成膜方法、成膜装置及び半導体装置の製造方法
【課題】熱CVD法によって、M(BH4)4(Mは、Zr又はHfを意味する)を原料としてM/Zr比が適正範囲内で良質なMBx膜(Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を成膜する。
【解決手段】ガス供給源19から、ガス供給配管15aを介してH2ガスを原料容器21内に供給する。原料容器21内では、導入されたH2ガスとの接触によって、固体原料のZr(BH4)4が気化する。そして、成膜ガスとしてのH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスが、ガス供給配管15c,15c1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内に導入され、ウエハW上の絶縁膜の表面を覆うように、ZrBx膜の薄膜が形成される。
【解決手段】ガス供給源19から、ガス供給配管15aを介してH2ガスを原料容器21内に供給する。原料容器21内では、導入されたH2ガスとの接触によって、固体原料のZr(BH4)4が気化する。そして、成膜ガスとしてのH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスが、ガス供給配管15c,15c1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内に導入され、ウエハW上の絶縁膜の表面を覆うように、ZrBx膜の薄膜が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能な成膜方法及び成膜装置、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程で成膜される高融点金属化合物の拡散に対するバリア膜として、ZrN膜、ZrB2膜等のZr化合物膜が知られている。Zr化合物は、バルク状態での抵抗率が10μΩcm程度と低いため、導電性のバリア膜として有望である。また、Zr化合物は、下地膜の種類によって抵抗率が極端に変わることを利用して、除去不要な導電性キャップ膜として利用できることも提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
ZrN膜の形成には、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法が提案されているが、成膜温度が300℃以上と高いことや、原料としてアルキルアミノ系化合物などの炭素を構成元素に含む原料を使用するため、炭素の残留による高抵抗化や、Zr3N4などの絶縁性化合物の生成に注意する必要がある。
【0004】
一方、ZrB2膜の形成には、Zr(BH4)4を原料として用い、処理容器内にプラズマで励起されたH2ガスやNH3ガスを導入するCVD法による成膜やALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜が提案されている(例えば非特許文献1、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−98521号公報
【特許文献2】特開2008−98522号公報
【特許文献3】特開2006−57162号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Sungら,J. Appl. Phys.Vol91,No.6, 3904-3911(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1や特許文献3の提案では、処理容器内に原子状のH等を導入するために、リモートプラズマ設備が必要である。そのため、成膜装置の構成が複雑になり、半導体プロセスでの工業的な利用には不向きである。しかし、非特許文献1において指摘されているように、Zr(BH4)4を原料とした熱CVD法によるZrB2膜の成膜では、膜中のB/Zr比が過剰になってしまい、膜質が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、熱CVD法によって、M(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を原料としてM/Zr比が適正範囲内の良質なMBx膜を成膜する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の成膜方法は、
被処理体を処理容器内に配置する工程と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)が収容された原料容器に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4ガスを生成させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように前記処理容器内に導入し、熱CVD法により被処理体上にMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
を備えている。
【0010】
本発明の成膜方法において、前記MBx膜を堆積させる工程では、前記処理容器内の圧力を10Pa以上300Pa以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0011】
また、本発明の成膜方法において、前記MBx膜を堆積させる工程では、被処理体の温度を160℃以上300℃以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0012】
また、本発明の成膜方法は、前記原料容器内の固体原料を−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しながらH2ガスを供給することが好ましい。
【0013】
本発明の成膜装置は、
真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を保持する原料容器と、
前記原料容器内の固体原料を冷却もしくは保温する温度調節装置と、
前記原料容器内へH2ガスを供給するH2ガス供給装置と、
前記原料容器から前記処理容器内へH2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを供給するガス供給管と、
を備え、
前記原料容器内へ供給するH2ガスの流量および該原料容器内圧力を調節することによって、前記H2ガスの供給によって気化したM(BH4)4ガスの流量、及びH2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]を制御しながら前記処理容器内に導入し、被処理体に熱CVD法によりMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記のいずれかに記載の成膜方法によって被処理体の絶縁膜上にバリア膜としてのMBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
前記MBx膜上に、金属膜を堆積させる工程と、
を含むものである。この場合、少なくとも、前記絶縁膜に形成された開口部の内壁面を覆うように前記MBx膜を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成膜方法によれば、固体原料のM(BH4)4に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4を気化させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように処理容器内に導入することにより、リモートプラズマを利用せずに熱CVD法によって、B/M比が化学量論比に近い適正な範囲内(つまり、xが1.8〜2.5)のMBx膜を成膜できる。従って、リモートプラズマ設備が必要な従来法に比べ、成膜装置の構成を大幅に簡素化することができる。
【0016】
また、本発明の成膜方法によれば、絶縁膜の表面に均一に、かつ所定の厚みでMBx膜を成膜できる。また、ステップカバレッジも良好であり、例えば絶縁膜に形成された、開口径に対する深さの比(アスペクト比)が大きな高アスペクト比の開口部においても、開口部内にほぼ均一な膜厚でMBx膜を形成できる。このようにして得られるMBx膜は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性を有するものである。すなわち、本発明の成膜方法によって成膜されるMBx膜は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜中へ拡散することを効果的に抑制する。従って、バリア膜として、本発明の成膜方法によりMBx膜を成膜することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成膜方法に利用可能な成膜装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の成膜装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである
【図4】本発明の実施の形態の成膜方法の工程説明に供するパターン形成された絶縁膜を有するウエハ表面の要部断面図である。
【図5】図4に続く工程図であり、ZrBx膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図6】処理温度160℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図7】処理温度200℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】処理温度250℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図9】処理温度300℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図10】処理温度180℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図11】処理温度180℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示す別のグラフである。
【図12】処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量を変えた実験における処理温度200℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図13】処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量を変えた実験における処理温度200℃における下地膜の種類と成膜レートとの関係を示すグラフである。
【図14】ZrBx膜のXPS分析結果を示すチャートである。
【図15】異なる条件で成膜したZrBx膜のB/Zr比及びO/Zr比の分析結果を示すグラフである。
【図16】アスペクト比が1.5〜4のホールについての段差被覆性の測定結果を示すグラフである。
【図17】アスペクト比が1.5〜4のトレンチについての段差被覆性の測定結果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施の形態の成膜方法をダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図19】図18に続く工程図であり、ZrBx膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図20】図19に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
<成膜装置の概要>
まず、本発明の成膜方法の実施に適した成膜装置の構成について説明する。図1は、本発明の成膜方法に使用可能な成膜装置100の概略構成例を示している。この成膜装置100は、熱CVD装置として構成されている。成膜装置100では、低誘電率膜等の絶縁膜上に、MBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を形成する成膜処理を行なうことができる。本実施の形態では、上記MがZrであるZrBx膜(化学量論比に基づきZrB2膜として表すことができる)を例に挙げて説明する。
【0019】
成膜装置100は、気密に構成された略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1の中には被処理体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wを水平に支持する載置台であるステージ3が配備されている。ステージ3は、円筒状の支持部材5により支持されている。ステージ3には、ウエハWを加熱するため、加熱手段としてのヒーター6が埋設されている。ヒーター6は、ヒーター電源7から給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターである。また、ステージ3には、温度計測手段としての熱電対(TC)9および温度測定器8が配備されており、ステージ3の温度をリアルタイムで計測し、ヒーター電源7にフィードバックできるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、熱電対付ウエハによって実測され、それにより推測された処理中のウエハWの温度を意味する。ウエハWを加熱するための加熱手段としては、抵抗加熱ヒーターに限らず、例えばランプ加熱ヒーターでもよい。
【0020】
また、図示は省略するが、ステージ3には、ウエハWを支持して昇降させるための複数のリフトピンがステージ3の基板載置面Sに対して突没可能に設けられている。これらのリフトピンは任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置で搬送装置(図示省略)との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0021】
処理容器1の天板1aには、シャワーヘッド11が設けられている。このシャワーヘッド11は、内部にガス拡散空間12が設けられている。シャワーヘッド11の下面には、多数のガス吐出孔13が形成されている。ガス拡散空間12はガス吐出孔13に連通している。シャワーヘッド11の中央部には、ガス拡散空間12に連通するガス供給配管15b1,15c1が接続されている。
【0022】
ガス供給源19は、水素(H2)ガスを供給する。H2ガスは、固体原料のZr(BH4)4を気化させて処理容器1内に運び込むためのキャリアガスとして用いられる。また、H2ガスは、成膜処理の前に処理容器1内をコンディショニングする目的でも用いられる。なお、図示は省略するが、ガス供給源19のほかに、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガスの供給源や、処理容器1内をパージするためのパージガスの供給源等を有していてもよい。
【0023】
ガス供給源19には、ガス供給配管15が接続されている。ガス供給配管15は、途中でガス供給配管15a,15bに分岐している。ガス供給配管15aには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)17aと、その前に配備されたバルブ18aが設けられている。ガス供給配管15bには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)17bと、その前に配備されたバルブ18bが設けられている。
【0024】
原料容器21には、ガスの入口21a、バイパス管21b、出口21cを備え、それぞれに配備されたバルブ18c、18d、18eが設けられている。ガス供給配管15aは、固体原料であるZr(BH4)4を収容する原料容器21内にバルブ18cを介して挿入され、H2ガスを原料容器21の内部に供給可能に接続されている。原料容器21は耐圧容器であり、容器の出口バルブ18eを経由した後、圧力計16および圧力調整バルブ18fでその容器内の圧力を調整することが可能である。原料容器21は、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置(冷却装置もしくは保温装置)23を有しており、内部に収容されたZr(BH4)4を例えば−15℃〜5℃の範囲内の温度に冷却保持できるように構成されている。Zr(BH4)4は、融点が28.7℃であるため、保冷された原料容器21内では、固体の状態で存在している。なお、原料容器内にH2ガスを保持、もしくは流通している場合はこの限りではなく、10〜45℃に保持することも可能である。30℃以上に保持する場合、Zr(BH4)4は、液体の状態となる。
【0025】
原料容器の出口である圧力調整バルブ18fに接続されているガス供給配管15cは2つに分岐し、一方のガス供給配管15c1はバルブ18gを介してシャワーヘッド11に接続されている。他方のガス供給配管15c2は、バルブ18iを通して排気装置35に接続されている。MFC(マスフローコントローラ)17bに接続されているガス供給配管15bは、2つに分岐し、一方のガス供給配管15b1はバルブ18hを介してシャワーヘッド11に接続されている。他方のガス供給配管15b2は、バルブ18jを通してガス供給配管15c2と合流し、排気装置35に接続されている。
【0026】
以上の構成によって、成膜装置100では、ガス供給源19からのH2ガスを、ガス供給配管15aを介して原料容器21内に供給することによって、冷却保持もしくは保温されたZr(BH4)4に接触させ、Zr(BH4)4を固体もしくは液体の状態から気化(昇華)させることができる。そして、H2ガスをキャリアガスとしながら、ガス供給配管15c,15c1を介してシャワーヘッド11のガス拡散空間12へ供給し、ガス吐出孔13から処理容器1内のステージ3上に配置されたウエハWへ向けて放出することができる。このように、本実施の形態では、H2ガスはキャリアガスであるとともに、成膜ガス(つまり、H2ガスとZr(BH4)4ガスとの混合ガス)の一部分としても機能する。
【0027】
また、成膜装置100では、ガス供給源19からのH2ガスを、ガス供給配管15b,15b1を介してシャワーヘッド11のガス拡散空間12へ供給し、ガス吐出孔13から処理容器1内へ供給することもできる。
【0028】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハWを搬入、搬出するための開口25が設けられており、さらに、開口25を開閉するためのゲートバルブ26が設けられている。
【0029】
処理容器1の底壁1cの側部には主排気孔31および排気孔32が形成されている。この主排気孔31には主排気バルブ33を介して、排気孔32には、処理容器1に設置された圧力計34aにより制御可能な圧力調整バルブ34を介して、それぞれ排気装置35が接続されている。排気装置35は、例えば図示しない真空ポンプや排気除害装置などを備えており、処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0030】
処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリングが配備されている。例えば図1では、代表的に、天板1aと側壁1bとの接合部分に配備した環状のOリング41を図示している。なお、他の部位にもOリングを配備することが可能であるが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0031】
成膜装置100を構成する各エンドデバイス(例えば、ヒーター電源7、温度測定器8、MFC17a,17b、排気装置35など)は、制御部70に接続されて制御される構成となっている。成膜装置100における制御系統の構成例を図2に示した。制御部70は、CPUを備えたコンピュータであるコントローラ71と、このコントローラ71に接続されたユーザーインターフェース72および記憶部73を備えている。ユーザーインターフェース72は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部73には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ71の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース72からの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部73から呼び出してコントローラ71に実行させることで、コントローラ71の制御下で、成膜装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。
【0032】
なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体74に格納された状態のものを記憶部73にインストールすることによって利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体74としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0033】
以上のような構成の成膜装置100では、制御部70の制御に基づき、CVD法によりZrBx膜の成膜処理が行われる。成膜処理の手順の一例を挙げると、まず、ゲートバルブ26を開放した状態で、開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。次に、ゲートバルブ26を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を真空にする。また、ヒーター6によりウエハWを所定温度に加熱する。そして、シャワーヘッド11のガス吐出孔13からウエハWへ向けて成膜ガスを供給する。このようにして、ウエハWの表面にZrBx膜を成膜することができる。
【0034】
<成膜方法>
次に、成膜装置100で行われる成膜方法のさらに具体的な内容について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、この成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図4及び図5は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を示す工程図である。本発明の実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置100の処理容器1内に、パターン形成された絶縁膜を有するウエハWを配置する工程(STEP1)と、処理容器1内に、H2ガスを供給し、コンディショニングする工程(STEP2)と、処理容器1内にH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを供給してCVD法により絶縁膜の表面にZrBx膜を堆積させる工程(STEP3)と、を含むことができる。
【0035】
(STEP1)
STEP1では、成膜装置100の処理容器1内に、被処理体として、絶縁膜が設けられたウエハWを配置する。具体的には、成膜装置100の開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。ここで、図4に示したように、ウエハW上には、下地膜80と、その上に積層された絶縁膜81と、が形成されている。絶縁膜81には、所定の凹凸パターンが形成されており、開口部(トレンチなどの凹部や貫通孔などを意味する)83を有している。なお、開口部83は一つのみ図示しているが複数でもよい。
【0036】
絶縁膜81は、例えば多層配線構造の層間絶縁膜であり、開口部83は、配線溝やビアホールとなる部分である。絶縁膜81としては、例えばSiO2、SiNのほか、SiCOH、SiOF、CFy(yは正の数を意味する)、BSG、HSQ、多孔質シリカ、SiOC、MSQ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等の低誘電率膜を挙げることができる。
【0037】
(STEP2)
この工程は、処理容器1内に、H2ガスを供給してコンディショニングを行う。コンディショニングは、ガス供給源19から、ガス供給配管15b,15b1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内にH2ガスを導入することによって行うことができる。H2ガスの流量は、次の成膜工程と同様にウエハ面積にほぼ比例する(処理容器1の容積や排気装置35の能力によって調整する必要がある)が、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、12sccm(mL/min)以上64sccm(mL/min)以下の範囲内とすることができる。コンディショニングを行うことによって、処理容器1内の温度、圧力、雰囲気を安定化させることができるので、次の成膜工程で所望のZrBx膜を成膜できる。また、コンディショニングによって、ウエハ間の処理のばらつきも少なくすることができる。なお、STEP2のコンディショニング工程は任意工程であり、実施しなくてもよいが、成膜処理の条件を安定化させてウエハ間の処理の均一性を保つ観点からは実施することが好ましい。
【0038】
(STEP3)
STEP3は、成膜工程であり、図5に示したように絶縁膜81の表面にCVD法によりZrBx膜87を形成する。すなわち、この工程は、処理容器1内にH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを供給し、絶縁膜81の表面にZrBx膜87を堆積させる工程である。STEP3では、まず、ガス供給源19から、マスフローコントローラ17aにより流量制御しながら、H2ガスを、ガス供給配管15aを介して原料容器21内に供給する。このとき、原料容器21内は、無用な分解副反応が生じないように、固体原料のZr(BH4)4が安定化する温度、例えば−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しておくことが好ましい。Zr(BH4)4がH2ガスにより安定化されている場合は顕著に分解反応の起こらない45℃以下の温度で保温してもよい。原料容器21内では、導入されたH2ガスとの接触によって、固体原料のZr(BH4)4が気化する。そして、成膜ガスとしてのH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスが、ガス供給配管15c,15c1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内に導入され、ウエハWへ向けて供給される。これにより、処理容器1内では、熱CVD法により、絶縁膜81の表面を覆うように、ZrBx膜87の薄膜が形成される。
【0039】
<成膜条件>
ここで、STEP3におけるCVD法によるZrBx膜の成膜処理における好ましい条件について詳細に説明する。
(成膜ガス)
本実施の形態の成膜方法では、成膜ガスとして、H2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを用いる。H2ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、12sccm(mL/min)以上64sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましく、20sccm(mL/min)以上40sccm(mL/min)以下の範囲内であることがより好ましい。また、Zr(BH4)4ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、3sccm(mL/min)以上16sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましく、5sccm(mL/min)以上8sccm(mL/min)以下の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
ZrBx膜のB/Zr比をバリア膜として良好な範囲(つまり、x=1.8〜2.5)に維持するためには、成膜ガスの流量比率が重要となる。このような観点から、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4比]は2以上であればよく、2.5〜10が好ましく、3.3〜7.7が望ましい。H2/M(BH4)4比が2未満であると、ZrBx膜のxが大きくなり(つまり、Bが過剰になり)、化学量論比から大きく外れた膜となってバリア膜としての膜質が低下する。一方、H2/M(BH4)4比が10を超えると、ZrBx膜のxは化学量論比の2に近づくが、成膜レートが遅くなり、実用性が低くなる。
【0041】
本実施の形態の成膜装置100では、固体原料のZr(BH4)4の気化を、温度調節装置23を備えた原料容器21内で安定な温度環境の下で、H2ガスの供給によって行なうことによって、分解副反応の少ない状態でZr(BH4)4ガスを気化させて処理容器1内へ供給できるとともに、容易にH2/Zr(BH4)4比を2以上に調整できる。例えば、ある保持温度における原料容器21内のH2ガスとZr(BH4)4の蒸気圧を合わせた全圧力をP1、Zr(BH4)4の蒸気圧をP2、H2ガスの流量をF1とすると、気化させたZr(BH4)4ガスの流量F2は、下式(i)で表すことができる。この式から明らかなように、原料容器21内の全圧力P1と、H2ガスの流量F1を調節することによって、Zr(BH4)4ガスの流量F2を決めることが可能であり、H2/Zr(BH4)4比の制御も容易に行うことができる。
F2=[P2/(P1−P2)]×F1…(i)
【0042】
(処理圧力)
ZrBx膜の成膜処理における処理圧力は、例えば10Pa以上300Pa以下の範囲内が好ましく、25Pa以上100Pa以下の範囲内がより好ましく、30Pa以上70Pa以下の範囲内が望ましい。処理圧力が高いほど成膜レートが速くなり、低いほど成膜レートが低下する傾向がある。従って、処理圧力が10Paより低いと充分な成膜レートが得られない場合があり、300Paを超えると成膜レートが大きくなりすぎて、B/Zr比が2.5を超えるおそれがあり、ZrBx膜の剥がれ等の不具合が発生する場合がある。
【0043】
(処理温度)
ZrBx膜の成膜処理における処理温度(ウエハWの加熱温度)は、例えば160℃以上300℃以下の範囲内とすることが好ましく、180℃以上250℃以下の範囲内とすることがより好ましい。処理温度が高いほど成膜レートが速くなり、低いほど成膜レートが低下する傾向がある。従って、ウエハWの加熱温度が160℃より低いと充分な成膜レートが得られず、スループットが低下する場合があり、300℃を超えると、成膜レートが大きくなりすぎて、ZrBx膜に剥がれ等の不具合が発生する場合がある。
【0044】
成膜装置100では、上記範囲内のガス流量、処理圧力及び処理温度の条件を組み合わせることによって、例えばCu膜上で3nm/min〜80nm/min程度、SiO2膜上で1nm/min〜25nm/min程度の成膜レートでZrBx膜を成膜できる。成膜条件は、制御部70の記憶部73にレシピとして保存しておくことができる。そして、コントローラ71がそのレシピを読み出して成膜装置100の各エンドデバイスへ制御信号を送出することにより、成膜装置100において、所望の条件で成膜処理を行うことができる。
【0045】
以上のように、STEP1〜STEP3の工程を経て形成されるZrBx膜87は、開口部83にCu配線やCuプラグが充填された後に、絶縁膜81中へのCuの拡散を抑制するバリア膜として機能するものである。ZrBx膜87の膜厚としては、バリア性維持とRC積の上昇抑制の観点から、例えば0.5〜7nmが好ましく、1〜3nmがより好ましい。
【0046】
また、本実施の形態の成膜方法では、ステップカバレッジも良好である。例えば図5における絶縁膜81の開口部83以外の部分に形成されたZrBx膜87の膜厚(トップ膜厚)をTT、開口部83の側部に形成されたZrBx膜87の膜厚(サイド膜厚)をTS、開口部83の底に形成されたZrBx膜87の膜厚(ボトム膜厚)をTBとした場合、0.8×TT≦TSの関係、及び0.8×TT≦TBの関係が成立するように成膜を行うことが可能である。
【0047】
さらに、本実施の形態の成膜方法により成膜されるZrBx膜87は、絶縁膜81との密着性に優れている。また、ZrBx膜87は、絶縁性の膜上に堆積させた場合は相対的に抵抗が高くなり、導電性の膜上に堆積させた場合は相対的に抵抗が低くなる特性を有しているため、例えば開口部83の底にCu膜等の下層配線の金属膜(図示せず)が露出している場合には、ZrBx膜87が介在しても該金属膜と開口部83内に埋め込まれる配線との導通を確保できる。
【0048】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP1〜STEP3の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜81の表面を改質する工程、Arプラズマによるスパッタ処理等を設けてもよい。
【0049】
次に、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
【0050】
(処理温度の検討)
異なる下地膜上に、処理温度を変えてZrBx膜の成膜を行った。処理温度は、160℃、200℃、250℃又は300℃に設定した。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理圧力は50Paとした。下地膜は、Ta膜、Cu膜、Low−k膜(CORAL(商標)、Novellus社製)及びSiO2膜とした。図6は処理温度が160℃、図7は処理温度が200℃、図8は処理温度が250℃、図9は処理温度が300℃の結果を示している。なお、予備実験で成膜レートが大きくなりすぎたため、成膜温度が300℃の場合のみ、Zr(BH4)4ガスを2.6mL/min(sccm)に設定した。図6〜図9では、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットした。膜厚が比較的厚め(およそ15nm以上)の場合は、SEM(走査型電子顕微鏡)により膜厚を測定し、膜厚が比較的薄め(およそ15nm未満)の場合は、XRF(蛍光X線分析)により膜厚を測定した。
【0051】
まず、図6と図9から、処理温度が160℃では、どの下地膜でも成膜レートが小さすぎ、300℃(ただし、Zr(BH4)4流量は他の温度の1/2)では、逆に成膜レートが大きくなりすぎて、バリア膜の用途で0.5〜7nm程度の膜厚で成膜を行うには不向きであることがわかる。それに対して、図7と図8から、処理温度が200℃〜250℃は、数nm〜数十nm程度の膜厚のZrBx膜を成膜する上で適した処理温度であることが確認された。また、バリア膜の用途で目標とする1〜3nm程度の膜厚でZrBx膜を成膜するためには、200℃より少し低めの処理温度も好ましいと考えられた。
【0052】
以上の結果を踏まえ、異なる下地膜上に、処理温度を180℃に固定してZrBx膜の成膜を行った。下地膜は、Cu膜、Ru膜、Low−k膜(CORAL(商標)、Novellus社製)、TiN膜、SiN膜、SiC膜及びSiO2膜とした。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理圧力は50Paとした。図10及び図11は、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットしたグラフである。図10は、SEM(走査型電子顕微鏡)により膜厚を測定した結果であり、図11はXRF(蛍光X線分析)により膜厚を測定した結果である。図10及び図11から、0.5〜20nm程度の膜厚の範囲内で成膜時間にほぼ比例してZrBx膜の膜厚が増加していることが読み取れる。従って、成膜温度180℃〜250℃の範囲内であれば、バリア膜の用途で目標とする1〜3nm程度の膜厚のZrBx膜を制御性よく成膜できることが確認された。
【0053】
(処理圧力の検討)
下地膜として、Ta膜及びSiO2膜を用い、処理圧力を25Pa、50Pa、又は100Paに変えてZrBx膜の成膜を行った。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理温度は250℃、成膜時間は5分とした。その結果、どの処理圧力でも、下地膜上に金属光沢のZrBx膜を成膜することができたが、100Paでは成膜量が大きすぎて、ZrBx膜の剥がれが発生する事例があった。また、処理圧力を高くすると成膜レートも大きくなる傾向があるため、ZrBx膜の膜厚の制御性を考慮すると、あまり成膜レートが大きくならない100Paか、それより小さな処理圧力が好ましいと考えられる。従って、処理圧力は、この実験結果からは25Pa〜100Paの範囲内であればZrBx膜を成膜できるので好ましいと言えるが、30Pa〜70Paの範囲内が最も好ましいと考えられる。
【0054】
(原料ガス流量の検討)
下地膜として、Ta、Cu及びSiO2を用い、成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)に固定し、Zr(BH4)4ガスを2.6mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:7.7]、6mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:3.3]、又は15.5mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:1.3]に設定してZrBx膜の成膜を行った。いずれも処理圧力は50Paに設定した。処理温度は250℃、成膜時間は5分とした。その結果、どの原料流量でも、下地膜上に金属光沢のZrBx膜を成膜することができた。
【0055】
(成膜条件の検討)
上記処理温度、処理圧力及び原料ガス流量の実験結果を踏まえ、成膜条件の検討を行った。異なる下地膜上に、成膜ガス[H2ガスとZr(BH4)4ガス]の流量と圧力を変えてZrBx膜の成膜を行った。下地膜は、Ta膜、Cu膜及びSiO2膜とした。また、処理温度は、200℃に設定した。成膜ガスの流量は、H2ガスの流量を20mL/min(sccm)に固定し、Zr(BH4)4ガスの流量を2.6mL/min(sccm)又は6mL/min(sccm)とした。処理圧力は、25Pa又は50Paとした。
【0056】
ここで、成膜条件は以下のように設定した。
標準条件(Std):Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paの組み合わせ。
低圧条件(LP):Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が25Paの組み合わせ。
低原料条件(LS)は、Zr(BH4)4ガスの流量が2.6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paの組み合わせ。
【0057】
図12は、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットしたグラフである。また、図13は、横軸に下地膜の種類をとり、縦軸を成膜レート[nm/min]とした棒グラフである。図12より、成膜時間が長くなるほど、ZrBx膜の膜厚も大きくなる傾向があるが、下地膜の種類によって大きな差があることがわかる。また、図13より、いずれの下地膜においても、低原料条件(LS)よりも低圧条件(LP)の方が成膜レートが大きくなっており、さらに標準条件(Std)では最も成膜レートが大きいことがわかる。このように、処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量によって、成膜レートを調節できる。また、成膜レートを考慮すると、Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paである標準条件(Std)が最も好ましいことが確認された。
【0058】
(膜成分の分析)
次に、成膜装置100を用いてTa膜、SiO2膜上に成膜した厚さ100nm以上のZrBx膜について、XPS(X線光電子分光)分析による膜の成分分析を行った。ZrBx膜は、処理温度200℃で15分間、250℃で5分間、又は300℃で2分間の条件で成膜した。H2ガスの流量は20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスの流量は6mL/min(sccm)、処理圧力は50Paに設定した。なお、表面の自然酸化膜を除去するため、表層をArスパッタによって除去したサンプルについても分析を行った。
【0059】
図14に、処理温度250℃、5分間で成膜したSiO2膜上のZrBx膜のXPS分析によるチャートを示した。図14から、ZrBx膜の最表面(Arスパッタしていない状態)は、ZrO2、Zr(OH)x等のピークが検出され、酸化されていることがわかるが、Arスパッタ後のサンプルから、ZrBx膜の内部はほぼZrBxにより形成されていることが確認された。また、図15に温度条件および下地膜の種類(SiO2膜、Ta膜)を変えて成膜したZrBx膜中のB/Zr比、及びO/Zr比を示した。図15の結果から、実験の条件である処理温度200℃〜300℃の範囲内では、B/Zr比が2.1〜2.5の範囲内であり、化学量論比に近いZrBx膜が得られた。なお、ZrBx膜中の酸素含有量は約5%であった。
【0060】
(段差被覆性の評価)
次に、開口径120nm、アスペクト比1.5〜4のホール、又は、開口幅120nm、アスペクト比1.5〜4のトレンチが形成されたSiO2膜に対して、ZrBx膜の成膜を行うことによって、段差被覆性を評価した。ZrBx膜は、処理温度200℃で5分間(目標膜厚20〜21nm)、又は処理温度250℃で5分間(目標膜厚125〜130nm)、の条件で成膜した。H2ガスの流量は20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスの流量は6mL/min(sccm)、処理圧力は50Paに設定した。
【0061】
アスペクト比が1.5〜4のホールについての段差被覆性の測定結果を図16に示した。また、アスペクト比が1.5〜4のトレンチについての段差被覆性の測定結果を図17に示した。図16及び図17より、トップ膜厚(TT)に対するサイド膜厚(TS)の比(TS/TT)は、ホールが0.8以上、トレンチが0.8以上であり、トップ膜厚(TT)に対するボトム膜厚(TB)の比(TB/TT)は、ホールが0.9以上、トレンチが0.85以上であった。このように、本実施の形態の成膜方法は、段差被覆性に優れていることが確認された。
【0062】
<作用>
本実施の形態の成膜方法では、H2ガスを、固体原料のZr(BH4)4を気化させて処理容器1内に導くキャリアガスとして用いる。しかし、H2ガスは単にキャリアガスとして機能するだけでなく、処理容器1内を還元雰囲気に保つとともに、成膜反応に関与して成膜されるZrB2膜のB/Zr比を化学量論比に近づける作用を有している。すなわち、通常、Zr(BH4)4ガスを原料とする熱CVD法による成膜では、所定温度に加熱されたウエハW上で下式(1)のような熱分解反応が生じる。
Zr(BH4)4 → ZrB2+B2H6+5H2 … (1)
【0063】
しかし、本実施の形態の成膜方法におけるSTEP3の成膜工程では、過剰のH2ガスとZr(BH4)4ガスを混合して処理容器1内に導入することから、所定温度に加熱されたウエハW上で下式(2)のような熱分解反応が生じるものと考えられる。
Zr(BH4)4+nH2 → ZrB2+B2H6+(5+n)H2 … (2)
【0064】
上記(2)式におけるH2の役割は必ずしも明確に解明されていないが、Zr(BH4)4に対して過剰のH2を存在させることによって、B2H6の生成(ホウ素の消費)を促し、ZrBx膜中に過剰なホウ素が残存することを抑制するものと考えられる。このようなH2ガスの添加効果を充分に引き出すために、本実施の形態の成膜方法では、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/Zr(BH4)4]を2以上(好ましくは2.5〜10、望ましくは3.3〜7.7)に設定する。これにより、300℃以下の熱CVD法では従来成膜が困難であった、B/Zr比が1.8〜2.5で良好な電気特性やバリア特性をもつZrBx膜を成膜することができるのである。
【0065】
以上のように、本実施の形態の成膜方法では、固体原料のZr(BH4)4に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してZr(BH4)4を気化させ、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/Zr(BH4)4]が2以上になるように処理容器1内に導入することにより、リモートプラズマを利用せずに、B/Zr比が化学量論比に近い適正な範囲内(つまり、xが1.8〜2.5)のZrBx膜を成膜できる。従って、リモートプラズマ設備が必要な従来法に比べ、成膜装置の構成を簡素化することができる。
【0066】
また、本実施の形態の成膜方法によれば、絶縁膜81の表面に均一に、かつ所定の厚みでZrBx膜87を成膜できる。また、ステップカバレッジも良好であり、例えば絶縁膜81に形成された、開口径に対する深さの比が大きな高アスペクト比の開口部83においても、開口部83内にほぼ均一な膜厚でZrBx膜87を形成できる。このようにして得られるZrBx膜87は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性を有するものである。すなわち、本実施の形態の成膜方法によって成膜されるZrBx膜87は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜81中へ拡散することを効果的に抑制する。従って、バリア膜として、本実施の形態の成膜方法によってZrBx膜87を成膜することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0067】
[ダマシンプロセスへの適用例]
次に、図18〜図20を参照しながら、上記実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図18は、ZrBx膜87を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図である。下地配線層となる層間絶縁膜101の上には、エッチングストッパ膜102、ビア層となる層間絶縁膜103、エッチングストッパ膜104、及び配線層となる層間絶縁膜105が、この順番に形成されている。さらに、層間絶縁膜101にはCuが埋め込まれた下層配線106が形成されている。なお、エッチングストッパ膜102,104は、いずれも銅の拡散を防止するバリア機能も有している。層間絶縁膜103及び層間絶縁膜105は、例えばCVD法により成膜された低誘電率膜である。エッチングストッパ膜102,104は、例えばCVD法により成膜された炭化珪素(SiC)膜、窒化珪素(SiN)膜、炭化窒化珪素(SiCN)膜等である。
【0068】
図18に示すように、層間絶縁膜103,105には、開口部103a,105aがそれぞれ所定のパターンで形成されている。このような開口部103a,105aは、常法に従い、フォトリソグラフィー技術を利用して層間絶縁膜103,105を所定のパターンにエッチングすることによって形成できる。開口部103aはビアホールであり、開口部105aは配線溝である。開口部103aは下層配線106の上面まで達しており、開口部105aは、エッチングストッパ膜104の上面まで達している。
【0069】
次に、図19は、図18の積層体に対して、成膜装置100を用いて熱CVD法によりZrBx膜87を形成した後の状態を示している。成膜工程では、上記の成膜条件により熱CVD法を行うことにより、開口部103a,105aが高アスペクト比である場合でも、層間絶縁膜103,105に対する密着性に優れたZrBx膜87を、均一な膜厚で、かつ良好なステップカバレッジで成膜できる。
【0070】
次に、図20に示すように、層間絶縁膜105の上から、Cuを堆積させて開口部103a及び105aを埋めるCu膜107を形成する。このCu膜107は、例えばCVD法、PVD法、メッキ法等によって成膜することができる。開口部103a内に埋め込まれたCu膜107はCuプラグとなり、開口部105a内に埋め込まれたCu膜107はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜107を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。
【0071】
このようにして形成された多層配線構造体において、ZrBx膜87は、優れたバリア機能を有するため、Cu膜107から層間絶縁膜103,105へのCuの拡散を抑制できる。また、ZrBx膜87は、開口部103aの底部ではCuの下層配線106上に形成されることによって低抵抗な膜となるため、開口部103a,105a内に埋め込まれたCu膜107と下層配線106との電気的なコンタクトを確保できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0072】
以上の説明では、成膜方法をデュアルダマシンプロセスへ適用した例を挙げたが、シングルダマシンプロセスにも同様に適用可能である。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、被処理体である基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。また、上記実施の形態では、上記MBx膜のMがZrである場合を例に挙げて説明したが、MがHfであるHfBx膜(典型的にはHfB2膜として表すことができる)についても原料の熱化学的性質が極めて類似しているため同様に成膜できる。
【符号の説明】
【0074】
1…処理容器、1a…天板、1b…側壁、1c…底壁、3…ステージ、6…ヒーター、7…ヒーター電源、8…温度測定器、9…熱電対(TC)、11…シャワーヘッド、12…ガス拡散空間、13…ガス吐出孔、15,15a,15b,15c,15b1,15b2,15c1,15c2…ガス供給配管、16…圧力計、17a,17b…マスフローコントローラ(MFC)、18a,18b,18c,18d,18e,18g,18h,18i,18j…バルブ、18f…圧力調整バルブ、19…ガス供給源、21…原料容器、23…温度調節装置、25…開口、26…ゲートバルブ、31…主排気孔、32…排気孔、33…主排気バルブ、34…圧力調整バルブ、34a…圧力計、35…排気装置、41…Oリング、70…制御部、100…成膜装置、W…半導体ウエハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能な成膜方法及び成膜装置、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程で成膜される高融点金属化合物の拡散に対するバリア膜として、ZrN膜、ZrB2膜等のZr化合物膜が知られている。Zr化合物は、バルク状態での抵抗率が10μΩcm程度と低いため、導電性のバリア膜として有望である。また、Zr化合物は、下地膜の種類によって抵抗率が極端に変わることを利用して、除去不要な導電性キャップ膜として利用できることも提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
ZrN膜の形成には、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法が提案されているが、成膜温度が300℃以上と高いことや、原料としてアルキルアミノ系化合物などの炭素を構成元素に含む原料を使用するため、炭素の残留による高抵抗化や、Zr3N4などの絶縁性化合物の生成に注意する必要がある。
【0004】
一方、ZrB2膜の形成には、Zr(BH4)4を原料として用い、処理容器内にプラズマで励起されたH2ガスやNH3ガスを導入するCVD法による成膜やALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜が提案されている(例えば非特許文献1、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−98521号公報
【特許文献2】特開2008−98522号公報
【特許文献3】特開2006−57162号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Sungら,J. Appl. Phys.Vol91,No.6, 3904-3911(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1や特許文献3の提案では、処理容器内に原子状のH等を導入するために、リモートプラズマ設備が必要である。そのため、成膜装置の構成が複雑になり、半導体プロセスでの工業的な利用には不向きである。しかし、非特許文献1において指摘されているように、Zr(BH4)4を原料とした熱CVD法によるZrB2膜の成膜では、膜中のB/Zr比が過剰になってしまい、膜質が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、熱CVD法によって、M(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を原料としてM/Zr比が適正範囲内の良質なMBx膜を成膜する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の成膜方法は、
被処理体を処理容器内に配置する工程と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)が収容された原料容器に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4ガスを生成させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように前記処理容器内に導入し、熱CVD法により被処理体上にMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
を備えている。
【0010】
本発明の成膜方法において、前記MBx膜を堆積させる工程では、前記処理容器内の圧力を10Pa以上300Pa以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0011】
また、本発明の成膜方法において、前記MBx膜を堆積させる工程では、被処理体の温度を160℃以上300℃以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0012】
また、本発明の成膜方法は、前記原料容器内の固体原料を−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しながらH2ガスを供給することが好ましい。
【0013】
本発明の成膜装置は、
真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を保持する原料容器と、
前記原料容器内の固体原料を冷却もしくは保温する温度調節装置と、
前記原料容器内へH2ガスを供給するH2ガス供給装置と、
前記原料容器から前記処理容器内へH2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを供給するガス供給管と、
を備え、
前記原料容器内へ供給するH2ガスの流量および該原料容器内圧力を調節することによって、前記H2ガスの供給によって気化したM(BH4)4ガスの流量、及びH2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]を制御しながら前記処理容器内に導入し、被処理体に熱CVD法によりMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記のいずれかに記載の成膜方法によって被処理体の絶縁膜上にバリア膜としてのMBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
前記MBx膜上に、金属膜を堆積させる工程と、
を含むものである。この場合、少なくとも、前記絶縁膜に形成された開口部の内壁面を覆うように前記MBx膜を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成膜方法によれば、固体原料のM(BH4)4に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4を気化させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように処理容器内に導入することにより、リモートプラズマを利用せずに熱CVD法によって、B/M比が化学量論比に近い適正な範囲内(つまり、xが1.8〜2.5)のMBx膜を成膜できる。従って、リモートプラズマ設備が必要な従来法に比べ、成膜装置の構成を大幅に簡素化することができる。
【0016】
また、本発明の成膜方法によれば、絶縁膜の表面に均一に、かつ所定の厚みでMBx膜を成膜できる。また、ステップカバレッジも良好であり、例えば絶縁膜に形成された、開口径に対する深さの比(アスペクト比)が大きな高アスペクト比の開口部においても、開口部内にほぼ均一な膜厚でMBx膜を形成できる。このようにして得られるMBx膜は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性を有するものである。すなわち、本発明の成膜方法によって成膜されるMBx膜は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜中へ拡散することを効果的に抑制する。従って、バリア膜として、本発明の成膜方法によりMBx膜を成膜することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成膜方法に利用可能な成膜装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の成膜装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである
【図4】本発明の実施の形態の成膜方法の工程説明に供するパターン形成された絶縁膜を有するウエハ表面の要部断面図である。
【図5】図4に続く工程図であり、ZrBx膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図6】処理温度160℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図7】処理温度200℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】処理温度250℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図9】処理温度300℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図10】処理温度180℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図11】処理温度180℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示す別のグラフである。
【図12】処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量を変えた実験における処理温度200℃における成膜時間とZrBx膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図13】処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量を変えた実験における処理温度200℃における下地膜の種類と成膜レートとの関係を示すグラフである。
【図14】ZrBx膜のXPS分析結果を示すチャートである。
【図15】異なる条件で成膜したZrBx膜のB/Zr比及びO/Zr比の分析結果を示すグラフである。
【図16】アスペクト比が1.5〜4のホールについての段差被覆性の測定結果を示すグラフである。
【図17】アスペクト比が1.5〜4のトレンチについての段差被覆性の測定結果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施の形態の成膜方法をダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図19】図18に続く工程図であり、ZrBx膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図20】図19に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
<成膜装置の概要>
まず、本発明の成膜方法の実施に適した成膜装置の構成について説明する。図1は、本発明の成膜方法に使用可能な成膜装置100の概略構成例を示している。この成膜装置100は、熱CVD装置として構成されている。成膜装置100では、低誘電率膜等の絶縁膜上に、MBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を形成する成膜処理を行なうことができる。本実施の形態では、上記MがZrであるZrBx膜(化学量論比に基づきZrB2膜として表すことができる)を例に挙げて説明する。
【0019】
成膜装置100は、気密に構成された略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1の中には被処理体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wを水平に支持する載置台であるステージ3が配備されている。ステージ3は、円筒状の支持部材5により支持されている。ステージ3には、ウエハWを加熱するため、加熱手段としてのヒーター6が埋設されている。ヒーター6は、ヒーター電源7から給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターである。また、ステージ3には、温度計測手段としての熱電対(TC)9および温度測定器8が配備されており、ステージ3の温度をリアルタイムで計測し、ヒーター電源7にフィードバックできるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、熱電対付ウエハによって実測され、それにより推測された処理中のウエハWの温度を意味する。ウエハWを加熱するための加熱手段としては、抵抗加熱ヒーターに限らず、例えばランプ加熱ヒーターでもよい。
【0020】
また、図示は省略するが、ステージ3には、ウエハWを支持して昇降させるための複数のリフトピンがステージ3の基板載置面Sに対して突没可能に設けられている。これらのリフトピンは任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置で搬送装置(図示省略)との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0021】
処理容器1の天板1aには、シャワーヘッド11が設けられている。このシャワーヘッド11は、内部にガス拡散空間12が設けられている。シャワーヘッド11の下面には、多数のガス吐出孔13が形成されている。ガス拡散空間12はガス吐出孔13に連通している。シャワーヘッド11の中央部には、ガス拡散空間12に連通するガス供給配管15b1,15c1が接続されている。
【0022】
ガス供給源19は、水素(H2)ガスを供給する。H2ガスは、固体原料のZr(BH4)4を気化させて処理容器1内に運び込むためのキャリアガスとして用いられる。また、H2ガスは、成膜処理の前に処理容器1内をコンディショニングする目的でも用いられる。なお、図示は省略するが、ガス供給源19のほかに、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガスの供給源や、処理容器1内をパージするためのパージガスの供給源等を有していてもよい。
【0023】
ガス供給源19には、ガス供給配管15が接続されている。ガス供給配管15は、途中でガス供給配管15a,15bに分岐している。ガス供給配管15aには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)17aと、その前に配備されたバルブ18aが設けられている。ガス供給配管15bには、流量調整のためのMFC(マスフローコントローラ)17bと、その前に配備されたバルブ18bが設けられている。
【0024】
原料容器21には、ガスの入口21a、バイパス管21b、出口21cを備え、それぞれに配備されたバルブ18c、18d、18eが設けられている。ガス供給配管15aは、固体原料であるZr(BH4)4を収容する原料容器21内にバルブ18cを介して挿入され、H2ガスを原料容器21の内部に供給可能に接続されている。原料容器21は耐圧容器であり、容器の出口バルブ18eを経由した後、圧力計16および圧力調整バルブ18fでその容器内の圧力を調整することが可能である。原料容器21は、例えばジャケット式熱交換器などの温度調節装置(冷却装置もしくは保温装置)23を有しており、内部に収容されたZr(BH4)4を例えば−15℃〜5℃の範囲内の温度に冷却保持できるように構成されている。Zr(BH4)4は、融点が28.7℃であるため、保冷された原料容器21内では、固体の状態で存在している。なお、原料容器内にH2ガスを保持、もしくは流通している場合はこの限りではなく、10〜45℃に保持することも可能である。30℃以上に保持する場合、Zr(BH4)4は、液体の状態となる。
【0025】
原料容器の出口である圧力調整バルブ18fに接続されているガス供給配管15cは2つに分岐し、一方のガス供給配管15c1はバルブ18gを介してシャワーヘッド11に接続されている。他方のガス供給配管15c2は、バルブ18iを通して排気装置35に接続されている。MFC(マスフローコントローラ)17bに接続されているガス供給配管15bは、2つに分岐し、一方のガス供給配管15b1はバルブ18hを介してシャワーヘッド11に接続されている。他方のガス供給配管15b2は、バルブ18jを通してガス供給配管15c2と合流し、排気装置35に接続されている。
【0026】
以上の構成によって、成膜装置100では、ガス供給源19からのH2ガスを、ガス供給配管15aを介して原料容器21内に供給することによって、冷却保持もしくは保温されたZr(BH4)4に接触させ、Zr(BH4)4を固体もしくは液体の状態から気化(昇華)させることができる。そして、H2ガスをキャリアガスとしながら、ガス供給配管15c,15c1を介してシャワーヘッド11のガス拡散空間12へ供給し、ガス吐出孔13から処理容器1内のステージ3上に配置されたウエハWへ向けて放出することができる。このように、本実施の形態では、H2ガスはキャリアガスであるとともに、成膜ガス(つまり、H2ガスとZr(BH4)4ガスとの混合ガス)の一部分としても機能する。
【0027】
また、成膜装置100では、ガス供給源19からのH2ガスを、ガス供給配管15b,15b1を介してシャワーヘッド11のガス拡散空間12へ供給し、ガス吐出孔13から処理容器1内へ供給することもできる。
【0028】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハWを搬入、搬出するための開口25が設けられており、さらに、開口25を開閉するためのゲートバルブ26が設けられている。
【0029】
処理容器1の底壁1cの側部には主排気孔31および排気孔32が形成されている。この主排気孔31には主排気バルブ33を介して、排気孔32には、処理容器1に設置された圧力計34aにより制御可能な圧力調整バルブ34を介して、それぞれ排気装置35が接続されている。排気装置35は、例えば図示しない真空ポンプや排気除害装置などを備えており、処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0030】
処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリングが配備されている。例えば図1では、代表的に、天板1aと側壁1bとの接合部分に配備した環状のOリング41を図示している。なお、他の部位にもOリングを配備することが可能であるが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0031】
成膜装置100を構成する各エンドデバイス(例えば、ヒーター電源7、温度測定器8、MFC17a,17b、排気装置35など)は、制御部70に接続されて制御される構成となっている。成膜装置100における制御系統の構成例を図2に示した。制御部70は、CPUを備えたコンピュータであるコントローラ71と、このコントローラ71に接続されたユーザーインターフェース72および記憶部73を備えている。ユーザーインターフェース72は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部73には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ71の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース72からの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部73から呼び出してコントローラ71に実行させることで、コントローラ71の制御下で、成膜装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。
【0032】
なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体74に格納された状態のものを記憶部73にインストールすることによって利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体74としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0033】
以上のような構成の成膜装置100では、制御部70の制御に基づき、CVD法によりZrBx膜の成膜処理が行われる。成膜処理の手順の一例を挙げると、まず、ゲートバルブ26を開放した状態で、開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。次に、ゲートバルブ26を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を真空にする。また、ヒーター6によりウエハWを所定温度に加熱する。そして、シャワーヘッド11のガス吐出孔13からウエハWへ向けて成膜ガスを供給する。このようにして、ウエハWの表面にZrBx膜を成膜することができる。
【0034】
<成膜方法>
次に、成膜装置100で行われる成膜方法のさらに具体的な内容について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、この成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。図4及び図5は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を示す工程図である。本発明の実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置100の処理容器1内に、パターン形成された絶縁膜を有するウエハWを配置する工程(STEP1)と、処理容器1内に、H2ガスを供給し、コンディショニングする工程(STEP2)と、処理容器1内にH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを供給してCVD法により絶縁膜の表面にZrBx膜を堆積させる工程(STEP3)と、を含むことができる。
【0035】
(STEP1)
STEP1では、成膜装置100の処理容器1内に、被処理体として、絶縁膜が設けられたウエハWを配置する。具体的には、成膜装置100の開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。ここで、図4に示したように、ウエハW上には、下地膜80と、その上に積層された絶縁膜81と、が形成されている。絶縁膜81には、所定の凹凸パターンが形成されており、開口部(トレンチなどの凹部や貫通孔などを意味する)83を有している。なお、開口部83は一つのみ図示しているが複数でもよい。
【0036】
絶縁膜81は、例えば多層配線構造の層間絶縁膜であり、開口部83は、配線溝やビアホールとなる部分である。絶縁膜81としては、例えばSiO2、SiNのほか、SiCOH、SiOF、CFy(yは正の数を意味する)、BSG、HSQ、多孔質シリカ、SiOC、MSQ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等の低誘電率膜を挙げることができる。
【0037】
(STEP2)
この工程は、処理容器1内に、H2ガスを供給してコンディショニングを行う。コンディショニングは、ガス供給源19から、ガス供給配管15b,15b1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内にH2ガスを導入することによって行うことができる。H2ガスの流量は、次の成膜工程と同様にウエハ面積にほぼ比例する(処理容器1の容積や排気装置35の能力によって調整する必要がある)が、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、12sccm(mL/min)以上64sccm(mL/min)以下の範囲内とすることができる。コンディショニングを行うことによって、処理容器1内の温度、圧力、雰囲気を安定化させることができるので、次の成膜工程で所望のZrBx膜を成膜できる。また、コンディショニングによって、ウエハ間の処理のばらつきも少なくすることができる。なお、STEP2のコンディショニング工程は任意工程であり、実施しなくてもよいが、成膜処理の条件を安定化させてウエハ間の処理の均一性を保つ観点からは実施することが好ましい。
【0038】
(STEP3)
STEP3は、成膜工程であり、図5に示したように絶縁膜81の表面にCVD法によりZrBx膜87を形成する。すなわち、この工程は、処理容器1内にH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを供給し、絶縁膜81の表面にZrBx膜87を堆積させる工程である。STEP3では、まず、ガス供給源19から、マスフローコントローラ17aにより流量制御しながら、H2ガスを、ガス供給配管15aを介して原料容器21内に供給する。このとき、原料容器21内は、無用な分解副反応が生じないように、固体原料のZr(BH4)4が安定化する温度、例えば−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しておくことが好ましい。Zr(BH4)4がH2ガスにより安定化されている場合は顕著に分解反応の起こらない45℃以下の温度で保温してもよい。原料容器21内では、導入されたH2ガスとの接触によって、固体原料のZr(BH4)4が気化する。そして、成膜ガスとしてのH2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスが、ガス供給配管15c,15c1、シャワーヘッド11のガス拡散空間12及びガス吐出孔13を介して処理容器1内に導入され、ウエハWへ向けて供給される。これにより、処理容器1内では、熱CVD法により、絶縁膜81の表面を覆うように、ZrBx膜87の薄膜が形成される。
【0039】
<成膜条件>
ここで、STEP3におけるCVD法によるZrBx膜の成膜処理における好ましい条件について詳細に説明する。
(成膜ガス)
本実施の形態の成膜方法では、成膜ガスとして、H2ガスとZr(BH4)4ガスの混合ガスを用いる。H2ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、12sccm(mL/min)以上64sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましく、20sccm(mL/min)以上40sccm(mL/min)以下の範囲内であることがより好ましい。また、Zr(BH4)4ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば直径100mmのウエハWを処理する場合、3sccm(mL/min)以上16sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましく、5sccm(mL/min)以上8sccm(mL/min)以下の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
ZrBx膜のB/Zr比をバリア膜として良好な範囲(つまり、x=1.8〜2.5)に維持するためには、成膜ガスの流量比率が重要となる。このような観点から、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4比]は2以上であればよく、2.5〜10が好ましく、3.3〜7.7が望ましい。H2/M(BH4)4比が2未満であると、ZrBx膜のxが大きくなり(つまり、Bが過剰になり)、化学量論比から大きく外れた膜となってバリア膜としての膜質が低下する。一方、H2/M(BH4)4比が10を超えると、ZrBx膜のxは化学量論比の2に近づくが、成膜レートが遅くなり、実用性が低くなる。
【0041】
本実施の形態の成膜装置100では、固体原料のZr(BH4)4の気化を、温度調節装置23を備えた原料容器21内で安定な温度環境の下で、H2ガスの供給によって行なうことによって、分解副反応の少ない状態でZr(BH4)4ガスを気化させて処理容器1内へ供給できるとともに、容易にH2/Zr(BH4)4比を2以上に調整できる。例えば、ある保持温度における原料容器21内のH2ガスとZr(BH4)4の蒸気圧を合わせた全圧力をP1、Zr(BH4)4の蒸気圧をP2、H2ガスの流量をF1とすると、気化させたZr(BH4)4ガスの流量F2は、下式(i)で表すことができる。この式から明らかなように、原料容器21内の全圧力P1と、H2ガスの流量F1を調節することによって、Zr(BH4)4ガスの流量F2を決めることが可能であり、H2/Zr(BH4)4比の制御も容易に行うことができる。
F2=[P2/(P1−P2)]×F1…(i)
【0042】
(処理圧力)
ZrBx膜の成膜処理における処理圧力は、例えば10Pa以上300Pa以下の範囲内が好ましく、25Pa以上100Pa以下の範囲内がより好ましく、30Pa以上70Pa以下の範囲内が望ましい。処理圧力が高いほど成膜レートが速くなり、低いほど成膜レートが低下する傾向がある。従って、処理圧力が10Paより低いと充分な成膜レートが得られない場合があり、300Paを超えると成膜レートが大きくなりすぎて、B/Zr比が2.5を超えるおそれがあり、ZrBx膜の剥がれ等の不具合が発生する場合がある。
【0043】
(処理温度)
ZrBx膜の成膜処理における処理温度(ウエハWの加熱温度)は、例えば160℃以上300℃以下の範囲内とすることが好ましく、180℃以上250℃以下の範囲内とすることがより好ましい。処理温度が高いほど成膜レートが速くなり、低いほど成膜レートが低下する傾向がある。従って、ウエハWの加熱温度が160℃より低いと充分な成膜レートが得られず、スループットが低下する場合があり、300℃を超えると、成膜レートが大きくなりすぎて、ZrBx膜に剥がれ等の不具合が発生する場合がある。
【0044】
成膜装置100では、上記範囲内のガス流量、処理圧力及び処理温度の条件を組み合わせることによって、例えばCu膜上で3nm/min〜80nm/min程度、SiO2膜上で1nm/min〜25nm/min程度の成膜レートでZrBx膜を成膜できる。成膜条件は、制御部70の記憶部73にレシピとして保存しておくことができる。そして、コントローラ71がそのレシピを読み出して成膜装置100の各エンドデバイスへ制御信号を送出することにより、成膜装置100において、所望の条件で成膜処理を行うことができる。
【0045】
以上のように、STEP1〜STEP3の工程を経て形成されるZrBx膜87は、開口部83にCu配線やCuプラグが充填された後に、絶縁膜81中へのCuの拡散を抑制するバリア膜として機能するものである。ZrBx膜87の膜厚としては、バリア性維持とRC積の上昇抑制の観点から、例えば0.5〜7nmが好ましく、1〜3nmがより好ましい。
【0046】
また、本実施の形態の成膜方法では、ステップカバレッジも良好である。例えば図5における絶縁膜81の開口部83以外の部分に形成されたZrBx膜87の膜厚(トップ膜厚)をTT、開口部83の側部に形成されたZrBx膜87の膜厚(サイド膜厚)をTS、開口部83の底に形成されたZrBx膜87の膜厚(ボトム膜厚)をTBとした場合、0.8×TT≦TSの関係、及び0.8×TT≦TBの関係が成立するように成膜を行うことが可能である。
【0047】
さらに、本実施の形態の成膜方法により成膜されるZrBx膜87は、絶縁膜81との密着性に優れている。また、ZrBx膜87は、絶縁性の膜上に堆積させた場合は相対的に抵抗が高くなり、導電性の膜上に堆積させた場合は相対的に抵抗が低くなる特性を有しているため、例えば開口部83の底にCu膜等の下層配線の金属膜(図示せず)が露出している場合には、ZrBx膜87が介在しても該金属膜と開口部83内に埋め込まれる配線との導通を確保できる。
【0048】
なお、本実施の形態の成膜方法は、上記STEP1〜STEP3の工程以外に、任意工程として、例えば絶縁膜81の表面を改質する工程、Arプラズマによるスパッタ処理等を設けてもよい。
【0049】
次に、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
【0050】
(処理温度の検討)
異なる下地膜上に、処理温度を変えてZrBx膜の成膜を行った。処理温度は、160℃、200℃、250℃又は300℃に設定した。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理圧力は50Paとした。下地膜は、Ta膜、Cu膜、Low−k膜(CORAL(商標)、Novellus社製)及びSiO2膜とした。図6は処理温度が160℃、図7は処理温度が200℃、図8は処理温度が250℃、図9は処理温度が300℃の結果を示している。なお、予備実験で成膜レートが大きくなりすぎたため、成膜温度が300℃の場合のみ、Zr(BH4)4ガスを2.6mL/min(sccm)に設定した。図6〜図9では、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットした。膜厚が比較的厚め(およそ15nm以上)の場合は、SEM(走査型電子顕微鏡)により膜厚を測定し、膜厚が比較的薄め(およそ15nm未満)の場合は、XRF(蛍光X線分析)により膜厚を測定した。
【0051】
まず、図6と図9から、処理温度が160℃では、どの下地膜でも成膜レートが小さすぎ、300℃(ただし、Zr(BH4)4流量は他の温度の1/2)では、逆に成膜レートが大きくなりすぎて、バリア膜の用途で0.5〜7nm程度の膜厚で成膜を行うには不向きであることがわかる。それに対して、図7と図8から、処理温度が200℃〜250℃は、数nm〜数十nm程度の膜厚のZrBx膜を成膜する上で適した処理温度であることが確認された。また、バリア膜の用途で目標とする1〜3nm程度の膜厚でZrBx膜を成膜するためには、200℃より少し低めの処理温度も好ましいと考えられた。
【0052】
以上の結果を踏まえ、異なる下地膜上に、処理温度を180℃に固定してZrBx膜の成膜を行った。下地膜は、Cu膜、Ru膜、Low−k膜(CORAL(商標)、Novellus社製)、TiN膜、SiN膜、SiC膜及びSiO2膜とした。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理圧力は50Paとした。図10及び図11は、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットしたグラフである。図10は、SEM(走査型電子顕微鏡)により膜厚を測定した結果であり、図11はXRF(蛍光X線分析)により膜厚を測定した結果である。図10及び図11から、0.5〜20nm程度の膜厚の範囲内で成膜時間にほぼ比例してZrBx膜の膜厚が増加していることが読み取れる。従って、成膜温度180℃〜250℃の範囲内であれば、バリア膜の用途で目標とする1〜3nm程度の膜厚のZrBx膜を制御性よく成膜できることが確認された。
【0053】
(処理圧力の検討)
下地膜として、Ta膜及びSiO2膜を用い、処理圧力を25Pa、50Pa、又は100Paに変えてZrBx膜の成膜を行った。成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスを6mL/min(sccm)に設定した。H2/Zr(BH4)4比は3.3である。処理温度は250℃、成膜時間は5分とした。その結果、どの処理圧力でも、下地膜上に金属光沢のZrBx膜を成膜することができたが、100Paでは成膜量が大きすぎて、ZrBx膜の剥がれが発生する事例があった。また、処理圧力を高くすると成膜レートも大きくなる傾向があるため、ZrBx膜の膜厚の制御性を考慮すると、あまり成膜レートが大きくならない100Paか、それより小さな処理圧力が好ましいと考えられる。従って、処理圧力は、この実験結果からは25Pa〜100Paの範囲内であればZrBx膜を成膜できるので好ましいと言えるが、30Pa〜70Paの範囲内が最も好ましいと考えられる。
【0054】
(原料ガス流量の検討)
下地膜として、Ta、Cu及びSiO2を用い、成膜ガスの流量は、H2ガスを20mL/min(sccm)に固定し、Zr(BH4)4ガスを2.6mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:7.7]、6mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:3.3]、又は15.5mL/min(sccm)[H2/Zr(BH4)4比:1.3]に設定してZrBx膜の成膜を行った。いずれも処理圧力は50Paに設定した。処理温度は250℃、成膜時間は5分とした。その結果、どの原料流量でも、下地膜上に金属光沢のZrBx膜を成膜することができた。
【0055】
(成膜条件の検討)
上記処理温度、処理圧力及び原料ガス流量の実験結果を踏まえ、成膜条件の検討を行った。異なる下地膜上に、成膜ガス[H2ガスとZr(BH4)4ガス]の流量と圧力を変えてZrBx膜の成膜を行った。下地膜は、Ta膜、Cu膜及びSiO2膜とした。また、処理温度は、200℃に設定した。成膜ガスの流量は、H2ガスの流量を20mL/min(sccm)に固定し、Zr(BH4)4ガスの流量を2.6mL/min(sccm)又は6mL/min(sccm)とした。処理圧力は、25Pa又は50Paとした。
【0056】
ここで、成膜条件は以下のように設定した。
標準条件(Std):Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paの組み合わせ。
低圧条件(LP):Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が25Paの組み合わせ。
低原料条件(LS)は、Zr(BH4)4ガスの流量が2.6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paの組み合わせ。
【0057】
図12は、横軸に成膜時間[min]をとり、縦軸の膜厚[nm]を、下地膜の種類毎にプロットしたグラフである。また、図13は、横軸に下地膜の種類をとり、縦軸を成膜レート[nm/min]とした棒グラフである。図12より、成膜時間が長くなるほど、ZrBx膜の膜厚も大きくなる傾向があるが、下地膜の種類によって大きな差があることがわかる。また、図13より、いずれの下地膜においても、低原料条件(LS)よりも低圧条件(LP)の方が成膜レートが大きくなっており、さらに標準条件(Std)では最も成膜レートが大きいことがわかる。このように、処理圧力とZr(BH4)4ガスの流量によって、成膜レートを調節できる。また、成膜レートを考慮すると、Zr(BH4)4ガスの流量が6mL/min(sccm)、処理圧力が50Paである標準条件(Std)が最も好ましいことが確認された。
【0058】
(膜成分の分析)
次に、成膜装置100を用いてTa膜、SiO2膜上に成膜した厚さ100nm以上のZrBx膜について、XPS(X線光電子分光)分析による膜の成分分析を行った。ZrBx膜は、処理温度200℃で15分間、250℃で5分間、又は300℃で2分間の条件で成膜した。H2ガスの流量は20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスの流量は6mL/min(sccm)、処理圧力は50Paに設定した。なお、表面の自然酸化膜を除去するため、表層をArスパッタによって除去したサンプルについても分析を行った。
【0059】
図14に、処理温度250℃、5分間で成膜したSiO2膜上のZrBx膜のXPS分析によるチャートを示した。図14から、ZrBx膜の最表面(Arスパッタしていない状態)は、ZrO2、Zr(OH)x等のピークが検出され、酸化されていることがわかるが、Arスパッタ後のサンプルから、ZrBx膜の内部はほぼZrBxにより形成されていることが確認された。また、図15に温度条件および下地膜の種類(SiO2膜、Ta膜)を変えて成膜したZrBx膜中のB/Zr比、及びO/Zr比を示した。図15の結果から、実験の条件である処理温度200℃〜300℃の範囲内では、B/Zr比が2.1〜2.5の範囲内であり、化学量論比に近いZrBx膜が得られた。なお、ZrBx膜中の酸素含有量は約5%であった。
【0060】
(段差被覆性の評価)
次に、開口径120nm、アスペクト比1.5〜4のホール、又は、開口幅120nm、アスペクト比1.5〜4のトレンチが形成されたSiO2膜に対して、ZrBx膜の成膜を行うことによって、段差被覆性を評価した。ZrBx膜は、処理温度200℃で5分間(目標膜厚20〜21nm)、又は処理温度250℃で5分間(目標膜厚125〜130nm)、の条件で成膜した。H2ガスの流量は20mL/min(sccm)、Zr(BH4)4ガスの流量は6mL/min(sccm)、処理圧力は50Paに設定した。
【0061】
アスペクト比が1.5〜4のホールについての段差被覆性の測定結果を図16に示した。また、アスペクト比が1.5〜4のトレンチについての段差被覆性の測定結果を図17に示した。図16及び図17より、トップ膜厚(TT)に対するサイド膜厚(TS)の比(TS/TT)は、ホールが0.8以上、トレンチが0.8以上であり、トップ膜厚(TT)に対するボトム膜厚(TB)の比(TB/TT)は、ホールが0.9以上、トレンチが0.85以上であった。このように、本実施の形態の成膜方法は、段差被覆性に優れていることが確認された。
【0062】
<作用>
本実施の形態の成膜方法では、H2ガスを、固体原料のZr(BH4)4を気化させて処理容器1内に導くキャリアガスとして用いる。しかし、H2ガスは単にキャリアガスとして機能するだけでなく、処理容器1内を還元雰囲気に保つとともに、成膜反応に関与して成膜されるZrB2膜のB/Zr比を化学量論比に近づける作用を有している。すなわち、通常、Zr(BH4)4ガスを原料とする熱CVD法による成膜では、所定温度に加熱されたウエハW上で下式(1)のような熱分解反応が生じる。
Zr(BH4)4 → ZrB2+B2H6+5H2 … (1)
【0063】
しかし、本実施の形態の成膜方法におけるSTEP3の成膜工程では、過剰のH2ガスとZr(BH4)4ガスを混合して処理容器1内に導入することから、所定温度に加熱されたウエハW上で下式(2)のような熱分解反応が生じるものと考えられる。
Zr(BH4)4+nH2 → ZrB2+B2H6+(5+n)H2 … (2)
【0064】
上記(2)式におけるH2の役割は必ずしも明確に解明されていないが、Zr(BH4)4に対して過剰のH2を存在させることによって、B2H6の生成(ホウ素の消費)を促し、ZrBx膜中に過剰なホウ素が残存することを抑制するものと考えられる。このようなH2ガスの添加効果を充分に引き出すために、本実施の形態の成膜方法では、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/Zr(BH4)4]を2以上(好ましくは2.5〜10、望ましくは3.3〜7.7)に設定する。これにより、300℃以下の熱CVD法では従来成膜が困難であった、B/Zr比が1.8〜2.5で良好な電気特性やバリア特性をもつZrBx膜を成膜することができるのである。
【0065】
以上のように、本実施の形態の成膜方法では、固体原料のZr(BH4)4に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してZr(BH4)4を気化させ、H2ガスとZr(BH4)4ガスの体積流量比[H2/Zr(BH4)4]が2以上になるように処理容器1内に導入することにより、リモートプラズマを利用せずに、B/Zr比が化学量論比に近い適正な範囲内(つまり、xが1.8〜2.5)のZrBx膜を成膜できる。従って、リモートプラズマ設備が必要な従来法に比べ、成膜装置の構成を簡素化することができる。
【0066】
また、本実施の形態の成膜方法によれば、絶縁膜81の表面に均一に、かつ所定の厚みでZrBx膜87を成膜できる。また、ステップカバレッジも良好であり、例えば絶縁膜81に形成された、開口径に対する深さの比が大きな高アスペクト比の開口部83においても、開口部83内にほぼ均一な膜厚でZrBx膜87を形成できる。このようにして得られるZrBx膜87は、良好な電気的特性とCuの拡散に対する優れたバリア特性を有するものである。すなわち、本実施の形態の成膜方法によって成膜されるZrBx膜87は、半導体装置において、配線間の電気的接続を確保しながら、銅配線からCuが絶縁膜81中へ拡散することを効果的に抑制する。従って、バリア膜として、本実施の形態の成膜方法によってZrBx膜87を成膜することによって、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0067】
[ダマシンプロセスへの適用例]
次に、図18〜図20を参照しながら、上記実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図18は、ZrBx膜87を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図である。下地配線層となる層間絶縁膜101の上には、エッチングストッパ膜102、ビア層となる層間絶縁膜103、エッチングストッパ膜104、及び配線層となる層間絶縁膜105が、この順番に形成されている。さらに、層間絶縁膜101にはCuが埋め込まれた下層配線106が形成されている。なお、エッチングストッパ膜102,104は、いずれも銅の拡散を防止するバリア機能も有している。層間絶縁膜103及び層間絶縁膜105は、例えばCVD法により成膜された低誘電率膜である。エッチングストッパ膜102,104は、例えばCVD法により成膜された炭化珪素(SiC)膜、窒化珪素(SiN)膜、炭化窒化珪素(SiCN)膜等である。
【0068】
図18に示すように、層間絶縁膜103,105には、開口部103a,105aがそれぞれ所定のパターンで形成されている。このような開口部103a,105aは、常法に従い、フォトリソグラフィー技術を利用して層間絶縁膜103,105を所定のパターンにエッチングすることによって形成できる。開口部103aはビアホールであり、開口部105aは配線溝である。開口部103aは下層配線106の上面まで達しており、開口部105aは、エッチングストッパ膜104の上面まで達している。
【0069】
次に、図19は、図18の積層体に対して、成膜装置100を用いて熱CVD法によりZrBx膜87を形成した後の状態を示している。成膜工程では、上記の成膜条件により熱CVD法を行うことにより、開口部103a,105aが高アスペクト比である場合でも、層間絶縁膜103,105に対する密着性に優れたZrBx膜87を、均一な膜厚で、かつ良好なステップカバレッジで成膜できる。
【0070】
次に、図20に示すように、層間絶縁膜105の上から、Cuを堆積させて開口部103a及び105aを埋めるCu膜107を形成する。このCu膜107は、例えばCVD法、PVD法、メッキ法等によって成膜することができる。開口部103a内に埋め込まれたCu膜107はCuプラグとなり、開口部105a内に埋め込まれたCu膜107はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜107を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。
【0071】
このようにして形成された多層配線構造体において、ZrBx膜87は、優れたバリア機能を有するため、Cu膜107から層間絶縁膜103,105へのCuの拡散を抑制できる。また、ZrBx膜87は、開口部103aの底部ではCuの下層配線106上に形成されることによって低抵抗な膜となるため、開口部103a,105a内に埋め込まれたCu膜107と下層配線106との電気的なコンタクトを確保できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0072】
以上の説明では、成膜方法をデュアルダマシンプロセスへ適用した例を挙げたが、シングルダマシンプロセスにも同様に適用可能である。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、被処理体である基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。また、上記実施の形態では、上記MBx膜のMがZrである場合を例に挙げて説明したが、MがHfであるHfBx膜(典型的にはHfB2膜として表すことができる)についても原料の熱化学的性質が極めて類似しているため同様に成膜できる。
【符号の説明】
【0074】
1…処理容器、1a…天板、1b…側壁、1c…底壁、3…ステージ、6…ヒーター、7…ヒーター電源、8…温度測定器、9…熱電対(TC)、11…シャワーヘッド、12…ガス拡散空間、13…ガス吐出孔、15,15a,15b,15c,15b1,15b2,15c1,15c2…ガス供給配管、16…圧力計、17a,17b…マスフローコントローラ(MFC)、18a,18b,18c,18d,18e,18g,18h,18i,18j…バルブ、18f…圧力調整バルブ、19…ガス供給源、21…原料容器、23…温度調節装置、25…開口、26…ゲートバルブ、31…主排気孔、32…排気孔、33…主排気バルブ、34…圧力調整バルブ、34a…圧力計、35…排気装置、41…Oリング、70…制御部、100…成膜装置、W…半導体ウエハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を処理容器内に配置する工程と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)が収容された原料容器に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4ガスを生成させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように前記処理容器内に導入し、熱CVD法により被処理体上にMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
を備えた成膜方法。
【請求項2】
前記MBx膜を堆積させる工程では、前記処理容器内の圧力を10Pa以上300Pa以下の範囲内に設定する請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記MBx膜を堆積させる工程では、被処理体の温度を160℃以上300℃以下の範囲内に設定する請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記原料容器内の固体原料を−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しながらH2ガスを供給する請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を保持する原料容器と、
前記原料容器内の固体原料を冷却もしくは保温する温度調節装置と、
前記原料容器内へH2ガスを供給するH2ガス供給装置と、
前記原料容器から前記処理容器内へH2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを供給するガス供給管と、
を備え、
前記原料容器内へ供給するH2ガスの流量および該原料容器内圧力を調節することによって、前記H2ガスの供給によって気化したM(BH4)4ガスの流量、及びH2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]を制御しながら前記処理容器内に導入し、被処理体に熱CVD法によりMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる成膜装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の成膜方法によって被処理体の絶縁膜上にバリア膜としてのMBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
前記MBx膜上に、金属膜を堆積させる工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項7】
少なくとも、前記絶縁膜に形成された開口部の内壁面を覆うように前記MBx膜を形成する請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
被処理体を処理容器内に配置する工程と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)が収容された原料容器に、キャリアガスとしてH2ガスを供給してM(BH4)4ガスを生成させ、H2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを、H2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]が2以上になるように前記処理容器内に導入し、熱CVD法により被処理体上にMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
を備えた成膜方法。
【請求項2】
前記MBx膜を堆積させる工程では、前記処理容器内の圧力を10Pa以上300Pa以下の範囲内に設定する請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記MBx膜を堆積させる工程では、被処理体の温度を160℃以上300℃以下の範囲内に設定する請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記原料容器内の固体原料を−15℃〜5℃の範囲内に冷却保持しながらH2ガスを供給する請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置と、
固体原料のM(BH4)4(ここで、Mは、Zr又はHfを意味する)を保持する原料容器と、
前記原料容器内の固体原料を冷却もしくは保温する温度調節装置と、
前記原料容器内へH2ガスを供給するH2ガス供給装置と、
前記原料容器から前記処理容器内へH2ガスとM(BH4)4ガスの混合ガスを供給するガス供給管と、
を備え、
前記原料容器内へ供給するH2ガスの流量および該原料容器内圧力を調節することによって、前記H2ガスの供給によって気化したM(BH4)4ガスの流量、及びH2ガスとM(BH4)4ガスの体積流量比[H2/M(BH4)4]を制御しながら前記処理容器内に導入し、被処理体に熱CVD法によりMBx膜(ここで、Mは前記と同じ意味を有し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる成膜装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の成膜方法によって被処理体の絶縁膜上にバリア膜としてのMBx膜(ここで、MはZr又はHfを意味し、xは1.8〜2.5の数を意味する)を堆積させる工程と、
前記MBx膜上に、金属膜を堆積させる工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項7】
少なくとも、前記絶縁膜に形成された開口部の内壁面を覆うように前記MBx膜を形成する請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−89546(P2012−89546A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232276(P2010−232276)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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