説明

成形用金型、成形装置、及び成形品の製造方法。

【課題】成形品にバリを生じにくくすることができる成形用金型、成形装置、及び成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】成形装置100は、金型110を有する。金型110は、下型114と、下型114と接触する上型116とを有し、下型114と上型116との間に熱硬化性樹脂を保持するキャビティ120が形成される。金型110は、下型114と上型116とが接触するパーティング面144に配置され、キャビティ120に保持された光硬化性樹脂と接触して、キャビティ120に保持された光硬化性樹脂に押圧されて弾性変形する弾性体150をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用金型、成形装置、及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転写面を有するキャビティと、該キャビティに連通する樹脂供給路と、該樹脂供給路の一部に設けられた樹脂封止機構とを有する成型装置を用い、かつ硬化性樹脂を用いて光学部品を製造する方法において、前記キャビティに前記樹脂供給路を通して液状の前記硬化性樹脂を注入する第1の工程と、次いで、前記硬化性樹脂を液状からゲル状になるように所定の硬化率まで硬化させる第2の工程と、次いで、前記キャビティに所定の圧力が立つまで最終成形品に必要な量の前記硬化性樹脂を再度注入する第3の工程と、次いで、前記樹脂封止機構により封止を行い、取り出しても変形しない程度まで硬化させる第4の工程とを含むことを特徴とする光学部品の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、レンズ面の外周にフランジを設け、成形加工されるプラスチックレンズにおいて、前記フランジにおける光軸方向の何れか一方のフランジ面に、鏡枠へ装着するときに基準面となる第1のフランジ面と、該第1のフランジ面より段差を有して光軸方向に後退させた第2のフランジ面とを有し、前記第2のフランジ面若しくは前記フランジの側部に、2つの成形用金型の嵌合部が位置して成形されることを特徴とするプラスチックレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−1807号公報
【特許文献2】特開平9−131802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術では、成形品にバリが生じやすいとの問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、成形品にバリを生じにくくすることができる成形用金型、成形装置、及び成形品の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、第1の金型部材と、前記第1の金型部材と接触する第2の金型部材と、を有し、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に、成形材料を保持する保持室が形成され、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置され、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形する弾性体をさらに有する成形用金型である。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記保持室を複数有し、複数の前記保持室に保持される成形材料が注入される一つの注入口を有する請求項1記載の成形用金型である。
【0009】
請求項3に係る本発明は、光学部品を成形するために用いられ、前記弾性体は、成形された光学部品の光学機能部以外の部分に接触する位置に配置されている請求項1又は2記載の成形用金型である。
【0010】
請求項4に係る本発明は、第1の金型部材と、前記第1の金型部材と接触する第2の金型部材と、を有し、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に、成形材料を保持する保持室が形成され、前記保持室に成形材料を注入する注入装置と、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置され、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形する弾性体と、をさらに有する成形装置である。
【0011】
請求項5に係る本発明は、第1の金型部材と第2の金型部材とを接触させて、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に成形材料を保持する保持室を形成する工程と、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置された弾性体が、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形するように前記保持室の成形材料を注入する工程と、を有する成形品の成形方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形品にバリを生じにくくすることができる成形用金型、成形装置、及び成形品の成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る成形用金型及び成形装置を用いて製造される成形品を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA−A面の断面図である。
【図2】図1に示す成形品の一部であり、図1に示す点線Bで囲まれた部分を拡大して示す図であって、図2(a)は平面時であり、図2(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る成形装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に示す成形装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図3に示す成形装置が有するコントローラを示すブロック図である。
【図6】図3に示す成形装置を用いた成形品の成形方法を示す流れ図である。
【図7】図3に示す成形装置の変形例の一部を拡大して示す断面図である。
【図8】第1の比較例に係る成形装置の一部を拡大して示す図である。
【図9】第2の比較例に係る成形装置の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る金型及び成形装置を用いて形成される成形品が示されている。成形品10は、例えば樹脂からなり、例えば射出成形によって製造され、単数又は複数の光学部品部30と、光学部品部30と一体をなすランナ部14とを有する。
【0015】
ランナ部14は、略円柱形状の円柱部16と、円柱部16の例えば下端部近傍から放射状に伸びる単数、又は複数の第1の放射部18と、第1の放射部の外側に配置された環状部20と、環状部20のから外側に放射状に伸びる単数、又は複数の第2の放射部22とを有する。第1の放射部18は、この実施形態においては、円柱部16から略等間隔に、45度の間隔で8個が設けられている。
【0016】
第2の放射部22は、この実施形態においては、環状部20から略等間隔に、45度の間隔で8個が設けられている。また、第2の放射部は22は、円柱部16を中心とする円の円周方向において、第1の放射部22と重ならないように配置されている。また、第2の放射部は22は、円柱部16を中心とする円の円周方向において、互いに隣り合う2つの第1の放射部22から等距離となるように配置されている。
【0017】
光学部品部30は、第2の放射部22の先端部側に、それぞれ1個、合計で8個が設けられている。
【0018】
図2には、成形品10の要部であって、図1(a)における点線Bで囲まれた部分が拡大して示されている。図2に示されるように、光学部品部30には、上面側から突出するように非球面形状からなる凸部32が形成され、下面から突出するように凸部34が形成されていて、凸部32と凸部34とで囲まれる部分が、例えば通過する光を屈折させる等の光学機能部として用いられる。
【0019】
光学部品部30と第2の放射部22とは、ゲート部36でつながっている。ゲート部36は、成形品10を射出成形で形成する際に、光学部品部30を成形するためのキャビティ内に樹脂を注入するために用いられるゲートに相当する部分である。ゲート部36を切断することで、光学部品部30を他の部分から切り離し、切り離された光学部品部30が、成形品である例えばレンズ等の光学部品として用いられる。
【0020】
図3には、本発明の実施形態に係る成形装置100が示されている。成形装置100は、本発明の実施形態に係る金型110と、注入装置180とを有する。
【0021】
金型110は、第1の金型部材として用いられる下型114と、下型114に接触する第2の金型部材として用いられる上型116とを有する。下型114は、通常、設置面に固定されて用いられる。上型116には、移動装置170が取り付けられている。移動装置170は、上型116を下型114に対して接離させるように、例えば上下方向に移動させる。
【0022】
下型114と上型116との間には、上型116が下型114に接触した状態においてキャビティ120が形成される。キャビティ120は、保持室として用いられていて、例えば樹脂等の成形材料を保持する。断面図である図3には、2つだけが示されているものの、金型110においては、8個のキャビティ120が形成され、これら8個のキャビティ120に保持された形成材料を硬化させることで、8個の光学部品部30(図1参照)が成形される。
【0023】
この実施形態に係る成形装置100では、成形材料として、例えば、熱硬化性の樹脂を用いることができる。より具体的には、熱硬化性樹脂として、例えば、エポシキ系の樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としてエポキシ系樹脂を用いることに替えて、例えば、ポリイミド系樹脂、尿素樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0024】
また、成形材料として熱硬化性樹脂を用いることに替えて、例えば紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化樹脂等の光硬化性樹脂を用いることもできる。また、レンズを成形する場合の成形材料としては、光を透過する透過性樹脂を用いることができる。より具体的には、光透過性樹脂である、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネートなどのアリル系樹脂 、メタクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を成形材料として用いることができる。
【0025】
また、金型110は、熱源140を有する。熱源140は、下型114及び上型116のキャビティ120近傍に配置されている。熱源140は、キャビティ120に保持された熱硬化性樹脂である成形材料を加熱し、キャビティ120内で成形材料を硬化させる。成形材料として光硬化性樹脂を用いる場合、熱源140に替えて、キャビティ120内に保持される成形材料に光を照射し、キャビティ120内の樹脂を硬化させる光源が設けられる。
【0026】
また、金型110は、ランナ130を有する。ランナ130は、キャビティ120に金型110の外部から供給された材料を導く流路であり、上型116に略鉛直方向に形成された第1のランナ132と、下型114と上型116とが接触した際に形成される第2のランナ134とを有する。
【0027】
上型116には、成形材料を注入するための1つの注入口138が1つ形成されている。注入口138は、ランナ130によって、8つのキャビティ120と繋がっている。このため、1つの注入口から注入された成形材料が、ランナ130によって、8つのキャビティ120に導かれる。
【0028】
注入装置180は、成形材料を、注入口138とランナ130とを介してキャビティに注入する。
【0029】
図4には、金型110の一部が拡大して示されている。
図4に示されるように、金型110は、弾性体150を有する。弾性体150は、下型114と上型116との接触部であるパーティング面144に配置されていて、キャビティ120に保持された樹脂に接触して、キャビティ120に保持された樹脂に押圧されて変形するようになっている。弾性体150は、キャビティ120の外周を覆うように、環状に配置されていて、下型114と上型116との間に生じる隙間をシーリングしている。また、弾性体150は、成形材料に押圧されることで、樹脂を、キャビティ120の内側に向けて、パーティング面144から遠ざける方向に樹脂を押圧する。
【0030】
また、弾性体150は、樹脂が硬化し、成形品10が成形した状態において、成形品の光学機能部である凸部32(図2参照)及び凸部34(図2参照)以外の位置の接触する位置に配置されている。弾性体150としては、耐熱性を有する弾性体であり、ゴムである例えばシリコンゴムを用いることができる。耐熱性を有するゴムとして、シリコンゴムを用いることに替えて、例えば、天然ゴム(RSS、TSR、MSR、STR、SIR、SVRなど)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR),IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、CHR(エピクロルヒドリンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等を用いることもできる。弾性体150は、下型114に固定しても良いし、上型116に固定しても良いし、下型114と上型116との間に挟みこむだけとしても良い。
【0031】
図5には、成形装置100が有するコントローラ200が示されている。コントローラ200は、成形装置100を制御する制御部として用いられていて、例えば、CPU等の制御回路を有し、熱源140、移動装置170、注入装置180等を制御する。
【0032】
図6には、成形装置100を用いた成形品の成形方法が示されている。
図6に示すように、一連の成形方法が開始すると、最初の工程であるキャビティ形成工程S10で、コントローラ200は、移動装置170を制御して、上型116を下方向に移動させ、上型116と下型114とを接触させて、上型116と下型114との間にキャビティ120を形成させる。
【0033】
次の工程である成形材料注入工程S20では、コントローラ200は、注入装置180を制御して、注入装置180にキャビティ120内へ成形材料を注入させる。この際、弾性体150が、キャビティ120に保持された成形材料と接触して、キャビティ120に保持された成形材料に押圧されて弾性変形する。
【0034】
次の工程である成形材料硬化工程S30では、コントローラ200は、熱源140を制御して、熱源140にキャビティ120内に保持された樹脂を加熱させ、キャビティ120内に保持された熱硬化性樹脂からなる成形材料を硬化させる。
【0035】
次の工程である成形品取り出し工程S40では、コントローラ200は、上型116を上方向に移動させて、成形品を取り出すことができるようにすることで一連の成形工程が終了する。その後、取り出された成形品の光学部品部30がランナ部14から切断されて、切断された部分が光学部品であるレンズとして用いられる。
【0036】
図7には、金型110の変形例が示されている。
先述の本発明の実施形態に係る金型110においては、パーティング面144は、硬化して光学部品部30となる部分の上側の面と下側の面との間の位置に形成されていた(図4参照)。これに対して、この変形例では、硬化して光学部品部30となる部分の上側の面と連続するようにパーティング面144が形成されている。この変形例においても、弾性体150は、下型114と上型116との接触部であるパーティング面144に配置されていて、キャビティ120に保持された樹脂に接触して、キャビティ120に保持された樹脂に押圧されて変形するようになっている。
【0037】
図8には、第1の比較例に係る金型110が示されている。この第1の比較例に係る金型は、本発明の実施形態に係る金型が有する弾性体150を有していない。このため、キャビティ120内の樹脂が、弾性体150によって、キャビティ120の内側に向けて、パーティング面144から遠ざける方向に樹脂を押圧されることがない。このため、下型114と上型116との間の隙間に樹脂が入り込みやすく、隙間に混んだ状態の樹脂が硬化することで形成されるバリが生じやすい。
【0038】
図9には、第2の比較例に係る金型110が示されている。この第2の比較例に係る金型も、第1の変形例に係る金型と同様に弾性体150を有していないため、第1の変形例に係る金型と同様に、成形品にバリが生じやすい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上述べたように、本発明は、成形用金型、成形装置、及び成形品の成形方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10:成形品
100:成形装置
110:金型
114:下型
116:上型
120:キャビティ
144:パーティング面
150:弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型部材と、
前記第1の金型部材と接触する第2の金型部材と、
を有し、
前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に、成形材料を保持する保持室が形成され、
前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置され、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形する弾性体をさらに有する成形用金型。
【請求項2】
前記保持室を複数有し、
複数の前記保持室に保持される成形材料が注入される一つの注入口を有する請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】
光学部品を成形するために用いられ、
前記弾性体は、成形された光学部品の光学機能部以外の部分に接触する位置に配置されている請求項1又は2記載の成形用金型。
【請求項4】
第1の金型部材と、
前記第1の金型部材と接触する第2の金型部材と、
を有し、
前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に、成形材料を保持する保持室が形成され、
前記保持室に成形材料を注入する注入装置と、
前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置され、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形する弾性体と、
をさらに有する成形装置。
【請求項5】
第1の金型部材と第2の金型部材とを接触させて、前記第1の金型部材と前記第2の金型部材との間に成形材料を保持する保持室を形成する工程と、
前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とが接触する接触部に配置された弾性体が、前記保持室に保持された成形材料と接触して、前記保持室に保持された成形材料に押圧されて弾性変形するように前記保持室の成形材料を注入する工程と、
を有する成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−908(P2013−908A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130888(P2011−130888)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(511143184)オプトテクノロジージャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】