説明

成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】980MPa以上のTSを有し、穴拡げ性などの成形性が良好で、かつ高速変形時のエネルギー吸収能に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】成分組成は、質量%でC:0.03〜0.13%、Si:1.0〜2.0%、Mn:2.4〜3.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%、B:0.0003〜0.01%を含有し、かつ、C、Mn、Bの含有量が下式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織は、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を合計の面積率で30%以上(ベイナイト相がないときは焼戻しマルテンサイト相を面積率で30%以上)含有し、かつ、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離が10μm以下である高強度溶融亜鉛めっき鋼板。(%Mn)+1000×(%B)≧35×(%C)…(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車の構造部材に好適な成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板、特に、980MPa以上の引張強度TSを有し、かつ穴拡げ性などの成形性と高速で変形したときの衝撃吸収性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衝突時における乗員の安全性確保や車体軽量化による燃費改善を目的として、TS(引張強さ)が980MPa以上で、板厚の薄い高強度鋼板の自動車構造部材への適用が積極的に進められている。しかしながら、一般的には、鋼板の高強度化は鋼板の穴拡げ性などの低下につながることから、高強度と優れた成形性を併せ持つ鋼板が望まれている。さらに、鋼板の高強度化にともなう延性の低下で衝突時の塑性変形能が損なわれるため、エネルギー吸収量の減少につながることから、高速変形でのエネルギー吸収能の向上が望まれている。
【0003】
このような要望に対して、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.5〜3.0%、B:0.0005〜0.005%、P≦0.1%、4N<Ti≦0.05%、Nb≦0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板表層に合金化亜鉛めっき層を有し、合金化溶融亜鉛めっき層中のFe%が5〜25%であり、かつ鋼板の組織がフェライト相とマルテンサイト相の混合組織であるTSが800MPa以上の成形性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【0004】
特許文献2には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3〜1.5%、Mn:1.5〜2.8%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.0060%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに(Mn%)/(C%)≧15かつ(Si%)/(C%)≧4を満たし、フェライト相中に体積率で3〜20%のマルテンサイト相と残留オーステナイト相を含む成形性の良い高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【0005】
特許文献3には、質量%で、C:0.04〜0.14%、Si:0.4〜2.2%、Mn:1.2〜2.4%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.002〜0.5%、Ti:0.005〜0.1%、N:0.006%以下を含有し、さらに(Ti%)/(S%)≧5を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、マルテンサイト相と残留オーステナイト相の体積率の合計が6%以上で、かつマルテンサイト相、残留オーステナイト相およびベイナイト相の硬質相組織の体積率をα%としたとき、
α≦50000×{(Ti%)/48+(Nb%)/93+(Mo%)/96+(V%)/51}である穴拡げ性に優れた低降伏比の高強度冷延鋼板や高強度めっき鋼板が提案されている。
【0006】
特許文献4には、質量%で、C:0.001〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.01〜3%、Al:0.001〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、質量%で、Al:0.001〜0.5%、Mn:0.001〜2%を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなるめっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、鋼のSi含有率:X質量%、鋼のMn含有率:Y質量%、鋼のAl含有率:Z質量%、めっき層のAl含有率:A質量%、めっき層のMn含有率:B質量%が、0≦3-(X+Y/10+Z/3)-12.5×(A-B)を満たし、鋼板のミクロ組織が、体積率で70〜97%のフェライト主相とその平均粒径が20μm以下であり、第2相として体積率で3〜30%のオーステナイト相および/またはマルテンサイト相からなり、第2相の平均粒径が10μm以下である成形時のめっき密着性および延性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-13147号公報
【特許文献2】特開平11-279691号公報
【特許文献3】特開2002-69574号公報
【特許文献4】特開2003-55751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4に記載された高強度冷延鋼板や高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、980MPa以上のTSを得ようとすると、必ずしも優れた穴拡げ性などの成形性が得られない。また、衝突時のエネルギー吸収能には何ら考慮されていない。
【0009】
本発明は、980MPa以上のTSを有し、かつ穴拡げ性などの成形性が良好であり、かつ高速変形時のエネルギー吸収能(耐衝撃性)に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、980MPa以上のTSを有し、良好な延性や穴拡げ性を示し、かつ衝突時のエネルギー吸収能に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板について鋭意検討を重ねたところ、以下のことを見出した。
【0011】
i)成分組成を特定の関係を満足するように適正化した上で、焼戻しマルテンサイト相単独または焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の2種の合計を30%以上の面積率で含有し、かつ、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離が10μm以下とすることにより、980MPa以上のTS、良好な延性や穴拡げ性および優れたエネルギー吸収能を達成できる。
【0012】
ii)こうしたミクロ組織は、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱したのち、5℃/s未満の平均加熱速度で(Ac3-50)℃以上に加熱し、引続いて(Ac3-50)℃以上(Ac3+50)℃以下の温度域で30〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域まで1次冷却し、次いで、溶融亜鉛めっきを施したのち、200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度となるように2次冷却することによって得られる。
【0013】
本発明は、上記の知見に基づくもので、上記課題を解決する本発明の手段は、下記のとおりである。
【0014】
[1]成分組成は、質量%でC:0.03〜0.13%、Si:1.0〜2.0%、Mn:2.4〜3.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%、B:0.0003〜0.01%を含有し、かつ、C、Mn、Bの含有量が下式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織は、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を合計の面積率で30%以上(ベイナイト相がないときは焼戻しマルテンサイト相を面積率で30%以上)含有し、かつ、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離が10μm以下であることを特徴とする成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(%Mn)+1000×(%B) ≧ 35×(%C) …(1)
[2]前記焼戻しマルテンサイト相の平均粒径が2.0μm以上であることを特徴とする[1]に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0015】
[3]さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.0005〜0.1%、Nb:0.0005〜0.05%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0016】
[4]さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0017】
[5]さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0018】
[6]高強度溶融亜鉛めっき鋼板が高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0019】
[7] [1]、[3]〜[5]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼板を、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱したのち、5℃/s未満の平均加熱速度で(Ac3-50)℃以上に加熱し、引続いて(Ac3-50)℃以上(Ac3+50)℃以下の温度域で30〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域まで1次冷却し、次いで、溶融亜鉛めっきを施したのち、200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度となるように2次冷却することを特徴とする成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0020】
[8]前記1次冷却後、前記溶融亜鉛めっきを施す前に、300〜550℃の温度域で20〜150s保持することを特徴とする[7]に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0021】
[9]前記溶融亜鉛めっきを施した後、前記2次冷却前に450〜600℃の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする[7]または[8]に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、980MPa以上のTSを有し、かつ穴拡げ性などの成形性が良好であり、かつ高速変形時のエネルギー吸収能に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を自動車構造部材に適用することにより、より一層の乗員の安全性確保や大幅な車体軽量化による燃費改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の詳細を説明する。なお、成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0024】
1)成分組成
C:0.03〜0.13%
Cは、鋼を強化するにあたり重要な元素であり、高い固溶強化能を有するとともに、マルテンサイト相による組織強化を利用する際に、その面積率や硬度を調整するために不可欠な元素である。C量が0.03%未満では、必要な面積率のマルテンサイト相を得るのが困難になるとともに、マルテンサイト相が硬質化しないため、十分な強度が得られない。一方、C量が0.13%を超えると、溶接性が劣化するともに、マルテンサイト相が著しく硬化するとともに、自己焼戻し作用が抑制されて成形性、特に穴拡げ性の低下を招く。したがって、C量は0.03〜0.13%とする。
【0025】
Si:1.0〜2.0%
Siは、本発明において極めて重要な元素であり、焼鈍時に、フェライト変態を促進するとともに、フェライト相からオーステナイト相へ固溶Cを排出してフェライト相を清浄化し、延性を向上させると同時に、オーステナイト相を安定化するため急冷が困難な連続溶融亜鉛めっきラインで焼鈍する場合でもマルテンサイト相を生成し、複合組織化を容易にする。また、Siは、フェライト相を固溶強化してフェライト相とマルテンサイト相の硬度差を低減し、その界面での亀裂の生成を抑制して局部変形能を改善し、穴拡げ性の向上に寄与する。さらに、フェライト相に固溶したSiは、加工硬化を促進して延性を高めるとともに、歪が集中する部位での歪伝播性を改善して穴拡げ性を向上させるともに高速変形時の局所的な破壊を抑制する。こうした効果を得るには、Si量を1.0%以上にする必要がある。一方、Si量が2.0%を超えると、効果が飽和するとともに、表面性状に甚大な問題を生ずるようになる。したがって、Si量は1.0〜2.0%とする。
【0026】
Mn:2.4〜3.5%
Mnは、鋼の熱間脆化の防止ならびに強度確保のために有効であるとともに、焼入れ性を向上させて複合組織化を容易にする。さらに、焼鈍時に未変態オーステナイト相の割合を増加させて、そのC濃度を減少させ、焼鈍時の冷却過程や溶融亜鉛めっき処理後の冷却過程で生成するマルテンサイト相の自己焼戻しを生じやすくし、最終組織でのマルテンサイト相の硬度を低減し、局部変形を抑制して穴拡げ性の向上に大きく寄与する。さらに、Mnの添加は変態点を低下させて加熱時のオーステナイトへの逆変態を促進し、マルテンサイト相を緻密に分散させる。こうした効果を得るには、Mn量を2.4%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.5%を超えると、偏析層の生成が著しく成形性の劣化を招く。したがって、Mn量は2.4〜3.5%とする。
【0027】
P:0.001〜0.05%
Pは、所望の強度に応じて添加できる元素であり、また、フェライト変態を促進するために複合組織化にも有効な元素である。こうした効果を得るには、P量を0.001%以上にする必要がある。一方、P量が0.05%を超えると、溶接性の劣化を招くとともに、亜鉛めっきを合金化処理する場合には、合金化速度を低下させ、亜鉛めっきの品質を損なう。したがって、P量は0.001〜0.05%とする。
【0028】
S:0.0001〜0.01%
Sは、粒界に偏析して熱間加工時に鋼を脆化させるとともに、硫化物として存在して局部変形能を低下させるため、その量は0.01%以下、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.001%以下とする必要がある。しかし、生産技術上の制約から、S量は0.0001%以上にする必要がある。したがって、S量は0.0001〜0.01%、好ましくは0.0001〜0.003%、より好ましくは0.0001〜0.001%とする。
【0029】
Al:0.001〜0.1%
Alは、フェライト相を生成させ、強度-延性バランスを向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Al量を0.001%以上にする必要がある。一方、Al量が0.1%を超えると、表面性状の劣化を招く。したがって、Al量は0.001〜0.1%とする。
【0030】
N:0.0005〜0.01%
Nは、鋼の耐時効性を劣化させる元素である。特に、N量が0.01%を超えると、耐時効性の劣化が顕著となる。その量は少ないほど好ましいが、生産技術上の制約から、N量は0.0005%以上にする必要がある。したがって、N量は0.0005〜0.01%とする。
【0031】
B:0.0003〜0.01%
Bは、焼入れ性を向上させて複合組織化を容易にする。さらに、冷却時のフェライトやバーライトなどの拡散変態を抑制して、未変態オーステナイト相の割合を増加させて、そのC濃度を減少させ、焼鈍時の冷却過程や溶融亜鉛めっき処理後の冷却過程で生成するマルテンサイト相の自己焼戻しを生じやすくし、最終組織でのマルテンサイト相の硬度を低減し、局部変形を抑制して穴拡げ性の向上に大きく寄与する。こうした効果を得るには、B量を0.0003%以上にする必要がある。一方、B量が0.01%を超えると、延性の低下を招く。したがって、B量は0.0003〜0.01%とする。
【0032】
(%Mn)+1000×(%B) ≧ 35×(%C)
焼戻しマルテンサイト相は、主に溶融亜鉛めっき後の2次冷却の過程でマルテンサイト変態と同時に焼戻しが起こる自己焼戻しにより生成するが、これを効率的に生ぜしめるには、Ms点を上昇させるように未変態オーステナイト中のC濃度は小さいほど好ましい。ベイナイト相は均熱後の1次冷却もしくは引続く保持過程で生成するが、これを効率的に生ぜしめるには、未変態オーステナイトが安定しないようにC濃度は小さいほど好ましい。したがって、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を所定の分率で得るためには、焼鈍時の未変態オーステナイト量とその中のC濃度を調整する必要がある。未変態オーステナイト量は変態点を成分元素で制御して調整ができるが、特に影響が大きいMnとBの添加量を厳密に制御する必要がある。未変態オーステナイト中のC濃度は、鋼中への添加量に加え、C元素が均熱時に未変態オーステナイト中に分配される傾向を持つことから未変態オーステナイト量に強く依存する。これらを考慮して、上記した成分組成の範囲内で焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を所定の分率で得るためには、Mn、B、Cの添加量は経験的に求めた下式の範囲に制御する必要がある。
(%Mn)+1000×(%B) ≧ 35×(%C)
【0033】
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由で、Ti:0.0005〜0.1%、Nb:0.0005〜0.05%から選ばれる少なくとも1種の元素や、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%から選ばれる少なくとも1種の元素や、Ca:0.001〜0.005%が含有されることが好ましい。
【0034】
Ti:0.0005〜0.1%
Tiは、C、S、Nと析出物を形成して強度および靭性の向上に有効に寄与する。また、析出強化により鋼を強化するため、所望の強度に応じて添加できる。さらに、TiはBと同時に含有させた場合には、NをTiNとして析出させるため、BNの析出が抑制され、上記したBの効果が有効に発現される。こうした効果を得るには、Ti量を0.0005%以上にする必要がある。一方、Ti量が0.1%を超えると、析出強化が過度に働き、延性の低下を招く。したがって、Ti量は0.0005〜0.1%とする。
【0035】
Nb:0.0005〜0.05%
Nbは、析出強化により鋼を強化するため、所望の強度に応じて添加できる。こうした効果を得るには、Nb量を0.0005%以上添加する必要がある。Nb量が0.05%を超えると、析出強化が過度に働き、延性の低下を招く。したがって、Nb量は0.0005〜0.05%とする。
【0036】
Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%
Cr、Mo、Ni、Cuは、固溶強化元素としての役割のみならず、焼鈍時の冷却過程において、オーステナイト相を安定化し、複合組織化を容易にする。こうした効果を得るには、Cr量、Mo量、Ni量、Cu量は、それぞれ0.01%以上にする必要がある。一方、Cr量が1.0%、Mo量が1.0%、Ni量が2.0%、Cu量が2.0%を超えると、めっき性、成形性、スポット溶接性が劣化する。したがって、Cr量は0.01〜1.0%、Mo量は0.01〜1.0%、Ni量は0.01〜2.0%、Cu量は0.01〜2.0%とする。
【0037】
Ca:0.001〜0.005%
Caは、SをCaSとして析出させ、亀裂の発生や伝播を助長するMnSの生成を抑制し、穴拡げ性を向上させる効果を有する。このような効果を得るには、Ca量を0.001%以上にする必要がある。一方、Ca量が0.005%を超えると、その効果は飽和する。したがって、Ca量は0.001〜0.005%とする。
【0038】
2)ミクロ組織
焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の合計の面積率(ベイナイト相がないときは焼戻しマルテンサイト相の面積率):30%以上
ミクロ組織には、980MPa以上の強度を達成するために、マルテンサイト相を含有する。穴拡げ性のような局所変形能を向上し、かつ高速変形時の歪み伝播性を高めるために、マルテンサイト相は比較的軟質な焼戻しされたマルテンサイト相を含む必要がある。このような効果は焼戻しマルテンサイトの一部がベイナイトに置き換わっても同様に得ることができる。これらの効果を有効に発現するためには、組織全体に占める焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の合計の面積率を30%以上(ベイナイト相がないときは焼戻しマルテンサイト相の面積率を30%以上)にする必要がある。マルテンサイト相は、焼戻しされていないマルテンサイト相を含むことができる。なお、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の両方を含む場合には、強度確保の観点から組織全体に占める焼戻しマルテンサイト相の割合は10%以上であることが好ましい。
【0039】
ここでいう焼戻しされていないマルテンサイト相とは、変態前のオーステナイト相と同じ化学組成を有する、Cを過飽和に固溶した体心立方構造を持つ組織であり、ラス、パケット、ブロックなどの微視構造を有する高い転位密度の硬質相である。焼戻しマルテンサイト相とは、マルテンサイト相から過飽和な固溶Cが炭化物として析出した、母相の微視構造を維持した転位密度の高いフェライト相である。また、焼戻しマルテンサイト相はこれを得るための熱履歴、例えば、焼入れ−焼戻しや自己焼戻しなどによって特に区別する必要はない。
【0040】
焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離:10μm以下
焼戻しマルテンサイトが上記した面積率を満足したとしても、粗大かつ疎に分布した場合には、それらの隣接する異相との界面での亀裂伝播が進行し易く、特に高速変形での延性を低下させ充分なエネルギー吸収能を得ることができない。焼戻しマルテンサイトが微細かつ密に分布した場合には、各々の焼戻しマルテンサイト粒が亀裂伝播の抵抗になり、特に高速変形での延性を上昇させエネルギー吸収能を向上させる。この効果を充分に得るためには、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離を10μm以下とする必要がある。
【0041】
焼戻しマルテンサイト相の平均粒径:2.0μm以上
焼戻しマルテンサイト相の粒径が過度に微細になると、局所的な亀裂の発生の起点が高密度となり、局部変形能を低下させやすくなるので、その平均粒径を2.0μm以上にすることが好ましい。
【0042】
なお、上記した相以外の相は、主にフェライト相であることが好ましい。これ以外に、残留オーステナイト相、パーライト相を含んでも、本発明の効果が損なわれることはない。
【0043】
ここで、各相の面積率とは、観察視野面積に占める各相の面積の割合のことである。本発明のような鋼板においては、3次元的に組織が均一であるため体積率と同値と扱って良い。こうした各相の面積率、最近接間距離や焼戻しマルテンサイト相の平均粒径は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査電子顕微鏡)で2000倍の倍率で10視野観察し、市販の画像処理ソフト(例えばMedia Cybernetics社のImage-Pro)を用いて求めることができる。焼戻しされていないマルテンサイト相と焼戻しマルテンサイト相の判別は、ナイタール腐食後の表面形態により行うことができる。すなわち、焼戻しされていないマルテンサイト相は平滑な表面を呈し、焼戻しマルテンサイト相は結晶粒内に腐食による構造(凹凸)が観察される。この方法により結晶粒単位で焼戻しされていないマルテンサイト相と焼戻しマルテンサイト相を同定する。具体的には、SEMにて撮影したミクロ組織写真より、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の相を同定し、画像処理ソフトにより、各相毎に2値化処理を行ってそれぞれの相の面積率を求めた。
【0044】
また、焼戻しマルテンサイト相の平均粒径は個々の結晶粒の円相当径を導出し、これらを平均して求めた。
【0045】
焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離は、焼戻しマルテンサイト相の面積率を個々の焼戻しマルテンサイト粒の面積率で除することで単位体積あたりの焼戻しマルテンサイト結晶粒の個数を求めて、焼戻しマルテンサイトの結晶粒1個あたりが占める平均の占有面積を算出し、その立方根をもって求めることができる。すなわち、下記の式により算出した。
LTM = ( dM / 2 ) × ( 4π/ 3f )1/3
LTM:最近接間距離
dM:焼戻しマルテンサイト平均粒径
f:焼戻しマルテンサイト面積率
3)製造条件
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上述したように、例えば、上記の成分組成を有する鋼板を、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱後、5℃/s未満の平均加熱速度で(Ac3-50)℃以上の温度域に加熱し、引き続き(Ac3-50)℃〜(Ac3+50)℃の温度域で30〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域まで1次冷却する条件で焼鈍後、溶融亜鉛めっき処理を施し、200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度で2次冷却する方法によって製造できる。
【0046】
焼鈍時の加熱条件1:5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱
5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱することにより、回復や再結晶フェライト相の生成を抑制しながらオーステナイト変態を起こさせることができるため、オーステナイト相の割合が増加し、最終的にマルテンサイト相の所定の面積率が得られやすくなる。またマルテンサイト相を均一に分散できるため、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離を低減することができる。その結果、必要な強度を確保し穴拡げ性を向上しながら高速変形での吸収エネルギーを高めることができる。Ac1変態点までの平均加熱速度が5℃/s未満の場合や加熱温度がAc1変態点に満たない場合には、回復、再結晶の進行が著しく、必要な焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの面積率と所定の焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離を達成することが困難になる。
【0047】
焼鈍時の加熱条件2: 5℃/s未満の平均加熱速度で(Ac3-50)℃以上に加熱
所定のマルテンサイト相の面積率や粒径を達成するには、加熱から均熱においてオーステナイト相を適正なサイズまで成長させる必要がある。しかし、高温域での平均加熱速度が大きい場合には、オーステナイト相が微細に分散するため個々のオーステナイト相が成長することができなくなり、最終組織での焼戻しマルテンサイト相を所定の面積率で得ることが困難になる。このため、(Ac3-50)℃以上の高温域への平均加熱速度を5℃/s未満とする。加熱温度が低い場合には、加熱速度を低くしたとしても、未変態オースナイトが成長しないため所定の焼戻しマルテンサイトの面積率を得ることができない。このため、加熱温度は(Ac3-50)℃以上とする。
【0048】
焼鈍時の均熱条件: (Ac3-50)℃以上(Ac3+50)℃以下の温度域で30〜500s均熱
均熱時にオーステナイト相の割合を高めることにより、オーステナイト相中のC量が低減してMs点が上昇し、溶融亜鉛めっき処理後の冷却過程での自己焼戻し効果が得られるとともに、焼戻しによりマルテンサイト相の硬度が低減してもなお十分な強度の達成が可能となり、980MPa以上のTSと優れた穴拡げ性および高い高速変形時の吸収エネルギーを得ることができる。しかし、均熱温度が(Ac3+50)℃を超えると、未変態オーステナイトの結晶粒径が粗大化し、所定の最近接間距離を満足することができない。また、均熱時間が30sに満たない場合は、未変態オーステナイトが充分に成長しないため、所定のマルテンサイト相の面積率や粒径を得ることができない。一方、均熱時間が500sを超える場合は、効果が飽和するとともに、生産性を阻害する。
【0049】
焼鈍時の冷却条件:均熱温度から3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域まで冷却(1次冷却)
均熱後は、均熱温度から3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域(冷却停止温度)まで冷却する必要があるが、これは、平均冷却速度が3℃/s未満だと、冷却中にフェライト変態が進行して充分な面積率の未変態オーステナイト相が得られず、また未変態オーステナイト相中へのCの濃化が進み自己焼戻し効果が得られにくく、最終組織での焼戻しマルテンサイト相を所定の面積率と最近接間距離で得ることが困難になり、穴拡げ性の低下と高速変形時のエネルギー吸収能の低下を招く。平均冷却速度が30℃/sを超えると、フェライト変態抑制の効果が飽和するとともに、一般的な生産設備ではこれを実現することが困難となる。また、冷却停止温度を600℃以下としたのは、600℃を超えると、冷却中のフェライト相の生成が著しく、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を所定の面積率で得ることが困難になるためである。
【0050】
焼鈍後は、通常の条件で溶融亜鉛めっき処理されるが、その前に次のような熱処理を行うことが好ましい。
【0051】
焼鈍後の熱処理条件:300〜550℃の温度域で20〜150s熱処理
焼鈍後に、300〜550℃の温度域で20〜150s熱処理することで、自己焼戻しによるマルテンサイト相の硬度の低下をより促進させたり、またはベイナイト相を現出することにより、各相の間の硬度差をより効果的に低減させて穴拡げ性および高速変形時のエネルギー吸収能の一層の改善を図ることができる。熱処理温度が300℃未満の場合や、熱処理時間が20s未満の場合には、こうした効果が小さい。一方、熱処理温度が550℃を超える場合には、フェライト相やパーライト相の変態が進行したり、Cの濃化が過剰となりマルテンサイトの自己焼戻しを阻害するため、最終組織で所定の焼戻しマルテンサイト分率を得ることが困難となる。熱処理時間が150sを超える場合には、その効果が飽和するとともに生産性を阻害する。
【0052】
溶融亜鉛めっき後の冷却条件:200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度となるように冷却(2次冷却)
溶融亜鉛めっきを施したのち、200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度となるように2次冷却する必要があるが、これは、自己焼戻しが生ずる温度域での滞留時間を確保するためである。400℃を超える温度ではマルテンサイト変態が充分に生じておらず、200℃未満の温度では元素の拡散が行われないため、平均冷却速度を15℃/s以下にしたとしても自己焼戻しが充分に進行しない。一方、平均冷却速度が15℃/sを超える場合には、マルテンサイト変態が生じたとしても自己焼戻しが充分に進行するのに必要な時間が確保できない。
【0053】
また、亜鉛めっきの合金化処理を施す場合は、焼鈍後に上記300〜550℃の温度域での熱処理を行うか否かにかかわらず、溶融亜鉛めっき処理を施した後、2次冷却前に450〜600℃の温度域で亜鉛めっきを合金化処理することができる。450〜600℃の温度域で合金化処理することにより、めっき中のFe濃度は8〜12%となり、めっきの密着性や塗装後の耐食性が向上する。450℃未満では、合金化が十分に進行せず、犠牲防食作用の低下や摺動性の低下を招き、600℃を超えると、合金化が進行し過ぎてパウダリング性が低下する。またフェライト相やパーライト相などが多量に生成して高強度化が図れない。
【0054】
その他の製造方法の条件は、特に限定しないが、以下の条件で行うのが好ましい。
【0055】
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板に用いられる焼鈍前の鋼板は、上記成分組成を有するスラブを、熱間圧延後、所望の板厚まで冷間圧延して製造される。また、生産性の観点から、高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき前の焼鈍、熱処理、溶融亜鉛めっき、亜鉛めっきの合金化処理などの一連の処理が可能な連続溶融亜鉛めっきラインで製造されるのが好ましい。
【0056】
スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法により製造することもできる。スラブを熱間圧延する時、スラブは再加熱されるが、圧延荷重の増大を防止するため、加熱温度は1150℃以上にすることが好ましい。また、スケールロスの増大や燃料原単位の増加を防止するため、加熱温度の上限は1300℃とすることが好ましい。
【0057】
熱間圧延は、粗圧延と仕上圧延により行われるが、仕上圧延は、冷間圧延・焼鈍後の成形性の低下を防ぐために、Ar3変態点以上の仕上温度で行うことが好ましい。また、結晶粒の粗大化による組織の不均一やスケール欠陥の発生を防止するため、仕上温度は950℃以下とすることが好ましい。
【0058】
熱間圧延後の鋼板は、スケール欠陥の防止や良好な形状性の確保の観点から、500〜650℃の巻取温度で巻取ることが好ましい。
【0059】
巻取り後の鋼板は、スケールを酸洗などにより除去した後、ポリゴナルフェライト相を効率的に生成させるため、圧下率40%以上で冷間圧延されることが好ましい。
【0060】
溶融亜鉛めっきには、Al量を0.10〜0.20%含む亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。また、めっき後は、めっきの目付け量を調整するために、ワイピングを行うことができる。
【実施例】
【0061】
表1に示す成分組成の鋼No.A〜Mを真空溶解炉により溶製し、分塊圧延でシートバースラブとした。これらのシートバースラブを、1200℃に加熱後、850〜920℃(Ar3変態点以上)の仕上温度で熱間圧延を行い、600℃の巻取処理を行った。次いで、酸洗後、表2に示す板厚に圧下率50%で冷間圧延し、赤外加熱炉で表2に示す焼鈍条件で焼鈍後、1次冷却を施し、一部の鋼板に対しては表2に示す条件で熱処理を施した後、0.13%のAlを含む475℃の亜鉛めっき浴中に3s浸漬し、付着量45g/m2の亜鉛めっきを形成し、表2に示す温度で合金化処理を行い、引続いて200℃〜400℃の温度域を表2に示す平均冷却速度となるように2次冷却を施して、亜鉛めっき鋼板No.1〜23を作製した。なお、表2に示すように、一部の亜鉛めっき鋼板では、合金化処理を行わなかった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
そして、得られた亜鉛めっき鋼板について、上記の方法で、フェライト相の面積率、焼戻しマルテンサイト相の面積率、ベイナイト相の面積率、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相の面積の総和、焼戻しマルテンサイト相の平均粒径および最近接間距離を、発明を実施するための形態に記載した方法で求めた。また、圧延方向と直角方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して、20mm/minのクロスヘッド速度で引張試験を行って、TSおよび全伸びElを測定した。さらに、100mm×100mmの試験片を採取し、JFST 1001(鉄連規格)に準拠して穴拡げ試験を3回行って平均の穴拡げ率λ(%)を求め、穴拡げ性を評価した。高速変形特性は、歪速度が2000/sの条件で高速引張試験機で試験を実施して応力−歪曲線を測定し、公称歪みで15%までの吸収エネルギーを求め、これをTSで除した値で評価した。なお、高速引張試験は、鉄と鋼、vol.83(1997)p.748に記載された方法に準じて行った。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
本発明例の亜鉛めっき鋼板は、いずれもTSが980MPa以上であり、穴拡げ率λが40%以上、TS×El≧18000MPa・%で成形性に優れ、さらに歪み量が15%までの吸収エネルギーをTSで除した値が0.14以上で高速変形時のエネルギー吸収能に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、980MPa以上のTSを有し、かつ穴拡げ性などの成形性が良好で、かつ高速変形時のエネルギー吸収能に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を自動車構造部材に適用することにより、より一層の乗員の安全性確保や大幅な車体軽量化による燃費改善を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分組成は、質量%でC:0.03〜0.13%、Si:1.0〜2.0%、Mn:2.4〜3.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%、B:0.0003〜0.01%を含有し、かつ、C、Mn、Bの含有量が下式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織は、焼戻しマルテンサイト相とベイナイト相を合計の面積率で30%以上(ベイナイト相がないときは焼戻しマルテンサイト相を面積率で30%以上)含有し、かつ、焼戻しマルテンサイト相の最近接間距離が10μm以下であることを特徴とする成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(%Mn)+1000×(%B) ≧ 35×(%C) …(1)
【請求項2】
前記焼戻しマルテンサイト相の平均粒径が2.0μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.0005〜0.1%、Nb:0.0005〜0.05%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
高強度溶融亜鉛めっき鋼板が高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1、3〜5のいずれかに記載の成分組成を有する鋼板を、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱したのち、5℃/s未満の平均加熱速度で(Ac3-50)℃以上に加熱し、引続いて(Ac3-50)℃以上(Ac3+50)℃以下の温度域で30〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で600℃以下の温度域まで1次冷却し、次いで、溶融亜鉛めっきを施したのち、200℃〜400℃の温度域を15℃/s以下の平均冷却速度となるように2次冷却することを特徴とする成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記1次冷却後、前記溶融亜鉛めっきを施す前に、300〜550℃の温度域で20〜150s保持することを特徴とする請求項7に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記溶融亜鉛めっきを施した後、前記2次冷却前に450〜600℃の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする請求項7または8に記載の成形性および耐衝撃性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2011−225915(P2011−225915A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94667(P2010−94667)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】