説明

成形加工用マグネシウム合金板およびその製造方法

【課題】 弱電製品等に使用する成形加工用Mg合金板として、深絞り性に優れたものを提供する。
【解決手段】板厚方向表層部と中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ表層部/中心部の比が0.85〜1.2であるマグネシウム合金板。その製法として、熱間圧延後の帯状板を目標板厚まで薄肉化する際、帯状板は180〜350℃に加熱し、ロール温度は室温〜350℃として、コイル圧延時の入側の設定張力値を、各材料温度における引張耐力の50〜90%とし、その張力を付与した温間圧延工程の中で、周速比1.05〜1.7の異周速圧延を少なくとも1パス以上含み、該異周速圧延における圧下量比率を合計で10%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弱電製品であるパソコンや携帯電話等の筐体部品など、各種電子・電気機器部品等に使用される成形加工用マグネシウム合金板に関し、特に温間プレス成形における成形性に優れたAlとMnを含有するマグネシウム合金からなる成形加工用マグネシウム合金板およびその製造方法に関するものである。また、弱電製品のみならず、自動車、二輪車等の輸送用機器の部品への適用も可能である。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは比重がアルミニウム合金の2/3、鉄の1/4と小さく、しかも比強度が高く、リサイクル性にも優れることから、構造用製品の軽量化に効果的であり、近年、環境負荷低減に向けて軽量化が強く要求される各種自動車部品や電気機器分野のノート型パソコン、携帯電話、デジタルカメラの筐体などその用途が拡大している。さらにマグネシウムは、熱伝導率、耐デント性、電磁波シールド性に優れており、弱電製品に適した材料と言える。
【0003】
ただし、既存のマグネシウム製品の多くはダイカストやチクソなどの鋳造法により製造されたものが大部分であり、鋳造法の場合、複雑形状の物を容易に得ることができるものの、表面品質に問題があり、製品表面に研磨やパテ埋めなどを施すための補修工程が必要となると共に、製品の薄肉化や大型化への対応が困難である。それに対し、マグネシウム合金展伸材を使用した場合は、表面性状に優れ、歩留り向上や薄肉化、大型化への適用が可能となることが期待される。
【0004】
しかしながら、マグネシウムの結晶構造は最密六方格子であるため、常温における優先すべり系が{0002}基底面のみであり、常温における塑性加工は非常に困難である。したがって、大きな塑性変形を得るためには、非底面すべりの活動が容易になる180℃以上に加熱する必要がある。
【0005】
現状、マグネシウム合金展伸材の製造方法として、厚スラブを繰り返し圧延し薄肉化するもの、鋳造したビレットを押出してフラットな板材とし、仕上げ圧延により製品板厚とするもの、双ロール法により溶湯から直接、鋳造板を製造し、仕上げ圧延を行なうもの(例えば特許文献1参照)等がある。
【特許文献1】特開2006−144043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、いずれの製造方法においても板厚1.8〜10mm程度の帯状板を目標板厚まで繰り返し圧延することで、マグネシウム合金圧延板に特有な底面集合組織が形成され、成形加工性、とりわけ深絞り性がある程度以上向上しない。
マグネシウム合金板において、成形性、とりわけ深絞り性の評価として限界絞り比(LDR)が従来から広く使用されている。限界絞り比とは、ブランク直径/パンチ直径で表される値であり、限界絞り比が大きいほど深絞り性が優れている。尚、マグネシウム合金板の深絞り性評価は材料を加熱できる温間プレス装置で行なう。ところで、一般的に成形加工用素材では、深絞り性が集合組織によって大きな影響を受けることが良く知られている。
【0007】
マグネシウムは結晶構造が六方最密構造であり、圧延回数を繰り返すに伴い結晶方位が基底面に揃う傾向がある。特にロールと接触する板厚方向表層部での底面集合組織強化が顕著であり、製品板厚まで圧延した際には圧延板の板厚方向表層部と中心部で{0002}基底面の最大集積強度に大きな差を生じてしまう。この板厚方向における集合組織の不均一がマグネシウム板材における成形性、とりわけ深絞り性がある程度以上向上しない原因であり、この板厚方向における{0002}基底面の集積強度の差を緩和し、さらに板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくすることで深絞り性をさらに向上することができる。
【0008】
板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくする方法として、板材の最終焼鈍などの熱処理法が考えられるが、熱処理法では材料が焼き鈍されてしまい、製品強度が確保できない問題が生じる。また、マグネシウム合金板の成形は前記のように温間プレス成形が主であることから、プレス成形時にも若干の強度低下が考えられるため、板材自体の強度は高いことが望ましい。そこで、板厚方向における底面集積強度の差を緩和し、板厚全体での底面集積強度を小さくする方法として、圧延方法による改善が必要である。
【0009】
前述のように弱電製品や自動車部品等の成形加工用の素材として、従来の通常圧延方法で得られたマグネシウム合金板は、成形性、特に深絞り性がある程度以上向上しない。より厳しい成形形状の要請から、成形性、とりわけ深絞り性を従来よりもさらに向上させたマグネシウム合金板が求められることはもちろんである。
【0010】
この発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、弱電製品の筐体をはじめとする各種電子・電気機器部品等として、成形性、とりわけ深絞りによる成形加工用マグネシウム合金板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
成形加工用素材の深絞り性を向上させるためには、既に述べたように集合組織を適切に制御して、圧延板の板厚方向における{0002}基底面の集積強度の差を緩和し、さらに板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくする必要がある。そこで、最密六方格子であるマグネシウム合金について、板厚方向全体に均一なせん断変形を付与して底面集合組織制御を行ない、深絞り性を改善することとした。
【0012】
ここで、通常の圧延工程においても、圧延ロールに接する材料の極表面層では、材料と圧延ロール表面との界面の摩擦によってせん断変形が生じる。板厚1.8〜10mm程度のマグネシウム合金基材に、単に温間圧延を適用するだけでは、前述のような圧延ロール表面と材料との界面の摩擦によるせん断変形領域を材料の板厚方向内部まで充分に拡大させるのは困難である。すなわち、温間圧延は従来の通常の圧延機を用いた圧延手法の一つであるが、このような従来の通常の圧延機を用いた方法では、材料のせん断変形領域を板の内部まで充分に拡大させて、板厚方向全体として{0002}基底面の集積強度の差が小さいマグネシウム合金板を得ることは困難である。
【0013】
そこで本発明者等がさらに実験・検討を重ねた結果、圧延温度域を温間圧延温度域として材料の変形抵抗を小さくする手法と併せて、従来の一般的な圧延手法とは異なる、適正張力を付与した異周速圧延、すなわちミル入側の材料に対して各材料温度における引張耐力の50〜90%に設定された張力により拘束した状態で材料に対する上ロールと下ロールの相対速度を異ならしめて、強制的にせん断変形を付与する手法を適用することによって、板厚方向における{0002}基底面の集積強度の差を緩和し、さらに板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくすることで、板厚方向に充分均一な集合組織を有するだけでなく、条件によってはその集合組織がシングルピークからダブルピークに変化することもあり、これによって深絞り性を従来の通常の圧延方法により得られたマグネシウム合金板よりも飛躍的に改善し得ることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明の成形加工用マグネシウム合金板は、板厚方向表層部と板厚方向中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ該最大集積強度における表層部/中心部の比が0.85〜1.2であることを特徴とする。
【0015】
第2の本発明の成形加工用マグネシウム合金板の製造方法は、マグネシウム合金からなる帯状板を180〜350℃に加熱し、ロール温度が室温〜350℃の条件で温間でコイル圧延する際に、入側の設定張力値を、各材料温度における引張耐力の50〜90%に設定するとともに、周速比1.05〜1.7の異周速圧延を少なくとも1パス以上含み、該異周速圧延における圧下量比率を合計で10%以上とすることを特徴とする。
【0016】
以下に、本発明で規定する条件について限定理由とともに説明する。
(1)X線回折による{0002}面の最大集積強度
a)板厚方向表層部と板厚方向中心部での上記最大集積強度:それぞれ18未満
板厚方向表層部および板厚方向中心部ともに{0002}面の最大集積強度を小さくすることで、成形性、特に深絞り性を向上させる。これらの最大集積強度がいずれか一方でも18以上になると、良好な成形性は得られない。
b)表層部/中心部の比:0.85〜1.2
板厚方向表層部と板厚方向中心部での上記最大集積強度の比が大きくなると、成形性が低下する。このため、上記(a)の条件に加えて上記比の適正範囲を定める。
【0017】
(2)帯状板加熱温度:180〜350℃
帯状板の変形抵抗を小さくして良好に温間圧延するために、帯状板の温度を180℃以上に加熱する。帯状板の温度が180℃未満であると、良好な温間圧延が難しくなる。一方、350℃を超えると、結晶粒の成長が顕著になり、微細な結晶組織が得られなくなる。
【0018】
(3)ロール温度:室温〜350℃
ロール温度が350℃を超えると、ロールのヒートクラウンにより、シェイプの良い板材が得られないため、ロール温度を350℃以下にする。
【0019】
(4)異周速圧延:周速比1.05〜1.7
圧下量比率10%以上
温間圧延は、1パス以上の異周速圧延を含むものとする。異周速圧延によって板厚方向全域に亘って大きなせん断変形を付加して板厚方向における{0002}基底面の集積強度の差を緩和し、さらに板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくする。ただし、周速比が1.05未満または圧下量比率が10%未満であると、上記作用を十分に得られない。また、周速比が1.7を超えると顕著なはさみ割れを生じ、健全な板材を得るのが難しくなる。このため、周速比と圧下量比率とを上記に定める。なお、圧下量比率は、温間圧延における総圧下量に対する、異周速圧延による圧下量の比率を示すものである。
【0020】
(5)張力付与
上記温間圧延に際し、張力を付与することでせん断力を帯状板に付加することができる。
特に、上記異周速圧延に際し、入側の張力調整によって板厚方向における{0002}基底面の集積強度の差を緩和し、さらに板厚方向全体の基底面の集積強度を小さくする。該張力として、入側が、各材料温度における引張耐力の50〜90%が望ましい。ここで、張力が50%未満であると、材料の矯正効果が不十分で、適切な材料形状が得られない。90%を超えると圧延前の加熱した材料が高温で引張られ、最悪の場合、破断に至る。
なお、材料温度は圧延前の入側においては、加熱された材料の実体温度のことを指す。材料温度は合金種や圧下率によって異なるため、適宜調整する必要がある。本発明における材料温度は、入り側の材料の実体温度で示すものとする。なお出側張力は材料の形状が悪くならないよう、適宣調整に付加する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の成形加工用マグネシウム合金板は、板厚方向表層部と板厚方向中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ該最大集積強度における表層部/中心部の比が0.85〜1.2であるので、弱電製品の筐体部品など、各種電子・電気機器部品等に要求される成形性、とりわけ深絞り性が従来よりも著しく優れている。
【0022】
また、本発明の成形加工用マグネシウム合金板の製造方法によれば、上述のように成形性、とりわけ深絞り性が従来よりも著しく優れたマグネシウム合金板を、量産的規模での装置によって実際的かつ容易に得ることができる。
なお、この発明によるマグネシウム合金板は、弱電製品であるパソコンや携帯電話等の筐体部品など、各種電子・電気機器部品に最適であるが、それに限らず、自動車部品、その他各種の成形加工用部品の用途に使用できることはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の製造に用いる帯状板は、所定の組成を有するマグネシウム合金から得られる。該マグネシウム合金の組成は、本発明としては特に限定をされるものではないが、好適には、質量%で、Al:1〜11%、Mn:0.15〜0.5%を含有し、残部がMgおよび不可避不純物からなる組成を有し、さらに所望によりZn:0.1〜2.0%を含有するものを挙げることができる。尚、Znは0.1%未満を不純物として含み得る。
【0024】
帯状板の製造方法も特に限定されるものではなく、厚スラブを薄肉化したもの、鋳造ビレットを板材状に押し出したもの、双ロールにより溶湯から直接鋳造したものが挙げられる。帯状板は、好適には1.8〜10mm厚の板材とされる。
【0025】
上記帯状板は、180〜350℃に加熱され、室温〜350℃のロール温度としたロールによって張力を付与した状態で温間圧延される。帯状板の加熱は、好適にはインライン上で、赤外線加熱、高周波誘導加熱、ヒーターによる高温雰囲気加熱等の加熱装置により行うことができる。また、ロールの温度は、例えばロールに内蔵したシーズヒータなどによって温度調整することができる。
また、ロールは、それぞれ制御可能なツインモータなどによって上下ロールの回転速度を変えて、周速比1.05〜1.7の異周速圧延によって行うのが望ましい。なお、異周速圧延は、温間圧延中の一部パスに限って行うことも可能であり、その場合、異周速圧延の総圧下率を10%以上とする。
【0026】
また、温間圧延に際しては、帯状板に張力を付与した状態で圧延を行う。この際の張力は、入側が、材料温度における引張耐力の50〜90%になるように前方の張力を設定する。
【0027】
上記温間加工によって、帯状板を最終厚さにまで薄肉化する。該最終厚さは本発明としては特に限定されるものではなく、製品やその後の加工に応じた厚さを採用することができる。
得られたマグネシウム合金板は、板厚方向表層部と板厚方向中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ該最大集積強度における表層部/中心部の比が0.85〜1.2になっており、優れた成形性を示し、深絞り加工においても優れた成形性を有している。
【実施例1】
【0028】
以下に、本発明の実施例を説明する。
表1の合金符号A、B、Cに示す成分組成の各合金を溶解し、双ロール法により板厚5mm、板幅450mm、長さ30mの鋳造板コイルを作製した。得られた鋳造板コイルを表2に示す初期板厚まで張力を付与したコイルの状態で熱間圧延を施し、その後、400℃で20時間均質化処理した。
【0029】
【表1】

【0030】
この帯状板について、表2に示す製造プロセス番号1〜13に示すような種々の条件で温間圧延を施して目標板厚(上がり板厚)を得た。温間圧延工程の中では、表2中に示す周速比、圧下量比率、入側張力で温間異周速圧延を行なった。表2に示すように、温間圧延工程の材料温度(入側温度)は120℃〜400℃、ロール加熱温度は室温〜350℃で任意に変量した。入側設定張力値は、表2に示すように、上記材料温度における引張耐力に対する比率で変量した。
ここで温間異周速圧延は、上下のロールをそれぞれ独立したモーターで駆動された温間異周速圧延機を用い、高速側のロールの回転速度を5m/minで一定とし、低速側ロールの回転速度を、設定した異周速比に応じて変化させた。なお、表2中で示す圧延パススケジュールは、板厚(mm)の変化を示すものであり、下線が引かれた板厚から次の板厚までのパスは異周速圧延を行っていることを示している。
【0031】
また、異周速圧延における圧下量比率は、温間圧延全体の圧下量に対する、異周速圧延による圧下量の合計比率を示している。
例えば製造プロセス番号1では、
合計圧下量比率=異周速圧延による圧下量合計/温間圧延全体の圧下量×100(%)=(1.0mm−0.7mm+0.7mm−0.5mm)/(2.0mm−0.5mm)×100=約33%となる。
【0032】
ここで、表2において、製造プロセス番号1〜3は、いずれも熱間圧延後、均質化処理を施した帯状板を目標板厚まで温間圧延する間に、この発明で規定する条件範囲内の温間異周速圧延を行なった本発明例、製造プロセス番号4、5は、いずれも温間圧延工程の中にこの発明で規定する温間異周速圧延の異周速比範囲を外れた温間異周速圧延を行なった比較例、製造プロセス番号6は、温間圧延工程の中にこの発明で規定する温間異周速圧延の圧下量比率範囲を外れた温間異周速圧延を行なった比較例、製造プロセス番号7、8は、温間圧延工程の中でこの発明で規定する帯状板の加熱温度範囲を外れた比較例、製造プロセス番号9、10は温間圧延工程の中でこの発明で規定するミル入側における設定張力値から外れた値で圧延した比較例、製造プロセス番号12は温間圧延工程の中でこの発明で規定する温間異周速圧延を含まず行なった従来例、製造プロセス番号13は温間圧延工程の中にこの発明で規定するコイル圧延ではなく、切板圧延を行なった従来例である。11はロール温度が外れた比較例である。
【0033】
【表2】

【0034】
以上のようにして得られた目標板厚まで圧延された各板について、X線回折により板厚方向表層部と中心部の極点図を作成した。X線にはCu−Kα線を用い、0002面について測定し、Schluzの反射法によって極点図を作成し、{0002}基底面における最大集積強度を調べ、表層部/中心部の比を求めた。ここで、板厚方向における{0002}基底面の最大集積強度が小さく、表層部/中心部の比が1に近いほど、成形性への寄与が大きい。また、測定した極点図において、ピークがシングルからダブルに変化しているものの方が成形性に優れる。成形性の評価としては深絞り成形を行ない、限界絞り比(LDR)を調べた。具体的にはパンチ直径50mm一定でブランク直径を変量し、材料加熱温度250℃、パンチ水冷、潤滑にBNを使用してプレス速度5m/minでの各板における限界絞り比(LDR)を調べ、相対比較による評価を行なった。これらの測定結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3から明らかなように、この発明で規定する温間圧延工程での帯状板加熱温度、温間圧延工程内の異周速圧延の圧下量比率もしくは異周速比を満たす条件で行なった本発明例では、いずれも板厚方向の各位置で{0002}面の最大集積強度が18未満であって、板厚方向表層部と中心部の{0002}面の最大集積強度の比が0.85〜1.2であり、したがって成形性、とりわけ深絞り性に有利な集合組織を有していると言うことができ、またLDRで評価される成形性も実際に従来の通常の温間圧延工程での板材に比べ著しく優れていることが明らかである。これに対して、この発明で規定する温間圧延工程での帯状板加熱温度、設定張力、温間圧延工程内の異周速圧延による圧下量比率もしくは異周速比を満たす条件で行なわれなかった各比較例の場合は、いずれも{0002}面の板厚方向の各位置で{0002}面の最大集積強度が18以上であるか、板厚方向表層部と中心部の{0002}面の最大集積強度の比が規定範囲外であり、深絞り性に不利な集合組織が形成されており、LDRも本発明品に比べ劣る結果であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向表層部と板厚方向中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ該最大集積強度における表層部/中心部の比が0.85〜1.2であることを特徴とする、成形加工用マグネシウム合金板。
【請求項2】
マグネシウム合金からなる帯状板を180〜350℃に加熱し、ロール温度が室温〜350℃の条件で温間でコイル圧延する際に、入側の設定張力値を、各材料温度における引張耐力の50〜90%に設定するとともに、周速比1.05〜1.7の異周速圧延を少なくとも1パス以上含み、該異周速圧延における圧下量比率を合計で10%以上とすることを特徴とする、成形加工用マグネシウム合金板の製造方法。

【公開番号】特開2009−256706(P2009−256706A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105302(P2008−105302)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】