説明

成膜方法

【課題】成膜用ワークを、その成膜面に成形痕あるいは取出痕が付かないように成形して取り出し、高均質の薄膜を成膜する方法を提供する。
【解決手段】射出成形により成形した成膜用ワーク(W1)を取り出すとき、成膜用ワークの成膜面(M1)が可動側金型(5)に残るように型を開き、型を開くことにより露出した非成膜部(M’1)を吸着して前記可動側金型(5)から取り出す。このとき、成膜用ワーク(W1)の縁部と、該縁部が付着している可動側金型(5)のパーティング面(P)との間に圧縮空気(24、24)を吹き付け、真空吸着力を破壊して剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の成膜用ワークを成膜室に搬入し、そして搬入したワークの所定面に薄膜を形成する成膜方法に関するもので、特に成膜用ワークを成形する射出成形に特徴を有する成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成膜用ワークの表面の一部に数μmオーダの薄膜を有する製品として、例えば自動車に装備されるフロントランプを挙げることがきる。このフロントランプは蒸着装置あるいは成膜装置により製造されるが、成膜装置は磁気デイスクの生成、CD/DVDの記録面の金属膜の生成、液晶表示装置の透明電極の生成、光触媒膜の生成にも適用されている。このような薄膜を有する製品は、射出成形により成膜用ワークが成形され、専用の成膜室にセットされ、次いで後述するような成膜要素により薄膜が形成されている。
【0003】
このような成膜用ワークの表面に薄膜を形成する蒸着方法あるいは成膜方法は、従来周知で、例えば成膜用ワークの表面とターゲット材料とを対向させておき、数Pa〜数10Pa程度のアルゴンガス雰囲気中でターゲット材料に数kVの負の電圧を印加し、そして放電させて薄膜を形成するスパッタリング方法、真空室中で電子銃から発生する電子ビームをターゲット材料に照射して、加熱蒸発させ、ワークの表面に成膜する電子ビーム蒸着方法、ワークに数kVの負の電圧を印加し数Paのアルゴンガスの圧力下で真空蒸着するイオンプレーティング方法、プラズマ成膜方法等が知られ、また化学蒸着法も知られている。このような成膜方法に使用されるターゲット材料としては酸化物、窒化物、炭化物などの化合物ターゲットが知られ、金属ターゲット、パウダーターゲット等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221575号公報
【0005】
特許文献1には、固定側金型と移動金型とにより成形される一対の半中空体の一方の半中空体の内表面すなわち成膜用ワークの表面を、固定側金型に残した状態で、ターゲット電極、基板電極、真空吸引管等の蒸着要素が設けられている蒸着用チャンバーで覆って、固定側金型内で蒸着する成膜装置が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されている蒸着装置によると、ワークを金型から取り出すことなく、蒸着用チャンバーを使用して金型内で蒸着できるので、蒸着する表面に成形痕が付くようなことはない。また、手垢、塵埃等により汚染されることはなく、蒸着状態の良好な高品質の薄膜を有する製品を得ることができるという効果が得られる。また、金型内に残っている状態で金型内で蒸着するので、半中空体の在庫管理が不要となる。さらには、蒸着装置を準備するだけで、特別な金型を使用することなく、安価に自動成形もできる効果も得られる。
【0007】
しかしながら、改良すべき点も認められる。例えば、金型でワークを成形するタイミングと、蒸着用チャンバーを使用して蒸着するタイミングはずれるので、タイミングを合わせるために待ち時間が生じ、効率的に製造できない。また、蒸着用チャンバーの開口部を、金型のパーティング面に密着させて、内部に真空室を形成しなければならないのでシールの問題もある。すなわち、真空度は製品の品質に影響を及ぼすので、高シール性が要求されるが、蒸着用チャンバーの開口部と、金型のパーティング面は、目的に沿って互いに異なる部材から、異なるように構成されているのでシールが問題となる。
【0008】
以上のような理由により、金型で成形された成膜用ワークは、金型から取り出して専用の成膜装置に搬入し、そして成膜する方が望ましいともいえる。しかしながら、成膜用ワークは射出成形により製造されるが、射出成形品は可動側金型を開くときエジェクタピンが突き出て成形品が金型から取り出されるようになっているので、このエジェクタピンにより成膜表面が傷つく。このような傷は、例え浅くても数μmオーダの薄膜製品にとっては致命的になる。
したがって、本発明は、成膜用ワークを射出成形により成形するとき、あるいは金型から取り出すとき、成膜面に射出成形痕が付かない、すなわち高均質の薄膜を有する薄膜製品を得ることができる成膜方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、成膜用ワークは、射出成形により成形される。この射出成形には、従来周知のように、固定側金型と可動側金型とを適用し、必要に応じて入れ駒などを使用する。また、1、2次成形により異なる種類の樹脂から成形することもできる。これらにより、複雑な形状のワークも自動的に成形できる。このようにして成膜用ワークを成形するときに、成膜面以外の非成膜部を吸着してロボットで、あるいは成膜面以外の部分に把持部を一体的に成形し、この把持部をロボットで掴んで金型から取り出し、そして成膜室に搬入するように構成される。
【0010】
成膜用ワークを成膜室内に搬入し、成膜用ワークの成膜面あるいは成膜部が、ターゲット材料の方を向くように成膜台に載置する。そして、必要に応じてロボット等を取り外す。このとき、不要なゲートを切り落とす。次いで、成膜要素を起動して周知のようにして成膜する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、一対の金型により成膜用ワークを射出成形する成形工程と、前記成形工程で成形した成膜用ワークを金型から取り出す取出工程と、前記取出工程で取り出された成膜用ワークを成膜室に搬入して成膜する成膜工程からなる方法において、前記取出工程時には、成膜用ワークの成膜面が一方の金型に残るように型を開き、型を開くことにより露出した非成膜部を吸着あるいは非成膜部のスプル部を把持して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記取出工程時には成膜用ワークの縁部と、該縁部が付着している前記一方の金型のパーティング面との間に圧縮空気を吹き付けるように構成される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、一対の金型により成膜用ワークを射出成形する成形工程と、前記成形工程で成形した成膜用ワークを金型から取り出す取出工程と、前記取出工程で取り出された成膜用ワークを成膜室に搬入して成膜する成膜工程からなる方法において、前記成形工程時には、サイドゲートにより成膜用ワークを成形すると共に、成膜用ワークと一体的にその非成膜面側に把持部を成形し、前記取出工程時には、成膜用ワークの非成膜面が一方の金型に残るように型を開き、そして非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すように構成される。請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の方法において、前記取出工程時に、非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出すとき、非成膜面側を直接他のエジェクトピンでも押し出すように、そして請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の方法において、前記取出工程時に成膜用ワークが所定量押し出されたとき、把持部を把持して取り出すように構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によると、成膜用ワークを射出成形する成形工程と、前記成形工程で成形した成膜用ワークを金型から取り出す取出工程と、前記取出工程で取り出された成膜用ワークを成膜室に搬入して成膜する成膜工程からなり、前記取出工程時には、成膜用ワークの成膜面が一方の金型に残るように型を開き、型を開くことにより露出した非成膜部を吸着あるいは非成膜部のスプル部を把持して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すので、すなわち成膜面に触れることなく、金型から取り出して成膜室に搬入して成膜するので、高均質の薄膜を有する薄膜製品を得ることができる。請求項2に記載の発明によると、取出工程時には成膜用ワークの縁部と、該縁部が付着している前記一方の金型のパーティング面との間に圧縮空気を吹き付けるので、圧縮空気により成膜用ワークと金型との間の真空力が破壊され、例え大きな成膜用ワークでも剥離あるいは取り出しが容易になる。
【0014】
他の発明によると、サイドゲートにより成膜用ワークを成形すると共に、成膜用ワークと一体的にその非成膜面側に把持部を成形し、取出工程時には、成膜用ワークの非成膜面が一方の金型に残るように型を開き、そして非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すので、前記発明と同様に成膜用ワークの成膜面に成形痕は残らない。したがって、上記発明と同様な高均質の薄膜を有する薄膜製品を得ることができるという効果が得られる。請求項4に記載の発明によると、取出工程時に、非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出すとき、非成膜面側を直接他のエジェクトピンでも押し出すので成膜用ワークをより確実に取り出すことができる。請求項5に記載の発明によると、成膜用ワークが所定量押し出されたとき、把持部を把持して取り出すので、取り出しが確実であると共に、把持した状態で成膜室へ搬入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る成膜用ワークの成形状態を示す図で、その(ア)は金型を閉じて成形の途中の状態を示す断面図、その(イ)は金型を開いて成膜用ワークを吸着している状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る成膜用ワークを成膜室に搬入した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る成膜用ワークの成形状態を示す図で、その(ア)は金型を閉じて成形の途中の状態を示す断面図、その(イ)は金型を開いて成膜用ワークを突き出している状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る成膜用ワークを成膜室に搬入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。第1の実施の形態に係る成膜用ワークW1は、中空球形体を直径方向で切断した半球状、あるいは筒状体を軸方向に切断した半筒状をしている。そして、その内周面が成膜面M1となっている。したがって、内周面の成膜面M1に成形痕が付かないように射出成形し、そして成膜室に搬入するように構成される。
【0017】
上記の成膜用ワークW1は、従来周知のようにして射出成形することができるので、金型の細部までは示されていないが、第1の実施の形態に係る成形用金型は図1に示されているように、固定側金型1と、該固定側金型1に対して型開閉される可動側金型5とからなっている。固定側金型1のパーティング面P側には、成形用ワークW1の外側に凸の外周面を成形するための凹部2が形成されている。そして、この凹部2にスプル3が開口している。後述するように、成膜用ワークW1を可動側金型5から取り外すときに、スプル3で成形されるスプル部3’を吸着あるいは把持に利用するために、凹部2の近傍のスプル3の断面積は比較的広く、従来の断面を絞ったようなゲートはない。
【0018】
可動側金型5のパーティング面P側には、半球形のコア6が設けられている。このコア6は、固定側金型1の凹部2と対をなすもので、その径あるいは大きさは凹部2の径よりも所定量だけ小さい。コア6で成形される内側の凹の内周面が成膜面M1となっている。
【0019】
成形用ワークW1の取出装置の第1の実施の形態の要部が図1の(イ)に示されている。本実施の形態によると、取出装置10は、吸着装置11と剥離装置21とから構成されている。吸着装置11は主吸引管12と、この吸引管12から分岐した複数個の分岐吸引管13、13、…とからなり、複数個の分岐吸引管13、13、…の先端部が成形用ワークW1の非成膜部すなわち外周面M’1とスプル部3’を吸着する吸着部となっている。また、剥離装置21は、主圧力管22と、この圧力管22から分岐した複数個の分岐圧力管23、23、…からなり、これらの分岐圧力管23、23、…の先端部にノズル24、24、…が設けられている。これらのノズル24、24、…は、可動側金型5のパーティング面Pと成形用ワークW1の開口周縁部との間を指向している。吸着装置11と剥離装置21は、図には示されていないが、望ましくは個々にハンドリングされるようにロボットのチャックに取り付けられるようになっている。なお、図1に示されている実施の形態によると、ノズル24、24、…は金型のパーティング面P側に挿入されるようになっているが、可動側金型5の内部から成形用ワークW1の開口周縁を指向した複数個の空気吹出孔あるいは円周溝として形成することもできる。このように実施すると、取出装置10は吸着装置11のみとなり簡単な構造になる。
【0020】
成膜装置50は、前述もしたように、スパッタリング成膜装置、電子ビーム蒸着装置、イオンプレーティング成膜装置等として従来周知であり、またスパッタリング方式の成膜装置も直流式、高周波式、マグネトロン式等として周知であるので、詳しい説明はしないが、図2に直流式のスパッタリング成膜装置50が模式的に示されている。成膜室51の下部には、平板状の成膜台(基板電極)52が設けられ、この成膜台52と対向してその上方にターゲット装着台(ターゲット電極)53が設けられている。ターゲット装着台53にターゲット54が取り付けられている。成膜室51の外部において、成膜台52とターゲット装着台53とにそれぞれ接続された直流電源55が配置されている。また、成膜室51には、真空成膜に必要なロータリポンプなどからなる真空源56、不活性ガスタンクあるいは炭酸ガスのような不活性ガスを製造する不活性ガス供給源57等が接続されている。なお、成膜用ワークW1の出し入れ口は、操作しやすいように成膜室51の前面側に設けられているが、前面扉等と共に、図には示されていない。
【0021】
次に、上記実施の形態による成膜例について説明する。図1の(ア)に示されているように可動側金型5を固定側金型1に対して型締めする。そうすると、固定側金型1の凹部2と可動側金型5のコア6とにより成膜用ワークW1を成形するためのキャビティ4が構成される。射出ユニットからスプル3を介してキャビティ4に向けて溶融樹脂を射出する。射出・充填している途中の段階が図1の(ア)に示されている。冷却固化を待って可動側金型5を開く。
【0022】
可動側金型5を開くとき成膜面M1が可動側金型5のコア6の表面に付着した状態で開く。このような状態で開くには、例えば固定側金型1の方から成形用ワークW1に空気を吹き出すようにして固定側金型1から成形用ワークW1を剥がすようにしてもよい。このように成形用ワークW1を可動側金型5に残して開いておき、例えば図示されない多関節ロボットにより取出装置10を成膜用ワークW1の方へ挿入する。分岐吸引管13、13、…の先端部の吸着部は成膜用ワークW1の外周面すなわち非成膜面M’1に接する。同時に分岐圧力管23、23、…の先端部のノズル24、24、…は可動側金型5のパーティング面Pと成形用ワークW1の開口周縁部との間に位置するようになる。このように取出装置10を装着した状態が、図1の(イ)に示されている。主吸引管12内を負圧にする。これにより、成膜用ワークW1は吸着部に吸着される。同時に、主圧力管22から圧縮空気をノズル24、24、…に供給する。そうして、取出装置10をパーティング面Pから離間する方向に駆動する。成膜用ワークW1は分岐吸引管13、13、…の吸着部により剥ぎ取られる。このとき成膜用ワークW1の内周面M1と可動側金型5のコア6との間に、真空力による吸引力が作用するが、ノズル24、24、…から供給される圧縮空気により真空が破壊される。これにより、成膜用ワークW1の内周面M1を傷つけることなく、容易に取り出すことができる。
【0023】
吸着装置11に吸着した状態で成膜室51に搬入して成膜台52に載せる。載せると、成膜用ワークW1の成膜面M1はターゲット材料54と対面する。ロボットを待避させる。また、吸着装置11を必要に応じて取り外す。成膜室51の前面扉を閉める。成膜要素を起動する。すなわち、真空源56と、不活性ガス供給源57とを適宜駆動して成膜室51内を数Pa〜数10Pa程度の不活性ガス雰囲気にする。そして、ターゲット装着台53には負の電圧を、成膜台52には正の電圧を印加して、放電させる。そうすると、成膜用ワークW1の成膜面M1にターゲット粒子が到達し、従来周知のようにして薄膜が形成される。
【0024】
成膜動作が終了したら、成膜要素を停止して前面扉を開け、上記した吸着装置11を利用して、あるいはロボットのような他のハンドリング装置により取り出す。スプル部3’が製品として支障を来すときは、カットして切り捨てる。以下同様にして成膜する。
【0025】
図3、4により、本発明の第2の実施の形態、すなわち半球状体あるいは半筒状体の外に凸の外周面が成膜面M2となっている例を説明する。本実施の形態によっても固定側金型31と可動側金型35とが使用される。固定側金型31のパーテイング面P側には成膜用ワークW2の成膜面M2を成形するための凹部32が形成されている。この凹部32は成膜面M2を成形する面であるので、成形痕が付かないようにスプル33あるいはゲートは凹部32から外れたサイドゲートとなっている。
【0026】
固定側金型31に対して型開閉される可動側金型35のパーテイング面P側には、固定側金型31の凹部32と対をなすコア36が設けられている。このコア36で成形される面は非成膜面M’2であるので、この面M’2を利用して成膜用ワークW2を取り出すようになっている。すなわち、コア36の表面には比較的大径の透孔37と、比較的小径の透孔38、38とが開口している。この大径の透孔37には主エジェクタピン40が挿通され、小径の透孔38、38の、後述するエジェクタプレート側、換言すると後端部には短い補助エジェクタピン41、41が挿通されるようになっている。小径の透孔38の先端部では樹脂製の把持部あるいは押出部が成膜用ワークW2と一体的に成形される。これらの主エジェクタピン40と補助エジェクタピン41、41の後端部は、可動側金型35の方に設けられているエジェクタプレート42に取り付けられている。したがって、エジェクタプレート42を駆動すると、主エジェクタピン40はコア36の頂面から突きでて、同時に小径の透孔38で成形される把持部は、補助エジェクタピン41、41により突き出されることになる。
【0027】
次に、第2の実施の形態の作用について説明する。エジェクタプレート42を図3の(ア)に示されているように待避しておく。そうして、可動側金型35を固定側金型31に対して型締めする。そうすると、固定側金型31の凹部32と可動側金型35のコア36とにより成膜用ワークW2成形用のキャビテイ34が構成される。同時に、小径の透孔38、38の内周面と補助エジェクタピン41、41の先端部とで把持部成形用のキャビテイ44、44が構成される。これらのキャビティ44、44は成膜用ワークW2成形用のキャビティ34に連通している。射出ユニットから溶融樹脂を射出する。溶融樹脂を射出充填している途中の段階が図3の(ア)に示されている。これにより、成膜用ワークW2と把持部H、Hとが一体的に成形される。
【0028】
冷却固化を待って可動側金型35を開く。そうして、エジェクタプレート42を駆動する。主エジェクタピン40は直接、補助エジェクタピン41、41は把持部H、Hを介して成膜用ワークW2を突き出す。ロボットのチャックRTなどで把持部Hを掴み、可動側金型35から取り出す。スプル部33’を切り落とすなどの処理をして、前述したように成膜装置50に搬入して成膜する。必要に応じて把持部H、Hを切り落として製品化する。
【0029】
本実施の形態によると、成膜面M1、M2は凸面あるいは凹面として説明されているが、平面でも、さらには凸部、凹部等の「部分的な変形部を有する面」にも同様にして成膜できることは明らかである。また、当業者には明らかなように取出装置は、吸着装置のみでも実施できる。さらには、成膜用ワークの大きさによっては主エジェクタピンはなくても実施できることは明らかである。また、可動側金型を開く代わりに、固定側金型を開くように実施することもできる。成膜用ワークが小さいときはスプル部33’を把持して取り出すこともできる。
【符号の説明】
【0030】
W1、W2 成膜用ワーク M1、M2 成膜面
M’1、M’2 非成膜面 H 把持部(押出部)
1 固定側金型 2 凹部
4 キャビティ 5 可動側金型
6 コア 10 取出装置
11 吸着装置 21 剥離装置
31 固定側金型 32 凹部
34 キャビティ 35 可動側金型
36 コア 40 主エジェクタピン
41 補助エジェクタピン
50 成膜装置 51 成膜室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金型により成膜用ワークを射出成形する成形工程と、前記成形工程で成形した成膜用ワークを金型から取り出す取出工程と、前記取出工程で取り出された成膜用ワークを成膜室に搬入して成膜する成膜工程からなる方法において、
前記取出工程時には、成膜用ワークの成膜面が一方の金型に残るように型を開き、型を開くことにより露出した非成膜部を吸着あるいは非成膜部のスプル部を把持して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記取出工程時には成膜用ワークの縁部と、該縁部が付着している前記一方の金型のパーティング面との間に圧縮空気を吹き付けることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
一対の金型により成膜用ワークを射出成形する成形工程と、前記成形工程で成形した成膜用ワークを金型から取り出す取出工程と、前記取出工程で取り出された成膜用ワークを成膜室に搬入して成膜する成膜工程からなる方法において、
前記成形工程時には、サイドゲートにより成膜用ワークを成形すると共に、成膜用ワークと一体的にその非成膜面側に把持部を成形し、
前記取出工程時には、成膜用ワークの非成膜面が一方の金型に残るように型を開き、そして非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出して成膜用ワークを前記一方の金型から取り出すことを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記取出工程時に、非成膜面側の把持部をエジェクトピンで押し出すとき、非成膜面側を直接他のエジェクトピンでも押し出すことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、前記取出工程時に成膜用ワークが所定量押し出されたとき、把持部を把持して取り出すことを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86333(P2013−86333A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228267(P2011−228267)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】