説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】 ボイド等の発生を防止できるように凹部内に金属膜の成膜を施すことができる成膜方法である。
【解決手段】 処理容器22内でプラズマにより金属のターゲット76から金属イオンを発生させてバイアスにより引き込んで凹部4が形成されている被処理体に金属の薄膜を堆積させる成膜方法において、ターゲットから金属イオンを生成し、その金属イオンをバイアスにより引き込んで凹部内に下地膜90を形成する下地膜形成工程と、金属イオンを発生させない状態でバイアスにより希ガスをイオン化させると共に発生したイオンを引き込んで下地膜をエッチングするエッチング工程と、ターゲットをプラズマスパッタリングして金属イオンを生成し、その金属イオンをバイアス電力により引き込んで金属膜よりなる本膜92を堆積しつつ、その本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法及び成膜装置に係り、特に半導体ウエハ等の被処理体に形成されている凹部内にプラズマを用いて効果的に金属膜を埋め込むようにした成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請により、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や埋め込み材料としては、配線構造の各種寸法の微細化により、配線抵抗が増加して消費電力の増大が問題となる。従って、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層との密着性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)、チタン(Ti)、タンタル窒化膜(TaN)、チタン窒化膜(TiN)等がバリヤ層として用いられる。
【0003】
そして、上記凹部内に金属を埋め込むには、まず凹部内を含むウエハ表面全体にバリア層を形成する。次にプラズマスパッタ装置内にて、この凹部内の壁面全体を含むウエハ表面全面に形成するバリア層上に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次に銅シード層上を含むウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を完全に埋め込むようにしている。その後、ウエハ表面の余分な銅薄膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により研磨処理して取り除くようになっている(特許文献2)。
【0004】
この点については図9を参照して説明する。図9は、従来の半導体ウエハの凹部の埋め込み工程を示す図である。この半導体ウエハWに形成された、例えばSiO 膜よりなる層間絶縁膜などの絶縁層2の表面には、Single Damascene構造、Dual Damascene構造、三次元実装構造等が構成するビアホールやスルーホールや溝(トレンチ)等に対応する凹部4が形成されており、この凹部4の底部には、例えば銅よりなる下層の配線層6が露出状態で形成されている(図9(A)参照)。
【0005】
具体的には、この凹部4は、ワード線やビット線等の配線構造の細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)4Aや、上下のワード線或いはビット線を繋ぐ場合、この溝4Aの底部の一部に形成されたホール4Bとよりなり、このホール4Bがビアホールやスルーホールとなる。そして、このホール4Bの底部に上記配線層6が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。上記凹部4は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば数10nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略し形状を単純化して記載している。
【0006】
まず、この半導体ウエハWの表面には上記凹部4内の内面も含めてほぼ均一に例えばTiN膜及びTi膜の積層構造よりなるバリヤ層8がプラズマスパッタ装置にて形成される(図9(B)参照)。次に、プラズマスパッタ装置にて上記凹部4内の表面を含むウエハ表面全体に亘って金属膜として薄い銅膜よりなるシード膜10を形成する(図9(C)参照)。次に上記ウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部4内を例えば銅膜よりなる金属膜12で埋め込むようになっている(図9(D)参照)。その後は、上記ウエハ表面の余分な金属膜12、シード膜10及びバリヤ層8を上記したCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる(図9(E)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−077365号公報
【特許文献2】特開2006−148075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般的にプラズマスパッタ装置内で成膜を行う場合、上述のように半導体ウエハ側にバイアスを印加して金属イオンの引き込みを促進させることによって、成膜レートを大きくできる。この場合、バイアス電圧を過度に大きくすると、プラズマを発生させるために装置内に導入されている希ガス、例えばアルゴンガスのイオンによりウエハ表面がスパッタされて折角堆積した金属膜が削り取られてしまうので、上記バイアス電力はそれ程大きくは設定されていない。
【0009】
しかしながら、上記のように銅膜よりなるシード膜10を形成する場合、図9(C)に示すように、異方性のためイオンが凹部内に真直ぐに引き込まれて、凹部4内の側壁の下部の領域の部分にシード膜が非常に付き難い。その為、側壁に十分な厚さのシード膜10が形成されるまで長い時間に亘って成膜処理を行うと、特にホール4Bの開口部に、この開口を挟めるような形でシード膜10が堆積され、凹部4の開口部に突出したオーバハング部分14が発生してしまう。このため、その後工程で、この凹部4をメッキ法等により銅膜よりなる金属膜12で埋め込んでも内部が十分に埋まらずにボイド16が発生する場合の問題があった。すなわち、微細化が進んだ今日において、微細な凹部内をメッキ法を用いても微細な凹部内を十分に埋め込むことができない場合が生じた。
【0010】
上記問題点を解決するために特許文献2に示すように、載置台に供給するバイアス電力を調整して成膜レートとスパッタエッチングのエッチングレートをコントロールすることにより良好な埋め込みを行なう試みもなされたが、最近の更なる微細化の要請により、上記した成膜方法でも上記した問題点を十分に解決するのが困難であった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明は、ボイド等の発生を防止できるように凹部内に金属膜の成膜を施すことができる成膜方法及び成膜装置である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、プラズマスパッタによる成膜方法について鋭意研究した結果、金属膜を形成しつつこの金属膜をリフローさせることにより凹部内の底部に金属膜が十分に形成されてボイド等の発生を防止することができる、という知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
【0012】
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属のターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記処理容器内の載置台にバイアス電力を供給して、その載置した被処理体にバイアスを印加して、前記金属イオンを前記被処理体に引き込んで前記被処理体に形成する凹部内に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、前記金属イオンをバイアスにより引き込んで、前記凹部内に金属を含む下地膜を形成する下地膜形成工程と、前記被処理体にバイアスを印加しつつ、前記金属イオンを発生させない条件でプラズマを生成して、希ガスをイオン化させると共に生成した希ガスのイオンを引き込んで前記下地膜をエッチングするエッチング工程と、前記被処理体に印加したバイアスにより前記金属イオンを引き込んで金属膜よりなる本膜を堆積しつつ前記本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0013】
この構成により、線幅やホール径が小さくなっても、或いはアスペクト比が大きくなっても、下地膜形成工程、エッチング工程、成膜リフロー工程を行うことで、被処理体の表面の凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させることが可能となり、ボイドフリーで凹部内に金属膜の成膜を施すことができる。
また、凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させるこができることから、その後工程に行われるメッキ法による埋め込み処理の時間を短くしたり、或いはこのメッキ処理自体を不要にすることができる。
【0014】
請求項6に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属のターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記処理容器内の載置台にバイアス電力を供給して、その載置した被処理体にバイアスを印加して、前記金属イオンを前記被処理体に引き込んで前記被処理体に形成する凹部内に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、前記金属イオンをバイアスにより引き込んで前記凹部内に金属を含む下地膜を形成しつつ前記下地膜をエッチングする成膜エッチング工程と、前記金属イオンをバイアスにより引き込んで金属膜よりなる本膜を堆積しつつ前記本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0015】
この構成により、線幅やホール径が小さくなっても、或いはアスペクト比が大きくなっても、下地膜形成工程、エッチング工程、成膜リフロー工程を行うことで、被処理体の表面の凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させることが可能となり、ボイドフリーで凹部内に金属膜の成膜を施すことができる。
また、凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させるこができることから、その後工程に行われるメッキ法による埋め込み処理の時間を短くしたり、或いはこのメッキ処理自体を不要にすることができる。
【0016】
請求項12に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器と、凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属のターゲットと、前記載置台に対して高周波のバイアス電力を供給するバイアス電源と、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように装置全体を制御する装置制御部と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、次のような優れた作用効果を発揮することができる。
真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属のターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記金属イオンを前記処理容器内の載置台上に載置した被処理体にバイアスにより引き込んで凹部が形成されている前記被処理体に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、線幅やホール径が小さくなっても、或いはアスペクト比が大きくなっても、下地膜形成工程、エッチング工程、成膜リフロー工程を行うことで、被処理体の表面の凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させることが可能となり、ボイドフリーで凹部内に金属膜の成膜を施すことができる。
【0018】
また、凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させるこができることから、その後工程に行われるメッキ法による埋め込み処理の時間を短くしたり、或いはこのメッキ処理自体を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る成膜装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の成膜方法の第1実施例を説明するための工程図である。
【図3】本発明の成膜方法の特徴的工程を詳しく説明するための拡大工程図である。
【図4】バイアス電力とウエハ上面上へのCu成膜量との関係を示すグラフである。
【図5】成膜量の最大値Tdとエッチング量Teとの比(Te/Td)と埋め込み結果との関係を示す図である。
【図6】比(Te/Td)が0.33以上の領域を示すグラフである。
【図7】ターゲットに供給する直流電力の変化に対応したバイアス電力と比(Te/Td)との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の成膜方法の第2実施例の特徴である成膜エッチング工程を説明する図である。
【図9】従来の半導体ウエハの凹部の埋め込み工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る成膜方法及び成膜装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る成膜装置の一例を示す断面図である。ここでは成膜装置としてICP(Inductively Coupled Plasma)型プラズマスパッタ装置を例にとって説明する。
【0021】
図1に示すように、この成膜装置20は、例えばアルミニウム等により筒体状に成形された処理容器22を有している。この処理容器22は接地され、この底部24には排気口26が設けられて、圧力調整を行うスロットルバルブ28を介して真空ポンプ30により真空引き可能になされている。また処理容器22の底部24には、この処理容器22内へ必要とされる所定のガスを導入するガス導入手段として例えばガス導入口29が設けられる。このガス導入口29からは、プラズマ励起用ガスとして希ガス、例えばArガスや他の必要なガス例えばN ガス等が、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部31を通して供給される。
【0022】
この処理容器22内には、被処理体である半導体ウエハWを載置するための載置台構造32が設けられる。この載置台構造32は、円板状に成形された載置台34と、この載置台34を支持すると共にグランド側に接続された、すなわち接地された中空筒体状の支柱36とにより構成されている。従って、載置台34も接地されている。この載置台34は、例えばアルミニウム合金等の導電性材料よりなり、この中には冷却ジャケット38が設けられており、図示しない冷媒流路を介して冷媒を供給することにより、ウエハ温度を制御できるようになっている。
【0023】
また上記載置台34の上面側には、内部に電極42Aを有する例えばアルミナ等のセラミック材よりなる薄い円板状の静電チャック42が設けられており、半導体ウエハWを静電力により吸着保持できるようになっている。また、上記支柱36の下部は、上記処理容器22の底部24の中心部に形成した挿通孔44を貫通して下方へ延びている。そして、この支柱36は、図示しない昇降機構により上下移動可能になされており、上記載置台構造32の全体を昇降できるようにしている。
【0024】
上記支柱36を囲むようにして伸縮可能になされた蛇腹状の金属ベローズ46が設けられており、この金属ベローズ46は、その上端が上記載置台34の下面に気密に接合され、また下端が上記底部24の上面に気密に接合されており、処理容器22内の気密性を維持しつつ上記載置台構造32の昇降移動を許容できるようになっている。
【0025】
また底部24には、これより上方に向けて例えば3本(図示例では2本のみ記す)の支持ピン48が起立させて設けられており、また、この支持ピン48に対応させて上記載置台34にピン挿通孔50が形成されている。従って、上記載置台34を降下させた際に、上記ピン挿通孔50を貫通した支持ピン48の上端部で半導体ウエハWを受けて、この半導体ウエハWを外部より侵入する搬送アーム(図示せず)との間で移載ができるようになっている。このため、処理容器22の下部側壁には、上記搬送アームを侵入させるために搬出入口52が設けられ、この搬出入口52には、開閉可能になされたゲートバルブGが設けられている。このゲートバルブGの反対側には、例えば真空搬送室54が設けられる。
【0026】
またこの載置台34上に設けた上記静電チャック42の電極42Aには、給電ライン56を介してチャック用電源58が接続されており、半導体ウエハWを静電力により吸着保持するようになっている。また上記給電ライン56にはバイアス用高周波電源62が接続されており、この給電ライン56を介して静電チャック42の電極42Aに対してバイアス用の高周波電力を供給するようになっている。この高周波電力の周波数は、例えば13.56MHzである。
【0027】
一方、上記処理容器22の天井部には、例えば酸化アルミニウム等の誘電体よりなる高周波に対して透過性のある透過板64がOリング等のシール部材66を介して気密に設けられている。そして、この透過板64の上部に、処理容器22内の処理空間Sにプラズマ励起用ガスとしての希ガス、例えばArガスをプラズマ化してプラズマを発生するためのプラズマ発生源68が設けられる。
【0028】
尚、このプラズマ励起用ガスとして、Arに代えて他の希ガス、例えばHe、Ne等を用いてもよい。具体的には、上記プラズマ発生源68は、上記透過板64に対応させて設けた誘導コイル部70を有しており、この誘導コイル部70には、プラズマ発生用の例えば13.56MHzの高周波電源72が接続されて、上記透過板64を介して処理空間Sに高周波を導入できるようになっている。
【0029】
また上記透過板64の直下には、導入される高周波を拡散させる例えばアルミニウムよりなるバッフルプレート74が設けられる。そして、このバッフルプレート74の下部には、上記処理空間Sの上部側方を囲むようにして例えば断面が内側に向けて傾斜されて環状(截頭円錐殻状)になされた金属のターゲット76が設けられており、この金属のターゲット76にはArイオンを引きつけるための電圧を供給するターゲット用の可変になされた直流電源78が接続されている。尚、この直流電源に代えて交流電源を用いてもよい。
【0030】
また、金属のターゲット76の外周側には、これに磁界を付与するための磁石80が設けられている。ここでは金属のターゲット76の材料として、例えばCu(銅)が用いられ、このCuのターゲット76はプラズマ中のArイオンによりCuの金属原子、或いは金属原子団としてスパッタされると共に、プラズマ中を通過する際に多くはイオン化される。
【0031】
またこの金属のターゲット76の下部には、上記処理空間Sを囲むようにして例えばアルミニウムや銅よりなる円筒状の保護カバー部材82が設けられている。この保護カバー部材82はグランド側に接続されて接地されると共に、この下部は内側へ屈曲されて上記載置台34の側部近傍に位置されている。この場合、この保護カバー部材82の内側の端部は、上記載置台34の外周側を囲むようにして設けられている。
【0032】
そして、この成膜装置20の各構成部は、例えばコンピュータ等よりなる装置制御部84に接続されて制御される構成となっている。具体的には装置制御部84は、バイアス用高周波電源62、プラズマ発生用の高周波電源72、可変直流電源78、ガス制御部31、スロットルバルブ28、真空ポンプ30等の動作を制御する。また上記装置制御部84で制御を行うコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶する記憶媒体86を有している。この記憶媒体86は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。
【0033】
<成膜方法の説明>
次に、以上のように構成されたプラズマ成膜装置の動作について図2乃至図6も参照して説明する。図2は本発明の成膜方法の第1実施例を説明するための工程図、図3は本発明の成膜方法の特徴的工程を詳しく説明するための拡大工程図、図4はバイアス電力とウエハ上面上へのCu成膜量との関係を示すグラフ、図5は成膜量の最大値Tdとエッチング量Teとの比(Te/Td)と埋め込み結果との関係を示す図、図6は比(Te/Td)が0.33以上の領域を示すグラフである。尚、図2及び図3において、図9に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してある。
【0034】
図2(A)に示すように、半導体ウエハWに形成された、例えばSiO 膜よりなる層間絶縁膜などの絶縁層2の表面には、Single Damascene構造、Dual Damascene構造、三次元実装構造等が構成するビアホールやスルーホールや溝(トレンチ)等に対応する凹部4が形成されており、この凹部4の底部には、例えば銅よりなる下層の配線層6が露出状態で形成されている(図9(A)参照)。
【0035】
具体的には、この凹部4は、ワード線やビット線等の配線構造の細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)4Aや、上下のワード線或いはビット線を繋ぐ場合、この溝4Aの底部の一部に形成されたホール4Bとよりなり、このホール4Bがビアホールやスルーホールとなる。そして、このホール4Bの底部に上記配線層6が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。上記凹部4は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば数10nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略して形状を単純化して記載している。
【0036】
そして、図2(B)に示すように、この半導体ウエハWの表面には上記凹部4内の内面も含めてほぼ均一に例えばTiN膜及びTi膜の積層構造よりなるバリヤ層8がプラズマスパッタ装置等にて予め形成される。
【0037】
次に、このように形成されたウエハWを図1に示す成膜装置20内へ搬入し、このウエハWを載置台34上に載置して静電チャック42で吸着する。まず装置制御部84の支配下で、真空ポンプ30を動作させることにより真空にされた処理容器22内に、ガス制御部31を動作させてArガスを流しつつスロットルバルブ28を制御して処理容器22内を所定の真空度に維持する。その後、可変直流電源78を介して直流電力を金属のターゲット76に印加し、更にプラズマ発生源68の高周波電源72から誘導コイル部70に高周波電力(プラズマ電力)を供給する。
【0038】
一方、装置制御部84はバイアス用高周波電源62にも指令を出し、静電チャック42の電極42Aに対して所定のバイアス用の高周波電力を供給する。このように制御された処理容器22内においては、誘導コイル部70に供給された高周波電力によりアルゴンプラズマが形成されてアルゴンイオンが生成され、これらイオンは金属のターゲット76に印加された電圧に引き寄せられて金属のターゲット76に衝突し、この金属のターゲット76がスパッタされて金属粒子が放出される。この際、ターゲット76に印加する直流電力により放出される金属粒子の量が制御される。
【0039】
また、スパッタされた金属のターゲット76からの金属粒子である金属原子、金属原子団はプラズマ中を通る際に多くはイオン化される。ここで金属粒子は、イオン化された金属イオンと電気的に中性な中性金属原子とが混在する状態となって下方向へ飛散して行く。特に、この処理容器22内の圧力は、ある程度高くし、これによりプラズマ密度を高めて、金属粒子を高効率でイオン化できるようになっている。この時のイオン化率は高周波電源72から供給される高周波電力により制御される。
【0040】
そして、金属イオンは、静電チャック42の電極42Aに印加されたバイアス用の高周波電力により発生した半導体ウエハ面上の厚さ数mm程度のイオンシースの領域に入ると、強い指向性をもって半導体ウエハW側に加速するように引き付けられて半導体ウエハWに堆積して金属の薄膜が形成される。
【0041】
上述のような動作により、ここでは、この成膜装置20内で生成された、金属イオンをバイアスにより引き込んで凹部4内に金属を含む下地膜90を形成する下地膜形成工程(図2(C)参照)と、ウエハにバイアスを印加しつつ上記金属イオンを発生させない条件でプラズマを生成して希ガスをイオン化させると共に発生したイオンを引き込んで上記下地膜をエッチングするエッチング工程(図2(D)参照)と、上記ウエハに印加したバイアスにより上記金属イオンを引き込んで金属膜よりなる本膜92を堆積しつつ上記本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程(図2(E)参照)とを順次行うことになる。尚、図3(A)〜図3(C)は、図2(C)〜図2(E)にそれぞれ対応する工程であり、ホール4Bの部分を拡大して模式的に示している。
【0042】
まず、図2(C)及び図3(A)に示すように、下地膜形成工程では上述したような成膜方法を用いてウエハWの凹部4内の表面を含むウエハ表面の全面にCu膜よりなる下地膜90を形成する。この下地膜90の形成時には、ウエハWの上面に対するCuの成膜量が最大になるようなバイアス電力を電極42Aに印加する。すなわち、この成膜装置20で行われるスパッタリングでは、金属イオンとArイオンとをバイアス電力により同時にウエハWの表面へ引き込むように動作しているが、金属イオンは成膜に寄与し、Arイオンは堆積した薄膜をエッチングして削り取るように作用し、両者は互いに反対の作用をする。
【0043】
従って、上記金属イオンによる成膜レートとArガスの削り取りのエッチングレートとの差でもってウエハ表面には実際の成膜がなされて成膜量として表れることになる。ここでウエハ表面におけるCuの成膜量とバイアス電力との関係は図4に示すようになっている。すなわち、バイアス電力がほぼゼロの状態からバイアス電力を増加させると、当初はバイアス電力の増加に伴ってCuの成膜量は増加してポイントP1にてCuの成膜量はピークとなる。そして、更にバイアス電力が増加すると、これに伴ってCuの成膜量は今度は次第に低下して行く。
【0044】
そして、ポイントP2になるとCuイオンによる成膜レートとエッチングレートとが同じになり、ウエハ上面に表れる成膜量はゼロになる。そして、更にバイアス電力が増加すると、Cuの成膜はなされず、逆に下地膜が次第にエッチングされて行くことになる。ここで、上記下地膜形成工程は、上述のようにCuの成膜量が最大になるようにバイアス電力を制御することから、バイアス電力を低くして図4中のポイントP1を含む領域A1の部分で成膜処理を行う。
【0045】
この結果、金属イオンの下向き方向の指向性は高くなっているので、ウエハ表面の内、上方に向いている面、すなわちウエハWの上面、ホール4Bの底面、溝4Aの底面にはそれぞれ厚く下地膜90が形成され、これに対して、溝4Aの側面やホール4Bの側面には薄く下地膜が形成されることになる。ここでのCuの成膜量は例えば30nm程度にする。
【0046】
この下地膜形成工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
プロセス圧力:50〜200mTorrの範囲内が好ましく、65〜100mTorrがより好ましい。例えば90mTorrに設定する。
プラズマ用高周波電力:3〜6kWの範囲内が好ましく、4〜5kWがより好ましい。例えば4kWに設定する。
ターゲットへの直流電力:4〜20kWの範囲内が好ましく、8〜12kWがより好ましい。例えば10kWに設定する。
バイアス電力:25〜300Wの範囲内が好ましく、100〜200Wがより好ましい。例えば200Wに設定する。
ウエハ温度:50〜200℃の範囲内が好ましく、50〜175℃がより好ましい。例えば50℃に設定する。
【0047】
次に図2(D)及び図3(B)に示すように、エッチング工程では金属イオンを発生させない条件でプラズマを生成して希ガスをイオン化させると共に発生したイオンをウエハに印加したバイアスでウエハW側に引き込んで上記下地膜90をエッチングする。このエッチング工程では、下地膜90のエッチングを主として行う。具体的には、プラズマ用の高周波電力とターゲット76に印加する直流電力を共にゼロに設定してCuイオンを発生させないようにする。
【0048】
また、エッチング工程におけるバイアス電力は、上記下地膜形成工程におけるバイアス電力よりも大きく設定する。ここで静電チャック42と電極42Aと接地されている保護カバー部材82との間で高周波の容量結合回路が生じてArガスのプラズマが生じ、このArイオンが上述したようにウエハW側に引き込まれてエッチングが行われることになる。またこのエッチング工程におけるプロセス圧力(容器内圧力)は、上記下地膜形成工程におけるプロセス圧力よりも低く設定する。
【0049】
このエッチングの結果、ウエハWの表面の内の上方に向いている面、すなわちウエハWの上面、ホール4Bの底面、溝4Aの底面にそれぞれ厚く堆積していた下地膜90がエッチングされて薄くなる。この際、特に図3(B)に示すように微細なホール4Bの底面に堆積していた下地膜90Aがスパッタされてエッチングされると、この時に発生したCuの金属粒子94が矢印96に示すように飛散してホール4B内の側壁に堆積することになる。この結果、このホール4B内の側壁に堆積している下地膜90の厚さが増加して、この側壁部分に十分な厚さの下地膜90が形成されることになる。
【0050】
このエッチング工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
プロセス圧力:0.4〜10mTorrの範囲内が好ましく、1〜2.5mTorrがより好ましい。例えば2.5mTorrに設定する。
プラズマ用高周波電力:ゼロ
ターゲットへの直流電力:ゼロ
バイアス電力:1000〜3000Wの範囲内が好ましく、2000〜2500Wがより好ましい。例えば2400Wに設定する。
ウエハ温度:25〜200℃の範囲内が好ましく、50〜100℃がより好ましい。例えば50℃に設定する。
【0051】
上述のようにエッチング工程のバイアス電力を、下地膜形成工程のバイアス電力よりも大きくすることにより、Arイオンの指向性を高めてエッチングをより効果的に行うことができる。また、エッチング工程におけるプロセス圧力を、下地膜形成工程のプロセス圧力よりも大きくすることにより、この場合にもArイオンの指向性を高めてエッチングをより効果的に行うことができる。
【0052】
次に、図2(E)及び図3(C)に示すように、成膜リフロー工程では、金属イオンをウエハW側に引き込んで金属膜よりなる本膜92を堆積しつつ上記本膜92を加熱リフローさせる。具体的には、ここでは再度、プラズマ用の高周波電力を印加すると共に金属のターゲット76に対しても直流電力を印加してCuの金属イオンを発生させてCu膜の成膜とエッチングを行う。より詳しくは、金属膜であるCu膜よりなる本膜92を成膜することに加えて、バイアス電力を高くすることによってイオンのエネルギーよってウエハ温度を上昇させて例えば25〜200℃の範囲内に設定し、Cu膜のリフローを促進させるようにする。
【0053】
このため、この成膜リフロー工程では、バイアス電力を先の下地膜形成工程におけるバイアス電力よりも高くし、図4中においてCuイオンによる成膜レートとエッチングレートとがほぼ均衡するポイントP2よりも左側の広い領域A2であって、領域A1よりもかなり右側の部分で処理を行う。また、この成膜リフロー工程におけるプロセス圧力は、上記エッチング工程におけるプロセス圧力よりも高く設定する。
【0054】
これにより、表面に堆積するCu膜よりなる本膜92は非常に軟らかくなって流れ易くなり、ホール4Bの側壁に十分な厚さで堆積している下地膜90上を矢印98に示すようにホール4B内へ拡散して行く。この結果、ホール4Bの底部における本膜92Aは白抜き矢印100に示すように厚さが増して行き、ボトムアップすることになる。
【0055】
この成膜リフロー工程を十分に長時間行えば、ホール径にもよるがホール4B内をほぼ完全に埋め込むことができるが(図2(E)参照)、完全に埋め込まなくてもよい。いずれにしても、このような成膜リフロー工程を行うことにより、ここではボトムアップがなされてホール4B内にボイドが発生することを抑制することができる。また凹部4のアスペクト比が高くなっても、その埋め込みを正常に行うことができる。図2(E)ではホール4B内は本膜92により完全に埋め込まれているが、溝4A内は完全には埋め込まれていない状態を示している。
【0056】
この成膜リフロー工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
プロセス圧力:50〜200mTorrの範囲内が好ましく、65〜100mTorrがより好ましい。例えば90mTorrに設定する。
プラズマ用高周波電力:3〜6kWの範囲内が好ましく、4〜5kWがより好ましい。例えば4kWに設定する。
ターゲットへの直流電力:2〜12kWの範囲内が好ましく、3〜6kWがより好ましい。例えば5kWに設定する。
バイアス電力:300〜1000Wの範囲内が好ましい。例えば600Wに設定する。
ウエハ温度:25〜200℃の範囲内が好ましく、50〜100℃がより好ましい。例えば80℃に設定する。
【0057】
ここで上記ウエハ温度はCu膜のリフローを促進させるためには、上述のように50〜100℃の範囲がより好ましい。上記ウエハ温度が25℃よりも低い場合には、Cu膜の拡散が十分に生じないので、ボイド等が発生する可能性が大きくなる。またウエハ温度が200℃よりも高い場合には、逆にCu膜が軟らかくなり過ぎて拡散が激しく生じ、凹部の側壁部分のCu膜が流れ落ちてしまうので好ましくない。
【0058】
上述のように、成膜リフロー工程におけるプロセス圧力をエッチング工程におけるプロセス圧力よりも高くすることにより、Arイオンの下方向への指向性が高くなるので、その分、Cu膜よりなる本膜92を流れ易くすることができる。
【0059】
以上のようにして成膜リフロー工程が終了したならば、このウエハWを処理装置20の処理容器22内から外へ取り出して、次に図2(F)に示すようにウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部4内を銅膜よりなる埋め込み金属の薄膜101で完全に埋め込む。その後は、図2(G)に示すように上記ウエハ表面の余分なCu膜よりなる本膜92、下地膜90及びバリヤ層8をCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる。
【0060】
この場合、上記凹部4内には十分な量のCu膜が埋め込まれていることから、上記メッキ処理は非常に短時間で済むので、メッキの負荷を低減させることができる。更には、メッキ処理を不要にした場合、又は上述のようにメッキ処理時間が短くなることにより、メッキ液中の不純物がCu膜の薄膜中に侵入することを抑制することができるので、後工程で実施されるアニール処理によってCuのグレイン成長が十分に生じ、その分、電気抵抗を低くすることができる。
【0061】
以上のように、本発明によれば、真空引き可能になされた処理容器22内でプラズマにより金属のターゲット76をイオン化させて金属イオンを発生させ、上記金属イオンを上記処理容器内の載置台34上に載置した被処理体にバイアスにより引き込んで凹部が形成されている上記被処理体に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、線幅やホール径が小さくなっても、或いはアスペクト比が大きくなっても、下地膜形成工程、エッチング工程、成膜リフロー工程を行うことで、被処理体の表面の凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させることが可能となり、ボイドフリーで凹部内に金属膜の成膜を施すことができる。
【0062】
また、凹部内に十分に金属の薄膜を堆積させるこができることから、その後工程に行われるメッキ法による埋め込み処理の時間を短くしたり、或いはこのメッキ処理自体を不要にすることができる。
【0063】
<成膜リフロー工程の埋め込みの評価>
次に、上記成膜リフロー工程における凹部の埋め込み特性について実験を行ったので、その評価結果について説明する。図5は成膜量の最大値Tdとエッチング量Teとの比(Te/Td)と埋め込み結果との関係を示す図、図6は比(Te/Td)が0.33以上の領域を示すグラフである。
【0064】
ここでは、バイアス電力の大きさに依存する成膜量の最大値であるTdとCu膜の本膜がエッチングされるエッチング量をTeとした時の比(Te/Td)を変化させた時の埋め込み特性を評価している。上記Tdは、図4においてポイントP1の時の成膜量(最大値)であり、エッチング量はバイアス電力を変化させた時におけるCuの成膜量と上記Tdとの差で表される。
【0065】
また上記比(Te/Td)は0.11〜0.58まで変化させており、他のプロセス条件はプロセス圧力が90mTorr、プラズマ発生用の高周波電力が4kW、ターゲット用の直流電力が5kWである。図5に示すように、比(Te/Td)が0.11の場合には、堆積したCu膜よりなる本膜は、凹部の開口において矢印102に示すように上方へ引っ張られるのでリフローが生じない。また比(Te/Td)が0.16の場合には、Cu膜よりなる本膜が矢印104に示すように凹部の側壁で部分的に流れて凝集してしまうので好ましくない。
【0066】
これに対して、比(Te/Td)が0.33及び0.58の場合には、矢印106に示すようにCu膜よりなる本膜は側壁を伝わって凹部内へ拡散して行き、良好な結果を示すことができた。従って、成膜リフロー工程を正常に行うためには、比(Te/Td)を0.33以上に設定することが必要であることが判る。また、上記比(Te/Td)はターゲットの直流電力とバイアス電力との関係でも変化し、上記両者の関係で比(Te/Td)が0.33以上となる領域は図6中で斜線で示す領域となる。従って、図6によれば、バイアス電力0.25kW以上が必要であり、ターゲットへの直流電力は少なくとも3kWが必要であることが判る。
【0067】
ここでターゲットに供給する直流電力の変化に対応した上記バイアス電力と比(Te/Td)との関係をより詳しく調べたので、その結果を図7に示す。図7では横軸にバイアス電力をとり、縦軸に比(Te/Td)をとっている。図7(A)は全体図を示し、図7(B)は図7(A)中の一部の拡大図を示す。またターゲットへの直流電力を3kW、4kW、5kWに変化させて、その時の関係を調べている。この時のプロセス条件は、プロセス圧力が90mTorr、プラズマ発生用の高周波電力が4kWである。
【0068】
図7に示すように、バイアス電力を大きくする程、比(Te/Td)は次第に大きくなっている。そして、バイアス電力を一定にした場合、ターゲットへの直流電力を大きくする程、比(Te/Td)は次第に小さくなっている。この結果、比(Te/Td)を上述のように0.33以上にするためには、ターゲットへの直流電力が3kWの場合にはバイアス電力を200W以上に設定し、ターゲットへの直流電力が4kWの場合にはバイアス電力を280W以上に設定し、ターゲットへの直流電力が5kWの場合にはバイアス電力を500W以上に設定する必要があることが判る。
【0069】
<本発明の成膜方法の第2実施例>
次に本発明の成膜方法の第2実施例について説明する。図2を参照して説明した先の第1実施例では、凹部4の特にホール4B内の側壁部分に十分な厚さの下地膜90を形成するために、下地膜形成工程(図2(C))とエッチング工程(図2(D))の2工程を行うようにしたが、上記2つの工程に替えて、成膜エッチング工程を1工程だけ行うようにしてもよい。この成膜エッチング工程では、金属イオンをバイアスにより引き込んで下地膜を形成しつつ上記下地膜をエッチングするようにしている。図8は本発明の成膜方法の第2実施例の特徴である成膜エッチング工程を説明する図である。
【0070】
この成膜エッチング工程ではCuイオンによる成膜もArイオンによるエッチングも共に適量ずつ行うようにしている。具体的には、先の第1実施例の下地膜形成工程の場合よりもバイアス電力を大きく設定しており、図4中の領域A3の部分、すなわち、ポイントP2よりも少し左側の部分で処理を行う。これにより、ウエハWの表面、特に上方を向いている面にCuの下地膜90が形成されると同時に、下地膜90が厚く形成される部分、すなわちホール4Bの底面や溝4Aの底面に堆積する下地膜90が激しくエッチングされる。このエッチングにより飛散した金属粒子は凹部4の側壁、特にホール4Bの側壁に堆積してこの側壁部分の下地膜90の厚さを図2(D)及び図3(B)を参照して説明したように厚くすることになる。
【0071】
この成膜エッチング工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
プロセス圧力:50〜200mTorrの範囲内が好ましく、65〜100mTorrがより好ましい。例えば90mTorrに設定する。
プラズマ用高周波電力:3〜6kWの範囲内が好ましく、4〜5kWがより好ましい。例えば4kWに設定する。
ターゲットへの直流電力:4〜20kWの範囲内が好ましく、8〜12kWがより好ましい。例えば10kWに設定する。
バイアス電力:400〜2000Wの範囲内が好ましく、400〜1200Wがより好ましい。例えば1000Wに設定する。
ウエハ温度:25〜200℃の範囲内が好ましく、25〜100℃がより好ましい。例えば50℃に設定する。
【0072】
この成膜エッチング工程を行った後は、図2(E)に説明した成膜リフロー工程、図2(F)に説明したメッキ工程及び図2(G)に説明したCMP処理が行われる。尚、メッキ工程が省略できる場合もあることは先に第1実施例において説明した通りである。この第2実施例も、先の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0073】
尚、上記各実施例にあってはバリヤ層8をTiN膜とTi膜の積層構造としたが、これに限定されず、バリヤ層8としては、Ti膜、TiN膜、Ta膜、TaN膜、TaCN膜、W(タングステン)膜、WN膜、Zr膜よりなる群から選択される1以上の膜の単層構造或いは積層構造を用いてもよい。
【0074】
また上記各実施例では、凹部4の構造として溝4Aとホール4Bとよりなる2段構造の凹部を例にとって説明したが、これに限定されず、凹部4として単なる溝やホールよりなる、いわゆる一段構造の凹部についても本発明を適用することができることは勿論である。
【0075】
更に、各高周波電源の周波数も13.56MHzに限定されるものではなく、他の周波数、例えば400kHz〜60MHzが好ましく、400kHz〜27.0MHzがより好ましい。またプラズマ用の希ガスとしてはArガスに限定されず、他の希ガス、例えばHeやNe等や水素を添加した希ガスを用いてもよい。
【0076】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
2 絶縁層
4 凹部
4A 溝
4B ホール
6 配線層
8 バリヤ層
20 成膜装置
22 処理容器
32 載置台構造
34 載置台
42 静電チャック
42A 電極
58 チャック用電源
62 バイアス用高周波電源
68 プラズマ発生源
70 誘導コイル部
72 高周波電源
76 ターゲット
78 直流電源
84 装置制御部
90 下地膜
92 本膜
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属のターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記処理容器内の載置台にバイアス電力を供給して、その載置した被処理体にバイアスを印加して、前記金属イオンを前記被処理体に引き込んで前記被処理体に形成する凹部内に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、
前記金属イオンをバイアスにより引き込んで、前記凹部内に金属を含む下地膜を形成する下地膜形成工程と、
前記被処理体にバイアスを印加しつつ、前記金属イオンを発生させない条件でプラズマを生成して、希ガスをイオン化させると共に生成した希ガスのイオンを引き込んで前記下地膜をエッチングするエッチング工程と、
前記被処理体に印加したバイアスにより前記金属イオンを引き込んで金属膜よりなる本膜を堆積しつつ前記本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記エッチング工程におけるバイアス電力は、前記下地膜形成工程におけるバイアス電力よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記エッチング工程における前記処理容器内の圧力は、前記下地膜形成工程における前記処理容器内の圧力よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記成膜リフロー工程における前記処理容器内の圧力は、前記エッチング工程における前記処理容器内の圧力よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記エッチング工程においては、前記ターゲットに印加される直流電力はゼロに設定され、前記金属イオンを発生させるための高周波電力がゼロに設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属のターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記処理容器内の載置台にバイアス電力を供給して、その載置した被処理体にバイアスを印加して、前記金属イオンを前記被処理体に引き込んで前記被処理体に形成する凹部内に金属の薄膜を堆積させるようにした成膜方法において、
前記金属イオンをバイアスにより引き込んで前記凹部内に金属を含む下地膜を形成しつつ前記下地膜をエッチングする成膜エッチング工程と、
前記金属イオンをバイアスにより引き込んで金属膜よりなる本膜を堆積しつつ前記本膜を加熱リフローさせる成膜リフロー工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記成膜リフロー工程においては、バイアス電力の大きさに依存する成膜量の最大値Tdと前記本膜がエッチングされるエッチング量Teとの比(Te/Td)は0.33以上になるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記成膜リフロー工程においては、前記被処理体の温度は25〜200℃の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記各工程は、同一の処理容器内で行われることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記金属は銅よりなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記成膜リフロー工程の後に、前記凹部内にメッキにより前記金属を埋め込むメッキ工程が行われることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項12】
真空引き可能になされた処理容器と、
凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、
前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、
前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、
前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属のターゲットと、
前記載置台に対して高周波のバイアス電力を供給するバイアス電源と、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように装置全体を制御する装置制御部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−74522(P2012−74522A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217895(P2010−217895)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】