説明

成形用アクリル樹脂組成物

【課題】耐光性や耐熱性及び形状保持性にも優れた成形体を短時間で形成することができる樹脂組成物の提供。
【解決手段】該組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、モノマー(C)は、下記一般式(1);[化1]


(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、又は、−C−O−R基を表す。Ac基はアセチル基を表す。)で表されるモノマーである成形用アクリル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用アクリル樹脂組成物に関する。より詳しくは、液晶表示装置に用いられるカバーガラスやLED用拡散レンズ等の材料として好適に用いられる成形用アクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、透明性を有する樹脂であり、また、凝集性や増粘性を発揮するものであることから、塗料や接着剤の材料をはじめとして、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等として幅広く用いられている。
このようなアクリル樹脂の用途の1つに電気・電子部品材料や光学用途における材料がある。例えば、デジタルカメラモジュールは携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、低コスト化も求められているため無機ガラスに代わってPMMA・PCやポリシクロオレフィン等のプラスチックレンズの採用が進んでいる。近年においては新規用途として車載用カメラや宅配業者向けバーコード読み取り機等の車載化ニーズが高まっており、また、液晶表示装置に用いられるカバーガラスやLED用拡散レンズ等、透明性を有する樹脂の光学材料としての使用は年々広がりをみせている。
【0003】
このような光学材料に用いられる重合体に関し、注型重合時の収縮の少ない、低分散高屈折率の重合体を製造することを目的とする、アダマンチル基を有する単量体をラジカル重合開始剤の存在下で重合するアダマンタン誘導体からなる重合体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、紫外線に対して安定で黄変が発生せず、かつ、耐熱性、屈折率のバランスに優れる硬化物を与え、接着性、加工性にも優れた光半導体用透明封止材料を得ることを目的として、炭素数7以上の脂環式炭化水素基含有メタクリル酸エステルをラジカル重合してなる重合体を含む光半導体封止材料が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、高い屈折率でフレネルレンズ等の表面凹凸構造が歪みにくい適度な硬度を有し、かつ、光による黄変が少ない硬化物を形成することができる光学部材用放射線硬化性樹脂組成物を得ることを目的として、水酸基含有(メタ)アクリレート、脂肪族ポリイソシアネート、及び、ポリオールの反応物である、ウレタン(メタ)アクリレート5〜70質量%、及び、これらの成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物10〜80質量%を含有する光学部材用放射線硬化性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−124608号公報(第1−2頁)
【特許文献2】国際公開2006/051803号公報(第1−2、23頁)
【特許文献3】特開2008−249916号公報(第1−2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光学用途に用いられる樹脂材料について、様々な構成のものが開示されている。しかしながら、アダマンタン誘導体からなる重合体の製造方法を開示した特許文献1では、樹脂組成物の収縮率が大きいために外観に優れた成形物を得るのに数時間を要している。また、炭素数7以上の脂環式炭化水素基含有メタクリル酸エステルをラジカル重合してなる重合体を含む光半導体封止材料を開示した特許文献2では、ノルボルニル、ジシクロペンタニル基をもつ(メタ)アクリレートを使用した場合でも、外観に優れた成形物を得るために硬化に数時間をかけている。したがって、これらの樹脂材料では、外観に優れた成形物をより短時間で効率的に得ることができるようにする工夫の余地があった。また、水酸基含有(メタ)アクリレート、脂肪族ポリイソシアネート、及び、ポリオールの反応物である、ウレタン(メタ)アクリレート、及び、これらの成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物を特定の割合で含む特許文献3の光学部材用放射線硬化性樹脂組成物では、耐光性において、不充分であり、この点について改善する工夫の余地があった。
このように、上記いずれの樹脂材料についても、光学用途に用いられる材料に求められる特性を充分に有しているとはいえず、改善の余地があるものである。成形材料用の樹脂組成物は、金型の形状に忠実であり、かつ、外観に優れた成形物をより短時間で得ることができることが重要である。また、光学用途の中でも、特に液晶表示装置等の表示装置用カバーガラスや、液晶表示装置の光源に用いられる光拡散レンズ等は、精密な形状に加工する必要があり、携帯電話等に搭載されるLEDフラッシュライト用拡散レンズの用途においては、使用時に赤外線や太陽光線により黄変等の着色をしないことや、電子基板への実装の際の半田リフロー工程でも着色しないことが要求されている。更に、硬化物の表面硬度が適度なものであること、硬化物表面の平坦性、形状保持性に優れたものであることが要求される。したがって、そのような要求を満足する樹脂組成物が求められている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、樹脂組成物を金型に注入した際の金型形状への追随性に優れるとともに、金型への注入時の泡の噛み込みや硬化時の収縮が抑制されて外観に優れ、更に耐光性や耐熱性及び形状保持性にも優れた成形物を短時間で形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、金型の形状に忠実で外観に優れた金型成形性に優れる樹脂組成物について種々検討したところ、透明性を有するアクリル系樹脂組成物に注目し、60℃における粘度が0.1〜200Pa・sである脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を必須成分とし、更に、脂肪族環状構造、ネオペンチル構造及びアルキレングリコール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)と特定の構造を有するα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との少なくとも1種を含む樹脂組成物とした。
組成物が(メタ)アクリレート系のオリゴマーのみを含むものであると、粘性が原因となって、ハンドリング性がよいとはいえず、また、組成物が金型形状に追随しにくかったり、得られる硬化物が柔らかすぎることがある。また、組成物が(メタ)アクリレート系のモノマー等のモノマーのみを含むものであると、金型への注入時に泡を噛み込んで外観不良が生じたり、硬化時の硬化収縮が大きく、得られる成形物にヒケが生じて成形物の外観不良が生じることがある。しかし、このように特定の粘度を有する(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を必須とし、これと特定の構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)、及び、特定の構造を有するα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)のうち少なくとも1種とを組み合わせると、金型形状への追随性に優れるとともに、金型への注入時の泡の噛み込みや硬化時の収縮が抑制されるとともに、得られる成形物が適度な硬度を有するものとなり、外観及び形状保持性に優れた成形物をより短時間で形成することができる樹脂組成物となることを見出した。更に本発明者は、このような樹脂組成物から得られる成形物が、耐光性や耐熱性にも優れ、材料に様々な特性が要求される液晶表示素子等の表示素子用ディスプレイ用カバーガラスや、液晶光源やフラッシュライト用のLED用拡散レンズ等の用途にも好適に用いることができる成形材料となることを見出した。このような効果は、樹脂組成物の構成成分として、特定のオリゴマーと特定の構造を有するモノマーとを組み合わせることによって得られる相乗的な効果であり、本発明者は、このような特定の成分の組み合わせで相乗的な効果が発揮される樹脂組成物となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、樹脂成形物の材料として用いられる成形用アクリル樹脂組成物であって、上記組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、60℃における粘度が0.1〜200Pa・sであり、該(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、脂肪族環状構造、ネオペンチル構造及びアルキレングリコール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有する(メタ)アクリレートであり、上記α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)は、下記一般式(1);
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、又は、−C−O−R基を表す。Ac基はアセチル基を表し、R、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、RとR、RとRとは結合し、環構造を形成していても良い。)で表されるモノマーであることを特徴とする成形用アクリル樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含むものである。すなわち、本発明の成形用アクリル樹脂組成物の形態としては、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)との2成分を必須成分として含む形態(形態(I))、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との2成分を必須成分として含む形態(形態(II))、及び、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及びα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)の3成分を必須成分として含む形態(形態(III))がある。
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を必須成分として含み、更に、(メタ)アクリレート系モノマー(B)、α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)のうち少なくとも1つを含むことにより、上述したような種々の特性を有する樹脂組成物となる。
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含む限り、その他の成分を含んでいてもよい。また、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及びα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)は、それぞれ1種を含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0012】
本発明の樹脂組成物が含む(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、脂肪族骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーであり、(メタ)アクリレート系オリゴマーとして脂肪族骨格を有するものを用いることで、得られる成形物を耐光性に優れたものとすることができる。本発明における脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、脂肪族骨格を主体するものであれば、得られる成形物の耐光性や耐熱性を害しない範囲で芳香環を構造中に含んでいてもよい。芳香環の含有割合は、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)全体を100質量%とすると、構造中に含まれる芳香環の質量割合が20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%である。最も好ましくは、芳香環を含まないことである。
【0013】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、60℃における粘度が0.1〜200Pa・sであるものである。このような粘度を有するオリゴマーと、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを組み合わせることで、樹脂組成物が、金型形状への追随性に優れるとともに、金型への注入時の泡の噛み込みや硬化時の収縮が抑制された樹脂組成物となる。
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の60℃における粘度は、1〜150Pa・sであることが好ましい。より好ましくは、5〜100Pa・sである。
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の粘度は、コーンプレート型回転粘度計により測定することができる。
【0014】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物全体としての粘度は、40℃において0.1〜100Pa・sであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜80Pa・sであり、更に好ましくは、0.1〜50Pa・sである。
成形用アクリル樹脂組成物の粘度は、上記と同様の方法により測定することができる。
【0015】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、重量平均分子量が500〜20000であるものが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲にあると、オリゴマーの粘度を上記の好適な範囲とするために好ましく、また、オリゴマーとモノマーとを組み合わせて成形用アクリル樹脂組成物の成分とする本発明において、オリゴマーとしての作用を充分に発揮させることができる。より好ましくは、1000〜15000であり、更に好ましくは、1500〜10000である。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0016】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、上記のものの中でも、ウレタン骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格及びポリエーテル骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有するものであることが好ましい。このような骨格を有するものであると、樹脂組成物から得られる成形物が耐光性、耐熱性に更に優れたものとなる。
ウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、構造中に少なくとも1つのウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーであれば特に制限されず、ウレタン骨格の他に、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格やポリエーテル骨格、又は、その他の骨格を有していてもよい。以下においては、ウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーを脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとも記載する。
本発明においては、構造中に少なくとも1つのウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、全て脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに分類されるものとする。すなわち、構造中に少なくとも1つのウレタン骨格を有し、更に、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格及びポリエーテル骨格の少なくとも1つを有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、本発明においては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに分類される。したがって、後述する、本発明におけるポリエステル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリカーボネート骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、いずれも構造中にウレタン骨格を有しないものである。
【0017】
上記脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いると、構造中にウレタン骨格とポリエステル骨格とを有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが得られることになる。同様に、ポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いると、構造中にウレタン骨格とポリエーテル骨格とを有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが得られ、ポリオールとしてポリカーボネートジオールを用いると、構造中にウレタン骨格とポリカーボネート骨格とを有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが得られることになる。
【0018】
上記ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、例えば、ジオールとジカルボン酸若しくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させても、ジオール又はジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させてもよい。
なお、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する反応、ポリエステルポリオールを製造する反応は、通常用いられる反応条件を採用することができ、また、触媒、溶媒等も通常用いられるものを用いることができる。
【0019】
上記ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記ジオールとしてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記ポリカーボネートジオールは、低分子カーボネート化合物とジオールとのエステル交換反応で作られ、低分子カーボネート化合物としては、炭酸ジメチルを用いることができる。ジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
上記ジイソシアネートとしては、直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートを用いることができる。代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペタアクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
ウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの具体例としては、EBECRYL230、270、9260、8296(ダイセルサイテック社製)、CN9893、9788、983、981、9006、9010(サートマー社製)、UF−8001G(共栄社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明におけるポリエステル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリカーボネート骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、構造中に少なくとも1つのポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格やポリエーテル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーであれば、構造中にウレタン骨格以外のその他の骨格を有していてもよく、(メタ)アクリロキシ基を構造の末端に有していても側鎖に有していてもよい。
ポリエステル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの具体例としては、CN294、CN2280、CN2297、CN2470(サートマー社製)が挙げられる。
【0023】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、上述したものの中でも、ウレタン骨格、ポリエステル骨格の少なくとも1つを有するものであることが好ましい。このような骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることで、樹脂組成物から得られる成形物が、特に、耐熱性に更に優れたものとなる。
すなわち、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、脂肪族骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び/又は、脂肪族ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0024】
また、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が脂肪族骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーである場合、ウレタン骨格とともに、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格及びポリエーテル骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有するものであることが好ましい。脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)がこのような構造を有するものであると、樹脂組成物から得られる成形物が耐光性、耐熱性に更に優れたものとなる。より好ましくは、ウレタン骨格とともに、ポリエーテル骨格を有するものである。
【0025】
上記(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、脂肪族環状構造、ネオペンチル構造及びアルキレングリコール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有する(メタ)アクリレートである。このような構造を有する(メタ)アクリレートは、耐光性や耐熱性に優れ、更にガラス転移温度(Tg)が高く、硬い硬化物を与えるモノマーである。樹脂組成物がこのようなモノマーを含むものであると、樹脂組成物から得られる成形物の耐光性や耐熱性を向上させ、また、得られる成形物を硬いものとして、形状保持性を高めることができる。
(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、脂肪族環状構造、ネオペンチル構造及びアルキレングリコール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有するものであればよく、多官能、単官能のいずれのモノマーであってもよいが、単官能モノマーは、硬化した際の収縮率が小さいが、得られる硬化物は高い硬度を有するものではなく、一方、多官能モノマーは、得られる硬化物は高い硬度を有するものとなるが、硬化した際の収縮率が単官能モノマーに比べて大きく、金型転写性(成形性)が充分ではなくなる場合がある。したがって、多官能モノマー、単官能モノマーは成形物に要求される性質に応じて適宜使い分けることが好ましい。
【0026】
上記脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のシクロヘキシル構造を有する(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート等のイソボルニル構造を有する(メタ)アクリレート;アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート等のアダマンチル構造を有する(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートである。
【0027】
上記(メタ)アクリレート系モノマー(B)の脂肪族環状構造は、シクロヘキシル構造、イソボルニル構造、ジシクロペンタニル構造及びアダマンチル構造からなる群より選択される少なくとも1つの環状構造であることが好ましい。(メタ)アクリレート系モノマー(B)がこのような環状構造を有するものであると、樹脂組成物をより耐光性、耐熱性や形状保持性に優れたものとすることができる。これらの中でも、より好ましくは、シクロヘキシル構造、イソボルニル構造である。
【0028】
また、ネオペンチル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)、ネオペンチル構造とアルキレングリコール構造とを有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)の具体例としては、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0029】
アルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、エトキシ化ネオペンチルグリコール、プロポキシ化ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール、ジオールの(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
アルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)としては、上記のもの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールのいずれかのグリコールの(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートが好ましい。アルキレングリコールが長鎖過ぎると、アクリル樹脂組成物を硬化させた硬化物(成形体)の形状保持性が低下し、吸湿性が高くなるおそれがあり、アルキレングリコールの鎖が短か過ぎると、硬化物の収縮率が高くなり、好ましくない。より好ましくは、これらのいずれかのグリコールのジ(メタ)アクリレートである。
そのような、いずれかのグリコールのジ(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。より好ましくは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
これらの中でも、更に好ましくは、これらのいずれかのグリコールのジメタクリレートである。モノ(メタ)アクリレートよりもジ(メタ)アクリレートのほうが硬化物の耐湿性が高くなり、ジアクリレートよりもジメタクリレートのほうが硬化物の耐湿性が更に高くなるため好ましい。
なお、アルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリレートのうち、複数のアルキレングリコール構造を有するものは、構造上は本発明における脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)にも該当するものであるが、本発明の(メタ)アクリレート系モノマー(B)として用いるアルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリレートは、60℃における粘度が0.1Pa・s未満のものである。
【0031】
上記(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、硫黄成分の含有量が100ppm以下であることが好ましい。硫黄成分の含有量が100ppm以下であると、樹脂組成物から得られる成形物がより耐光性、耐熱性に優れたものとなる。硫黄成分の含有量は、より好ましくは、50ppm以下であり、更に好ましくは、10ppm以下である。最も好ましくは、1ppm以下である。
モノマー中の硫黄成分の含有量は、蛍光X線分析計により測定することができる。
【0032】
上記α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)は、下記一般式(1);
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、又は、−C−O−R基を表す。Ac基はアセチル基を表し、R、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、RとR、RとRとは結合し、環構造を形成していても良い。)で表されるモノマーである。
、R、R及びRは、水素原子、炭素数が1〜8のアルキル基又はアリール基であることが好ましい。より好ましくは水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基である。
また、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。
【0035】
上記α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)の具体例としては、α−メチレン−γ−ブチロラクトン(MBL)、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクタム、α−メチレン−δ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐熱性、光学特性の点で、α−メチレン−γ−ブチロラクトン(MBL)、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(別称;α−メチレン−γ−バレロラクトン(MVL))、α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0036】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物が脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対して脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量が70質量%以上であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の成形用アクリル樹脂組成物が、上記形態(I)〜(III)のそれぞれの場合について、この本発明の好適な実施形態を説明すると、以下のようである。
すなわち、本発明の成形用アクリル樹脂組成物が、上記形態(I)である場合には、成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対して脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)との合計質量が70質量%以上であることが好ましく、上記形態(II)である場合には、成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対して脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量が70質量%以上であることが好ましい。また、上記形態(III)の場合には、成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対して脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量が70質量%以上であることが好ましい。
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量が70質量%以上であると、樹脂組成物が更に金型成形性に優れたものとなるとともに、得られる成形物が更に耐光性、耐熱性、形状保持性に優れたものとなる。
成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量は、より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上である。これら合計質量のより好ましい範囲、更に好ましい範囲についても、上記形態(I)〜(III)それぞれの場合について意味するところは、上記合計質量が70質量%以上である場合と同様である。
【0037】
また、本発明の成形用アクリル樹脂組成物が、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の成形用アクリル樹脂組成物が、上記形態(I)〜(III)のそれぞれの場合について、この本発明の好適な実施形態を説明すると、以下のようである。
すなわち、本発明の成形用アクリル樹脂組成物が、上記形態(I)である場合には、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)との合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%であることが好ましく、上記形態(II)である場合には、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%であることが好ましい。また、上記形態(III)の場合には、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%であることが好ましい。
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との配合割合がこのような範囲であると、樹脂組成物が更に金型成形性に優れたものとなるとともに、得られる成形物が更に耐光性、耐熱性、形状保持性に優れたものとなる。
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量100質量%に対する(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量は、より好ましくは、55〜85質量%であり、更に好ましくは、60〜80質量%である。これら(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量のより好ましい範囲、更に好ましい範囲についても、上記形態(I)〜(III)それぞれの場合について意味するところは、上記(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%である場合と同様である。
【0038】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を必須成分として含み、更に、(メタ)アクリレート系モノマー(B)、α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)のうち少なくとも1つを含むことにより、上述したような種々の特性を有する樹脂組成物となるが、樹脂組成物がα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)を含むものである場合、(メタ)アクリレート系モノマー(B)をも含むことが好ましい。このようにすることで、得られる成形物が更に耐光性、耐熱性に優れたものとなる。すなわち、本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上記形態(I)、又は、形態(III)のいずれかであることが好ましい。
【0039】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上記形態(I)〜(III)のいずれの場合においても、樹脂組成物の粘度や成形物の硬さ調整のために、上記(メタ)アクリレート系モノマー(B)以外の多官能/単官能の(メタ)アクリレートを含むことができる。このような多官能/単官能の(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、単官能(メタ)アクリレート具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族骨格を有しない(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
上記(メタ)アクリレート系モノマー(B)以外の多官能/単官能の(メタ)アクリレートの配合量は、成形物の用途において要求される性質に応じて適宜調整すればよいが、樹脂組成物全体100質量%に対して1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物全体100質量%に対して5〜20質量%である。
【0041】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上記形態(I)〜(III)のいずれの場合においても、粘度を高めたり、収縮率を低減するために脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)以外の重合性ポリマーを含むことができる。
重合性ポリマーは、組成物の粘度を高めたり、収縮率を低減することができるものである限り特に制限されないが、重量平均分子量が10万以下のものが好ましい。このような分子量の重合性ポリマーは、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)との相溶性に優れており、配合することで透明性の高い硬化物が得られやすくなる。このため、このような重合性ポリマーを含む成形用アクリル樹脂組成物からは、光学的均質性の高い硬化物が得られやすくなる。より好ましくは、重量平均分子量が1000〜50000のものである。
重合性ポリマーの重量平均分子量は、上述したものと同様の方法により測定することができる。
【0042】
上記重合性ポリマーとしてはまた、(メタ)アクリロイル基1モル当たりの質量を表す(メタ)アクリレート当量が500以上であるものが好ましい。このような重合性ポリマーを用いることで、樹脂組成物の粘度を高めたり、収縮率を低減する効果を充分に発揮することができる。より好ましくは、(メタ)アクリレート当量が1000以上のものであり、更に好ましくは、(メタ)アクリレート当量が2000以上のものである。
【0043】
上記重合性ポリマーの具体例としては、アクリル系ポリマー中に反応性不飽和基を有しているポリマーが挙げられ、分子量や導入される反応性不飽和基を調節したマクロモノマーが挙げられる。
上記重合性ポリマーとしては、マクロモノマーAA−06、AS−6、AB−6(東亜合成社製)等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
上記重合性ポリマーの配合量は、成形物の用途において要求される性質に応じて適宜調整すればよいが、樹脂組成物全体100質量%に対して1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物全体100質量%に対して5〜25質量%である。
【0045】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上記形態(I)〜(III)のいずれの場合においても、更に、熱重合開始剤や光重合開始剤等の重合開始剤(硬化剤)を含むことができる。熱重合開始剤は、加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤である。熱重合開始剤は、過酸化物が好ましい。より好ましくは、10時間半減期温度が60℃以上130℃以下の過酸化物である。熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイドやパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等の化合物又はその誘導体が好ましく用いられる。
これらの市販品としては、日本油脂社製パーロイルO、パーロイルL、パーロイルS、パーオクタO、パーロイルSA、パーヘキサ250、パーヘキシルO、ナイパーPMB、パーブチルO、ナイパーBMT、ナイパーBW、パーブチルIB、パーヘキサMC、パーヘキサTMH、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーテトラA、パーヘキシルI、パーブチルMA、パーブチル355、パーブチルL、パーヘキサ25MT、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキシルZ、パーヘキサV、パーブチルP、パークミルD、パーヘキシルD、パーヘキサ25B、パーブチルD、パーメンタH、パーヘキシン25B等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
上記光重合開始剤としては、光重合開始剤としての機能を発揮する化合物であれば、特に制限されないが、チバスペシャリティーケミカルズ社製Irgacure369、Irgacure907、Irgacure1800、Irgacure1870、IrgacureTPO、Irgacure819、Irgacure1300、IrgacureOXE−01、DAROCURE4265、BASFジャパン社製LucirinTPO、LucirinTPO−L等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また表面硬化性の改善、紫外線感度の改善等を目的として、これらの光重合開始剤の他に光重合開始剤や光増感剤を配合してもよい。
【0047】
上記重合開始剤の配合量は、樹脂組成物全体100質量%に対して0.05〜10質量%であることが好ましい。
【0048】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上記形態(I)〜(III)のいずれの場合においても、上述した種々の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、ラジカル重合性樹脂が挙げられ、好ましいものとして、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の各種ビニルモノマーやビニルオリゴマーが挙げられる。また、本発明の成形用アクリル樹脂組成物には、その硬化物の耐熱性、靱性、剛性、難燃性、表面平滑性、ひずみの低減、金型からの剥離性、色調などの諸物性や、未硬化状態での粘着性や粘度などの取り扱い性などの調整を目的として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー、無機フィラーなどのラジカル重合性樹脂以外の成分を含んでもよい。
【0049】
上記添加可能な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、トリアジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂などの架橋性樹脂とその硬化剤が好ましい。
上記添加可能な熱可塑性樹脂としては、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、 ポリエーテルイミド、ポリビニルフォルマール、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサンなどが好ましい。
上記エラストマー成分としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、カボキシル末端変性ブタジエン−アクリロニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。
上記添加可能な無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化金属類や、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの酸化金属類や、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸金属類のほか、ガラスバルーン、シリカなどの無機フィラーが挙げられる。
また、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤や有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
これらその他の成分の含有量は、樹脂組成物全体100質量%に対して0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物全体100質量%に対して0.05〜20質量%である。
【0050】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上述のように、成形性に優れ、また、得られる成形物は、形状保持性、耐光性、及び、耐熱性に優れたものである。このような、本発明の成形用アクリル樹脂組成物から得られる成形物もまた、本発明の1つである。
また、本発明の成形用アクリル樹脂組成物から得られる成形物は、光学用途に要求される特性に優れたものであることから、光学材料に好適に用いることができるものである。本発明の成形用アクリル樹脂組成物を光学材料として好適に用いることができる用途しては、液晶表示装置等の表示装置、タッチパネル、各種センサー等で用いられるガラス素材代替のカバーガラスや透明光学シート;カメラの視野レンズ、オーバーヘッド・プロジェクターのコンデンサーレンズ、リア・プロジェクション方式のスクリーン、液晶表示装置等の表示装置、広告表示、LEDディスプレイ、立体写真、立体映像(3D映像、三次元映像)等で用いられるフレネルレンズシート、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート、フレネルレンズシート等の光学シート;液晶表示装置等のLED光源、照明、フラッシュライト等に用いられる光拡散用レンズ;携帯電話用カメラ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、防犯用監視カメラ、ドライブレコーダーやバックモニター等の車載用カメラ等に用いられる撮像用レンズ等がある。このように、本発明の成形用アクリル樹脂組成物を光学材料用途に用いることは、本発明の好適な実施形態の1つである。また、このように、本発明の成形用アクリル樹脂組成物を用いて得られる光学材料も本発明の1つである。
【発明の効果】
【0051】
本発明の成形用アクリル樹脂組成物は、上述の構成よりなり、樹脂組成物を金型に注入した際の金型形状への追随性に優れるとともに、金型への注入時の泡の噛み込みや硬化時の収縮が抑制され、外観に優れる成形物が短時間で形成されるとともに、得られた成形物が適度な硬度を持ち、耐光性、耐熱性に優れたものであることから、光学用途、特に、液晶表示装置等の表示装置、タッチパネル、各種センサー等で用いられるガラス素材代替のカバーガラスや透明光学シート;カメラの視野レンズ、オーバーヘッド・プロジェクターのコンデンサーレンズ、リア・プロジェクション方式のスクリーン、液晶表示装置等の表示装置、広告表示、LEDディスプレイ、立体写真、立体映像(3D映像、三次元映像)等で用いられるフレネルレンズシート、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート、フレネルレンズシート等の光学シート;液晶表示装置等のLED光源、照明、フラッシュライト等に用いられる光拡散用レンズ;携帯電話用カメラ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、防犯用監視カメラ、ドライブレコーダーやバックモニター等の車載用カメラ等に用いられる撮像用レンズ等の材料として好適に用いられる成形用アクリル樹脂組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0053】
実施例1〜22、比較例1〜5
表1に記載の配合でオリゴマー、モノマー及び硬化剤等の各成分を混合して樹脂組成物を調製し、調製した樹脂組成物を1mm厚のスペーサーを間に挟んだ2枚のガラス板で挟み、140℃のオーブンで15分間加熱して硬化させた。得られた硬化物について、以下の(1)〜(4)の評価を行った。
(1)耐光性
硬化物のサンプル板にメタリングウェザーメーター(45mW/cm)(品番:M6T、スガ試験機社製)で100時間光照射を行った後、400nmの透過率を分光光度計(品番:UV−3100、島津製作所社製)で測定した。評価基準は以下のとおりとした。
○:透過率の減少が10%未満
△:透過率の減少が10〜20%
×:透過率の減少が20%より大きい
(2)耐熱性
硬化物のサンプル板を230℃の窒素雰囲気下のオーブンで1時間加熱した後、400nmの透過率を分光光度計(品番:UV−3100、島津製作所社製)で測定した。評価基準は耐光性試験と同様である。
(3)硬化収縮率
JIS K6911に従って評価した。
(4)成形性
硬化物の外観を目視で確認した。評価基準は以下のとおりとした。
○:収縮によるヒケが全くない
△:一部にヒケが発生
×:全面にヒケが発生
【0054】
【表1】

【0055】
表1中の略号は、それぞれ以下のものを示す。CN9893〜CN2254は、いずれもサートマー社の製品である。
CN9893:脂肪族ウレタンアクリレート
CN9788:脂肪族ウレタンアクリレート
CN983:脂肪族ウレタンアクリレート
CN981:脂肪族ウレタンアクリレート
CN978:芳香族ウレタンアクリレート
CN2254:芳香族ポリエステルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IB−XA:イソボルニルアクリレート
IB−X:イソボルニルメタクリレート
DCP−M:ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート
DCP−A:ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート
NP−A:ネオペンチルグリコールジアクリレート
FA−513M:ジシクロペンタニルメタクリレート
FA−511AS:ジシクロペンテニルアクリレート
FA−512AS:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(硫黄含有量1ppm以下)
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(硫黄含有量100ppmより多い)
ADMA:アダマンチルメタクリレート(大阪有機社製)
MBL(Et):α―メチレン―γ―エチル―γ―ブチロラクトン
3000A:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物
SM:ステレンモノマー
MMA:メチルメタクリレート
AA−06:ポリメチルメタクリレート骨格のマクロモノマー
【0056】
なお、MBL(Et)は、以下のようにして合成した。
MBL(Et)の合成方法
1.7Lのオートクレーブに基質としてアクリル酸14g(0.2mol)と1−ブテン56g(1mol)、触媒としてトリフルオロ酢酸パラジウム0.66g(0.002mol)、助触媒として酢酸銅0.60g(0.003mol)、溶媒としてトルエン0.6Lを加えた。気相部は、酸素ガス0.35MPaで一定に保ち、70℃で8時間攪拌した。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、メチレンラクトン(エチル体)の収率が61%であった。得られた反応液を蒸留することによりメチレンラクトン(エチル体)12gを得た。
【0057】
実施例1〜5と比較例1、2との比較から、樹脂組成物が含む(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)として、芳香族系のものではなく、脂肪族系のものを用いることで耐光性に優れた硬化物が得られることが確認された。また、実施例1〜22と比較例3〜5との比較から、樹脂組成物が脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、脂肪族環状構造、及び/又は、ネオペンチル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)、又は、α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)を含むことで、硬化時の収縮が抑制され、成形性に優れた樹脂組成物となり、得られる硬化物が耐光性や耐熱性に優れたものとなることが確認された。また、実施例17〜20の結果から、(メタ)アクリレート系モノマー(B)として、脂肪族環状構造を有するものと、ネオペンチル構造を有するものとを併用した場合(実施例17、18)や、脂肪族環状構造を有するものを2種類併用した場合(実施例19)、脂肪族環状構造、及び/又は、ネオペンチル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを併用した場合(実施例20)にも、硬化時の収縮が抑制され、成形性に優れた樹脂組成物となり、得られる硬化物が耐光性や耐熱性に優れたものとなることが確認された。
更に、実施例21、22とその他の実施例との比較から、樹脂組成物中における脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと(メタ)アクリレート系モノマーとの合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50質量%以上であるほうが、硬化時の収縮が抑制され、成形性に優れた樹脂組成物となり、また、得られる硬化物が耐光性や耐熱性に優れたものとなることが確認された。更に、実施例13と実施例14とを比較すると、耐光性試験において、上記に定めた評価基準に基づくと両方○の評価となるものであったが、モノマーとして硫黄含有量の少ないFA−512ASを用いた実施例13のほうが、硫黄含有量が多いFA−512Aを用いた実施例14よりも少し優れていた。
なお、本発明の技術的範囲内のものであれば、上記実施例において用いた化合物以外のものであっても、本発明の効果を奏する基本的な作用機構は、すべて同様である。したがって、上記実施例、比較例の結果から、本明細書において開示した種々の形態について、本発明が適用でき、本明細書において開示されている通り、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形物の材料として用いられる成形用アクリル樹脂組成物であって、
該組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、
該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、60℃における粘度が0.1〜200Pa・sであり、
該(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、脂肪族環状構造、ネオペンチル構造及びアルキレングリコール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有する(メタ)アクリレートであり、
該α−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、又は、−C−O−R基を表す。Ac基はアセチル基を表し、R、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、RとR、RとRとは結合し、環構造を形成していても良い。)で表されるモノマーである
ことを特徴とする成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、ウレタン骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格及びポリエーテル骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、脂肪族骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び/又は、脂肪族ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)の脂肪族環状構造は、シクロヘキシル構造、イソボルニル構造、ジシクロペンタニル構造及びアダマンチル構造からなる群より選択される少なくとも1つの環状構造であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、硫黄成分の含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項6】
前記成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、成形用アクリル樹脂組成物100質量%に対して脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量が70質量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項7】
前記成形用アクリル樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)及び/又はα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)とを含み、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)とα−メチレンラクトン構造を有するモノマー(C)との合計質量100質量%に対して、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の含有量が50〜90質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成形用アクリル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の成形用アクリル樹脂組成物から得られる成形物。


【公開番号】特開2011−63726(P2011−63726A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216166(P2009−216166)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】