説明

成膜方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の半導体デバイスの技術分野においては、64メガビットDRAMの開発研究が進み、0.3ミクロン以下の線幅の露光技術が必要になってきている。従って、露光技術で一般的に用いられているステップアンドスキャン露光装置(ステッパ)では、解像度向上の点から用いる光源をg線よりi線へと短波長化が進められている。また、スタックドキャパシタの採用や配線の多層化により、パターンの露光の際に設けられるレジスト面の凹凸が1ミクロンを超える場合も生じている。例えば、半導体デバイスの集積化(3次元構造化)に伴い、半導体ウエハの表面に設けられた導電層により構成されるアスペクト比(縦の長さ/横の長さ)の高いトレンチ構造の表面に対して絶縁膜(層間絶縁膜)を適正に埋め込むことが必要とされるが、埋め込んだ後の絶縁膜の表面の全体においては大きな段差が生じてしまう。この段差は、解像度が0.3ミクロン程度のデバイスでは、1ミクロンにも達することがある。
【0003】例えば、この絶縁膜は、テトラエチルオルソシリケート(Si(OC2 5 4 ;TEOS(テオス))とオゾン(O3 )の混合ガス(TEOS/O3 )を原料ガスとして用いたCVD法により形成することができ、このTEOS/O3 を用いた反応によれば、シリコン膜の流動性が高いために、導電層により形成される段差被覆部をコンフォーマル(段差被覆部の堆積量が均一)に埋め込むことが可能である。しかし、段差被覆部をコンフォーマルに埋め込むことはできても、絶縁膜の表面全体は必ずしも平坦にはならない。従って、この絶縁膜の表面に露光のためのレジストを設けたときには、レジストの表面の全体においても大きな凹凸が生じてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようにレジストの表面に1ミクロンもの大きな凹凸が存在する場合には、露光装置における短波長化に伴うステッパレンズのNA(開口率)の増大化から、焦点深度が浅くなるため、いわゆるボケが生じてレジストの表面全体を適正に露光することが困難である。
【0005】そこで、本発明の目的は、凹凸のある表面に平坦な膜を形成することができる成膜方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するため、本発明の成膜方法は、それぞれ以下の特徴を有する。
(1)凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする。
(2)膜の表面に超微粒子を接触させる際に、その接触面近傍に導電性ガスを介在させることを特徴とする。
(3)凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液を用いて凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする。
【0007】
【作用】凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化する成膜方法によれば、きわめて平坦な膜が形成される。また、膜の表面に超微粒子を接触させる際に、その接触面近傍に導電性ガスを介在させることにより、摩擦帯電による悪影響を十分に除去することができ、確実に平坦な膜を形成することができる。
【0008】さらに、高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液を用いて凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化する成膜方法によれば、高い効率で平坦な膜を形成することができる。従って、例えば、アスペクト比の高いトレンチ構造の半導体ウエハ表面に形成された凹凸のある絶縁膜の表面に、段差のない平坦なレジスト面を形成することができ、焦点深度が浅くなるNA(開口率)の大きなステッパレンズを用いた場合にも、レジストの表面全体をいわゆるボケを生じさせずに適正に露光することが可能となる。
【0009】
【実施例】〔実施例1〕
本実施例では、請求項1に対応する実施例を説明する。本実施例の成膜方法は、凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする。この平坦化手段は、いわゆるEEM(Elastic Emission Machining)法と呼ばれている。このEEM法は、2種類の固体を接触させた場合、形成された界面において結合力が生じ、これらを分離するときに一方の表面原子がもう一方の固体表面原子を除去する場合があり、この現象を平坦化加工に応用した技術である。すなわち、例えばサブミクロン以下の超微粒子を膜表面に供給し、それを運動、分離させることによって、膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することができる。
【0010】膜表面と超微粒子との界面における電子状態が、膜表面原子と第2層原子間の結合力を低下させるように働いた場合に効率的な平坦化が達成される。このEEM法によれば、原子単位で平坦化できると同時に、原子の除去に際してその原子の結合力の低下を伴うものであり、超微粒子が膜表面上で相対運動する際に膜表面原子の自発的な振る舞いとして平坦化が進行するものであり、幾何学的にみても、物性的にみてもきわめて理想的な平坦化精度を得ることが可能である。
【0011】超微粒子としては、例えば酸化ジルコニウム(ZrO2 )等からなり、粒径が0.1μm以下の超微粒子を用いることができる。
【0012】膜の表面に超微粒子を接触させる際に、その接触面近傍に導電性ガスを介在させることが好ましい。この導電性ガスにより静電気の発生が防止され、静電気が生じたときの絶縁破壊を十分に防止することができる。導電性ガスとしては、例えば炭酸ガス(C2 )、一酸化炭素ガス(CO)等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0013】図1は、本実施例で使用することができる成膜装置の概略を示し、この成膜装置は、アスペクト比の高いトレンチ構造の表面に絶縁膜が設けられた凹凸のある半導体ウエハの当該絶縁膜の表面を平坦化するためのものである。1は処理室であり、この処理室1に、超微粒子供給手段7と、炭酸ガス等の導電性ガスの導入口8と、排液口3と、基板ホルダー4とが設けられている。基板ホルダー4には、凹凸のある絶縁膜が設けられた半導体ウエハ5が固定されている。超微粒子供給手段7は、例えば多数の噴出口72を有するポリウレタン板71の内部に例えば酸化ジルコニウム(ZrO2 )等の超微粒子が充填されて構成され、この超微粒子が噴出されるようになっている。超微粒子は、例えば懸濁液中に分散された状態であってもよい。この超微粒子としては、膜表面の表面結合(解離に必要な活性化)エネルギーを低下させ、超微粒子表面との相互作用によって、解離を促進できるようなものを選択する。
【0014】炭酸ガス(CO2 )等の導電性ガスは、超微粒子を膜表面に接触させる際の静電気の発生を抑制するために導入するものである。
【0015】基板ホルダー4により半導体ウエハ5を回転させた状態で、超微粒子供給手段7の噴出口72から超微粒子またはその懸濁液を噴出させながら、当該超微粒子供給手段7のポリウレタン板71を半導体ウエハ5の絶縁膜表面に接近させ、当該絶縁膜表面に超微粒子を接触させる。このときの半導体ウエハ5の回転速度、接近距離、超微粒子の種類とその量は、被研磨表面の膜の種類によって適宜選択される。超微粒子を絶縁膜表面に接触させる際には、半導体ウエハ5を冷却または加熱してもよい。
【0016】本実施例の成膜方法によれば、アスペクト比の高いトレンチ構造の半導体ウエハ表面に設けられた凹凸のある絶縁膜の表面をきわめて平坦なものとすることができる。従って、この絶縁膜の表面に通常の方法によりレジスト膜を形成することにより、平坦なレジスト膜を形成することができ、焦点深度が浅くなるNA(開口率)の大きなステッパレンズを用いた場合にも、レジスト膜の表面全体をいわゆるボケを生じさせずに適正に露光することが可能となる。なお、本実施例に基づいて、アスペクト比が3のトレンチ構造の半導体ウエハ表面に設けられた最大1μmの凹凸のある絶縁膜の表面に、超微粒子を接触させて絶縁膜表面と超微粒子との相互作用により当該絶縁膜を原子オーダで平坦化した後、その表面粗さを測定したところ、30Å以内であった。
【0017】〔実施例2〕図2に示すように、超微粒子供給手段7として、多数の噴出口を有するポリウレタンロール73の内部に例えば酸化ジルコニウム(ZrO2 )等の超微粒子が充填されて構成されたものを用いて、このポリウレタンロール73を半導体ウエハ5の膜表面に対して相対運動させながら超微粒子を噴出させるようにした成膜装置を用いて、実施例1と同様にして成膜方法を実施してもよい。本実施例によれば、実施例1と同様に平坦な膜を形成することができる。
【0018】〔実施例3〕本実施例では、請求項3に対応する実施例を説明する。本実施例の成膜方法は、凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液を用いて凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする。
【0019】高流動性の親水性媒体としては、水、アルコールから選択されるものが好ましく、特に、超純水を好ましく用いることができる。超純水とは、抵抗率が18MΩ・cm以上の水をいい、不純物がほとんど含まれていないものである。従って、半導体デバイスにおける成膜には好適な材料である。また、アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール等を用いることができる。
【0020】成膜材料としては、レジストからなるものが好ましく用いられる。この成膜材料は、形成する膜の種類によって適宜選択される。レジストとしては、例えば「CEL」(コントラスト エンハンスト マテリアル(Contrast Enhanced Material))等を用いることができる。塗布液において、高流動性の親水性媒体と、成膜材料の混合比は、形成する膜の種類に応じて適宜選択される。
【0021】図3は、本実施例で使用することができる成膜装置の概略を示す。1は処理室であり、この処理室1に、高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液の導入口2と、排液口3と、基板ホルダー4とが設けられている。すなわち、図3に示す成膜装置は、処理室1、導入口2、排液口3および基本ホルダー4が設けられている成膜装置と、図2に示した成膜装置とをゲートバルブ9を介して連結して、連続処理を可能にしたものである。
【0022】基板ホルダー4には、例えば静電チャック等により半導体ウエハ5が固定されている。この基板ホルダー4は、冷却または加熱できるようになっており、さらに回転できるようになっている。
【0023】塗布液の導入口2は、高流動性の親水性媒体と成膜材料があらかじめ混合されて調製された塗布液を基板ホルダー4上の半導体ウエハ5に向かって噴射させるものである。この導入口2は、半導体ウエハ5の対面に設けられている。塗布液を構成する高流動性の親水性媒体としては、例えば超純水が用いられ、成膜材料としては例えばレジストが用いられる。超純水とレジストの混合比は適宜選択される。
【0024】この成膜装置を用いて例えば次のようにして本実施例の成膜方法を実施することができる。処理室1内において、半導体ウエハ5が固定された基板ホルダー4を適宜の速度で回転させながら、導入口2から塗布液を噴出させる。また、塗布液を噴出させながら、塗布液の種類に応じて半導体ウエハ5を冷却または加熱してもよい。冷却または加熱により塗膜が固化して成膜される。このような成膜方法によれば、超純水の高流動性によって、半導体ウエハ表面の絶縁膜における段差被覆部が十分に埋め込まれ、かつ絶縁膜の全体においてもきわめて平坦なレジスト膜が形成される。このレジスト膜の厚さは、例えば0.5〜1μm程度と通常より厚めが好ましい。
【0025】なお、半導体ウエハ表面の絶縁膜は、例えばテトラエチルオルソシリケート(Si(OC2 5 4 ;TEOS(テオス))とオゾン(O3 )の混合ガス(TEOS/O3 )を原料ガスとして用いたCVD法により形成することができる。このTEOS/O3 を用いたCVD法によれば、シリコン膜の流動性が高いために、段差被覆部をコンフォーマルに埋め込むことができる。
【0026】本実施例の成膜方法によれば、さらに平坦化された膜を効率的に形成することができる。なお、本実施例に基づいて、アスペクト比が3のトレンチ構造の半導体ウエハ表面に形成された最大1μmの凹凸のある絶縁膜の表面に、厚さ50μmのレジスト膜を形成し、このレジスト膜の表面に超微粒子を接触させてレジスト膜表面と超微粒子との相互作用により当該レジスト膜を原子オーダで平坦化した後、その表面粗さを測定したところ、±5Å以内であった。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば以下の効果が得られる。(1)凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することにより、きわめて平坦な膜を形成することができる。(2)膜の表面に超微粒子を接触させる際に、その接触面近傍に導電性ガスを介在させることにより、摩擦帯電による悪影響を十分に除去することができ、確実に平坦な膜を形成することができる。(3)高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液を用いて凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することにより、きわめて平坦な膜を効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した成膜装置の概略図である。
【図2】実施例2で使用した成膜装置の概略図である。
【図3】実施例3で使用した成膜装置の概略図である。
【符号の説明】
1 処理室 2 塗布液の導入口
3 排液口 4 基板ホルダー
5 半導体ウエハ 6 多孔ノズル
7 超微粒子供給手段 71 ポリウレタン板
72 噴出口 73 ポリウレタンロール
8 導電性ガスの導入口 9 ゲートバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】 請求項1に記載の成膜方法において、膜の表面に超微粒子を接触させる際に、その接触面近傍に導電性ガスを介在させることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】 凹凸のある表面に平坦な膜を形成する成膜方法において、高流動性の親水性媒体に成膜材料を含有してなる塗布液を用いて凹凸のある表面に膜を設けた後、この膜の表面に超微粒子を接触させて膜表面と超微粒子との相互作用により当該膜を原子オーダで平坦化することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3162157号(P3162157)
【登録日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【発行日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−70061
【出願日】平成4年2月21日(1992.2.21)
【公開番号】特開平5−234875
【公開日】平成5年9月10日(1993.9.10)
【審査請求日】平成9年10月30日(1997.10.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(591077070)
【参考文献】
【文献】特開 昭64−50422(JP,A)
【文献】特開 昭61−121441(JP,A)
【文献】特開 昭62−219923(JP,A)