説明

成膜方法

【課題】所望の領域の材料のみが成膜されることを可能にし、微細パターンの形成を可能にする。また、材料の利用効率を高めることによって製造コストを低減させる。また、成膜に要する時間を短縮し、生産性を向上させる。
【解決手段】一方の面に、開口部を有する反射層と、光吸収層と、光吸収層に接して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、第1の基板の他方の面側からレーザ光を照射し、反射層の開口部と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法およびその成膜方法を用いた発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光体として
用いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。特
に、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視
野角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間にEL層を挟んで電圧を印加することにより、陰
極から注入された電子および陽極から注入された正孔がEL層の発光中心で再結合して分
子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に緩和する際にエネルギーを放出して発光
するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励
起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
発光素子を構成するEL層は、少なくとも発光層を有する。また、EL層は、発光層の
他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを有する積層構造とするこ
ともできる。
【0005】
また、EL層を形成するEL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー
系)材料に大別される。一般に、低分子系材料は蒸着法を用いて成膜され、高分子系材料
はインクジェット法などを用いて成膜されることが多い。
【0006】
蒸着法の場合に用いられる蒸着装置は、基板を設置する基板ホルダと、EL材料、つま
り蒸着材料を封入したルツボ(または蒸着ボート)と、ルツボ内のEL材料を加熱するヒ
ーターと、昇華するEL材料の拡散を防止するシャッターとを有しており、ヒーターによ
り加熱されたEL材料が昇華し、基板に成膜される構成となっている。
【0007】
しかし、実際には均一に膜を成膜するために、被成膜基板を回転させることや、基板と
ルツボとの間の距離を一定以上離すことが必要となる。また、複数のEL材料を用いてメ
タルマスクなどのマスクを介した塗り分けを行う場合には、異なる画素間の間隔を広く設
計し、画素間に設けられる絶縁物からなる隔壁(バンク)の幅を広くすることが必要とな
るなど発光素子を含む発光装置の高精細化(画素数の増大)及び小型化に伴う各表示画素
ピッチの微細化を進める上で大きな課題となっている。
【0008】
従って、フラットパネルディスプレイとして、より高精細化や高信頼性を図るために、
これらの課題を解決すると共に生産性の向上や低コスト化を図ることが要求されている。
【0009】
これに対して、レーザ熱転写により、発光素子のEL層を形成する方法が提案されてい
る(特許文献1参照)。特許文献1では、支持基板上に、低反射層と高反射層から構成さ
れる光熱変換層と、転写層を有する転写用基板について記載されている。このような転写
用基板にレーザ光を照射することにより、転写層を素子作成用基板に転写することができ
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−309995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の転写用基板では、基板の片側に高反射層および低反射層が
積層して形成されている。そのため、高反射層を用いたとしても、ある程度の熱の吸収が
考えられるため、レーザ光の熱量が大きいときに、低反射層上の転写層だけでなく、高反
射層上の転写層も転写されてしまう可能性がある。
【0012】
また、特許文献1の図3に記載された構成では、[0041]段落にも記載されている
ように、低反射層と高反射層との間に隙間がないようにしなければならず、高精度のパタ
ーニングが必要となる。
【0013】
また、特許文献1の図7に記載された構成では、低反射層をパターニングしておき、そ
の後全面に高反射層を形成し、その後、転写層を形成している。この構成では、レーザ光
を吸収し加熱された低反射層からの熱は、高反射層を介して転写層に伝わる構成となって
いるため、所望の転写層だけでなく、その周りの転写層も転写されてしまう可能性がある

【0014】
よって、本発明は、所望の領域の材料のみが成膜されることを可能にし、微細パターン
の形成を可能にすることを目的とする。
【0015】
また、材料の利用効率を高めることによって製造コストを低減させることを目的とする

【0016】
また、成膜に要する時間を短縮し、生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一は、一方の面に、開口部を有する反射層と、光吸収層と、光吸収層に接して
形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と
、第2の基板の被成膜面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以
上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、反射層の開口部と重なる
位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜
することを特徴とする成膜方法である。
【0018】
また、本発明の一は、一方の面に、開口部を有する反射層と、反射層に接して形成され
た透光性を有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接して形
成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、
第2の基板の被成膜面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以上
、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、反射層の開口部と重なる位
置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜す
ることを特徴とする成膜方法である。
【0019】
また、本発明の一は、一方の面に、複数の開口部を有する反射層と、反射層に接して形
成された透光性を有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接
して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された
面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、周波数10MHz以上、パルス幅100fs
以上10ns以下のレーザ光を、隣接する開口部に時間差が生じるように、第1の基板の
他方の面側から照射し、反射層の開口部と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱
し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴とする成膜方法である。
【0020】
また、本発明の一は、一方の面に、複数の開口部を有する反射層と、反射層に接して形
成された透光性を有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接
して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された
面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、周波数10MHz以上、パルス幅100fs
以上10ns以下のレーザ光を、被照射面において複数のレーザスポットがジグザグに並
ぶように照射し、レーザ光を第1の基板の他方の面側から照射し、レーザ光をジグザグに
並んでいる方向に対して垂直な方向に走査し、反射層の開口部と重なる位置にある材料層
の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴と
する成膜方法である。
【0021】
また、本発明の一は、上記の成膜方法を用いた発光装置の作製方法である。よって、本
発明の一は、一方の面に、開口部を有する反射層と、反射層に接して形成された透光性を
有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接して形成された材
料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、第1の電極
が形成された第2の基板の一方の面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数1
0MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、反射層の開口
部と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の第1
の電極上に成膜することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0022】
また、本発明の一は、一方の面に、複数の開口部を有する反射層と、反射層に接して形
成された透光性を有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接
して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された
面と、第1の電極が形成された第2の基板の一方の面とを対向させ、周波数10MHz以
上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を、隣接する開口部に時間差が生じ
るように、第1の基板の他方の面側から照射し、反射層の開口部と重なる位置にある材料
層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の第1の電極上に成膜することを
特徴とする発光装置の作製方法である。
【0023】
また、本発明の一は、一方の面に、複数の開口部を有する反射層と、反射層に接して形
成された透光性を有する断熱層と、断熱層に接して形成された光吸収層と、光吸収層に接
して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された
面と、第1の電極が形成された第2の基板の一方の面とを対向させ、周波数10MHz以
上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を、被照射面において複数のレーザ
スポットがジグザグに並ぶように照射し、レーザ光を第1の基板の他方の面側から照射し
、レーザ光をジグザグに並んでいる方向に対して垂直な方向に走査し、反射層の開口部と
重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の第1の電
極上に成膜することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0024】
上記構成における断熱層の透過率は60%以上であり、かつ断熱層に用いる材料の熱伝
導率は、反射層および光吸収層に用いる材料の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする。
また、断熱層の膜厚は、10nm以上2μm以下であることを特徴とする。また、断熱層
は、酸化チタン、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化ジルコニウム、炭化珪素のいずれかを含
むことを特徴とする。
【0025】
また、上記構成において、反射層は、レーザ光に対する反射率が85%以上であること
を特徴とする。また、反射層の膜厚は、100nm以上であることが好ましい。また、反
射層は、アルミニウム、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金、銀を含む合金、ま
たは酸化インジウム−酸化スズのいずれかを含むことを特徴とする。
【0026】
また、上記構成における光吸収層は、光に対する反射率が70%以下であることを特徴
とする。なお、光吸収層の膜厚は、10nm以上600nm以下であることを特徴とする
。また、光吸収層は、金属窒化物、金属、カーボンのいずれかを含むことを特徴とする。
【0027】
なお、上記構成において、光吸収層が反射層の開口部と重なる位置に島状に形成されて
いることを特徴とする。または、ストライプ状に形成されていることを特徴とする。
【0028】
また、上記構成において、材料層は有機化合物からなることが好ましい。なお、材料層
が、発光性材料またはキャリア輸送性材料の一方または両方を含む場合も本発明に含める
こととする。また、材料層は、湿式法により形成されることが好ましい。
【0029】
また、上記構成において、レーザ光は線状に成形されていることが好ましい。
【0030】
また、本発明は、発光素子を有する発光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器も
範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス
、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、
例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(
Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape C
arrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの
先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On
Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置
に含むものとする。
【発明の効果】
【0031】
本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また
、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となり、
高精細な発光装置を作製することができる。
【0032】
また、本発明を適用することにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コスト
低減を図ることができる。
【0033】
また、本発明を適用することにより、精度良く、所望の形状に成膜することが容易とな
るため生産性向上を図ることができる。
【0034】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を
一括して成膜することが可能となる。よって、成膜に要する時間を短縮することができ、
生産性を向上させることができる。
【0035】
本発明を適用することにより、成膜用基板上に形成される材料層の膜厚を制御すること
によって、成膜時に被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができるため、膜
厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化す
ることが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図2】本発明の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図3】本発明の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図4】本発明の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図5】本発明の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図6】本発明の成膜方法について説明する図。
【図7】本発明の成膜方法について説明する図。
【図8】成膜装置について説明する図。
【図9】発光素子について説明する図。
【図10】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図11】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図12】アクティブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図13】電子機器を示す図。
【図14】電子機器を示す図。
【図15】本発明の成膜方法について説明する図。
【図16】本発明の成膜方法について説明する図。
【図17】実施例について説明する図。
【図18】実施例の測定結果を示す図。
【図19】実施例の測定結果を示す図。
【図20】実施例の測定結果を示す図。
【図21】実施例の測定結果を示す図。
【図22】実施例の測定結果を示す図。
【図23】実施例の測定結果を示す図。
【図24】実施例の測定結果を示す図。
【図25】実施例の測定結果を示す図。
【図26】実施例の測定結果を示す図。
【図27】実施例の測定結果を示す図。
【図28】実施例の測定結果を示す図。
【図29】実施例の測定結果を示す図。
【図30】実施例の測定結果を示す図。
【図31】実施例の計算モデルを示す図。
【図32】実施例の計算結果を示す図。
【図33】実施例の計算結果を示す図。
【図34】実施例の計算結果を示す図。
【図35】実施例の計算結果を示す図。
【図36】実施例の計算結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内
容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同
じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る成膜用基板および成膜用基板を用いた成膜方法につい
て説明する。なお、本実施の形態では、成膜用基板を用いて発光素子のEL層を形成する
場合について説明する。本明細書では、成膜したい材料が設けられており、かつ、被成膜
基板に成膜を行うために用いる基板を、以下では成膜用基板と記す。
【0039】
図1(A)に成膜用基板の一例を示す。図1(A)に示すように、支持基板である第1
の基板101上に反射層102が形成されている。なお、反射層102は開口部106を
有している。また、反射層102上には、断熱層103が形成されている。なお、図1(
A)において、断熱層103の一部は、反射層102の開口部106を埋めるように形成
されている。また、断熱層103上には、光吸収層104が形成されている。
【0040】
さらに、光吸収層104上には、被成膜基板上に成膜する材料を含んでいる材料層10
5が形成されている。図1(A)においては、断熱層103、光吸収層104、および材
料層105は、第1の基板101の全面に形成されている。
【0041】
なお、本発明において、材料層105の材料を成膜する際、第1の基板101に照射さ
れた光が第1の基板101を透過する必要があることから、第1の基板101は、光の透
過率が高い基板であることが好ましい。つまり、照射する光としてレーザ光を用いた場合
、第1の基板101には、レーザ光を透過させる基板を用いることが好ましい。また、熱
伝導率が低い材料であることが好ましい。熱伝導率が低いことにより、照射された光から
得られる熱を効率よく成膜に用いることができるためである。第1の基板101としては
、例えば、ガラス基板、石英基板、無機材料を含むプラスチック基板などを用いることが
できる。
【0042】
反射層102は、成膜の際、光吸収層104の一部分に選択的に光を照射するために、
それ以外の部分に照射される光を反射するための層である。よって、反射層102は、照
射する光に対して高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には
、反射層102は、照射される光に対して、反射率が85%以上、さらに好ましくは、反
射率が90%以上であることが好ましい。
【0043】
また、反射層102に用いることができる材料としては、例えば、銀、金、白金、銅、
アルミニウムを含む合金、銀を含む合金、または酸化インジウム−酸化スズなどを用いる
ことができる。
【0044】
なお、照射される光の波長により、反射層102に好適な材料の種類が変化することか
ら、適宜材料を選択する必要がある。
【0045】
なお、反射層102は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタ
リング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などにより形成することができる。また、反射
層102の膜厚は、材料により異なるが、100nm以上とすることが好ましい。100
nm以上の膜厚とすることにより、照射した光が反射層102を透過することを抑制する
ことができる。
【0046】
また、反射層102に開口部106を形成する際には種々の方法を用いることができる
が、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、
微細なパターンを形成することができる。
【0047】
断熱層103は、成膜の際に照射された光のうち、反射層102によって反射された光
の一部が熱となって反射層102に残った場合に、その熱が後に形成される光吸収層10
4および材料層105に伝わるのを防ぐための層である。従って、断熱層103は、熱伝
導率が反射層102および光吸収層104を形成する材料よりも低い材料を用いる必要が
ある。また、図1に示すように、反射層102の開口部106を透過した光を、断熱層1
03を透過させて光吸収層104に照射する構成の場合には、断熱層103は透光性を有
する必要がある。この場合、本発明における断熱層103は、熱伝導率の低い材料である
と共に光透過率の高い材料を用いる必要がある。具体的には、断熱層103には、光に対
する透過率が60%以上となる材料を用いることが好ましい。
【0048】
また、断熱層103に用いる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化珪素、窒化酸化
珪素、酸化ジルコニウム、炭化珪素等を用いることができる。
【0049】
なお、断熱層103は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタ
リング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法などにより形成することができる。
また、断熱層103の膜厚は、材料により異なるが、10nm以上2μm以下とすること
が好ましく、より好ましくは、100nm以上600nm以下とする。10nm以上2μ
m以下の膜厚とすることにより、反射層102の開口部106を透過して照射される光を
透過させつつ、反射層102に存在する熱が光吸収層104や材料層105に伝わるのを
遮断する効果を有する。なお、断熱層103は、図1では、反射層102および反射層1
02の開口部106を覆って形成されているが、反射層102と重なる位置のみに断熱層
が形成された構造としてもよい。
【0050】
光吸収層104は、成膜の際に照射された光を吸収する層である。よって、光吸収層1
04は、照射する光に対して低い反射率を有し、高い吸収率を有する材料で形成されてい
ることが好ましい。具体的には、光吸収層104は、照射される光に対して、70%以下
の反射率を示すことが好ましい。
【0051】
光吸収層104には、種々の材料を用いることができる。例えば、窒化チタン、窒化タ
ンタル、窒化モリブデン、窒化タングステンなどの金属窒化物、チタン、モリブデン、タ
ングステンなどの金属、カーボンなどを用いることができる。なお、照射される光の波長
に応じて、光吸収層104に好適な材料の種類が変化することから、適宜材料を選択する
必要がある。例えば、波長800nmの光に対しては、モリブデン、窒化タンタル、チタ
ン、タングステンなどを用いることが好ましい。また、波長1300nmの光に対しては
、窒化タンタル、チタンなどを用いることが好ましい。また、光吸収層104は一層に限
らず複数の層により構成されていてもよい。例えば、金属と金属窒化物の積層構造として
もよい。
【0052】
なお、光吸収層104は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッ
タリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などにより形成することができる。
【0053】
また、光吸収層104の膜厚は、材料によって異なるが、照射した光が透過しない膜厚
であることが好ましい。具体的には、10nm以上2μm以下の膜厚であることが好まし
い。また、光吸収層の膜厚が薄い方がより小さいエネルギーのレーザ光で成膜することが
できるため、10nm以上600nm以下の膜厚であることがより好ましい。例えば、波
長532nmの光を照射した場合、光吸収層104の膜厚を50nm以上200nm以下
の膜厚とすることにより、照射した光を効率良く吸収して発熱させることができる。また
、光吸収層104の膜厚を50nm以上200nm以下とすることで、被成膜基板上への
成膜を精度良く行うことができる。
【0054】
なお、光吸収層104は、材料層105に含まれる材料の成膜可能温度(材料層105
に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板へ成膜される温度)まで加熱できるのであ
れば、照射する光の一部が透過してもよい。ただし、一部が透過する場合には、材料層1
05に含まれる材料として、光によって分解しない材料を用いることが必要である。
【0055】
さらに、反射層102と光吸収層104の反射率の差は大きいほど好ましい。具体的に
は、照射する光の波長に対して、反射率の差が25%以上、より好ましくは30%以上で
あることが好ましい。
【0056】
材料層105は、被成膜基板上に成膜する材料を含んで形成される層である。そして、
成膜用基板に光を照射することにより、材料層105に含まれる材料が加熱され、材料層
105に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板上に成膜される。材料層105が加
熱されると、材料層105に含まれる材料の少なくとも一部が気化すること、もしくは、
材料層105の少なくとも一部に熱変形が生じ、その結果応力が変化するために膜が剥が
れ、被成膜基板上に成膜されると考えられる。
【0057】
なお、材料層105に含まれる材料としては、成膜することが可能な材料であれば、有
機化合物、無機化合物にかかわらず、種々の材料を用いることができる。本実施の形態で
示すように発光素子のEL層を形成する場合には、EL層を形成する成膜可能な材料を用
いる。例えば、EL層を形成する発光性材料、キャリア輸送性材料などの有機化合物の他
、EL層を構成するキャリア輸送層やキャリア注入層の他、発光素子の電極などに用いら
れる金属酸化物、金属窒化物、ハロゲン化金属、金属単体といった無機化合物を用いるこ
ともできる。なお、EL層を形成する成膜可能な材料の詳細については、実施の形態4に
おいて詳述するので、それを参考にすることとし、ここでの説明は省略する。
【0058】
また、材料層105は、複数の材料を含んでいてもよい。また、材料層105は、単層
でもよいし、複数の層が積層されていてもよい。従って、材料を含む層を複数積層するこ
とにより、共蒸着することも可能である。なお、材料層105が積層構造を有する場合に
は、第1の基板側101に成膜可能な温度の低い材料を含むように積層することが好まし
い。このような構成とすることにより、積層構造を有する材料層105による蒸着を効率
良く行うことができる。
【0059】
また、材料層105は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコ
ート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコ
ート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、又は印
刷法等を用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、スパッタリング法等を用
いることができる。
【0060】
湿式法を用いて材料層105を形成する場合には、所望の材料を溶媒に溶解あるいは分
散させ、溶液あるいは分散液を調整すればよい。溶媒は、材料を溶解あるいは分散させる
ことができ、且つ材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホル
ム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベン
ゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロ
ピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、
或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、
プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、
テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、
或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又
は水等を用いることができる。また、これらの溶媒複数種を混合して用いてもよい。湿式
法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させるこ
とができる。
【0061】
なお、材料層105によって被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性を制御す
る場合には、材料層105の膜厚および均一性は制御される必要がある。しかし、被成膜
基板上に形成される膜の膜厚および均一性に影響しないのであれば、材料層105は必ず
しも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を
有する層状に形成されていてもよい。
【0062】
次に、図1(B)に示すように、第1の基板101の一方の面であって、反射層102
、断熱層103、光吸収層104、および材料層105が形成された面に対向する位置に
、被成膜基板である第2の基板107を配置する。第2の基板107は、成膜処理により
所望の層が成膜される被成膜基板である。なお、ここでは、成膜用基板を用いて発光素子
のEL層を形成する場合について説明するため、第2の基板107上には、発光素子の一
方の電極となる第1の電極108、および絶縁物109が形成されている。そして、第1
の基板101と第2の基板107とを至近距離、具体的には第1の基板101上の材料層
105の表面と、第2の基板107表面との距離dを、0mm以上2mm以下、好ましく
は0mm以上0.05mm以下、さらに好ましくは0mm以上0.03mm以下となるよ
うに近づけて対向させる。
【0063】
なお、距離dは、第1の基板101上の材料層105の表面と、第2の基板107表面
との距離で定義する。従って、第2の基板107上に何らかの層(例えば、電極として機
能する導電層や隔壁として機能する絶縁物等)が形成されている場合、距離dは、第1の
基板101上の材料層105の表面と、第2の基板107上に形成された層の最表面との
距離で定義する。ただし、第1の基板101上の材料層105の表面や、第2の基板10
7上に形成された層の最表面が凹凸を有する場合における距離dは、第1の基板101上
の材料層105の表面と、第2の基板107上に形成された層の最表面との間の最も短い
距離で定義することとする。
【0064】
次に、図1(C)に示すように第1の基板101の裏面(反射層102、断熱層103
、光吸収層104、および材料層105が形成されていない面)側から光110を照射す
る。このとき、第1の基板101上に形成された反射層102に照射された光は反射され
るが、反射層102の開口部106に照射された光は、断熱層103を透過し、光吸収層
104に吸収される。そして、光吸収層104は、吸収した光から得た熱を材料層105
に含まれる材料に与えることにより、材料層105に含まれる材料の少なくとも一部を、
第2の基板107上に形成された第1の電極108上に材料を成膜する。これにより、第
2の基板107上に発光素子のEL層111が形成される。
【0065】
照射する光としては、周波数10MHz以上、かつ、パルス幅100fs以上10ns
以下のレーザ光を用いる。このように周波数が非常に大きく、パルス幅が非常に小さいレ
ーザ光を用いることにより、光吸収層104における熱変換が効率よく行われ、材料を効
率よく加熱することができる。
【0066】
また、レーザ光の波長は特に限定されず、様々な波長のレーザ光を用いることができる
。例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用
いることができる。
【0067】
また、レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単
結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO
、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdV
に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種
または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、ア
レキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザの
うち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザ
から発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。な
お、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保
てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0068】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩
形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、
成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。
【0069】
また、本発明では、照射された光源からの光による輻射熱を利用するのではなく、光源
からの光を吸収した光吸収層104が材料層105に熱を与えることが特徴である。従っ
て、光が照射された部分の光吸収層104から光が照射されていない部分の光吸収層10
4へ、面方向に熱が伝わることにより、加熱される材料層105の範囲が広がることのな
いように、光の照射時間は、短くすることが好ましい。
【0070】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を
5×10−3Pa以下、好ましくは10−6Pa以上10−4Pa以下の雰囲気とするこ
とが好ましい。
【0071】
本発明で用いる周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ
光は、短時間のレーザ光の照射が可能であるため、熱の拡散を抑制することができ、微細
なパターンの成膜が可能となる。また、周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上
10ns以下のレーザ光は、高調波に変換する際の変換効率が高いため、高調波のレーザ
光を照射する必要がある場合には高出力が可能となる。よって、大面積を一度に処理する
ことができ、成膜に要する時間を短縮することができる。よって、生産性を向上させるこ
とができる。
【0072】
また、反射層102の開口部106を透過した光がまわりこむ可能性がある場合には、
照射する光がまわりこむことを考慮して、図1(D)に示すような反射層102の開口部
106を小さくした構造が有効である。図1(D)の場合において、反射層102の開口
部106を透過した光は、光吸収層104に照射されるまでに広がるため、反射層102
の開口部106に対応する領域よりも広範囲の材料層105が加熱され、第2の基板10
7上に蒸着される。
【0073】
また、図2(A)には、第1の基板101と第2の基板107との距離dが0mmの場
合について示す。つまり、第1の基板101上に形成された材料層105と、第2の基板
107上に形成された層のうちの最表層である絶縁物109とが接する場合について示す
。このように距離dを小さくすることで、図2(B)に示すように光を照射した際に、第
2の基板107上に成膜される膜の形状を精度良く形成することができる。ただし、第2
の基板107の表面に凹凸がない場合には、第1の基板101上の材料層105と第2の
基板107の被成膜面が接しないようにすることが好ましい。
【0074】
また、成膜用基板の構造は、図1(A)に示す構造に加えて、図2(C)に示す構造と
しても良い。図2(C)に示す構造は、第1の基板101上に順次形成された反射層10
2、断熱層103、光吸収層104上で、かつ反射層102と重なる位置に第2の断熱層
112が形成され、光吸収層104および第2の断熱層112上に材料層105が形成さ
れる構造である。この様な構造とすることにより、図1(A)の構造の場合に比べて成膜
用基板の作製工程は増えるが、成膜パターンのぼけをより防ぐことができる。すなわち、
成膜のために光が照射された際に、開口部106と重なる位置に形成されている光吸収層
104における熱が、反射層102と重なる位置に形成されている光吸収層104に伝わ
る(光吸収層104の面方向に熱が伝わる)ことが起こったとしても、第2の断熱層11
2が設けられているため、その熱が材料層105に伝わることを防ぐことができる。よっ
て、反射層102と重なる位置に形成されている材料層105が加熱されることで生じる
、被成膜面の成膜パターンのぼけを防ぐことができる。また、第2の断熱層112を設け
ることにより、熱源となる光吸収層104と被成膜基板との間に距離を設けることができ
るため、光吸収層104からの熱により、第2の基板107が加熱され、成膜不良が生じ
るのを防ぐことができる。さらに、材料層105から被成膜基板上へ成膜する材料の成膜
方向を制御することができるため、被成膜面の成膜パターンのぼけを防ぐことができる。
なお、第2の断熱層112に用いる材料および成膜方法は、断熱層103に用いる材料お
よび成膜方法と同様とすることができるが、材料の透過率に関しては、断熱層103の場
合と異なり特に限定されない。
【0075】
また、第2の断熱層112の膜厚は、断熱層103に比べ大きくすることが好ましい。
具体的には、第2の断熱層112の膜厚は1μm〜10μmとするのが好ましい。第2の
断熱層112を厚くすることにより、上述した第2の断熱層112を設ける効果がより顕
著になる。また、図2(D)に示すように、第2の断熱層112を厚くすることにより、
材料層105が不連続になるため、材料層105の面方向に熱が伝わることを防ぐことが
でき、よりいっそう成膜パターンのぼけを防ぐことができる。
【0076】
なお、図1では、光吸収層104が第1の基板101の全面に形成される場合について
示したが、図3(A)に示すように、光吸収層113が島状にパターン形成されていても
よい。この様に光吸収層113を島状にパターン形成することにより、成膜のために光が
照射された際に、光吸収層113における熱が、光吸収層113に面方向に伝わり、反射
層102と重なる位置に形成されている材料層105を加熱することで生じる、被成膜面
の成膜パターンのずれや、ぼけを防ぐことができる。
【0077】
なお、図3(A)に示した成膜用基板の場合も図1で説明した成膜用基板の場合と同様
であり、図3(B)に示すように、第1の基板101の一方の面であって、反射層102
、断熱層103、光吸収層113、および材料層105が形成された面に対向する位置に
、被成膜基板である第2の基板107を配置する。
【0078】
そして、図3(C)に示すように第1の基板101の裏面(反射層102、断熱層10
3、光吸収層113、および材料層105が形成されていない面)側から光を照射する。
このとき、第1の基板101上に形成された反射層102に照射された光は、反射される
が、反射層102の開口部106に照射された光は、透過して断熱層103を透過し、光
吸収層113に吸収される。そして、光吸収層113は、吸収した光から得た熱を材料層
105に含まれる材料に与えることにより材料層105に含まれる材料の少なくとも一部
を、第2の基板107上に形成された第1の電極108上に材料を成膜する。これにより
、第2の基板107上に発光素子のEL層111が形成される。なお、図3(C)では、
反射層102の端部と光吸収層113の端部が揃っている場合を示したが、被成膜基板に
光が照射されないように、反射層102と光吸収層113が一部重なるように形成しても
よい。
【0079】
また、図3(A)に示す構造に加えて、図3(D)に示す構造としても良い。図3(D
)に示す構造は、第1の基板101上に反射層102、断熱層103、光吸収層104が
順次形成されており、反射層102と重なる位置に第2の断熱層112が形成され、光吸
収層104および第2の断熱層112上に材料層105が形成される構造である。なお、
この様な構造とすることにより、図1(A)の構造の場合に比べて成膜用基板の作製工程
は増えるが、第2の断熱層112を設けることにより、材料層105から被成膜基板上へ
成膜する材料の成膜方向を制御することができるため、被成膜面の成膜パターンのぼけを
防ぐことができる。なお、第2の断熱層112に用いる材料および成膜方法は、断熱層1
03に用いる材料および成膜方法と同様とすることができるが、材料の透過率に関しては
、断熱層103の場合と異なり特に限定されない。また、第2の断熱層112の膜厚は1
μm〜10μmとするのが好ましい。また、材料層105が不連続になるほど、第2の断
熱層112を厚くした場合には、材料層105の面方向に熱が伝わることを防ぐことがで
き、よりいっそう成膜パターンのぼけを防ぐことができる。
【0080】
また、図4に示すように、断熱層103が島状にパターン形成されていてもよい。この
とき、断熱層103は、反射層102と重なるようにし、開口部106には形成されない
ようにする。このように断熱層103を島状に形成しても、図1と同様に、成膜パターン
のぼけを防ぐことができる。また、このように断熱層103を島状にパターン形成するこ
とにより、断熱層を開口部にも形成する場合に比べて、断熱層103の膜厚を大きくする
ことが可能となる。例えば、図4(D)に示すように、断熱層103の膜厚を大きくし、
光吸収層104および材料層105が不連続になるようにすることができる。その場合、
光吸収層104の面方向に熱が伝わることを防ぐことができる。また、材料層105の面
方向に熱が伝わることを防ぐことができる。よって、よりいっそう成膜パターンのぼけを
防ぐことができる。なお、断熱層103を反射層102と重なるようにし開口部106に
は形成されないようにした場合、断熱層103の光の透過率に関しては特に限定されない

【0081】
また、図5に示すように、図4に示した構成にさらに第2の断熱層112を設けること
もできる。図5(A)は、第1の基板101上に順次形成された反射層102、断熱層1
03、光吸収層104上で、かつ反射層102と重なる位置に第2の断熱層112が形成
され、光吸収層104および第2の断熱層112上に材料層105が形成される構造であ
る。この様な構造とすることにより、成膜パターンのぼけをより防ぐことができる。すな
わち、成膜のために光が照射された際に、開口部106と重なる位置に形成されている光
吸収層104における熱が、反射層102と重なる位置に形成されている光吸収層104
に伝わる(光吸収層104の面方向に熱が伝わる)ことが起こったとしても、第2の断熱
層112が設けられているため、その熱が材料層105に伝わることを防ぐことができる
。よって、反射層102と重なる位置に形成されている材料層105が加熱されることで
生じる、被成膜面の成膜パターンのぼけを防ぐことができる。また、第2の断熱層112
を設けることにより、熱源となる光吸収層104と被成膜基板との間に距離を設けること
ができるため、光吸収層104からの熱により、第2の基板107が加熱され、成膜不良
が生じるのを防ぐことができる。さらに、材料層105から被成膜基板上へ成膜する材料
の成膜方向を制御することができるため、被成膜面の成膜パターンのぼけを防ぐことがで
きる。なお、第2の断熱層112に用いる材料および成膜方法は、断熱層103に用いる
材料および成膜方法と同様とすることができるが、材料の透過率に関しては、断熱層10
3の場合と異なり特に限定されない。
【0082】
また、第2の断熱層112の膜厚は、断熱層103に比べ大きくすることが好ましい。
具体的には、第2の断熱層112の膜厚は1μm〜10μmとするのが好ましい。第2の
断熱層112を厚くすることにより、上述した第2の断熱層を設ける効果がより顕著にな
る。また、図5(B)に示すように、第2の断熱層112を厚くすることにより、材料層
105が不連続になるため、材料層105の面方向に熱が伝わることを防ぐことができ、
よりいっそう成膜パターンのぼけを防ぐことができる。
【0083】
また、本実施の形態では、第2の基板107が、第1の基板101の下方に位置する場
合を図示したが、本発明はこれに限定されない。基板の設置する向きは適宜設定すること
ができる。
【0084】
また、本実施の形態では、被成膜基板である第2の基板107上に第1の電極108が
形成されており、第1の電極108上に成膜する場合について示したが、第1の電極10
8上にすでにEL層の一部が形成されている場合についても、本発明を適用することがで
きる。例えば、第1の電極108上にEL層の一部(正孔注入層、正孔輸送層など)が形
成された第2の基板107を用いて、本発明の成膜方法を適用して発光層を形成すること
ができる。フルカラーディスプレイを作製する場合には、発光層を作り分ける必要がある
ため、本発明の成膜方法を用いることにより容易に発光層を作り分けることができる。ま
た、精度良く発光層を作り分けることができる。
【0085】
本発明を適用することにより、第1の基板上に形成された材料層の膜厚を制御すること
によって、被成膜基板である第2の基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる
。つまり、第1の基板上に形成された材料層に含まれる材料を全て成膜することにより第
2の基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め材料層の膜厚が制御されている
ため、第2の基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを
利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能
である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0086】
また、本発明を適用することにより、第1の基板上101に形成された材料層105に
含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層105が複数の材料を含む場
合でも、材料層105と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板である第2
の基板107上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、成膜温度の
異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御
する必要がない。そのため、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材
料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0087】
また、本発明の成膜方法では、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜す
ることが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることが
できる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを
容易にすることができる。
【0088】
また、本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる
。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能と
なり、高精細な発光装置を作製することができる。
【0089】
また、本発明を適用することにより、レーザ光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域
に成膜することができるので、材料の利用効率を高めることができ、精度良く、所望の形
状に成膜することが容易であるため生産性向上を図ることができる。また、本発明では、
光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜すること
が可能となる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産
性を向上させることができる。
【0090】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した成膜用基板を複数用いて、発光素子のEL
層を形成することにより、フルカラー表示が可能な発光装置の作製方法について説明する

【0091】
実施の形態1では、1回の成膜工程で、被成膜基板である第2の基板上に形成された複
数の電極上には、全て同一の材料からなるEL層を形成する場合について示したが、本実
施の形態では、第2の基板上に形成された複数の電極上には、3種類の発光の異なるEL
層のいずれかが形成される場合について説明する。
【0092】
まず、実施の形態1において、例えば、図1(A)に示した成膜用基板を3枚用意する
。それぞれの成膜用基板には、発光の異なるEL層を形成するための材料層が形成されて
いる。具体的には、赤色発光を示すEL層(EL層(R))を形成するための材料を含む
材料層(R)を有する第1の成膜用基板と、緑色発光を示すEL層(EL層(G))を形
成するための材料を含む材料層(G)を有する第2の成膜用基板と、青色発光を示すEL
層(EL層(B))を形成するための材料を含む材料層(B)を有する第3の成膜用基板
とを用意する。
【0093】
また、実施の形態1において図1(B)に示した複数の第1の電極を有する被成膜基板
を1枚用意する。なお、被成膜基板上の複数の第1の電極は、その端部が絶縁物で覆われ
ているため、発光領域は、第1の電極の一部であって、絶縁物と重ならずに露呈している
領域に相当する。
【0094】
まず、1回目の成膜工程として、図1(B)と同様に被成膜基板と第1の成膜用基板と
を重ね、位置合わせをする。なお、被成膜基板には、位置合わせ用のマーカを設けること
が好ましい。また、第1の成膜用基板にも位置合わせ用のマーカを設けることが好ましい
。なお、第1の成膜用基板には、光吸収層が設けられているため、位置合わせのマーカ周
辺の光吸収層は予め除去しておくことが好ましい。また、第1の成膜用基板には、材料層
(R)が設けられているため、位置合わせのマーカ周辺の材料層(R)も予め除去してお
くことが好ましい。
【0095】
そして、第1の成膜用基板の裏面(図1に示す反射層102、断熱層103、光吸収層
104、および材料層105が形成されていない面)側から光を照射する。光吸収層が、
照射された光を吸収して材料層(R)に熱を与えることで、材料層(R)に含まれる材料
を加熱し、被成膜基板上の一部の第1の電極上にEL層(R)が形成する。そして、1回
目の成膜を終えたら、第1の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0096】
次いで、2回目の成膜工程として、被成膜基板と第2の成膜用基板とを重ね、位置合わ
せをする。第2の成膜用基板には、1回目の成膜時で使用した第1の成膜用基板とは1画
素分ずらして反射層の開口部が形成されている。
【0097】
そして、第2の成膜用基板の裏面(図1に示す反射層102、断熱層103、光吸収層
104、および材料層105が形成されていない面)側から光を照射する。光吸収層が、
照射された光を吸収して材料層(G)に熱を与えることで、材料層(G)に含まれる材料
を加熱し、被成膜基板上の一部であって、1回目の成膜でEL層(R)が形成された第1
の電極のとなりの第1の電極上にEL層(G)が形成する。そして、2回目の成膜を終え
たら、第2の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0098】
次いで、3回目の成膜工程として、被成膜基板と第3の成膜用基板とを重ね、位置合わ
せをする。第3の成膜用基板には、1回目の成膜時で使用した第1の成膜用基板とは2画
素分ずらして反射層の開口部が形成されている。
【0099】
そして、第3の成膜用基板の裏面(図1に示す反射層102、断熱層103、光吸収層
104、および材料層105が形成されていない面)側から光を照射する。この3回目の
成膜を行う直前の様子が図6(A)の上面図に相当する。図6(A)において、反射層4
01は開口部402を有している。従って、第3の成膜用基板の反射層401の開口部4
02を透過した光は、断熱層を透過して、光吸収層に吸収される。また、被成膜基板の第
3の成膜用基板の開口部402と重なる領域には、第1の電極が形成されている。なお、
図6(A)中に点線で示した領域の下方には、既に1回目の成膜により形成されたEL層
(R)411と2回目の成膜により形成されたEL層(G)412が位置している。
【0100】
そして、3回目の成膜により、EL層(B)413が形成される。光吸収層が、照射さ
れた光を吸収して材料層(B)に熱を与えることで、材料層(B)に含まれる材料を加熱
し、被成膜基板上の一部であって、2回目の成膜でEL層(G)412が形成された第1
の電極のとなりの第1の電極上にEL層(B)413が形成される。3回目の成膜を終え
たら、第3の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0101】
こうしてEL層(R)411、EL層(G)412、EL層(B)413を一定の間隔
をあけて同一の被成膜基板上に形成することができる。そして、これらの膜上に第2の電
極を形成することによって、発光素子を形成することができる。
【0102】
以上の工程で、同一基板上に異なる発光を示す発光素子が形成されることにより、フル
カラー表示が可能な発光装置を形成することができる。
【0103】
図6では、成膜用基板に形成された反射層の開口部402の形状を矩形とした例を示し
たが、特に限定されず、ストライプ状の開口部としても良い。ストライプ状の開口部とし
た場合、同じ発光色となる発光領域の間にも成膜が行われるが、絶縁物414の上に形成
されるため、絶縁物414と重なる部分は発光領域とはならない。
【0104】
また、画素の配列も特に限定されず、図7(A)に示すように、1つの画素形状を多角
形、例えば六角形としてもよく、EL層(R)511、EL層(G)512、EL層(B
)513を配置してフルカラーの発光装置を実現させることもできる。なお、図7(A)
に示す多角形の画素を形成するために、図7(B)に示す多角形の開口部502を有する
反射層501を有する成膜用基板を用いて成膜すればよい。
【0105】
本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、成膜用基板に形
成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制
御することができる。つまり、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を全て成
膜することにより被成膜基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め材料層の膜
厚が制御されているため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よっ
て、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自
動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0106】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を
適用することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を均一に成膜する
ことができる。また、材料層が複数の材料を含む場合でも、材料層と同じ材料をほぼ同じ
重量比で含有する膜を被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜
方法は、成膜温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、蒸着レート等の複雑な
制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる

【0107】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を
適用することにより、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可
能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。ま
た、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にする
ことができる。
【0108】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を
適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能であり、また、微細なパ
ターン形成が可能となるため、高精細な発光装置を得ることができる。
【0109】
また、本発明を適用することにより、レーザ光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域
に成膜することができるので、材料の利用効率を高めることができ、精度良く、所望の形
状に成膜することが容易であるため発光装置の生産性向上を図ることができる。また、本
発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成
膜することが可能となる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)を短縮することが
でき、生産性を向上させることができる。
【0110】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【0111】
(実施の形態3)
本実施の形態では、成膜用基板にレーザを照射させることにより成膜を行う成膜装置の
例およびレーザを照射する方法について説明する。
【0112】
図8はレーザを用いた成膜装置の一例を示す斜視図である。射出されるレーザ光はレー
ザ発振装置803(YAGレーザ装置など)から出力され、ビーム形状を矩形状とするた
めの第1の光学系804と、整形するための第2の光学系805と、平行光線にするため
の第3の光学系806とを通過し、反射ミラー807で光路が成膜用基板801に対して
垂直となる方向に曲げられる。その後、成膜用基板にレーザビームを照射する。
【0113】
なお、本実施の形態に示す成膜用基板の構成は、実施の形態1で説明したものと同様で
あることとする。すなわち、第1の基板上に反射層810、断熱層811、光吸収層81
2、および材料層813などが形成された構成を有する。また、反射層810には、開口
部814が形成されている。なお、図8で、開口部814がストライプ状の場合を示した
が、これに限定されず、開口部は所望の形状に形成することができる。
【0114】
光源となるレーザ光としては、周波数10MHz以上、かつ、パルス幅100fs以上
10ns以下のレーザ光を用いる。このように周波数が非常に大きく、パルス幅が非常に
小さいレーザ光を用いることにより、光吸収層812における熱変換が効率よく行われる
。そのため、材料層813に含まれる材料を効率よく加熱することができる。
【0115】
また、レーザ光の波長は特に限定されず、様々な波長のレーザ光を用いることができる
。例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用
いることができる。
【0116】
また、レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単
結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO
、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdV
に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種
または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、ア
レキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザの
うち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザ
から発振される第2高調波や第3高調波を用いることもできる。
【0117】
また、成膜用基板801に照射されるレーザスポットの形状は、矩形状または線状とす
ることが好ましく、例えば、短辺が1μm〜100μm、且つ長辺が100μm〜5mm
の矩形状とすればよい。また、大面積基板を用いる場合には、処理時間を短縮するため、
レーザスポットの長辺をできるだけ長くすることが好ましい。また、図8に示すレーザ発
振装置及び光学系を複数設置して大面積の基板を短時間に処理してもよい。具体的には、
複数のレーザ発振装置からレーザビームをそれぞれ照射して基板1枚における処理面積を
分担してもよい。
【0118】
なお、図8は一例であり、レーザ光の光路に配置する各光学系や電気光学素子の位置関
係は特に限定されない。例えば、レーザ発振装置803を成膜用基板801の上方に配置
し、レーザ発振装置803から射出するレーザ光が成膜用基板801の主平面に垂直な方
向となるように配置すれば、反射ミラー807を用いずともよい。また、各光学系は、集
光レンズ、ビームエキスパンダ、ホモジナイザ、または偏光子などを用いればよく、これ
らを組み合わせてもよい。また、各光学系としてスリットを組み合わせてもよい。
【0119】
被照射面上でレーザビームの照射領域を2次元的に、適宜、走査させることによって、
基板の広い面積に照射を行う。走査するために、レーザビームの照射領域と基板とを相対
的に移動させる。ここでは、基板を保持している基板ステージ809をXY方向に移動さ
せる移動手段(図示しない)で走査を行う。
【0120】
また、制御装置816は、基板ステージ809をXY方向に移動させる移動手段も制御
できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置816は、レーザ発振装置8
03も制御できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置816は、位置マ
ーカを認識するための撮像素子808を有する位置アライメント機構と連動させることが
好ましい。
【0121】
位置アライメント機構は、成膜用基板801と、被成膜基板800の位置合わせを行う

【0122】
また、成膜用基板801と被成膜基板800の基板間隔である距離dは、成膜用基板8
01上に形成された材料層の表面と、被成膜基板800の表面との距離で定義する。また
、被成膜基板800上に何らかの層(例えば、電極として機能する導電層や隔壁として機
能する絶縁物等)が形成されている場合、距離dは、成膜用基板801上の材料層の表面
と、被成膜基板800上に形成された層の表面との距離で定義する。ただし、成膜用基板
801上の材料層の表面や、被成膜基板800或いは被成膜基板800上に形成された層
の表面に凹凸を有する場合における距離dは、成膜用基板801上の材料層の表面と、被
成膜基板800或いは被成膜基板800上に形成された層の最表面との間の最も短い距離
で定義することとする。なお、距離dは、0mm以上2mm以下、好ましくは0mm以上
0.05mm以下、さらに好ましくは0mm以上0.03mm以下となるように近づけて
対向させる。また、被成膜基板800に隔壁となる絶縁物が設けられている場合には、絶
縁物と材料層815を接触させて配置してもよい。
【0123】
図8に示す成膜装置を用いて成膜を行う場合には、少なくとも成膜用基板801と被成
膜基板800を真空チャンバー内に配置する。また、図8に示す構成を全て真空チャンバ
ー内に設置してもよい。
【0124】
また、図8に示す成膜装置は、被成膜基板800の成膜面が上を向いた、所謂フェイスア
ップ方式の成膜装置の例を示しているが、フェイスダウン方式の成膜装置とすることもで
きる。また、被成膜基板800が大面積基板である場合、基板の自重により基板の中心が
撓んでしまうことを抑えるために、被成膜基板800の主平面を水平面に対して垂直に立
てる、所謂縦置き方式の装置とすることもできる。
【0125】
また、被成膜基板800を冷却する冷却手段をさらに設けることで、プラスチック基板
などの可撓性基板を被成膜基板800に用いることができる。
【0126】
また、本実施の形態に示した成膜装置を複数設け、マルチチャンバー型の成膜装置にす
ることができる。勿論、他の成膜方法の成膜装置との組み合わせも可能である。また、本
実施の形態に示した成膜装置を直列に複数並べて、インライン型の成膜装置にすることも
できる。
【0127】
図8の成膜用基板および被成膜基板を上面から見た図を図15(A)に示す。図15(
A)では、成膜用基板の一辺とほぼ同じ長さの線状(または矩形状)のレーザスポット8
20となるようにレーザ光を成形し、成膜用基板の全面を一度に走査できるようにしてい
る。
【0128】
また、レーザ光を長い線状(または矩形状)に成形するのではなく、レーザ光を短い線
状(または矩形状)に成形し、その短い線状(または矩形状)レーザを複数用いてもよい
。例えば、被照射面において、線状または矩形状に成形されたレーザスポット(以下、線
状レーザという)が、ある繰り返し単位をもつようにしてもよい。図15(B)では、被
照射面において、ジグザグとなるように線状レーザが並んでいる例を示している。より具
体的には、線状レーザ821はストライプ状の開口部814を、一列おきに照射できるよ
うに並んでいる。同様に線状レーザ822もストライプ状の開口部814を、一列おきに
照射できるように並んでいる。そして、線状レーザ821と線状レーザ822は、同じ列
の開口部を照射しないように並んでいる。線状レーザ821は、ほぼ平行に並んでいる。
同様に、線状レーザ822も、ほぼ平行に並んでいる。そして、この平行線とは垂直な方
向にレーザ光を走査する。
【0129】
照射するレーザ光をこのような形状に成形し、被照射面上のレーザビームの照射領域を
走査させると、隣接する開口部にレーザが照射されている時間に差が生じる。そのため、
レーザビームが照射された部分の熱が照射されていない部分へ拡散し、放熱することがで
きる。よって、所望の領域以外が余計に加熱され材料が蒸着温度にまで達することを抑制
できる。つまり、成膜パターンのぼけを抑制することができる。
【0130】
なお、成形されたレーザの形状に関してはこれに限定されない。図16(A)に示すよ
うに、一つの線状レーザが複数の開口部を処理できるように、より長い形状としてもよい
。図16(A)では、線状レーザ823は2列の開口部を照射できるように成形されてい
る。同様に、線状レーザ824も2列の開口部を照射できるように成形されている。
【0131】
また、線状レーザの繰り返し単位も2つに限らず3つ以上であってもよい。例えば、線
状レーザが開口部を2つおきに照射できるように並んでいる形状であってもよい。図16
(B)において、線状レーザ825は開口部814を2列おきに照射できるように並んで
いる。同様に、線状レーザ826および線状レーザ827も、開口部814を2列おきに
照射できるように並んでいる。そして、線状レーザ825と線状レーザ826と線状レー
ザ827は、同じ列の開口部を照射しないように並んでいる。なお、線状レーザを3つ以
上並べる場合には、図16(B)に示す以外にも適宜繰り返し単位を設定すればよい。
【0132】
なお、図15および図16において、レーザ走査方向とは、被照射面上のレーザビーム
の照射領域が移動する方向であり、レーザビームの照射領域と基板とが相対的に移動すれ
ばよい。
【0133】
このような成膜装置を用い、発光装置を作製することが可能である。本発明において、
湿式法を用いた場合、成膜用基板上の材料層を容易に準備できる。また、成膜用基板上の
材料層をそのまま成膜すればよいため、膜厚モニターが不要となる。よって、成膜工程を
全自動化でき、スループットの向上を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着
することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0134】
また、本実施の形態で説明した成膜装置を用いて発光装置を作製する場合において、本
発明を適用することでレーザ光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域に成膜することが
できる。そのため、材料の利用効率を高めることができ、平坦でムラのない膜を成膜する
ことが可能となる。また、微細なパターン形成も可能となる。従って、本発明を適用する
ことにより、発光装置の製造コストを低減させることができると共に優れた特性の発光装
置を得ることができる。
【0135】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1〜実施の形態2に示した構成を適宜組
み合わせて用いることができることとする。
【0136】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明を適用して、発光素子および発光装置を作製する方法につい
て説明する。
【0137】
本発明を適用して、例えば、図9(A)、(B)に示す発光素子を作製することができ
る。図9(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみ
で形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電
極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機
能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合し
て、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機
能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0138】
また、図9(B)に示す発光素子は、図9(A)のEL層903が複数の層が積層され
た構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911
、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915が順次
設けられている。なお、EL層903は、図9(A)に示すように少なくとも発光層91
3を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜
選択して設ければよい。
【0139】
図9に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的
には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラ
スのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファ
イヤ基板等を用いることができる。
【0140】
また、第1の電極902および第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化
合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化イン
ジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪
素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indi
um Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウ
ム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステ
ン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(
Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げ
られる。
【0141】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−
酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用い
てスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛
を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt
%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形
成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピン
コート法などにより作製してもよい。
【0142】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることが
できる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属す
る元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネ
シウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、
およびこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリ
チウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属および
これらを含む合金等を用いることもできる。
【0143】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成
することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリ
ング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法など
により成膜することも可能である。また、第1の電極902および第2の電極904は、
単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0144】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2
の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、イン
ジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニ
ウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、ア
ルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積
層構造とすることもできる。
【0145】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層9
12、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1で示し
た成膜方法を適用して形成することができる。また、電極を実施の形態1で示した成膜方
法を適用して形成することもできる。
【0146】
例えば、図9(A)に示す発光素子を形成する場合、実施の形態1で示した成膜用基板
の材料層をEL層903を形成する材料で形成し、この成膜用基板を用いて基板901上
の第1の電極902上にEL層903を形成する。そして、EL層903上に第2の電極
904を形成することにより、図9(A)に示す発光素子を得ることができる。
【0147】
発光層913としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光
性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0148】
発光層913に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料
として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリ
ジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2
−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)
ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチル
フェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(
CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジ
ナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac
)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト
−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニル
ピリジナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p
py)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリ
ジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス
(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(
bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2
,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C’)イリジウム(III)アセチル
アセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオ
ロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:
Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,
’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac
))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナ
ト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニル
キノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p
q)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(
2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)
アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイ
ソキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(
piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロ
フェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(aca
c))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポ
ルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、ト
リス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:T
b(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオ
ナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(P
hen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](
モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen)
)等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)で
あるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0149】
発光層913に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料
として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’
−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カル
バゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン
(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,1
0−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−ア
ミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル
)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:
2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’
−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10
−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリ
フェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(
1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェ
ニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,
9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる
。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−
4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また
、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テ
トラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,
N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオラ
ンテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0150】
また、発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト
材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を
他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることにより、発光層の結晶化を抑制す
ることができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制するこ
とができる。
【0151】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合
には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネル
ギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物
の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態との
エネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0152】
発光層913に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチ
ル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)
アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフ
ルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビ
ス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III
)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:
CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:
t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアント
ラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0153】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることが
できる。
【0154】
発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)
に分散させた構成を用いる場合には、成膜用基板上の材料層として、ホスト材料とゲスト
材料とを混合した層を形成すればよい。または、成膜用基板上の材料層として、ホスト材
料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の
材料層を有する成膜用基板を用いて発光層913を形成することにより、発光層913は
発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含
み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が
分散された構成となる。なお、発光層913として、2種類以上のホスト材料とドーパン
ト材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料とホスト材料を用いてもよい。ま
た、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0155】
また、図9(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層91
1、正孔輸送層912、電子輸送層914、および電子注入層915)のそれぞれの層を
形成する材料で形成された材料層を有する実施の形態1で示した成膜用基板を各層毎に用
意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、実施の形態1で示した方法により、基
板901上の第1の電極902上にEL層903を形成することができる。そして、EL
層903上に第2の電極904を形成することにより、図9(B)に示す発光素子を得る
ことができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1で示した方
法を用いることもできるが、一部の層のみに実施の形態1で示した方法を用いても良い。
【0156】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウ
ム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタ
ロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニ
ン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンス
ルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することが
できる。
【0157】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む
層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、
キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容
性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いるこ
とにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金
、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0158】
正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層は、例えば、正孔輸送性の高い
物質を含む層と電子受容性を示す物質を含む層とが積層された材料層を有する成膜用基板
を用いることにより形成することができる。
【0159】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシ
アノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラ
ニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周
期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には
、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タン
グステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、
酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0160】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カル
バゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー
等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の
高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好
ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いて
もよい。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具
体的に列挙する。
【0161】
例えば、正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば
、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:N
PB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−
ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,
N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−
トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称
:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル
)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また
、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−
フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルア
ミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス
(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N
−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−
ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を
挙げることができる。
【0162】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3
−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニ
ルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾ
ール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzP
CA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)
アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる

【0163】
また、正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’
−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N
−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル
−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス
[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を
用いることができる。
【0164】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−
tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA
)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビ
ス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブ
チル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)
、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニル
アントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−
BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:D
MNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−
アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3
,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7
−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル
、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェ
ニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6
−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、
ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げ
られる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1
×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水
素を用いることがより好ましい。
【0165】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有して
いてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(
2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(
2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられ
る。
【0166】
これら正孔輸送性の高い物質を含む層と、電子受容性を示す物質を含む層とが積層され
た材料層を有する成膜用基板を用いることで、正孔注入層911を形成することができる
。電子受容性を示す物質として金属酸化物を用いた場合には、第1の基板901上に正孔
輸送性の高い物質を含む層を形成した後、金属酸化物を含む層を形成することが好ましい
。金属酸化物は、正孔輸送性の高い物質よりも蒸着可能温度が高い場合が多いためである
。このような構成の成膜用基板とすることにより、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物と
を効率良く成膜することができる。また、成膜した膜において局所的な濃度の偏りを抑制
することができる。また、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物の両方を溶解させるまたは
分散させる溶媒は種類が少なく、混合溶液を形成しにくい。よって、湿式法を用いて混合
層を直接形成することは困難である。しかし、本発明の成膜方法を用いることにより、正
孔輸送性の高い物質と金属酸化物とを含む混合層を容易に形成することができる。
【0167】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけで
なく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用い
てもよい。
【0168】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い
物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]
ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)
−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TP
D)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略
称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェ
ニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピ
ロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:B
SPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に
10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸
送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物
質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとし
てもよい。
【0169】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キ
ノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)
アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)
ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニ
ルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリ
ン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロ
キシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2
−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキ
サゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、
金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)
−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−ter
t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:O
XD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフ
ェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称
:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに
述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、
正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いて
も構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以
上積層したものとしてもよい。
【0170】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(Cs
F)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類
金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又は
アルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(M
g)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有
する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の
電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0171】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物
質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポ
ーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合
わせて構成すればよい。
【0172】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか
一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電
極904のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極902の
みが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取
り出される。また、第2の電極904のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の
電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902および第2の
電極904がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902および第2
の電極904を通って、基板901側および基板901と逆側の両方から取り出される。
【0173】
なお、図9では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成に
ついて示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けてもよい。
【0174】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いればよ
く、他の成膜方法と組み合わせてもよい。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法
を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッ
タリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコ
ート法などが挙げられる。
【0175】
本実施の形態に係る発光素子は、本発明を適用したEL層の形成が可能であり、それに
より、高精度な膜が効率よく形成される為、発光素子の特性向上のみならず、歩留まり向
上やコストダウンを図ることができる。
【0176】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4で説明した発光素子を用いて形成される発光装置につ
いて説明する。
【0177】
まず、パッシブマトリクス型の発光装置について、図10、図11を用いて説明するこ
ととする。
【0178】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯
状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交す
るように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選
択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯するこ
とになる。
【0179】
図10(A)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図10(A)中の鎖
線A−A’で切断した断面図が図10(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図
10(C)である。
【0180】
基板1001上には、下地絶縁層として絶縁層1004を形成する。なお、下地絶縁層
が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層1004上には、ストライプ状に複数
の第1の電極1013が等間隔で配置されている。また、第1の電極1013上には、各
画素に対応する開口部を有する隔壁1014が設けられ、開口部を有する隔壁1014は
絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリ
イミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例えば、アルキ
ル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部が発光領域
1021となる。
【0181】
開口部を有する隔壁1014上に、第1の電極1013と交差する互いに平行な複数の
逆テーパ状の隔壁1022が設けられる。逆テーパ状の隔壁1022はフォトリソグラフ
ィ法に従い、未露光部分がパターンとして残るポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部
がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成す
る。
【0182】
開口部を有する隔壁1014及び逆テーパ状の隔壁1022を合わせた高さは、EL層
及び第2の電極1016の膜厚より大きくなるように設定する。これにより、複数の領域
に分離されたEL層、具体的には赤色発光を示す材料で形成されたEL層(R)(101
5R)、緑色発光を示す材料で形成されたEL層(G)(1015G)、青色発光を示す
材料で形成されたEL層(B)(1015B)と、第2の電極1016とが形成される。
なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0183】
第2の電極1016は、第1の電極1013と交差する方向に伸長する互いに平行なス
トライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁1022上にもEL層及び第2の電極
1016を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層(R)(1015R)、EL層
(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)、及び第2の電極1016とは分断
されている。なお、本実施の形態におけるEL層は、少なくとも発光層を含む層であって
、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層等を含んでいても
よい。
【0184】
ここでは、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)
(1015B)を選択的に形成し、3種類(赤(R)、青(G)、緑(B))の発光が得
られるフルカラー表示可能な発光装置を形成する例を示している。なお、EL層(R)(
1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)は、それぞれ
互いに平行なストライプパターンで形成されている。これらのEL層を形成するには、上
記実施の形態1および実施の形態2に示す成膜方法を適用すればよい。
【0185】
また、必要であれば、封止缶や封止のためのガラス基板などの封止材を用いて封止する
。ここでは、封止基板としてガラス基板を用い、シール材などの接着材を用いて基板と封
止基板とを貼り合わせ、シール材などの接着材で囲まれた空間を密閉なものとしている。
密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填する。また、発光装置の信頼
性を向上させるために、基板と封止材との間に乾燥材などを封入してもよい。乾燥材によ
って微量な水分が除去され、十分乾燥される。また、乾燥材としては、酸化カルシウムや
酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸
着する物質を用いることが可能である。なお、他の乾燥材として、ゼオライトやシリカゲ
ル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0186】
ただし、発光素子を覆って接する封止材が設けられ、十分に外気と遮断されている場合
には、乾燥材は、特に設けなくともよい。
【0187】
次に、図10に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の
上面図を図11に示す。
【0188】
図11において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交す
るように交差している。
【0189】
ここで、図10における第1の電極1013が、図11の走査線1103に相当し、図
10における第2の電極1016が、図11のデータ線1102に相当し、逆テーパ状の
隔壁1022が隔壁1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはE
L層が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分となる。
【0190】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線11
08が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線110
2は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0191】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板
(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また
、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を
拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0192】
なお、図11では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、本発明は特に限定され
ず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0193】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号
を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれ
ぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用い
て実装してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを
素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側IC
は、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラス
チック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのI
Cを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0194】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図12を用いて説明する。な
お、図12(A)は発光装置を示す上面図であり、図12(B)は図12(A)を鎖線A
−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置
は、素子基板1210上に設けられた画素部1202と、駆動回路部(ソース側駆動回路
)1201と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1203と、を有する。画素部1202
、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203は、シール材1205によって、素子基
板1210と封止基板1204との間に封止されている。
【0195】
また、素子基板1210上には、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203に外部
からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)
や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線1208が設けられる。こ
こでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)1209を設け
る例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリ
ント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、
発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むも
のとする。
【0196】
次に、断面構造について図12(B)を用いて説明する。素子基板1210上には駆動
回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部1
201と、画素部1202が示されている。
【0197】
駆動回路部1201はnチャネル型TFT1223とpチャネル型TFT1224とを
組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回
路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また
、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしも
その必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0198】
また、画素部1202はスイッチング用TFT1211と、電流制御用TFT1212
と電流制御用TFT1212の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続され
た第1の電極1213とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極1213
の端部を覆って絶縁物1214が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹
脂を用いることにより形成する。
【0199】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物1214の上
端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶
縁物1214の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物1214の
上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また
、絶縁物1214として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或
いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機
化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン等、の両者を使用す
ることができる。
【0200】
第1の電極1213上には、EL層1200及び第2の電極1216が積層形成されて
いる。なお、第1の電極1213をITO膜とし、第1の電極1213と接続する電流制
御用TFT1212の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層
膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適
用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる
。なお、ここでは図示しないが、第2の電極1216は外部入力端子であるFPC120
9に電気的に接続されている。
【0201】
EL層1200は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正
孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。第1の電極1213、E
L層1200及び第2の電極1216との積層構造で、発光素子1215が形成されてい
る。
【0202】
また、図12(B)に示す断面図では発光素子1215を1つのみ図示しているが、画
素部1202において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画
素部1202には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に
形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタ
と組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0203】
さらにシール材1205で封止基板1204を素子基板1210と貼り合わせることに
より、素子基板1210、封止基板1204、およびシール材1205で囲まれた空間1
207に発光素子1215が備えられた構造になっている。なお、空間1207には、不
活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材1205で充填される構
成も含むものとする。
【0204】
なお、シール材1205にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材
料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板12
04に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−R
einforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエス
テルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0205】
以上のようにして、本発明を適用して発光装置を得ることができる。アクティブマトリ
クス型の発光装置は、TFTを作製するため、1枚あたりの製造コストが高くなりやすい
が、本発明を適用することで、発光素子を形成する際の材料のロスを大幅に低減させるこ
とが可能である。よって、製造コストの低減を図ることができる。
【0206】
また、本発明を適用することで、発光素子を構成するEL層を容易に形成することがで
きると共に、発光素子を有する発光装置を容易に作製することができる。また、平坦でム
ラのない膜の成膜や微細なパターン形成が可能となるため、高精細な発光装置を得ること
ができる。
【0207】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1〜実施の形態4に示した構成を適宜組
み合わせて用いることができることとする。
【0208】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光装置を用いて完成させた様々な電子
機器について、図13を用いて説明する。
【0209】
本発明に係る発光装置を適用した電子機器として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジ
タルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビ
ゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型
コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲ
ーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオ
ディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置
)、照明器具などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図13に示す。
【0210】
図13(A)は表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、ス
ピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。本発明を用いて形成される発光
装置をその表示部8003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、コンピュ
ータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。本発明を
適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上、および製造効率
向上を図ることができるので、表示装置の製造における製造コストの低減、および生産性
の向上を図ることができ、安価な表示装置を提供することができる。
【0211】
図13(B)はコンピュータであり、本体8101、筐体8102、表示部8103、
キーボード8104、外部接続ポート8105、ポインティングデバイス8106等を含
む。なお、コンピュータは、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8103に
用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程におけ
る材料の利用効率向上、および製造効率向上を図ることができるので、コンピュータの製
造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価なコンピュー
タを提供することができる。
【0212】
図13(C)はビデオカメラであり、本体8201、表示部8202、筐体8203、
外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、バッテリー820
7、音声入力部8208、操作キー8209、接眼部8210等を含む。なお、ビデオカ
メラは、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8202に用いることにより作
製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向
上、および製造効率向上を図ることができるので、ビデオカメラの製造における製造コス
トの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価なビデオカメラを提供することが
できる。
【0213】
図13(D)は卓上照明器具であり、照明部8301、傘8302、可変アーム830
3、支柱8304、台8305、電源8306を含む。なお、卓上照明器具は、本発明を
用いて形成される発光装置を照明部8301に用いることにより作製される。なお、照明
器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本発明を適用
することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上、および製造効率向上
を図ることができるので、卓上照明器具の製造における製造コストの低減、および生産性
の向上を図ることができ、安価な卓上照明器具を提供することができる。
【0214】
ここで、図13(E)は携帯電話であり、本体8401、筐体8402、表示部840
3、音声入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート84
07、アンテナ8408等を含む。なお、携帯電話は、本発明を用いて形成される発光装
置をその表示部8403に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に
発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上、および製造効率向上を図ることができ
るので、携帯電話の製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることがで
き、安価な携帯電話を提供することができる。
【0215】
また、図14(A)も携帯電話であり、図14(A)が正面図、図14(B)が背面図
、図14(C)が展開図である。本体1401は、電話と携帯情報端末の双方の機能を備
えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマ
ートフォンである。
【0216】
本体1401は、筐体1402及び筐体1403の二つの筐体で構成されている。筐体
1402には、表示部1404、スピーカー1405、マイクロフォン1406、操作キ
ー1407、ポインティングデバイス1408、カメラ用レンズ1409、外部接続端子
1410、イヤホン端子1411等を備え、筐体1403には、キーボード1412、外
部メモリスロット1413、カメラ用レンズ1414、ライト1415等を備えている。
また、アンテナは筐体1402内部に内蔵されている。
【0217】
また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0218】
表示部1404には、上記実施例に示される表示装置を組み込むことが可能であり、使
用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。表示部1404と同一面上にカメラ用レンズ
1409を備えているため、テレビ電話が可能である。また、表示部1404をファイン
ダーとし、カメラ用レンズ1414及びライト1415で静止画及び動画の撮影が可能で
ある。スピーカー1405、及びマイクロフォン1406は音声通話に限らず、テレビ電
話、録音、再生等が可能である。
【0219】
操作キー1407では、電話の発着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロ
ール、カーソル移動等が可能である。更に、重なり合った筐体1402と筐体1403(
図14(A))は、スライドし、図14(C)のように展開し、携帯情報端末として使用
できる。この場合、キーボード1412、ポインティングデバイス1408を用い円滑な
操作が可能である。外部接続端子1410はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケ
ーブルと接続可能であり、充電及びコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、
外部メモリスロット1413に記録媒体を挿入しより大量のデータ保存及び移動に対応で
きる。
【0220】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよ
い。
【0221】
なお、上述した携帯電話は、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部1404
に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程にお
ける材料の利用効率向上、および製造効率向上を図ることができるので、携帯電話の製造
における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価な携帯電話を提
供することができる。
【0222】
以上のようにして、本発明に係る発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることが
できる。本発明に係る発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用
することが可能である。
【0223】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1〜実施の形態に5示した構成を適宜組
み合わせて用いることができることとする。
【実施例1】
【0224】
本実施例では、成膜用基板に種々のレーザ光を照射して、被成膜基板上に成膜する場合に
ついて説明する。
【0225】
<成膜用基板Aの作製>
成膜用基板Aの構造を図17(A)に示す。まず、ガラス基板2101(厚さ0.7m
m)に、下地膜2114として酸化窒化ケイ素を100nmの膜厚となるように形成した
。なお、酸化窒化ケイ素膜は、窒素よりも酸素の方が多く含有されている膜である。
【0226】
下地膜2114上に、反射層2102としてアルミニウム(Al)を300nmの膜厚
となるように形成した。そして、反射層2102上に、断熱層2103として酸化ケイ素
を100nmとなるように形成した。その後、エッチングにより断熱層2103に開口部
2106を形成した。開口部2106の大きさは図17(C)に示すように21.5μm
×72μmとした。その後、光吸収層2104としてチタン(Ti)を200nmの膜厚
となるように全面に形成した。さらに、反射層2102と対応する領域(反射層2102
の開口部2106を覆わない領域)に、第2の断熱層2112として酸化ケイ素を600
nmの膜厚で形成した。その後、第2の断熱層2112上に、材料層2105としてトリ
ス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を50nmの膜厚とな
るように形成した。このようにして成膜用基板Aを作製した。
【0227】
<成膜用基板Bの作製>
成膜用基板Bの構造を図17(B)に示す。まず、ガラス基板3101(厚さ0.7m
m)に、下地膜3114として酸化窒化ケイ素を100nmの膜厚となるように形成した

【0228】
下地膜3114上に、反射層3102としてアルミニウム(Al)を300nmの膜厚
となるように形成した。そして、反射層3102上に、断熱層3103として酸化ケイ素
を600nmとなるように形成した。その後、エッチングにより断熱層3103に開口部
3106を形成した。開口部の大きさは図17(C)に示すように21.5μm×72μ
mとした。その後、光吸収層3104としてチタン(Ti)を200nmの膜厚となるよ
うに形成した。その後、光吸収層3104上に、材料層3105としてトリス(8−キノ
リノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を50nmの膜厚となるように形成
した。このようにして成膜用基板Bを作製した。
【0229】
作製した成膜用基板の材料層が形成されている面と、被成膜基板であるガラス基板(厚
さ0.7mm)の被成膜面とが向かい合うように対向させ、シール材を用いて真空度1P
aで真空封止した。
【0230】
そして、成膜用基板のガラス基板側からレーザ光を照射した。照射したレーザ光は、連
続発振(CW:continuous−wave)レーザ、低周波数パルスレーザ、高周
波数パルスレーザを照射した。波長は全て532nmとした。照射したレーザの特性を表
1に示す。
【0231】
【表1】

【0232】
また、成膜用基板にレーザを照射した後、被成膜基板を蛍光顕微鏡(菱光社製、SU4
8901)で観察した。また、被成膜基板の表面を表面形状測定装置(アルバック製、D
EKTAK V200Si)で測定した。その結果を図18〜図29に示す。具体的には
、成膜用基板Aに高周波数パルスレーザを照射した結果を図18〜図21に示す。また、
成膜用基板Aに低周波数パルスレーザを照射した結果を図22〜図27に示す。また、成
膜用基板Bに、連続発振レーザを照射した結果を図28〜図29に示す。
【0233】
図22〜図27に示したように、低周波数パルスレーザを照射した場合には、材料層の
膜厚よりも被成膜基板に成膜された膜の方が厚くなっていることがわかる。これは、材料
層だけでなく、光吸収層まで成膜されていることを示している。しかしながら、レーザ出
力を小さくすると、材料が加熱されず、成膜されない。また、成膜された膜の膜厚が不均
一となっていることがわかる。
【0234】
また、図28〜図29に示したように、連続発振レーザを照射した場合には、被成膜基
板全面に膜が形成されるなど、良好なパターンの膜が得られなかった。また、パターンが
得られた場合であっても、ぼけが生じてしまっている。
【0235】
しかしながら、図18〜図21からわかるように、高周波数パルスレーザを照射した場
合には、レーザ出力および基板移動速度を変化させた場合であっても、比較的良好な成膜
ができていることがわかる。つまり、成膜する際のマージンが広く、量産に適しているこ
とがわかる。
【0236】
図30には、連続発振レーザ、低周波数パルスレーザ、高周波数パルスレーザを用い、
良好な膜が得られたときの条件およびその測定結果を示した。なお、高周波数パルスレー
ザを用いた場合には、幅広い条件で良好な膜が得られたため、一例として出力12.4W
、基板移動速度1000mm/sの場合を示した。
【0237】
図30からわかるように、低周波数パルスレーザを用いた場合には、材料層50nm以
上の膜厚の膜が被成膜基板に成膜されている。これは光吸収層であるTiも成膜されてい
ると考えられる。また、低周波数パルスレーザを用いた場合には、パルスレーザによる縞
模様が見られ、成膜された膜が凸凹しており、平坦性が悪い。これは、低周波数パルスレ
ーザの場合、パルスとパルスの時間間隔が大きく、1パルスのレーザ光のエネルギーが大
きいため生じたと考えられる。
【0238】
連続発振レーザを用いた場合には、被成膜基板上に膜が反射層の開口部よりも若干広い
範囲に成膜されている。つまり、成膜パターンにぼけが生じている。連続発振レーザは、
成膜用基板にレーザ光が照射されている時間が長いため、所望の領域以外にも熱が拡散し
てしまい、ぼけが生じたと考えられる。
【0239】
高周波数パルスレーザを用いた場合には、ぼけも抑制され、良好な成膜パターンが得ら
れている。高周波数パルスレーザは、よって、周波数10MHz以上、かつ、パルス幅1
00fs以上10ns以下のレーザ光を用いることにより、精度良く、所望の形状に成膜
することができる。
【0240】
また、高周波数のパルスレーザは連続発振レーザに比べ高出力なレーザを得ることがで
きる。よって、単位時間あたりの処理面積が大きくすることができ、成膜に要する時間(
タクトタイム)を短くすることができる。よって、生産性を向上させることができ、量産
に適している。
【0241】
<計算>
また、図30に示したレーザ照射条件における熱伝導に関して計算を行った。計算条件
を以下に示す。
計算ツール ANSYS
使用メッシュ 三角形一次要素フリーメッシュ 最小メッシュ長 0.08μm
熱伝導特性が温度依存であるので非線形解析(ニュートン法)を使用
非線形収束判定値 L2ノルム 1.0e−4以下
非定常解析における時間刻み
CWレーザ 0.5μs
パルスレーザ パルス照射時 1.5ns パルス非照射時 0.25μs
メガレーザ パルス照射時 5ps パルス非照射時 25ns
【0242】
計算モデルとしては、ガラス基板4101(0.7mm)上に反射層4102としてア
ルミニウム(Al)を200nm、光吸収層4104としてチタン(Ti)を200nm
積層した2次元モデルを採用した。図31に計算モデルを示す。また、表2は発熱量を考
慮するための各レーザの特性であり、これらの数値を使って、レーザエネルギーを発熱量
に変換させて、光吸収層における熱伝導を計算した。
【0243】
【表2】

【0244】
{ガラス0.7mm,Ti200nm}からなる薄膜に波長532nmレーザを与えた
場合,光学計算の手法の一つであるMATRIX法を用いると,レーザエネルギーの64
.96%を吸収する結果が求まる。吸収されたレーザのエネルギーが全て発熱に変換され
るとすると、
単位時間発熱量=(単位時間レーザエネルギー)×0.6496
となり、レーザ照射によって発熱するチタンの領域上で体積一様に発熱量を分布させた。
計算に使用したパラメータは表3に示す。レーザ条件は表2を使用し、初期温度は27℃
一様とし、境界条件は全て断熱境界とした。計算の収束上、ガラス基板最下点の1点を2
7℃に固定した。
【0245】
【表3】

【0246】
<計算結果>
上記のモデルに対してレーザが通過(照射)するまでの時間と,その後の冷却の様子を計
算した。温度参照点は図31のA、B、Cの3点を用いた。計算結果を以下の図32〜図
35に示す。図33は連続レーザを4500μs間照射した場合の計算結果であり、図3
4は低周波数パルスレーザを200μs間照射した場合の計算結果であり、図35は高周
波数パルスレーザを10μs間照射した場合の計算結果である。図32は3つの図を重ね
合わせたもの図であり温度とタイムスケールを比較した図であり、ポイントA点で温度時
間推移を重ね合わせたものである。計算時間はそれぞれ、レーザ通過時間の2倍としてい
る。
【0247】
熱伝導を考慮すると、パターン形成の精度を良くするには、point Aとpoin
t B、Cの差が大きいと良いと考えることができる。結果図33、図34、図35を見
ると、高周波数パルスレーザがこの条件を満たしている。これは実験結果から明らかであ
る。
【0248】
また、低周波数パルスレーザと高周波数パルスレーザを比べた場合、これらのレーザは
パルス型であるので、発熱箇所のチタンの温度が階段的に上昇していることがわかる。(
図35の一部を拡大したものを図36に示す。)
【0249】
この2つのレーザの主な特性の差は、表1から、レーザが通過する間の照射回数が、低
周波数パルスレーザは20回であるのに対し、高周波数パルスレーザは800回であるこ
とである。また、1パルスが与えるエネルギーが、低周波数パルスレーザは4390[J
/m]であるのに対し、高周波数パルスレーザは15.5[J/m]である。このこ
とは高周波数パルスレーザの方が少ないエネルギーを小刻みに与えているのに対し、低周
波数パルスレーザは大きいエネルギーをまとめて与えていることになる。よって、1パル
スに対して、低周波数パルスレーザの方が、温度上昇が高く、1パルス間隔も長いので、
温度変化の振幅が激しい結果となる(図34)。
【0250】
このことから、低周波数パルスレーザを照射した場合の平坦性の悪さは、急激な温度変
化に起因していると考えられる。また、急激な温度上昇は成膜処理におけるマージンを狭
くしている可能性があり、実験結果からも光吸収層であるチタンをとばすことなく処理す
ることは難しい。
【0251】
次に、連続発振レーザと高周波数パルスレーザについて考えてみると、図30などに示
した実験では連続発振レーザを用いた場合、全面に成膜される傾向にある結果となってい
る。これは、計算機の結果からも、ポイントA、Bの温度差が小さいことが示されており
、ポイントBに接する材料層も成膜されてしまうと考えられる。つまり、所望の形状より
も大きな領域が成膜されてしまい、パターン形成の精度が悪いと予想されることに対応し
ている。
【0252】
よって、高周波数パルスレーザを用いることにより、所望の領域のみを精度良く、成膜
することができることがわかる。
【符号の説明】
【0253】
101 基板
102 反射層
103 断熱層
104 光吸収層
105 材料層
106 開口部
107 基板
108 第1の電極
109 絶縁物
111 EL層
112 第2の断熱層
113 光吸収層
401 反射層
402 開口部
411 EL層(R)
412 EL層(G)
413 EL層(B)
414 絶縁物
501 反射層
502 開口部
511 EL層(R)
512 EL層(G)
513 EL層(B)
800 被成膜基板
801 成膜用基板
803 レーザ発振装置
804 第1の光学系
805 第2の光学系
806 第3の光学系
807 反射ミラー
808 撮像素子
809 基板ステージ
810 反射層
811 断熱層
812 光吸収層
813 材料層
814 開口部
815 材料層
816 制御装置
820 レーザスポット
821 線状レーザ
822 線状レーザ
823 線状レーザ
824 線状レーザ
825 線状レーザ
826 線状レーザ
827 線状レーザ
901 基板
902 第1の電極
903 EL層
904 第2の電極
911 正孔注入層
912 正孔輸送層
913 発光層
914 電子輸送層
915 電子注入層
1001 基板
1004 絶縁層
1013 第1の電極
1014 隔壁
1015 EL層
1016 第2の電極
1021 発光領域
1022 隔壁
1102 データ線
1103 走査線
1104 隔壁
1105 領域
1106 入力端子
1107 入力端子
1108 接続配線
1200 EL層
1201 駆動回路部(ソース側駆動回路)
1202 画素部
1203 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
1204 封止基板
1205 シール材
1207 空間
1208 配線
1209 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
1210 素子基板
1211 スイッチング用TFT
1212 電流制御用TFT
1213 第1の電極
1214 絶縁物
1215 発光素子
1216 第2の電極
1223 nチャネル型TFT
1224 pチャネル型TFT
1401 本体
1402 筐体
1403 筐体
1404 表示部
1405 スピーカー
1406 マイクロフォン
1407 操作キー
1408 ポインティングデバイス
1409 カメラ用レンズ
1410 外部接続端子
1411 イヤホン端子
1412 キーボード
1413 外部メモリスロット
1414 カメラ用レンズ
1415 ライト
1501 基板
1502 反射層
1503 断熱層
1504 光吸収層
1505 材料層
1506 開口部
1511 基板
1512 反射層
1514 光吸収層
1515 材料層
1516 開口部
2101 ガラス基板
2102 反射層
2103 断熱層
2104 光吸収層
2105 材料層
2106 開口部
2112 第2の断熱層
2114 下地膜
3101 ガラス基板
3102 反射層
3103 断熱層
3104 光吸収層
3105 材料層
3106 開口部
3114 下地膜
4101 ガラス基板
4102 反射層
4104 光吸収層
8001 筐体
8002 支持台
8003 表示部
8004 スピーカー部
8005 ビデオ入力端子
8101 本体
8102 筐体
8103 表示部
8104 キーボード
8105 外部接続ポート
8106 ポインティングデバイス
8201 本体
8202 表示部
8203 筐体
8204 外部接続ポート
8205 リモコン受信部
8206 受像部
8207 バッテリー
8208 音声入力部
8209 操作キー
8210 接眼部
8301 照明部
8302 傘
8303 可変アーム
8304 支柱
8305 台
8306 電源
8401 本体
8402 筐体
8403 表示部
8404 音声入力部
8405 音声出力部
8406 操作キー
8407 外部接続ポート
8408 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを用い、
前記第1の基板の一方の面には、開口部を有する反射層と、前記反射層に接して設けられた光吸収層と、前記光吸収層に接して設けられた材料層と、を有し、
前記第1の基板の前記一方の面と、前記第2の基板の被成膜面とを対向させ、
前記第1の基板の他方の面からレーザ光を照射し、前記反射層の開口部と重なる位置にある前記材料層の一部を選択的に加熱し、前記材料層の一部を前記第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
第1の基板と第2の基板とを用い、
前記第1の基板の一方の面には、開口部を有する反射層と、前記反射層に接して設けられた透光性を有する断熱層と、前記断熱層に接して設けられた光吸収層と、前記光吸収層に接して設けられた材料層と、を有し、
前記材料層は、不連続に設けられており、
前記第1の基板の前記一方の面と、前記第2の基板の被成膜面とを対向させ、
前記第1の基板の他方の面からレーザ光を照射し、前記反射層の開口部と重なる位置にある前記材料層の一部を選択的に加熱し、前記材料層の一部を前記第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記レーザ光を、被照射面において複数のレーザスポットがジグザグに並ぶように照射し、
前記レーザ光を、ジグザグに並んでいる方向に対して垂直な方向に走査することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−41841(P2013−41841A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226531(P2012−226531)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2009−22740(P2009−22740)の分割
【原出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】