説明

成形部材用ポリエステルフィルムおよび成形方法

【課題】ポリエステルフィルムの昇温速度を向上させることによる成形性、生産性、成形サイクルを向上し、さらには、成形後の外観の美麗さを有する成形部材用ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】波長700〜2500nmにおける透過率の最小値が80%以下である融点が240〜260℃のポリエステルフィルムであって、該フィルムを赤外線ヒーターで180秒加熱した後のフィルムの破断応力が長手方向および幅方向のいずれもが40以上100MPa未満である成形部材用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形部材用ポリエステルフィルムに関し、特に成形用加飾シートや成形時の表面保護シートなどに好適に使用することができる、成形部材用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建材、自動車部品、携帯電話や電機製品などにおいて加飾シートを塗装代替として成形体に使用する動きが盛んである。成形時には、一般的に赤外線ヒーターやハロゲンヒーターなどを用いて加飾シートを所定の温度まで加熱し、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形などを行う方法が用いられている。
【0003】
赤外線ヒーターを用いて成形する場合、ポリエステルは赤外線の吸収能力が低いために、目的の温度に達するまでに時間を要し生産性が低いという欠点がある。
【0004】
そのような中、ポリエステル製ボトルの分野においては、特に結晶化時間を要する口栓部を短時間で結晶化させるために、ポリエステルに赤外線吸収剤を含有させた組成物を用いる提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この提案ではポリエステルに対する赤外線吸収剤の添加量が少ないために、フィルムにした場合、十分な吸収特性を得られないという問題がある。その一方、赤外線吸収剤を大量に添加したフィルムは、赤外線の吸収性能は向上するが赤外線吸収剤の耐熱性が低いことによる異物などで成形部材の表面が粗面化される結果、成形部材の外観が損ねられるという問題がある(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−105190号公報
【特許文献2】特開2002―286929号公報
【特許文献3】特開2005−120126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、本発明は、成形フィルムの昇温速度を向上させることによる成形性、生産性、成形サイクルを向上し、さらには、成形後の外観の美麗さを有する成形部材用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、以下の構成を有する。
(1)波長700〜2500nmにおける透過率の最小値が80%以下であり、かつ、融点が240〜260℃のポリエステルフィルムであって、該フィルムを赤外線ヒーターで180秒加熱した後のフィルムの破断応力が長手方向および幅方向のいずれもが40以上100MPa未満である成形部材用ポリエステルフィルム。
(2)赤外線ヒーターで180秒加熱後のフィルム温度が100℃を超える前記(1)に記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
(3)赤外線吸収粒子を0.1〜5重量%含有する前記(1)または(2)に記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
(4)赤外線吸収粒子の平均粒径が10〜150nmである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
(5)赤外線吸収粒子が、インジウム系粒子、ランタン系粒子、アンチモン系粒子および亜鉛化合物粒子からなる群から選ばれる1種以上の粒子である前記(3)または(4)に記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
(6)ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)とポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)とを含有するポリエステル系樹脂組成物を用いてなるフィルムであって、該樹脂組成物における樹脂(a)の含有量が、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、65〜90重量%であり、樹脂(b)の含有量が、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、10〜35重量%で混合されてなるポリエステル系樹脂組成物を用いてなるフィルムである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルムを赤外線ヒーターによって加熱し、成形することを特徴とする成形部材用ポリエステルフィルムの成形方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、赤外線吸収粒子を含有した一定のフィルムの融点を持つフィルムのみを選択的に熱吸収を促進させることで生産性と成形サイクルを向上し、さらには、成形後の外観の美麗さを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における、成形部材用ポリエステルフィルムは、成形用加飾シート本体に用いられるポリエステルフィルム、または、成形部材の形成加工時のキズなどにより成形部材の外観形状の低下を防止するために積層される保護シートとして使用されるポリエステルフィルムなどに好適に使用することができる。
【0010】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、波長700〜2500nmにおける透過率の最小値が80%以下であり、かつ、融点が240〜260℃のポリエステルフィルムであって、該フィルムを赤外線ヒーターで180秒加熱した後のフィルムの破断応力が長手方向および幅方向のいずれもが40以上100MPa以下であることを特徴とするものである。以下、この点についてさらに詳述する。
【0011】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、成形性、生産性、また成形サイクルを向上させる点から、波長700〜2500nmにおける透過率の最小値が80%以下であることが重要である。一般的に、主成分として樹脂が用いられる部材を成形する場合には熱加工が用いられており、成形時の加熱方式は、波長700〜2500nmを放出する近赤外線ヒーターと波長4000〜10000nmを放出する遠赤外線ヒーターの両方で加熱されている。つまり、本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、該加熱方式において、他の樹脂とともに積層された状態で成形加工されるため、本発明のポリエステルフィルムは選択的に加熱される結果となっており、昇温速度の向上が望める。
【0012】
また、この赤外線波長領域での透過率の最小値は、上記の理由により80%より高くなると赤外線照射による昇温が不十分であり、成形性、生産性、成形サイクルを向上させる効果が劣るため好ましくない。本発明においては、80%以下であることが重要であり、好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。成形部材用ポリエステルフィルムとしては、昇温速度を向上させるために下限は0%であることが好ましいが、樹脂部材の上に積層して一体成形する場合、フィルム側からの赤外線波長がカットされてしまい、樹脂部材の加熱均一性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0013】
また、本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、生産性、成形性、および加工後の外観の点で、融点が240〜260℃の範囲にあることが重要である。240℃未満の場合、耐熱性が劣り、成形工程における保護フィルムの本体樹脂への密着による保護フィルムの剥離性の悪化が懸念され、また熱成形を行うフィルムの二次加工時にフィルムの白化が認められる場合がある。逆に、260℃を超えた場合には、加工時のシワの発生をもたらす傾向にあり、熱加工によるフィルムの破断応力が柔軟に追従できず、成形部材の外観を悪くしてしまう場合があり、好ましくは、240℃〜255℃、さらに好ましくは240℃〜250℃の範囲である。
【0014】
ここで、ポリエステルフィルムの融点の測定は後述するように、試料約10mgを示差走査熱量計(PERKIN−ELMER社製DSC7)を用いて、温度30〜300℃、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピークを融点とした。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、フィルムとした場合には複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合、最も高温に現われる吸熱ピーク温度を本発明のポリエステルフィルムの融点とする。
【0015】
赤外線波長領域での透過率の測定は、後述するように、日立製作所製の分光光度計(U3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け透過率を測定した。バンドパスは2nm/servoとし、ゲインは3と設定し、700nm〜2500nmの範囲を120nm/min.の走査速度で測定した。また、標準白色板としては、U3410に付属の物を用いて測定した。
【0016】
さらに、本発明の成形部材用ポリステルフィルムは、成形性および外観の点から、該フィルムを赤外線ヒーターで180秒加熱した後のフィルムの破断応力が長手方向および幅方向のいずれもが40以上100MPa未満であることが重要であり、より好ましくは、45〜95MPa、さらに好ましくは50〜90MPaである。破断応力が上記範囲未満では、成形加工などでの予熱工程でフィルム移送のための張力に耐えることができず、フィルムが変形、場合によっては破断してしまう場合があり、成形部材としての商品価値を喪失してしまうことがある。逆に100MPa以上となると、熱成形時に変形が不十分であり、成形金型への追従が甘く成形部材としての使用に耐えないものとなってしまう。破断応力(MPa)の測定方法を下記する。
【0017】
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの短形に切り出し、サンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mm、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定はチャックされたフィルムサンプルを、近赤外線ヒートビーム線集光タイプ((株)ハイベック社製HYL20−11M)を用いて近赤外線出力口から300mm手前にフィルム面と平行となるように設置し、25℃環境下で180秒間の加熱の後で引張試験を行った。サンプルが破断したときのフィルムにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を破断応力値とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値を測定値とした。
【0018】
さらに、本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、生産性および成形性の点から、赤外線ヒーターで180秒加熱後のフィルム温度が100℃を超えることが好ましく、さらに好ましくは105℃を超え、最も好ましくは110℃を超えることである。一方、200℃を超えると、フィルムにしわが発生するなど加工上好ましくないため、200℃以下になるようにフィルム中に含有する赤外線吸収剤の種類、含有量を調整することが好ましい。
成形加工時のフィルムの温度を早く上昇させる、つまり、フィルムの昇温速度を向上させることでフィルムの生産性が向上し、さらに、該時間内で加工要求に応じた成形が出来るからである。
【0019】
赤外線ヒーターで180秒加熱後のフィルム温度の測定方法を下記する。
【0020】
フィルムサンプルにヒートラベル(ミクロン(株)社製)を貼り付け、赤外線ヒーターとして近赤外線ヒートビーム線集光タイプ((株)ハイベック社製HYL20−11M)を用いて近赤外線出力口から300mm手前にフィルム面が平行となるように固定し、25℃環境下で180秒加熱した後のラベル表示温度をフィルム温度とした。また、ヒートラベルは、赤外線ヒーター側のフィルム表面に貼付した。
【0021】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムを上述したフィルムとする為には、一定の融点を有するポリエステルフィルムに赤外線吸収粒子を含有することで達成できる。
【0022】
本発明に用いられる赤外線吸収粒子としては、ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、亜鉛系粒子、イモニウム系粒子、ジイモニウム系粒子、フタロシアニン系粒子、アミニウム系粒子、ポリメチン系粒子を好ましく用いることができるが、もちろんこれに限定されるものではない。これら赤外線吸収無機粒子を利用することにより、効率よく赤外線を吸収することが可能となるため好ましい。中でも、六ホウ化ランタン、アンチモン添加酸化錫、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム添加酸化錫(ITO)がより好ましく用いられ、最も好ましくは六ホウ化ランタンである。この六ホウ化ランタンの微粒子は、緑色の粉末であるが、可視光波長に比べて粒径が十分小さい微粒子を分散した場合には、可視光透過性が生じ、赤外光は遮蔽する。これは、この材料が自由電子を多く保有し、4f−5d間のバンド間遷移や、電子−電子、電子−フォノン相互作用による吸収が近赤外領域に存在するためと考えられる。さらに、これらの粒子を1種類のみだけでなく数種類の粒子を混合して用いた場合、より幅広い波長範囲の赤外線の吸収が可能となり、より好ましいものとなる。
【0023】
赤外線吸収粒子の含有量は、フィルム全体に対して0.1〜5重量%であることが好ましい。0.1重量%よりも少ない場合、本発明の赤外線吸収能力が不足し、成形加工時の昇温速度が低くなる傾向となる。また、昇温速度が低いとフィルムの温まり始める時間も遅い上、成形開始温度が決まっている場合の成形加工工程において、成形加工時の要求する設定温度に到達するまでに時間がかかってしまい成形サイクルが延長され、生産性は低下してしまう。また成形加熱時間が決まられている工程の場合には、フィルムの昇温が不十分なために、成形時の応力が高くなってしまい、シワや成形不足が発生し成形部材の外観が悪化してしまう。逆に、赤外線吸収粒子の含有量が5重量%を超えた場合、赤外線収能力は高くなるが、フィルムの表面が粗面される傾向になるため、成形用加飾シート本体に用いられた場合には、成形部材そのものの外観を悪化させ、保護シートとして用いられた場合には、フィルムの表面が転写される結果、成形用加飾シート本体に用いられた場合と同様、外観を悪化させるため好ましくない。この含有量のより好ましい範囲は、0.2〜4重量%であり、さらに好ましくは、0.3〜3重量%である。
【0024】
さらに、本発明の赤外線吸収粒子の平均粒径は10〜150nmであることが好ましい。10nmより低いと、赤外線吸収能力が低下する傾向にあり、昇温速度の低下を招く。150nmを超えると、分散性が悪いため昇温速度にバラツキが発生し、決められた加工工程に適正化できないため好ましくない。粒径は、好ましくは、20〜120nm、さらに好ましくは、30〜100nmである。なお、赤外線吸収粒子の平均粒径の測定法については後述する。
【0025】
また、本発明の成形部材用ポリエステルフィルムに使用するポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)とポリブチレンテレフタレート系樹脂(b)を含んでなることが好ましい。
【0026】
ここで、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)としては、ポリエチレンテレフタレートに30モル%以下、好ましくは20モル%以下の共重合成分を共重合したポリエチレンテレフタレートを構成成分とする樹脂であってもよい。ポリエチレンテレフタレートへの共重合成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物などが挙げられるが、成形性、取扱い性の点で、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく使用される。また、好ましいジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどを挙げることができるが、成形性、取扱い性の点で、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく使用される。また、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)は、共重合成分を含まない100モル%ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂(a1)と、共重合成分を20モル%未満含むポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a2)のように、2種類以上のポリエチレンテレフタレート系の樹脂から構成されていてもよい。さらに、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(a1)も共重合成分を30モル未満含んでいてもよく、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)は、3種類以上のポリエチレンテレフタレート系の樹脂をブレンドしてもよい。
【0027】
また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(b)としては、ポリブチレンテレフタレート系の樹脂とポリトリメチレンテレフタレート系の樹脂を混合して用いても良い。ポリエステル系の樹脂(b)への共重合成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物などが挙げられる。また、好ましいジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0028】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)とポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)とを、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、樹脂(a)が65〜90重量%、樹脂(b)が10〜35重量%で混合されてなることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)が65重量%未満であり、ポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)が35重量%を超えると、融点が240℃未満になり、耐熱性、フィルム外観、加工適性が悪化する場合がある。また、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)が90重量%を超え、ポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)が10重量%未満の場合には、成形性が悪化する傾向となり好ましくないことがある。本発明においては、好ましくは、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、樹脂(a)が70〜85重量%、樹脂(b)が15〜30重量%、さらに好ましくは、樹脂(a)が75〜80重量%、樹脂(b)が20〜25重量%である。
【0029】
このように成形部材用ポリエステルフィルムは、成形加工時の赤外線ヒーターによって加熱される工程において、赤外線を遮蔽し白色化させることなく成形後の美麗さを提供することができる。
【0030】
以上のようにして得られたポリエステル樹脂を用いて本発明のフィルムを製造する際の好ましい方法について、以下具体的に記述する。
【0031】
まず、使用するポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)とポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)および赤外線吸収粒子を必要に応じて、所定の割合で計量し、混合する前もしくは混合した後に窒素雰囲気もしくは真空雰囲気で乾燥を行う。乾燥は乾燥後の樹脂中の水分率が50ppm以下とすることが好ましい。
【0032】
そして、混合したポリエステル樹脂を単軸もしくは二軸押出機に供給し溶融押出する。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0033】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、無延伸フィルムや一軸延伸フィルムとしても良いが、上述した耐熱性や、配向を整えることで保護フィルムとした場合に剥離性が向上し、二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0034】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、2.5〜3.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.5倍、特に好ましくは3〜3.4倍が採用される。また、延伸速度は1,000〜200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは長手方向の延伸温度を100〜120℃、幅方向の延伸温度を90〜110℃とするのが良い。また、延伸は各方向に対して複数回行っても良い。
【0035】
さらに、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、200〜250℃の熱処理温度とするのが好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1〜60秒間、より好ましくは1〜30秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、コーティング層を設けることもできる。
【0036】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムは、単層フィルムでもよいし、さらにメッキ調の外観を付与する前に、成形加工前に予め金属蒸着を施した蒸着フィルムとしてもよく、さらには本発明の成形部材用ポリエステルフィルムの製造工程において、易滑性付与の目的や耐擦過性を向上させるために1種以上の粒子を含有した層を積層したA/Bの構成や、本発明の効果を阻害しない範囲で2層以上の積層フィルムの一部に本発明のフィルム構成が用いられていてもよい。
【0037】
本発明の成形部材用ポリエステルフィルムの厚みは、赤外線の隠蔽性の点から、10〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜200μm、最も好ましくは20〜100μmである。
【0038】
また、各種特性は以下の方法により測定、評価した。
【0039】
(1)フィルムの融点
フィルム試料約10mgをPERKIN−ELMER社製DSC7を用いて、温度30〜300℃、昇温速度20℃/分の条件下で測定を行い、融解熱量の吸熱ピーク温度を融点とした。吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
【0040】
(2)フィルム厚み
フィルムサンプルをSD型レバー式試料裁断機SDL−100((株)ダンベル社製)を用いて100mm×100mmの大きさにカットし、10枚準備し、校正されたデジタルマイクロメータ(M−30,ソニー・プレシジョン・テクノロジー(株)製)にて1枚につき8点の厚みを測定し、各サンプル毎に平均厚みを算出した。
【0041】
(3)透過率
日立製作所製 分光光度計(U3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け透過率を測定した。バンドパスは2nm/servoとし、ゲインは3と設定し、700nm〜2500nmの範囲を120nm/min.の走査速度で測定した。また、標準白色板としては、U3410に付属の物を用いた。
【0042】
(4)赤外線吸収粒子の平均粒径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率は10000倍で観察し、観察箇所をかえて粒子数5000個以上で粒径とその体積分率から、次式で体積平均径dを得る。粒径の異なる2種類以上の粒子を含有している場合には、それぞれの粒子について同様の測定を行い、粒径を求めた。
【0043】
d=Σ(di・Nvi)
ここで、diは粒径、Nviはその体積分率である。
【0044】
粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、粒径により、3000〜20000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて500視野以上測定し、上記式から体積平均径dを求める。
【0045】
平均粒径は粒子の電子顕微鏡写真によって測定した50体積%の点にあたる粒子の等価球直径により求めた。等価球直径とは粒子と同じ体積を有する球の直径である。
【0046】
(5)180秒加熱後のフィルム温度
フィルムサンプルにヒートラベル(ミクロン(株)社製)を貼り付け、赤外線ヒーターとして近赤外線ヒートビーム線集光タイプ((株)ハイベック社製HYL20−11M)を用いて近赤外線出力口から300mm手前にフィルム面が平行となるように固定し、25℃環境下で180秒加熱した後のラベル表示温度をフィルム温度とした。また、ヒートラベルは、赤外線ヒーター側のフィルム表面に貼付した。
【0047】
(6)180秒加熱後の破断応力
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの短形に切り出し、サンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mm、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定はチャックされたフィルムサンプルを、近赤外線ヒートビーム線集光タイプ((株)ハイベック社製HYL20−11M)を用いて近赤外線出力口から300mm手前にフィルム面と平行となるように設置し、25℃環境下で180秒間の加熱の後で引張試験を行った。サンプルが破断したときのフィルムにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を破断応力値とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値を測定値とした。
【0048】
(7)ポリエステルの組成
樹脂またはフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくはHFIPとクロロホルムの混合溶媒に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により組成を算出した。
【0049】
(8)固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの固有粘度は、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0050】
(9)熱成形性
フィルムを赤外線ヒーターとして近赤外線ヒートビーム線集光タイプ((株)ハイベック社製HYL20−11M)を用いて180秒間加熱し、円柱状の金型(底面直径50mm)を用いて真空成形を行った。フィルムが金型に沿って成形できた状態を成形度合い(絞り比:成形高さ/底面直径)を用いて以下の基準で評価した。
A級:絞り比0.7以上で成形できた。
B級:絞り比0.7〜0.3で成形できた。
C級:破れが発生し、絞り比0.3で成形できなかった。
D級:絞り比0.7以上で成形できたが、シワが入り外観不良であった。
【0051】
A級およびB級が合格であり、A級であると深絞り用途にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。
【0053】
[製造例]
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0054】
(ポリエステルa1:)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール67質量部の混合物にテレフタル酸ジメチルに対して酢酸マグネシウム0.08質量部、三酸化アンチモン0.022質量部を加え、徐々に昇温し、最終的に220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。次いで、リン酸85重量%水溶液0.019質量部を添加し、徐々に昇温、減圧し、最終的に290℃、0.5mmHgまで昇温、減圧し、極限粘度が0.65となるまで重縮合反応を行い、副生したジエチレングリコール量2モル%のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0055】
(ポリエステルb:)
テレフタル酸100質量部、および1,4−ブタンジオール110質量部の混合物を、窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.054質量部、モノヒドロキシブチルスズオキサイド0.054質量部を添加し、常法によりエステル化反応を行った。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066質量部を添加して、減圧下で重縮合反応を行い、固有粘度0.84のポリブチレンテレフタレート樹脂を作製した。その後、140℃、窒素雰囲気下で結晶化を行い、ついで窒素雰囲気下で200℃、6時間の固相重合を行い、固有粘度1.22のポリブチレンテレフタレート樹脂とした。これを、ポリエステルbとした。
【0056】
(ポリエステルa2:)
テレフタル酸ジメチルを100質量部、エチレングリコール60質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール20質量部の混合物に、酢酸マンガンを0.04質量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃メタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.045質量部、二酸化ゲルマニウム0.01質量部を添加して、徐々に昇温、減圧し、最終的に275℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.67となるまで重合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングして1,4−シクロヘキサンジメタノールを8モル%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。該ポリマーを3mm径の立方体に切断し、回転型真空重合装置を用いて、1hPaの減圧下、225℃で極限粘度が0.8になるまで固相重合を行い、これをポリエステルa2とした。
【0057】
(粒子マスター:)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール70重量部の混合物に酢酸マンガン0.04重量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながら、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.025重量部、三酸化アンチモン0.02重量部を添加した。さらに、数平均粒子径2.2μmの凝集粒子のエチレングリコールスラリーを粒子濃度が2重量%となるように添加して、徐々に昇温、減圧し、最終的に290℃、1hPaまで昇温、減圧し、固有粘度が0.63dl/gとなるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングして粒子マスターチップを得た。
【0058】
(ITO粒子マスター1:)
ポリエステルa1をベント付き二軸押出機に供して、2400〜2500nmに最大吸収ピークを有する体積平均粒子径40nmのITO微粒子(赤外線吸収粒子)を5重量%濃度となるように供給して溶融混練を行い、赤外線吸収剤マスターバッチを得た。
【0059】
(ITO粒子マスター2:)
ポリエステルa1をベント付き二軸押出機に供して、2400〜2500nmに最大吸収ピークを有する体積平均粒子径40nmのITO微粒子(赤外線吸収粒子)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練を行い、赤外線吸収剤マスターバッチを得た。
【0060】
(Zn化合物粒子マスター1:)
ポリエステルa1をベント付き二軸押出機に供して、2400〜2500nmに最大吸収ピークを有する体積平均粒子径50nmのZnO微粒子(赤外線吸収粒子)を5重量%濃度となるように供給して溶融混練を行い、赤外線吸収剤マスターバッチを得た。
【0061】
(Zn化合物粒子マスター2:)
ポリエステルa1をベント付き二軸押出機に供して、2400〜2500nmに最大吸収ピークを有する体積平均粒子径50nmのZnO微粒子(赤外線吸収粒子)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練を行い、赤外線吸収剤マスターバッチを得た。
【0062】
上記ポリエステル製造の原料組成をまとめて表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
なお、表中の略号は以下の通り。
EG:エチレングリコール残基成分
BD:1,4−ブタンジオール残基成分
TPA:テレフタル酸残基成分
DEG:ジエチレングリコール残基成分
CHDM:1,4−シクロへキサンジメタノール残基成分
(実施例)
以下に本発明の実施例と比較例を示す。
【0065】
(実施例1)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比26:40:30:2:2で使用した。混合したポリステル組成物を真空乾燥機にて150℃で5時間乾燥し、水分を十分に除去した後、単軸押出機に供給、275℃で溶融し、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、最終的にフィルム温度105℃で長手方向に3.3倍延伸し、次いでテンター式横延伸機にて予熱温度100℃、延伸温度105℃で幅方向に3.3倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に5%のリラックスを掛けながら温度200℃で5秒間の熱処理を行いフィルム厚み25μmの二軸配向フィルムを得た。
【0066】
(実施例2)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比24:40:30:2:4で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0067】
(実施例3)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比18:40:30:2:10で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0068】
(実施例4)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比13:40:35:2:10で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0069】
(実施例5)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比78:10:2:10で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0070】
(実施例6)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター2を重量比3:40:30:2:25で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0071】
(実施例7)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、Zn化合物粒子マスター1を重量比26:40:30:2:2で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0072】
(実施例8)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、Zn化合物粒子マスター1を重量比24:40:30:2:4で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0073】
(実施例9)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、Zn化合物粒子マスター1を重量比18:40:30:2:10で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0074】
(実施例10)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、Zn化合物粒子マスター2を重量比3:40:30:2:25で使用した。それ以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0075】
実施例1〜6の結果を表2に、実施例7〜10の結果を表3にそれぞれ示す。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
なお、表中の略号は以下の通り。
MD:フィルム長手方向
TD:フィルム幅方向
(比較例1)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスターを重量比28:40:30:2で使用した。赤外線吸収粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0079】
(比較例2)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比27.8:40:30:2:0.01で使用した。ITO粒子マスターが少量であること以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0080】
(比較例3)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、Zn化合物粒子マスター1を重量比27:40:30:2:1で使用した。Zn粒子マスターが少量であること以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0081】
(比較例4)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター2を重量比33:35:2:30で使用した。ITO粒子マスターが5重量%を超えること以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0082】
(比較例5)
ポリエステルフィルムを構成するポリステル組成物として、ポリエステルa1、ポリエステルa2、ポリエステルb、粒子マスター、ITO粒子マスター1を重量比16:40:40:2:2で使用した。融点が240℃未満となったこと以外は、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。
【0083】
比較例1〜5の結果を表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
表より、本発明の要件を満足する実施例においては、成形部材用として特性に優るフィルムであった。一方、比較例では成形部材用しての特性に劣るフィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の成形加工用表面保護ポリエステルフィルムは、優れた成形加工性を有し、真空成形、真空圧空成形などの熱成形において金型に追従した成形部品を容易に作成することができ、メッキ調の外観を有する成形部品として自動車部材や家電用品などの部品として好適に使用することができる。さらに、成形用加飾シートの成形時の表面保護シートとして用いると、成形体の外観を美麗に保つことができるため、加飾シートの表面保護シートとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長700〜2500nmにおける透過率の最小値が80%以下である融点が240〜260℃のポリエステルフィルムであって、該フィルムを赤外線ヒーターで180秒加熱した後のフィルムの破断応力が長手方向および幅方向のいずれもが40以上100MPa未満である成形部材用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
赤外線ヒーターで180秒加熱後のフィルム温度が100℃を超える請求項1に記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
赤外線吸収粒子を0.1〜5重量%含有する請求項1または2に記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
赤外線吸収粒子の粒径が10〜150nmである請求項1〜3のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
赤外線吸収粒子が、インジウム系粒子、ランタン系粒子、アンチモン系粒子および亜鉛化合物粒子からなる群から選ばれる1種以上の粒子である請求項3または4に記載の成形部材用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)とポリブチレンテレフタレート系の樹脂(b)とを含有するポリエステル系樹脂組成物を用いてなるフィルムであって、該樹脂組成物における樹脂(a)の含有量が、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、65〜90重量%であり、樹脂(b)の含有量が、樹脂(a)と樹脂(b)の総量を基準として、10〜35重量%で混合されてなるポリエステル系樹脂組成物を用いてなるフィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の成形部材用ポリエステルフィルムを赤外線ヒーターによって加熱し、成形する成形方法。

【公開番号】特開2010−229371(P2010−229371A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81414(P2009−81414)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】