説明

成形用組成物の使用

【課題】成形用組成物の使用を提供する。
【解決手段】本発明は、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性が増大した、製品、構成要素、成形品、成形部品、または半製品を製造するための、A)少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド;B)少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー;C)分岐効果または鎖伸長効果を有する少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤;D)成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤;および場合によってはさらに、E)上述の成分とは異なるその他の添加剤;を含む成形用組成物の使用に関し、さらには、前記製品を製造するために前記成形用組成物を使用することによって、クランクケースガスに対するそれらの抵抗性の面において、自動車両における、好ましくはそれらの内燃機関における、製品、成形品、構成要素または成形部品を改良するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性が増大した半製品または製品、構成要素、成形部品もしくはそれらから製造される成形品を製造するための、A)少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド;B)少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー;C)分岐効果または鎖伸長効果を有する少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤;D)成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤;および場合によってはさらにE)上述の成分とは異なる少なくとも1種のその他の添加剤;を含む、成形用組成物の使用に関し、さらには、前記製品を製造するために前記成形用組成物を使用することによって、クランクケースガスに対するそれらの抵抗性の面において、自動車両における、好ましくはそれらの内燃機関における、製品、成形品、構成要素または成形部品を改良するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になって、自動車両のエンジンコンパートメント内の従来からの金属構造物がエンジニアリングサーモプラスチックによって置き換えられることが多くなってきた。その理由は、構成要素の重量の軽減および製造方法におけるメリット(コスト削減、機能の一体化、材料および方法に関連した設計の自由度、より滑らかな内部表面など)だけではなく、特に材料の優れた物性、たとえば、長期間にわたる高い使用温度、高い動的強度、ならびに熱老化および化学薬品に対する抵抗性のためでもある((非特許文献1))。多くのエンジニアリングサーモプラスチックにおいて問題となる因子は、クランクケースガスもしくはブローバイガス、および/またはそれらの構成成分に対する抵抗性であることが判ってきた。燃焼方法の際に自動車両のエンジンコンパートメントにおいて発生する排気ガスの幾分かは、エンジンブロックの中に運ばれ、そこから、ホースを通って燃焼のためのエンジンに戻る。このガスは、クランクケースガスと呼ばれていて、曝露される部位で使用されているポリマー材料のところで凝縮析出物を形成し、損傷を与える可能性がある。凝縮物の組成は、そのエンジンの運転条件の関数としてかなり変化する。それは、主として燃料、エンジンオイル、および特に硝酸を含む酸性の水相からなっている。(特許文献1)は、クランクケースガスを清浄化するための装置および方法に関するものである。(特許文献2)および(特許文献3)には、クランクケースガスのためのオイルセパレーターおよびオイルプリセパレーターが開示されている。(特許文献4)には、クランクケースガスを戻す装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1 537 301B1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第101 27 819A1号明細書
【特許文献3】独国実用新案第20 2007 003 094U1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2008 018 771A1号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Rohrsysteme im Motorraum(Pipe systems in the engine compartment)」,Kunststoffe,11/2007、Carl Hanser Verlag,126〜128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クランクケースガスの清浄化、排気、または分離を与える先に引用した従来技術とは対照的に、本発明の目的は、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性が増大した、製品、構成要素、成形部品または成形品を提供することにある。
【0006】
本発明の目的のためには、製品、構成要素、成形部品または成形品を、自動車両内、または自動車両産業において使用し、それらは好ましくは、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分と接触状態にある、自動車両における空気輸送構成要素である。それらが、清浄空気ライン、給気パイプ、吸気パイプ、バルブカバー、およびクランクケースベントであれば、特に好ましい。
【0007】
清浄空気ラインは、空気フィルターとターボチャージャー付き内燃機関のターボチャージャーとを連結している。ターボチャージャー無しのエンジンにおいては、清浄空気ラインは、空気フィルターと吸気パイプとを連結している。
【0008】
本発明の目的において、給気パイプは、内燃機関における、ターボチャージャーと熱交換器/給気クーラーとの間、および熱交換器と吸気パイプとの間の連結パイプである。
【0009】
吸気パイプは、内燃機関のシリンダーヘッドの上に直接取り付けられている構成要素であって、空気または空気−燃料混合物を、吸引吸気から、個々のシリンダーのインレットダクトへと導入している。
【0010】
バルブカバーは、シリンダーヘッドカバーとも呼ばれ、(垂直)内燃機関、好ましくは四サイクル内燃機関の最上部分である。それは、弁装置の上側の動作要素を覆い、潤滑油が環境に洩れるのを防ぎ、またエンジンの中に空気が入ることを防いでいる。
【0011】
クランクケースベントは、内燃機関の燃焼室から発生したクランクケースガスを、ピストンまたはピストンリング(ピストンリングギャップ)とシリンダーの間の領域で、クランクケースチャンバーに取り込み、それらをエンジンの吸引吸気系に送っている。
【0012】
清浄空気ラインおよび給気パイプを製造するために現在使用されている材料の例は、エラストマー性のブロックコポリアミドおよび熱可塑性ポリエステルエラストマーである(「Luftfuehrung unter der Motorhaube(Air management under the engine hood)」,Kunststoffe,8/2001、Carl Hanser Verlag,79〜81)。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことには、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性が増大した製品、構成要素、成形部品または成形品を、以下のものを含む成形用組成物を使用することによって得ることが可能であるということが見出された:中程度の粘度のポリアミドおよび/またはコポリアミド;少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリレートまたはアクリレートとのコポリマー(ここで、そのコポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分より高い、好ましくは150g/10分より高い、特に好ましくは300g/10分より高い);さらにエポキシ化植物油または分岐効果もしくは鎖伸長効果を有する他の2官能もしくは多官能の添加剤;さらに耐衝撃性改良剤;およびさらに場合によっては、さらなる添加剤。
【0014】
本発明は、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性に関して、自動車両、好ましくはそれらの内燃機関のための製品、成形品、構成要素、成形部品または半製品の抵抗性を増大させるために、以下のものを含む成形用組成物の使用を提供する:
A)40〜98.98重量部の少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド、
B)1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、特に好ましくは3〜6重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー(ここでそのコポリマーB)のMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分より高い、好ましくは150g/10分より高い、特に好ましくは300g/10分より高く、そのMFIは、2.16kg荷重を使用し190℃で定量または測定した(determineed or measured)ものである)、
C)0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜6重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部の、分岐効果または鎖伸長効果を有し、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含む、少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤、ならびに
D)0.01〜40重量部、好ましくは5〜39重量部、特に好ましくは15〜35重量部の、成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一つの好ましい実施形態においては、本発明による熱可塑性成形用組成物が、成分A)、B)、C)およびD)に加えて、上述の成分とは異なる少なくとも1種のその他の添加剤E)を0.001〜5重量部含んでいることもまた可能である。
【0016】
本発明においては、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という意味合いを有するが、「からなる(composed of)」という意味合いは有していない。一つの特に好ましい実施形態においては、本発明による成形用組成物は、成分A)、B)、C)およびD)、ならびにさらに場合によってはE)からなる。本発明においては、方法工程B)におけるコポリマーが、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとからなっているのが好ましい。
【0017】
ここで明確にしておくが、本発明の範囲には、一般的な用語または好ましい範囲として本明細書に挙げた定義およびパラメーターのすべてを各種所望の組合せとしたものが包含されるということに注意されたい。
【0018】
本発明において使用されるべき成形用組成物を使用することによって製造される製品、構成要素、成形部品、成形品または半製品は、自動車両、特にそれらの内燃機関における空気輸送構成要素、好ましくは清浄空気ライン、給気パイプ、特に給気フィードラインまたはそうでなければ給気リターンライン、吸気パイプ、クランクケースベント、およびトランスミッションベントである。
【0019】
本発明の目的において、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対する抵抗性とは、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分と接触した後で、本発明による製品、成形部品、構成要素または成形品が、以下の状態であることを意味している:
a)試験流体を吸収した結果としての重量増加が、7.5%未満、好ましくは5%未満を示す、
b)表面損傷(たとえば、試験流体を取り込んだことによる亀裂および/またはブリスター)を示さない、そして
c)未老化条件下の場合に比較して、わずかしか変化していない機械的性質を示す。本発明の目的において、未老化条件下の場合に比較して、わずかな変化とは、以下のことを意味している:
1.未老化条件下の場合に比較して、老化後のショアーD硬度の低下が、10%未満、好ましくは7.5%未満であり、そして
2.未老化条件下の場合に比較して、老化後の引張強度の低下が、40%未満、好ましくは25%未満である。
【0020】
本発明の目的において、クランクケースガスの構成成分は、燃料、エンジンオイル、トランスミッションオイル、水性の酸、ならびに無機燃焼ガス、特に窒素酸化物である。
【0021】
本出願はさらに、自動車両、好ましくはそれらの内燃機関における製品、成形品、構成要素または成形部品を、クランクケースガスに対するそれらの抵抗性に関して、改良するための方法を提供するが、それらを製造するために、以下のものを含む成形用組成物を使用することを特徴としている:
A)40〜98.98重量部の少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド、
B)1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、特に好ましくは3〜6重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー(ここでそのコポリマーB)のMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分より高い、好ましくは150g/10分より高い、特に好ましくは300g/10分より高く、そのMFIは、2.16kg荷重を使用し190℃で定量または測定したものである)、
C)0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜6重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部の、分岐効果または鎖伸長効果を有し、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含む、少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤、ならびに
D)0.01〜40重量部、好ましくは5〜39重量部、特に好ましくは15〜35重量部の、成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤。
【0022】
成分A)として使用するポリアミドを製造するための極めて広く各種の公知の方法が存在しており、所望の最終製品を得るための関数として、各種のモノマー単位、所望の分子量に調節するための各種の鎖制御剤、そうでなければ、後続の所望の後処理のための反応性基を有するモノマーを使用する。
【0023】
本発明における成形用組成物において成分A)として使用するためのポリアミドを製造する目的で工業的に適した方法は、溶融状態における重縮合という方法で進行させるのが好ましい。本発明においては、重縮合には、ラクタムの加水分解的重合も含まれる。
【0024】
本発明において好ましいポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸とから、および/または少なくとも5個の環メンバーを有するラクタムから、または対応するアミノ酸から製造することが可能な半晶質または非晶質のポリアミドである。使用可能な好ましい出発物質は、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、特に好ましくはアジピン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、特に好ましくはテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、各種異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、特にアミノカプロン酸、または対応するラクタムである。複数の上述のモノマーから製造されたコポリアミドも含まれる。
【0025】
特に好ましいのは、ナイロン−6、ナイロン−6,6、およびコモノマーとしてカプロラクタムを含むコポリアミドである。
【0026】
その材料にはさらに、リサイクルポリアミド成形用組成物および/または繊維のリサイクル物も含むことができる。
【0027】
成分、成形部品、成形品または半製品を製造するために本発明において使用される成形用組成物には、主たる樹脂として、2.3〜4.0、特に好ましくは2.7〜3.5の相対粘度ηrelを有するポリアミドおよび/またはコポリアミドを含んでいるのが好ましいが、ここで相対粘度は、メタ−クレゾール中1重量%溶液について25℃で測定する。
【0028】
本発明において、製品、構成要素、成形部品、成形品または半製品を製造するために使用される成形用組成物には、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリレートとから製造した少なくとも1種のコポリマーB)が含まれるが、ここでそのコポリマーB)のMFIは、10g/10分より高い、好ましくは150g/10分より高い、特に好ましくは300g/10分より高く、そのMFIは、2.16kgの荷重を用いて190℃で定量または測定したものである。一つの好ましい実施形態においては、コポリマーB)は、4重量部未満、特に好ましくは1.5重量部未満、極めて特に好ましくは0重量部の、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択される他の反応性官能基を含むモノマー単位からなっている。
【0029】
MFI、その定義およびその測定についての情報に関しては、B.Carlowitz,『Tabellarische Uebersicht ueber die Pruefung von Kunststoffen(Tabular overview of the testing of plastics)』、6th Edition,Giesel Verlag fur Publizitaet,1992を参照されたい。それによれば、MFIは、ある時間のあいだに特定の条件下でダイを強制的に通過させた、試験片の質量である。DIN 53 735(1988)およびISO 1133−1981に、本明細書の熱可塑性プラスチックのために使用するべき方法が規定されている。MFIは、ある種の圧力および温度条件下における、(成形用組成物に対して試験した)熱可塑性プラスチックの流動挙動を特徴付けるのに役立つ。それは、プラスチック溶融物の粘度の目安である。それは、重合度、すなわち1分子の中のモノマー単位の平均数についての結論を引き出すのに使用することができる。
【0030】
ISO 1133によるMFIは、キャピラリー粘度計を使用して求められるが、そこでは、材料(ペレットまたは粉体)を加熱可能なシリンダーの中で溶融させ、上に置いた荷重によって生ずる圧力によって、所定のダイ(キャピラリー)の中を強制的に通過させる。押し出されたポリマー溶融物(押出し物とも呼ばれる)の質量を、時間の関数として測定する。溶融物の質量流量を得るためには、溶融押出し物の秤量をしなければならない。
MFI=質量/10分
【0031】
MFIの単位は、g/10分である。本発明の目的においては、MFIは、2.16kgの荷重を使用し、190℃で定量および測定をする。
【0032】
コポリマーB)の構成成分として適しているオレフィン、好ましくはα−オレフィンは、好ましくは2〜10個の炭素原子を有し、非置換であっても、あるいは1個または複数の脂肪族、脂環族または芳香族基による置換基を有していてもよい。
【0033】
好適なオレフィンは、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテンからなる群より選択されるものである。特に好ましいオレフィンはエテンおよびプロペンであり、極めて特に好ましいのはエテンである。
【0034】
上述のオレフィンの混合物も同様に好適である。
【0035】
また別な好ましい実施形態においては、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択される、コポリマーB)のまた別な反応性官能基を、オレフィンのルートでコポリマーB)の中に排他的に(exclusively)導入する。
【0036】
コポリマーB)中のオレフィンの含量は、50〜90重量部、好ましくは55〜75重量部である。
【0037】
コポリマーB)は、オレフィンに加えて、第二の構成成分によってもさらに規定される。使用されるその第二の構成成分には、アクリル酸のアルキルエステルまたはアリールアルキルエステルが含まれるが、そのアルキルまたはアリールアルキル基は、1〜30個の炭素原子で形成されている。そのアルキルまたはアリールアルキル基は、直鎖状または分枝状の基であってもよく、また脂環式基または芳香族基をさらに含んでいてもよく、そして1個または複数のエーテルまたはチオエーテル官能基による置換を有していてもよい。この文脈において好適なその他のアクリレートは、1個だけのヒドロキシ基と多くとも30個の炭素原子を有する、オリゴエチレングリコールまたはオリゴプロピレングリコールをベースとするアルコール成分から合成されてものである。
【0038】
アクリレートのアルキル基またはアリールアルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、1−(2−エチル)ヘキシル、1−ノニル、1−デシル、1−ドデシル、1−ラウリル、または1−オクタデシルからなる群より選択することができる。6〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアリールアルキル基が好ましい。同じ数の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基よりも低いガラス転移温度Tを与える、分枝状のアルキル基も特に好ましい。
【0039】
本発明においては、オレフィンをアクリル酸2−エチルヘキシルと共重合させたコポリマーB)が特に好ましい。上述のアクリレートの混合物も同様に好適である。
【0040】
本発明においては、コポリマーB)中のアクリレートの全量を規準にして、60重量部を超える、特には90重量部を超える、極めて特には100重量部のアクリル酸2−エチルヘキシルを使用するのが好ましい。
【0041】
また別な好ましい実施形態においては、コポリマーB)の、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択されるまた別な反応性官能基を、アクリレートのルートでコポリマーB)の中に排他的に導入する。
【0042】
コポリマーB)中のアクリレートの含量は、10〜50重量部、好ましくは25〜45重量部である。
【0043】
本発明による成形品、成形部品、製品、または構成要素を製造するために使用される成形用組成物には、成分C)として、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含む、少なくとも1種の2官能または多官能の分岐効果または鎖伸長効果を有する添加剤を含む。使用可能な分岐性または鎖伸長性の添加剤には、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を有する低分子量およびオリゴマー性の化合物が含まれているが、それらは、一級および/または二級アミノ基、および/またはアミド基および/またはカルボン酸基と反応することができる。鎖伸長効果を有する官能基は、好ましくは、イソシアネート、キャップドイソシアネート、エポキシド、無水マレイン酸、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾロンである。
【0044】
特に好ましいのは以下のものである:ジグリシジルエーテルをベースとするジエポキシド、特にビスフェノールとエピクロロヒドリンから誘導されたもの、アミンエポキシ樹脂をベースとするジエポキシド、特にアニリンとエピクロロヒドリンから誘導されたもの、脂環式ジカルボン酸とエピクロロヒドリンとのジグリシジルエステル(個別または混合物の形で)、さらには、2,2−ビス[p−ヒドロキシフェニル]プロパンジグリシジルエーテル、ビス[p−(N−メチル−N−2,3−エポキシプロピルアミノ)フェニル]メタン、ならびにさらに、1分子あたりに少なくとも2個、多くとも15個のエポキシ基を有するエポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステル。
【0045】
特に好ましいのはグリシジルエーテルであり、極めて特に好ましいのは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、およびエポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステル、さらにはエポキシ化ダイズ油(CAS 8013−07−8)である。
【0046】
エポキシ化ダイズ油は、ポリ塩化ビニルのための補助安定剤および可塑剤として公知である(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.460〜462)。それは特に、ガラス容器およびビンを密閉するための金属製の蓋のポリ塩化ビニルシールにおいて使用される。
【0047】
分岐および鎖伸長に特に好ましく適しているのは以下のものである:
1.
ポリ−もしくはオリゴ−グリシジルまたはポリ(β−メチルグリシジル)エーテル、好ましくは、少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシ基および/またはフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物を適切に置換されたエピクロロヒドリンと、アルカリ性条件下で反応させるか、または酸性触媒の存在下に反応させた後にアルカリ処理をすることによって、得ることが可能なもの。
ポリ−もしくはオリゴ−グリシジルまたはポリ(β−メチルグリシジル)エーテル、好ましくは、非環状アルコールたとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチルプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはポリエピクロロヒドリンから誘導されたもの。
しかしながら、それらが、脂環式アルコールたとえば、1,3−もしくは1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、または1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ−3−エンから誘導されていても好ましいし、あるいはそれらが、芳香族環を有していて、たとえばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンであってもよい。
そのエポキシ化合物を、好ましくは、単核のフェノール、特にレソルシノールまたはヒドロキノンから誘導することもでき;あるいは、それらが、多核フェノール、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、または酸性条件下にフェノールとホルムアルデヒドとから得られる縮合物、特にフェノールノボラックをベースとしたものでもよい。
2.
ポリ−もしくはオリゴ−(N−グリシジル)化合物、好ましくはエピクロロヒドリンとアミンとの反応生成物を脱塩化水素させて得られるもの(これらには、少なくとも2個のアミノ水素原子が含まれている)。これらのアミンには、好ましくは、アニリン、トルイジン、n−ブチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、m−キシリレンジアミン、もしくはビス(4−メチルアミノフェニル)メタン、または、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェニルもしくはN,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールが含まれる。
しかしながら、その他の好ましいポリ(N−グリシジル)化合物としては、シクロアルキレン尿素、特に好ましくはエチレン尿素もしくは1,3−プロピレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、およびヒダントイン、特に5,5−ジメチルヒダントインのN,N’−ジグリシジル誘導体がある。
3.
ポリ−もしくはオリゴ−(S−グリシジル)化合物、特にジ−S−グリシジル誘導体、好ましくはジチオール、好ましくはエタン−1,2−ジチオールまたはビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導されたもの。
4.
エポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステル、特にエポキシ化植物油。それらは、不飽和脂肪酸のトリグリセリドの反応性オレフィン基をエポキシ化することによって得られる。エポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステルは、グリセロールの不飽和脂肪酸エステル、好ましくは植物油から、そして有機ペルオキシカルボン酸から出発して製造することができる(Prilezhaev反応)。エポキシ化植物油を製造するための方法は、たとえば、Smith,March,『March’s Advanced Organic Chemistry』(5th Edition,Wiley−Interscience,New York,2001)に記載されている。好適なエポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステルは、植物油である。本発明において特に好ましいエポキシ化したグリセロールの脂肪酸エステルは、エポキシ化ダイズ油(CAS 8013−07−8)である。
【0048】
本発明による成形品、成形部品、製品、構成要素または半製品を製造するために使用される成形用組成物には、成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤D)が含まれる。耐衝撃性改良剤は、エラストマー変性剤、エラストマー、変性剤、またはゴムと呼ばれていることも多い。
【0049】
これらには、好ましくは、コポリマー(コポリアミドは除く)が含まれるが、それらが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、およびアルコール成分中に1〜18個の炭素原子を有するアクリレートの群からの少なくとも2種のモノマーからなっているのが好ましい。
【0050】
このタイプのポリマーは、たとえば、Houben−Weyl『Methoden der organischen Chemie(Methods of organic chemistry)』,Volume 14/1(Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961),p.392〜406、およびOdian『Principles of Polymerization』(Fourth Edition,Wiley−Interscience,2004)に記載されている。
【0051】
本発明において好適に使用されるいくつかの耐衝撃性改良剤について、以下に説明する。
【0052】
成分D)として使用するのに好適なタイプのこれらの耐衝撃性改良剤は、エチレン−プロピレンゴム(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムとして知られているものである。
【0053】
EPMゴムは一般的には、残存二重結合を実質的に有していないが、それに対して、EPDMゴムは、100個の炭素原子あたり1〜20個の二重結合を有することができる。
【0054】
EPDMゴムのために使用するのに好適なジエンモノマーは、共役ジエンたとえば、イソプレンまたはブタジエン、5〜25個の炭素原子を有する非共役ジエンたとえば、ペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環状ジエンたとえば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエン、ならびにさらにはアルケニルノルボルネンたとえば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、ならびにトリシクロジエンたとえば、3−メチルトリシクロ[5.2 1.0 2.6]−3,8−デカジエン、またはそれの混合物である。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネン、またはジシクロペンタジエンが特に好ましい。EPDMゴムのジエン含量は、ゴムの全重量を基準にして、好ましくは0.5〜50、特にはl〜8重量%である。
【0055】
EPMゴムまたはEPDMゴムは、好ましくは、さらに反応性カルボン酸またはそれらの誘導体を用いてグラフトしておくことも可能である。本発明においては、以下のものが好ましい:アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの誘導体、特にグリシジル(メタ)アクリレート、ならびに無水マレイン酸。
【0056】
ゴムにはさらに、ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸もしくはフマル酸または前記酸の誘導体、好ましくはエステルおよび無水物、および/またはエポキシ基を含むモノマーを含むことができる。これらのジカルボン酸誘導体またはエポキシ基を含むモノマーは、好ましくは、モノマー混合物に対する一般式(I)または(II)または(III)または(IV)のモノマーの付加反応を介してゴムの中に組み入れるが、ここでそれらは、それぞれ、ジカルボン酸基およびエポキシ基を含んでいる。
【化1】

[式中、
〜Rは、水素またはl〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
mは、0〜20の整数(末端の数値を含める)であり、そして
nは、0〜10の整数(末端の数値を含める)である。]
【0057】
残基部分R〜Rが水素であるのが好ましく、この場合、mは0または1であり、nは1である。それに相当する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル、およびビニルグリシジルエーテルである。
【0058】
本発明においては、式(I)、(II)および(IV)の好適な化合物は、マレイン酸および無水マレイン酸である。
【0059】
コポリマーが、50〜98重量部のエチレンと、0.1〜20重量部のエポキシ基を含むモノマーおよび/または無水物基を含むモノマーとからなっているのが好ましい。
【0060】
ビニルエステルおよびビニルエーテルを、他のコモノマーとして使用することもまた可能である。
【0061】
上述のエチレンコポリマーは、公知の方法、好ましくは高圧高温下のランダム共重合を介して製造することができる。それに相当する方法は、周知である。
【0062】
他の好適なエラストマーは、エマルションポリマーであるが、それらの製造法は、文献に記載がある(Bernd Tieke,『Makromolekulare Chemie』,Wiley−VCH,Weinheim,2005,p.86〜90;George Odian,『Principles of Polymerization』,Wiley−Interscience,2004,p.350〜371)。
【0063】
原理的には、均質な構造のエラストマーを使用しても、あるいはシェル構造を有するものを使用してもよい。シェルタイプの構造は、個々のモノマーを順に添加することによって決められるが、この添加順序がポリマーのモルホロジーにも影響する。
【0064】
ブタジエンおよびイソプレン、ならびにそれらの混合物をここで挙げたのは、エラストマーのゴム部分を構成するためにモノマーの単なる代表としてである。前記モノマーを、他のモノマー、好ましくはスチレン、アクリロニトリル、およびビニルエーテルと共重合させることもできる。
【0065】
好ましくは0℃未満のガラス転移温度を有する、エラストマーのソフト相すなわちゴム相は、コアとすることも、外側のエンベロープとすることも、特に3層以上のシェルを含む構造を有するエラストマーの場合においては中間シェルとすることもできる。多層シェルエラストマーの場合においては、複数のシェルがゴム相からなっているようにすることも可能である。
【0066】
エラストマーの構造が、ゴム相だけではなく、1種または複数の、好ましくはガラス転移温度が20℃よりも高いハード成分も含んでいるような場合には、それらは通常、メインモノマーとしてスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、またはp−メチルスチレンを重合させることによって製造する。この場合もまた、それらに加えて、比較的少量の他のコモノマーを使用することも可能である。
【0067】
場合によっては、表面に反応性の基を有するエマルションポリマーを使用することが有利であることも判ってきた。このタイプの基は、エポキシ基、カルボキシ基、潜在性カルボキシ基、アミノ基またはアミド基であるか、そうでなければ、一般式(V)のモノマーを併用することによって導入することが可能な官能基であるのが好ましい。
【化2】

[式中の置換基の定義は、以下のように示すことができる:
10:水素またはC〜C−アルキル基、
11:水素、C〜C−アルキル基、または、単環、二環、もしくは三環のホモ−もしくはヘテロ芳香族基、特にフェニル、
12:水素、C〜C10−アルキル基、OR13、または、単環、二環、もしくは三環のホモ−もしくはヘテロ芳香族基、特にフェニル、
13:C〜C−アルキル基または、単環、二環、もしくは三環のホモ−もしくはヘテロ芳香族基、特にフェニル(このものは、場合によっては、O−含有基もしくはN−含有基によって置換されていてもよい)、
X:単結合、C〜C10−アルキレン基、または単環、二環、もしくは三環のホモ−もしくはヘテロ芳香族基、特にフェニレン、または
【化3】

Y:O−ZまたはNH−Z、そして
Z:C〜C10−アルキレン基、または、単環、二環、もしくは三環のホモ−もしくはヘテロ芳香族基、特にフェニル。]
【0068】
欧州特許出願公開第0 208 187A2号明細書に記載されているグラフトモノマーもまた、表面に反応性基を導入するのには適している。
【0069】
他の例としては、以下のものが挙げられる:アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ならびに好ましくはメタクリル酸N−tert−ブチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、またはアクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル。
【0070】
ゴム相の粒子が、さらに架橋されていてもよい。架橋剤として使用するのに好適なモノマーは、ブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、さらには欧州特許出願公開第0 050 265A1号明細書に記載されている化合物である。
【0071】
グラフト結合性(graftlinking)モノマーとして知られている化合物、すなわち2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを使用することもまた可能であり、それらは、重合反応の際に異なった速度で反応する。少なくとも1個の反応性基が、他のモノマーとほぼ同じ速度で重合するのに対して、他の(1個または複数の)反応性基が、たとえば顕著にゆっくりと重合するような化合物を使用するのも好ましい。重合速度が異なっていることによって、ゴム中にある程度の割合の不飽和二重結合が生成する。次いで、このタイプのゴムの上にまた別な相をグラフトさせると、そのゴムの中に存在している二重結合の少なくとも幾分かがそのグラフトモノマーと反応して化学結合を形成する、すなわち、グラフトのベースに対するグラフトとしていく相の、少なくとも幾分かは化学結合的な結合が存在する。
【0072】
好適なグラフト結合性モノマーは、アリル基を含むモノマー、特に好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、特に好ましくはアクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、または前記ジカルボン酸の対応するモノアリル化合物である。それらに加えて、広く各種の好適なグラフト結合性モノマーが存在している。さらに詳しい参考例としては、たとえば、米国特許第A4148846号明細書および米国特許第A4 327 201号明細書を挙げることができる。
【0073】
本発明において好ましいいくつかのエマルションポリマーを以下に挙げる。最初に、コアと少なくとも1層の外側シェルを有し、次の構造を有するグラフトポリマーを次に挙げる。
【0074】
【表1】

【0075】
多層シェル構造を有するグラフトポリマーに代えて、均質な、すなわち、ブタ−1,3−ジエン、イソプレン、またはそれらのコポリマーから作成された単一のシェルのエラストマーを使用することもまた可能である。この場合もまた、架橋性モノマーまたは反応性基を有するモノマーを併用することによって、これらの反応生成物を製造することができる。
【0076】
好適なエマルションポリマーは、エチレンと、反応性基を与えるコモノマーとのコポリマーである。
【0077】
上述のエラストマーは、他の慣用される方法、好ましくは懸濁重合によっても製造することができる。独国特許出願公開第3 725 576A1号明細書、欧州特許出願公開第0 235 690A2号明細書、独国特許出願公開第3 800 603A1号明細書、および欧州特許出願公開第0 319 290A1号明細書に記載のシリコーンゴムも同様に好ましい。
【0078】
言うまでもないことであるが、上述のタイプのゴムの混合物を使用することもまた可能である。
【0079】
製品、構成要素、成形部品、成形品または半製品を製造するために本発明において使用されるべき成形用組成物が、少なくとも1種のEPMタイプまたはEPDMタイプの耐衝撃性改良剤D)を含んでいるのが特に好ましい。
【0080】
成形品、成形部品、製品、構成要素または半製品を製造するために本発明において使用する成形用組成物には、さらに、成分A)、B)、C)およびD)ともさらに異なる、少なくとも1種の添加剤E)を含むことができる。本発明の目的のために好適な添加剤E)としては以下のものが挙げられる:安定剤(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.80〜84、352〜361)、成核剤(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.949〜959、966)、潤滑剤および離型剤(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.535〜541、546〜548)、帯電防止剤(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.627〜636)、導電性向上添加剤(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.630)、ならびに染料および顔料(Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001,p.813〜818、823、872〜874)。それらの添加剤E)は、単独で使用しても、混合物の形で使用しても、あるいはマスターバッチの形で使用してもよい。
【0081】
好ましい安定剤は、熱安定剤およびUV安定剤である。好ましい安定剤としては、以下のものが挙げられる:ハロゲン化銅、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物と、アルカリ金属のハロゲン化物、好ましくはナトリウム、カリウムおよび/またはリチウムのハロゲン化物との組合せ、および/または次亜リン酸、もしくはアルカリ金属の次亜リン酸塩もしくはアルカリ土類金属の次亜リン酸塩との組合せ、さらには、立体障害フェノール、ヒドロキノン、亜リン酸塩、芳香族二級アミンたとえば、ジフェニルアミン、置換レソルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾールもしくはベンゾフェノン、さらには、これらの群の各種置換された典型物、またはそれらの混合物。
【0082】
特に好ましい安定剤は、ヨウ化銅と、1種または複数のハロゲン化合物、好ましくはヨウ化ナトリウムもしくはヨウ化カリウムとの混合物、または、次亜リン酸もしくはアルカリ金属の次亜リン酸塩もしくはアルカリ土類金属の次亜リン酸塩との混合物であるが、ここで、添加される安定剤混合物の個々の成分は、成形用組成物の中に存在するハロゲンのモル量が、成形用組成物の中に存在している銅のモル量の6倍以上でかつ15倍、好ましくは12倍以下であり、そしてリンのモル量が、その成形用組成物の中に存在している銅のモル量の、等モル以上でかつ、その成形用組成物の中に存在している銅のモル量の10倍好ましくは5倍以下であるようにする。
【0083】
使用する顔料または染料は、カーボンブラックおよび/またはニグロシンをベースとするものが好ましい。
【0084】
好適に使用することが可能な成核剤は、フェニルホスフィン酸ナトリウムもしくはフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および好ましくはタルク粉体である。
【0085】
好適に使用することが可能な潤滑剤および離型剤としては、以下のものが挙げられる:エステルワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸、好ましくはステアリン酸もしくはベヘン酸、または脂肪酸エステル、または脂肪酸の塩、好ましくはステアリン酸Caもしくはステアリン酸Zn、さらには、アミド誘導体、好ましくはエチレンビスステアルアミドもしくはモンタンワックス、および好ましくは、28〜32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖の飽和カルボン酸から作成した混合物、ならびに、低分子量ポリエチレンワックスおよび低分子量ポリプロピレンワックス。
【0086】
導電性を向上させるために添加する好適な添加剤は、導電性またはその他のカーボンブラック、グラファイト、ならびに、導電性を向上させるための、その他の慣用される非繊維質の添加剤である。好適に使用することが可能なナノスケールの添加剤は、「単層カーボンナノチューブ」または「多層カーボンナノチューブ」として公知のものである。
【0087】
本発明による製品、構成要素または成形品を製造するために使用する成形用組成物にはさらに、100ナノメートルよりも小さい1種または複数の寸法を有する構成成分をさらに含むことができる。それらは、有機であっても無機であってもよく、天然品であっても合成品であってもよく、それらのナノ材料を各種組み合わせたものを使用することもできる。
【0088】
本発明において使用されるべき成形用組成物各種公知のプロセスによって加工して、所望の製品、構成要素、成形品、成形部品または半製品が与えられ、好ましくは射出成形法、押出し法、プロファイル押出し法、またはブロー成形法によるが、ここでブロー成形法とは、特に好ましくは、標準的押出しブロー成形法、3D押出しブロー成形法、サクションブロー成形法、および連続共押出し法を意味している。
【0089】
押出し法または射出成形法によって製品、構成要素、成形部品、成形品または半製品を製造するためのこれらのプロセスは、220〜330℃、好ましくは230〜300℃の範囲の溶融温度、さらには、場合によっては高くとも2500バールの圧力、好ましくは高くとも2000バールの圧力、特に好ましくは高くとも1500バールの圧力、極めて特に好ましくは高くとも750バールの圧力で運転する。
【0090】
射出成形プロセスの特徴は、好ましくはペレットの形態にある原料物質を、加熱した円筒状のキャビティの中で溶融(可塑化)させ、それを、射出成形可能な溶融物の形態で、温度調節したキャビティの中へ射出させることにある。その溶融物を冷却(固化)させてから、その射出成形部品を離型させる。
【0091】
射出成形プロセスの中の次の工程を区別する:
1.可塑化/溶融
2.射出相(射出手順)
3.圧力保持相(結晶化の際の熱収縮のため)
4.離型
【0092】
射出成形機は、クランプユニット、射出ユニット、駆動系および調節系からなっている。クランプユニットは、型のための固定および移動可能な熱盤、端盤、さらには移動可能な型の熱盤のためのタイバーおよび駆動系を備えている(トグルアセンブリーまたは油圧クランプユニット)。
【0093】
射出ユニットには、電熱加熱可能なシリンダー、スクリュー駆動系(モーター、ギヤボックス)、およびスクリューと射出ユニットを動かすための油圧系が含まれる。射出ユニットの機能は、粉体またはペレットを溶融、計量、射出すること、およびそれらに(熱収縮に追従する)保持圧力を適用することからなっている。スクリューの中で溶融物が逆流する(漏洩流)問題は、逆流防止弁によって解決される。
【0094】
射出成形型の内部では、流れ込んできた溶融物が次いで、分離され、冷却されて、所望の構成要素または製品または成形物が製造される。このプロセスでは、二分した二つの型が常に必要である。射出成形プロセスの中の次の機能系を区別する:
− ランナーシステム
− 成形インサート
− ガス抜き
− 機械の末端における圧力吸収システム
− 離型システムおよび動きの伝達
− 温度調節
【0095】
射出成形法の場合とは対照的に、押出し法においては、熱可塑性プラスチックの成形品を製造するための機械である押出機が、連続したプラスチック押出し物、今回の場合ではポリアミドを製造する。以下のものを区別する:
一軸スクリュー押出機と二軸スクリュー押出機、さらにはそれぞれのサブグループ、
通常の一軸スクリュー押出機、搬送一軸スクリュー押出機、
反転型二軸スクリュー押出機、および共回転型二軸スクリュー押出機。
【0096】
押出し成形プラントは、押出機、ダイ、下流の装置、および押出しブロー金型からなっている。異形品(profile)を製造するための押出し成形プラントは以下のものからなっている:押出機、異形押出しダイ、キャリブレーター、冷却セクション、キャタピラー引取りおよびローラー引取り、分離デバイス、および傾斜シュート。
【0097】
本発明の目的において、異形品とは、それら全体を通して同一の断面を有している、構成要素または部品である。それらは、異形押出しプロセスによって製造することができる。異形押出しプロセスにおける基本的な工程を以下に示す:
1.押出機中における熱可塑性プラスチックの可塑化および溶融物の作成
2.所望の異形品の断面を有するキャリブレーティングエンベロープを通過させての、熱可塑性プラスチック溶融押出し物の押出し加工
3.キャリブレーティングテーブル上での押出し成形した異形品の冷却
4.キャリブレーティングテーブルの奥にある引取り装置を使用した、異形品の送り出し
5.カッター系による連続の形の異形品の切断
6.長さを揃えて切断した異形品の回収テーブル上での回収。
【0098】
ナイロン−6およびナイロン−6,6の異形押出し品についての説明が、Kunststoff−Handbuch(Plastics handbook)3/4,Polyamide,Carl Hanser Verlag,Munich,1998,p.374〜384にある。
【0099】
本発明の目的において、ブロー成形プロセスは、好ましくは、標準的押出しブロー成形法、3D押出しブロー成形法、サクションブロー成形法、および連続共押出し法である。
【0100】
Thielen,Hartwig,Gust,『Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern(Blow moulding of plastics)』,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,p.15〜17によれば、標準的押出しブロー成形法の基本的な工程は以下のとおりである:
1.押出機中における熱可塑性プラスチックの可塑化および溶融物の作成
2.溶融物の流れを曲げて、垂直下向きに流れるようにして、筒状の溶融物の形状「パリソン」を形成
3.一般的には二つのハーフシェルからなる、型すなわちブロー成形型を使用した、ヘッドの下で遊離状態でぶら下がっているパリソンの包み込み
4.ブロー成形マンドレル、または1本もしくは複数のブロー成形ピンの挿入
5.プラスチックのパリソンを、ブロー成形型の冷却壁に吹き当て、プラスチックを冷却、固化させ、成形部品の最終形状に近似
6.型を開放し、ブロー成形部品を離型
7.ブロー成形部品の両端のバリ(flash waste)の食い切り。
【0101】
他の下流操作を実施することもできる。
【0102】
標準的押出しブロー成形法を使用して、複雑な形状や多軸曲率を有する構成要素を製造することも可能である。しかしながら、そのようにして得られた成形部品は、過剰な食い切り材料の割合が高く、食い切りウェルドを伴う大きい領域を有している。
【0103】
食い切りウェルドを回避し、材料の使用量を削減する目的で、3D押出しブロー成形法(3Dブロー成形法とも呼ばれる)では、そのために、特殊なデバイスを使用して、パリソンを変形させ、その物品の断面にほぼ合わせた直径を有するように操作し、次いでこれを、ブロー成形型の中に直接導入する。そのために、その物品の端部では、残っている食い切り端の大きさが最小にまで小さくなる(Thielen,Hartwig,Gust,『Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern(Blow moulding of plastics)』,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,p.117〜122)。
【0104】
サクションブロー成形法においては、筒状のダイヘッドからパリソンを密閉ブロー成形型の中に直接送り込み、空気流れの手段によって、ブロー型を通して「吸引」する。パリソンの下端が、ブロー成形型から出てくると、クランプ要素を使用して、パリソンの上端および下端の食い切りを行い、その後にブローおよび冷却の工程が続く(Thielen,Hartwig,Gust,『Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern(Blow moulding of plastics)』,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,p.123)。
【0105】
連続共押出し法においては、2種の異なる材料を、交互の順にして押出し成形する。そうして得られるのは、押出し方向に異なった材料構成の断面を有するパリソンである。適切な材料を選択することによって、たとえば、ソフトな端部とハードな中央断面を有していたり、統合されたソフトなベロー領域を有していたりする、特定の必要とされる性質を有する物品の特殊な断面を与えることが可能となる(Thielen,Hartwig,Gust,『Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern(Blow moulding of plastics)』,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,p.127〜129)。
【0106】
自動車両における製品、成形品、構成要素または成形部品を、クランクケースガスおよび/またはそれらの成分に対する抵抗性に関して、改良するための方法は、以下の工程を特徴としている:
1)以下のものを含む成形用組成物からの、異形押出し法またはその他の押出し法、ブロー成形法、特に標準的押出しブロー成形法、3D押出しブロー成形法、サクションブロー成形法、および連続共押出し法、または射出成形法の手段による、製品、成形品、構成要素または成形部品の製造:
A)40〜98.98重量部の少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド、
B)1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、特に好ましくは3〜6重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリレートまたはアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー(ここでそのコポリマーB)のMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分より高く、そしてそのMFIは、2.16kg荷重を使用し190℃で定量または測定したものである)、
C)0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜6重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部の、分岐効果または鎖伸長効果を有し、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含む、少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤、ならびに
D)0.01〜40重量部、好ましくは5〜39重量部、特に好ましくは15〜35重量部の、成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤、ならびに
2)上記1)に従って製造された、製品、成形品、構成要素、または成形部品の、自動車両における、特にそれらの内燃機関における空気輸送構成要素または空気輸送構成要素の構成成分の形態、好ましくは清浄空気ライン、給気パイプ、特に給気フィードラインの形態、または給気リターンライン、吸気パイプ、クランクケースベントまたはトランスミッションベントの形態への組み込み。
【0107】
詳細事項および実施例は例示であって本発明を制限するものではないこと、および当業者には、本発明の意図および範囲から外れることなく、他の実施形態が示唆されるであろうことを理解されたい。
【実施例】
【0108】
実施例
本発明において記載された改良を説明するために、最初に、適切なプラスチック成形用組成物を、コンパウンディングにより調製した。二軸スクリュー押出機(ZSK 26 Mega Compounder、Coperion Werner & Pfleiderer,Stuttgart,Germany製)の中で、260〜300℃の温度で個々の成分を混合し、押出し物の形態で水浴の中に排出させ、ペレット化が可能になるまで冷却し、ペレット化した。
【0109】
ARBURG−520 C 200−350射出成形機を表2に記載した溶融温度および金型温度で用いて、本発明による実施例1の成形用組成物、および比較例の成形用組成物の射出成形試験片(80×10×4mmのフラット試験片および170×10×4mmのダンベル形試験片)を調製した。
【0110】
試験T1は、クランクケースガスの構成成分に対する抵抗性を求めるのに役立つ。試験T2は、クランクケースガスの構成成分となりうる酸性水相に対する抵抗性を求めるためのモデル系として役立つ。
【0111】
試験T1:
射出成形直後の1本の170×10×4mmのダンベル形試験片について、DIN 53503に準拠した方法を使用したショアーD硬度試験を実施することによって、初期値を求めた。
【0112】
1本の80×10×4mmのフラット試験片は、目視評価のためにエージングさせた。5本のさらなる170×10×4mmのダンベル形試験片を、射出成形直後に秤量して、初期重量を求め、次いで以下のようにしてエージングさせた。
【0113】
それらの試験片を、オーブン中のすり合わせおよび栓付きのガラス容器中の1モル濃度の硝酸の中で、60℃で4時間かけてエージングさせた。次いで蒸留水を用いてそれらの試験片を洗い流し、拭うことにより残って付着している水分を除去し、室温で30分間乾燥させた。次いでそれらの試験片を、時計皿で蓋をしたガラスビーカーの中、Lubrizol OS 304 206リファレンスエンジンオイルの中135℃で18時間かけて、エージングをさせた。曝露時間が終了したら、紙ティッシューを使用して、付着した試験液を試験片から除去し、室温で30分間それらをエージングさせた。これに続けて、DIN 51604−2−BのFAM試験液(=FAM2)中室温で、30分間のエージングをさせた。その燃料エージング方法が終了したら、それらの試験片を室温で30分間エージングさせ、この試験サイクルを繰り返した。
【0114】
第3回目のサイクルが終了したところで、エージング方法を一旦終了した。5本の170×10×4mmのダンベル形試験片は再秤量し、1本の80×10×4mmのフラット試験片については目視により評価した。
【0115】
これらエージングさせた170×10×4mmのダンベル形試験片の内の1本を、DIN 53503に準拠した方法を使用して、ショアーD硬度試験にかけた。本発明による効果は、表2からも明らかである。
【0116】
試験T2:
5本の射出成形直後の170×10×4mmのダンベル形試験片について、ISO 527の引張試験を実施することにより初期値を求めた。5本のさらなる170×10×4mmのダンベル形試験片を、射出成形直後に秤量して、初期重量を求め、次いで以下のようにしてエージングさせた。
【0117】
それらの170×10×4mmのダンベル形試験片を、オーブン中のすり合わせおよび栓付きのガラス容器中の試験液A中で、80℃で100時間かけてエージングさせた。試験液Aは、260mgの硫酸ナトリウム、20mgの乳酸、90mgの99%ギ酸、540mgの99%酢酸、1100mgの65%硝酸、および50mgの35%塩酸を、1000mLの脱イオン水の中に、撹拌しながら室温で溶解させることにより調製した。次いで、蒸留水を用いて、それらの170×10×4mmのダンベル形試験片を洗い流し、拭って残って付着している水分を除去し、オーブン中のすり合わせおよび栓付きのガラス容器中の試験液B中で80℃で2000時間のエージングを行わせた。試験液Bは、260mgの硫酸ナトリウム、100mgの乳酸、210mgの99%ギ酸、400mgの99%酢酸、85mgの塩化ナトリウムおよび85mgのクエン酸ナトリウムを、1000mLの脱イオン水の中に、撹拌しながら室温で溶解させることにより調製した。曝露時間が終了したら、蒸留水を用いてそれらの170×10×4mmのダンベル形試験片を洗い流し、紙ティッシューを使用して、付着した試験液を試験片から除去し、室温で30分間それらをエージングさせた。
【0118】
次いで、それら170×10×4mmのダンベル形試験片を再秤量して、その重量増加を求め、また目視により評価した。
【0119】
次いで、前記170×10×4mmのダンベル形試験片を、真空オーブン中で、80℃で4日かけて乾燥させた。次いで、ISO 527の引張試験を室温で実施した。
【0120】
【表2】

比較例1:エラストマー性のブロックコポリアミド、EMS製(Grilon(登録商標)ELX 50H NZ、ISO 1874名称::PA6/X−HI、BGH、32−002)
比較例2:熱可塑性ポリエステルエラストマー、DuPont Engineering Polymers製(Hytrel(登録商標)HTR8441 BK316、ISO 1043名称:TPC−ET)
比較例3:熱可塑性ポリエステルエラストマー、DuPont Engineering Polymers製(Hytrel(登録商標)HTR4275 BK316、ISO 1043名称:TPC−ET)
1)PA6/66コポリアミド(95%のカプロラクタムおよび5%のアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのAH塩から重合したもの)、相対粘度ηrel(メタ−クレゾール中1重量%溶液について25℃で測定):2.85〜3.05
2)エテンとアクリル酸2−エチルヘキシルとのコポリマー(エテン含量:63重量%、MFI:550)
3)CAS 8013−07−8相当品
4)無水マレイン酸変性エチレン/プロピレンコポリマー
5)その他の添加剤、たとえば着色剤、安定剤、離型剤
6)以下の基準を使用して、エージングした試験片を目視評価:
「+」:表面ダメージなし、ブリスターなし
「−」:目に見える表面ダメージまたは目に見えるブリスター
「−−」:極めて明らかに目に見える表面ダメージまたは極めて明らかに目に見えるブリスター
7)それぞれの場合において、5本の試験片について重量分析
8)それぞれの場合において、170×10×4mmのダンベル形試験片について、DIN 53503に準拠した方法で測定
9)それぞれの場合において、5本の170×10×4mmのダンベル形試験片について、ISO 527に従って測定
【0121】
試験T1および試験T2の後では、本発明による実施例1の成形用組成物の試験片は、比較例1、2および3の試験片よりも、試験流体の吸収に基づく重量増加が極めて少なく、また表面ダメージも顕著に低かった。
【0122】
さらに、本発明による実施例1の成形用組成物は、試験T1の後のショアーD硬度の低下が比較例1、2および3の場合よりも小さく、また試験T2の後の引張強度の低下が、比較例2および3の場合よりも低いことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両における製品、成形品を、クランクケースガスおよび/またはそれらの構成成分に対するそれらの抵抗性に関して、改良するための方法であって、
1)
押出し法、異形押出し法またはその他の押出し法、ブロー成形法、特に標準的押出しブロー成形法、3D押出しブロー成形法、サクションブロー成形法、および連続共押出し法、または射出成形法の手段による、製品、成形品、構成要素または成形部品が、以下のもの:
A)40〜98.98重量部の少なくとも1種のポリアミドおよび/またはコポリアミド;
B)1〜10重量部の、好ましくは2〜8重量部の、特に好ましくは3〜6重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリレートまたはアクリレートとを含む少なくとも1種のコポリマー、(前記コポリマーB)のMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分よりも高く、前記MFIは、2.16kgの荷重を使用して190℃で定量または測定したものである);
C)0.01〜10重量部の、好ましくは0.1〜6重量部の、特に好ましくは0.5〜5重量部の、分岐効果または鎖伸長効果を有し、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含む、少なくとも1種の2官能または多官能の添加剤;および
D)0.01〜40重量部の好ましくは5〜39重量部の、特に好ましくは15〜35重量部の、成分B)およびC)とは異なる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤;
を含む成形用組成物のために使用される、ならびに
2)
1)に従って製造された、製品、成形品、構成要素、または成形部品の、自動車両における、特にそれらの内燃機関における空気輸送構成要素または空気輸送構成要素の構成成分への、好ましくは清浄空気ライン、給気パイプ、特に給気フィードラインの形態での、または給気リターンライン、吸気パイプ、クランクケースベントまたはトランスミッションベントの形態での、組み込みである、
方法。
【請求項2】
前記コポリマーB)が、4重量部未満の、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択されるその他の反応性官能基を含むモノマー単位からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コポリマーB)において、前記オレフィンがアクリル酸2−エチルヘキシルと共重合されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コポリマーB)において、前記オレフィンがエテンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コポリマーB)のMFIが、150g/10分よりも高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分岐効果または鎖伸長効果を有する前記2官能または多官能の添加剤C)が、1分子あたり、少なくとも2個、多くとも15個の、分岐効果または鎖伸長効果を有する官能基を含み、それらが、イソシアネート、キャップドイソシアネート、エポキシド、無水マレイン酸、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾロンからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
分岐効果または鎖伸長効果を有する前記2官能または多官能の添加剤C)が、エポキシ化植物油の群から選択されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エポキシ化植物油として、エポキシ化ダイズ油が使用されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
A)、B)、C)およびD)に加えて、成形用組成物がこれらに0.001〜5重量部の、成分B)〜D)とは異なる少なくとも1種のさらなる添加剤E)をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−158751(P2012−158751A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−14980(P2012−14980)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】