10〜140質量部がより好ましく、20〜120質量部が更に好ましい。
【0022】
本発明の組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の各種添加剤を含有することができる。公知の添加剤としては、例えば、上記の特許文献1の段落12、13に記載のアルキレングリコール脂肪酸エステルの他、特開2000−119464号公報に記載の多価アルコールや金属石鹸、また特開2002−1734号公報に記載のリン酸エステル系化合物を用いることができる。
【0023】
本発明の組成物は、各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で溶融混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりする方法を適用して得ることができる。
【実施例】
【0024】
実施例1〜4、比較例1〜4
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の洗浄用樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。結果を表1に示す。
【0025】
(洗浄性)
射出成形機(三菱重工業製「三菱射出成形機265/100MSII」;シリンダー温度250℃)に、先行使用樹脂としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製のプライムポリプロ J-2000GP,MFR21)の黒着色品(ドライカラー;カーボンブラック濃度2%)1kgを流した。次に、表1の組成の各洗浄用樹脂組成物を流して黒色が消えるまで(目視で確認)の組成物の使用量による評価をした。
【0026】
(ポリプロピレン樹脂への置換性)
洗浄終了後、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製のプライムポリプロ J-2000GP,MFR21)を1kg排出し、その後、同ポリプロピレン樹脂で、10cm×10cm、厚み2mmの平板を成形し、平板中に組成物の残留が認められなくなるまでの成形枚数で判断した。
【0027】
PP1:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ E-150GK ,ブロックコポリマー,MFR0.6g/10分)
PP2:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ E111G,ホモポリマー,MFR0.5g/10分)
EEA:エチレンエチルアクリレート共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 エルバロイAC 2112AC)
EMMA:エチレンメチルメタクリレート共重合体(住友化学株式会社製 アクリフト WD201)
MAH-PE:酸変性ポリエチレン(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 ニュクレル N0908C)
MAH-PP:酸変性ポリプロピレン(三菱化学製 モディック P908)
PE:ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製 ハイゼックス 5000SF,高密度PE ,MFR0.66)
界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0028】
【表1】

【0029】
表1の実施例1〜4と比較例1〜3との対比から明らかなとおり、(A)成分のエチレン・アクリル系共重合体と(B)成分の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンを併用することにより、成形加工機の洗浄性が高められると共に、洗浄後におけるポリプロピレン樹脂への置換性が良かった(即ち、洗浄後に残留する組成物の除去性が良かった)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFRが0.1〜1.0g/10分のポリプロピレン樹脂100質量部に対し、
(A)エチレン・アクリル系共重合体5〜60質量部、
(B)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂2〜60質量部、
(C)界面活性剤1〜10質量部を含有する、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレンのホモポリマーとブロックコポリマーの混合物であり、ホモポリマーとブロックコポリマーの重量比が1/9〜9/1である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)界面活性剤が、アルカンスルホン酸の金属塩、α-オレフィンスルホン酸の金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩から選択される1以上である、請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し(D)ポリエチレン樹脂0〜30質量部を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−95625(P2010−95625A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267455(P2008−267455)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】