成膜層構造体及びその製造方法並びにサーマルヘッド及びその製造方法
【課題】基体上の凸部の段差に真空成膜層の不連続部があっても気泡の発生がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体、及びその製造法、並びに、高性能で高信頼性のサーマルヘッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体が提供される。
【解決手段】底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜層構造体及びその製造方法、並びに、真空成膜腐食防止層と塗布成膜保護層とを有するサーマルプリンタヘッド(サーマルヘッド)及びその製造方法に関し、例えば、真空成膜法と塗布成膜法とを組み合わせて形成される成膜層構造体及びその製造方法、並びに、真空成膜腐食防止層と塗布成膜保護層とを有するサーマルプリンタヘッド(サーマルヘッド)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造コストの削減を目的に、電子デバイスにおける種々の成膜プロセスを、真空成膜法(スパッタ、CVDなど)から、塗布成膜法(スクリーン印刷、スピンコートなど)へ置き換える取り組みがなされている。
【0003】
塗布成膜法としては、スクリーン印刷(メッシュ版、メタル版)、スピンコート、バーコートなどが挙げられるが、露光現像プロセスを用いることなくパターン形成が可能であることから、スクリーン印刷が多用される。
【0004】
これらの塗布成膜法は低コストであるものの、それによって製作された膜は真空成膜法によって製作された膜に比べ性能(強度、信頼性、耐久性)が劣るため、成膜プロセスの全てを塗布成膜法とすることは困難であり、真空成膜法と塗布成膜法を組み合わせたハイブリット構造になることが多い。
【0005】
例えば、特許文献1などには、サーマルヘッドの製造法において、真空成膜法により腐食防止のための絶縁層を形成し、その上に、塗布成膜法であるスクリーン印刷によりガラ
サーマルヘッドにおいて、通電することにより発熱する抵抗発熱体とそれに接続された電極とで一つの回路を形成している。抵抗発熱体はTaSiO2のような金属酸化物からなり、電極は例えばAlからなる金属で形成される。電極の電気抵抗は、抵抗発熱体の電気抵抗より低くすることが必要であるため、一般に電極は厚く形成される。このため、サーマルヘッドにおいては、電極が基板上に凸部を形成し、この凸部の端部は段差を有する。
【0006】
このように、基板上に凸部を形成する回路層の上に真空成膜法であるスパッタリング法で絶縁層を形成した場合、この凸部の段差部分で絶縁層が不連続となる。これは、スパッタリングにより、基板表面から及び凸部側面から、それぞれ別に膜が成長し、両者がぶつかる界面が不連続になるためである。
【0007】
一方、電子デバイスに用いられる塗布成膜材料としては、一般にガラスペースト、シロキサン樹脂、ポリシラザン樹脂などが挙げられる。いずれも材料中に有機物を含み、加熱もしくは焼成により、これら有機物を蒸発もしくは焼成させ、無機物を主成分とした膜を形成するものである。また、塗布材料中に有機成分を含まないものであっても、加熱時の成膜反応により、H2O、H2、NH3などの反応ガスが発生することがある。たとえば、(Si-OH)n→SiO2+H2O の反応における、H2Oなどである。
【0008】
上記のように、基板の上に凸部を形成する回路層の上に真空成膜法であるスパッタリングにより絶縁層を形成し、さらにその上に塗布成膜法により保護層を形成した場合、凸部の段差に起因してスパッタ層に不連続部が発生し、その不連続部に、塗布材料の加熱・焼成で発生するガスが堆積・残留し、気泡が発生した。この気泡は、塗布成膜保護層の膜強度および信頼性を低下させるという問題を生じさせた。
【0009】
以上、サーマルヘッドを一例にして述べたように、従来の成膜層構造体及びその製造方法では、基板上の凸部の段差部において真空成膜層に不連続部が発生し、この部分の塗布成膜層中に気泡が発生し、塗布成膜層の性能と信頼性を低下させていた。
【特許文献1】特許第3411133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基体上の凸部の段差部に真空成膜層の不連続部があっても気泡の発生がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体、及びその製造方法、並びに、高性能で高信頼性のサーマルヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、基体の上に底面と側面とを有する段差を形成する工程と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように第1の層を形成する工程と、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させるように、前記第1の層の上に第2の層を選択的に形成する工程と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、基体と、前記基体の上に設けられた電極と、前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に選択的に形成され、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させる保護層と、を備えたことを特徴とするサーマルヘッドが提供される。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、基体の上に電極を形成する工程と、前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように絶縁層を形成する工程と、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させるように、前記絶縁層の上に保護層を選択的に形成する工程と、を備えたことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基体上の凸部の段差部に真空成膜層の不連続部があっても気泡の発生がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体、及びその製造方法、並びに、高性能で高信頼性のサーマルヘッド及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す模式図である。 図1に表したように、第1の実施形態に係わる成膜層構造体100においては、基板2の上に、凸部150が設けられている。凸部150の両側には段差Sが形成されている。段差Sは、底面S1と、側面S2と、を有する。図1に表した具体例においては、底面S1は基板2の表面であり、側面S2は凸部150の側壁に対応する。凸部150の上には、凸部150の両側に形成された段差Sの部分で不連続部180を有する真空成膜層(第1の層)160がある。さらに、真空成膜層160の上に、不連続部180の一部を露出するように塗布成膜層(第2の層)170(塗布成膜保護層)が形成されている。このように、本発明の第1の実施形態の成膜層構造体100においては、不連続部180の一部が露出している。この構造により、不連続部180を起因とした気泡が塗布成膜層170中に形成されることがない。この効果について、以下、第1の実施形態に係わる第1の実施例を参照して、更に説明する。
【0018】
(第1の実施例)
図2は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の素子構造を例示する部分断面図である。
また、図3は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の部分斜視図である。
【0019】
本実施例のサーマルヘッド1においては、基板2が設けられている。基板2の材料としては、絶縁性を有する、例えば、アルミナからなるアルミナセラミック基板が用いられる。基板2の上面には、例えば、水ガラスから形成されたガラス層3が設けられている。ガラス層3の上面の一部には、一方向に延びるかまぼこ状(semi-cylindrical)部3aが形成されている。
【0020】
また、ガラス層3上には、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが一組の回路となり、それが略直線上に複数個並ぶように設けられている。この抵抗発熱体4は、例えば、Ta−SiO2からなる薄膜で形成することができ、例えば、0.05μmの厚さである。また、電極5aと5bは、例えば、Alを主成分とする材料で形成することができ、例えば、0.75μmの厚さである。
【0021】
さらに、ガラス層3、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bを覆うように、腐食防止層(絶縁層)6及び保護層7が設けられている。保護層7の形状は、ガラス層3の形状を反映しており、ガラス層3のかまぼこ状部3aに対応する領域では、保護層7もかまぼこ状部7aを形成している。腐食防止層6は、酸化物、窒素化物及びそれらの混合物から適切に選択された材料により構成され、真空成膜法であるスパッタリング法によって、例えば、厚さ1.4μmに形成される。また、保護層7は、ガラスフリットとバインダー及び溶剤からなるガラスペーストを塗布し、焼成することにより、例えば、厚さは8μmに形成される。腐食防止層6は真空成膜層160に相当し、保護層7は塗布成膜層170に相当する。
【0022】
以下、第1の実施例の成膜層構造体101を具備したサーマルヘッド1におけるサーマルヘッド1と駆動回路との接続構成について、図3を参照しつつ説明する。
基板2上には、ドライバIC(回路素子)15が実装されており、このドライバIC15の端子には、電極5aにおける抵抗発熱体4に接続されていない側の端部が接続されている。例えば、4本の電極5aが1個のドライバIC15に接続されている。さらに、基板2におけるドライバIC15側の側方には、樹脂基板31が設けられており、基板2の上面及び下面とそれぞれ同一平面上にある。樹脂基板31上には、複数本の配線層32が形成されており、この配線層32がドライバIC15における電極5aが接続されていない端子に接続されている。
【0023】
さらにまた、基板2及び樹脂基板31上には、ドライバIC15、並びに電極5a及び配線層32におけるドライバIC15との接続部分を覆うように、樹脂からなるエンキャップ33が設けられており、このエンキャップ33を覆うように、例えば、樹脂板が折り曲げられて成型されたICカバー34が設けられている。一方、基板2及び樹脂基板31の下面には、ヒートシンク35及びコネクタ36が連結されている。コネクタ36の端子は、配線層32に接続されている。
【0024】
以上の如く構成されたサーマルヘッド1の動作について図2を参照しつつ説明する。
保護層7のかまぼこ状部7aに対応する部分の上方にローラ11が配置され、このローラ11と保護層7のかまぼこ状部7aとの間にインクリボン12及びプリント用紙13が挟み込まれる。インクリボン12はプリント用紙13を介してローラ11によりかまぼこ状部7aに対して押圧される。ここで、ローラ11が回転すると、インクリボン12及びプリント用紙13はサーマルヘッド1に対して移動し、インクリボン12はかまぼこ状部7aに対して摺動する。
【0025】
この状態で、ドライバIC15が、コネクタ36を介して入力された信号に基づいて、選択的にパルス電流を、電極5a、抵抗発熱体4及び電極5bからなる経路に流すと、このパルス電流は、かまぼこ状部7a直下の抵抗発熱体4内を流れ、抵抗発熱体4が発熱する。この熱が、腐食防止層6及び保護層7内を伝導してインクリボン12におけるかまぼこ状部7aに対する接触部分に伝わり、インクリボン12中のインク成分がプリント用紙13に転写される。これにより、プリント用紙13にインク層14が形成され、印刷される。
【0026】
以下に、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の詳細な素子構造を図4を用いて説明する。
図4(a)は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の部分的な構造を例示する斜視図である。
図4(a)に表したように、基板2の上にガラス層3が設けられ、その上に抵抗発熱体4及び電極5a、及び5bが設けられている。なお、図4(a)では、説明の都合上、真空成膜層160(腐食防止層6)及び塗布成膜層170(保護層7)は省略されている。図4(a)に表したように、電極5aは、パッド部511及び521並びに電極配線部512及び522で構成されており、パッド部521、電極配線部512、抵抗発熱体4、電極5b、抵抗発熱体4、電極配線部522、パッド部521がそれぞれ電気的に接続され、一つの回路を形成している。このとき、例えば、電極5a及び5bの厚さは0.75μmであり、抵抗発熱体4の厚さは0.05μmであるため、抵抗発熱体4だけの部分の段差はあまり大きくなく、抵抗発熱体4と電極5a及び5bが重なった部分の段差が大きく、抵抗発熱体4と電極5a及び5bが重なった部分が実質上の凸部150となる。
【0027】
さらに、このサーマルヘッド1の断面構造を説明する。
図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図である。図4(b)に表したように、基板2の上に抵抗発熱体4及び電極5bにより凸部150が形成されている。例えば、電極5bの厚さは0.75μmであり、抵抗発熱体4の厚さは0.05μmで、また、電極5b及び抵抗発熱体4の線幅とピッチの一例を示すと、例えば線幅20μm、ピッチ35μmである。これら抵抗発熱体4及び電極5bの上に真空成膜層160(腐食防止層6)が形成されている。この真空成膜層160は、例えば、スパッタリング法により形成されたSiON膜であり、例えば、1.4μmの厚さである。さらに、この上に塗布成膜法による塗布成膜層170(保護層7)が形成されている。そして、凸部150の段差の真空成膜層160には、不連続部180が形成されている。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。
図5は、真空成膜層160の不連続部180部分の断面SEM写真であり、図5に表したように、真空成膜層160中に凸部150の端部から不連続部180が形成されている。これは、スパッタリング成膜中に、2つの不連続な表面すなわち、基板表面及び凸部150の側面から、それぞれ別に膜が成膜され、基板表面から成長した真空成膜層184と凸部の側面から成長した真空成膜層185が突き当たる部分において不連続界面183が発生するためである。図5に表したように、この不連続界面183には微小な隙間や微小な凹凸が形成されている。この不連続部180は、この上に形成される塗布成膜層170の形成中にガスを集めるトラップとなり、結果として気泡の核となり、気泡発生の原因となる。
【0029】
図6は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の製造方法を示すフローチャート図である。また、図7及び図8は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図及び平面図である。なお、図7は、図4及び図8のA−A線の断面に対応している。
【0030】
まず、図7(a)に示すように、凸部150を形成する工程S1では、基板2上に、例えば、水ガラスを塗布し焼成して、一方向に延びるかまぼこ状部3aを有するガラス層3を形成し、この後、スパッタリング法により、例えば、Ta−SiO2からなり厚み0.05μmである抵抗発熱体4を形成する。さらに、抵抗発熱体4の上に、例えば、Alからなり厚み0.75μmである電極5a及び5bを形成し、パターニングを行って、抵抗発熱体4、電極5a及び5bを形成する。図8(a)に示すように、抵抗発熱体4と電極5a及び5bは一組の回路を構成し、それが略直線状に複数個並ぶように設けた。この電極5a及び5bが凸部150となる。
【0031】
次に、図7(b)に示すように、真空成膜工程S2では、腐食防止層6(真空成膜層160に相当する)として、SiSON膜をスパッタ法により、1.4μmの厚さで成膜する。また、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bとの電気的接続のためのコンタクトホール(スルーホール)10を、フォトリソグラフィとエッチングにより、所定の場所に設ける。
【0032】
次に、図7(c)、図8(c)に示すように、塗布成膜層形成工程S3では、真空成膜層160の上に、ガラス保護層(保護層)7(塗布成膜層170に相当する)を形成した。この際、電極5a、電極5bの全ての凸部150において、真空成膜層160の不連続部180の一部が露出されるようなパターンで形成した。具体的には、αテルピネオールを主成分とする溶剤と、B2O3等を成分とする公知のガラスフリットを固形分濃度で75重量%、及び、エチルセルロースを主成分とする有機ビヒクル系のバインダを固形分濃度で25重量%混合させ、フィラーを含有しないガラスペーストを製作し、これを、スクリーン印刷法により、図8(c)に示す塗布成膜層170の形状にスクリーン印刷した。この後、430℃30分加熱処理することにより、膜厚8μmの塗布成膜層170を形成した。このようにして、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1を得た。
【0033】
図9は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の顕微鏡写真である。図9は、サーマルヘッドの電極5b部分の光学顕微鏡写真であり、塗布成膜層形成工程S3後の状態を示している。図9中の左部分が塗布成膜層170を有する領域であり、それ以外は塗布成膜層170を有しない領域である。図9のほぼ中央に位置する部分には、凸部150に対応した真空成膜層160の不連続部180の露出部181が示されている。図9に示すように、本実施例の成膜層構造体101においては、塗布成膜層170中に気泡は発生しなかった。
【0034】
(第1の比較例)
以下、第1の比較例を説明する。第1の比較例は、上に述べた第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1において、電極5bによる凸部150の全てを覆うように、すなわち凸部150に対応した真空成膜層160の不連続部180の全てを覆うように、塗布成膜層170を形成したものである。
【0035】
図10及び図11は、第1の比較例の成膜層構造体201を有するサーマルヘッドの断面図及び平面図である。第1の比較例では、図10(c)及び図11(c)に示すように、電極5aの領域においては、電極5aの凸部150による不連続部180の一部は露出しているが、電極5bの領域においては、電極5bの凸部150による不連続部180の全てが塗布成膜層170に覆われた構造となっている。
【0036】
このように、電極5bの領域で、凸部150に対応する真空成膜層160の不連続部180の全てが塗布成膜層170で被覆された第1の比較例の成膜層構造体201は、塗布成膜層170中に気泡が発生した。
【0037】
図12(a)は第1の比較例の成膜層構造体201の光学顕微鏡写真である。図12(a)は、電極5bの凸部150部を拡大した光学顕微鏡写真であり、図12(a)で表したように、第1の比較例の成膜層構造体201では多数の気泡190が発生した。図12(b)は、図12(a)のB−B線断面のSEM写真である。図12(b)に表したように、塗布成膜層170中に気泡190が発生しており、その場所は、電極5bによる凸部150の段差に相当する不連続部180の上であった。
【0038】
図5に示したように、電極5bからなる凸部150の段差には、真空成膜層160中に不連続部180が発生する。この不連続部180における不連続界面183に、微小な隙間や微小な凹凸が形成されていると考えられ、この不連続部180が、塗布成膜層170の形成中にガスを集めるトラップとなり、または、気泡の核となり、結果として気泡190の発生の原因となったものと考えられる。
【0039】
上記のように、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101では気泡190が発生せず、第1の比較例の成膜層構造体201では気泡190が発生した機構は以下のように推測される。
【0040】
図13(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101の構造を示す模式図、13(b)は、第1の比較例の成膜層構造体201の構造を示す模式図である。
図13(a)に示すように、第1の実施例の成膜層構造体101においては、基板2の上に凸部150が形成され、その段差において真空成膜層160の不連続部180が形成される。そして、この上に塗布成膜層170が形成される際、塗布成膜層170中に発生したガス191は、図中の矢印192で示されるように、不連続部180の塗布成膜層170で覆われた部分182から露出部181に向けて、不連続部180の界面を経由して外界に解放される。このため、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101では、気泡が発生しない。一方、第1の比較例においては、図13(b)に示されるように、電極5bからなる凸部150の全ての不連続部180が塗布成膜層170により被覆されている。このため、塗布成膜層170中に発生したガス191は解放される経路が無く、塗布成膜層170の焼成形成中に不連続部180を核として大きく成長し、これが気泡190となる。このようにして第1の比較例においては気泡が発生した。
【0041】
なお、第1の比較例では、図10(c)及び図11(c)に示すように、電極5bの領域においては、電極5bによる凸部150に対応した不連続部180は塗布成膜層170で全て被覆されていたが、電極5aの領域では、電極5aによる凸部150に対応した不連続部180は塗布成膜層170から露出した部分を有している。このため、第1の比較例においても、電極5aの領域では、塗布成膜層170中に気泡は発生せず、上記のように不連続部180の全てが塗布成膜層170によって被覆された電極5bの領域で気泡が発生した。このことは、上に述べた気泡の発生の機構、及び第1の実施例の成膜層構造体101における気泡消失の機構が裏付ける。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる成膜層構造体及びその製造方法について説明する。
第1の実施形態においては、真空成膜層160の一部が塗布成膜層170から露出されていたが、第2の実施形態では、露出した真空成膜層160をさらにオーバーコート層(第3の層)で被覆した構造により、信頼性をさらに高めたものである。以下、第2の実施形態に係わる第2の実施例について説明する。
【0043】
(第2の実施例)
図14は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102の製造方法のフローチャート図である。図15及び図16は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図及び平面図である。
図14に示すように、本発明の第2の実施例においては、塗布成膜層の形成工程S3の後に、さらにオーバーコート層を形成する工程S4を有している。
【0044】
図15(d)及び図16(d)に示すように、露出されていた不連続部180の上にオーバーコート層172が形成された。本実施例の場合、このオーバーコート層172は、塗布成膜層170と同じ方法で形成した。
【0045】
図17は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102を有するサーマルヘッド1の光学顕微鏡写真である。図17は、オーバーコート層172の形成後の顕微鏡写真であり、図17中の左側部分が、塗布成膜層170がある領域であり、中央部が塗布成膜層170が無い不連続部180の露出部181の領域であり、右側が不連続部180の露出部181の上に形成されたオーバーコート層172の領域である。
図17から分かるように、第2の実施例の成膜層構造体102では、オーバーコート層172を設けた後も気泡の発生がなかった。
【0046】
第2の実施例の成膜層構造体102において、真空成膜層160の不連続部180の露出部181の全てを被覆するように、焼成形成中にガスを発生する材料を用いてオーバーコート層172を設けても気泡が発生しないのは、以下のような機構によるものと考えられる。
【0047】
図18は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102の構造を示す模式図である。図18に表したように、基板2の上に凸部150が形成され、その段差において真空成膜層160の不連続部180が形成される。そして、不連続部180の一部を露出するように塗布成膜層170が形成される。さらに、露出された不連続部180の上にオーバーコート層172が形成されている。この際、オーバーコート層172中に発生したガス191は、矢印192で示されるように、真空成膜層160の不連続部180及び、塗布成膜層170とオーバーコート層172の界面を経由して外界に解放される。このように、発生したガス191はオーバーコート層172中に留まることがないため気泡が発生しない。このように、第2の実施例では、ガスが解放される経路を有しているため、オーバーコート層172としてガスが発生する材料を用いても、気泡が発生しない成膜層構造体102が得られる。
なお、図17に示したように、塗布成膜層170とオーバーコート層172は重なり部分を有するように形成することができ、真空成膜層160が露出している部分がないため、非常に高い信頼性を得ることができる。
【0048】
なお、成膜層構造体をサーマルヘッドに応用した場合、塗布成膜層170は、印刷対象物である紙と接触するため、平坦性や耐摩耗性などの点で、厳しい性能が要求される。このため、塗布成膜層170の材料として各種の制約を受ける。このような場合に、塗布成膜層170とは別にオーバーコート層172を設ける構造は、効果を発現する。すなわち、高い平坦性や高い耐摩耗性を要求される塗布成膜層170とは別にオーバーコート層172を設けることができ、これにより、平坦性や耐摩耗性などの機械的性能や熱的性能に関する要求とは別の要求性能を重視したオーバーコート層用の材料選択が可能となる。
【0049】
なお、この真空成膜層160中の不連続部180は、図4に例示した電極5a及び5bによる凸部150に形成され、ガラス層3のかまぼこ状部3aに形成されることは実質上ない。すなわち、不連続部180が形成されるのは、2つの不連続な界面から別々に成長した真空成膜層160が突き当たる部分で発生するものであり、ガラス層3のかまぼこ状部3aは連続的になだらかに凹凸が変化する形状であるので、不連続部が実質上発生しない。また、図4に例示するように、かまぼこ状部3aの上の、電極を有していない抵抗発熱体4だけの部分は、抵抗発熱体4の膜厚が薄いため、実質上の凸部とはならず、この部分では、この上に形成される塗布成膜層170の形成中に気泡を発生することが事実上ない。したがって、本発明においては、図4に示す、電極5a及び5bに示す実質上の凸部に形成された不連続部180の一部を露出する。
【0050】
上に述べた本発明の第1及び第2の実施例においては、電極5a部の電気的接続のため、電極aのパッド部511、521並びに電極配線部512及び522の少なくとも一部は、塗布成膜層170が形成されず、真空成膜層160の一部は露出されている。従って、上に述べた第1及び第2の実施例において、特に問題となるのは電極5b部による凸部150の段差の不連続部180であり、第1及び第2の実施例のように、電極5bも含めた全ての凸部150において不連続部180を露出して塗布成膜層170を形成する。
【0051】
以上、電極5bにより形成される凸部150の段差に起因した真空成膜層160の不連続部180による気泡の発生について述べたが、基板上に凹部がある場合での気泡発生も本発明によれば解決できる。すなわち、以上述べた本発明の成膜層構造体の説明において、凸部は凹部と読み替えることができる。
【0052】
以下、基板上に凹部を有する場合についての本発明の第3の実施の形態及び、比較のために第2の比較例について述べる。
(第2の比較例)
ます、第2の比較例として、凹部を有する成膜層構造体を例にして、凹部がある成膜層構造体において気泡が発生する現象を説明する。
図19(a)は、第2の比較例の成膜層構造体202の構造を示す断面図である。図19(a)に示すように、基板2の上に抵抗発熱体4があり、その上に電極5aが形成されており、この電極5aにより凹部151が形成されている。この例の場合、凹部151は直径0.5mmの円形である。この上に真空成膜層160が形成されており、上記凹部151の段差に不連続部180を有している。この上にさらに塗布成膜層170が形成されている。第2の比較例においては、この凹部151の全面を被覆するように塗布成膜層170が形成されている。
【0053】
図19(b)は、第2の比較例の成膜層構造体202の構造を示す平面図である。図19(b)に示すように、第2の比較例においては、電極5aによる凹部151の真空成膜層160の不連続部180の全てが塗布成膜層170によって被覆されている。
【0054】
図19(c)は、第2の比較例の成膜層構造体202の光学顕微鏡写真である。(図19(a)は、図19(c)のC−C線断面図である)。図19(c)に示すように、第2の比較例では、不連続部180において気泡190が発生している。図19(d)は、第2の比較例の成膜層構造体202の光学顕微鏡写真であり、図19(c)の一部153を拡大した顕微鏡写真である。図19(d)に示したように、不連続部180において、多くの気泡190が発生している。このように、第2の比較例の基板2の上に凹部151を有する従来の成膜層構造体202では、気泡が発生した。
【0055】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図20(a)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体103を有するサーマルヘッドの構造を示す断面図である。また、図20(b)は、本発明の第3の実施形態に係わる成膜層構造体103の構造を示す平面図である(真空成膜層160は図示せず)。図20(a)及び(b)に示すように、第3の実施形態に係わる成膜層構造体103は、凹部151の段差の真空成膜層160の不連続部180の一部が露出するように塗布成膜層170が形成されている。このような構造を有する本発明の第3の実施形態の成膜層構造体103は、気泡190が発生しなかった。この場合に気泡190が発生しない機構は、すでに図13を用いて説明した通りである。
【0056】
このように、基板2の上の凸部150と凹部151とは相対的なものであり、基板2の上の凸部150または凹部151によって生じる段差には真空成膜層160の不連続部180が同様に形成され、これにより同様に塗布成膜層170に気泡190が発生する。この両者に対して本発明は有効であり、本発明において、凸部150と凹部151とは互いに読み替えることができる。
【0057】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図21は、本発明の第4の実施の形態に係わる成膜層構造体104を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図である。図21(d)に示すように、塗布成膜層170から露出された真空成膜層160の不連続部180の上に、オーバーコート層172が形成されている。このオーバーコート層172は、塗布成膜層170とは別の材料で形成されており、具体的には、スルーホール10を介して電極5aと電気的接続を行うボンディングワイヤー158を保護するために設けられる、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂により形成される。このような構造の成膜層構造体100においては、塗布成膜層170及びオーバーコート層172中には気泡が発生せず、これにより、気泡がなく、信頼性の高い成膜層構造体104及びそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0058】
(第5の実施の形態)
さらに、本発明の第5の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図22は、本発明の第5の実施の形態に係わる成膜層構造体105を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。図22(c)に表したように、塗布成膜層170は、電極5bの上部において、真空成膜層160の不連続部180の一部を露出し、隙間173ができるように、複数の領域で形成されている。この第5の実施形態では、塗布成膜層170の隙間173は細い幅で形成されているため、電極5bを実質的に充分保護することができ、かつ、塗布成膜層170中のガス191の解放経路を確保することができ、気泡の無い成膜層構造体105およびそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0059】
(第6の実施の形態)
さらに、本発明の第6の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図23は、本発明の第6の実施の形態に係わる成膜層構造体106を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。図23(c)に表したように、塗布成膜層170が、電極5bの上部において、真空成膜層160の不連続部180の一部を露出し、隙間173ができるように、複数の領域で形成され、さらに、図23(d)に示すように、不連続部180の露出部の上に、オーバーコート層172が形成されている。このオーバーコート層172は、スルーホール10部のボンディングワイヤー158を保護するために設けられる、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂により形成されている。この場合も、塗布成膜層170及びオーバーコート層172中には気泡が発生せず、かつ信頼性が非常に高い成膜層構造体106およびそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0060】
以上にように、本発明の成膜層構造体及びその製造方法によれば、真空成膜層中の不連続部の少なくとも一箇所を露出するようにスクリーン版のパターンを変更しさえすればよく、その他の製造条件の改良(真空成膜方法の改良、塗布成膜の焼成方法の改良など)の必要がない。このため、気泡がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体が安価に得られる。
【0061】
なお、本発明において、塗布成膜層170として用いられる材料には、各種のものを使用することができる。例えば、ガラスペーストを用いた場合には、それに用いられるガラスフリットとして、各種の公知のものが使用でき、酸化物、窒化物など、または、これらの混合物から適宜選択して用いることができる。また、有機ビヒクルのバインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体やイソデシルメタアクリレートなどの各種のアクリル系樹脂、またはこれらの混合物から適宜選択して用いることができる。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル1,3−ヒドロキシペンチルイソブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトライソプロピルオルソチタネート、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエタノール、α−テルピネオール、イソプロピルアルコール、2−プロパノール、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンなどの各種のアルコール系、グリコエーテル系、炭化水素系、ケトン、エステルなど各種の有機溶剤またはこれらの混合物から適宜選択される。また、ガラスペースト中にAl2O3などからなるフィラーを含んでいる場合は、塗布成膜層170(保護層7)の耐摩耗性がさらに向上する。
【0062】
また、上記の真空成膜層160には、各種のものが使用できる。例えば、Al2O3、AlN、SiONの他、SiO2、ZrO2、Ta2O5、Si3N4、SiAlONなどの酸化物及び窒化物、並びにこれらの混合物から適切に選択される。また、上記の実施例で述べたコンタクトホール10は、フォトリソグラフィとエッチング技術によって形成することができる。このエッチングはRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングを用いてもよいし、ウエットエッチングでも良い、また、エッチング法ではなく、リフトオフ法により形成しても良い。
【0063】
なお、上記の実施例において、サーマルプリンタヘッドをインクリボン方式のプリンタに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、インクリボンを用いない感熱式プリンタに適用してもよい。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、上述した各具体例に限定されるものではない。他の構造を持つ成膜層構造体にも使うことができる。また、実施形態及び実施例の説明で述べられた各種の材料や・製造条件に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより、本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に含まれる。
【0065】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたのも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に包含される。
【0066】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの素子構造を例示する部分断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの部分斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの部分的な構造を模式的に例示する斜視図である。 (b)は、図4(a)のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における平面図である。
【図9】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真である。
【図10】第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図11】第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程に各段階における平面図である。
【図12】(a)は、第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真図である。(b)は、図12(a)のB−B線断面のSEM写真である。
【図13】(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。(b)は、本発明の第1の比較例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図14】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。
【図15】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図16】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における平面図である。
【図17】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真である。
【図18】本発明の第2の実施例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図19】(a)は、第2の比較例の成膜層構造体の構造を示す断面図である。(b)は、第2の比較例の成膜層構造体の構造を示す平面図である。(c)は、第2の比較例の成膜層構造体の光学顕微鏡写真である。(d)は、第2の比較例の成膜層構造体の光学顕微鏡写真である。
【図20】(a)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す断面図である。(b)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す平面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図22】本発明の第5の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図23】本発明の第6の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 サーマルヘッド
2 基板
3 ガラス層
4 抵抗発熱体
5a、5b 電極
511、521 電極のパッド部
512、522 電極配線部
6 腐食防止層
7 保護層
100、101、102、103、104、105、106 成膜層構造体
150 凸部
151 凹部
160 真空成膜層
170 塗布成膜層
172 オーバーコート層
180 不連続部
190 気泡
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜層構造体及びその製造方法、並びに、真空成膜腐食防止層と塗布成膜保護層とを有するサーマルプリンタヘッド(サーマルヘッド)及びその製造方法に関し、例えば、真空成膜法と塗布成膜法とを組み合わせて形成される成膜層構造体及びその製造方法、並びに、真空成膜腐食防止層と塗布成膜保護層とを有するサーマルプリンタヘッド(サーマルヘッド)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造コストの削減を目的に、電子デバイスにおける種々の成膜プロセスを、真空成膜法(スパッタ、CVDなど)から、塗布成膜法(スクリーン印刷、スピンコートなど)へ置き換える取り組みがなされている。
【0003】
塗布成膜法としては、スクリーン印刷(メッシュ版、メタル版)、スピンコート、バーコートなどが挙げられるが、露光現像プロセスを用いることなくパターン形成が可能であることから、スクリーン印刷が多用される。
【0004】
これらの塗布成膜法は低コストであるものの、それによって製作された膜は真空成膜法によって製作された膜に比べ性能(強度、信頼性、耐久性)が劣るため、成膜プロセスの全てを塗布成膜法とすることは困難であり、真空成膜法と塗布成膜法を組み合わせたハイブリット構造になることが多い。
【0005】
例えば、特許文献1などには、サーマルヘッドの製造法において、真空成膜法により腐食防止のための絶縁層を形成し、その上に、塗布成膜法であるスクリーン印刷によりガラ
サーマルヘッドにおいて、通電することにより発熱する抵抗発熱体とそれに接続された電極とで一つの回路を形成している。抵抗発熱体はTaSiO2のような金属酸化物からなり、電極は例えばAlからなる金属で形成される。電極の電気抵抗は、抵抗発熱体の電気抵抗より低くすることが必要であるため、一般に電極は厚く形成される。このため、サーマルヘッドにおいては、電極が基板上に凸部を形成し、この凸部の端部は段差を有する。
【0006】
このように、基板上に凸部を形成する回路層の上に真空成膜法であるスパッタリング法で絶縁層を形成した場合、この凸部の段差部分で絶縁層が不連続となる。これは、スパッタリングにより、基板表面から及び凸部側面から、それぞれ別に膜が成長し、両者がぶつかる界面が不連続になるためである。
【0007】
一方、電子デバイスに用いられる塗布成膜材料としては、一般にガラスペースト、シロキサン樹脂、ポリシラザン樹脂などが挙げられる。いずれも材料中に有機物を含み、加熱もしくは焼成により、これら有機物を蒸発もしくは焼成させ、無機物を主成分とした膜を形成するものである。また、塗布材料中に有機成分を含まないものであっても、加熱時の成膜反応により、H2O、H2、NH3などの反応ガスが発生することがある。たとえば、(Si-OH)n→SiO2+H2O の反応における、H2Oなどである。
【0008】
上記のように、基板の上に凸部を形成する回路層の上に真空成膜法であるスパッタリングにより絶縁層を形成し、さらにその上に塗布成膜法により保護層を形成した場合、凸部の段差に起因してスパッタ層に不連続部が発生し、その不連続部に、塗布材料の加熱・焼成で発生するガスが堆積・残留し、気泡が発生した。この気泡は、塗布成膜保護層の膜強度および信頼性を低下させるという問題を生じさせた。
【0009】
以上、サーマルヘッドを一例にして述べたように、従来の成膜層構造体及びその製造方法では、基板上の凸部の段差部において真空成膜層に不連続部が発生し、この部分の塗布成膜層中に気泡が発生し、塗布成膜層の性能と信頼性を低下させていた。
【特許文献1】特許第3411133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基体上の凸部の段差部に真空成膜層の不連続部があっても気泡の発生がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体、及びその製造方法、並びに、高性能で高信頼性のサーマルヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、基体の上に底面と側面とを有する段差を形成する工程と、前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように第1の層を形成する工程と、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させるように、前記第1の層の上に第2の層を選択的に形成する工程と、を備えたことを特徴とする成膜層構造体の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、基体と、前記基体の上に設けられた電極と、前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に選択的に形成され、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させる保護層と、を備えたことを特徴とするサーマルヘッドが提供される。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、基体の上に電極を形成する工程と、前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように絶縁層を形成する工程と、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させるように、前記絶縁層の上に保護層を選択的に形成する工程と、を備えたことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基体上の凸部の段差部に真空成膜層の不連続部があっても気泡の発生がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体、及びその製造方法、並びに、高性能で高信頼性のサーマルヘッド及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す模式図である。 図1に表したように、第1の実施形態に係わる成膜層構造体100においては、基板2の上に、凸部150が設けられている。凸部150の両側には段差Sが形成されている。段差Sは、底面S1と、側面S2と、を有する。図1に表した具体例においては、底面S1は基板2の表面であり、側面S2は凸部150の側壁に対応する。凸部150の上には、凸部150の両側に形成された段差Sの部分で不連続部180を有する真空成膜層(第1の層)160がある。さらに、真空成膜層160の上に、不連続部180の一部を露出するように塗布成膜層(第2の層)170(塗布成膜保護層)が形成されている。このように、本発明の第1の実施形態の成膜層構造体100においては、不連続部180の一部が露出している。この構造により、不連続部180を起因とした気泡が塗布成膜層170中に形成されることがない。この効果について、以下、第1の実施形態に係わる第1の実施例を参照して、更に説明する。
【0018】
(第1の実施例)
図2は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の素子構造を例示する部分断面図である。
また、図3は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の部分斜視図である。
【0019】
本実施例のサーマルヘッド1においては、基板2が設けられている。基板2の材料としては、絶縁性を有する、例えば、アルミナからなるアルミナセラミック基板が用いられる。基板2の上面には、例えば、水ガラスから形成されたガラス層3が設けられている。ガラス層3の上面の一部には、一方向に延びるかまぼこ状(semi-cylindrical)部3aが形成されている。
【0020】
また、ガラス層3上には、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが一組の回路となり、それが略直線上に複数個並ぶように設けられている。この抵抗発熱体4は、例えば、Ta−SiO2からなる薄膜で形成することができ、例えば、0.05μmの厚さである。また、電極5aと5bは、例えば、Alを主成分とする材料で形成することができ、例えば、0.75μmの厚さである。
【0021】
さらに、ガラス層3、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bを覆うように、腐食防止層(絶縁層)6及び保護層7が設けられている。保護層7の形状は、ガラス層3の形状を反映しており、ガラス層3のかまぼこ状部3aに対応する領域では、保護層7もかまぼこ状部7aを形成している。腐食防止層6は、酸化物、窒素化物及びそれらの混合物から適切に選択された材料により構成され、真空成膜法であるスパッタリング法によって、例えば、厚さ1.4μmに形成される。また、保護層7は、ガラスフリットとバインダー及び溶剤からなるガラスペーストを塗布し、焼成することにより、例えば、厚さは8μmに形成される。腐食防止層6は真空成膜層160に相当し、保護層7は塗布成膜層170に相当する。
【0022】
以下、第1の実施例の成膜層構造体101を具備したサーマルヘッド1におけるサーマルヘッド1と駆動回路との接続構成について、図3を参照しつつ説明する。
基板2上には、ドライバIC(回路素子)15が実装されており、このドライバIC15の端子には、電極5aにおける抵抗発熱体4に接続されていない側の端部が接続されている。例えば、4本の電極5aが1個のドライバIC15に接続されている。さらに、基板2におけるドライバIC15側の側方には、樹脂基板31が設けられており、基板2の上面及び下面とそれぞれ同一平面上にある。樹脂基板31上には、複数本の配線層32が形成されており、この配線層32がドライバIC15における電極5aが接続されていない端子に接続されている。
【0023】
さらにまた、基板2及び樹脂基板31上には、ドライバIC15、並びに電極5a及び配線層32におけるドライバIC15との接続部分を覆うように、樹脂からなるエンキャップ33が設けられており、このエンキャップ33を覆うように、例えば、樹脂板が折り曲げられて成型されたICカバー34が設けられている。一方、基板2及び樹脂基板31の下面には、ヒートシンク35及びコネクタ36が連結されている。コネクタ36の端子は、配線層32に接続されている。
【0024】
以上の如く構成されたサーマルヘッド1の動作について図2を参照しつつ説明する。
保護層7のかまぼこ状部7aに対応する部分の上方にローラ11が配置され、このローラ11と保護層7のかまぼこ状部7aとの間にインクリボン12及びプリント用紙13が挟み込まれる。インクリボン12はプリント用紙13を介してローラ11によりかまぼこ状部7aに対して押圧される。ここで、ローラ11が回転すると、インクリボン12及びプリント用紙13はサーマルヘッド1に対して移動し、インクリボン12はかまぼこ状部7aに対して摺動する。
【0025】
この状態で、ドライバIC15が、コネクタ36を介して入力された信号に基づいて、選択的にパルス電流を、電極5a、抵抗発熱体4及び電極5bからなる経路に流すと、このパルス電流は、かまぼこ状部7a直下の抵抗発熱体4内を流れ、抵抗発熱体4が発熱する。この熱が、腐食防止層6及び保護層7内を伝導してインクリボン12におけるかまぼこ状部7aに対する接触部分に伝わり、インクリボン12中のインク成分がプリント用紙13に転写される。これにより、プリント用紙13にインク層14が形成され、印刷される。
【0026】
以下に、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の詳細な素子構造を図4を用いて説明する。
図4(a)は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の部分的な構造を例示する斜視図である。
図4(a)に表したように、基板2の上にガラス層3が設けられ、その上に抵抗発熱体4及び電極5a、及び5bが設けられている。なお、図4(a)では、説明の都合上、真空成膜層160(腐食防止層6)及び塗布成膜層170(保護層7)は省略されている。図4(a)に表したように、電極5aは、パッド部511及び521並びに電極配線部512及び522で構成されており、パッド部521、電極配線部512、抵抗発熱体4、電極5b、抵抗発熱体4、電極配線部522、パッド部521がそれぞれ電気的に接続され、一つの回路を形成している。このとき、例えば、電極5a及び5bの厚さは0.75μmであり、抵抗発熱体4の厚さは0.05μmであるため、抵抗発熱体4だけの部分の段差はあまり大きくなく、抵抗発熱体4と電極5a及び5bが重なった部分の段差が大きく、抵抗発熱体4と電極5a及び5bが重なった部分が実質上の凸部150となる。
【0027】
さらに、このサーマルヘッド1の断面構造を説明する。
図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図である。図4(b)に表したように、基板2の上に抵抗発熱体4及び電極5bにより凸部150が形成されている。例えば、電極5bの厚さは0.75μmであり、抵抗発熱体4の厚さは0.05μmで、また、電極5b及び抵抗発熱体4の線幅とピッチの一例を示すと、例えば線幅20μm、ピッチ35μmである。これら抵抗発熱体4及び電極5bの上に真空成膜層160(腐食防止層6)が形成されている。この真空成膜層160は、例えば、スパッタリング法により形成されたSiON膜であり、例えば、1.4μmの厚さである。さらに、この上に塗布成膜法による塗布成膜層170(保護層7)が形成されている。そして、凸部150の段差の真空成膜層160には、不連続部180が形成されている。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。
図5は、真空成膜層160の不連続部180部分の断面SEM写真であり、図5に表したように、真空成膜層160中に凸部150の端部から不連続部180が形成されている。これは、スパッタリング成膜中に、2つの不連続な表面すなわち、基板表面及び凸部150の側面から、それぞれ別に膜が成膜され、基板表面から成長した真空成膜層184と凸部の側面から成長した真空成膜層185が突き当たる部分において不連続界面183が発生するためである。図5に表したように、この不連続界面183には微小な隙間や微小な凹凸が形成されている。この不連続部180は、この上に形成される塗布成膜層170の形成中にガスを集めるトラップとなり、結果として気泡の核となり、気泡発生の原因となる。
【0029】
図6は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の製造方法を示すフローチャート図である。また、図7及び図8は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図及び平面図である。なお、図7は、図4及び図8のA−A線の断面に対応している。
【0030】
まず、図7(a)に示すように、凸部150を形成する工程S1では、基板2上に、例えば、水ガラスを塗布し焼成して、一方向に延びるかまぼこ状部3aを有するガラス層3を形成し、この後、スパッタリング法により、例えば、Ta−SiO2からなり厚み0.05μmである抵抗発熱体4を形成する。さらに、抵抗発熱体4の上に、例えば、Alからなり厚み0.75μmである電極5a及び5bを形成し、パターニングを行って、抵抗発熱体4、電極5a及び5bを形成する。図8(a)に示すように、抵抗発熱体4と電極5a及び5bは一組の回路を構成し、それが略直線状に複数個並ぶように設けた。この電極5a及び5bが凸部150となる。
【0031】
次に、図7(b)に示すように、真空成膜工程S2では、腐食防止層6(真空成膜層160に相当する)として、SiSON膜をスパッタ法により、1.4μmの厚さで成膜する。また、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bとの電気的接続のためのコンタクトホール(スルーホール)10を、フォトリソグラフィとエッチングにより、所定の場所に設ける。
【0032】
次に、図7(c)、図8(c)に示すように、塗布成膜層形成工程S3では、真空成膜層160の上に、ガラス保護層(保護層)7(塗布成膜層170に相当する)を形成した。この際、電極5a、電極5bの全ての凸部150において、真空成膜層160の不連続部180の一部が露出されるようなパターンで形成した。具体的には、αテルピネオールを主成分とする溶剤と、B2O3等を成分とする公知のガラスフリットを固形分濃度で75重量%、及び、エチルセルロースを主成分とする有機ビヒクル系のバインダを固形分濃度で25重量%混合させ、フィラーを含有しないガラスペーストを製作し、これを、スクリーン印刷法により、図8(c)に示す塗布成膜層170の形状にスクリーン印刷した。この後、430℃30分加熱処理することにより、膜厚8μmの塗布成膜層170を形成した。このようにして、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1を得た。
【0033】
図9は、第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1の顕微鏡写真である。図9は、サーマルヘッドの電極5b部分の光学顕微鏡写真であり、塗布成膜層形成工程S3後の状態を示している。図9中の左部分が塗布成膜層170を有する領域であり、それ以外は塗布成膜層170を有しない領域である。図9のほぼ中央に位置する部分には、凸部150に対応した真空成膜層160の不連続部180の露出部181が示されている。図9に示すように、本実施例の成膜層構造体101においては、塗布成膜層170中に気泡は発生しなかった。
【0034】
(第1の比較例)
以下、第1の比較例を説明する。第1の比較例は、上に述べた第1の実施例の成膜層構造体101を有するサーマルヘッド1において、電極5bによる凸部150の全てを覆うように、すなわち凸部150に対応した真空成膜層160の不連続部180の全てを覆うように、塗布成膜層170を形成したものである。
【0035】
図10及び図11は、第1の比較例の成膜層構造体201を有するサーマルヘッドの断面図及び平面図である。第1の比較例では、図10(c)及び図11(c)に示すように、電極5aの領域においては、電極5aの凸部150による不連続部180の一部は露出しているが、電極5bの領域においては、電極5bの凸部150による不連続部180の全てが塗布成膜層170に覆われた構造となっている。
【0036】
このように、電極5bの領域で、凸部150に対応する真空成膜層160の不連続部180の全てが塗布成膜層170で被覆された第1の比較例の成膜層構造体201は、塗布成膜層170中に気泡が発生した。
【0037】
図12(a)は第1の比較例の成膜層構造体201の光学顕微鏡写真である。図12(a)は、電極5bの凸部150部を拡大した光学顕微鏡写真であり、図12(a)で表したように、第1の比較例の成膜層構造体201では多数の気泡190が発生した。図12(b)は、図12(a)のB−B線断面のSEM写真である。図12(b)に表したように、塗布成膜層170中に気泡190が発生しており、その場所は、電極5bによる凸部150の段差に相当する不連続部180の上であった。
【0038】
図5に示したように、電極5bからなる凸部150の段差には、真空成膜層160中に不連続部180が発生する。この不連続部180における不連続界面183に、微小な隙間や微小な凹凸が形成されていると考えられ、この不連続部180が、塗布成膜層170の形成中にガスを集めるトラップとなり、または、気泡の核となり、結果として気泡190の発生の原因となったものと考えられる。
【0039】
上記のように、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101では気泡190が発生せず、第1の比較例の成膜層構造体201では気泡190が発生した機構は以下のように推測される。
【0040】
図13(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101の構造を示す模式図、13(b)は、第1の比較例の成膜層構造体201の構造を示す模式図である。
図13(a)に示すように、第1の実施例の成膜層構造体101においては、基板2の上に凸部150が形成され、その段差において真空成膜層160の不連続部180が形成される。そして、この上に塗布成膜層170が形成される際、塗布成膜層170中に発生したガス191は、図中の矢印192で示されるように、不連続部180の塗布成膜層170で覆われた部分182から露出部181に向けて、不連続部180の界面を経由して外界に解放される。このため、本発明の第1の実施例の成膜層構造体101では、気泡が発生しない。一方、第1の比較例においては、図13(b)に示されるように、電極5bからなる凸部150の全ての不連続部180が塗布成膜層170により被覆されている。このため、塗布成膜層170中に発生したガス191は解放される経路が無く、塗布成膜層170の焼成形成中に不連続部180を核として大きく成長し、これが気泡190となる。このようにして第1の比較例においては気泡が発生した。
【0041】
なお、第1の比較例では、図10(c)及び図11(c)に示すように、電極5bの領域においては、電極5bによる凸部150に対応した不連続部180は塗布成膜層170で全て被覆されていたが、電極5aの領域では、電極5aによる凸部150に対応した不連続部180は塗布成膜層170から露出した部分を有している。このため、第1の比較例においても、電極5aの領域では、塗布成膜層170中に気泡は発生せず、上記のように不連続部180の全てが塗布成膜層170によって被覆された電極5bの領域で気泡が発生した。このことは、上に述べた気泡の発生の機構、及び第1の実施例の成膜層構造体101における気泡消失の機構が裏付ける。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる成膜層構造体及びその製造方法について説明する。
第1の実施形態においては、真空成膜層160の一部が塗布成膜層170から露出されていたが、第2の実施形態では、露出した真空成膜層160をさらにオーバーコート層(第3の層)で被覆した構造により、信頼性をさらに高めたものである。以下、第2の実施形態に係わる第2の実施例について説明する。
【0043】
(第2の実施例)
図14は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102の製造方法のフローチャート図である。図15及び図16は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図及び平面図である。
図14に示すように、本発明の第2の実施例においては、塗布成膜層の形成工程S3の後に、さらにオーバーコート層を形成する工程S4を有している。
【0044】
図15(d)及び図16(d)に示すように、露出されていた不連続部180の上にオーバーコート層172が形成された。本実施例の場合、このオーバーコート層172は、塗布成膜層170と同じ方法で形成した。
【0045】
図17は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102を有するサーマルヘッド1の光学顕微鏡写真である。図17は、オーバーコート層172の形成後の顕微鏡写真であり、図17中の左側部分が、塗布成膜層170がある領域であり、中央部が塗布成膜層170が無い不連続部180の露出部181の領域であり、右側が不連続部180の露出部181の上に形成されたオーバーコート層172の領域である。
図17から分かるように、第2の実施例の成膜層構造体102では、オーバーコート層172を設けた後も気泡の発生がなかった。
【0046】
第2の実施例の成膜層構造体102において、真空成膜層160の不連続部180の露出部181の全てを被覆するように、焼成形成中にガスを発生する材料を用いてオーバーコート層172を設けても気泡が発生しないのは、以下のような機構によるものと考えられる。
【0047】
図18は、本発明の第2の実施例の成膜層構造体102の構造を示す模式図である。図18に表したように、基板2の上に凸部150が形成され、その段差において真空成膜層160の不連続部180が形成される。そして、不連続部180の一部を露出するように塗布成膜層170が形成される。さらに、露出された不連続部180の上にオーバーコート層172が形成されている。この際、オーバーコート層172中に発生したガス191は、矢印192で示されるように、真空成膜層160の不連続部180及び、塗布成膜層170とオーバーコート層172の界面を経由して外界に解放される。このように、発生したガス191はオーバーコート層172中に留まることがないため気泡が発生しない。このように、第2の実施例では、ガスが解放される経路を有しているため、オーバーコート層172としてガスが発生する材料を用いても、気泡が発生しない成膜層構造体102が得られる。
なお、図17に示したように、塗布成膜層170とオーバーコート層172は重なり部分を有するように形成することができ、真空成膜層160が露出している部分がないため、非常に高い信頼性を得ることができる。
【0048】
なお、成膜層構造体をサーマルヘッドに応用した場合、塗布成膜層170は、印刷対象物である紙と接触するため、平坦性や耐摩耗性などの点で、厳しい性能が要求される。このため、塗布成膜層170の材料として各種の制約を受ける。このような場合に、塗布成膜層170とは別にオーバーコート層172を設ける構造は、効果を発現する。すなわち、高い平坦性や高い耐摩耗性を要求される塗布成膜層170とは別にオーバーコート層172を設けることができ、これにより、平坦性や耐摩耗性などの機械的性能や熱的性能に関する要求とは別の要求性能を重視したオーバーコート層用の材料選択が可能となる。
【0049】
なお、この真空成膜層160中の不連続部180は、図4に例示した電極5a及び5bによる凸部150に形成され、ガラス層3のかまぼこ状部3aに形成されることは実質上ない。すなわち、不連続部180が形成されるのは、2つの不連続な界面から別々に成長した真空成膜層160が突き当たる部分で発生するものであり、ガラス層3のかまぼこ状部3aは連続的になだらかに凹凸が変化する形状であるので、不連続部が実質上発生しない。また、図4に例示するように、かまぼこ状部3aの上の、電極を有していない抵抗発熱体4だけの部分は、抵抗発熱体4の膜厚が薄いため、実質上の凸部とはならず、この部分では、この上に形成される塗布成膜層170の形成中に気泡を発生することが事実上ない。したがって、本発明においては、図4に示す、電極5a及び5bに示す実質上の凸部に形成された不連続部180の一部を露出する。
【0050】
上に述べた本発明の第1及び第2の実施例においては、電極5a部の電気的接続のため、電極aのパッド部511、521並びに電極配線部512及び522の少なくとも一部は、塗布成膜層170が形成されず、真空成膜層160の一部は露出されている。従って、上に述べた第1及び第2の実施例において、特に問題となるのは電極5b部による凸部150の段差の不連続部180であり、第1及び第2の実施例のように、電極5bも含めた全ての凸部150において不連続部180を露出して塗布成膜層170を形成する。
【0051】
以上、電極5bにより形成される凸部150の段差に起因した真空成膜層160の不連続部180による気泡の発生について述べたが、基板上に凹部がある場合での気泡発生も本発明によれば解決できる。すなわち、以上述べた本発明の成膜層構造体の説明において、凸部は凹部と読み替えることができる。
【0052】
以下、基板上に凹部を有する場合についての本発明の第3の実施の形態及び、比較のために第2の比較例について述べる。
(第2の比較例)
ます、第2の比較例として、凹部を有する成膜層構造体を例にして、凹部がある成膜層構造体において気泡が発生する現象を説明する。
図19(a)は、第2の比較例の成膜層構造体202の構造を示す断面図である。図19(a)に示すように、基板2の上に抵抗発熱体4があり、その上に電極5aが形成されており、この電極5aにより凹部151が形成されている。この例の場合、凹部151は直径0.5mmの円形である。この上に真空成膜層160が形成されており、上記凹部151の段差に不連続部180を有している。この上にさらに塗布成膜層170が形成されている。第2の比較例においては、この凹部151の全面を被覆するように塗布成膜層170が形成されている。
【0053】
図19(b)は、第2の比較例の成膜層構造体202の構造を示す平面図である。図19(b)に示すように、第2の比較例においては、電極5aによる凹部151の真空成膜層160の不連続部180の全てが塗布成膜層170によって被覆されている。
【0054】
図19(c)は、第2の比較例の成膜層構造体202の光学顕微鏡写真である。(図19(a)は、図19(c)のC−C線断面図である)。図19(c)に示すように、第2の比較例では、不連続部180において気泡190が発生している。図19(d)は、第2の比較例の成膜層構造体202の光学顕微鏡写真であり、図19(c)の一部153を拡大した顕微鏡写真である。図19(d)に示したように、不連続部180において、多くの気泡190が発生している。このように、第2の比較例の基板2の上に凹部151を有する従来の成膜層構造体202では、気泡が発生した。
【0055】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図20(a)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体103を有するサーマルヘッドの構造を示す断面図である。また、図20(b)は、本発明の第3の実施形態に係わる成膜層構造体103の構造を示す平面図である(真空成膜層160は図示せず)。図20(a)及び(b)に示すように、第3の実施形態に係わる成膜層構造体103は、凹部151の段差の真空成膜層160の不連続部180の一部が露出するように塗布成膜層170が形成されている。このような構造を有する本発明の第3の実施形態の成膜層構造体103は、気泡190が発生しなかった。この場合に気泡190が発生しない機構は、すでに図13を用いて説明した通りである。
【0056】
このように、基板2の上の凸部150と凹部151とは相対的なものであり、基板2の上の凸部150または凹部151によって生じる段差には真空成膜層160の不連続部180が同様に形成され、これにより同様に塗布成膜層170に気泡190が発生する。この両者に対して本発明は有効であり、本発明において、凸部150と凹部151とは互いに読み替えることができる。
【0057】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図21は、本発明の第4の実施の形態に係わる成膜層構造体104を有するサーマルヘッド1の製造工程の各段階における断面図である。図21(d)に示すように、塗布成膜層170から露出された真空成膜層160の不連続部180の上に、オーバーコート層172が形成されている。このオーバーコート層172は、塗布成膜層170とは別の材料で形成されており、具体的には、スルーホール10を介して電極5aと電気的接続を行うボンディングワイヤー158を保護するために設けられる、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂により形成される。このような構造の成膜層構造体100においては、塗布成膜層170及びオーバーコート層172中には気泡が発生せず、これにより、気泡がなく、信頼性の高い成膜層構造体104及びそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0058】
(第5の実施の形態)
さらに、本発明の第5の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図22は、本発明の第5の実施の形態に係わる成膜層構造体105を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。図22(c)に表したように、塗布成膜層170は、電極5bの上部において、真空成膜層160の不連続部180の一部を露出し、隙間173ができるように、複数の領域で形成されている。この第5の実施形態では、塗布成膜層170の隙間173は細い幅で形成されているため、電極5bを実質的に充分保護することができ、かつ、塗布成膜層170中のガス191の解放経路を確保することができ、気泡の無い成膜層構造体105およびそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0059】
(第6の実施の形態)
さらに、本発明の第6の実施の形態に係わる成膜層構造体について説明する。
図23は、本発明の第6の実施の形態に係わる成膜層構造体106を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。図23(c)に表したように、塗布成膜層170が、電極5bの上部において、真空成膜層160の不連続部180の一部を露出し、隙間173ができるように、複数の領域で形成され、さらに、図23(d)に示すように、不連続部180の露出部の上に、オーバーコート層172が形成されている。このオーバーコート層172は、スルーホール10部のボンディングワイヤー158を保護するために設けられる、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂により形成されている。この場合も、塗布成膜層170及びオーバーコート層172中には気泡が発生せず、かつ信頼性が非常に高い成膜層構造体106およびそれを有するサーマルヘッドが得られる。
【0060】
以上にように、本発明の成膜層構造体及びその製造方法によれば、真空成膜層中の不連続部の少なくとも一箇所を露出するようにスクリーン版のパターンを変更しさえすればよく、その他の製造条件の改良(真空成膜方法の改良、塗布成膜の焼成方法の改良など)の必要がない。このため、気泡がない、高性能で高信頼性の成膜層構造体が安価に得られる。
【0061】
なお、本発明において、塗布成膜層170として用いられる材料には、各種のものを使用することができる。例えば、ガラスペーストを用いた場合には、それに用いられるガラスフリットとして、各種の公知のものが使用でき、酸化物、窒化物など、または、これらの混合物から適宜選択して用いることができる。また、有機ビヒクルのバインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体やイソデシルメタアクリレートなどの各種のアクリル系樹脂、またはこれらの混合物から適宜選択して用いることができる。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル1,3−ヒドロキシペンチルイソブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトライソプロピルオルソチタネート、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエタノール、α−テルピネオール、イソプロピルアルコール、2−プロパノール、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンなどの各種のアルコール系、グリコエーテル系、炭化水素系、ケトン、エステルなど各種の有機溶剤またはこれらの混合物から適宜選択される。また、ガラスペースト中にAl2O3などからなるフィラーを含んでいる場合は、塗布成膜層170(保護層7)の耐摩耗性がさらに向上する。
【0062】
また、上記の真空成膜層160には、各種のものが使用できる。例えば、Al2O3、AlN、SiONの他、SiO2、ZrO2、Ta2O5、Si3N4、SiAlONなどの酸化物及び窒化物、並びにこれらの混合物から適切に選択される。また、上記の実施例で述べたコンタクトホール10は、フォトリソグラフィとエッチング技術によって形成することができる。このエッチングはRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングを用いてもよいし、ウエットエッチングでも良い、また、エッチング法ではなく、リフトオフ法により形成しても良い。
【0063】
なお、上記の実施例において、サーマルプリンタヘッドをインクリボン方式のプリンタに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、インクリボンを用いない感熱式プリンタに適用してもよい。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、上述した各具体例に限定されるものではない。他の構造を持つ成膜層構造体にも使うことができる。また、実施形態及び実施例の説明で述べられた各種の材料や・製造条件に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより、本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に含まれる。
【0065】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたのも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に包含される。
【0066】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの素子構造を例示する部分断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの部分斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの部分的な構造を模式的に例示する斜視図である。 (b)は、図4(a)のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における平面図である。
【図9】本発明の第1の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真である。
【図10】第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図11】第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程に各段階における平面図である。
【図12】(a)は、第1の比較例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真図である。(b)は、図12(a)のB−B線断面のSEM写真である。
【図13】(a)は、本発明の第1の実施例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。(b)は、本発明の第1の比較例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図14】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。
【図15】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図16】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における平面図である。
【図17】本発明の第2の実施例の成膜層構造体を有するサーマルヘッドの光学顕微鏡写真である。
【図18】本発明の第2の実施例の成膜層構造体の構造を示す模式図である。
【図19】(a)は、第2の比較例の成膜層構造体の構造を示す断面図である。(b)は、第2の比較例の成膜層構造体の構造を示す平面図である。(c)は、第2の比較例の成膜層構造体の光学顕微鏡写真である。(d)は、第2の比較例の成膜層構造体の光学顕微鏡写真である。
【図20】(a)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す断面図である。(b)は、本発明の第3の実施の形態に係わる成膜層構造体の構造を示す平面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図22】本発明の第5の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【図23】本発明の第6の実施の形態に係わる塗布成膜層構造体を有するサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 サーマルヘッド
2 基板
3 ガラス層
4 抵抗発熱体
5a、5b 電極
511、521 電極のパッド部
512、522 電極配線部
6 腐食防止層
7 保護層
100、101、102、103、104、105、106 成膜層構造体
150 凸部
151 凹部
160 真空成膜層
170 塗布成膜層
172 オーバーコート層
180 不連続部
190 気泡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、
前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、
前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、
を備えたことを特徴とする成膜層構造体。
【請求項2】
前記第1の層は、前記底面の上と、前記側面の上と、の間において不連続部を有することを特徴とする請求項1記載の成膜層構造体。
【請求項3】
前記第2の層は、塗布により形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜層構造体。
【請求項4】
前記第2の層は、第1の材料を塗布した後に焼成することにより形成され、
前記第1の材料は、焼成に際して気体を発生することを特徴とする請求項2記載の成膜層構造体。
【請求項5】
前記第1の材料は、無機材料と有機材料との混合物であることを特徴とする請求項4記載の成膜層構造体。
【請求項6】
前記第1の材料は、ガラスフリットと、バインダーと、有機溶媒と、を含むことを特徴とする請求項4記載の成膜層構造体。
【請求項7】
前記第1の層は、スパッタ法により形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の成膜層構造体。
【請求項8】
前記第1の層の前記露出された部分を覆うように形成された第3の層をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の成膜層構造体。
【請求項9】
基板の上に底面と側面とを有する段差を形成する工程と、
前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように第1の層を形成する工程と、
前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させるように、前記第1の層の上に第2の層を選択的に形成する工程と、
を備えたことを特徴とする成膜層構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の層の前記露出された部分を覆うように第3の層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の成膜層構造体の製造方法。
【請求項11】
基体と、
前記基体の上に設けられた電極と、
前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に選択的に形成され、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させる保護層と、
を備えたことを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項12】
前記絶縁層の前記露出された部分を覆うように設けられたオーバーコート層をさらに備えたことを特徴とする請求項11記載のサーマルヘッド。
【請求項13】
基体の上に電極を形成する工程と、
前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させるように、前記絶縁層の上に保護層を選択的に形成する工程と、
を備えたことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記絶縁層の前記露出された部分を覆うようにオーバーコート層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項13記載のサーマルヘッドの製造方法。
【請求項1】
底面と側面とを有する段差が設けられた基体と、
前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように設けられた第1の層と、
前記第1の層の上に選択的に形成され、前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させる第2の層と、
を備えたことを特徴とする成膜層構造体。
【請求項2】
前記第1の層は、前記底面の上と、前記側面の上と、の間において不連続部を有することを特徴とする請求項1記載の成膜層構造体。
【請求項3】
前記第2の層は、塗布により形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜層構造体。
【請求項4】
前記第2の層は、第1の材料を塗布した後に焼成することにより形成され、
前記第1の材料は、焼成に際して気体を発生することを特徴とする請求項2記載の成膜層構造体。
【請求項5】
前記第1の材料は、無機材料と有機材料との混合物であることを特徴とする請求項4記載の成膜層構造体。
【請求項6】
前記第1の材料は、ガラスフリットと、バインダーと、有機溶媒と、を含むことを特徴とする請求項4記載の成膜層構造体。
【請求項7】
前記第1の層は、スパッタ法により形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の成膜層構造体。
【請求項8】
前記第1の層の前記露出された部分を覆うように形成された第3の層をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の成膜層構造体。
【請求項9】
基板の上に底面と側面とを有する段差を形成する工程と、
前記段差の前記底面と前記側面とを覆うように第1の層を形成する工程と、
前記段差の前記底面及び前記側面の上において前記第1の層の一部をそれぞれ露出させるように、前記第1の層の上に第2の層を選択的に形成する工程と、
を備えたことを特徴とする成膜層構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の層の前記露出された部分を覆うように第3の層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の成膜層構造体の製造方法。
【請求項11】
基体と、
前記基体の上に設けられた電極と、
前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に選択的に形成され、前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させる保護層と、
を備えたことを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項12】
前記絶縁層の前記露出された部分を覆うように設けられたオーバーコート層をさらに備えたことを特徴とする請求項11記載のサーマルヘッド。
【請求項13】
基体の上に電極を形成する工程と、
前記電極とその周囲の前記基体とを覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記電極及びその周囲の前記基体の上において前記絶縁層の一部をそれぞれ露出させるように、前記絶縁層の上に保護層を選択的に形成する工程と、
を備えたことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記絶縁層の前記露出された部分を覆うようにオーバーコート層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項13記載のサーマルヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図5】
【図9】
【図12】
【図17】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図5】
【図9】
【図12】
【図17】
【図19】
【公開番号】特開2010−76164(P2010−76164A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245204(P2008−245204)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
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