説明

成形方法

【課題】成形性を改善するとともに成形効率を向上した1枚シートを利用した成形方法を提供する。
【解決手段】溶融状態の熱可塑性樹脂製材料のシートを一対の分割形式の金型間に位置決めする段階と、一方の金型32Bのキャビティと該キャビティに対向するシートの一方の表面との間に第1密閉空間を形成する段階と、一方の金型のキャビティの側から該第1密閉空間を通じてシートを吸引することにより、第1賦形する段階と、環状突起部の先端に相当するシートの環状部分が他方の金型32Aのキャビティに当たるまで、他方の金型を一方の金型に向かって移動させて一対の分割形式の金型を型締めする段階と、前記型締段階により、他方の金型のキャビティと該キャビティに対向するシートの他方の表面との間に形成された第2密閉空間を通じて、他方の金型の該キャビティの側からシートを加圧することにより、第2賦形する段階と、を有することを特徴とする成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形方法に関し、より詳細には、成形性を改善するとともに成形効率を向上した1枚シートを利用した成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空吸引方式により1枚の樹脂製シートを用いて成形する技術が、従来から用いられている。
特許文献1は、1枚の熱可塑性樹脂製シートを用いて電気音響変換器用支持系部品を真空成形する点を開示し、より詳細には、加熱したシートを真空成形用金型に載置し、真空引きで真空成形用金型に張り付け、薄肉のシートを成形する。
特許文献2は、基材の表面に表皮材を貼着して真空成形する点を開示し、より詳細には、下型に基材を載置し、上型と下型との間に表皮材を搬入したうえで、両型を型閉じして、表皮材を基材に貼着し、そのうえで下型側から真空吸引して成形を行う。
特許文献3は、熱可塑性樹脂フィルムを用いて自動車の各種部品、家電製品、日用品等を真空成形する点を開示し、より詳細には、加熱した熱可塑性樹脂フィルムにより真空賦形型を覆い、熱可塑性樹脂フィルムと真空賦形型の外周との間にシール面ができるように、押さえボックスと真空賦形型との間に熱可塑性樹脂フィルムを挟み込み、真空賦形型により真空吸引する。
【0003】
これらの特許文献に開示された成形技術によれば、フィルムあるいはシートを用いて真空成形することが可能であるが、以下のような技術的問題点が存する。
第1に、上型および下型を用いる特許文献2、真空賦形型および押さえボックスを用いる特許文献3の場合、真空成形を行う前に金型の型締をしており、それに起因して、両金型により挟み込まれたフィルムあるいはシートの周縁部まわりの成形性が劣化する点である。
より詳細には、型締した状態で真空成形すると、両金型により挟み込まれたフィルムあるいはシートの周縁部は固定されていることから、フィルムあるいはシートが引き伸ばされ、それに伴い周縁部近傍のフィルムあるいはシートがキャビティ側に引きずり込まれてしまい、所望の成形性を得ることが困難である。
特に、真空吸引によれば、高圧によりフィルムあるいはシートをキャビティに対して押圧することができないため、きめの細かいシボ模様等をシート表面に賦形することが困難であり、成形性に制約が生じる。
【0004】
第2に、特許文献1ないし特許文献3いずれも、真空成形後にバリの部分を別途トリミング加工しているため、全体の成形効率が低下する点である。
より詳細には、特許文献1および特許文献3によれば、真空成形後に金型から取り出して冷却させた成形品を後工程によりトリミングしており、一方特許文献2によれば、真空成形後にいったん型開きし、切断刃を装着したうえで、再度型締力を利用してトリミングを行っている。
【特許文献1】特開2003−78998
【特許文献2】特開2004−209839
【特許文献3】特開2001−138389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、成形性を改善するとともに成形効率を向上した1枚シートを利用した成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明の成形方法は、
1枚のシートを用いる成形方法であって、
一対の分割形式の金型の一方の金型のキャビティの周縁に設けた環状突起部からはみ出す形態で、溶融状態の熱可塑性樹脂製材料のシートを一対の分割形式の金型間に位置決めする段階と、
一方の金型のキャビティと該キャビティに対向するシートの一方の表面との間に第1密閉空間を形成する段階と、
一方の金型のキャビティの側から該第1密閉空間を通じてシートを吸引することにより、シートを該キャビティに押し当てて、第1賦形する段階と、
環状突起部の先端に相当するシートの環状部分が他方の金型のキャビティに当たるまで、他方の金型と一方の金型とが近接するように移動させて一対の分割形式の金型を型締めする段階と、
前記型締段階により、他方の金型のキャビティと該キャビティに対向するシートの他方の表面との間に形成された第2密閉空間を通じて、他方の金型の該キャビティの側からシートを加圧することにより、シートを一方の金型のキャビティに押し当てて、第2賦形する段階と、を有する構成としている。
【0007】
以上の構成を有する成形方法によれば、一対の分割形式の金型の型締め前に、シートを吸引して第1賦形することから、シートの周縁が一対の分割形式の金型により挟み込まれた状態で吸引をしない点において、シートの周縁の成形性を改善することが可能であり、さらに一対の分割形式の金型の型締め後には、第1賦形によりある程度成形してキャビティの表面になじませたシートを対象に、シートを加圧して第2賦形することから、吸引に比べてより高圧で成形可能であることと相まって、きめの細かいシボ模様等をシート表面に賦形することが可能である。その際、一対の分割形式の金型の型締めにより、一方の金型のキャビティの周縁に設けた環状突起部がシートを他方の金型のキャビティに向かって押し付けることから、環状突起部の先端に相当するシートの環状部分が少なくとも薄肉化されるので、別途切断装置、治具を用いることなしに、この薄肉部を利用して環状部分の外側のバリの部分と環状部分の内側の製品部分とを切り離すことが可能であり、成形効率の向上が達成可能である。
【0008】
また、前記型締め段階は、環状突起部の先端により環状突起部の先端に相当するシートの環状部分を薄肉化する段階を有し、
前記第2賦形段階後に、シートの薄肉部を切断する段階をさらに有するのがよい。
さらに、前記型締め段階は、環状突起部の先端により環状突起部の先端に相当するシートの環状部分を押し切って、切り離す段階を有するのでもよい。
さらにまた、前記環状突起部は、前記環状突起部が設けられた一方の金型に対して型締め方向に進退自在に設けられ、
前記環状突起部の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの薄肉部の厚み調整を行うのがよい。
加えて、前記環状突起部は、前記環状突起部が設けられた一方の金型に対して型締め方向に進退自在に設けられ、
前記環状突起部の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの切り離し加減を調整するのがよい。
【0009】
さらに、前記第1密閉空間の形成段階は、一方の金型の環状突起部の先端がシートの一方の表面に当たるまで、一方の金型を他方の金型に向かって移動させる段階を有するのがよい。
さらにまた、前記第1密閉空間の形成段階は、一方の金型の周縁に対して型締め方向に進退自在に外嵌する環状外枠を他方の金型に向かって、シートの一方の表面に当たるまで移動させる段階を有するのがよい。
加えて、前記第2賦形段階は、第2密閉空間を通じてシートを加圧しつつ、第1密閉空間を通じてシートを吸引するのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
本実施形態では、樹脂成形品として、単一のシート状の成形品を対象としている。
まず、本発明の成形方法を実施するための成形装置について、以下に説明する。
図1に示すように、樹脂成形品の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態のシート状パリソンPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態のシート状パリソンPを成形するようにしている。
【0011】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24室に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて連続的なシート状のシート状パリソンPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、シート状のシート状パリソンPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0012】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、シート状パリソンPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、シート状パリソンPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、シート状パリソンPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm以上、より好ましくは150kg/時cm以上である。
【0013】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれたシート状パリソンPを下方に送り出すことで、シート状パリソンPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出されるシート状パリソンPの押出速度と一対のローラー30によるシート状パリソンPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0014】
図1に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された連続シート状のシート状パリソンPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、連続シート状のシート状パリソンPの厚みを変更することが可能である。
【0015】
一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図1に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出されるシート状パリソンPに関して、線対称となるように配置される。
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべきシート状パリソンPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間にシート状パリソンPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転によりシート状パリソンPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、シート状パリソンPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎてもシート状パリソンPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
【0016】
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態のシート状パリソンPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0017】
図1に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態のシート状パリソンPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、溶融状態のシート状パリソンPの周縁にパーティングラインPLが形成されるようにしている。
なお、ピンチオフ部118について、後に説明するように、対向する金型32A,Bを型締することにより、ピンチオフ部118の先端に相当するシート状パリソンPの環状部分を挟み込んで薄肉化可能である限り、金型32A、金型32Bのいずれか一方にのみ設けてもよい。
【0018】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれの外周部には、型枠33A,Bが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33A,Bそれぞれが、金型32A,Bに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置されたシート状パリソンPの一方の側面に当接可能であり、型枠33Bは、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置されたシート状パリソンPの他方の側面に当接可能である。
【0019】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、溶融状態の連続シート状パリソンPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。なお、開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置は、溶融状態の連続シート状パリソンPの中心線の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
【0020】
図4に示すように、一方の分割金型32の内部には、真空吸引室120が設けられ、真空吸引室120は吸引穴122を介してキャビティ116に連通し、真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引することにより、キャビティ116に向かってシート状パリソンPを吸着させて、キャビティ116の外表面に沿った形状に賦形するようにしている。
【0021】
シート状パリソンPは、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、シート状パリソンPは、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0022】
以上の構成を有する樹脂成形品の成形装置10を利用した成形方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
まず、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ24内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0023】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔をシート状パリソンPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態のシート状パリソンPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔をシート状パリソンPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
【0024】
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めてシート状パリソンPを挟み込み、ローラーの回転によりシート状パリソンPを下方に送り出す。
【0025】
次いで、図2に示すように、押出方向に一様な厚みを形成したシート状パリソンPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32間に配置する。
次いで、図3に示すように、型枠33Bを金型32Bに対してシート状パリソンPに向かって、金型32Bに対向するシート状パリソンPの表面に当たるまで移動させる。
次いで、図4に示すように、金型32Bのキャビティ116、型枠33Bの内周面、および金型32Bに対向するシート状パリソンPの表面により構成された第1密閉空間200を通じて、真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引することにより、シート状パリソンPをキャビティ116に対して押し付けて、キャビティ116の凹凸表面に沿った形状にシート状パリソンPを賦形する。これにより、後に説明する金型32の型締後の本賦形に対する予備賦形として、シート状パリソンPをキャビティ116の凹凸表面に沿ってある程度なじませることが可能であるとともに、従来のように、金型を型締した状態で吸引しないことから、ピンチオフ部まわりの成形性劣化を防止することが可能である。
次いで、図5に示すように、分割金型32を型締めし、図6に示すように、金型32Aのピンチオフ部118Aと金型32Bのピンチオフ部118Bとにより、シート状パリソンPを挟み込んで、薄肉部202を形成し、さらにピンチオフ部118に相当するシート状パリソンPの環状部分を押し切り、環状部分の外側のバリの部分と環状部分の内側の製品部分とを切り離す。
この場合、ピンチオフ部118をピンチオフ部118が設けられた金型32に対して型締め方向に進退自在に設け、ピンチオフ部118の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの切り離し加減を調整してもよい。特に、成形品を繰り返し成形する場合、成形品からのバリの切り離し具合を見ながら、ピンチオフ部118の型締め方向の進退量を調整してもよい。
次いで、図5に示すように、金型32Aと金型32Aに対向するシート状パリソンPの表面とにより形成された第2密閉空間204を通じて、金型32Aの側からシート状パリソンPを加圧するとともに、第1密閉空間200を通じて、金型32Bの側からシート樹脂を吸引する。
これにより、金型32Bに対向するシート樹脂の表面に対して、きめの細かいシボ模様等を賦形することが可能である。
【0026】
次いで、図7に示すように、分割金型32を型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、これで成形が完了する。
一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の樹脂成形品を次々に成形することが可能である。
以上のように、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態のシート状パリソンPとして押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出されたシート状パリソンPを金型を用いて成形することが可能である。
【0027】
この場合、一対の分割形式の金型の型締め前に、シートを吸引して第1賦形することから、シートの周縁が一対の分割形式の金型により挟み込まれた状態で吸引をしない点において、シートの周縁の成形性を改善することが可能であり、さらに一対の分割形式の金型の型締め後には、第1賦形によりある程度成形してキャビティの表面になじませたシートを対象に、シートを加圧して第2賦形することから、吸引に比べてより高圧で成形可能であることと相まって、きめの細かいシボ模様等をシート表面に賦形することが可能である。その際、一対の分割形式の金型の型締めにより、一方の金型のキャビティの周縁に設けた環状突起部がシートを他方の金型のキャビティに向かって押し付けることから、環状突起部の先端に相当するシートの環状部分が少なくとも薄肉化されるので、別途切断装置、治具を用いることなしに、この薄肉部を利用して環状部分の外側のバリの部分と環状部分の内側の製品部分とを切り離すことが可能であり、成形効率の向上が達成可能である。
【0028】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは改変が可能である。たとえば、本実施形態において、金型の型締を通じて環状突起部の先端によりシート状パリソンPを押し切って、切り離すものとして説明したが、それに限定されることなく、金型の型締を通じて環状突起部の先端によりシート状パリソンPを薄肉化し、シート状パリソンPの加圧による成形後、特に金型の型開き後にシート状パリソンPに環状に形成された薄肉部を用いて、切断装置、治具を用いることなく、手作業で効率的にバリを切り離してもよい。この場合、環状突起部であるピンチオフ部をピンチオフ部が設けられた金型に対して型締め方向に進退自在に設け、ピンチオフ部の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの薄肉部の厚み調整をしてもよい。
また、本実施形態において、シート状パリソンを対象に成形を行うものとして説明したが、それに限定されることなく、予め押出成形などにより得られたシートを適切な大きさに裁断後、ヒーター等で加熱し溶融状態とした溶融状態の熱可塑性樹脂製材料のシートを対象にするのでもよい。
また、本実施形態において、シート状パリソンPを吸引する場合に一方の金型の環状外枠を他方の金型に向かって、シートの一方の表面に当たるまで移動させるものとして説明したが、それに限定されることなく、一方の金型の環状突起部の先端がシートの一方の表面に当たるまで、一方の金型自体を他方の金型に向かって移動させてもよい。
さらに、本実施形態において、金型の型締後に、シートを加圧しつつ吸引する場合として説明したが、それに限定されることなく、シートを加圧するだけでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明の実施形態に係る成形装置の概略側面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る成形装置において、シート状パリソンPが分割金型の間に配置された状態を示す図1と同様な図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の外枠をシート状パリソンPに向かって移動させる状態を示す図1と同様な図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る成形装置において、シート状パリソンPを吸引する状態を示す図1と同様な図である。
【図5】 本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型締めした状態を示す図1と同様な図である。
【図6】 本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の型締めにより、シート状パリソンPを薄肉化する状態を示すピンチオフ部まわりの部分図である。
【図7】 本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す図1と同様な図である。
【符号の説明】
【0030】
P シート状パリソン
PL パーティングライン
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
22 油圧モーター
24 アキュムレータ
26 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
34 押出スリット
116 キャビティ
200 第1密閉空間
202 薄肉部
204 第2密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシートを用いる成形方法であって、
一対の分割形式の金型の一方の金型のキャビティの周縁に設けた環状突起部からはみ出す形態で、溶融状態の熱可塑性樹脂製材料のシートを一対の分割形式の金型間に位置決めする段階と、
一方の金型のキャビティと該キャビティに対向するシートの一方の表面との間に第1密閉空間を形成する段階と、
一方の金型のキャビティの側から該第1密閉空間を通じてシートを吸引することにより、シートを該キャビティに押し当てて、第1賦形する段階と、
環状突起部の先端に相当するシートの環状部分が他方の金型のキャビティに当たるまで、他方の金型と一方の金型とが近接するように移動させて一対の分割形式の金型を型締めする段階と、
前記型締段階により、他方の金型のキャビティと該キャビティに対向するシートの他方の表面との間に形成された第2密閉空間を通じて、他方の金型の該キャビティの側からシートを加圧することにより、シートを一方の金型のキャビティに押し当てて、第2賦形する段階と、
を有することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記型締め段階は、環状突起部の先端により環状突起部の先端に相当するシートの環状部分を薄肉化する段階を有し、
前記第2賦形段階後に、シートの薄肉部を切断する段階をさらに有する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記型締め段階は、環状突起部の先端により環状突起部の先端に相当するシートの環状部分を押し切って、切り離す段階を有する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項4】
前記環状突起部は、前記環状突起部が設けられた一方の金型に対して型締め方向に進退自在に設けられ、
前記環状突起部の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの薄肉部の厚み調整を行う、請求項2に記載の成形方法。
【請求項5】
前記環状突起部は、前記環状突起部が設けられた一方の金型に対して型締め方向に進退自在に設けられ、
前記環状突起部の型締め方向の進退量を調整することにより、シートの切り離し加減を調整する、請求項3に記載の成形方法。
【請求項6】
前記第1密閉空間の形成段階は、一方の金型の環状突起部の先端がシートの一方の表面に当たるまで、一方の金型を他方の金型に向かって移動させる段階を有する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項7】
前記第1密閉空間の形成段階は、一方の金型の周縁に対して型締め方向に進退自在に外嵌する環状外枠を他方の金型に向かって、シートの一方の表面に当たるまで移動させる段階を有する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項8】
前記第2賦形段階は、第2密閉空間を通じてシートを加圧しつつ、第1密閉空間を通じてシートを吸引する、請求項1に記載の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73423(P2011−73423A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242835(P2009−242835)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】