説明

成形部品上に印刷するためのインクと、このインクの使用方法

本発明は、高品質の印刷表面を有する積層された熱可塑性樹脂から成る成形品を得る方法に関する。本発明はさらに、上記方法で得られる成形品と、上記の方法で用いるのに適したインクとに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質の印刷表面を有する可塑化された熱可塑性樹脂ベースの成形部品または成形品を得るための方法で用いるインク組成物に関するものである。
本発明はさらに、こうして得られた成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着色部を有する熱可塑性樹脂ベースのコンポジットコート(composite coat、複合被覆)またはコンポジットスキン(composite coat skin、複合スキン)を製造することは自動車業界では公知である。この複合スキンは自動車内装の最も目立つ部品、特にダッシュボード、セントラルコンソールおよびドア付属部品のような部品に用いられる。着色部の存在によって極めて多様な視覚効果、例えば皮革模様を得ることができる。
【0003】
複合スキンに着色部を有する表面を製造する方法は2つある。第1の方法は「インモールド ペインティング、金型内塗装」または「インモールド ピグメンテーション、金型内顔料着色(IMP)」である。これは本出願人の特許文献1(欧州特許第0,912,312号公報)に記載されている。
【0004】
この方法は下記段階から成る:
(i)少なくとも一種の可塑剤を含む着色された組成物A(任意成分として一種または複数の改質剤、例えば着色顔料、装飾用フレークまたはPVC型熱可塑性樹脂をさらに含むことができる)を金型表面上に塗布し、
(ii)PVCのような熱可塑性樹脂から成る組成物Bを塗布し、
(iii)金型を加熱する。
【0005】
「インモールド コーティング、金型内被覆」(IMC)として知られる第2の方法の原理は特許文献2(国際特許第WO 2004/060627号公報)および特許文献3(米国特許第6,656,596号明細書)に記載されている。
【0006】
これら特許は自動車内部のパネルの製造に関するもので、ポリウレタンの水性分散体または溶媒分散物、着色剤および架橋剤から成る層と、ポリ塩化ビニル(PVC)と少なくとも一種の可塑剤を含む層とをこの順番で金型上に塗布して多層構造物を作る。
【0007】
残念なことに、上記の方法では最適品質の物品、特に微細な色模様または極めて細かい着色模様は得ることができない。この理由は上記定義の方法で用いられる着色組成物はそのレオロジー特性のために塗料スプレーガンを使用する以外に支持体上に噴霧できる方法がないためである。塗料スプレーガンは着色組成物を噴霧する孔の直径が大きいため、印刷精度が低く、特定の模様、例えば細い線、特に点線を形成するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0,912,312号公報
【特許文献2】国際特許第WO 2004/060627号公報
【特許文献3】米国特許第6,656,596号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、高品質の印刷表面を有する可塑化された熱可塑性樹脂ベースの成形品を製造することができる新規なインク配合物に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象は、組成物の全重量に対して下記(1)〜(4)を下記重量比率で含む組成物にある:
(1)5〜20%、好ましくは10〜15%の、粒径が0.1〜10μmの少なくとも一種の熱可塑性樹脂、
(2)1〜20%、好ましくは5〜15%の少なくとも一種の改質剤、
(3)5〜20%、好ましくは10〜15%の少なくとも一種の可塑剤、
(4)45〜75%、好ましくは50〜70%の少なくとも一種の有機溶剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で範囲を表す「〜」は両限界値を含むものとする。
上記組成物はブルックフィールド(登録商標)型の粘度計を用いて測定した20℃での粘度が好ましくは5〜40mPa.s、さらに好ましくは10〜25mPa.sである。
【0012】
本発明者は、上記組成を有するインクを、小径、例えば直径が40μm以下、さらには直径が30μmまたは20μmの印刷用ノズルを介して噴霧して、高品質な印刷表面を得ることができるということを実施例3で示した。すなわち、支持体上で印刷用ヘッドを1回(1パス)または2回(2パス)通過させることで360dpiまたは720dpiの解像度の印刷を得ることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂と可塑剤の重量比は1:01〜1:2、好ましくは1:0.5〜1:1であるのが好ましい。この比によって、摩耗に対して特に耐性のある樹脂を得ることができる。
【0014】
熱可塑性樹脂はポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、塩化ビニルコポリマー、例えば塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、例えばポリアミド11およびポリアミド12、高密度ポリエチレンおよびポリメチルメタクリレートおよびこれらの混合物の中から選択できる。
【0015】
ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレートおよび塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマーを選択するのが有利である。
【0016】
熱可塑性樹脂はエマルション重合、懸濁重合またはマイクロ懸濁重合で得られるポリ塩化ビニル(PVC)樹脂であるのが好ましい。一例としてはイネオス(Ineos)社から商品名ペヴィコン(Pevicon、登録商標)P1510で市販の樹脂が挙げられる。
【0017】
「改質剤」とは本明細書では成形品の外観を改質できる任意の化合物、特に顔料、装飾用フレークおよび真珠層を意味する。
顔料は有機または無機の顔料が使用できる。例としては、被覆したまたは被覆していない金属酸化物、例えばチタン(非晶質またはルチル型および/またはアナターゼ型結晶性)、鉄、亜鉛、ジルコニウムまたはセリウムの酸化物およびこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
特に、Ciba社から商品名Jaune cromophtal(登録商標)PV H3Rで市販の黄色顔料、Kronos社からKronos(登録商標)2220で市販の二酸化チタンおよびCiba社から商品名cromophtal(登録商標)4GNPで市販の青色顔料およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
フレークは一般に物品をより魅力的にするために用いられる。製品中のフレークの含有量は一般に約5〜約50g/cm2である。雲母で被覆された酸化チタンをベースにしたフレークを用いるのが好ましい。
【0020】
本発明の対象である組成物中で用いる顔料は、顔料と溶剤との混合物または顔料と可塑剤との混合物を必要に応じて分散剤と混合して含む顔料ペーストの形態にすることができる。
【0021】
本発明の対象である組成物中で用いる可塑剤は上記熱可塑性樹脂と相溶性のある可塑剤である。可塑剤は有機アルコールと有機酸とのエステルの中から選択できる。有機酸の例はトリメリト酸、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、クエン酸、安息香酸、タリウム酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸、パルミチン酸または酢酸である。可塑剤は特に、オクチルトリメリテート、ジオクチルフタレート、ノニルウンデシルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートおよびトリメチルペンタニルジイソブチレートおよびこれらの混合物の中から選択できる。
【0022】
フタレートおよびトリメリテートが通常用いられ、特にオクチルトリメリテートが用いられる。例としては、Polynt社から商品名Diplast(登録商標)TM/STおよびDiplast(登録商標)TM79で市販の可塑剤、Adeka Palmarole社から商品名Cizer(登録商標)C8Lで市販の可塑剤および、Eastman社から商品名TXIB(登録商標)で市販の可塑剤が挙げられる。これらの可塑剤の混合物も可塑剤として使用できる。
【0023】
本発明の対象である組成物中で用いる有機溶剤は、沸点が少なくとも200℃であるのが好ましい。このような溶剤を使用することで本発明の対象である組成物を成形部品に塗布したときの過剰な急速蒸発を避けることができ、従って、作業者の揮発性有機化合物との接触を防止できる。
【0024】
有機溶剤はイソホロン、酢酸ペンチル、乳酸アルキル、特に乳酸エチル、アジピン酸、グルタル酸およびコハク酸の二塩基性エステルおよびこれらの混合物、特にアジピン酸ジメチルとグルタル酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合物の中から選択するのが好ましい。溶剤の一例としてはエクソンモービル(ExxonMobil)社から商品名Exxsol D140(登録商標)で市販の溶剤が挙げられる。
【0025】
粘度を上記定義の範囲内で変えるためにレオロジー添加剤を添加できる。特に、本発明の対象である組成物の粘度を粘度低下剤を用いて下げる必要がある場合がある。この粘度低下剤は揮発性希釈剤、乳化剤または保護コロイドにすることができる。希釈剤としては特に低沸点炭化水素、例えばC10−C16炭化水素が挙げられる。乳化剤としては脂肪酸塩またはエステル、酸化エチレンとフェニルアルキルとの縮合物または脂肪アルコール、亜鉛/マグネシウムオクトエートが挙げられる。保護コロイドの例はレシチンである。本発明の対象である組成物に添加するレオロジー添加物の量は100重量部の熱可塑性樹脂に対して一般に5〜100重量部である。レオロジー添加剤の例としては、Byk Chemie GmbH社から商品名Viscobyk 5100(登録商標)で市販のカルボン酸エステルが挙げられる。
【0026】
本発明の対象である組成物は、充填剤、安定剤、酸化防止剤、加工助剤、潤滑剤または難燃剤の中から選択される一種以上の添加剤をさらに含むことができる。特に、ビニル樹脂をベースにした組成物中で一般に用いられる添加剤の中で下記のものが挙げられる:有機カルボン酸の金属塩、有機リン酸、ゼオライト、ハイドロタルサイト、エポキシド化合物、β−ジケトン、多価アルコール、リン含有酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾトリアゾ−ルおよびオキサニリド誘導体、シアノアクリレート、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、アルコキシアミンヒンダードアミン系光安定剤(NOR−HALS)、特にClariant社から商品名Hostavin Now(登録商標)で市販の化合物、過塩素酸塩およびその他の金属ベースの無機化合物、潤滑剤、例えば有機ワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、エステル、金属塩、充填剤、例えばチョークまたはタルク、およびエキスパンダ、例えばアゾジカルボンアミド。
【0027】
本発明の対象である組成物は、成形品を得る方法で用いるためのものである。従って、本発明の対象は上記定義の組成物を含む成形品にある。「成形品」とは本発明では金型から得られる物品を意味する。この物品は例えば自動車のダッシュボードの部品、革細工品またはサドルの中から選択できる。
【0028】
上記定義の組成物を含む成形品は成形品、特に模造皮革成形品を作る任意の分野を対象とすることができ、特に、自動車内装部品、好ましくはインナードア、セントラルコンソールおよびアームレスト、革細工品、好ましくはハンドバッグ、旅行鞄およびサドルを対象とすることができる。
【0029】
本発明の別の対象は、下記の一連の段階を含む印刷表面を有する成形品を得る方法にある:
(i)上記定義の組成物(A)の層を金型上に形成(deposition)し、
(ii)金型を組成物(A)のゲル化点まで加熱し、
(iii)(ii)で得られた部分的にまたは完全に被覆された金型上に、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂混合物を含む組成物(B)の層を形成(deposition)し、
(iv)金型を組成物Bのゲル化点まで加熱する。
【0030】
(i)段階では直径が40μm以下、好ましくは直径が30μmまたは20μmの印刷用ノズルを用いて組成物(A)の層を塗布するのが好ましい。一つの例としてはXaar社(英国、ケンブリッジ)のOmnidot(登録商標)760 GS8印刷用ノズルの使用が挙げられる。
【0031】
(ii)段階では金型の温度を徐々に上げる。この緩やかな温度上昇によって組成物(A)のゲル化が可能になる。「温度の緩やかな上昇」とは毎分40℃以下の加熱速度を意味する。ゲル化温度は一般に150℃〜約300℃である。この温度は成形される熱可塑性樹脂の種類に応じて選択される。
【0032】
(i)段階で用いる組成物(A)はポリ塩化ビニル樹脂を含み、(ii)段階で、金型を180〜260℃、好ましくは230〜300℃の温度に加熱するのが好ましい。(ii)段階で、組成物(A)で部分的または完全に被覆された金型の温度を約40℃から約240℃に上げ、この温度上昇中に組成物(A)をゲル化させるのが好ましい。
【0033】
組成物(B)は熱可塑性樹脂から成り、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)またはPVCと相溶性のあるポリマーとの混合物とから成る。この相溶性のあるポリマーは塩化ビニルと酢酸ビニル(VC/VA)または塩化ビニルとアクリル誘導体(VC/AD)のコポリマーまたはターポリマー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエーテルエステル、エチレン/ビニルモノマー(EVA)コポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、溶融加工可能なアクリルエラストマー、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーまたはポリエーテル−ブロック−アミド、塩素化またはクロロスルホン化ポリエチレン、エチレン/アルキル(メタ)アクレートまたは(メタ)アクリル酸のポリマー(官能化または非官能化)、コアシェル型MBSポリマー、SBMブロックターポリマー、PVDFおよび粉末ポリアミド樹脂の中から選択される。
【0034】
本発明の一つの好ましい実施例では、Κ値が50〜80のポリ塩化ビニル(PVC)である熱可塑性樹脂が用いられる。
【0035】
本発明の一つの実施例では、組成物(B)の熱可塑性樹脂が懸濁重合またはマイクロ懸濁重合で得られるポリ塩化ビニル(PVC)である。エマルション重合または塊重合で製造されたPVCを用いることもできる。VC/VAコポリマーの例としてはアルケマ(Arkema)社のラコビル(Lacovyl、登録商標)、VC/ADコポリマーの例としてはビノリット(Vinnolit)社のビノリット(Vinnolit)、TPUの例としてはグドリッチ(Goodrich)社のエステイン(Estane、登録商標)、熱可塑性ポリエーテルエステルの例としてはデュポン(Dupont)社のハイトレル(Hytrel、登録商標)、ポリエーテルブロックアミドの例としてはアルケマ(Arkema)社のペバックス(Pebax、登録商標)、EVAの例としてはアルケマ(Arkema)社のエバテイン(Evatane、登録商標)、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマーの例としてはデュポン(Dupont)社のエルバロイ(Elvaloy、登録商標)、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸ポリマー(官能化または非官能化)の例としてはアルケマ(Arkema)社のロトリル(Lotryl、登録商標)、ロタデル(Lotader、登録商標)およびオレバック(Orevac、登録商標)、塩素化ポリエチレンまたはクロロスルホン化ポリエチレンの例としてはデュポン(Dupont)社のティリン(Tyrin、登録商標)、溶融加工可能なアクリルエラストマーの例としてはApa社のアルクリン(Alcryn、登録商標)、粉末ポリアミド樹脂の例としてはアルケマ(Arkema)社のオルガゾル(Orgasol、登録商標)がある。これらのポリマーはPVCと相溶性があり、PVCと「アロイ」化され、良好な低温特性を示し、これらを含む層に適切な脆性を与えることができる。
【0036】
従って、組成物(B)はPVC樹脂と、塩化ビニルと酢酸ビニル(VC/VA)または塩化ビニルとアクリル誘導体(VC/AD)のコポリマーまたはターポリマーと含む熱可塑性樹脂の混合物にすることができ、さらに、PVC樹脂と熱可塑性ポリウレタン(TPU)との混合物にすることができる。これらの各種樹脂は広範囲の比率で混合できる。
【0037】
組成物(B)は上記定義の可塑剤または可塑剤混合物をさらに含むことができる。この場合、組成物(B)中の熱可塑性樹脂と可塑剤の重量比は1:01〜1:2、好ましくは1:0.5〜1:1である。この比率によって摩耗に対して特に耐性のある樹脂を得ることができる。
【0038】
(iii)段階では組成物(B)、好ましくは粉末状の組成物(B)を通常の成形技術、例えば噴霧、回転成形またはスラッシュ成形によって金型上に形成(塗布)できる。
【0039】
噴霧では静電効果を利用して粉末を金型上に塗布する。回転成形では金型中に厳密に必要な量の粉末を入れ、金型に回転運動を加えて、金型表面上に粉末を付着させる。回転塗布に必要な量より多い量の粉末が金型中に導入した場合には、金型上に粉末が付着した後に余分な量の粉末を重力によって除去できる。この技術はスラッシュ成形として知られる。後者の塗布技術が特に好ましい。スラッシュ成形では、金型と組成物(B)の投入容器とを備えた装置全体を回転して、組成物(A)で完全または部分的に被覆された金型上に粉末状の組成物(B)を塗布する。装置の回転数は組成物(B)の層の所望厚さに応じて選択する。
【0040】
一般に、組成物(B)を組成物(A)のゲル化温度で金型上に塗布する。すなわち、粉末状の組成物(B)を150〜300℃、好ましくは180〜260℃、さらに好ましくは230〜250℃の温度で金型に振り掛ける(または塗布する)のが有利である。組成物(B)を金型に塗布する間に金型温度は130〜190℃の温度まで下がる。
【0041】
組成物(A)で部分的にまたは完全に被覆した金型上で組成物(B)の層を正確に接着させるために、組成物(B)の塗布温度(パウダリング温度とよばれる)は上記定義の範囲内になければならない。特に、(iii)段階で、金型上に落下する組成物(B)の第1粒子は急速にゲル化して金型に付着しなければならない。次の粒子はそのPVC鎖を隣接する粒子のPVC鎖と混合(PVC鎖の相互貫入)し、第1粒子に付着し、ゲル化する。温度が過度に低いと、第1粒子がゲル化し始めることができず、従って、シェルに付着しない。また、PVC樹脂粒子が互いに付着せず、ゲル化が不十分な多孔質構造になる。
【0042】
(iv)段階で組成物(B)のゲル化点、すなわち、好ましくは150〜300℃の温度まで金型を加熱する。この温度は成形される熱可塑性樹脂の種類に応じて選択される。すなわち、ポリ塩化ビニルの場合は180〜260℃、好ましくは230〜250℃であるのが有利である。
ゲル化温度で(III)段階および(IV)段階を一回以上再度行うことができ、また、金型を例えば室温で水中に浸漬して冷却することで熱可塑性樹脂が完全にゲル化するのを待つことができる。
【0043】
本発明方法には、熱可塑性樹脂の存在下で徐々に加熱できる任意タイプの金型が適している。熱交換流体が循環するジャケット付き金型を用いるのが有利である。
【0044】
(i)段階と(ii)段階は時間的かつ空間的に離すことができ、(i)段階を(ii)段階を行う生産場所とは異なる場所で行うことができる。
【0045】
本発明方法は装飾および着色分野で使用でき、材料を節約することができる。本発明方法で製造された物品は表面の触感が改善される。さらに、本発明方法では異なる種類の熱可塑性樹脂をベースにした2つの層の間の接着性を改良できる。
本発明は以下の実施例からより良く理解できよう。
【実施例】
【0046】
実施例1
白色印刷用配合物
本発明組成物(白色インク)を、インクの配合、調製分野の当業者に公知の方法で[表1]に示す各種成分を混合して調製した。
初めに、可塑剤、安定剤、粘度低下剤および溶剤を分散剤を用いて1000回転/分で5〜10分間混合する。次いで、PVC樹脂を混合物に徐々に導入する。導入時間は500回転/分で2〜5分である。
【0047】
大抵の場合、剪断応力のために混合物が加熱されるので、混合物は温度制御されたミキサー(T=23℃)で調製するのが好ましい。分散機中の撹拌速度を変えて温度を制御することもできる。
【0048】
大きな粘度低下効果を得るためにPVC樹脂の前に粘度低下剤を導入する。粘度低下剤は、インク製造プロセスの最後に10分間の導入時間で500回転/分の撹拌下に導入することもできる。この場合の粘度低下効果は小さい。
インク製造プロセスの最後に、安定剤を5分間の導入時間で500回転/分の撹拌下に導入することもできる。
【0049】
樹脂分散系が得られる。溶剤は樹脂分散系が得られる前および/または後に導入するか、得られる前および後に一部を導入することもできる。次いで、白色顔料を粉末状の混合物中に30分間の導入時間で500回転/分の撹拌下に導入する。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2
ブルックフィールド(登録商標)型粘度と粒径の測定
ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定した粘度はインクジェット用途では30mPa.s以下、好ましくは20mPa.s以下にしなければならない。
実施例1の組成物の粘度を60回転/分のBrookfield DV-II+ pro(登録商標)粘度計を用いて23℃で測定した。粘度は11.1mPa.sである。
実施例1の組成物中に存在する粒子の径を測定した。粒子の径は2μm以下である。
【0052】
実施例3
印刷試験(本発明の対象方法の(i)の段階)
本発明組成物(実施例1)を、Xaar Omnidot(登録商標)760 GS8印刷用ヘッドを備えた圧電インクジェットプリンタ、(Xaar社、英国、ケンブリッジ)を用いて金型上に印刷した。実施した印刷のタイプは以下の通り:
(試験1)金型上に所定の模様を360dpiで1パスで印刷する。印刷模様は良好な解像度すなわち非常にはっきりした模様輪郭で得られる。しかし、不透明度はさらに強くなるはずである、
(試験2)金型上に所定の模様を360dpiで2パスで印刷する。塗布するインク厚さは試験1の場合より厚くする。従って、得られる模様は試験1よりも不透明であり、模様輪郭が若干はっきりしなくなる。
(試験3)金型上に所定の模様を720dpiで1パスで印刷する。得られる模様は試験1の場合より不透明であり、模様輪郭は非常にはっきりしている。印刷品質は試験1および2の場合よりはるかに良い。
【0053】
実施例4
印刷試験(本発明の対象方法の(ii)〜(iv)の段階)
試験3の予め印刷された金型を用いてスラッシュ成形プロセスを行う。
T=295℃の熱風炉内で金型を4分間加熱する。4分の加熱のした後、金型を炉から取り出し、可塑化したPVC粉末を表面に散布する。金型温度は210℃になる。次に、粉末が表面上に確実に均一に分散するように金型を操作する。金型に粉末を振り掛けてから20秒後に金型をひっくり返して、ゲル化しなかった過剰な粉末を除去する。ゲル化の間に金型は可塑化したPVC粉末の層で被覆される。次いで、金型を炉に戻して70秒間加熱する。
可塑化したPVC粉末の上記ゲル化段階後に金型を炉から取り出し、冷水(T=23℃)のタンク内に90秒間浸漬する。次いで、圧縮空気を噴き付けて金型を乾燥させ、形成されたスキンを金型から剥がす。印刷模様を有する可塑化したPVCスキンが得られる。
【0054】
実施例5
カラー並置試験
この実施例では赤色インクを用いる。その組成は実施例1に示した配合物と同様であるが、酸化チタン顔料の代わりにClariant社から商品名Fast Red BNPで市販の赤色番号214顔料を2%用いた。
次いで、実施例3の印刷試験を繰り返すが、白色インクが供給される上記印刷用ヘッドの隣に、赤色インクが供給される第2印刷用ヘッドを並べて、所定の2色模様を360dpiの鮮明度で1パスで金型上に印刷する。
次いで、実施例4で説明した手順を繰り返してPVCスキンを製造する。
印刷された赤色と白色の模様は良好な不透明度を示す。2つのインクの印刷品質は良く、2色の模様の境界は鮮明に分離し、優れたコントラストが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対して下記(1)〜(4)を下記重量比率で含む組成物:
(1)5〜20%、好ましくは10〜15%の粒径が0.1〜10μmの少なくとも一種の熱可塑性樹脂、
(2)1〜20%、好ましくは5〜15%の少なくとも一種の改質剤、
(3)5〜20%、好ましくは10〜15%の少なくとも一種の可塑剤、
(4)45〜75%、好ましくは50〜70%の少なくとも一種の有機溶剤。
【請求項2】
20℃での粘度が5〜40mPa.s、好ましくは10〜25mPa.sである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂と可塑剤の重量比が1:01〜1:2、好ましくは1:0.5〜1:1である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
溶剤がイソホロン、酢酸ペンチル、乳酸アルキル、好ましくは、乳酸エチル、アジピン酸、グルタル酸およびコハク酸の二塩基性エステルおよびこれらの混合物の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を含む成形品。
【請求項7】
自動車内装部品、好ましくはインナードア、セントラルコンソールおよびアームレスト、革細工品、好ましくはハンドバッグ、旅行鞄およびサドルの中から選択される請求項6に記載の成形品。
【請求項8】
下記(i)〜(iv)の一連の段階を含む印刷表面を有する成形品を得る方法:
(i)請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物(A)の層を金型上に形成し、
(ii)金型を組成物(A)のゲル化点まで加熱し、
(iii)(ii)で得られた部分的または完全に被覆された金型上に、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂混合物を含む組成物(B)の層を形成し、
(iv)金型を組成物Bのゲル化点まで加熱する。
【請求項9】
(i)の段階で直径が40μm以下、好ましくは直径が30μmまたは20μmの印刷用ノズルを用いて組成物(A)の層を塗布する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(i)の段階で用いる組成物(A)がポリ塩化ビニル樹脂を含み、(ii)の段階で金型を180〜260℃、好ましくは230〜300℃の温度に加熱する請求項8または9に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515126(P2013−515126A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545387(P2012−545387)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052851
【国際公開番号】WO2011/086287
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】