成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法
【課題】成膜時の熱による変形を抑制できる成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】
複数の開口23が形成され、成膜物質が開口23を通過する通過部21と、成膜物質を遮蔽する遮蔽部22とを有している。通過部21と遮蔽部22とは長手方向を有し、遮蔽部22の長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされ、遮蔽部22の幅の長さは、通過部21の幅の長さと同じに形成されている。通過部21と遮蔽部22とは、成膜マスク20a表面と平行な一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置され、成膜マスク20aが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、遮蔽部22によって塞がれるように構成されている。遮蔽部22には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられている。
【解決手段】
複数の開口23が形成され、成膜物質が開口23を通過する通過部21と、成膜物質を遮蔽する遮蔽部22とを有している。通過部21と遮蔽部22とは長手方向を有し、遮蔽部22の長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされ、遮蔽部22の幅の長さは、通過部21の幅の長さと同じに形成されている。通過部21と遮蔽部22とは、成膜マスク20a表面と平行な一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置され、成膜マスク20aが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、遮蔽部22によって塞がれるように構成されている。遮蔽部22には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、近年では、表示装置や照明機器の用途に注目されており、所定のパターン形状の有機薄膜を大面積の基板に精密に成膜する技術が求められている。
【0003】
図18は従来の成膜装置110の内部構成図である。
従来の成膜装置110は、真空槽111と、真空槽111内を真空排気する真空排気装置112と、真空槽111内に露出する放出口116から成膜物質を放出する放出装置115と、放出口116と対面する位置に配置された成膜マスク120とを有している。
成膜マスク120には複数の開口123が形成され、放出口116から放出された成膜物質が開口123を通過するようになっている。
【0004】
上述の従来の成膜装置110を用いた薄膜の形成方法を説明する。
成膜マスク120から見て放出口116とは逆側に、成膜マスク120の一面と対面して基板150を配置する。
真空排気された真空槽111内に放出口116から成膜物質を放出させると、成膜物質は成膜マスク120の開口123を通過して、基板150の表面に付着し、基板150の表面に開口123と同じパターン形状の薄膜が形成される。
【0005】
成膜中に放出装置115からの熱輻射を受けて成膜マスク120の温度が上昇すると、成膜マスク120に熱膨張が起こり、隣り合う開口123の間の間隔が広がって、基板150に形成される薄膜に位置ズレが生じる。そのため成膜中には成膜マスク120を冷却しておく必要がある。
【0006】
特許文献1では、成膜マスク120の表面の外周部分に、伝熱媒体が流れる補助流路部材126が密着して設けられ、補助流路部材126内に温度管理された伝熱媒体を流して、補助流路部材126からの熱伝導により成膜マスク120を冷却する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、成膜マスク120の外周部分は冷却されるが、特に大型の成膜マスク120の場合には、成膜マスク120の中心部分は冷却されづらく、中心部分の熱膨張を抑制することは困難であった。
また成膜マスク120の中心部分を冷却するために補助流路部材126内に流す伝熱媒体の温度を下げると、成膜マスク120の外周部分で収縮が起こり、隣り合う開口123の間の間隔が縮まって、基板150に形成される薄膜に位置ズレが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−8859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、成膜時の熱による変形を抑制できる成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、を有する成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部とは長手方向を有し、前記遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、前記遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、前記通過部と前記遮蔽部とは、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記遮蔽部によって塞がれるように構成され、前記遮蔽部には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスクである。
本発明は、複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、を有する成膜マスクであって、前記遮蔽部は複数の単位遮蔽部で構成され、前記通過部と前記単位遮蔽部とは長手方向を有し、前記単位遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、前記単位遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、各前記単位遮蔽部は、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの前記単位遮蔽部は長手方向を密着され、前記単位遮蔽部の並びの一端に位置する一の前記単位遮蔽部と、前記通過部とは、前記一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記通過部に隣接する一の前記単位遮蔽部によって塞がれるように構成され、前記単位遮蔽部の少なくとも一個には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスクである。
本発明は成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部とをそれぞれ複数個有し、前記通過部と前記遮蔽部とは、前記一の移動方向に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う前記通過部と前記遮蔽部は密着された成膜マスクである。
本発明は成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部の並びの一端と他端にはそれぞれ前記遮蔽部が配置された成膜マスクである。
本発明は、真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、前記真空槽内に露出する放出口から成膜物質を放出する放出装置と、前記放出口と対面する位置に配置された前記成膜マスクと、前記成膜マスクから見て前記放出口とは逆側に前記成膜マスクと対面して配置された基板と、前記成膜マスクとを前記一の移動方向に平行に相対移動させる移動装置と、を有する成膜装置である。
本発明は、真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、前記成膜マスクを用いて、前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成し、移動前に前記通過部と対面していた前記一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する薄膜の形成方法である。
本発明は、真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、前記成膜マスクを用いて、前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成した後、移動前に前記通過部と対面していた一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記単位遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する工程を、一の前記遮蔽部が有する前記単位遮蔽部の数と同じ回数繰り返す薄膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
大型の成膜マスクに対して熱による変形を抑制できるので、大型の基板上に所定のパターン形状の薄膜を形成することが可能となり、表示装置の大面積化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一例の成膜マスクの平面図
【図2】本発明の第一例の成膜マスクのA−A線切断断面図
【図3】本発明の成膜装置の内部構成図
【図4】成膜マスク上に基板を配置した状態を説明するための図
【図5】成膜前の基板の平面図
【図6】第一の位置合わせ工程を説明するための図
【図7】第一の成膜工程を説明するための図
【図8】第二の位置合わせ工程を説明するための図
【図9】第二の成膜工程を説明するための図
【図10】赤色、緑色、青色発光層の薄膜が形成された基板を説明するための図
【図11】本発明の第二例の成膜マスクの平面図
【図12】本発明の第二例の成膜マスクのB−B線切断断面図
【図13】第二例の成膜マスクを用いた薄膜形成方法を説明するための図
【図14】本発明の第三例の成膜マスクの平面図
【図15】本発明の第三例の成膜マスクのC−C線切断断面図
【図16】本発明の第四例の成膜マスクの平面図
【図17】本発明の第四例の成膜マスクのD−D線切断断面図
【図18】従来の成膜装置の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一例の成膜マスクの構造>
本発明の第一例の成膜マスクの構造を説明する。
図1は第一例の成膜マスク20aの平面図、図2は同A−A線切断断面図である。
【0014】
第一例の成膜マスク20aは、複数の開口23が形成され、成膜物質が開口23を通過する通過部21と、成膜物質を遮蔽する遮蔽部22とを有している。
通過部21の材質はここでは軟磁性金属である。
【0015】
通過部21と遮蔽部22とは、長手方向を有し、遮蔽部22の長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされている。また、通過部21の幅の長さは、遮蔽部22の幅の長さと同じに形成されている。
【0016】
通過部21と遮蔽部22とは、成膜マスク20a表面と平行な一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置されている。
成膜マスク20aが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、遮蔽部22によって塞がれるようになっている。
【0017】
遮蔽部22には、内部に液体状の伝熱媒体が流れる流路部材25が密着して設けられている。流路部材25の材質は熱伝導率の高い金属が好ましく、本実施例ではアルミと銅のいずれか一方の金属が用いられる。遮蔽部22と流路部材25との接触面積は広い方がより高い熱伝導性を得られるため好ましい。
【0018】
流路部材25の内部には流路が設けられており、流路部材25に恒温装置29を接続して内部に所定の温度に管理された伝熱媒体を流すと、熱伝導により遮蔽部22が伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱され、遮蔽部22からの熱伝導により通過部21が伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱される。成膜マスク20aは、伝熱媒体と同じ所定の温度に維持されることで、設計値と同じ形状を維持できる。
【0019】
通過部21と遮蔽部22は長手方向を密着されており、遮蔽部22からの熱伝導により通過部21が冷却又は加熱されると、通過部21の長手方向の端部と中央部との間では温度差は生じず、通過部21全体で熱による変形が抑制されるようになっている。
【0020】
成膜マスク20aのうち流路部材25が密着して設けられた側とは逆側の一面では、通過部21の表面と遮蔽部22の表面とが同一の平面上に位置して、平坦になっている。
成膜マスク20aのうち通過部21と遮蔽部22が配置された領域より外側の外周部には、内部に伝熱媒体が流れる補助流路部材26が密着して設けられている。補助流路部材26は成膜マスク20aの表側と裏側のうち流路部材25が設けられた側と同じ側に配置され、補助流路部材26の内部の流路は流路部材25の内部の流路に接続されている。
【0021】
また、成膜マスク20aには後述する撮像装置44で撮像可能な形状のマスク位置合わせマーク28が設けられている。
本実施例では、成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22は一の板状部材(箔状部材)から一体成形されているが、成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22が複数の板状部材(箔状部材)から形成された構造も本発明に含まれる。成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22が複数の板状部材(箔状部材)から形成されている場合には、隣り合う板状部材(箔状部材)の境界では伝熱効率が低下するため、隣り合う板状部材(箔状部材)の境界は遮蔽部22の内側を通るように構成するのが好ましい。
【0022】
<成膜装置の構造>
第一例の成膜マスク20aを有する成膜装置10の構造を説明する。
図3は成膜装置10の内部構成図である。
成膜装置10は、真空槽11と、真空槽11内を真空排気する真空排気装置12と、真空槽11内に露出する放出口161、162から成膜物質を放出する放出装置151、152とを有している。
【0023】
本実施例では、成膜装置10は二個の放出装置151、152を有しているが、放出装置151、152の数は二個に限定されず、一個又は三個以上の場合も本発明に含まれる。
本実施例では、放出装置151、152は、内部に固体、気体又は液体の薄膜材料を収容する材料容器15a1、15a2と、材料容器15a1、15a2内の薄膜材料を加熱する加熱装置15b1、15b2とを有している。
【0024】
放出口161、162は材料容器15a1、15a2の一面に設けられている。本実施例では、材料容器15a1、15a2は、放出口161、162が設けられた面が上方に向けられた状態で、真空槽11内に配置されている。
【0025】
加熱装置15b1、15b2はここでは線状の抵抗加熱ヒーターであり、材料容器15a1、15a2の外周側面に巻き回されて取り付けられている。加熱装置15b1、15b2により材料容器15a1、15a2内の薄膜材料を加熱すると、薄膜材料から蒸気が発生し、薄膜材料の蒸気である成膜物質は放出口161、162から真空槽11内に放出されるようになっている。
【0026】
放出口161、162には、開閉可能なシャッター171、172が設けられている。シャッター171、172が開状態のときには、成膜物質は放出口161、162から真空槽11内に放出される。一方、シャッター171、172が閉状態のときには、成膜物質は遮蔽されて真空槽11内に放出されないようになっている。
第一例の成膜マスク20aは、放出口161、162と対面する位置に、流路部材25が設けられた側の一面を放出口161、162と対面させて水平に配置されている。
【0027】
成膜マスク20aから見て放出口161、162とは逆側には、成膜マスク20aの一面と対面して基板50を配置できるようになっている。成膜マスク20aの一面と対面して基板50を配置できるならば、基板50を成膜マスク20aに接触して配置できるように構成してもよいし、成膜マスク20aの一面と所定距離離間して平行に配置できるように構成してもよい。後者の場合には、後述する成膜マスク20aと基板50との相対移動が容易になるという利点がある。
【0028】
図4は成膜マスク20a上に接触して基板50を配置した状態の成膜装置10を示している。
成膜マスク20aのうち流路部材25が設けられた側とは逆側の一面では、通過部21の表面と遮蔽部22の表面とが同一の平面上に位置して平坦になっており、基板50表面が平坦な場合には、通過部21の表面と遮蔽部22の表面は基板50表面から同じ高さで平行に配置される。
【0029】
成膜装置10は、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に相対移動させる移動装置41を有している。
本実施例では、移動装置41は、基板50を保持可能な腕部41bと、腕部41bを移動させる腕部移動装置41aとを有している。
【0030】
腕部41bは棒形状であり、鉛直方向と平行に向けられた状態で、成膜マスク20aの上方に配置されている。腕部41bの下端には水平方向に突出された凸部41cが設けられている。腕部41bの上端は真空槽11の壁面を気密に貫通して、真空槽11の外側に延ばされている。
【0031】
腕部移動装置41aはモーターであり、真空槽11の外側に配置され、腕部41bの上端に接続されている。腕部移動装置41aは、動力を腕部41bに伝達して、腕部41bを鉛直方向と水平方向にそれぞれ移動させ、かつ腕部41bを鉛直方向と平行な中心軸線を中心に回転させるように構成されている。
【0032】
腕部移動装置41aにより腕部41bの下端の凸部41cを基板50よりも低い位置に移動させた後、腕部41bを中心軸線を中心に回転させると、凸部41cの上方を向いた面は基板50の表面の外周部分と対面するようになっている。その状態で腕部41bを上方に移動させると、凸部41cの上方を向いた面は基板50の表面の外周部分と接触して、基板50は腕部41bに保持される。
【0033】
さらに腕部移動装置41aにより腕部41bを上方に移動させると、基板50は腕部41bに保持された状態で、成膜マスク20aから離間する。
次いで腕部移動装置41aにより腕部41bを一の移動方向5に平行に移動させると、基板50は腕部41bに保持された状態で、成膜マスク20aに対して一の移動方向5に平行に相対移動する。基板50が腕部41bに保持された状態で、腕部41bを下方に移動させると、基板50は成膜マスク20a上に接触して配置される。
【0034】
成膜装置10は、基板50と成膜マスク20aとを相対的に位置合わせする位置合わせ装置を有している。
位置合わせ装置は、撮像装置44と制御装置43と補助移動装置45とを有している。
【0035】
撮像装置44はここではCCDカメラであり、成膜マスク20aの上方に配置され、基板50に設けられた基板位置合わせマークと成膜マスク20aに設けられたマスク位置合わせマークとをそれぞれ撮像できるように構成されている。
【0036】
補助移動装置45は基板50と成膜マスク20aとを成膜マスク20aの表面と平行な平面内で相対移動できるように構成されている。
制御装置43は、撮像装置44に接続され、撮像装置44の撮像結果から、基板位置合わせマークとマスク位置合わせマークとの相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、基板位置合わせマークとマスク位置合わせマークとの相対位置の誤差量を減少させる方向に基板50と成膜マスク20aとを相対移動させるように構成されている。
【0037】
成膜装置10は、通過部21の表面を基板50の表面と密着させる密着装置を有している。
本実施例では、密着装置は、平板形状の磁石46aと、磁石46aを鉛直方向に移動させる磁石移動装置46bとを有している。
【0038】
磁石46aは成膜マスク20aの上方に、成膜マスク20aの表面と平行に配置されている。磁石46aのうち撮像装置44と対面する部分には切り欠きが形成され、撮像装置44の視野が遮蔽されないようになっている。
磁石移動装置46bはモーターであり、動力を磁石46aに伝達して、磁石46aを鉛直方向に往復移動できるように構成されている。
【0039】
成膜マスク20a上に基板50を配置した状態で、磁石46aを下方に移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させると、通過部21は磁石46aからの磁力に引かれて基板50の表面に密着するようになっている。
【0040】
上記実施例の成膜装置10では、放出装置151、152は放出口161、162を上方に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162の上方に水平に配置されていたが、成膜マスク20aの流路部材25側の一面と放出口161、162とが対面されていれば本発明は上記配置に限定されず、放出装置151、152は放出口161、162を下方に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162の下方に水平に配置されていてもよいし、放出装置151、152は放出口161、162を一の水平方向に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162から見て前記一の水平方向に鉛直に立てられた状態で配置されていてもよい。
【0041】
<薄膜の形成方法>
第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法をカラー表示装置の赤色、緑色、青色発光層の成膜工程を一例に説明する。
【0042】
(準備工程)
図5は成膜前の基板50の平面図を示している。本実施例では、予め表面にホール注入層とホール輸送層が順に積層された基板50を用いる。
基板50の表面に、通過部21と同形状の第一の成膜領域51と第二の成膜領域52を予め定めておく。第一の成膜領域51と第二の成膜領域52は、基板50の表面と平行な一の直線に沿って長手方向を密着して並んで配置する。
第一、第二の成膜領域51、52内には赤色、緑色、青色発光層の画素領域がそれぞれ含まれている。
【0043】
また、基板50のうち、第一の成膜領域51の赤色、緑色、青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置には第一の赤色、緑色、青色基板位置合わせマークをそれぞれ設け、第二の成膜領域52の赤色、緑色、青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置には第二の赤色、緑色、青色基板位置合わせマークを設けておく。符号581、582は第一、第二の赤色基板位置合わせマーク581、582を示している。
【0044】
本実施例では、図3を参照し、一方の材料容器15a1内に赤色発光層のホストの有機材料を収容し、他方の材料容器15a2内に赤色発光層のドーパントの有機材料を収容しておく。また、真空槽11内には符号151、152の放出装置の他に、符号151、152の放出装置と同じ構造の4個の放出装置(不図示)が配置されており、当該4個の放出装置の材料容器内に緑色発光層のホストとドーパントの有機材料と、青色発光層のホストとドーパントの有機材料をそれぞれ収容しておく。
【0045】
真空排気装置12により真空槽11内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気を継続して真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
補助流路部材26を介して流路部材25に恒温装置29を接続して、所定の温度に温度管理された伝熱媒体を流し、成膜マスク20aを伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱する。以後、伝熱媒体の循環を継続して、成膜マスク20aを所定の温度に維持する。
【0046】
図4を参照し、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら真空槽11内に基板50を搬入し、成膜マスク20aを基板50のホール輸送層の表面と対面させた状態で、ここでは成膜マスク20a上に接触して配置する。
【0047】
全てのシャッターを閉状態にしておく。全ての放出装置の加熱装置により材料容器内の有機材料をそれぞれ加熱し、材料容器内で赤色、緑色、青色のホストとドーパントの有機材料の蒸気をそれぞれ発生させる。
【0048】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、加熱装置からの熱輻射を受けても成膜マスク20aの温度上昇が抑えられる。従って、加熱装置による薄膜材料の加熱温度を従来より高く設定でき、薄膜材料の蒸発速度を大きくして、後述する成膜工程に要する時間を短縮することができる。
【0049】
(第一の位置合わせ工程)
撮像装置44により、基板50の第一の赤色基板位置合わせマーク581と、成膜マスク20aのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
【0050】
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28の相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20aとを相対移動させ、図6を参照し、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを対面させる。このとき第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域は通過部21の開口23と対面する。
【0051】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、マスク位置合わせマーク28の周囲も伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却され、隣り合う二つのマスク位置合わせマーク28間の間隔の熱膨張が抑制される。従って、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを正確に対面させることができ、従来の成膜装置110よりも成膜マスク20aと基板50との位置合わせがしやすく、短い時間で位置合わせすることができる。
【0052】
本実施例では、第一の成膜領域51を通過部21と対面させると、第二の成膜領域52の一部は成膜マスク20aの外周の外側に露出する。
成膜装置10は成膜物質を遮蔽する補助遮蔽部材60を有している。補助遮蔽部材60を、第二の成膜領域52の露出した部分と放出口161、162との間に配置して、第二の成膜領域52の露出部分を遮蔽する。
図4を参照し、磁石移動装置46bにより磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させる。
【0053】
(第一の成膜工程)
赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152のシャッター171、172を開状態にして、赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152の放出口161、162から赤色発光層のホストとドーパントの成膜物質をそれぞれ放出させる。
【0054】
放出口161、162から放出された赤色発光層のホストとドーパントの有機成膜物質は通過部21の開口23を通過して、基板50のホール輸送層の表面に共蒸着し、図7を参照し、基板50のホール輸送層の表面のうち通過部21の開口23と対面する第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域には、開口23と同じパターン形状の赤色発光層の有機薄膜が形成される。符号53Rは基板50に形成された赤色発光層の薄膜を示している。
【0055】
第二の成膜領域52は補助遮蔽部材60で遮蔽されており、成膜物質は第二の成膜領域52には到達しない。
成膜マスク20aの温度は伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、成膜物質が付着しても温度上昇が抑えられる。そのため、成膜マスク20aの熱膨張が抑制され、第一の成膜領域51に形成される薄膜53Rに位置ズレは生じない。
【0056】
また通過部21の表面は基板50の表面に密着しており、通過部21の開口23を通過した成膜物質が通過部21の表面と基板50の表面との隙間で拡散して薄膜53Rの輪郭に滲みが生じることはない。
【0057】
第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域に所定の厚みの赤色発光層の薄膜53Rを形成した後、図4を参照し、シャッター171、172を閉状態にして、放出口161、162からの蒸気の放出を停止する。
磁石移動装置46bにより磁石46aを基板50の裏面から離間させ、通過部21の表面と遮蔽部22の表面の基板50表面との密着を解除する。
【0058】
(第二の位置合わせ工程)
移動装置41により、移動前に通過部21と対面していた第一の成膜領域51が通過部21に隣接する遮蔽部22と対面するように、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させる。
撮像装置44により基板50の第二の赤色基板位置合わせマーク582と成膜マスク20aのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
【0059】
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第二の赤色基板位置合わせマーク582とマスク位置合わせマーク28との相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20aを相対移動させ、図8を参照し、第二の赤色基板位置合わせマーク582をマスク位置合わせマーク28と対面させる。このとき、基板50のうち移動前に補助遮蔽部材60と対面していた第二の成膜領域52は通過部21と対面し、移動前に通過部21と対面していた第一の成膜領域51は遮蔽部22と対面して遮蔽される。
図4を参照し、磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させる。
【0060】
(第二の成膜工程)
赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152のシャッター171、172を開状態にして、赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152の放出口161、162から赤色発光層のホストとドーパントの有機材料の蒸気を放出させる。
【0061】
放出口161、162から放出された赤色発光層のホストとドーパントの有機成膜物質は通過部21の開口23を通過して、基板50のホール輸送層の表面に共蒸着し、図9を参照し、基板50の表面のうち通過部21の開口23と対面する第二の成膜領域52の赤色発光層の画素領域には、開口23と同じパターン形状の赤色発光層の薄膜53Rが形成される。
【0062】
第一の成膜領域51は遮蔽部22で遮蔽されており、成膜物質は第一の成膜領域51に到達しない。従って、第一の成膜領域51にさらに薄膜53Rが形成されることはない。
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、成膜物質が付着しても温度上昇が抑えられる。そのため、成膜マスク20aの熱膨張は抑制され、第二の成膜領域52に形成される薄膜53Rに位置ズレは生じない。
【0063】
また通過部21の表面は基板50の表面に密着しており、通過部21の開口23を通過した蒸気が通過部21の表面と基板50の表面との隙間で拡散して薄膜53Rの輪郭に滲みが生じることない。
【0064】
第二の成膜領域52の赤色発光層の画素領域に所定の厚みの赤色発光層の薄膜53Rを形成した後、図4を参照し、シャッター171、172を閉状態にして、放出口161、162からの蒸気の放出を停止する。
磁石移動装置46bにより磁石46aを基板50の裏面から離間させ、基板50の表面と通過部21の表面との密着を解除する。
【0065】
(緑色発光層成膜工程)
上述の第一の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第一の成膜領域51の緑色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第一の成膜工程と同様にして、緑色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第一の成膜領域51の緑色発光層の画素領域に所定の厚みの緑色発光層の薄膜を形成する。次いで、第二の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第二の成膜領域52の緑色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第二の成膜工程と同様にして、緑色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第二の成膜領域52の緑色発光層の画素領域に所定の厚みの緑色発光層の薄膜を形成する。
【0066】
(青色発光層成膜工程)
上述の第一の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第一の成膜領域51の青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第一の成膜工程と同様にして、青色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第一の成膜領域51の青色発光層の画素領域に所定の厚みの青色発光層の薄膜を形成する。次いで、第二の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第二の成膜領域52の青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第二の成膜工程と同様にして、青色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第二の成膜領域52の青色発光層の画素領域に所定の厚みの青色発光層の薄膜を形成する。
【0067】
(基板交換工程)
図10を参照し、基板50の第一、第二の成膜領域51、52の赤色、緑色、青色発光層の画素領域にそれぞれ赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成した後、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜済みの基板50を真空槽11の外側に搬出する。
【0068】
次いで、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、別の基板50を真空槽11内に搬入し、上述の各工程を順に行って、未成膜の基板50に赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成する。
複数枚の基板50に対して上述の各工程を繰り返し、複数枚の基板50に赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成する。
【0069】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に維持されており、複数枚の基板50に対して成膜工程を繰り返しても成膜マスク20aの熱による変形は抑制され、各基板50に形成される薄膜53R、53G、53Bに位置ズレは生じない。
【0070】
赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを成膜した基板50を真空槽11の外側に搬出した後、赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bの表面に電子輸送層と電極層とを順に積層して、カラー表示装置を完成する。
【0071】
上述の第一、第二の位置合わせ工程では、真空槽11に対して成膜マスク20aを静止させた状態で基板50を移動させたが、移動前に通過部21と対面していた一の成膜領域51が通過部21に隣接する遮蔽部22と対面するように、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させるならば、真空槽11に対して基板50を静止させた状態で成膜マスク20aを移動させてもよいし、真空槽11に対して基板50と成膜マスク20aの両方を移動させてもよい。
【0072】
上述の第一、第二の成膜工程では、放出装置151、152を真空槽11内で静止させた状態で成膜を行ったが、成膜装置10に放出装置151、152を成膜マスク20aの表面と平行な方向に移動させる放出装置移動装置を追加し、放出装置移動装置により放出装置151、152を成膜マスク20aの表面と平行な方向に移動させながら成膜を行ってもよい。この場合には、放出装置151、152を静止させた場合よりも、大型の基板50に対してより均一な膜厚で薄膜を形成できる。
【0073】
<第二例の成膜マスクの構造>
第二例の成膜マスクの構造を説明する。
図11は第二例の成膜マスク20bの平面図、図12は同B−B線切断断面図である。第二例の成膜マスク20bのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0074】
第二例の成膜マスク20bでは、第一例の成膜マスク20aに遮蔽部22とは別の遮蔽部22’が追加されている。
すなわち、第二例の成膜マスク20bでは、通過部21と遮蔽部22、22’とは一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、通過部21と遮蔽部22、22’の並びの一端と他端にはそれぞれ遮蔽部22、22’が配置されている。
【0075】
追加された遮蔽部22’には、内部に伝熱媒体が流れる流路部材25’が密着して設けられている。追加された遮蔽部22’と流路部材25’の構造は、第一例の成膜マスク20aの遮蔽部22と流路部材25の構造とそれぞれ同じであり説明を省略する。
【0076】
第二例の成膜マスク20bでは、通過部21は二つの遮蔽部22、22’の間に挟まれ、二つの遮蔽部22、22’と長手方向を密着して配置されている。そのため、通過部21は長手方向の二辺からの熱伝導により冷却又は加熱され、第一例の成膜マスク20aより冷却効率及び加熱効率が高く、通過部21の熱による変形をより効果的に抑制できるようになっている。
【0077】
第二例の成膜マスク20bは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第二例の成膜マスク20bを用いた薄膜の形成方法は、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と比べて、第一の位置合わせ工程以外は同じであり、第一の位置合わせ工程以外の各工程の説明は省略する。
第二例の成膜マスク20bを用いた薄膜の形成方法の第一の位置合わせ工程を赤色発光層の成膜を例に説明する。
【0078】
上述の準備工程を終えた後、撮像装置44により、基板50の第一の赤色基板位置合わせマーク581と、成膜マスク20bのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28の相対位置の誤差量を求め、移動装置41に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20bとを相対移動させ、図13を参照し、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを対面させる。このとき第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域は通過部21の開口23と対面し、第二の成膜領域52は追加された遮蔽部22’と対面して遮蔽される。
【0079】
図4を参照し、磁石移動装置46bにより磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させ、次いで上述の第一の成膜工程を行う。
【0080】
本実施例では、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法の第一の位置合わせ工程とは異なり、第二の成膜領域52は追加された遮蔽部22’に遮蔽されて成膜マスク20bの外周の外側に露出しないため、補助遮蔽部材60を用いて第二の成膜領域52を遮蔽する手間を省略できる。また補助遮蔽部材60は不要となるため、成膜装置10から補助遮蔽部材60を省略でき、コストの削減になる。
【0081】
<第三例の成膜マスクの構造>
第三例の成膜マスクの構造を説明する。
図14は第三例の成膜マスク20cの平面図、図15は同C−C線切断断面図である。第三例の成膜マスク20cのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0082】
第三例の成膜マスク20cは、第一例の成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22の代わりに、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223とをそれぞれ複数個有している。各通過部211、212、213と各遮蔽部221、222、223の構造は、第一例の成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22の構造とそれぞれ同じであり、説明を省略する。
【0083】
通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223とは、成膜マスク20cの表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223は長手方向を密着されている。
各遮蔽部221、222、223には、内部に伝熱媒体が流れる流路部材251、252、253が密着して設けられている。流路部材251、252、253の構造は第一例の成膜マスク20aの流路部材25の構造と同じであり、説明を省略する。
【0084】
第三例の成膜マスク20cでは、成膜対象である基板の大きさが第一例の成膜マスク20aのときと同じ場合には、通過部211、212、213の幅を第一例の成膜マスク20aの通過部21より小さく形成することができる。第一例の成膜マスク20aの通過部21より通過部211、212、213の幅が小さいと、通過部211、212、213の熱容量が小さくなり、冷却効率及び加熱効率が高くなる。そのため、流路部材251、252、253内に伝熱媒体を流すことで、第一例の成膜マスク20aより通過部211、212、213の熱による変形を効果的に抑制できる。
【0085】
成膜対象である基板の大型化に伴って成膜マスク20cを大型化する場合には、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223の大きさを変えずに、数を増やせばよい。すると、大型の通過部211、212、213を製作する手間が不要となり、成膜マスク20cの大型化が容易になる。また、成膜マスク20cを大型化しても通過部211、212、213の大きさが変わらなければ、冷却効率及び加熱効率は変わらず、流路部材251、252、253内に伝熱媒体を流すことで、通過部211、212、213の熱による変形を抑制することができる。
【0086】
第三例の成膜マスク20cは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第三例の成膜マスク20cを用いた薄膜の形成方法は、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様であり、説明を省略する。
第三例の成膜マスク20cでは通過部211、212、213の幅の長さが第一例の成膜マスク20aより小さくできるので、第二の位置合わせ工程において成膜マスク20cと基板50とを移動装置41により相対移動させる移動距離は短くなり、成膜装置10を小型化できる。
【0087】
第三例の成膜マスク20cには、第二例の成膜マスク20bの遮蔽部22’と同様に別の遮蔽部が追加され、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223の並びの一端と他端には符号223の遮蔽部と追加された遮蔽部とがそれぞれ配置された構造も本発明に含まれる。
【0088】
<第四例の成膜マスクの構造>
第四例の成膜マスクの構造を説明する。
図16は第四例の成膜マスク20dの平面図、図17は同D−D線切断断面図である。第四例の成膜マスク20dのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0089】
第四例の成膜マスク20dは、第一例の成膜マスク20aの遮蔽部22の代わりに、成膜物質を遮蔽する遮蔽部30を有しており、この遮蔽部30は複数の単位遮蔽部22a、22bで構成されている。本実施例では遮蔽部30は二個の単位遮蔽部22a、22bで構成されているが、三個以上の単位遮蔽部で構成されている場合も本発明に含まれる。
【0090】
通過部21と単位遮蔽部22a、22bとは長手方向を有し、単位遮蔽部22a、22bの長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされている。また、単位遮蔽部22a、22bの幅の長さは、通過部21の幅の長さと同じに形成されている。
【0091】
各単位遮蔽部22a、22bは、成膜マスク20d表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの単位遮蔽部22a、22bは長手方向を密着され、単位遮蔽部22a、22bの並びの一端に位置する一の単位遮蔽部22aと通過部21とは、一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置されている。
【0092】
成膜マスク20dが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、通過部21に隣接する一の単位遮蔽部22aによって塞がれるように構成されている。
【0093】
単位遮蔽部22a、22bの少なくとも一個には伝熱媒体が流れる流路部材25a、25bが密着して設けられている。流路部材25a、25bの構造は第一例の成膜マスク20aの流路部材25と同じであり、説明を省略する。
【0094】
本実施例では複数の単位遮蔽部22a、22bのそれぞれに別々の流路部材25a、25bが密着して設けられているが、複数の単位遮蔽部22a、22bに共通して一個の流路部材が設けられた構造も本発明に含まれる。
【0095】
また、複数の単位遮蔽部22a、22bには、流路部材が設けられていない単位遮蔽部を含んだ構造も本発明に含まれるが、流路部材が設けられた単位遮蔽部の数が多い方が、通過部21の冷却効率及び加熱効率が高くなるため好ましい。
【0096】
第四例の成膜マスク20dでは、第一例の成膜マスク20aに比べて、流路部材25a、25bとの接触面積を大きく構成できるため、通過部21の冷却効率及び加熱効率が第一例の成膜マスク20aより高くなり、通過部21の熱による変形をより効果的に抑制できるようになっている。
【0097】
第四例の成膜マスク20dは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第四例の成膜マスク20dを用いた薄膜の形成方法を説明する。
まず、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、準備工程を行う。
【0098】
ただし、基板50の表面に、成膜マスク20dの通過部21と同形状の成膜領域を、一の遮蔽部30が有する単位遮蔽部22a、22bの数より一個多い数予め定めておく。複数の成膜領域は、基板50の表面と平行な一の直線に沿って長手方向を密着して並んで配置する。
【0099】
また、基板50のうち、各成膜領域を通過部21と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置にはそれぞれ基板位置合わせマークを設けておく。
次いで、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、第一の位置合わせ工程を行って、複数の成膜領域のうち一の成膜領域の赤色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させ、第一の成膜工程を行って、通過部21の開口23と対面する一の成膜領域の赤色発光層の画素領域に赤色発光層の薄膜を形成する。
【0100】
次いで、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、第二の位置合わせ工程を行って、移動前に通過部21と対面していた一の成膜領域が通過部21に隣接する一の単位遮蔽部22aと対面するように、成膜マスク20dと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させた後、第二の成膜工程を行って、通過部21の開口23と対面する別の成膜領域の赤色発光層の画素領域に赤色発光層の薄膜を形成する(単位成膜工程)。
【0101】
上述の単位成膜工程を合計で、一の遮蔽部30が有する単位遮蔽部22a、22bの数と同じ回数繰り返し行って、基板50上の複数の成膜領域のすべての赤色発光層の画素領域に開口23と同じパターン形状の赤色発光層の薄膜を形成する。
赤色発光層の成膜工程と同様にして、基板50上の複数の成膜領域のすべての緑色、青色発光層の画素領域に緑色、青色発光層の薄膜を順に形成する。
第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、基板交換工程と上述の各工程とを繰り返して複数枚の基板に赤色、緑色、青色発光層の薄膜を形成する。
【0102】
第四例の成膜マスク20dには、第二例の成膜マスク20bの遮蔽部22’と同様に別の遮蔽部が追加され、通過部21と遮蔽部30の並びの一端と他端には符号30の遮蔽部と追加された遮蔽部とがそれぞれ配置された構造も本発明に含まれる。
【0103】
また、第四例の成膜マスク20dには、第三例の成膜マスク20cと同様に、通過部21と遮蔽部30とをそれぞれ複数個有し、複数の通過部21と遮蔽部30とは、成膜マスク20dの表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う通過部21と遮蔽部30は互いに密着された構造も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
5……一の移動方向
10……成膜装置
11……真空槽
12……真空排気装置
151、152……放出装置
161、162……放出口
20a、20b、20c、20d……成膜マスク
21、211、212、213……通過部
22、22’、221、222、223、30……遮蔽部
22a、22b……単位遮蔽部
23……開口
25、25’、251、252、253、25a、25b……流路部材
41……移動装置
50……基板
51……第一の成膜領域
52……第二の成膜領域
53R、53G、53B……赤色、緑色、青色発光層の薄膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、近年では、表示装置や照明機器の用途に注目されており、所定のパターン形状の有機薄膜を大面積の基板に精密に成膜する技術が求められている。
【0003】
図18は従来の成膜装置110の内部構成図である。
従来の成膜装置110は、真空槽111と、真空槽111内を真空排気する真空排気装置112と、真空槽111内に露出する放出口116から成膜物質を放出する放出装置115と、放出口116と対面する位置に配置された成膜マスク120とを有している。
成膜マスク120には複数の開口123が形成され、放出口116から放出された成膜物質が開口123を通過するようになっている。
【0004】
上述の従来の成膜装置110を用いた薄膜の形成方法を説明する。
成膜マスク120から見て放出口116とは逆側に、成膜マスク120の一面と対面して基板150を配置する。
真空排気された真空槽111内に放出口116から成膜物質を放出させると、成膜物質は成膜マスク120の開口123を通過して、基板150の表面に付着し、基板150の表面に開口123と同じパターン形状の薄膜が形成される。
【0005】
成膜中に放出装置115からの熱輻射を受けて成膜マスク120の温度が上昇すると、成膜マスク120に熱膨張が起こり、隣り合う開口123の間の間隔が広がって、基板150に形成される薄膜に位置ズレが生じる。そのため成膜中には成膜マスク120を冷却しておく必要がある。
【0006】
特許文献1では、成膜マスク120の表面の外周部分に、伝熱媒体が流れる補助流路部材126が密着して設けられ、補助流路部材126内に温度管理された伝熱媒体を流して、補助流路部材126からの熱伝導により成膜マスク120を冷却する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、成膜マスク120の外周部分は冷却されるが、特に大型の成膜マスク120の場合には、成膜マスク120の中心部分は冷却されづらく、中心部分の熱膨張を抑制することは困難であった。
また成膜マスク120の中心部分を冷却するために補助流路部材126内に流す伝熱媒体の温度を下げると、成膜マスク120の外周部分で収縮が起こり、隣り合う開口123の間の間隔が縮まって、基板150に形成される薄膜に位置ズレが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−8859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、成膜時の熱による変形を抑制できる成膜マスク及び成膜装置並びに薄膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、を有する成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部とは長手方向を有し、前記遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、前記遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、前記通過部と前記遮蔽部とは、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記遮蔽部によって塞がれるように構成され、前記遮蔽部には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスクである。
本発明は、複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、を有する成膜マスクであって、前記遮蔽部は複数の単位遮蔽部で構成され、前記通過部と前記単位遮蔽部とは長手方向を有し、前記単位遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、前記単位遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、各前記単位遮蔽部は、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの前記単位遮蔽部は長手方向を密着され、前記単位遮蔽部の並びの一端に位置する一の前記単位遮蔽部と、前記通過部とは、前記一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記通過部に隣接する一の前記単位遮蔽部によって塞がれるように構成され、前記単位遮蔽部の少なくとも一個には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスクである。
本発明は成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部とをそれぞれ複数個有し、前記通過部と前記遮蔽部とは、前記一の移動方向に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う前記通過部と前記遮蔽部は密着された成膜マスクである。
本発明は成膜マスクであって、前記通過部と前記遮蔽部の並びの一端と他端にはそれぞれ前記遮蔽部が配置された成膜マスクである。
本発明は、真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、前記真空槽内に露出する放出口から成膜物質を放出する放出装置と、前記放出口と対面する位置に配置された前記成膜マスクと、前記成膜マスクから見て前記放出口とは逆側に前記成膜マスクと対面して配置された基板と、前記成膜マスクとを前記一の移動方向に平行に相対移動させる移動装置と、を有する成膜装置である。
本発明は、真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、前記成膜マスクを用いて、前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成し、移動前に前記通過部と対面していた前記一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する薄膜の形成方法である。
本発明は、真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、前記成膜マスクを用いて、前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成した後、移動前に前記通過部と対面していた一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記単位遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する工程を、一の前記遮蔽部が有する前記単位遮蔽部の数と同じ回数繰り返す薄膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
大型の成膜マスクに対して熱による変形を抑制できるので、大型の基板上に所定のパターン形状の薄膜を形成することが可能となり、表示装置の大面積化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一例の成膜マスクの平面図
【図2】本発明の第一例の成膜マスクのA−A線切断断面図
【図3】本発明の成膜装置の内部構成図
【図4】成膜マスク上に基板を配置した状態を説明するための図
【図5】成膜前の基板の平面図
【図6】第一の位置合わせ工程を説明するための図
【図7】第一の成膜工程を説明するための図
【図8】第二の位置合わせ工程を説明するための図
【図9】第二の成膜工程を説明するための図
【図10】赤色、緑色、青色発光層の薄膜が形成された基板を説明するための図
【図11】本発明の第二例の成膜マスクの平面図
【図12】本発明の第二例の成膜マスクのB−B線切断断面図
【図13】第二例の成膜マスクを用いた薄膜形成方法を説明するための図
【図14】本発明の第三例の成膜マスクの平面図
【図15】本発明の第三例の成膜マスクのC−C線切断断面図
【図16】本発明の第四例の成膜マスクの平面図
【図17】本発明の第四例の成膜マスクのD−D線切断断面図
【図18】従来の成膜装置の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一例の成膜マスクの構造>
本発明の第一例の成膜マスクの構造を説明する。
図1は第一例の成膜マスク20aの平面図、図2は同A−A線切断断面図である。
【0014】
第一例の成膜マスク20aは、複数の開口23が形成され、成膜物質が開口23を通過する通過部21と、成膜物質を遮蔽する遮蔽部22とを有している。
通過部21の材質はここでは軟磁性金属である。
【0015】
通過部21と遮蔽部22とは、長手方向を有し、遮蔽部22の長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされている。また、通過部21の幅の長さは、遮蔽部22の幅の長さと同じに形成されている。
【0016】
通過部21と遮蔽部22とは、成膜マスク20a表面と平行な一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置されている。
成膜マスク20aが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、遮蔽部22によって塞がれるようになっている。
【0017】
遮蔽部22には、内部に液体状の伝熱媒体が流れる流路部材25が密着して設けられている。流路部材25の材質は熱伝導率の高い金属が好ましく、本実施例ではアルミと銅のいずれか一方の金属が用いられる。遮蔽部22と流路部材25との接触面積は広い方がより高い熱伝導性を得られるため好ましい。
【0018】
流路部材25の内部には流路が設けられており、流路部材25に恒温装置29を接続して内部に所定の温度に管理された伝熱媒体を流すと、熱伝導により遮蔽部22が伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱され、遮蔽部22からの熱伝導により通過部21が伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱される。成膜マスク20aは、伝熱媒体と同じ所定の温度に維持されることで、設計値と同じ形状を維持できる。
【0019】
通過部21と遮蔽部22は長手方向を密着されており、遮蔽部22からの熱伝導により通過部21が冷却又は加熱されると、通過部21の長手方向の端部と中央部との間では温度差は生じず、通過部21全体で熱による変形が抑制されるようになっている。
【0020】
成膜マスク20aのうち流路部材25が密着して設けられた側とは逆側の一面では、通過部21の表面と遮蔽部22の表面とが同一の平面上に位置して、平坦になっている。
成膜マスク20aのうち通過部21と遮蔽部22が配置された領域より外側の外周部には、内部に伝熱媒体が流れる補助流路部材26が密着して設けられている。補助流路部材26は成膜マスク20aの表側と裏側のうち流路部材25が設けられた側と同じ側に配置され、補助流路部材26の内部の流路は流路部材25の内部の流路に接続されている。
【0021】
また、成膜マスク20aには後述する撮像装置44で撮像可能な形状のマスク位置合わせマーク28が設けられている。
本実施例では、成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22は一の板状部材(箔状部材)から一体成形されているが、成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22が複数の板状部材(箔状部材)から形成された構造も本発明に含まれる。成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22が複数の板状部材(箔状部材)から形成されている場合には、隣り合う板状部材(箔状部材)の境界では伝熱効率が低下するため、隣り合う板状部材(箔状部材)の境界は遮蔽部22の内側を通るように構成するのが好ましい。
【0022】
<成膜装置の構造>
第一例の成膜マスク20aを有する成膜装置10の構造を説明する。
図3は成膜装置10の内部構成図である。
成膜装置10は、真空槽11と、真空槽11内を真空排気する真空排気装置12と、真空槽11内に露出する放出口161、162から成膜物質を放出する放出装置151、152とを有している。
【0023】
本実施例では、成膜装置10は二個の放出装置151、152を有しているが、放出装置151、152の数は二個に限定されず、一個又は三個以上の場合も本発明に含まれる。
本実施例では、放出装置151、152は、内部に固体、気体又は液体の薄膜材料を収容する材料容器15a1、15a2と、材料容器15a1、15a2内の薄膜材料を加熱する加熱装置15b1、15b2とを有している。
【0024】
放出口161、162は材料容器15a1、15a2の一面に設けられている。本実施例では、材料容器15a1、15a2は、放出口161、162が設けられた面が上方に向けられた状態で、真空槽11内に配置されている。
【0025】
加熱装置15b1、15b2はここでは線状の抵抗加熱ヒーターであり、材料容器15a1、15a2の外周側面に巻き回されて取り付けられている。加熱装置15b1、15b2により材料容器15a1、15a2内の薄膜材料を加熱すると、薄膜材料から蒸気が発生し、薄膜材料の蒸気である成膜物質は放出口161、162から真空槽11内に放出されるようになっている。
【0026】
放出口161、162には、開閉可能なシャッター171、172が設けられている。シャッター171、172が開状態のときには、成膜物質は放出口161、162から真空槽11内に放出される。一方、シャッター171、172が閉状態のときには、成膜物質は遮蔽されて真空槽11内に放出されないようになっている。
第一例の成膜マスク20aは、放出口161、162と対面する位置に、流路部材25が設けられた側の一面を放出口161、162と対面させて水平に配置されている。
【0027】
成膜マスク20aから見て放出口161、162とは逆側には、成膜マスク20aの一面と対面して基板50を配置できるようになっている。成膜マスク20aの一面と対面して基板50を配置できるならば、基板50を成膜マスク20aに接触して配置できるように構成してもよいし、成膜マスク20aの一面と所定距離離間して平行に配置できるように構成してもよい。後者の場合には、後述する成膜マスク20aと基板50との相対移動が容易になるという利点がある。
【0028】
図4は成膜マスク20a上に接触して基板50を配置した状態の成膜装置10を示している。
成膜マスク20aのうち流路部材25が設けられた側とは逆側の一面では、通過部21の表面と遮蔽部22の表面とが同一の平面上に位置して平坦になっており、基板50表面が平坦な場合には、通過部21の表面と遮蔽部22の表面は基板50表面から同じ高さで平行に配置される。
【0029】
成膜装置10は、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に相対移動させる移動装置41を有している。
本実施例では、移動装置41は、基板50を保持可能な腕部41bと、腕部41bを移動させる腕部移動装置41aとを有している。
【0030】
腕部41bは棒形状であり、鉛直方向と平行に向けられた状態で、成膜マスク20aの上方に配置されている。腕部41bの下端には水平方向に突出された凸部41cが設けられている。腕部41bの上端は真空槽11の壁面を気密に貫通して、真空槽11の外側に延ばされている。
【0031】
腕部移動装置41aはモーターであり、真空槽11の外側に配置され、腕部41bの上端に接続されている。腕部移動装置41aは、動力を腕部41bに伝達して、腕部41bを鉛直方向と水平方向にそれぞれ移動させ、かつ腕部41bを鉛直方向と平行な中心軸線を中心に回転させるように構成されている。
【0032】
腕部移動装置41aにより腕部41bの下端の凸部41cを基板50よりも低い位置に移動させた後、腕部41bを中心軸線を中心に回転させると、凸部41cの上方を向いた面は基板50の表面の外周部分と対面するようになっている。その状態で腕部41bを上方に移動させると、凸部41cの上方を向いた面は基板50の表面の外周部分と接触して、基板50は腕部41bに保持される。
【0033】
さらに腕部移動装置41aにより腕部41bを上方に移動させると、基板50は腕部41bに保持された状態で、成膜マスク20aから離間する。
次いで腕部移動装置41aにより腕部41bを一の移動方向5に平行に移動させると、基板50は腕部41bに保持された状態で、成膜マスク20aに対して一の移動方向5に平行に相対移動する。基板50が腕部41bに保持された状態で、腕部41bを下方に移動させると、基板50は成膜マスク20a上に接触して配置される。
【0034】
成膜装置10は、基板50と成膜マスク20aとを相対的に位置合わせする位置合わせ装置を有している。
位置合わせ装置は、撮像装置44と制御装置43と補助移動装置45とを有している。
【0035】
撮像装置44はここではCCDカメラであり、成膜マスク20aの上方に配置され、基板50に設けられた基板位置合わせマークと成膜マスク20aに設けられたマスク位置合わせマークとをそれぞれ撮像できるように構成されている。
【0036】
補助移動装置45は基板50と成膜マスク20aとを成膜マスク20aの表面と平行な平面内で相対移動できるように構成されている。
制御装置43は、撮像装置44に接続され、撮像装置44の撮像結果から、基板位置合わせマークとマスク位置合わせマークとの相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、基板位置合わせマークとマスク位置合わせマークとの相対位置の誤差量を減少させる方向に基板50と成膜マスク20aとを相対移動させるように構成されている。
【0037】
成膜装置10は、通過部21の表面を基板50の表面と密着させる密着装置を有している。
本実施例では、密着装置は、平板形状の磁石46aと、磁石46aを鉛直方向に移動させる磁石移動装置46bとを有している。
【0038】
磁石46aは成膜マスク20aの上方に、成膜マスク20aの表面と平行に配置されている。磁石46aのうち撮像装置44と対面する部分には切り欠きが形成され、撮像装置44の視野が遮蔽されないようになっている。
磁石移動装置46bはモーターであり、動力を磁石46aに伝達して、磁石46aを鉛直方向に往復移動できるように構成されている。
【0039】
成膜マスク20a上に基板50を配置した状態で、磁石46aを下方に移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させると、通過部21は磁石46aからの磁力に引かれて基板50の表面に密着するようになっている。
【0040】
上記実施例の成膜装置10では、放出装置151、152は放出口161、162を上方に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162の上方に水平に配置されていたが、成膜マスク20aの流路部材25側の一面と放出口161、162とが対面されていれば本発明は上記配置に限定されず、放出装置151、152は放出口161、162を下方に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162の下方に水平に配置されていてもよいし、放出装置151、152は放出口161、162を一の水平方向に向けた状態で真空槽11内に配置され、成膜マスク20aは放出口161、162から見て前記一の水平方向に鉛直に立てられた状態で配置されていてもよい。
【0041】
<薄膜の形成方法>
第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法をカラー表示装置の赤色、緑色、青色発光層の成膜工程を一例に説明する。
【0042】
(準備工程)
図5は成膜前の基板50の平面図を示している。本実施例では、予め表面にホール注入層とホール輸送層が順に積層された基板50を用いる。
基板50の表面に、通過部21と同形状の第一の成膜領域51と第二の成膜領域52を予め定めておく。第一の成膜領域51と第二の成膜領域52は、基板50の表面と平行な一の直線に沿って長手方向を密着して並んで配置する。
第一、第二の成膜領域51、52内には赤色、緑色、青色発光層の画素領域がそれぞれ含まれている。
【0043】
また、基板50のうち、第一の成膜領域51の赤色、緑色、青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置には第一の赤色、緑色、青色基板位置合わせマークをそれぞれ設け、第二の成膜領域52の赤色、緑色、青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置には第二の赤色、緑色、青色基板位置合わせマークを設けておく。符号581、582は第一、第二の赤色基板位置合わせマーク581、582を示している。
【0044】
本実施例では、図3を参照し、一方の材料容器15a1内に赤色発光層のホストの有機材料を収容し、他方の材料容器15a2内に赤色発光層のドーパントの有機材料を収容しておく。また、真空槽11内には符号151、152の放出装置の他に、符号151、152の放出装置と同じ構造の4個の放出装置(不図示)が配置されており、当該4個の放出装置の材料容器内に緑色発光層のホストとドーパントの有機材料と、青色発光層のホストとドーパントの有機材料をそれぞれ収容しておく。
【0045】
真空排気装置12により真空槽11内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気を継続して真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
補助流路部材26を介して流路部材25に恒温装置29を接続して、所定の温度に温度管理された伝熱媒体を流し、成膜マスク20aを伝熱媒体と同じ温度に冷却又は加熱する。以後、伝熱媒体の循環を継続して、成膜マスク20aを所定の温度に維持する。
【0046】
図4を参照し、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら真空槽11内に基板50を搬入し、成膜マスク20aを基板50のホール輸送層の表面と対面させた状態で、ここでは成膜マスク20a上に接触して配置する。
【0047】
全てのシャッターを閉状態にしておく。全ての放出装置の加熱装置により材料容器内の有機材料をそれぞれ加熱し、材料容器内で赤色、緑色、青色のホストとドーパントの有機材料の蒸気をそれぞれ発生させる。
【0048】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、加熱装置からの熱輻射を受けても成膜マスク20aの温度上昇が抑えられる。従って、加熱装置による薄膜材料の加熱温度を従来より高く設定でき、薄膜材料の蒸発速度を大きくして、後述する成膜工程に要する時間を短縮することができる。
【0049】
(第一の位置合わせ工程)
撮像装置44により、基板50の第一の赤色基板位置合わせマーク581と、成膜マスク20aのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
【0050】
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28の相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20aとを相対移動させ、図6を参照し、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを対面させる。このとき第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域は通過部21の開口23と対面する。
【0051】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、マスク位置合わせマーク28の周囲も伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却され、隣り合う二つのマスク位置合わせマーク28間の間隔の熱膨張が抑制される。従って、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを正確に対面させることができ、従来の成膜装置110よりも成膜マスク20aと基板50との位置合わせがしやすく、短い時間で位置合わせすることができる。
【0052】
本実施例では、第一の成膜領域51を通過部21と対面させると、第二の成膜領域52の一部は成膜マスク20aの外周の外側に露出する。
成膜装置10は成膜物質を遮蔽する補助遮蔽部材60を有している。補助遮蔽部材60を、第二の成膜領域52の露出した部分と放出口161、162との間に配置して、第二の成膜領域52の露出部分を遮蔽する。
図4を参照し、磁石移動装置46bにより磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させる。
【0053】
(第一の成膜工程)
赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152のシャッター171、172を開状態にして、赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152の放出口161、162から赤色発光層のホストとドーパントの成膜物質をそれぞれ放出させる。
【0054】
放出口161、162から放出された赤色発光層のホストとドーパントの有機成膜物質は通過部21の開口23を通過して、基板50のホール輸送層の表面に共蒸着し、図7を参照し、基板50のホール輸送層の表面のうち通過部21の開口23と対面する第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域には、開口23と同じパターン形状の赤色発光層の有機薄膜が形成される。符号53Rは基板50に形成された赤色発光層の薄膜を示している。
【0055】
第二の成膜領域52は補助遮蔽部材60で遮蔽されており、成膜物質は第二の成膜領域52には到達しない。
成膜マスク20aの温度は伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、成膜物質が付着しても温度上昇が抑えられる。そのため、成膜マスク20aの熱膨張が抑制され、第一の成膜領域51に形成される薄膜53Rに位置ズレは生じない。
【0056】
また通過部21の表面は基板50の表面に密着しており、通過部21の開口23を通過した成膜物質が通過部21の表面と基板50の表面との隙間で拡散して薄膜53Rの輪郭に滲みが生じることはない。
【0057】
第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域に所定の厚みの赤色発光層の薄膜53Rを形成した後、図4を参照し、シャッター171、172を閉状態にして、放出口161、162からの蒸気の放出を停止する。
磁石移動装置46bにより磁石46aを基板50の裏面から離間させ、通過部21の表面と遮蔽部22の表面の基板50表面との密着を解除する。
【0058】
(第二の位置合わせ工程)
移動装置41により、移動前に通過部21と対面していた第一の成膜領域51が通過部21に隣接する遮蔽部22と対面するように、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させる。
撮像装置44により基板50の第二の赤色基板位置合わせマーク582と成膜マスク20aのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
【0059】
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第二の赤色基板位置合わせマーク582とマスク位置合わせマーク28との相対位置の誤差量を求め、補助移動装置45に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20aを相対移動させ、図8を参照し、第二の赤色基板位置合わせマーク582をマスク位置合わせマーク28と対面させる。このとき、基板50のうち移動前に補助遮蔽部材60と対面していた第二の成膜領域52は通過部21と対面し、移動前に通過部21と対面していた第一の成膜領域51は遮蔽部22と対面して遮蔽される。
図4を参照し、磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させる。
【0060】
(第二の成膜工程)
赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152のシャッター171、172を開状態にして、赤色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置151、152の放出口161、162から赤色発光層のホストとドーパントの有機材料の蒸気を放出させる。
【0061】
放出口161、162から放出された赤色発光層のホストとドーパントの有機成膜物質は通過部21の開口23を通過して、基板50のホール輸送層の表面に共蒸着し、図9を参照し、基板50の表面のうち通過部21の開口23と対面する第二の成膜領域52の赤色発光層の画素領域には、開口23と同じパターン形状の赤色発光層の薄膜53Rが形成される。
【0062】
第一の成膜領域51は遮蔽部22で遮蔽されており、成膜物質は第一の成膜領域51に到達しない。従って、第一の成膜領域51にさらに薄膜53Rが形成されることはない。
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に冷却されており、成膜物質が付着しても温度上昇が抑えられる。そのため、成膜マスク20aの熱膨張は抑制され、第二の成膜領域52に形成される薄膜53Rに位置ズレは生じない。
【0063】
また通過部21の表面は基板50の表面に密着しており、通過部21の開口23を通過した蒸気が通過部21の表面と基板50の表面との隙間で拡散して薄膜53Rの輪郭に滲みが生じることない。
【0064】
第二の成膜領域52の赤色発光層の画素領域に所定の厚みの赤色発光層の薄膜53Rを形成した後、図4を参照し、シャッター171、172を閉状態にして、放出口161、162からの蒸気の放出を停止する。
磁石移動装置46bにより磁石46aを基板50の裏面から離間させ、基板50の表面と通過部21の表面との密着を解除する。
【0065】
(緑色発光層成膜工程)
上述の第一の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第一の成膜領域51の緑色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第一の成膜工程と同様にして、緑色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第一の成膜領域51の緑色発光層の画素領域に所定の厚みの緑色発光層の薄膜を形成する。次いで、第二の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第二の成膜領域52の緑色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第二の成膜工程と同様にして、緑色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第二の成膜領域52の緑色発光層の画素領域に所定の厚みの緑色発光層の薄膜を形成する。
【0066】
(青色発光層成膜工程)
上述の第一の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第一の成膜領域51の青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第一の成膜工程と同様にして、青色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第一の成膜領域51の青色発光層の画素領域に所定の厚みの青色発光層の薄膜を形成する。次いで、第二の位置合わせ工程と同様にして位置あわせを行って、第二の成膜領域52の青色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させた後、第二の成膜工程と同様にして、青色発光層のホストとドーパントの有機材料が配置された放出装置から成膜物質をそれぞれ放出させ、第二の成膜領域52の青色発光層の画素領域に所定の厚みの青色発光層の薄膜を形成する。
【0067】
(基板交換工程)
図10を参照し、基板50の第一、第二の成膜領域51、52の赤色、緑色、青色発光層の画素領域にそれぞれ赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成した後、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜済みの基板50を真空槽11の外側に搬出する。
【0068】
次いで、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、別の基板50を真空槽11内に搬入し、上述の各工程を順に行って、未成膜の基板50に赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成する。
複数枚の基板50に対して上述の各工程を繰り返し、複数枚の基板50に赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを形成する。
【0069】
成膜マスク20aは伝熱媒体と同じ所定の温度に維持されており、複数枚の基板50に対して成膜工程を繰り返しても成膜マスク20aの熱による変形は抑制され、各基板50に形成される薄膜53R、53G、53Bに位置ズレは生じない。
【0070】
赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bを成膜した基板50を真空槽11の外側に搬出した後、赤色、緑色、青色発光層の薄膜53R、53G、53Bの表面に電子輸送層と電極層とを順に積層して、カラー表示装置を完成する。
【0071】
上述の第一、第二の位置合わせ工程では、真空槽11に対して成膜マスク20aを静止させた状態で基板50を移動させたが、移動前に通過部21と対面していた一の成膜領域51が通過部21に隣接する遮蔽部22と対面するように、成膜マスク20aと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させるならば、真空槽11に対して基板50を静止させた状態で成膜マスク20aを移動させてもよいし、真空槽11に対して基板50と成膜マスク20aの両方を移動させてもよい。
【0072】
上述の第一、第二の成膜工程では、放出装置151、152を真空槽11内で静止させた状態で成膜を行ったが、成膜装置10に放出装置151、152を成膜マスク20aの表面と平行な方向に移動させる放出装置移動装置を追加し、放出装置移動装置により放出装置151、152を成膜マスク20aの表面と平行な方向に移動させながら成膜を行ってもよい。この場合には、放出装置151、152を静止させた場合よりも、大型の基板50に対してより均一な膜厚で薄膜を形成できる。
【0073】
<第二例の成膜マスクの構造>
第二例の成膜マスクの構造を説明する。
図11は第二例の成膜マスク20bの平面図、図12は同B−B線切断断面図である。第二例の成膜マスク20bのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0074】
第二例の成膜マスク20bでは、第一例の成膜マスク20aに遮蔽部22とは別の遮蔽部22’が追加されている。
すなわち、第二例の成膜マスク20bでは、通過部21と遮蔽部22、22’とは一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、通過部21と遮蔽部22、22’の並びの一端と他端にはそれぞれ遮蔽部22、22’が配置されている。
【0075】
追加された遮蔽部22’には、内部に伝熱媒体が流れる流路部材25’が密着して設けられている。追加された遮蔽部22’と流路部材25’の構造は、第一例の成膜マスク20aの遮蔽部22と流路部材25の構造とそれぞれ同じであり説明を省略する。
【0076】
第二例の成膜マスク20bでは、通過部21は二つの遮蔽部22、22’の間に挟まれ、二つの遮蔽部22、22’と長手方向を密着して配置されている。そのため、通過部21は長手方向の二辺からの熱伝導により冷却又は加熱され、第一例の成膜マスク20aより冷却効率及び加熱効率が高く、通過部21の熱による変形をより効果的に抑制できるようになっている。
【0077】
第二例の成膜マスク20bは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第二例の成膜マスク20bを用いた薄膜の形成方法は、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と比べて、第一の位置合わせ工程以外は同じであり、第一の位置合わせ工程以外の各工程の説明は省略する。
第二例の成膜マスク20bを用いた薄膜の形成方法の第一の位置合わせ工程を赤色発光層の成膜を例に説明する。
【0078】
上述の準備工程を終えた後、撮像装置44により、基板50の第一の赤色基板位置合わせマーク581と、成膜マスク20bのマスク位置合わせマーク28をそれぞれ撮像する。
制御装置43は、撮像装置44の撮像結果から第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28の相対位置の誤差量を求め、移動装置41に制御信号を送って、誤差量を減少させるように基板50と成膜マスク20bとを相対移動させ、図13を参照し、第一の赤色基板位置合わせマーク581とマスク位置合わせマーク28とを対面させる。このとき第一の成膜領域51の赤色発光層の画素領域は通過部21の開口23と対面し、第二の成膜領域52は追加された遮蔽部22’と対面して遮蔽される。
【0079】
図4を参照し、磁石移動装置46bにより磁石46aを移動させて基板50の裏面と接触する位置で静止させ、通過部21の表面を基板50の表面に密着させ、次いで上述の第一の成膜工程を行う。
【0080】
本実施例では、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法の第一の位置合わせ工程とは異なり、第二の成膜領域52は追加された遮蔽部22’に遮蔽されて成膜マスク20bの外周の外側に露出しないため、補助遮蔽部材60を用いて第二の成膜領域52を遮蔽する手間を省略できる。また補助遮蔽部材60は不要となるため、成膜装置10から補助遮蔽部材60を省略でき、コストの削減になる。
【0081】
<第三例の成膜マスクの構造>
第三例の成膜マスクの構造を説明する。
図14は第三例の成膜マスク20cの平面図、図15は同C−C線切断断面図である。第三例の成膜マスク20cのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0082】
第三例の成膜マスク20cは、第一例の成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22の代わりに、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223とをそれぞれ複数個有している。各通過部211、212、213と各遮蔽部221、222、223の構造は、第一例の成膜マスク20aの通過部21と遮蔽部22の構造とそれぞれ同じであり、説明を省略する。
【0083】
通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223とは、成膜マスク20cの表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223は長手方向を密着されている。
各遮蔽部221、222、223には、内部に伝熱媒体が流れる流路部材251、252、253が密着して設けられている。流路部材251、252、253の構造は第一例の成膜マスク20aの流路部材25の構造と同じであり、説明を省略する。
【0084】
第三例の成膜マスク20cでは、成膜対象である基板の大きさが第一例の成膜マスク20aのときと同じ場合には、通過部211、212、213の幅を第一例の成膜マスク20aの通過部21より小さく形成することができる。第一例の成膜マスク20aの通過部21より通過部211、212、213の幅が小さいと、通過部211、212、213の熱容量が小さくなり、冷却効率及び加熱効率が高くなる。そのため、流路部材251、252、253内に伝熱媒体を流すことで、第一例の成膜マスク20aより通過部211、212、213の熱による変形を効果的に抑制できる。
【0085】
成膜対象である基板の大型化に伴って成膜マスク20cを大型化する場合には、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223の大きさを変えずに、数を増やせばよい。すると、大型の通過部211、212、213を製作する手間が不要となり、成膜マスク20cの大型化が容易になる。また、成膜マスク20cを大型化しても通過部211、212、213の大きさが変わらなければ、冷却効率及び加熱効率は変わらず、流路部材251、252、253内に伝熱媒体を流すことで、通過部211、212、213の熱による変形を抑制することができる。
【0086】
第三例の成膜マスク20cは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第三例の成膜マスク20cを用いた薄膜の形成方法は、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様であり、説明を省略する。
第三例の成膜マスク20cでは通過部211、212、213の幅の長さが第一例の成膜マスク20aより小さくできるので、第二の位置合わせ工程において成膜マスク20cと基板50とを移動装置41により相対移動させる移動距離は短くなり、成膜装置10を小型化できる。
【0087】
第三例の成膜マスク20cには、第二例の成膜マスク20bの遮蔽部22’と同様に別の遮蔽部が追加され、通過部211、212、213と遮蔽部221、222、223の並びの一端と他端には符号223の遮蔽部と追加された遮蔽部とがそれぞれ配置された構造も本発明に含まれる。
【0088】
<第四例の成膜マスクの構造>
第四例の成膜マスクの構造を説明する。
図16は第四例の成膜マスク20dの平面図、図17は同D−D線切断断面図である。第四例の成膜マスク20dのうち、第一例の成膜マスク20aと同じ構造の部分には同じ符号を付している。
【0089】
第四例の成膜マスク20dは、第一例の成膜マスク20aの遮蔽部22の代わりに、成膜物質を遮蔽する遮蔽部30を有しており、この遮蔽部30は複数の単位遮蔽部22a、22bで構成されている。本実施例では遮蔽部30は二個の単位遮蔽部22a、22bで構成されているが、三個以上の単位遮蔽部で構成されている場合も本発明に含まれる。
【0090】
通過部21と単位遮蔽部22a、22bとは長手方向を有し、単位遮蔽部22a、22bの長手方向の長さは、通過部21の長手方向の長さ以上にされている。また、単位遮蔽部22a、22bの幅の長さは、通過部21の幅の長さと同じに形成されている。
【0091】
各単位遮蔽部22a、22bは、成膜マスク20d表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの単位遮蔽部22a、22bは長手方向を密着され、単位遮蔽部22a、22bの並びの一端に位置する一の単位遮蔽部22aと通過部21とは、一の移動方向5に沿って長手方向を密着して並んで配置されている。
【0092】
成膜マスク20dが一の移動方向5の通過部21側に通過部21の幅の距離移動すると、開口23が位置していた場所が、通過部21に隣接する一の単位遮蔽部22aによって塞がれるように構成されている。
【0093】
単位遮蔽部22a、22bの少なくとも一個には伝熱媒体が流れる流路部材25a、25bが密着して設けられている。流路部材25a、25bの構造は第一例の成膜マスク20aの流路部材25と同じであり、説明を省略する。
【0094】
本実施例では複数の単位遮蔽部22a、22bのそれぞれに別々の流路部材25a、25bが密着して設けられているが、複数の単位遮蔽部22a、22bに共通して一個の流路部材が設けられた構造も本発明に含まれる。
【0095】
また、複数の単位遮蔽部22a、22bには、流路部材が設けられていない単位遮蔽部を含んだ構造も本発明に含まれるが、流路部材が設けられた単位遮蔽部の数が多い方が、通過部21の冷却効率及び加熱効率が高くなるため好ましい。
【0096】
第四例の成膜マスク20dでは、第一例の成膜マスク20aに比べて、流路部材25a、25bとの接触面積を大きく構成できるため、通過部21の冷却効率及び加熱効率が第一例の成膜マスク20aより高くなり、通過部21の熱による変形をより効果的に抑制できるようになっている。
【0097】
第四例の成膜マスク20dは上述の成膜装置10において第一例の成膜マスク20aの代わりに用いることができる。
第四例の成膜マスク20dを用いた薄膜の形成方法を説明する。
まず、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、準備工程を行う。
【0098】
ただし、基板50の表面に、成膜マスク20dの通過部21と同形状の成膜領域を、一の遮蔽部30が有する単位遮蔽部22a、22bの数より一個多い数予め定めておく。複数の成膜領域は、基板50の表面と平行な一の直線に沿って長手方向を密着して並んで配置する。
【0099】
また、基板50のうち、各成膜領域を通過部21と対面させたときに、マスク位置合わせマーク28と対面する位置にはそれぞれ基板位置合わせマークを設けておく。
次いで、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、第一の位置合わせ工程を行って、複数の成膜領域のうち一の成膜領域の赤色発光層の画素領域を通過部21の開口23と対面させ、第一の成膜工程を行って、通過部21の開口23と対面する一の成膜領域の赤色発光層の画素領域に赤色発光層の薄膜を形成する。
【0100】
次いで、第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、第二の位置合わせ工程を行って、移動前に通過部21と対面していた一の成膜領域が通過部21に隣接する一の単位遮蔽部22aと対面するように、成膜マスク20dと基板50とを一の移動方向5に平行に通過部21の幅の距離相対移動させた後、第二の成膜工程を行って、通過部21の開口23と対面する別の成膜領域の赤色発光層の画素領域に赤色発光層の薄膜を形成する(単位成膜工程)。
【0101】
上述の単位成膜工程を合計で、一の遮蔽部30が有する単位遮蔽部22a、22bの数と同じ回数繰り返し行って、基板50上の複数の成膜領域のすべての赤色発光層の画素領域に開口23と同じパターン形状の赤色発光層の薄膜を形成する。
赤色発光層の成膜工程と同様にして、基板50上の複数の成膜領域のすべての緑色、青色発光層の画素領域に緑色、青色発光層の薄膜を順に形成する。
第一例の成膜マスク20aを用いた薄膜の形成方法と同様にして、基板交換工程と上述の各工程とを繰り返して複数枚の基板に赤色、緑色、青色発光層の薄膜を形成する。
【0102】
第四例の成膜マスク20dには、第二例の成膜マスク20bの遮蔽部22’と同様に別の遮蔽部が追加され、通過部21と遮蔽部30の並びの一端と他端には符号30の遮蔽部と追加された遮蔽部とがそれぞれ配置された構造も本発明に含まれる。
【0103】
また、第四例の成膜マスク20dには、第三例の成膜マスク20cと同様に、通過部21と遮蔽部30とをそれぞれ複数個有し、複数の通過部21と遮蔽部30とは、成膜マスク20dの表面と平行な一の移動方向5に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う通過部21と遮蔽部30は互いに密着された構造も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
5……一の移動方向
10……成膜装置
11……真空槽
12……真空排気装置
151、152……放出装置
161、162……放出口
20a、20b、20c、20d……成膜マスク
21、211、212、213……通過部
22、22’、221、222、223、30……遮蔽部
22a、22b……単位遮蔽部
23……開口
25、25’、251、252、253、25a、25b……流路部材
41……移動装置
50……基板
51……第一の成膜領域
52……第二の成膜領域
53R、53G、53B……赤色、緑色、青色発光層の薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、
前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、
を有する成膜マスクであって、
前記通過部と前記遮蔽部とは長手方向を有し、前記遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、
前記遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、
前記通過部と前記遮蔽部とは、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、
前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記遮蔽部によって塞がれるように構成され、
前記遮蔽部には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスク。
【請求項2】
複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、
前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、
を有する成膜マスクであって、
前記遮蔽部は複数の単位遮蔽部で構成され、
前記通過部と前記単位遮蔽部とは長手方向を有し、前記単位遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、
前記単位遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、
各前記単位遮蔽部は、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの前記単位遮蔽部は長手方向を密着され、
前記単位遮蔽部の並びの一端に位置する一の前記単位遮蔽部と、前記通過部とは、前記一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、
前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記通過部に隣接する一の前記単位遮蔽部によって塞がれるように構成され、
前記単位遮蔽部の少なくとも一個には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスク。
【請求項3】
前記通過部と前記遮蔽部とをそれぞれ複数個有し、
前記通過部と前記遮蔽部とは、前記一の移動方向に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う前記通過部と前記遮蔽部は密着された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の成膜マスク。
【請求項4】
前記通過部と前記遮蔽部の並びの一端と他端にはそれぞれ前記遮蔽部が配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の成膜マスク。
【請求項5】
真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に露出する放出口から成膜物質を放出する放出装置と、
前記放出口と対面する位置に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の成膜マスクと、
前記成膜マスクから見て前記放出口とは逆側に前記成膜マスクと対面して配置された基板と、前記成膜マスクとを前記一の移動方向に平行に相対移動させる移動装置と、
を有する成膜装置。
【請求項6】
真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、
請求項1記載の成膜マスクを用いて、
前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、
前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成し、
移動前に前記通過部と対面していた前記一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、
前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する薄膜の形成方法。
【請求項7】
真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、
請求項2記載の成膜マスクを用いて、
前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、
前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成した後、
移動前に前記通過部と対面していた一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記単位遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する工程を、一の前記遮蔽部が有する前記単位遮蔽部の数と同じ回数繰り返す薄膜の形成方法。
【請求項1】
複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、
前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、
を有する成膜マスクであって、
前記通過部と前記遮蔽部とは長手方向を有し、前記遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、
前記遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、
前記通過部と前記遮蔽部とは、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、
前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記遮蔽部によって塞がれるように構成され、
前記遮蔽部には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスク。
【請求項2】
複数の開口が形成され、成膜物質が前記開口を通過する通過部と、
前記成膜物質を遮蔽する遮蔽部と、
を有する成膜マスクであって、
前記遮蔽部は複数の単位遮蔽部で構成され、
前記通過部と前記単位遮蔽部とは長手方向を有し、前記単位遮蔽部の長手方向の長さは、前記通過部の長手方向の長さ以上にされ、
前記単位遮蔽部の幅の長さは、前記通過部の幅の長さと同じに形成され、
各前記単位遮蔽部は、前記成膜マスク表面と平行な一の移動方向に沿って一列に並んで配置され、隣り合う二つの前記単位遮蔽部は長手方向を密着され、
前記単位遮蔽部の並びの一端に位置する一の前記単位遮蔽部と、前記通過部とは、前記一の移動方向に沿って長手方向を密着して並んで配置され、
前記成膜マスクが前記一の移動方向の前記通過部側に前記通過部の幅の距離移動すると、前記開口が位置していた場所が、前記通過部に隣接する一の前記単位遮蔽部によって塞がれるように構成され、
前記単位遮蔽部の少なくとも一個には内部に伝熱媒体が流れる流路部材が密着して設けられた成膜マスク。
【請求項3】
前記通過部と前記遮蔽部とをそれぞれ複数個有し、
前記通過部と前記遮蔽部とは、前記一の移動方向に沿って一列に交互に並んで配置され、隣り合う前記通過部と前記遮蔽部は密着された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の成膜マスク。
【請求項4】
前記通過部と前記遮蔽部の並びの一端と他端にはそれぞれ前記遮蔽部が配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の成膜マスク。
【請求項5】
真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に露出する放出口から成膜物質を放出する放出装置と、
前記放出口と対面する位置に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の成膜マスクと、
前記成膜マスクから見て前記放出口とは逆側に前記成膜マスクと対面して配置された基板と、前記成膜マスクとを前記一の移動方向に平行に相対移動させる移動装置と、
を有する成膜装置。
【請求項6】
真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、
請求項1記載の成膜マスクを用いて、
前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、
前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成し、
移動前に前記通過部と対面していた前記一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、
前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する薄膜の形成方法。
【請求項7】
真空排気された真空槽内に放出口から成膜物質を放出させ、前記放出口と対面する位置に配置された基板の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、
請求項2記載の成膜マスクを用いて、
前記流路部材の内部に伝熱媒体を流しながら、
前記成膜マスクを前記基板の表面と対面させた状態で、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する一の成膜領域に薄膜を形成した後、
移動前に前記通過部と対面していた一の成膜領域が前記通過部に隣接する前記単位遮蔽部と対面するように、前記成膜マスクと前記基板とを前記一の移動方向に平行に前記通過部の幅の距離相対移動させ、前記放出口から成膜物質を放出させ、前記基板表面のうち前記通過部と対面する別の成膜領域に薄膜を形成する工程を、一の前記遮蔽部が有する前記単位遮蔽部の数と同じ回数繰り返す薄膜の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−149329(P2012−149329A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10821(P2011−10821)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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