説明

成形用フィルム

【課題】 成型加工性に優れ、金属蒸着により金属光沢を有したフィルムであって、成型加工後にも優れた金属光沢を保ち、良好な金属調の外観を有した成形部品を製造するに当たって有用な成形用フィルムを提供する。
【解決手段】 100℃における破断伸度200〜550%かつ100℃における破断応力1M〜130MPaのポリエステルフィルムと、このうえに設けられたインジウム蒸着層とからなる、成型用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形用フィルムに関し、詳しくは成形部品の表面に用いたときに金属様の外観を呈する成形用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家具や屋内装飾品、電化製品、自動車部品等に用いられる樹脂製部品において、金属光沢のある外観を得る目的で、成形部品にめっき処理やスプレー塗装等の塗装処理を施しているが、いずれも有機溶剤を使用しており、廃液処理の問題などを考慮すると今日の環境問題に対して非常に好ましくないという問題がある。また、これらの処理は、部品を成形加工した後に施される為、バッチ処理となり、生産性が低く好ましくない。
【0003】
これらの問題を解決するべく、金属光沢のある外観を有する成形品を得るために、1)アルミ蒸着を施したフィルムと成形シートをラミネートすることで得られた積層シートを成形加工して成形品を得る技術や、2)アルミ蒸着を施したフィルム(もしくはこれと成形シートをラミネートして得られた積層シート)を成形金型に挿入した状態で射出成形し、フィルムもしくは積層シートを成形品の表層として一体化させる技術、3)離型層を介してその上にアルミ蒸着を行ったフィルムを成形金型に挿入した状態で射出成形し、アルミ蒸着層のみを成形部品に転写する技術などが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの技術においてはアルミ蒸着を施した後に成形加工を行うために、アルミ蒸着層が延伸され、アルミ蒸着層にひび割れが生じるため、金属光沢が劣ってしまう。また、基材となるフィルムの成形加工性が低い場合には、成形加工工程、射出成形工程においてフィルムに与えられた変形によりフィルムが切断してしまう、フィルムが十分に変形しきらずに部品として不十分となってしまう。
【0005】
本発明は、上述の問題点を改善することを目的とする。すなわち、本発明の課題は成形加工後においても優れた金属光沢を有するとともに、成形加工時のフィルムの成形加工性に優れる成形用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、100℃における破断伸度200〜550%かつ100℃における破断応力1M〜130MPaのポリエステルフィルムと、このうえに設けられたインジウム蒸着層とからなる、成型用フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形加工後においても優れた金属光沢を有するとともに、成形加工時のフィルムの成形加工性に優れる成形用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[基材フィルム]
本発明においては、ポリエステルフィルムを基材フィルムとして用い、このうえにインジウム蒸着層を設ける。このポリエステルフィルムとして、100℃における破断伸度が200〜550%であり、かつ100℃における破断応力が1M〜130MPaであるポリエステルフィルムを用いる。100℃における破断伸度と破断応力が上記を満たさないと成型加工の際にフィルムが伸びきらず金型の形状まで変形することができず、フィルムが切断してしまうなどの問題が生じる。この特性を有するポリエステルフィルムとして、以下に説明する積層フィルムを用いることが好ましい。
【0009】
すなわち本発明においては、基材フィルムとして、融点Tm(A)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Aと、融点Tm(B)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層BがA/B/Aの順序で配置された積層フィルムであり、Tm(A)>Tm(B)であり、ポリエステル層Aは延伸配向構造を有し、ポリエステル層Bは非配向構造を有する積層フィルムを用いるとよい。
【0010】
この積層フィルムのポリエステル層Aを構成するポリエステルとしては、成膜後の1軸または2軸の延伸処理により配向結晶構造を形成し得るポリエステルを用いる。ポリエステル層Aのポリエステルの融点は、好ましくは205〜270℃、ポリエステル層Bのポリエステルの融点は、好ましくは190〜250℃である。ここで融点は、ポリエステルを一度溶融した後、急冷、固化したサンプルを、示差熱熱量計で20℃/分の速度で昇温したときの溶融吸熱ピーク温度である。フィルム、加工製品の寸法安定性、耐変形性、耐カール性を良好に維持する観点から、ポリエステル層Aのポリエステルのガラス転移温度は好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。このポリエステルとして、例えば共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、好ましくはイソフタル酸およびテトラメチレングリコールを共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートを用いるとよい。イソフタル酸の共重合量およびテトラメチレングリコールの共重合量は、融点およびがラス転移温度が上記の範囲となるように調整すればよいが、例えばイソフタル酸を全ジカルボン酸成分あたり5〜10モル%、テトラメチレングリコールを全ジオール成分あたり30〜60モル%用いるとよい。
【0011】
ポリエステル層Bを構成するポリエステルとしては、ポリエステル層Aを構成するポリエステルの融点よりも低い融点を有するポリエステルを用いる。この融点の差は、好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上あるとよい。フィルム、加工製品の寸法安定性、耐変形性、耐カール性を良好に維持する観点から、ポリエステル層Bのポリエステルのガラス転移温度は好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。
【0012】
ポリエステル層Bのポリエステルとしては、例えば以下のポリエステルを用いることができる。すなわち、1)テレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸を主とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主とするジオール成分からなるコポリエステル、2)テレフタル酸およびイソフタル酸を主とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主とするジオール成分からなるコポリエステル、3)テレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸を主とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主とするジオール成分からなるコポリエステル、4)テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸を主とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主とするジオール成分からなるコポリエステルである。特に4)のコポリエステルのなかでもテレフタル酸90〜60モル%、ナフタレンジカルボン酸5〜20モル%およびイソフタル酸5〜20モル%からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主たる成分とするジオール成分からなる共重合ポリエステルが好ましい。ここで主たる成分とは、全ジカルボン酸成分または全ジオール成分あたり90モル%以上の成分をいう。
【0013】
夏期における車中での保管等の高温雰囲気に製品等が曝される用途では、いずれも80℃以上のガラス転移温度を有することが好ましい。また、フィルムの厚み斑を良好にするために、ポリエステル層Aのガラス転移点とポリエステル層Bのガラス転移点の差は、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下である。ここで、ガラス転移温度は、ポリエステルを一度溶融して後、急冷、固化したサンプルを、示差熱熱量計で20℃/分の速度で昇温したときの構造変化(比熱変化)温度をいう。
【0014】
[積層フィルムの層構成]
基材フィルムとして積層フィルムを用いる場合、積層フィルムは、好ましくはA/B/Aの3層の積層構造を有する。ポリエステル層Bを非配向構造にするには、積層フィルムを熱処理すればよい。この熱処理はポリエステル層Bの両面にポリエステル層Aを積層した状態で、ポリエステル層Aのポリエステルの融点より低くかつポリエステル層Bのポリエステルの融点より高い温度で行なう。これにより、ポリエステル層Bのポリエステルは一時溶融状態になるため、ポリエステル層Bのポリマー配向構造は、熱処理前に1軸または2軸の延伸配向構造であったとしても、熱処理後には実質的に無配向な構造になる。この熱処理は、好ましくは、共押出製膜法における延伸処理後の熱固定処理時の温度を、ポリエステル層Aのポリエステルの融点より低くかつポリエステル層Bのポリエステルの融点より高い温度に設定することで有効に行うことができる。
【0015】
この積層フィルムの層構成は、例えばA/B/A(なお、/は層の構成を示す)タイプの3層構成、A/B/A/B/Aタイプの5層構成、さらにこれらの順序による7層、9層、2n+1(nは自然数)構成等マルチ多層構成を採用することができる。
【0016】
また、必要に応じて、ポリエステル層Aが2層以上の場合、1以上の層を違うポリマーで構成することができる。ポリエステル層Bが2層以上の場合も同様である。例えば、ポリエステル層Aが2種のポリマー(A1、A2)、ポリエステル層Bが2種のポリマー(B1、B2)からなるとき、A1/B1/A2タイプの3層構成、A1/B1/A2/B2/A1タイプの5層構成を挙げることができる。これら層構成のうち、3層、5層が好ましく、特に3層が好ましい。なお、積層フィルムは1軸以上の延伸配向構造を有するポリエステル層Aを最表層とする構成をとる。実質的に非配向構造であるポリエステル層Bを最表層とする構成をとると、フィルム製造の際に工程内の各種ロール等にフィルムが粘着しやすく不適である。
【0017】
なお、フィルムの最表面の片面、もしくは両面に、滑性向上、接着性向上、制電性向上、離型性向上といった表面改質のために、コーティング処理、コロナ放電処理などの表面処理をしてもよい。コーティング処理等表面処理の方法としては、例えばポリエステル系塗布剤、ウレタン系塗布剤、アクリル系塗布剤を単独もしくは混合して、フィルム製造におけるプロセス内で塗布する方法、一旦ロール等のフィルム製品にした後に別のプロセスにて塗布する方法を挙げることができる。
【0018】
[厚み]
基材フィルム厚み(積層フィルムの場合、全ての層の厚みの和)は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜200μmである。フィルム厚みが10μm未満であるとフィルムの腰が弱くフィルムが破断しやすくなり好ましくない。フィルム厚みが500μmを超えるとフィルムの腰が強すぎ取り扱い性に劣るとともに形加工性がおとり好ましくない。
【0019】
基材フィルムのポリエステルフィルムの厚み斑は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。厚み斑が10%を超えるとインジウム蒸着時において蒸着膜厚みに斑が生じ、金属光沢の濃淡が生じ外観が悪化するなどの問題が生じて好ましくない。
【0020】
基材フィルムとして積層フィルムを用いる場合、積層フィルムの、1軸以上の延伸配向構造を有するポリエステル層Aの総厚み(a)と、実質的に非配向構造であるポリエステル層Bの総厚み(b)の比(a/b)は、例えば0.01〜1、好ましくは0.03〜0.67、さらに好ましくは0.05〜0.43である。この厚み比は、例えば層構成がA1(厚み:a1)/B(厚み:b)/A2(厚み:a2)の3層からなる場合、層Aと層Bの総厚み比(a/b)、すなわち(a1+a2)/(b)が0.01〜1であることを意味し、また層構成がA1(厚み:a1)/B1(厚み:b1)/A2(厚み:a2)/B2(厚み:b2)/A3(厚み:a3)の5層からなる場合、層Aと層Bの総厚み比(a/b)、すなわち(a1+a2+a3)/(b1+b2)が0.01〜1であることを意味する。この総厚み比(A/B)が0.01に満たないと、ポリエステル層Aの存在割合が少ないため、フィルム製造時の厚み制御が難しいなど問題を生じ、また、フィルムの寸法安定性が不充分である。一方、総厚み比が1を超えると、実質的に非晶構造であるポリエステル層Bの存在割合が少ない為、フィルムの加工性が不充分となってしまう。
【0021】
[添加剤]
基材フィルムは、ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bのいずれか一方または両方に、ポリオレフィン系樹脂を0.1〜30重量%含有することが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテンを例示することができる。
【0022】
基材フィルムは、適度な滑り性が得られ優れたフィルムの取り扱い性を得るために、好ましくは微粒子を含有する。微粒子として、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンといった無機微粒子;シリコーン、ポリスチレン架橋体、アクリル系架橋体といった有機微粒子;触媒残渣の析出による微粒子を例示することができる。微粒子の平均粒子径は、例えば2.5μm以下である。この微粒子のうち、特に平均粒子径が1.0〜2.0μmの微粒子と平均粒子径が0.05〜0.5μmの微粒子の2種類の粒子を併用すると、透明性を維持しながら効率的に滑性、すなわち巻取り性や取り扱い性を向上させることができて好ましい。基材フィルムが多層フィルムである場合には、最外層のみに微粒子を含有させることで、非常に高い透明性を得ることができる。
【0023】
[表面処理]
基材フィルムは、金属蒸着層との接着性を向上させる目的、印刷用インクとの接着性を向上させる目的、その他表面加工層との接着性を向上させる目的、これらの層との離型性を発現する目的、滑り性を付与する目的等において、片面もしくは両面にコーティング処理を施してもよい。透明性を維持しながら滑り性を付与する目的においては、コーティングにより滑り性を付与する事が好ましい。これによりフィルム内部の滑剤含有量をより少なくすることができる。また、同様の目的において、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施してもよい。
【0024】
基材フィルムのヘーズは、10%以下であることが好ましい。ヘーズが10%より大きいと、金属蒸着を施しても十分な金属光沢が得られず、良好な外観を得ることができない。ヘーズは、滑剤の種類、添加量によって調整することができる。
【0025】
[基材フィルムの製造方法]
基材フィルムに単層フィルムを用いる場合、基材フィルムは、当業界に蓄積されたフィルムの製造方法に従って製造することができる。
【0026】
基材フィルムに積層フィルムを用いる場合、基材フィルムは、共押出製膜法で製造することが好ましい。その具体例を、例えば上記3層フィルム(A/B/A)の場合について説明すると、先ず、ポリエステル層A用に調製したポリエステルのチップを乾燥、溶融する。これと並行して、ポリエステル層B用に調製したポリエステルのチップを乾燥、溶融する。続いて、これら溶融ポリマーをダイ内部で3層に積層し、例えばフィードブロックを設置したダイ内部で3層に積層したのち、冷却ドラム上にキャスティングして未延伸多層フィルムにし、続いて、該多層フィルムを縦軸及び/又は横軸に1軸以上の方向に延伸して1軸以上の延伸配向構造を有する多層延伸フィルムを得る。なお、5層以上の場合も、同様にすることができる。延伸処理はポリエステル層Aが所望の配向構造を形成する条件で行い、例えば層Aを構成するポリエステルのTg(ガラス転移温度)−10℃からTg+50℃の温度(Tc)で、縦方向に2.5倍以上、好ましくは3〜6倍延伸し、更に好ましくは3〜4倍延伸し、次いでTg+10からTg+50℃の温度で、横方向に2.5倍以上、好ましくは3〜6倍延伸、更に好ましくは3〜4倍するのが、フィルムの厚み斑を良好にする点において好ましい。
【0027】
以上の様にして得られる多層延伸フィルムに、さらに熱処理を実施する。この熱処理温度は、ポリエステル層Bの融点より高い温度であることが肝要であり、この熱処理によりポリエステル層Bが溶融して、1軸以上の延伸処理で形成された延伸配向構造が、実質的に無配向構造に変化する。熱処理温度は、ポリエステル層Bの融点より5℃以上高い温度で、かつポリエステル層Aの融点より10℃以上低い温度が好ましい。なお、この熱処理によって、ポリエステル層Aには、例えば熱固定処理の効果をもたらす。この熱処理方法は特に限定されないが、例えば、フィルム製造時において延伸後直ちに工程内で熱処理する方法、フィルム製造完了後フィルムをロール状に巻き取った後熱処理する方法などが挙げられるが前者が特に好ましい。
【0028】
[インジウム蒸着層]
本発明の成形用フィルムは、基材フィルムのうえにインジウム蒸着層を備える。これにより金属光沢を有する外観とすることができる。インジウム蒸着層は、基材フィルムの片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。
【0029】
インジウム蒸着層は、インジウムを蒸着した層であり、金属光沢を呈する。インジウム蒸着層の厚みは、好ましくは100Å〜1500Å、特に好ましくは300〜800Åである。100Å未満であるとフィルムを通して向こう側が透けて見えてしまうなど金属調の外観として不十分となってしまい好ましくない。これは、成形加工後に特に顕著となる。1500Åを超えるとインジウム蒸着する工程において蒸着時間を長くする必要があり基材フィルムが蒸着の熱により変形してしまう、生産性が低下してしまうなどの問題が生じ、好ましくない。
【0030】
蒸着法としては、真空蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法を例示することができる。インジウム蒸着層は、基材フィルムの全面に設けてもよく、一部に設けてもよい。基材フィルムが剥離層を有する場合は、剥離層の全面み設けてもよく一部に設けてもよい。なお、基材フィルムとインジウム蒸着層の接着性を向上させる目的で、両者間にアンカー層を介在せしめてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例において用いた特性の測定方法ならびに評価方法は、次のとおりである。
【0032】
(1)ガラス転移温度・融点
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TA Instruments社製、商品名「DSC2920 Modulated」)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度Tg(単位:℃)と融点Tm(単位:℃)を測定した。
【0033】
(2)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0034】
(3)ヘーズ
JIS K7105に準じて、ヘーズ測定機(日本電色工業(株)製、商品名「NDH−2000」)を使用して全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)とを測定し、以下の式からヘーズ(%)を算出した。
ヘーズ(%)=(Td/Tt)×100
【0035】
(4)成形性評価−1
破断伸度と破断応力は、測定装置としてチャック部を加熱チャンバーで覆った引張試験機(東洋ボールドウィン社製、商品名「テンシロン」)を用いて測定した。成形用フィルムから、縦方向(MD)と横方向(TD)について、それぞれ長手方向100mm×幅方向10mmのサンプルを採取し、間隔を50mmにセットしたチャックに挟んで固定した。その際、引張試験機のチャック部分に設置されている加熱チャンバーにより、サンプルの存在する雰囲気下は100℃に保たれる。100mm/分の速度で引張り、試験機に装着されたロードセルで荷重を測定した。荷伸曲線の破断時の荷重を読取り、引張前のサンプル断面積で割って破断応力(MPa)を計算した。また、破断伸度は、初期のチャック間隔(L)と破断時のチャック間隔(L)から、下記式を用いて算出し、破断伸度(%)とした。
破断伸度(%)=(L−L)/L×100
【0036】
(5)成形性評価−2
成形用フィルムをオス/メス型を持つプレス成形機を用いて130℃にてプレス成形し、直径5mm、深さ3mmの円筒形に成形した。成形された円筒形部分の形状を観測し、以下の基準に従い評価した。
◎:円筒形の形状は金型通りであり、フィルムにしわの発生もない。
○:円筒形の形状は金型通りであるが、フィルムに若干のしわの発生がある。
×:フィルムにしわの発生があり、また形状も金型通りでないものがある。もしくは、フィルムが切断してしまう。
【0037】
(6)金属蒸着層評価
金属蒸着を施したフィルムについて、成形加工後の金属蒸着層を以下の手法で観測・評価した。測定装置としてチャック部を加熱チャンバーで覆った引張試験機(東洋ボールドウィン社製、商品名「テンシロン」)を用いて、金属蒸着を施したポリエステルフィルムから縦方向(MD)に長手方向100mm×幅方向10mmのサンプルを採取し、間隔を50mmにセットしたチャックに挟んで固定した。その際、引張試験機のチャック部分に設置されている加熱チャンバーにより、サンプルの存在する雰囲気下は100℃に保たった。100mm/分の速度で引張り、チャック間隔が75mm(フィルムの伸張が50%)となった時点で伸張を停止してサンプルを取り出した。得られた伸張後のサンプルの金属蒸着層について、顕微鏡によりひび割れを観測し、以下の基準に従い評価した。
◎:金属蒸着層にひび割れが観測されない。
○:金属蒸着層に微小なひび割れが観測されるが、フィルムは金属光沢を保っている。
×:金属蒸着層にひび割れが多数観測され、フィルムの金属光沢が劣っている。
【0038】
(7)ポリエステルペレットの作成
出発原料としてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用い、かつ酢酸マンガン、リン酸、3酸化アンチモンを触媒として用いて、常法によりエステル交換反応、重縮合反応を実施し、得られたポリマーを反応釜から吐出、冷却して、ポリエチレンテレフタレートのペレット(以下、PETと呼称)を得た。得られたPETのガラス転移温度は80℃、融点は255℃、固有粘度は0.65であった。
【0039】
出発原料としてテレフタル酸ジメチル88モル%(全酸成分に対し)およびイソフタル酸ジメチル12モル%(全酸成分に対し)とエチレングリコールを用いる以外は、上記PETと同様に、エステル交換反応、重縮合反応を実施し、得られたポリマーを反応釜から吐出、冷却して、共重合ポリエチレンテレフタレートのペレット(以下、IA−CO−PETと呼称)を得た。得られたIA−CO−PETのガラス転移温度は65℃、融点は223℃、固有粘度は0.69であった。
【0040】
出発原料としてテレフタル酸ジメチル88モル%(全酸成分に対し)および2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル12モル%(全酸成分に対し)とエチレングリコールを用いる以外は、上記PETと同様に、エステル交換反応、重縮合反応を実施し、得られたポリマーを反応釜から吐出、冷却して、共重合ポリエチレンテレフタレートのペレット(以下、NDC−CO−PETと呼称)を得た。得られたNDC−CO−PETのガラス転移温度は82℃、融点は223℃、固有粘度は0.69であった。
【0041】
ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと呼称)ペレットとしては、ウィンテックポリマー(株)製デュラネックス500FPを使用した。
【0042】
[実施例1]
上記で得られたIA−CO−PETおよびPBTのペレットを(IA−CO−PET)/(PBT)=55/45重量%となるように混合した混合物を乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に100℃で3.0倍、横方向に100℃で3.2倍に逐次2軸延伸した後、195℃で熱固定し、25μm厚みの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、フィルムは滑剤として平均粒子径1.7μmの凝集シリカを80ppm、平均粒子径0.1μmの真球状シリカを150ppm含有している。
【0043】
[実施例2]
2軸延伸後のフィルム厚みを50μmとする以外は、実施例1と同様に単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
【0044】
[実施例3]
上記で得られたPETとIA−CO−PETを、(PET)/(IA−CO−PET)=58/42重量%となるように混合した混合物(フィルムとした後にポリエステル層Aとなる)、およびIA−CO−PETとNDC−CO−PETを(IA−CO−PET)/(NDC−CO−PET)=50/50重量%となるように混合した混合物(フィルムとした後にポリエステル層Bとなる)を別々に乾燥、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイ内部で(PETとIA−CO−PETの混合物)|(IA−CO−PETとNDC−CO−PET混合物)|(PETとIA−CO−PETの混合物)の3層に溶融ポリマーを積層し、この状態で冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸多層フィルムを得た。続いて、該多層フィルムを縦方向に110℃で3.0倍、横方向に120℃で3.2倍に逐次2軸延伸した後、235℃で熱固定し、3層フィルムを得た。この3層フィルムの厚み構成は、PETとIA−CO−PETからなる両面の表層(ポリエステル層A)が各2.5μm、IA−CO−PETとNDC−CO−PETからな内層(ポリエステル層B)が45μmの合計50μmであった。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、フィルムは滑剤としてポリエステル層Aに平均粒子径1.2μmの真球状シリコーンを100ppm、平均粒子径0.1μmの真球状シリカを600ppm含有している。
【0045】
[実施例4]
3層フィルムの厚み構成を、PETとIA−CO−PETからなる両面の表層(ポリエステル層A)が各5μm、IA−CO−PETとNDC−CO−PETからな内層(ポリエステル層B)が90μmの合計100μmとする以外は実施例3と同様に3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
【0046】
[実施例5]
ポリエステル層Bを形成する樹脂として、上記で得られたIA−CO−PETを単独で用いる以外は実施例3と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
【0047】
[実施例6]
ポリエステル層Bを形成する樹脂として、上記で得られたNDC−CO−PETを単独で用いる以外は実施例3と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。実施例1〜6で得られたフィルムについて、ヘーズ、成形性評価−1、成形性評価−2の各々の評価を実施した後にインジウムをフィルムの片面に蒸着し、金属蒸着フィルムを得た。次いで、この金属蒸着フィルムについて金属蒸着層評価を実施した。実施例1〜6で得られたフィルムの厚み斑は、何れも10%以下であり、金属蒸着後の外観は良好であった。実施例1〜6で得られたフィルムは、100℃雰囲気下における破断伸度と破断強度が適切な範囲であり、成形用途に用いられるフィルムとして好適であった。また、実施例1〜6の金属蒸着フィルムは、金属蒸着層評価において良好な結果を示した。つまり、実施例1〜6に示すフィルムを用いることにより、良好な金属光沢を有する成形部品を作成することができた。
【0048】
[比較例1]
上記で得られたPETのペレットを乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に100℃で3.3倍、横方向に110℃で3.5倍に逐次2軸延伸した後、235℃で熱固定し、フィルム厚み25μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、フィルムは滑剤として平均粒子径0.7μmのカオリンを800ppm含有している。
【0049】
[比較例2]
上記で得られたIA−CO−PETのペレットを乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に90℃で3.2倍、横方向に100℃で3.4倍に逐次2軸延伸した後、185℃で熱固定し、フィルム厚み25μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、フィルムは滑剤として平均粒子径1.5μmの真球状シリカを1000ppm含有している。比較例1〜2で得られたフィルムについて、ヘーズ、成形性評価−1、成形性評価−2の各々の評価を実施した後にインジウムをフィルムの片面に蒸着し、金属蒸着フィルムを得た。次いで、この金属蒸着フィルムについて金属蒸着層評価を実施した。比較例1〜2で得られた2軸延伸フィルムは、100℃雰囲気下における破断伸度と破断強度が不適切であるために、成形用途に用いられるフィルムとしては不適切であった。
【0050】
[比較例3]
実施例1と同様の方法でフィルム厚み25μmの単層フィルムを得た。比較例3で得られたフィルムについて、ヘーズ、成形性評価−1、成形性評価−2の各々の評価を実施した後にアルミニウム金属をフィルムの片面に蒸着し、金属蒸着フィルムを得た。次いで、この金属蒸着フィルムについて金属蒸着層評価を実施した。
【0051】
[比較例4]
実施例3と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。比較例4で得られたフィルムについて、ヘーズ、成形性評価−1、成形性評価−2の各々の評価を実施した後にアルミニウム金属をフィルムの片面に蒸着し、金属蒸着フィルムを得た。次いで、この金属蒸着フィルムについて金属蒸着層評価を実施した。比較例3〜4で得られたフィルムは、100℃雰囲気下における破断伸度と破断強度は適切な範囲であったが、その金属蒸着フィルムは、金属蒸着層評価において多数のひび割れが観測された。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の成形用フィルムは成型加工性に優れたフィルムであるので、フィルムを用いて成形加工を施す用途に特に好適である。インジウム蒸着層により金属光沢を有し、且つ成形加工後にも金属光沢が維持されるため、金属調の外観を有する成形部品を作成する用途に特に好適である。このような部品は、特に電子機器や自動車部品に好ましく用いることができ、特に特に携帯電話用の成形部品として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃における破断伸度200〜550%かつ100℃における破断応力1M〜130MPaのポリエステルフィルムと、このうえに設けられたインジウム蒸着層とからなる、成型用フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムが、融点Tm(A)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Aと、融点Tm(B)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層BがA/B/Aの順序で配置された積層フィルムであり、Tm(A)>Tm(B)であり、ポリエステル層Aは延伸配向構造を有し、ポリエステル層Bは非配向構造を有する、請求項1に記載の成形用フィルム。
【請求項3】
携帯電話の部品に用いられる請求項1または2に記載の成形用フィルム。

【公開番号】特開2006−297853(P2006−297853A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126188(P2005−126188)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】