説明

成形部材を硬化及び表面官能化するための方法

本発明は、化学の分野に関連し、かつ、例えば自動車産業、車両製造、電気産業において使用されることができる成形部材の硬化法及び表面修飾法に関する。本発明の課題は、殊に短時間で、かつ高い再現性を伴って実施することができ、そして塗装が施されるべき成形部材の表面品質の改善を生む方法を示すことである。該課題は、少なくとも1つのラジカル硬化型の又はカチオン硬化型の不飽和反応性樹脂系を含有する材料を成形部材へと加工し、かつ形状付与プロセスの間又は形状付与プロセス後にコーティング有り又は無しで形状安定まで架橋し、かつ前記架橋の間に及び/又は後に、コーティング前及び/又はコーティング後に前記成形部材を、高エネルギー線又は高エネルギー粒子により、少なくとも前記成形部材の表面領域がほぼ完全に硬化するまで処理に供する方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学の分野及びプロセス工学に関連し、かつ重合性の樹脂と、場合により重合性のモノマー、充填材及び補強材(繊維)、顔料並びに添加剤とからの成形部材、例えば"sheet molding compound"(SMC)又は"bulk molding compound"(BMC)を硬化及び表面修飾するための方法に関し、これらは、その後に成形部材として、例えば自動車産業、車両製造、電気産業において使用されることができる。
【0002】
熱硬化型樹脂成形部材、例えば、繊維/ポリマーマトリックス成形部材、例えばSMC構成部材及びBMC構成部材といった成形部材の、車両産業、レール車両製造、電気産業及びデバイス製造(Geraetebau)といった、あらゆる技術分野での次第に増える工業的な適用には、該構成部材を良質に、かつ可能な限り短時間で製造することができる製造法が望まれている。たいていの場合、続けて該構成部材のコーティングが必要であり、このことは材料及び製造法に更なる要求を課す。
【0003】
SMC材料とBMC材料とからの構成部材の製造のために、例えば、架橋可能な樹脂、オリゴマー、反応性希釈剤、繊維及び添加剤が使用され、それらは連続プロセスの中で架橋しなければならない。例えば、これは、SMC構成部材の場合、該構成部材の形状付与の間に比較的高温下でのプレス処理によって行われることができる。この場合、塗装による事後のコーティングのために重要である表面品質は、材料系、製造法、製造パラメーター及びツール表面の粗さ及び波しわに依存する。後からの塗装に要求される表面品質は、十分な品質という点で製造プロセスにおいて保証できないことが多く、かつ更に、例えば離型剤といった内部圧縮助剤及び/又は外部圧縮助剤の残分もなお存在しているので、塗装に必要な湿潤性の表面(該表面は、その後にコーティングの良好な付着も可能にする)を得るために、例えばバリ取り、パジング、パワー洗浄(Powerwash)又は火炎処理といった更なる処理が引き続き行われる。
【0004】
現在、ポリマー(塗料層)が架橋するまでの焼き付けプロセスを引き続き行う、液状塗料、水性塗料又は粉末塗料を用いたSMC構成部材のための全ての工業的な形状付与プロセス及びコーティングプロセスは、品質を安定させず、かつ十分でないプロセス安定性をもたらす明らかな問題点を示す。これらは、なかでも、温度負荷によって表面に移動し、また大気に放出される(フォギング)、残留モノマー、オリゴマー又は反応性希釈剤によって招かれる。後接続された塗装プロセスにおいても、これらはSMC材料から浸み出し、それにより塗料層欠陥(例えば、ピンホール、クレーター、クラック、デラミネーション)を招く可能性がある(R.Liebold,Farbe+Lack,108,7(2002)page 4)。
【0005】
塗装プロセスにおける溶剤蒸発(Ausgasungen)の影響からSMC成形部材を可能な限り良好に保護するために、殊に、いわゆるクラスAの構成部材用には、塗装プロセス前に付加的なプロセス工程において、シーラント、例えばプライマー又はシーラー(K.Joesel,Radtech Report November/December 2001,23 ff.)が塗布され、その後に、これらは実質的に中熱負荷無し又は有りで乾燥される。他の変形は、インモールドコーティング(IMC)を介したシーラント層の施与を、そのまま熱的な圧縮プロセスにおいて行うことである。この変形法の欠点は、幾何学的に単純に構造化された構成部材に制約されていることである(H.G.Kia:Sheet Molding Compounds−Science and Technology,Hanser Verlag Muenchen 1993,pp.163 ff.)。これらの付加的なプロセス工程は、煩雑、高価であり、かつ製造プロセスを遅延させる。
【0006】
更に、高エネルギー電子によるポリマー修飾法、例えば、ポリマー(例えば熱可塑性樹脂、エラストマー)の架橋、繊維/ポリマーマトリックス成形部材を製造するための反応性樹脂系の硬化及びPTFEの官能化といった方法が公知である。これらの適用は、有利にはラジカルを形成し、かつ複雑な化学反応を誘起する励起された原子又は分子並びにイオンを発生させるための高エネルギー電子を用いた空間的及び時間的に正確なエネルギー導入に基づく。結果的に、化学的、電気的、機械的及び熱的な特性が変化したポリマーが生じることになる(A.Charlesby,Proc.Roy.Soc.A,1952,vol.215,pp.187−214)。
【0007】
繊維/ポリマーマトリックス組成物を製造するための高エネルギー電子を用いた反応性樹脂系の硬化は、これまでは主として、軍事又は航空及び宇宙飛行での使用目的に採用されていた。高エネルギー電子による硬化の利点は、オートクレーブを用いることなく大型の構成部材を作製することが可能であり、(熱圧縮プロセスと比べて)70%までの高められたエネルギー効率、長時間のハンドリング時間、僅かな収縮、僅かなガス放出、僅かな残留応力、僅かな吸水率、比較的高いガラス転移温度、比較的短い硬化時間及び使用される材料を網状組織に完全に組み込むことが可能なことである(Abaris,EB Curing Technology,Las Vegas,1994;Norris,R.,EB Curing of Composites Workshop、1996)。
【0008】
高エネルギー電子による硬化と組み合わせて、製造法の巻き取り法、引き抜き法、真空バッグ法によるプリプレグ又は真空補助樹脂注入成形法(VARTM)あるいは樹脂注入成形法(RTM)が使用される。大型の電子加速器及び高い資本費により、上記のハイテク領域での、高エネルギー電子を用いた反応性樹脂系の硬化の使用は制限される。さしあたって、世界的な市場で入手可能な小型の、かつ性能の良い電子加速器が、シールド処理(Abschirmung)及び多岐にわたった技術領域、例えば車両産業、レール車両製造、電子産業及びデバイス製造における製造ラインへの一体化を含めた小型の設備システムを可能にする。
【0009】
しかしながら、公知の方法では、安定しない品質及び製造プロセスの十分でないプロセス安定性の問題は完全には取り除かれないか、又は煩雑でかつ高価な付加的なプロセス工程(なぜなら、これらは目下利用される製造法と結ばれているからである)を用いてしか取り除かれない。
【0010】
本発明の課題は、殊に短時間で、かつ高い再現性を伴って実施することができ、そして塗装が施されるべき成形部材の表面品質の改善をもたらす、成形部材の硬化法及び表面官能化法を示すことである。
【0011】
該課題は、請求項に記載される発明によって解決される。好ましい実施態様は、従属請求項の対象である。
【0012】
成形部材を硬化及び表面官能化するための本発明による方法の場合、少なくとも1つのラジカル硬化型の又はカチオン硬化型の不飽和反応性樹脂系及び更なる物質を含有する材料が成形部材へと加工され、かつ形状付与プロセスの間又は形状付与プロセス後にコーティング有り又は無しで形状安定まで架橋され、かつ該架橋の間に及び/又は続けて、コーティング前及び/又はコーティング後に該成形部材が、少なくとも該成形部材の表面領域がほぼ完全に硬化し、かつ、ほぼ完全にコーティング可能な成形部材表面が製造されるまで高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理に供される。
【0013】
好ましくは、繊維/ポリマーマトリックス材料からなる成形部材が製造され、かつ高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理に供され、その際、なお好ましくは、該繊維/ポリマーマトリックス材料は、不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂(アクリレート、メタクリレート)又はエポキシ樹脂とカチオン開始剤とからなる。
【0014】
更に好ましくは、更なる物質を含有する不飽和反応性樹脂系が使用され、その際、なお好ましくは、更なる物質として、添加剤及び/又は充填材及び/又は補強要素及び/又は更なるポリマー及び/又は反応性希釈剤が使用される。
【0015】
同様に好ましくは、SMC及び/BMCからなる成形部材が使用される。
【0016】
そしてホットプレス法によって成形部材を形作ることも好ましい。
【0017】
架橋が熱開始される場合も好ましく、その際、なお好ましくは、架橋は成形部材が安定するまで行われる。
【0018】
更に、高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理が、反応性ガス環境及び/又は空気中で実施される場合に好ましい。
【0019】
同様に、高エネルギー電子又はγ線又は赤外線又はマイクロ波線による処理あるいはプラズマ処理との組み合わせにおける誘導導入が実施される場合に好ましい。
【0020】
そして、もっぱら高エネルギー電子のみを用いた処理が、反応性ガス環境及び/又は空気中で実施される場合に好ましい。
【0021】
10kGy〜250kGyの範囲の線量を用いた処理が実施される場合も好ましい。
【0022】
更に、少なくとも2つの工程における照射線量の適用が、1回の処理工程当たり同一線量で実施される場合に好ましい。
【0023】
同様に、少なくとも2つの工程における照射線量の適用が、1回の処理工程当たり異なる線量で実施される場合も好ましい。
【0024】
そして、温度5℃〜材料の成形部材の熱安定性が保証される温度までで実施される場合に好ましい。
【0025】
そして同様に、コーティングされた繊維/ポリマーマトリックス成形部材の処理が実施される場合に好ましく、その際、なお好ましくは、コーティングとして塗装が実施される。
【0026】
本発明による方法を用いることによって初めて、低分子量成分、例えば残留モノマー、オリゴマー又は反応性希釈剤が、後続の温度負荷を受けた際に、塗装プロセスの間にSMC材料及びBMC材料から浸み出すことを防止するために、実質的に硬化しており、かつ表面特性が更なる加工のために十分〜良好であるか又は非常に良好である成形部材を、比較的短時間で、かつ煩雑性をあまり伴わずに得ることが可能である。この場合、硬化とは、DSC法により残留反応性(Restreaktivitaet)がもはや構成部材中で検出されないことと解される。殊に、これはコーティング前又はコーティングの間又はコーティング後に、本発明により硬化されることができるコーティング成形部材に関する。コーティングされた、本発明により処理されたこれらの成形部材は良好〜顕著な表面品質を示す。
【0027】
殊に、塗装されたSMC成形部材及びBMC成形部材のために、本発明による方法が適用可能である。本発明の範囲内で、この場合、SMCとは、架橋性の、たいていは不飽和のポリエステル樹脂、ガラス繊維及び必要な骨材からなる加工可能な平面の半製品と解されるべきであり、該半製品は、加熱プレスで成形部材へと加工される。本発明の範囲内で、BMCとは、切断されたガラス繊維を有する射出成形又は移送成形可能な成形材料と解されるべきである。この場合、BMCの繊維長は、SMCの繊維長より短い[Liebold,R.:mo 55(2001) page 41]。
【0028】
SMC成形部材及びBMC成形部材は、反応性プリプレグ(樹脂マット、SMC−シートモールディングコンパウンド)から高められた温度での熱プレスにより又はバルク材料(BMC−バルクモールディングコンパウンド)から射出成形あるいは熱プレスにより製造され、かつ形状が安定するまで架橋される、繊維/ポリマーマトリックス成形部材である。構成部材は、公知の方法に従って製造され、形作られ、かつ架橋される。
【0029】
上記解決手段を見出した本発明者によって、公知技術に従ったこれらの成形部材が、工業的なプロセス工程及びプロセス時間内では、熱プレスの間に明らかに十分には、かつ再現可能には架橋せず、引き続き、硬化された成形部材は得られないことを確認することができた。完全な硬化は、その後に、大抵の場合は、更なる温度処理に際して初めて行われ、これは塗料層の焼き付けの過程で実現される。その際、既知の溶剤蒸発及び塗料層へのマイナス作用が生じる。
【0030】
欠点であるこれらのプロセスを回避するために、本発明に従って、硬化及び表面官能化を実施することが提案されていた。硬化は、その際、本発明に従って、成形部材の所望の体積において行われる。その際、成形部材の所望の体積が、ほぼ完全に硬化される。しかしながら、所望の体積はまた、成形部材に関して、成形部材全体に関するものでなくてもよく、例えば、成形部材の一側面のみが硬化されるか、又は成形部材の表面領域のみが硬化されてよい。
【0031】
本発明に従って、有利にはラジカルを形成し、かつ複雑な化学反応を成形部材中で及び/又は成形部材の所望の体積内で誘起する励起された原子又は分子並びにイオンを後で発生させる高エネルギー線又は高エネルギー粒子が、硬化のために成形部材に送り込まれる。
【0032】
本発明による解決手段によって、プロセスシーケンスには、たしかに、付加的なプロセス工程が導入されるが、しかしながら、該工程は、短時間(例えば、製造プロセスのサイクルタイム)の内に成形部材を、後続のコーティングプロセスに際しての溶剤蒸発及び/又は後架橋による表面欠陥が本質的にもはや発生しない程度まで硬化する。
【0033】
本発明による解決手段の利点は、コーティングされる成形部材の場合のみならず、未コーティングの成形部材の場合にも、例えば反応性希釈剤残分といった低分子量の物質の溶剤蒸発が、ほぼ完全に〜完全に防止されることから、まさしく表面欠陥及びフォギングがもはや発生しなくなる点にある。その際、フォギングとは、易揮発性物質、例えば反応性希釈剤残分が、未コーティングの又は部分的にコーティングされたSMCプレス部材の使用状況下で放出されることと解される。
【0034】
その際、本発明に従って、処理が複数の工程で及び/又は工程当たりのエネルギー出力を変えながら(例えば、線量、即ち質量単位当たりの吸収エネルギー)実現される場合に好ましい。それにも関わらず、これらの加工時間も、工業的な製造プロセス/製造ラインの通常のサイクル時間に合わせられることができる。エネルギー出力は、その際、成形部材の物質組成、その寸法に依存して、かつプレス条件に依存して選択される。
【0035】
成形部材の硬化を、該成形部材の表面領域中でのみ実施することも可能である。殊にこれは、成形部材の大きな厚みが存在する場合に好ましい。その際、硬化領域は、後続のプロセス工程で不利な影響が生じない厚みに実現されるべきである。殊に、この硬化された表面領域は、まだ硬化されておらず及び/又は揮発性である、なおも成形部材中に存在している可能性のある材料が成形部材を抜け出すことができることを妨げるが、しかし、それにも関わらず、成形部材の塗装されるべき表面に本質的に不利な影響を及ぼさない。
【0036】
本発明による解決手段によって、付加的な後加工を省くことができる費用効果の解決手段が見出されており、これは原因を突きとめるための全体的な考察によって可能となっている。
【0037】
本解決手段の特別な利点は、成形部材の又は成形部材の体積−あるいは表面領域の硬化だけでなく、高エネルギー線又は高エネルギー粒子によるエネルギー導入を用いて、コーティングのより良好な付着と、表面の親水性の増加をもたらす官能基も、成形部材の表面上及び/又は表面に近接した領域中に作り出されるという点である。このようにして最終的には、成形部材表面、ひいては塗装された/コーティングされた成形部材の表面品質の改善も得られる。
【0038】
以下では、本発明を複数の実施例を基にして詳細に説明する。
【0039】
実施例1
自動車成形部材を、低収縮配合のプリプレグ
SMCペースト:
不飽和ポリエステル樹脂(スチレン中で60質量%) 60質量部
低収縮添加剤(スチレン中で40質量%) 40質量部
炭酸カルシウム 10質量部
t−ブチルペルオキシベンゾエート 1.5質量部
ステアリン酸亜鉛 4質量部
酸化マグネシウム 1質量部
SMCプリプレグ:
SMCペースト 75質量%
ガラス繊維(切断、長さ:1インチ) 25質量%
から以下の条件下で熱プレスにより製造する:
温度/雌型(Matrize):140℃;温度/雄型(Patrize):139℃、締め付け時間(Schliesszeit):12秒、プレス時間:180秒;プレス圧:14MPa。
【0040】
DSCにより測定された成形部材中での残留反応性は、プリプレグの初期反応性−40J/gに対して−8J/gである。
【0041】
引き続き、成形部材に、大気雰囲気下で0.3m/分の製品速度にて140kGyの電子線照射を行う。照射は、プロセスシーケンスにおいて、プレスからの成形部材の製造と、後続の処理工程との間で行われる。その後、成形部材中でDSCによって残留反応性はもはや確認することはできず、そのため成形部材は完全に硬化されている。テスト液としての水との接触角は、表面中に酸素含有基が組み込まれていることで、98°から78°に低下する。
【0042】
実施例2
商用車ボディ成形部材(Nutzfahrzeuganbauformteil)を、低収縮配合のプリプレグから以下の条件下で熱プレスによって製造する:
温度/雌型:140℃;温度/雄型:139℃、締め付け時間:12秒、プレス時間:180秒;プレス圧:14MPa。
【0043】
DSCにより測定された成形部材中での残留反応性は、プリプレグの初期反応性−37J/gに対して−7J/gである。
【0044】
引き続き、成形部材に、大気雰囲気下で2.1m/分の製品速度にて7×20kGyの電子線照射を行う。照射は、プロセスシーケンスにおいて、プレスからの成形部材の製造と、後続の処理工程との間で行われる。その後、成形部材中でDSCによって残留反応性はもはや確認することはできず、そのため成形部材は完全に硬化されている。テスト液としての水との接触角は、表面中に酸素含有基が組み込まれていることで、100°から32°に低下する。
【0045】
実施例3
自動車ボディ成形部材(Automobilanbauformteil)を、低収縮配合のプリプレグ(上記参照)
不飽和ポリエステル樹脂(スチレン中で70質量%) 16.4質量%
ポリスチレン(スチレン中で40質量%) 11質量%
パラ−t−ブチルペルオキシベンゾエート 0.3質量%
ステアリン酸亜鉛 0.7質量%
炭酸カルシウム 41.1質量%
酸化マグネシウム 0.5質量%
ガラス繊維ロービング(切断、長さ:1インチ) 30質量%
から以下の条件下で熱プレスにより製造する:
温度/雌型:140℃;温度/雄型:139℃、締め付け時間:12秒、プレス時間:180秒;プレス圧:14MPa。
【0046】
DSCにより測定された成形部材中での残留反応性は、プリプレグの初期反応性−24J/gに対して−2.2J/gである。
【0047】
引き続き、該構成部材に、0.6m/分の製品搬送速度で70kGyの電子線照射を行い、続けて大気雰囲気下で4.2m/分の製品速度で7×10kGyの電子線照射を行って完全に硬化する。その後、構成部材中でDSCによって残留反応性はもはや確認することはできない。テスト液としての水との接触角は、表面中に酸素含有基が組み込まれていることで、95℃から72℃に低下する。粗さは、プレス処理後の状態と比べうる範囲にあった。
【0048】
実施例4
自動車ボディ成形部材を、自動車のクラスA配合のSMCプリプレグから、以下の条件下で熱プレスによって製造する:温度/雌型:150℃;温度/雄型:145℃、締め付け時間:10秒、プレス時間:160秒;プレス圧:12MPa。
【0049】
DSCにより測定された成形部材中での残留反応性は、厚さに依存して、プリプレグの初期反応性−41J/gに対して平均して17%である。その際、−2.2〜3.2mmの構成部材の厚さの場合にはプリプレグの初期反応率の14〜20%の残留反応率、〜5.4mmの場合には13%の残留反応率、そして〜10.3mmの場合には10%の残留反応率が測定された。
【0050】
引き続き、成形部材に、大気雰囲気下で4.2m/分の製品速度にて12×10kGyの電子線照射を行う。照射は、プロセスシーケンスにおいて、プレスからの成形部材の製造と、後続の処理工程との間で行われる。その後、成形部材中でDSCによって残留反応性はもはや確認することはできず、そのため成形部材は完全に硬化されている。テスト液としての水との接触角は、表面中に酸素含有基が組み込まれていることで、95℃から72℃に低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのラジカル硬化型の又はカチオン硬化型の不飽和反応性樹脂系及び更に別の物質を含有する材料を成形部材へと加工し、そして形状付与プロセスの間又は形状付与プロセス後にコーティング有り又は無しで形状が安定するまで架橋し、そして該架橋の間に及び/又は後に、コーティング前及び/又はコーティング後に該成形部材を、少なくとも該成形部材の表面領域がほぼ完全に硬化し、かつほぼ完全にコーティング可能な成形部材表面が製造されるまで、高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理に供する、成形部材を硬化及び表面官能化する方法。
【請求項2】
繊維/ポリマーマトリックス材料からなる成形部材を製造し、そして高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理に供する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂(アクリレート、メタクリレート)又はエポキシ樹脂とカチオン性開始剤からなる繊維/ポリマーマトリックス材料を使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
更なる物質を含有する不飽和反応性樹脂系を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
更なる物質として添加剤及び/又は充填材及び/又は補強要素及び/又は更なるポリマー及び/又は反応性希釈剤を使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
SMC及び/又はBMCからの成形部材を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
成形部材を高温プレスによって形作る、請求項1記載の方法。
【請求項8】
架橋を熱的に開始する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
架橋を成形部材が安定するまで実施する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
高エネルギー線又は高エネルギー粒子による処理を、反応性ガス環境及び/又は空気中で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
高エネルギー電子又はγ線又は赤外線又はマイクロ波線あるいはプラズマ処理と組み合わせた誘導導入による処理を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
処理を、もっぱら高エネルギー電子により、反応性ガス環境及び/又は空気中で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
10kGy〜250kGyの範囲の線量で処理を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
照射線量の適用を、少なくとも2つの工程で、1回の処理工程につき同じ線量で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
照射線量の適用を、少なくとも2つの工程で、1回の処理工程につき異なる線量で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記処理を、温度5℃ないし材料の成形部材の熱安定性が保証される温度で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
コーティングされた繊維/ポリマーマトリックス成形部材の処理を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
コーティングとして塗装を実施する、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2012−518712(P2012−518712A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551449(P2011−551449)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051351
【国際公開番号】WO2010/097276
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500525405)ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ (8)
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Hohe Strasse 6,D−01069 Dresden,Germany
【Fターム(参考)】