説明

成形金型及びローラ製造方法

【課題】実質的にウェルドラインのない弾性層を軸体の周囲に形成できる成形金型及びローラ製造方法を提供すること。
【解決手段】軸体が内部に配置される筒状金型11と、成形材料が流通する注入孔31を有し、筒状金型11の一方の端部21に装着される第一端部金型15と、排出孔41を有し、筒状金型11の他方の端部22に装着される第二端部金型18とを備え、リングゲート51のゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部6を注入孔31の下流側に有することを特徴とする成形金型1、並びに、成形材料を軸体の周囲に画成されたキャビティ5にゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部6を経由して注入する工程を有することを特徴とするローラ製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形金型及びローラ製造方法に関し、さらに詳しくは、実質的にウェルドラインのない弾性層を軸体の周囲に形成できる成形金型及びローラ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置は各種ローラを備えている。このようなローラとして、例えば、現像剤を担持搬送する現像ローラ、現像剤を現像ローラに供給する現像剤供給ローラ、記録体を搬送する搬送ローラ、現像剤を記録体に転写させる転写ローラ、記録体上の現像剤を記録体に定着させる定着ローラ、定着ローラを圧接する加圧ローラ等が挙げられる。これらのローラは、通常、軸体と、その外周に形成された弾性層とを備えている。
【0003】
軸体と弾性層とを備えたローラの製造方法の1つとして成形金型を用いて軸体の外周面に弾性層を成形する方法がある。この製造方法で用いられる成形金型としては、例えば、図6に示されるように、円筒金型101と、円筒金型101の一方の端部に装着され、貫通形成された注入孔104を有する第一端部金型103と、円筒金型101の他方の端部に装着される第二端部金型102とを備えた成形金型100が挙げられる。
【0004】
成形金型の別の例として、「貫通した円筒孔を持つ成形金型と円筒孔の開口部に取り付けられて上記円筒孔を密閉する蓋体を有し上記蓋体はその外周部に同心状の溝を設けかつその溝のローラの端部側の壁が先梁になっていることを特徴とする成形装置」がある(特許文献1)。また、他の例として「円筒形の金型1内に芯金2を同軸状に固定する上部キャップ3及び下部キャップ4を嵌着させ」てなる成形金型が従来技術として記載されている(特許文献2の第3図等)。
【0005】
ところで、特許文献3には「貫通した円筒孔を持つ成形金型と、該円筒孔と同心に軸状の芯金部材を保持する為に円筒孔の両端開口部に取り付けられる蓋体とからなり、該蓋体の少なくとも一方が成形材料の注入口とリングゲートを設けた可動蓋体で」ある「ローラ成形金型」が記載されている(例えば、請求項1及び図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−174423号公報
【特許文献2】特許第2820742号明細書の第3図
【特許文献3】特開2000−289053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、成形金型を用いて軸体の周囲に弾性層を成形すると、成形金型と軸体とで形成されるキャビティに注入された成形材料に不均一な注入又は不十分な混合による合流跡が残存したまま成形材料が硬化して弾性層に所謂「ウェルドライン」が発生することがあった。特に、特許文献1の成形金型及び特許文献2の従来技術としての成形金型ではウェルドラインが顕著に発生することがあった。このようにウェルドラインが発生した弾性層はその軸線に垂直な平面で切断した断面の輪郭形状が均一な円形形状にならず、ローラとしての所期の機能を発揮できなくなる。
【0008】
特許文献3のローラ成形金型はこのようなウェルドの発生を防止できると特許文献3に記載されているが(特許文献3の0012欄等)、それでもウェルドの発生を効果的に防止できるものではなく、さらにウェルドラインの発生を抑制できることが望まれていた。
【0009】
この発明は、実質的にウェルドラインのない弾性層を軸体の周囲に形成できる成形金型及びローラ製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための第1の手段として
請求項1は、軸体が内部に配置される筒状金型と、成形材料が流通する注入孔を有し、前記筒状金型の一方の端部に装着される第一端部金型と、排出孔を有し、前記筒状金型の他方の端部に装着される第二端部金型とを備え、リングゲートのゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を前記注入孔の下流側に有することを特徴とする成形金型であり、
請求項2は、前記環状ランナー部は、成形材料が注入されるキャビティと同心円状で前記キャビティよりも外側に配置されている請求項1に記載の成形金型であり、
請求項3は、前記環状ランナー部は前記ゲート幅と同じ高さを有する扁平な環状空間である請求項1又は2に記載の成形金型であり、
請求項4は、前記環状ランナー部は前記注入孔の開口に面する堰止面を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形金型であり、
請求項5は、前記堰止面は成形材料が注入されるキャビティまで延在する同心状の環状平坦面である請求項4に記載の成形金型であり、
請求項6は、前記堰止面は前記筒状金型又は前記第一端部金型に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の成形金型であり、
請求項7は、前記堰止面は前記筒状金型の端面であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形金型であり、
請求項8は、前記堰止面は環状溝を有していることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の成形金型であり、
請求項9は、前記成形材料は前記キャビティに注入されるときの粘度が5〜500Pa・sであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形金型である。
【0011】
前記課題を解決するための第2の手段として
請求項10は、成形材料を軸体の周囲に画成されたキャビティにゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を経由して注入する工程を有することを特徴とするローラ製造方法であり、
請求項11は、前記注入する工程は、前記成形材料を前記キャビティの軸線方向に流通させ、次いで流通方向を変化させて前記軸体に向けて流通させることによって、前記環状ランナー部から前記キャビティに注入する工程であることを特徴とする請求項10に記載のローラ製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る成形金型は、前記筒状金型と注入孔を有する前記第一端部金型と前記第二端部金型とを備え、ゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を注入孔の下流側に有しているから、注入孔を通過した成形材料を、一旦、環状ランナー部内で合流・混合させて環状ランナー部に充填した後に前記ゲート幅のリングゲートを通過してキャビティ内に進入させることによって、実質的にウェルドラインのない状態でキャビティに注入させることができる。また、この発明に係るローラの製造方法は、成形材料をキャビティにゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を経由して注入する工程を有しているから、成形材料を実質的にウェルドラインのない状態でキャビティに注入させることができる。したがって、この発明によれば、実質的にウェルドラインのない弾性層を軸体の周囲に形成できる成形金型及びローラ製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明に係る成形金型の一例である成形金型を示す概略図であり、図1(a)はこの発明に係る成形金型の一例である成形金型を示す概略断面図であり、図1(b)は発明に係る成形金型の一例である成形金型のリングゲート部近傍を示す概略拡大断面図である。
【図2】図2は、この発明に係る成形金型の別の一例である成形金型のリングゲート部近傍を示す概略拡大断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る成形金型のまた別の一例である成形金型のリングゲート部近傍を示す概略拡大断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る成形金型の一例である成形金型に軸体を配置した状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る成形金型及びローラ製造方法によって製造されるローラの一例を示す概略斜視図である。
【図6】図6は、従来の成形金型の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、この発明に係る成形金型及びローラ製造方法によって製造されるローラ(以下、この発明に係るローラと称することがある。)について説明する。この発明に係るローラは、軸体の外周面に弾性層が配置されたローラであればよく、軸体及び弾性層の他に例えば接着剤層又はプライマー層、表面層等を備えていてもよい。
【0015】
この発明に係るローラは、軸体の外周面に形成された弾性層が実質的にウェルドラインがなく高い形状均一性を有している。例えば、弾性層をその軸線に垂直な平面で切断した断面における断面部の形状(断面形状と称することがある。)がほぼ真円形状であり、具体的には、2.0μm以下の真円度(算術平均値)を有し、ウェルドラインの発生がより一層抑えられている場合には1.0μm以下の真円度(算術平均値)を有している。ここで、真円度は、JIS B0621:1984によれば、「円形形体の幾何学的に正しい円(以下、幾何学的円という。)からの狂いの大きさをいう。円形形体を二つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心二円の間隔が最小となる場合の、二円の半径の差で表わし、真円度 μmと表示する。」と記載されている。簡潔にいうと、真円度は、前記断面形状が真円に対してどの程度変位しているかを示す値である。この真円度は、真円度測定機(例えば、商品名「RONDCOM44DX(株式会社東京精密製)」、及び、2RCフィルタ(位置補償型デジタルフィルタ)を用い、中心法における最小二乗中心法(LSC(最小二乗中心法))にて算出した中心と、同心の内接円と外接円との半径差によって算出され、弾性層の数個所を測定点として算出された算術平均値とすることができる。
【0016】
この発明に係るローラの一例を図面に基づいて説明する。この一例としてのローラ70は、図5に示されるように、軸体71と弾性層72とを備えている。
【0017】
軸体71は従来公知のローラにおける軸体と基本的に同様である。この軸体71は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体71は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
【0018】
弾性層72は、形状均一性が高いこと以外は従来公知のローラにおける弾性層と基本的に同様である。すなわち、弾性層72は実質的にウェルドラインがなく2.0μm以下の真円度(算術平均値)を有する高い形状均一性を有している。この弾性層72は、この発明に係る成形金型及びローラ製造方法によって、軸体5の外周面で後述するゴム成物を硬化して成る弾性を有する層である。この弾性層72は用途等に応じて適宜の硬度、電気抵抗及び厚さ等に調整される。弾性層72の厚さは通常1〜30mmであるのが好ましく、5〜20mmであるのがより好ましい。
【0019】
この発明に係る成形金型は、軸体の外周面に弾性層を成形するための射出成形用金型の一種であって、筒状金型と筒状金型の両端部それぞれに装着される端部金型を備え、これら成形金型と軸体とで形成されるキャビティに開口するリングゲートのゲート幅すなわち筒状金型の軸線方向に沿う長さが0.2〜1.5mmの環状ランナー部を一方の端部金型に穿孔された注入孔の下流側すなわち注入孔とキャビティとの間に有することを特徴とする。この発明に係る成形金型は、ウェルドラインの発生を高度に防止できる点で、ゲート幅は0.2〜1.0mmであるのが好ましく、0.3〜0.8mmであるのが特に好ましく、例えば0.5mm超とすることもできる。
【0020】
この発明に係る成形金型の一例を、図面を参照して、説明する。この発明に係る成形金型の一例である成形金型1は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、軸体が内部に配置される筒状金型11と、筒状金型11の一方の端部21に装着される第一端部金型15と、筒状金型11の他方の端部22に装着される第二端部金型18とを備え、筒状金型11、第一端部金型15及び第二端部金型18で形成されて成形材料が注入されるキャビティ5(図4参照。)に開口するリングゲート51のゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部6を第一端部金型15の注入孔31の下流側に有している。
【0021】
筒状金型11は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、両端部21及び22が開口する中空円筒体で管状金型とも称される。この筒状金型11は、一定の内径の軸孔23を有し、この軸孔23に軸線方向に沿って軸体71が配置される(図4参照。)。この筒状金型11は、中央部の外径が一定で、端部21及び22近傍の外径が端部21及び22に向かって徐々に小さくなっており、両端部21及び22それぞれに好ましくは軸線に垂直な環状端面24及び25を有している。筒状金型11は、その内表面の表面粗さが調整されているのがよく、鏡面とされているのが特によい。この筒状金型11は成形する弾性層72に応じて外径、内径、軸線長さ等が調整される。
【0022】
第一端部金型15は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、円盤状基体33と円盤状基体33の周縁から軸線に沿って延在する環状の周壁32とを有する蓋体であり、有底管状をなしている。この第一端部金型15は、円盤状基体33における底面の少なくとも環状端面24に対面する領域、この例においては後述する保持穴34及び注入孔31を除く領域が平坦になっている。周壁32は開口端部近傍の内径が開口端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている。周壁32の漸次増大する内径は端部21の漸次減少する外径と一致し、かつ筒状金型11の環状端面24と第一端部金型15との間に環状空間すなわち後述する環状ランナー部6が形成されるように調整されている。したがって、第一端部金型15は周壁32と端部21との勘合によって環状ランナー部6が形成されるように筒状金型11の一方の端部21に装着される。このようにして第一端部金型15は筒状金型11の一方の端部21を閉塞する。
【0023】
第一端部金型15は、同心円上に等間隔に配置された、成形材料を注入するときに成形材料が流通する注入孔(スプルーとも称される。)31を複数具体的には8個有している。注入孔31が配置される前記同心円は、後述するように、注入孔31が筒状金型11の環状端面24に面するように、なっている。注入孔31は同一形状及び同一寸法を有しているのが好ましく、形状及び内径は適宜に設定される。この第一端部金型15において、注入孔31はその軸線に沿って一定の内径R、例えば、0.3〜3.0mm、好ましくは0.3〜2.0mmの内径を有している。この第一端部金型15はその軸線上に軸体を保持する有底の保持穴34を有している。
【0024】
第二端部金型18は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、成形材料が注入される際の通路として機能する注入孔31の代わりに、同心円上に等間隔に配置された、成形材料が注入される際又は成形材料が硬化される際の気体又は成形材料の排出路として機能する排出孔(ベントとも称される。)41を4個有していること以外は第一端部金型15と基本的に同様である。したがって、この第二端部金型18は、排出孔41、周壁42、円盤状基体43及び保持穴44を有する蓋体であり、筒状金型11の他方の端部22を閉塞する。
【0025】
成形金型1は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、筒状金型11と第一端部金型15とを組み立てると、筒状金型11の環状端面24と第一端部金型15との間に、すなわち注入孔31の下流側であって軸孔23換言するとキャビティ5(図4参照。)の上流側に、周壁32の内面に沿って周壁32と環状端面24と第一端部金型15の円盤状基体33の底面とで囲繞された環状空間すなわち環状ランナー部6が画成される。この環状ランナー部6は、半径方向における、環状端面24と円盤状基体33の底面との距離すなわち高さが後述するゲート幅Gと同じになっており、筒状金型11の軸線方向に扁平な環状空間となっている。環状ランナー部6には注入孔31が連通しており、注入孔31の開口に面する、注入孔31の軸線方向延長線上に配置された環状端面24は軸孔23すなわちキャビティ5まで延在する軸孔23と同心状の環状平坦面であって、注入孔31から注入された成形材料を一旦堰き止めてその注入方向を筒状金型11の軸線方向からその周方向に変える堰止面24として機能する。このように、この環状ランナー部6は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、高さ方向にも半径方向にも成形材料の流通を阻害する突起部例えば絞り部を有していない。環状ランナー部6は注入孔31を通過した成形材料をキャビティ5に流入する前に流延させて合流・混合させる。この堰止面24は好ましくは注入孔31の軸線及び筒状金型11の軸線に垂直になっている。
【0026】
この環状ランナー部6は、図1(a)及び図1(b)並びに図4に示されるように、軸孔23すなわちキャビティ5と同心円状でキャビティ5よりも半径方向外側に配置され、キャビティ5の第一端部金型15側の端部周面にリングゲート51が開口している。このリングゲート51はゲート幅Gすなわちキャビティ5への開口幅Gを含めて筒状金型11と第一端部金型15との離間距離が0.2〜1.5mmになっている。ここで、ゲート幅Gは周方向に通常一定であり、リングゲート51における筒状金型11の軸線方向に沿う長さである。この発明においてゲート幅Gは平均値としてもよい。ゲート幅Gが0.2mm未満であると成形材料がキャビティ5に流入しにくく弾性層を成形できず、また、キャビティ5に成形材料を流入させるために成形材料の注入圧力を高くするとキャビティ5に流入した成形材料にウェルドラインが生じやすくなることがある。一方、ゲート幅Gが1.5mmを超えると環状ランナー部6に流入した成形材料が環状に注入孔31を通過した成形材料が環状ランナー部6内で合流・混合されることなく、すなわち環状ランナー部6に充填されることなく、リングゲート51を通過してキャビティ5内に流入して、ウェルドラインの発生を防止できないことがある。この発明において、成形材料がキャビティ5に流入する際に発生し得るウェルドラインを高度に防止して実質的にウェルドラインのほとんどない弾性層を形成できる点で、ゲート幅Gは0.2〜1.0mmであるのが好ましく、0.3〜0.8mmであるのが特に好ましい。ここで、「実質的にウェルドラインのない」とは、ウェルドラインが皆無である場合に加えて、画像形成装置のローラとして用いられたときにローラとしての所期の機能を発揮できる程度にわずかなウェルドラインが生じている場合をも含む。
【0027】
この発明に係る成形金型の別の一例を説明する。この成形金型2は、図2に示されるように、筒状金型12が異なること以外は成形金型1と基本的に同様である。すなわち、成形金型2は、筒状金型12と第一端部金型15と第二端部金型18(図2において図示しない。)とを備え、キャビティ5に開口するリングゲート55のゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部7を第一端部金型15の注入孔31の下流側に有している。
【0028】
筒状金型12は、図2に示されるように、第一端部金型15側の環状端面26である堰止面26に環状ランナー部7と同心状の環状溝27を有していること以外は筒状金型1と基本的に同様である。この環状溝27は、軸孔23すなわちキャビティ5と同心円状となり、かつその底面が注入孔31の開口に面するように環状端面26に環状に形成されている。したがって、環状溝27は注入孔31の軸線方向延長線上に間隔をあけて配置された環状の堰止底面28を有している。第一端部金型15及び第二端部金型18は前記したとおりである。
【0029】
この成形金型2は、図2に示されるように、筒状金型12と第一端部金型15とを組み立てると、筒状金型12の環状端面26と第一端部金型15の円盤状基体33との間に周壁32の内面に沿って周壁32と環状端面26及び堰止底面28と第一端部金型15の円盤状基体33の底面とで囲繞された扁平な環状空間すなわち環状ランナー部7が画成される。そしてこの環状ランナー部7は環状端面26に形成された環状溝27を有している。この環状ランナー部7は、環状ランナー部6と同様に、注入孔31を通過した成形材料を、キャビティ5に流入させる前に環状ランナー部7内に流延させて合流・混合させつつ充填させる。
【0030】
環状ランナー部7は、図1及び図2に示されるように、環状溝27の有無以外は環状ランナー部6と基本的に同様である。すなわち環状ランナー部7は軸孔23すなわちキャビティ5と同心円状でキャビティ5よりも半径方向外側に配置され、キャビティ5にリングゲート55が0.2〜1.5mmのゲート幅Gで開口している。この環状ランナー部7における注入孔31の開口と環状溝27の堰止底面28との間隔及び環状溝27の幅は成形材料を環状ランナー部7内に充填させることができれば特に限定されることなく、例えば、それぞれ、0.5〜2.0mm及び0.3〜3.0mmに設定されることができる。
【0031】
この発明に係る成形金型のまた別の一例を説明する。この成形金型3は、図3に示されるように、環状ランナー部8の形成態様が異なること以外は成形金型1と基本的に同様である。すなわち、成形金型1は筒状金型11と第一端部金型15とで環状ランナー部6が形成されるが、成形金型1は環状ランナー部8を有する第一端部金型16を有し、筒状金型13は環状ランナー部8の形成に関与しない。したがって、成形金型3は筒状金型13と第一端部金型16と第二端部金型(図3において図示しない。)とを備え、第一端部金型16がキャビティ5に開口するリングゲート57のゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部8を注入孔31の下流側に有している。
【0032】
筒状金型13は、図3に示されるように、内径及び外径が共に一定の管状体であること以外は筒状金型11と基本的に同一である。
【0033】
第一端部金型16は、図3に示されるように、円盤状基体35と、円盤状基体35の周縁から軸線に沿って延在する周壁36と、この周壁36の端縁から軸線に向かって環状に突出する環状堰止部37とを有する蓋体であって、円盤状基体35と周壁36の内面と環状堰止部37の内側面とで扁平な環状ランナー部8が画成されている。周壁36は一定の内径及び外径を有しており、軸線長さは後述する環状ランナー部8のゲート幅Gと同寸になっている。環状堰止部37は、周壁36と同一の外径を有し、筒状金型13の内径と同一の内径を有している。環状堰止部37の頂面は平坦になっており、筒状金型13の平坦な環状端面29と接することによって筒状金型13の一方の端部21に装着される。第一端部金型16の注入孔31は環状堰止部37の内側面に面するように同心円上に配置されており、第一端部金型15の注入孔31と基本的に同様に形成されている。第一端部金型16において、環状ランナー部8には注入孔31が連通し、注入孔31の開口に面する、注入孔31の軸線方向延長線上に配置された環状堰止部37の内側面は軸孔23すなわちキャビティ5まで延在する軸孔23と同心状の環状平坦面であって堰止面38として機能する。
【0034】
成形金型3の第二端部金型は、図3に図示しないが、注入孔31の代わりに排出孔を有していること以外は第一端部金型16と基本的に同様である。
【0035】
環状ランナー部8は、図1及び図3に示されるように、第一端部金型16で形成されていること以外は環状ランナー部6と基本的に同様である。すなわち環状ランナー部8は軸孔23すなわちキャビティ5と同心円状でキャビティ5よりも半径方向外側に配置され、キャビティ5にリングゲート57が0.2〜1.5mmのゲート幅Gで開口している。
【0036】
筒状金型11、12及び13、第一端部金型15及び16、並びに、第二端部金型18及び成形金型3の第二端部金型はそれぞれ、ある程度の強度と成形材料を加熱硬化する際の温度における耐熱性を有する材料で作製される。このような材料として、例えば、銅、銅合金、黄銅、青銅、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、各種めっき鉄、鉄合金、ステンレス鋼等の金属等が挙げられる。これらの筒状金型、第一端部金型及び第二端部金型は同じ材料で形成されるのが好ましい。
【0037】
このように、成形金型1、2及び3はいずれもゲート幅Gが0.2〜1.5mmの環状ランナー部6、7及び8を有しているから、注入孔31を通過した成形材料を、堰止面24、26及び28並びに38で堰き止めてキャビティ5内に流入させる前に環状ランナー部6、7及び8に流延させる。このように、成形金型1、2及び3は、成形材料を、一旦、環状ランナー部6、7及び8内で合流・混合させて環状ランナー部6、7及び8に充填させた後にゲート幅Gのリングゲート51、55及び57を通過させてキャビティ5内に進入させる。したがって、成形金型1、2及び3は、実質的にウェルドラインのない状態で成形材料をキャビティ5に流入又は注入させることができる。したがって、この発明に係る成形金型の一例としての成形金型1、2及び3によれば、実質的にウェルドラインのない均一性の高い弾性層を軸体の周囲に成形できる。
【0038】
この発明に係る成形金型は、前記した一例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。すなわち、成形金型1、2及び3は、いずれも、同一の構造を有する第一端部金型15又は16と第二端部金型18とを備えているが、この発明に係る成形金型は、第一端部金型と第二端部金型とが同一の構造を有している必要はなく異なる構造であってもよい。
【0039】
成形金型1、2及び3において、第一端部金型15及び16は8個の注入孔31を有し、また第二端部金型18は4個の排出孔41を有しているが、この発明において、第一端部金型が有する注入孔の数及び第二端部金型が有する排出孔の数は特に限定されず、1個でも2個以上でもよく、またその形状も特に限定されずリング状であってもよい。
【0040】
成形金型1、2及び3において、注入孔31及び排出孔41はいずれも軸線に沿って一定の内径を有しているが、この発明において、注入孔及び排出孔は軸線に沿って堰止面に向かって拡径又は縮径する内径を有していてもよい。この場合には注入孔の内径Rは開口径とする。
【0041】
次に、軸体の外周面に配置された弾性層を有するローラを製造するこの発明に係るローラ製造方法を説明する。この発明に係るローラ製造方法は、成形材料を軸体の周囲に画成されたキャビティにゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を経由して注入する工程を有している。このように成形材料を環状ランナー部を経由してキャビティに注入すると、成形材料は、キャビティ5内に注入される前に、一旦、環状ランナー部内で合流・混合されて環状ランナー部に充填されるから、実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に流入又は注入する。この発明に係るローラ製造方法における注入する工程は、ゲート幅と同じ高さを有する突起等のない扁平な環状ランナー部を経由して0.2〜1.5mmのゲート幅Gを有するリングゲートから成形材料をキャビティに注入するのが好ましい。この発明に係るローラ製造方法はこの発明に係る成形金型を用いて実施されるのが好ましい。
【0042】
この発明に係るローラ製造方法の一例として成形金型1を用いて図6に示すローラ70を製造するローラ製造方法(一ローラ製造方法と称することがある。)を説明する。
【0043】
この一ローラ製造方法においては、まず、軸体71を準備する。軸体71は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮又はこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に作製される。軸体71に導電性が要求される場合には前記金属及び前記導電性樹脂の他に前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体71を作製することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。この軸体71は、所望により、その外周面に接着剤又はプライマーが塗布されてもよい。
【0044】
一ローラ製造方法においては、次いで、図4に示されるように、成形金型1を組み立て、軸体71を成形金型1内に配置する。具体的には、筒状金型11の軸孔23(図1参照。)内に挿入した軸体71の端部それぞれを第一端部金型15の保持穴34と第二端部金型18の保持穴44に挿入して保持する。
【0045】
一ローラ製造方法においては、次いで、成形金型1に注入孔31を介して成形材料を注入する。成形材料は公知の射出成形機又は注型機等を用いて注入される。このようにして注入孔31から成形材料を注入すると、実質的にウェルドラインのない状態で成形材料をキャビティ5に流入又は注入させることができる。具体的には、注入孔31から注入された成形材料は注入孔31を通過して堰止面24に突き当って同方向への流れが堰き止められ、堰止面24及び周壁32に沿って流延して環状ランナー部6に充填されて合流及び混合され均一な状態になる。このようにして環状ランナー部6に充填された成形材料は次いでゲート幅Gのリングゲート51を通過してキャビティ5内に進入する。このようにしてキャビティ5に進入した成形材料には合流等に起因するウェルドラインは実質的に存在しない。したがって、キャビティ5には実質的にウェルドラインのない状態で注入された成形材料が充填されている。
【0046】
一ローラ製造方法において、成形材料はこのようにしてゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部6を経由してキャビティ5に注入されるから、成形材料を注入する工程は、成形材料を、注入孔31内をキャビティ5の軸線方向すなわちリングゲート51の幅方向に流通させ、次いで前記軸線方向の水平方向に流通方向を変化させて環状ランナー部6内に流通させた後にリングゲート51すなわち軸体51又はキャビティ5に向けて流通させることによって、環状ランナー部6からキャビティ5に注入する工程である。
【0047】
一ローラ製造方法において、ウェルドラインがさらに発生しにくくなる点で、成形材料を注入するときの成形材料の温度は20℃以上であるのが好ましい。すなわち、一ローラ製造方法において、成形材料を注入するときに成形材料が前記温度範囲となるように加熱又は保温されているのが好ましく、例えば、成形材料を注入するときの金型の予熱温度が100〜150℃の範囲に加熱されて成形材料が加熱又は保温されているのが好ましい。
【0048】
一ローラ製造方法において、弾性層72を形成する成形材料は、室温で液状のゴムを含有するゴム組成物であればよく、液状のゴムとして、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の液状ゴムが挙げられる。これらのゴムは、付加硬化型であるのが、加熱成形時の寸法精度に優れる点で、好ましい。
【0049】
ゴム組成物は、ゴムに加えて、通常、ゴム組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、導電性付与剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0050】
ゴム組成物は、実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に注入できる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、10〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。
【0051】
このようなゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物として、(A)平均組成式:RSiO(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「ミラブルタイプである以下のシリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物として、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「液状シリコーン組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0052】
また、ゴム組成物として発泡剤を含有する発泡ゴム組成物を用いることもでき、このような発泡ゴム組成物として、例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物好適に挙げることができる。この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物として、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤と、導電性付与剤とを含有し、所望により有機過酸化物架橋剤と各種添加剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分は、例えば、特開2008−076751号公報に記載されている「付加反応型発泡シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0053】
一ローラ製造方法においては、次いで、キャビティ5に注入された成形材料を加熱硬化して弾性層72を成形する。成形材料の加熱条件は成形材料が硬化可能な加熱条件であればよく、成形材料に応じて決定される。例えば、成形材料として付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を用いる場合には加熱温度は100〜150℃に設定することができ、加熱時間は10秒から1時間に設定することができる。この一ローラ製造方法において成形材料を前記範囲に加熱するには、例えば、成形金型の周囲に配置される熱盤温度を100〜150℃に設定するのが好ましい。
【0054】
このようにして、弾性層72を軸体71の外周面に成形して図5に示されるローラ70を製造することができる。なお、弾性層72の外周面に表面層等を形成する場合には表面層等を形成する材料を弾性層72の外周面に塗布した後に硬化し、又は、表面層等となる薄層管体等で弾性層72を被覆して、表面層等を形成できる。
【0055】
このように、一ローラ製造方法においては、注入孔31を通過した成形材料を、一旦、環状ランナー部6内で合流・混合させて環状ランナー部6に充填した後に、ゲート幅Gのリングゲート51を通過させてキャビティ5内に進入させることができる。したがって、一ローラ製造方法によれば、成形材料を実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に注入させることができる。このようにして実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に注入された成形材料を加熱硬化してなる弾性層は実質的にウェルドラインがなく2.0μm以下の真円度を有する高い形状均一性を有している。
【0056】
この発明に係るローラ製造方法においては、成形金型2及び3を用いても成形金型1を用いた一ローラ製造方法と同様に、成形材料を、一旦、環状ランナー部7又は8に充填した後にゲート幅Gのリングゲート55又は57を通過させてキャビティ5内に進入させることができるから、成形材料を実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に注入することができる。したがって、実質的にウェルドラインのない状態でキャビティ5に注入された成形材料を加熱硬化してなる弾性層は実質的にウェルドラインがなく2.0μm以下の真円度(算術平均値)を有する高い形状均一性を有している。
【0057】
この発明に係るローラ製造方法は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係るローラ製造方法においては、所望により、成形材料を硬化する工程の後に成形材料を再度加熱(二次加熱)する工程を有していてもよく、また、所望により、成形材料を硬化する工程の後に成形された弾性層の端部を切除する工程及び/又は成形された弾性層の外径を調整する工程を有していてもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
下記寸法を有する成形金型1をNAK材鋼で作製した。
筒状金型11:軸線長さ237mm、外径26mm、内径(鏡面加工済み)12mm、平坦な環状端面(堰止面)24の幅3mm、
第一端部金型15:外径26mm、保持孔34の内径6mm、周壁32の先端部厚さ1mm、周壁32の軸線長さ14mm、円盤状基体33の軸線長さ22mm、円盤状基体33の平坦な底面の直径18mm、注入孔31の内径R1.5mm、注入孔31の軸線長さ22mm、8個の注入孔31の軸線が配置された仮想円の直径16mm、
第二端部金型18:外径26mm、保持孔43の内径6mm、周壁42の先端部厚さ1mm、周壁42の軸線長さ14mm、円盤状基体43の軸線長さ18mm、円盤状基体43の平坦な底面の直径18mm、排出孔41の内径R1.5mm、排出孔41の軸線長さ18mm、4個の排出孔41の軸線が配置された仮想円の直径16mm、
ゲート幅G及び環状端面25と円盤状基体43との離間距離0.5mm
【0059】
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体71(SUM22製、直径6mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体71を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体71の表面にプライマー層を形成した。
【0060】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)10質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1質量部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の粘度は50Pa・sであった。
【0061】
次いで、準備した成形金型1の内表面に離型剤(商品名「ダイフリー」、ダイキン工業株式会社製)を塗布して、第一端部金型15の保持穴34と第二端部金型18の保持穴44とで軸体71を筒状金型11内に配置して成形金型1を組み立て、23℃の環境下で第一端部金型15の注入孔31から準備した成形材料を注入した。次いで、成形金型1の外部から150℃に加熱して同温度で15分間保持し、成形材料を加熱した。成形金型1を放冷し成形金型1から成形体を取り出した。この成形体における付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物の軸線方向に沿う両端部それぞれから4mmまでの領域を切断除去して、弾性層72を備えたローラ70を製造した。
【0062】
(実施例2)
実施例1における第一端部金型15における円盤状基体33の軸線長さ22mmを22.3mmに変更してゲート幅Gを0.2mmにしたこと以外は実施例1と基本的に同様にしてローラを製造した。
【0063】
(実施例3)
実施例1における第一端部金型15における円盤状基体33の軸線長さ22mmを21.0mmに変更してゲート幅Gを1.5mmに変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にしてローラを製造した。
【0064】
(実施例4)
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物におけるヒュームドシリカの配合量を1質量部に変更して付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の粘度を5Pa・sに調整したこと以外は実施例1と基本的に同様にしてローラを製造した。
【0065】
(実施例5)
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物におけるヒュームドシリカの配合量を60質量部に変更して付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の粘度を500Pa・sに調整したこと以外は実施例1と基本的に同様にしてローラを製造した。
【0066】
(比較例1)
第一端部金型15における円盤状基体33の軸線長さ22mmを20.5mmに変更してゲート幅Gを2.0mmにしたこと以外は実施例1と基本的に同様にしてローラを製造した。
【0067】
(弾性層の均一性評価)
このようにして製造したローラそれぞれを用いて弾性層の均一性を評価した。具体的には、各ローラにおける弾性層をローラの軸線方向に垂直な複数の平面での断面形状それぞれについて、前述の真円度測定機「RONDCOM44DX(株式会社東京精密製)」を用いて前記方法に従って真円度(算術平均値)を算出した。その結果、実施例1〜5のローラはいずれも真円度が2.0μm以下で断面形状すなわち断面輪郭がほぼ円形であったのに対して、比較例1は真円度が4.0μmで凸部及び凹部が存在する断面形状で円形を大きくはずれていた。このようにローラにおいて前記真円度(算術平均値)が2.0μm以下で断面形状がほぼ円形であると弾性層にウェルドラインが実質的に存在していないから、このようなローラを画像形成装置に装着したときに画像形成装置が高品質の画像、例えばこのようなローラを現像ローラとして画像形成装置に装着したときに印字濃度がほぼ均一な画像を、形成することに貢献することが容易に推測される。
【符号の説明】
【0068】
1、2、3 成形金型
5 キャビティ
6、7、8 環状ランナー部
11、12、13 筒状金型
15、16 第一端部金型
18 第二端部金型
21 一方の端部
22 他方の端部
23 軸孔
24、25 環状端面(堰止面)
26 環状端面(堰止面)
27、53 環状溝
28 堰止底面
29 環状端面
31 注入孔(スプルー)
32、36、42 周壁
33、35、43 円盤状基体
34、44 保持穴
37 環状堰止部
38 内側面(堰止面)
41 排出孔(ベント)
51、55、57 リングゲート
52 堰止面
70 ローラ
71 軸体
72 弾性層
100 成形金型
101 円筒金型
102 第二端部金型
103 第一端部金型
104 注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体が内部に配置される筒状金型と、成形材料が流通する注入孔を有し、前記筒状金型の一方の端部に装着される第一端部金型と、排出孔を有し、前記筒状金型の他方の端部に装着される第二端部金型とを備え、リングゲートのゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を前記注入孔の下流側に有することを特徴とする成形金型。
【請求項2】
前記環状ランナー部は、成形材料が注入されるキャビティと同心円状で前記キャビティよりも外側に配置されている請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
前記環状ランナー部は、前記ゲート幅と同じ高さを有する扁平な環状空間である請求項1又は2に記載の成形金型。
【請求項4】
前記環状ランナー部は、前記注入孔の開口に面する堰止面を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項5】
前記堰止面は、成形材料が注入されるキャビティまで延在する同心状の環状平坦面である請求項4に記載の成形金型。
【請求項6】
前記堰止面は、前記筒状金型又は前記第一端部金型に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の成形金型。
【請求項7】
前記堰止面は、前記筒状金型の端面であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項8】
前記堰止面は、環状溝を有していることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項9】
前記成形材料は、前記キャビティに注入されるときの粘度が5〜500Pa・sであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項10】
成形材料を軸体の周囲に画成されたキャビティにゲート幅が0.2〜1.5mmの環状ランナー部を経由して注入する工程を有することを特徴とするローラ製造方法。
【請求項11】
前記注入する工程は、前記成形材料を前記キャビティの軸線方向に流通させ、次いで流通方向を変化させて前記軸体に向けて流通させることによって、前記環状ランナー部から前記キャビティに注入する工程であることを特徴とする請求項10に記載のローラ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201011(P2012−201011A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68232(P2011−68232)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】