説明

成形部品

【課題】圧縮成形及び焼結によって低コストの製作が可能であり、高密度と最適な均質性を備えた燃料電池スタック用のインタコネクタまたは端板を提供する。
【解決手段】高さがhの複数の小丘状及び/又は尾根状隆起(2)を具備するディスク形状又はプレート形状の本体(1)から構成され、断面に、隆起(2)の端輪郭(3)から発して、半径rの丸コーナ部分(4)を通って直接又は中間の直線部分(5)を経て、本体(1)の表面輪郭(7)に融合する半径がRの湾曲部分(6)に至る2つの傾斜側面を備えた成形部品であって、前記直線部分又は丸コーナ部分から湾曲部分にすぐに移行する場合にはその移行点における接線が、表面輪郭に対して95°〜135°の範囲の傾斜角αをなし、半径Rが0.15〜1mmの範囲内であり、高さhが、R:hの比が0.25〜1の範囲内となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造され、高さがhの複数の小丘状及び/または尾根状隆起を具備するディスク形状またはプレート形状の本体から構成されており、いずれの場合にも、断面に、隆起の端輪郭から発して、半径rまたはr′の丸コーナ部分を通って、直接にあるいは中間の直線部分を経て、本体の表面輪郭に融合する半径がRまたはR′の湾曲部分に至る2つの傾斜側面を備えた成形部品であって、直線部分、または、丸コーナ部分から直接に湾曲部分に移行する場合にはその移行点における接線が、表面輪郭に対して95°〜135°の範囲の傾斜角αまたはα′をなす、成形部品に関する。
【0002】
燃料電池スタックのためのインタコネクタまたは端板の形態をなすこのタイプの成形部品については、先行技術文献に記載がある(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
燃料電池スタックのインタコネクタまたは端板は、集電板の機能を有しており、同時にアノード側とカソード側の間における反応ガスの確実な分離と、これらの反応ガスの導通も保証しなければならない。この目的を実現するため、インタコネクタまたは端板は、小丘状及び/または尾根状隆起を備えた金属プレートまたはディスクとして設計されている。これらの隆起は、端板の場合には本体の片側に、インタコネクタの場合には本体の両側に形成される。こうしたインタコネクタ及び端板の全厚は、実際には1〜5mmである。隆起構造は、電気化学的に活性な電池との電気的接触領域である。その際、個々の小丘状及び尾根状隆起間の間隙は、従って反応ガスの導通に役立つ。概して、インタコネクタまたは端板は、アノード側とカソード側の間における反応ガスの確実な分離を保証するため、寸法全体にわたって高度なシーリングを施さなければならない。
【0004】
半製品から材料除去する機械加工によってこうしたインタコネクタ及び端板の最終形状を形成するのは、極めてコストが高くつき、従って、粉末冶金によって、すなわち、粉末状原材料をできるだけ最終形状に圧縮成形し、その後で圧縮成形された部品を焼結することによって形成することが必要とされる。
【0005】
ガス導通のための断面の幾何学形状としては本質的に矩形断面が最適である。というのは、矩形断面は、接触領域を最大にし、同時にその一方においてガス導通に十分な大きさの断面をなすという点に関して優れているからである。しかしながら、こうした形状は、実際には粉末冶金で成形することはできず、従って実際には、直線状の傾斜側面と、隆起の端輪郭と傾斜側面との間及びこれらと本体の表面輪郭との間の両方における小さい移行半径を備えた台形断面が通常用いられている。
【0006】
粉末冶金プロセスによる成形に関するもう1つの問題は、とりわけ酸化物セラミックス高温燃料電池スタック(固体酸化物形燃料電池またはSOFC)に用いられるインタコネクタ及び端板の場合に、クロム含有率の高い合金が材料として用いられることが多いという点である。しかしながら、このタイプの合金は低温では極めて脆く、多大の困難を伴ってしか圧縮成形することができない。
【0007】
これらの圧縮成形特性の悪さにもかかわらず、完成したインタコネクタ及び端板の十分な密度及び均質性を確保するため、先行技術文献(特許文献1参照)には、極めて特殊な条件下における2段階圧縮成形プロセスが提案されている。こうした圧縮成形プロセスはコストが高く、なおかつ得られる部品の均質性が最適ではないので、このプロセスは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】オーストリア特許第GM6.260号明細書(AT GM6.260)
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0199738号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、複雑な構造の成形部品、とりわけ、圧縮成形及び焼結によって製作され、低コストの製作が可能であり、同時に高密度と最適な均質性を兼ね備えた燃料電池スタック用のインタコネクタまたは端板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によればこの課題は、半径RまたはR′が0.15〜1mmの範囲内であり、高さhを、R:hまたはR′:hの比が0.25〜1の範囲内になるような寸法とすることにより達成される。
【0011】
本発明によれば、成形部品の製作中、成形部品の本体に向かう傾斜側面の移行半径が拡大され、同時に尾根状または小丘状の隆起の高さhが極めて特殊な範囲内で縮小される場合には、単一段圧縮成形プロセスでも、密度勾配が比較的緩やかな高密度の、従って均質性の極めて高い成形部品が実現されるという驚くべき成果が得られた。この場合、傾斜側面への隆起の端輪郭の移行半径rまたはr′はさほど重要ではなく、実際のところ、0.01〜0.5mmの範囲内である。同時に、本発明による構成は、後続のプロセスステップ中、成形部品の寸法安定性及び平面性に好ましい影響を及ぼす。
【0012】
成形部品が、本発明に基づいて定められた範囲外で設計される場合、密度及び均質性が大幅に低下し、従って、単一段圧縮成形プロセスによってその成形部品を製作できるという保証はもはや得られない。
【0013】
本発明の望ましい実施形態の場合、傾斜角αまたはα′は95°〜120°の範囲内であり、半径RまたはR′は0.3〜1mmの範囲内であり、R:hまたはR′:hの比は0.5〜1の範囲内である。
【0014】
これらの条件下で、成形部品の密度及び均質性に関して極めて優れた値が得られる。
【0015】
本発明のとりわけ好ましい実施形態の場合、傾斜角αまたはα′は95°〜110°の範囲内であり、半径RまたはR′は0.3〜1mmの範囲内であり、R:hまたはR′:hの比は0.7〜1の範囲内である。
【0016】
これらの条件下で、成形部品の密度及び均質性に関して最良の値が得られる。
【0017】
本発明による成形部品の構成が燃料電池スタックのインタコネクタまたは端板に用いられる場合にはとりわけ有利である。この場合、低コストの製作プロセスが用いられたとしても、この成形部品の実現された高密度によって、確実なガス分離のためにインタコネクタ及び端板に要求される構成部品の密封度も確保される。
【0018】
さらに、本発明による成形部品の構成は、用いられる粉末状原材料が、クロム含有率が少なくとも20重量%の合金である場合にとりわけ有利であり、インタコネクタ及び端板の場合、とりわけ、20〜30重量%のクロムと、0.5〜0.8重量%の希土類金属とりわけイットリウムを含む70〜80重量%の鉄のプレアロイを含む合金、または、95重量%のクロムと、0.5〜0.8重量%のイットリウムを含む5重量%の鉄のプレアロイを含む合金が有利である。
【0019】
下記において、図に基づいて本発明をさらに詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】シミュレーション計算によって求められた本発明によるインタコネクタの密度分布を示す図である。
【図2】同様にシミュレーション計算によって求められた先行技術によるインタコネクタの密度分布を示す図である。
【図3】本発明による燃料電池スタック用インタコネクタの細部をスケールを拡大して、略示した断面図である。
【図4】本発明による燃料電池スタック用端板の細部をスケールを拡大して、略示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるインタコネクタ及び先行技術によるインタコネクタの圧縮特性を調べるためのシミュレーション計算が、ドラッカー・プラーガのキャップモデルを用いてFEM(有限要素法)シミュレーションによって実施された。両方のシミュレーションに用いられた基本データは、95重量%のクロムと、0.8重量%のイットリウムを含む5重量%の鉄のプレアロイを含む合金の特性値であって、原材料粉末の内部摩擦時の凝集力及び角度、さらには圧縮成形作用の運動学的作用のような特性値であったが、これらは両シミュレーションとも同じであった。さらに、下記表によるさまざまな幾何学的構造特徴が用いられた。
【0022】
【表1】

【0023】
得られたシミュレーション結果は、図1及び図2に同じグレイスケールで示された。その比較によって明らかなように、図1に示す本発明による幾何学的形状は、図2に示す先行技術による幾何学的形状に比べて、隆起部以外の本体における圧縮密度が高い。チャネルの基部に近い特に密度の高い領域は、同様に先行技術の場合に比べて本発明による幾何学的形状のほうが大きい。従って、まず第1に本発明による幾何学的形状の本体の全領域において絶対圧縮密度が高まり、この結果、気密度が向上する。他方では、密度勾配が本体の広い領域にわたって極めて緩やかであり、このため、例えば焼結プロセスといった後続プロセスステップにおいて湾曲が生じにくくなる。
【0024】
この結果から明らかなように、本発明による幾何学的形状によれば、インタコネクタの本体における圧縮密度、さらには密度均一性も大幅に高めることが可能になる。従って、本発明による幾何学的形状によって、2段圧縮成形プロセスに依存することなく、構成部品全体の気密度が向上することになる。
【0025】
図3には、本発明による燃料電池スタック用インタコネクタの細部が、スケールを拡大して断面図で略示されている。インタコネクタは、両側に隆起−2−が設けられたプレート形状の本体−1−を備えている。インタコネクタの全範囲にわたって、小丘状に、連続した尾根状に、さもなければ分割した尾根状に形成することが可能な高さがhで断面が台形の隆起−2−が、その間隙によってインタコネクタのガス導通チャネルを形成している。各隆起−2−の端輪郭−3−は、半径rまたはr′の丸コーナ部分−4−または−4′−を経て直線部分−5−または−5′−を備えた傾斜側面に融合する。直線部分−5−または−5′−は、さらに半径RまたはR′の湾曲部分−6−または−6′−に融合する。これらは遮断されることなく、さらに本体−1−の表面輪郭−7−または−7′−に融合する。傾斜側面には、本体−1−の表面輪郭−7−または−7′−に対する角度αまたはα′が含まれている。同様に、隆起−2−の半径RまたはR′が極めて大きく且つ高さ寸法hが小さい湾曲部−6−または−6′−が存在する場合には、丸コーナ部分−4−または−4′−が、中間直線部分−5−または−5′−なしに、そのまま湾曲部分−6−または−6′−につながることも考えられる。この場合、湾曲部分−6−または−6′−への丸コーナ部分−4−または−4′−の移行部における接線には、本体−1−の表面輪郭−7−または−7′−に対する傾斜角αまたはα′が含まれる。
【0026】
図4には、本発明による燃料電池スタック用端板の細部が、スケールを拡大して断面図で略示されている。隆起は、図3に示すインタコネクタの場合と全く同じに形成されるが、それとは対照的に本体の片側だけに形成される。
【符号の説明】
【0027】
1 プレートまたはディスク状本体
2 隆起
3 端輪郭
4 丸コーナ部分
5 直線部分
6 湾曲部分
7 本体の表面輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造され、高さがhの複数の小丘状及び/または尾根状隆起(2)を具備するディスク形状またはプレート形状の本体(1)から構成されており、いずれの場合にも、断面に、隆起(2)の端輪郭(3)から発して、半径rまたはr′の丸コーナ部分(4、4′)を通って直接あるいは中間の直線部分(5、5′)を経て、本体(1)の表面輪郭(7、7′)に融合する半径がRまたはR′の湾曲部分(6、6′)に至る2つの傾斜側面を備えた成形部品であって、
前記直線部分(5、5′)、または、前記丸コーナ部分(4、4′)から前記湾曲部分(6、6′)にすぐに移行する場合にはその移行点における接線が、前記表面輪郭(7、7′)に対して95°〜135°の範囲の傾斜角αまたはα′をなし、
前記半径RまたはR′が0.15〜1mmの範囲内であり、前記高さhが、R:hまたはR′:hの比が0.25〜1の範囲内になるような寸法になっていることを特徴とする、
成形部品。
【請求項2】
前記傾斜角α、α′が95°〜120°の範囲内であり、前記半径RまたはR′が0.3〜1mmの範囲内であり、前記R:hまたはR′:hの比が0.5〜1の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造される成形部品。
【請求項3】
前記傾斜角α、α′が95°〜110°の範囲内であり、前記半径RまたはR′が0.3〜1mmの範囲内であり、前記R:hまたはR′:hの比が0.7〜1の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造される成形部品。
【請求項4】
前記成形部品が燃料電池スタックのインタコネクタまたは端板であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造される成形部品。
【請求項5】
前記粉末状原材料が、クロムの含有率が少なくとも20重量%の合金であることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造される成形部品。
【請求項6】
前記粉末状原材料が、20〜30重量%のクロムと、0.5〜0.8重量%の希土類金属とりわけイットリウムを含む70〜80重量%の鉄のプレアロイから構成されることを特徴とする、請求項4に記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造されるインタコネクタまたは端板。
【請求項7】
前記粉末状原材料が、95重量%のクロムと、0.5〜0.8重量%のイットリウムを含む5重量%の鉄のプレアロイから構成されることを特徴とする、請求項3に記載の粉末状原材料を圧縮成形して、焼結することによって製造されるインタコネクタまたは端板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−129520(P2011−129520A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275921(P2010−275921)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(390040486)プランゼー エスエー (25)
【Fターム(参考)】