説明

成形材料の成形方法

【課題】成形加工機を使用して成形材料を成形するとき、成形材料1から成形材料2までの置換が容易である成形材料の成形方法の提供。
【解決手段】成形材料1を使用して成形加工機により成形した後、成形材料2を使用して同じ成形加工機により成形するとき、洗浄工程1と洗浄工程2をこの順序で実施して成形加工機内に残留する成形材料1を除去した後で成形材料2を使用して成形する成形材料の成形方法であって、洗浄工程1が、成形材料1と界面活性剤を含む洗浄剤組成物1で成形加工機を洗浄する工程であり、洗浄工程2が、成形材料2と界面活性剤を含む洗浄剤組成物2で前記成形加工機を洗浄する工程である、成形材料の成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機、射出成形機等の成形加工機を使用した成形材料の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、射出成形品、押出成形品、フィルム等に幅広く利用されている。これらのプラスチック成形品は多品種少量生産の傾向にあり、品種の切替え頻度が多くなっているため、品種切替え時の成形機内の洗浄が品質管理上重要となってきている。熱可塑性樹脂の成形加工において、品種切替えの際における成形機の洗浄法として、様々な洗浄剤で洗浄する方法が知られている(特許文献1〜6)。
【0003】
しかし、これらの洗浄剤による洗浄法の場合も、洗浄後に前剤が残留して焼けや成形不良の原因になったり、また完全に前剤(先行樹脂)を排出できても洗浄剤が残留し、次の樹脂(後続樹脂)への置換に多量の樹脂と長い時間を必要としたりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−119458号公報
【特許文献2】特開2000−119464号公報
【特許文献3】特開2002−001734号公報
【特許文献4】特開2001−348600号公報
【特許文献5】特開2009−107160号公報
【特許文献6】特開2005−219398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より短い時間で、かつ使用する洗浄材料の量も減少させて先行材料から後続材料への置換をすることができる、成形加工機を使用した成形材料の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、課題の解決手段として、
成形材料1を使用して成形加工機により成形した後、成形材料2を使用して同じ成形加工機により成形するとき、
洗浄工程1と洗浄工程2をこの順序で実施して成形加工機内に残留する成形材料1を除去した後で成形材料2を使用して成形する成形材料の成形方法であって、
洗浄工程1が、成形材料1と界面活性剤を含む洗浄剤組成物1で成形加工機を洗浄する工程であり、
洗浄工程2が、成形材料2と界面活性剤を含む洗浄剤組成物2で前記成形加工機を洗浄する工程である、成形材料の成形方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形材料の成形方法は、成形材料1を使用して成形加工機により成形した後、成形材料2を使用して同じ成形加工機により成形するとき、洗浄工程1と洗浄工程2を実施することで、より短時間で、かつより少ない洗浄剤使用量で、成形加工機内の残留する成形材料1を除去して、成形材料1から成形材料2への置換ができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、成形材料1を使用して成形加工機により成形した後、成形材料2を使用して同じ成形加工機により成形するときにおいて、成形加工機内に残留する成形材料1を除去して(即ち、成形材料2中に成形材料1が混入しないようにして)、成形材料2を成形する方法であり、洗浄工程1と洗浄工程2を含む成形方法である。
【0009】
本発明において成形材料1と成形材料2は、互いに異なる材料であることを意味するものであり、それぞれが特定の成形材料を示すものではない。
本発明の成形方法で使用できる成形材料1と成形材料2は、押出機、射出成形機等で成形できるものであればよく、公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但しプレポリマーの状態のもの)等を挙げることができる。
【0010】
<洗浄工程1>
洗浄工程1は、成形材料1を成形加工した成形加工を、成形材料1と界面活性剤を含む洗浄剤組成物1で洗浄する工程である。
この洗浄は、例えば射出成形機を洗浄するときには、金型を使用しないほかは通常の洗浄と同様にして、計量した樹脂をノズルから排出する方法を適用することができ、あるいは、通常の樹脂の成形と同様にして射出成形する方法を適用しても良い。
【0011】
洗浄剤組成物1中に含まれる界面活性剤は、公知の成形加工機の洗浄剤に含有されているものを挙げることができ、例えば、特開2006−335913号公報、特開2010−95625号公報、特開2011−46808号公報に記載されているアニオン界面活性剤が好ましい。
【0012】
アニオン界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、炭素数8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩類、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0013】
洗浄剤組成物1中に含まれる界面活性剤は、そのまま成形材料1と混合することもできるが、作業性を高めるため、成形材料1もしくは成形材料1と相容性の良い材料をマトリックス成分とするマスターバッチとして使用することが好ましい。
マスターバッチとするときには、成形材料1の100質量部に対して界面活性剤を10〜50質量部配合することができる。
【0014】
洗浄剤組成物1中の成形材料1と界面活性剤の割合は、成形材料1の100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
なお、界面活性剤として成形材料1を含むマスターバッチを使用するときには、洗浄剤組成物1中の成形材料1の量は、前記マスターバッチに含まれている成形材料1の量も含めて計算する。
【0015】
洗浄剤組成物1は、取扱性が良いことから、成形材料1からなる粒状物と、成形材料1と界面活性剤を含むマスターバッチからなる粒状物との混合物であることが好ましい。
ここでいう「粒状物」は、球形、円柱形乃至は不定形の成形物(ペレット)であり、球形の場合には、粒径が1〜5mm程度のものが好ましい。
【0016】
洗浄剤組成物1には、必要に応じて、例えば、特開2006−335913号公報、特開2010−95625号公報、特開2011−46808号公報に記載されている、無機フィラー、ルキレングリコール脂肪酸エステル、有機燐化合物、多価アルコール、金属石鹸から選ばれるものを配合することができる。
【0017】
<洗浄工程2>
洗浄工程2は、洗浄工程1で洗浄した後、成形材料2と界面活性剤を含む洗浄剤組成物2でさらに成形加工機を洗浄する工程である。
この洗浄は、例えば射出成形機を洗浄するときには、金型を使用しないほかは通常の洗浄と同様にして、計量した樹脂をノズルから排出する方法を適用することができ、あるいは、通常の樹脂の成形と同様にして射出成形する方法を適用しても良い。
【0018】
洗浄剤組成物2中に含まれる界面活性剤は、洗浄剤組成物1で例示したものから選択使用することができ、洗浄剤組成物1と同じものを使用することができるが、異なるものでもよい。
【0019】
洗浄剤組成物2中に含まれる界面活性剤は、そのまま成形材料2と混合することもできるが、分散性を高めるためと作業性を高めるため、成形材料2もしくは成形材料1と相容性の良い材料をマトリックス成分とするマスターバッチとして使用することが好ましい。
マスターバッチとするときには、成形材料2の100質量部に対して界面活性剤を10〜50質量部配合することができる。
【0020】
洗浄剤組成物2中の成形材料2と界面活性剤の割合は、成形材料2の100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
なお、界面活性剤として成形材料2を含むマスターバッチを使用するときには、洗浄剤組成物2中の成形材料2の量は、前記マスターバッチに含まれている成形材料2の量も含めて計算する。
【0021】
洗浄剤組成物2は、取扱性が良いことから、成形材料2からなる粒状物と、成形材料2と界面活性剤を含むマスターバッチからなる粒状物との混合物であることが好ましい。
ここでいう「粒状物」は、球形、円柱形乃至は不定形の成形物(ペレット)であり、球形の場合には、粒径が1〜5mm程度のものが好ましい。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物1及び洗浄剤組成物2における成形材料1と成形材料2の組み合わせ例としては、
成形材料1がスチレン系樹脂から選ばれるものであるとき、成形材料2がオレフィン系樹脂から選ばれるものであり、
成形材料1がオレフィン系樹脂から選ばれるものであるとき、成形材料2がスチレン系樹脂から選ばれるものにすることができる。
【0023】
さらに本発明の洗浄剤組成物1及び洗浄剤組成物2における成形材料1と成形材料2の組み合わせの好ましい例としては、
成形材料1がAS樹脂及びABS樹脂から選ばれるものであるとき、成形材料2がポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂から選ばれるものであり、
成形材料1がポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂から選ばれるものであるとき、成形材料2がAS樹脂及びABS樹脂から選ばれるものにすることができる。
【0024】
本発明の製造方法の洗浄工程1と洗浄工程2に移行するときには、洗浄工程1において成形加工機内に残留する成形材料1を完全に除去するのではなく、未だ成形加工機内に成形材料1が残留している状態(成形材料1に完全に置換されていない状態)で、洗浄工程2に移行することが望ましい。
成形材料1が完全に除去されるまで洗浄工程1を実施すると、多量の樹脂と長い時間を無駄にすることになるので好ましくない。
しかし、未だ成形加工機内に成形材料1が残留している状態で、洗浄工程2に移行すると、後続樹脂(成形材料2)への置換に要する洗浄剤量と洗浄時間を短縮することができるので好ましい。
洗浄工程1から洗浄工程2への移行の目安としては、成形加工機の大きさや構造などにより異なるが、例えば外径がDmmのスクリューを備えた射出成形機を洗浄するときには、洗浄工程1における洗浄剤組成物の使用量は、(D/2)2×0.5〜(D/2)2×2.5(g)が好ましく、(D/2)2×1〜(D/2)2×2(g)がより好ましい。
【実施例】
【0025】
実施例1、比較例1〜3
射出成形機(三菱重工業製「三菱射出成形機265/100MSII」;シリンダー温度230℃,スクリュー径26mm)に、先行使用樹脂(成形材料1)としてAS樹脂(ダイセルポリマー(株)製セビアン-N 050SF)の黒着色品を用いて、10cm×10cm、厚み2mmの平板を10枚成形した。
次に、表1に示す条件にて洗浄工程1と洗浄工程2を実施し、成形材料2で平板を20枚成形した。その後、成形材料1を用いて再度洗浄工程を実施した。成形材料2の平板もしくはその後に排出した成形材料1中に着色が確認できる場合を成形材料1の残留があるとし、確認できない場合を成形材料1の残留がないとした。
【0026】
<洗浄工程1>
(洗浄剤組成物1)
AS(成形材料1):AS樹脂,ダイセルポリマー株式会社製 セビアン-N 050SF
界面活性剤:α−オレフィンスルホン酸ナトリウム
AS/界面活性剤=97質量%/3質量%
(洗浄条件)
計量30mm、射出速度90%、射出圧力90%、回転数60%、背圧10%に設定し、計量、射出の操作を手動で繰り返した。
なお、実施例1と比較例1では、表1に示す洗浄工程1の最終ショット(12ショット)時においてもまだ洗浄剤組成物が黒色に着色した状態で、洗浄工程2に移行した。
【0027】
<洗浄工程2>
(洗浄剤組成物2)
PP(成形材料2):株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ E111G (ホモポリマー,MFR 0.5)
界面活性剤:α−オレフィンスルホン酸ナトリウム
AS/界面活性剤=97質量%/3質量%
(洗浄条件)
計量30mm、射出速度90%、射出圧力90%、回転数60%、背圧10%に設定し、計量、射出の操作を手動で繰り返した。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなとおり、本発明の洗浄工程1と洗浄工程2を実施することによって、成形材料1(先行材料)から成形材料2(後続材料)に置換できるまでの総ショット数と総排出量を大きく減少させることができた。
この結果から、製造時間や製造コストの削減、エネルギー使用量の削減にも大きく寄与できることも確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料1を使用して成形加工機により成形した後、成形材料2を使用して同じ成形加工機により成形するとき、
洗浄工程1と洗浄工程2をこの順序で実施して成形加工機内に残留する成形材料1を除去した後で成形材料2を使用して成形する成形材料の成形方法であって、
洗浄工程1が、成形材料1と界面活性剤を含む洗浄剤組成物1で成形加工機を洗浄する工程であり、
洗浄工程2が、成形材料2と界面活性剤を含む洗浄剤組成物2で前記成形加工機を洗浄する工程である、成形材料の成形方法。
【請求項2】
洗浄工程1において、成形材料1が洗浄剤組成物1で完全に置換されていない状態で洗浄工程2に移る、請求項1記載の成形材料の成形方法。
【請求項3】
洗浄剤組成物1が、成形材料1からなる粒状物と、成形材料1と界面活性剤を含むマスターバッチからなる粒状物との混合物であり、
洗浄剤組成物2が、成形材料2からなる粒状物と、成形材料2と界面活性剤を含むマスターバッチからなる粒状物との混合物である、請求項1又は2記載の成形材料の成形方法。
【請求項4】
洗浄剤組成物1及び洗浄剤組成物2が、さらに無機フィラーを含有しているものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の成形材料の成形方法。

【公開番号】特開2013−60510(P2013−60510A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199054(P2011−199054)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】