成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するにあたり、面内均一性高く成膜処理を行える成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域91、92と、これらの処理領域91、92の間に設けられ、分離ガスが供給される分離領域Dと、を基板が順番に位置するように、夫々複数の反応ガスを供給するための複数の反応ガス供給手段31、32及び分離ガスを供給するための分離ガス供給手段41、42と、基板を載置する回転テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させて基板上に反応生成物の層を積層した後、回転テーブル上の基板を鉛直軸回りに自転させ、次いで再び基板が各領域91、92、Dを順番に位置させることによって反応生成物の層からなる薄膜を形成する。
【解決手段】夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域91、92と、これらの処理領域91、92の間に設けられ、分離ガスが供給される分離領域Dと、を基板が順番に位置するように、夫々複数の反応ガスを供給するための複数の反応ガス供給手段31、32及び分離ガスを供給するための分離ガス供給手段41、42と、基板を載置する回転テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させて基板上に反応生成物の層を積層した後、回転テーブル上の基板を鉛直軸回りに自転させ、次いで再び基板が各領域91、92、Dを順番に位置させることによって反応生成物の層からなる薄膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内において、互いに反応する複数の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの成膜方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)等の表面に対して真空雰囲気下で少なくとも2種類の反応ガスを順番に供給することにより薄膜を形成する手法が知られている。具体的には、この手法は例えばウェハの表面に第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウェハ表面での両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを複数回例えば数百回行うことによって、これらの層を積層してウェハ上へ薄膜を成膜するプロセスである。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールできると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
この成膜方法を実施するにあたっては、例えば特許文献1〜8に記載の装置が知られている。これらの装置について概略的に説明すると、この装置の真空容器内には、複数枚のウェハを周方向(回転方向)に並べて載置するための載置台と、この載置台に対向するように真空容器の上部に設けられ、処理ガス(反応ガス)をウェハに供給する複数のガス供給部と、が設けられている。
【0004】
そして、ウェハを載置台に載置して真空容器内を所定の処理圧力となるように減圧し、ウェハを加熱すると共に載置台と上記のガス供給部とを鉛直軸回りに相対的に回転させる。また、複数のガス供給部からウェハの表面に例えば夫々既述の第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給すると共に、反応ガスを供給するガス供給部同士の間に物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることによって、真空容器内において第1の反応ガスにより形成される処理領域と第2の反応ガスにより形成される処理領域とを区画する。
【0005】
このように、共通の真空容器内に複数種類の反応ガスを同時に供給しているが、これらの反応ガスがウェハ上において混合しないように夫々の処理領域を区画しているので、載置台上のウェハから見ると、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスが上記の隔壁やエアカーテンを介して順番に供給されることになる。そのため、例えば真空容器内に供給する反応ガスの種類を切り替える度に真空容器内の雰囲気を置換する必要がないので、またウェハに供給する反応ガスを高速で切り替えることができるので、上記の手法による成膜処理を速やかに行うことができる。
【0006】
一方、例えば半導体装置の配線の微細化や多層化に伴って、このような成膜装置において例えば膜厚の面内均一性を更に高める技術が必要になると考えられる。膜厚の面内均一性を高める手法としては、例えば真空容器内における反応ガスの流れを均一化する手法が挙げられるが、この装置の真空容器内には、例えばウェハを保持するための凹部が載置台に設けられていたり、あるいはガス供給部や真空容器の内壁にウェハ搬送口などの凹凸が形成されていたりする場合がある。そのため、真空容器内において例えば反応ガスの流れがこれらの凹部やガス供給部などによって乱されやすいので、反応ガスの流れを均一化するのは困難である。
【0007】
特許文献9には、ウェハの表面にソース領域やドレイン領域を形成するために、ディスク上に複数枚のウェハを周方向に配置して、このディスクを支持する回転アームを軸回りに回転させると共に、このディスク上のウェハにイオンビームを注入する技術が記載されている。そして、イオンビームの全注入量の1/4を注入してウェハを90度周方向に回転(自転)させ、次いで再び1/4を注入して更にウェハを90度回転させ、こうしてウェハを1周させる間に全注入量を注入することにより、ディスクの往復直線運動に対して様々な方向を向いているトランジスタに対して均一にイオンを注入している。しかし、ALDを行う装置における上述の課題及び解決手段については何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公報6,634,314号
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、(b)
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【特許文献9】特開平5−152238:段落0016〜0019、図3、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、テーブル上の基板をガス供給系に対して相対的に公転させて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するにあたり、面内均一性高く成膜処理を行うことのできる成膜装置、成膜方法及びこの成膜方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記基板載置領域に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記の成膜装置の具体的な態様としては、以下の構成としても良い。
薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力する制御部を備えている構成。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの下方側に設けられ、当該テーブル上の基板を下方側から突き上げて回転させ、基板の向きを変更する構成。
前記自転機構は、前記テーブルと外部の搬送機構との間で基板の受け渡しを行う役割を更に有している構成。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの上方側に設けられ、当該テーブル上の基板を側方側から挟みこんで回転させ、基板の向きを変更する構成。
前記テーブルは上から見たときの平面形状が円形であり、
前記複数の反応ガス供給手段は、夫々前記テーブルの半径方向に亘ってライン状に反応ガスを供給する手段である構成。
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えている構成。
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気される構成。
【0012】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記の成膜方法の具体的な工程としては、以下のようにしても良い。
前記向きを変更する工程は、前記薄膜を成膜する工程の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、次いで前記自転機構により基板の向きを変える工程。
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側において真空容器の天井面と前記テーブルとの間に狭隘な空間を形成して、前記分離領域からこの狭隘な空間を介して処理領域側に分離ガスを流す工程。
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために、前記真空容器内の中心部に位置する中心部領域から、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出して、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気する工程。
【0014】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記に記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域と、これらの処理領域の間において分離ガスが供給される分離領域と、を基板が順番に位置するように、ガス供給系とテーブルとを鉛直軸回りに相対的に回転させる成膜装置において、プロセスの途中で基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更しているため、基板の面内におけるガスの流れの不均一さが緩和され、その結果面内に亘って膜や膜質の均一性が高い成膜処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図6】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図7】上記の成膜装置の一部を示す斜視図である。
【図8】上記の成膜装置におけるパージガスの流れを示す模式図である。
【図9】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図10】上記の成膜装置において基板を自転させる機構を示す横断面図である。
【図11】上記の成膜装置における処理の流れを示す模式図である。
【図12】上記の成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】上記の成膜装置において基板を自転させる様子を示す模式図である。
【図14】上記の成膜装置において基板が自転していく様子を示す概略図である。
【図15】上記の成膜装置の他の実施の形態を示す模式図である。
【図16】上記の成膜装置の他の例を示す横断面図である。
【図17】上記の他の成膜装置を示す斜視図である。
【図18】上記の他の成膜装置を示す平面図である。
【図19】上記の他の成膜装置の縦断面を示す斜視図である。
【図20】上記の他の成膜装置を示す横断面図である。
【図21】上記の成膜装置を示す説明図である。
【図22】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図23】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図24】上記の成膜装置が適用される基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図25】上記の基板処理装置の他の例を示す平面図である。
【図26】上記の基板処理装置に設けられた自転機構の一例を示す斜視図である。
【図27】上記の自転機構の他の例を示す概略図である。
【図28】本発明の実施例にて得られた特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態である成膜装置は、図1〜図3に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、この回転テーブル2を収納する概略カップ型の容器本体12と、この容器本体12の上面の開口部を気密に塞ぐように円板状に形成された天板11と、を備えている。この天板11は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に気密に接続されており、図示しない開閉機構により昇降して開閉されるように構成されている。
【0018】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。この回転軸22は、真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計回りに回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0019】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられており、この凹部24は回転テーブル2の回転により当該回転テーブル2の回転中心を中心として鉛直軸回りに公転するように構成されている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウェハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウェハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウェハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウェハWを凹部24に落とし込むと、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面(ウェハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、後述するように、ウェハWの中央部付近を下面側から支持して昇降させるための昇降板200が回転テーブル2に保持されている。尚、図4ではこの昇降板200の描画を省略している。
【0020】
凹部24はウェハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴なう遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、この基板載置領域(ウェハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウェハWの周縁をガイドするガイド部材をウェハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウェハWを吸着する場合には、その吸着によりウェハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0021】
図2、図3及び図5に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する上位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41、42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて配置されている。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計回りに配列されている。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは当該外周壁を貫通している。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、夫々反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段をなし、真空容器1の側壁の複数箇所に形成された貫通孔100に取り付けられている。尚、ノズル31、32、41、42が取り付けられていない貫通孔100は、図示しない覆い部材により気密に密閉されている。
【0022】
反応ガスノズル31、32には、夫々図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管31b、32bにより、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガス及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスが供給されるように構成されている。また、分離ガスノズル41、41は、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管により、分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)が供給されるように構成されている。
【0023】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔を置いて等間隔に穿設されている。反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウェハWに吸着させるための第1の処理領域91及びO3ガスをウェハWに吸着させるための第2の処理領域92となる。
【0024】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域91と第2の処理領域92とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転テーブル2の回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
尚、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0025】
従って分離ガスノズル41、42における前記回転方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記回転方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウェハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0026】
この例では直径300mmのウェハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウェハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0027】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における回転テーブル2の回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウェハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図6では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図6に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0028】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図6に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部位における既述の第1の処理領域91及び第2の処理領域92に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、既述の図1に示すように、バルブ65が介設された排気路63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0029】
これらの排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域91とこの第1の処理領域91に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域92とこの第2の処理領域92に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されており、夫々各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図3中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域91とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域91の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図3に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域92とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域92の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0030】
尚、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0031】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1及び図7に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウェハWをプロセスレシピで決められた温度に加熱するように構成されている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するために、ヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0032】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0033】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図8にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域91と第2の処理領域92との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスの回り込みが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0034】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との間の狭い隙間50を介して回転テーブル2のウェハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域91と第2の処理領域92との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域91と第2の処理領域92との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0035】
更に真空容器1の側壁には図2、図3及び図9に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGにより開閉されるようになっている。また、各々の凹部24の底面には、この搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しを行うために、ウェハWの中央部付近を下面側から支持して昇降させるための昇降板200が設けられており、上記の搬送アーム10は、昇降板200に干渉せずにウェハWを受け取ることができるように、先端側がU字型に分かれている。図10に示すように、凹部24の概略中央は一段低くなって円形状の窪み部201が形成されており、この窪み部201の底部は内側に突出するように環状に形成されていてその中央側のエリアは開口部202となっている。そして、この開口部202を塞ぐように上記の昇降板200が設けられており、この昇降板200は、上面の高さ位置が例えば凹部24内のウェハWの下面位置と同じかあるいは僅かに低くなるように形成されている。
【0036】
この回転テーブル2におけるウェハ載置領域である凹部24は搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において、搬送アーム10との受け渡し位置に対応する部位には、図10に示すように、昇降板200を裏面側から支持して昇降させるための昇降機構例えば昇降ピン16が設けられている。この昇降ピン16は、ヒータユニット7及び真空容器1の底面部14を貫通するように上下に伸びる昇降軸17を介して、当該昇降ピン16及び昇降軸17を昇降及び鉛直軸回りに時計回りに回転(自転)させるための自転機構を兼用する昇降機構18に接続されている。従って、この昇降ピン16は、真空容器1内に対してウェハWの搬入出動作を行うために昇降動作を行う働きに加えて、後述するように、ウェハWを上昇させて自転させることができるように構成されている。昇降軸17と真空容器1の底面部14との間には、軸受け部19a及び磁気シール19bが介在している。この図10中Gはゲートバルブである。
【0037】
また、この成膜装置は、既述の図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部80を備えている。この制御部80は、CPU、メモリ及び処理プログラムを備えている。このメモリには、ノズル31、32、41、42から供給されるBTBASガス、O3ガス及びN2ガスの流量、処理圧力、あるいはウェハWに対して成膜する薄膜の目標の膜厚T及び後述の成膜ステップの回数N、ローテーションステップにおいてウェハWを自転させる自転角度θなどの処理条件が書き込まれる領域がレシピ毎に設けられている。上記の処理プログラムは、上記のメモリに書き込まれたレシピを読み出し、このレシピに合わせて成膜装置の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理を行うように命令が組み込まれている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部85から制御部80内にインストールされる。
【0038】
次に上述の第1の実施の形態の作用について、図11〜図14を参照して説明する。以下の例では、ウェハWの表面に目標とする成膜量(膜厚)がTnm例えば80nmのシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する例について説明する。先ず、ゲートバルブGを開き、成膜装置の外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウェハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す(ステップS1)。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに、搬送アーム10によりウェハWを昇降板200の上方位置に搬入し、次いで搬送アーム10のU字型に分岐した先端部の内側領域を介して、下面側から昇降板200がウェハWを支持するように昇降軸17を受け渡し位置に上昇させて行われる。そして、搬送アーム10が真空容器1の外部に退避すると共に、昇降板200を載置位置に下降させて凹部24内にウェハWを収納する。このようなウェハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウェハWを載置する。続いて、回転テーブル2を所定の回転数例えば240rpmで時計回りに回転させて、バルブ65を全開にして真空容器1内を真空引きすると共に、ヒータユニット7によりウェハWを設定温度例えば350℃に加熱する(ステップS2)。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め例えば350℃に加熱されており、この回転テーブル2に載置されることで、上記のようにウェハWが設定温度に加熱されることになる。
【0039】
次いで、真空容器1内が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整して、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から真空容器1内に例えば夫々200sccm、10000sccmでBTBASガス及びO3ガスを供給する。また、分離ガスノズル41、42から例えば夫々10000sccm、10000sccmで真空容器1内にN2ガスを供給すると共に、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72からも所定の流量でN2ガスを中心部領域C及び既述の狭い空間内に供給する(ステップS3)。
【0040】
そして、ウェハWは回転テーブル2の回転により、第1の処理領域91と第2の処理領域92とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて反応生成物である酸化シリコン(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されていく。こうして回転テーブル2の回転(各処理領域91、92における反応)が所定の回数例えば20回行われることにより、ウェハWの表面には膜厚が目標膜厚Tの1/N(N≧2)この例では1/8(N=8、80/8=10nm)のシリコン酸化膜が積層されて、成膜ステップが行われる(ステップS4)。
【0041】
この時、第1の処理領域91及び第2の処理領域92の間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図12に示すようにBTBASガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガス及びO3ガスが雰囲気中においてもウェハW上においても混じり合うことがない。
【0042】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0043】
続いて、中間ステップとして、BTBASガスの供給を停止すると共に、図13(a)に示すように、凹部24が既述の昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2の回転を停止する(ステップS5)。BTBASガスの供給を停止すると、真空容器1のBTBASガスが速やかに排気されていくので、回転テーブル2の回転を停止しても、各ウェハWはBTBASガスの影響を受けない。そして、同図(b)に示すように、ローテーションステップとして、昇降ピン16により昇降板200及びウェハWを上昇させて、ウェハWを鉛直軸回りに例えば時計回りに360°/Nこの例では360/8=45°回転(自転)させてその向きを変更する。そして、ウェハWを下降させて凹部24内に収納する(ステップS6)。また、回転テーブル2を間欠的に回転(公転)させて、このようなウェハWの回転(自転)を回転テーブル2上に載置された5枚のウェハWに対して行う。尚、BTBASガスの供給を停止する時には、このBTBASガスと共にO3ガスの供給を停止しても良い。
【0044】
次に、回転テーブル2を回転させると共にBTBASガスの供給を開始して、ステップS4の成膜ステップと同様に膜厚が10nm(膜厚T/N=80/8)のシリコン酸化膜の成膜を行う(ステップS7)。この時、上記のようにウェハWを時計回りに45°回転させていることから、ウェハWは先程の成膜ステップを行った時の水平姿勢に対して、時計回りに45°ずれた水平姿勢にてノズル31、32の下方位置である処理領域91、92を通過することになり、ウェハW上には合計20nm(膜厚T/N×2=80/8×2)のシリコン酸化膜が成膜される。
【0045】
そして、ウェハWが時計回りに自転して1回転する間に膜厚Tnmの薄膜が成膜されるように、上記の中間ステップ、ローテーションステップ及び成膜ステップを(N−2)回この例では6回繰り返す(ステップS8)。つまり、BTBASガスの供給と回転テーブル2の回転とを停止して(中間ステップ)、ウェハWを時計回りに45°自転させ(ローテーションステップ)、次いで10nmのシリコン酸化膜の成膜(成膜ステップ)を行う各ステップをこの順番で6回繰り返して、いわば成膜処理の途中でウェハWを少しずつ自転させていく。すると、ウェハWは時計回りに45°自転する度に10nmのシリコン酸化膜が成膜されていき、合計45°×6=270°時計回りに自転し、また合計10×6=60nmのシリコン酸化膜の成膜が行われることになる。従って、成膜前(真空容器1に搬入された時)のウェハWから見ると、成膜後のウェハWは、時計回りに315°(45+270)自転し、80nm(60+20)のシリコン酸化膜からなる薄膜が成膜されることになる。
【0046】
以上の成膜処理におけるウェハWの自転した角度と膜厚とを概略的に図14に示すと、ウェハWは合計8回(N回)の成膜ステップと、45°ずつ時計回りに自転する合計7回(N−1)回のローテーションステップと、が交互に行われることにより、80nmの薄膜が成膜される間に例えば時計回りにほぼ1周(より詳しくは315°)自転することになる。尚、この図14中のウェハW上に描画した矢印は、ウェハWが自転していく様子を模式的に表すために、例えば1回目の成膜ステップを行う前の位置からのウェハWの自転角度を示したものである。また、この図14中の横軸には、成膜ステップとローテーションステップとの合計のステップ数を示している。
【0047】
こうして成膜処理が終了すると、ガスの供給を停止して真空容器1内を真空排気し、その後回転テーブル2の回転を停止して各ウェハWを搬入時と逆の動作によって順次搬送アーム10により搬出する。尚、既述のように、ウェハWが搬入前(成膜前)に比べて時計回りに315°自転していることから、真空容器1から搬出する前に、昇降ピン16により時計回りに45°自転させて搬入時と同じ向きに戻すようにしても良い。
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウェハWを被処理基板とする場合は例えば1rpm〜500rpm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。
【0048】
上述の実施の形態によれば、ウェハWの表面に2種類の反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)を順番に供給して薄膜を形成するにあたり、夫々処理領域91、92と、これらの処理領域91、92の間の分離領域Dと、の間をウェハWが順番に通過するように、回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させてウェハW上に反応生成物の層を積層した後、回転テーブル2上のウェハWを鉛直軸回りに自転させ、次いで再び反応生成物の層を積層して薄膜を形成している。そのため、例えば回転テーブル2の各凹部24において膜厚が厚くなる傾向の領域や膜厚が薄くなる傾向の領域が偏在していたとしても、つまり例えば1回目の成膜ステップにおいて成膜されたシリコン酸化膜の膜厚が不均一だったとしても、続く成膜ステップでは鉛直軸回りに自転させた状態で成膜ステップを行っており、上記の各偏在領域がウェハWの周方向にずれるように(膜厚の偏りが大きくならないように)次のシリコン酸化膜が成膜されるので、面内に亘って膜厚の均一性高く成膜処理を行うことができる。従って、例えば真空容器1のノズル31、32の長さ方向(回転テーブル2の半径方向)あるいは回転テーブル2の周方向(回転方向)において、ガスの濃度分布やガス流が不均一になっていたとしても、その不均一さが緩和されるので、面内に亘って膜や膜質が均一となるように成膜処理を行うことができる。
【0049】
この時、目標の成膜量Tに対して成膜ステップを8回に分けてウェハWを45°ずつ時計回りに自転させているので、各成膜ステップにおける膜厚のばらつきを面内に亘って均すことができ、後述のシミュレーション結果から分かるように、面内における均一性を1%以下まで向上させることができる。
また、ウェハWを自転させるにあたり、真空容器1の内部で行っていることから、例えば真空容器1の外部にて自転させる場合よりも自転に要する時間を短くすることができ、そのためスループットの低下を抑えて面内均一性を向上させることができる。
【0050】
更にまた、上記のように回転テーブル2の回転方向に複数のウェハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域91と第2の処理領域92とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして、前記回転方向において第1の処理領域91と第2の処理領域92との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に、回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるようにしているため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。尚、本発明は、回転テーブル2に1個のウェハWを載置する場合にも適用できる。
【0051】
上記の成膜ステップの回数Nは、後述のシミュレーション結果からも、2回(ウェハWの自転回数が1回、自転角度が180°)以上であれば良く、多くなる程膜厚の均一性が向上していくと考えられるが、ウェハWの自転に要する時間が長くなってスループットが低下するおそれのあることから、2回〜8回例えば4回程度であることが好ましい。また、成膜ステップをN回に分けて薄膜を成膜するにあたり、各成膜ステップにおいて同じ膜厚のシリコン酸化膜を成膜したが、各々異なる膜厚としても良い。具体的には、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、例えば1回目の成膜ステップで60nmのシリコン酸化膜を成膜した後、ウェハWを180°自転させ、次いで20nmのシリコン酸化膜を成膜しても良い。この場合においても、ウェハWを自転させない場合よりも膜厚の均一性を向上させることができる。また、成膜ステップをN回に分けて薄膜を成膜するにあたり、各々のローテーションステップにおいてウェハWを等間隔に360°/Nずつ自転させるようにしたが、成膜後の薄膜の膜厚が目標の成膜量Tとなるのであれば、各々のローテーションステップにおけるウェハWの自転角度θは以下のようにしても良い。具体的には、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、ウェハWを7回自転させると共に成膜ステップを8回に分けて10nmずつシリコン酸化膜を成膜する時に、例えば7回のローテーションステップの各々において30°ずつウェハWを自転させても良いし、あるいは1回目のローテーションステップにおいてウェハWを45°自転させ、その後の6回のローテーションステップの各々では30°ずつウェハWを自転させても良い。更に、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、1回目の成膜ステップで例えば60nmのシリコン酸化膜を成膜した後、ウェハWを例えば90°回転させて、次いで20nmのシリコン酸化膜を成膜するようにしても良い。つまり、2回目以降のいずれかの成膜ステップにおいて、ウェハWの自転角度θが所定の角度(θ≠0、360)だけずれた状態で成膜すれば良い。このような場合においても、ウェハWを自転させずに成膜する場合よりも膜厚の均一性を高めることができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
上記の例では、ウェハWを自転させるにあたって、昇降機構18に自転機構を兼用させたが、第2の実施の形態として、この自転機構を別途設けるようにしても良い。具体的には、例えば図15(a)に示すように、昇降ピン16の上方位置における天板11に貫通孔210を形成し、この貫通孔210を介して天板11の上方位置から真空容器1内に垂直に伸びる昇降軸211を配置する。そして、例えば天板11上に、この昇降軸211を昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に保持する自転機構212を配置する。また、この昇降軸211の下面に昇降板213を接続すると共に、この昇降板213の下面側に、ウェハWを側方側から挟み込んで裏面にて支持するための内側が矩形に窪む保持機構214、214を、ウェハWの直径方向に離間させて相対向するように水平移動自在に配置する。尚、この図15中、既述の例と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。また、同図(b)は、この昇降板213をウェハW側(下側)から見たときの平面図である。
【0053】
そして、この昇降板213(保持機構214)は、ウェハWを自転させない時(ウェハWの搬入出時や成膜時)には回転テーブル2の回転動作に干渉しない上位置に退避して、ウェハWを自転させる時には保持機構214、214をウェハWの直径寸法よりも大きく離間させた状態で下位置に下降することとなる。そして、この自転機構212によりウェハWを自転させる時は、上記の例と同様にウェハWが昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2を停止させると共に、昇降板213を下位置に下降させる。次いで、昇降ピン16によりウェハWを裏面側から突き上げて保持機構214、214の内側領域にウェハWを上昇させて、保持機構214、214を内側(ウェハW側)に各々移動させることによってウェハWを両側から挟み込むと共に、昇降ピン16を下降させて保持機構214、214にウェハWを引き渡す。次いで、自転機構212によりウェハWを所定の角度だけ自転させると共に、再度昇降ピン16を上昇させて、ウェハWの受け渡し動作と逆の順序で凹部24内にウェハWが載置されることになる。このような自転機構212においても、上記の例と同様に成膜ステップやローテーションステップが行われて、同様の効果が得られる。
【0054】
[第3の実施の形態]
また、上記の各実施の形態の成膜装置としては、ノズル31、32、41、42に対して回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させる構成としたが、ノズル31、32、41、42が回転テーブル2に対して鉛直軸回りに回転する構成としても良い。このような具体的な装置構成について、本発明の第3の実施の形態として、図16〜図20を参照して説明する。尚、既述の成膜装置と同じ部位については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
真空容器1内には、既述の回転テーブル2に代えて、テーブルであるサセプタ300が配置されている。このサセプタ300の底面中央には、回転軸22の上端側が接続されており、ウェハWの搬入出を行うときにはサセプタ300を回転できるように構成されている。このサセプタ300上には、既述の凹部24が周方向に亘って複数箇所例えば5箇所に形成されており、この凹部24内には既述の昇降板200が設けられている。
【0056】
図16〜図18に示すように、既述のノズル31、32、41、42は、サセプタ300の中央部の直上に設けられた扁平な円盤状のコア部301に取り付けられており、基端部が当該コア部301の側壁を貫通している。コア部301は後述するように例えば鉛直軸回りに反時計方向に回転するように構成されており、当該コア部301を回転させることによって各ガス供給ノズル31、32、41、42をサセプタ300の上方位置において回転させることができるようになっている。尚、図17は、真空容器1(天板11及び容器本体12)並びに天板11の上面に固定された後述のスリーブ304を取り去った状態を示している。
【0057】
既述の凸状部4は、上記のコア部301の側壁部に固定されており、各ガス供給ノズル31、32、41、42と共にサセプタ300上を回転できるように構成されている。コア部301の側壁部には、図17、図18に示すように、各反応ガス供給ノズル31、32の回転方向上流側であって、当該上流側に設けられている凸状部4とコア部301との接合部の手前の位置に、2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々後述の排気管302に接続されていて、反応ガス及び分離ガスを各処理領域91、92から排気する役割を果たす。排気口61、62は、既述の例と同様に、分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。
【0058】
図16に示すように、コア部301の上面中央部には円筒状の回転筒303の下端部が接続されており、真空容器1の天板11上に固定されたスリーブ304内にて当該回転筒303を回転させることにより、真空容器1内でコア部301と共にノズル31、32、41、42及び凸状部4を回転させる構成となっている。コア部301内は下面側が開放された空間となっていて、コア部301の側壁を貫通した反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42は、当該空間において各々BTBASガスを供給する第1の反応ガス供給管305、O3ガスを供給する第2の反応ガス供給管306、分離ガスであるN2ガスを供給する分離ガス供給管307、308と接続されている(便宜上、図16には、分離ガス供給管307、308のみを図示してある)。
【0059】
各供給管305〜308は、コア部301の回転中心近傍、詳細には後述の排気管302の周囲にてL字に屈曲されて上方に向けて伸び、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて円筒状の回転筒303内を延伸されている。
【0060】
図16、図17、図19に示すように、回転筒303は外径の異なる2つの円筒を上下2段に積み重ねた外観形状に構成されており、外径の大きな上段側の円筒の底面をスリーブ304の上端面にて係止させることにより、当該回転筒303を上面側から見て周方向に回転可能な状態でスリーブ304内に挿入する一方、回転筒303の下端側は天板11を貫通してコア部301の上面と接続されている。
天板11の上方位置における回転筒303の外周面側には、当該外周面の周方向の全面に亘って形成された環状流路であるガス拡散路が上下方向に間隔をおいて配置されている。本例においては上段位置に分離ガス(N2ガス)を拡散させるための分離ガス拡散路309が配置され、中段位置にBTBASガスを拡散させるための第1の反応ガス拡散路310、下段位置にO3ガスを拡散させるための第2の反応ガス拡散路311が配置されている。図中、312は回転筒303の蓋部であり、313は当該蓋部312と回転筒303とを密着させるOリングである。
【0061】
各ガス拡散路309〜311には、回転筒303の全周に亘り、当該回転筒303の外面へ向けて開口するスリット320、321、322が設けられており、夫々のガス拡散路309〜311には、これらのスリット320、321、322を介して各種のガスが供給されるようになっている。一方、回転筒303を覆うスリーブ304には、各スリット320、321、322に対応する高さ位置に、ガス供給口であるガス供給ポート323、324、325が設けられており、不図示のガス供給源よりこれらのガス供給ポート323、324、325へと供給されたガスは、当該各ポート323、324、325に向けて開口するスリット320、321、322を介して各ガス拡散路309、310、311内に供給されることとなる。
【0062】
ここでスリーブ304内に挿入された回転筒303の外径は、当該回転筒303が回転可能な範囲で、可能な限りスリーブ304の内径と近い大きさに形成されており、前記各ポート323、324、325の開口部以外の領域においては、各スリット320、321、322はスリーブ304の内周面によって塞がれた状態となっている。この結果、各ガス拡散路309、310、311に導入されたガスは、当該ガス拡散路309、310、311内のみを拡散して、例えば他のガス拡散路309、310、311や真空容器1内、成膜装置の外部などに漏れ出さないようになっている。図1中、326は回転筒303とスリーブ304との隙間からのガス漏れを防止するための磁気シールであり、これら磁気シール326は各ガス拡散路309、310、311の上下にも設けられていて、各種ガスをガス拡散路309、310、311内に確実に封止する構成となっているが同図では便宜上省略してある。また、図19においても磁気シール326の記載は省略してある。
【0063】
図19に示すように、回転筒303の内周面側において、ガス拡散路309にはガス供給管307、308が接続され、各ガス拡散路310、311には既述の各ガス供給管305、306が夫々接続されている。これによりガス供給ポート323から供給された分離ガスは、ガス拡散路309内を拡散してガス供給管307、308を介してノズル41、42へと流れ、また各ガス供給ポート324、325から供給された各種反応ガスは、夫々ガス拡散路310、311内を拡散し、ガス供給管305、306を介して各ノズル31、32へと流れ、真空容器1内に供給されるようになっている。なお、図19においては図示の便宜上、後述の排気管302の記載は省略してある。
【0064】
ここで図19に示すように、分離ガス拡散路309にはさらにパージガス供給管330が接続されており、当該パージガス供給管330は回転筒303内を下方側に延伸されて図18に示すようにコア部301内の空間に開口しており、当該空間内にN2ガスを供給することができる。ここで例えば図16に示すようにコア部301は、サセプタ300の表面から例えば既述の高さhの隙間を空けて浮いた状態となるように回転筒303に支持されており、サセプタ300に対してコア部301が固定されていないことにより自由に回転させることができる。しかしながらこのようにサセプタ300とコア部301との間に隙間が開いていると、例えば既述の処理領域91、92の一方からコア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むおそれがある。
【0065】
そこでコア部301の内側を空洞とし、当該空洞の下面側をサセプタ300に向けて開放すると共に、当該空洞内にパージガス供給管330からパージガス(N2ガス)を供給して、前記隙間を介して各処理領域91、92へ向けてパージガスを吹き出させることにより、前述の反応ガスの回り込みを防止することができる。即ち、この成膜装置は、処理領域91、92の雰囲気を分離するためにサセプタ300の中心部と真空容器1とにより区画され、当該サセプタ300の表面にパージガスを吐出する吐出口がコア部301の回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。この場合にパージガスは、コア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことを防止するための分離ガスの役割を果たしている。なおここでいう吐出口はコア部301の側壁とサセプタ300との間の隙間に相当する。
【0066】
図16に示すように、回転筒303の上段側の外径の大きな円筒部の側周面には、駆動ベルト335が巻き掛けられており、この駆動ベルト335は、真空容器1の上方に配置された回転機構である駆動部336により、この駆動ベルト335を介して当該駆動部336の駆動力をコア部301に伝達し、これによりスリーブ304内の回転筒303を回転させることができる。尚、図16中337は、真空容器1の上方位置において駆動部336を保持するための保持部である。
【0067】
回転筒303内には、その回転中心に沿って排気管302が配設されている。排気管302の下端部は、コア部301の上面を貫通してコア部301内の空間に伸びだしていて、その下端面は封止されている。一方、当該コア部301内に伸びだした排気管302の側周面には、例えば図18に示すように、各排気口61、62と接続された排気引込管341、342が設けられていて、パージガスで満たされたコア部301内の雰囲気とは隔離して各処理領域91、92からの排ガスを排気管302内へと引き込むことができるようになっている。なお、既述のように図19においては排気管302の記載は省略してあるが、当該図19に記載された各ガス供給管305、306、307、308並びにパージガス供給管330は、この排気管302の周囲に配置されている。
図16に示すように排気管302の上端部は回転筒303の蓋部312を貫通し、真空排気手段である例えば真空ポンプ343に接続されている。なお図16中、344は下流側の配管に対して排気管302を回転可能に接続するロータリージョイントである。
【0068】
図20に示すように、サセプタ300の下方位置には、既述の昇降ピン16が設けられており、この例では昇降ピン16は、図18に概略的に示すように、各々の凹部24の下方位置毎に設けられている。つまり、この実施の形態では成膜処理はサセプタ300を回転させずに、ノズル31、32、41、42(回転筒303)を回転させて行うため、各々のウェハW毎に個別に独立して自転できるように、昇降ピン16、昇降軸17、昇降機構18、軸受け部19a及び磁気シール19bが各々設けられている。また、真空容器1に対してウェハWの搬入出を行うときには、各々の凹部24が搬送口15に臨む位置となるようにサセプタ300を回転させることから、各々の昇降ピン16は、サセプタ300を回転させるときには当該サセプタ300に干渉しないように下降し、ウェハWを自転させるときには上昇するように構成されている。
【0069】
この装置を用いた成膜処理の流れについて、既述の図11に示した各ステップS1〜S8と異なる点について、以下に簡単に説明する。先ず、ステップS1において、サセプタ300の回転動作に干渉しないように昇降ピン16を下降させ、既述のようにこのサセプタ300を間欠的に回転させて、搬送アーム10と昇降ピン16との協働作業により5つの凹部24にウェハWを各々載置する。
【0070】
次に、ステップS2において、各々の昇降ピン16の上方位置に各々の凹部24が位置するようにサセプタ300を停止させる。そして、回転筒303を反時計回りに回転させる。すると、図19に示すように回転筒303に設けられた各ガス拡散路309〜312は回転筒303の回転に伴って回転するが、これらのガス拡散路309〜311に設けられたスリット320〜322の一部が各々対応するガス供給ポート323〜325の開口部へ向けて常時開口していることにより、ガス拡散路309〜312には各種のガスが連続的に供給される。
【0071】
ガス拡散路309〜312に供給された各種のガスは、各々のガス拡散路309〜312に接続されたガス供給管305〜308を介して反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42より各処理領域91、92、分離領域Dへと供給される。これらのガス供給管305〜308は回転筒303に固定され、また、反応ガス供給ノズル31、32及び分離ガス供給ノズル41、42についてはコア部301を介して回転筒303に固定されていることから、回転筒303の回転に伴ってこれらのガス供給管305〜308及び各ガス供給ノズル31、32、41、42も回転しながら各種のガスを真空容器1内に供給している。
【0072】
このとき、回転筒303と一体となって回転しているパージガス供給管330からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ちコア部301の側壁部とサセプタ300の中心部との間からサセプタ300の表面に沿ってN2ガスが吐出する。またこの例では反応ガス供給ノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿ったコア部301の側壁部に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなっている。そのため、BTBASガスとO3ガスとは、既述の成膜装置と同様に互いに混じり合うことなしに独立して排気されていくことになる。
【0073】
従って、サセプタ300上で停止している各々のウェハWから見ると、各処理領域91、92が分離領域Dを介して順番に通過することになり、既述のように成膜ステップが行われる。そして、所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜されると、ローテーションステップとして所定のタイミングで既述の例と同様に、ウェハWが各々個別に独立して自転することになる。このようにウェハWを自転させるにあたり、既述の例と同様にBTBASガスの供給を停止して行うようにしても良いし、回転筒303の回転を停止しても良い。また、BTBASガスと共にO3ガスの供給も停止しても良い。更に、回転筒303の回転やBTBASガス及びO3ガスの供給を停止せずにウェハWを自転させても良く、その場合には例えばウェハWが自転している間にBTBASガスに接触しないように、当該ウェハWが第2の処理領域92あるいは分離領域Dを通過しているときに自転させても良い。
【0074】
この実施の形態においても、同様に面内において均一性の高い成膜処理が行われて、同様の効果が得られる。また、この例においても、ノズル31、32、41、42、凸状部4及び回転筒303と共に回転するように既述の第2の実施の形態における保持機構214、214を設けてウェハWを自転させるようにしても良い。この場合には、ウェハWの自転は回転筒303の回転を停止して行われる。
【0075】
本発明で適用される処理ガス(反応ガス)としては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0076】
[好ましい例、他の実施の形態]
例えば第1の実施の形態の成膜装置では、前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
そして、前記分離ガスノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、例えば第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げて説明すると、図21(a)、(b)に前記分離ガスノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウェハWを被処理基板とする場合、ウェハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hも小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hをある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウェハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離hをかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウェハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウェハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0077】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが好ましいが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部4を設けずに、分離ガスノズル41、42から下方に向けてN2ガスを吹き出してエアカーテンを形成し、このエアカーテンにより処理領域91、92を分離するようにしても良い。
ウェハWを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。また、上記の反応ガスによる反応が低温例えば常温において起こる場合には、このような加熱手段を設けなくとも良い。
【0078】
ここで処理領域91、92及び分離領域の各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図22は、既述の第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げてこのような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域91及び第2の処理領域92は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域91及び第2の処理領域92の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。
【0079】
また、反応ガスノズル31(32)の両側にも低い天井面を設けて、分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても良い。
また、同様に第1の実施の形態の成膜装置を例として図23に示すように、各ノズル31、32、41、42の取り付け位置を変更しても良く、例えばこの成膜装置では搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側の貫通孔100にノズル32を取り付けている。この成膜装置においても、同様に各々の反応ガスが混じり合わないように排気されながら、ウェハWの表面にBTBASが吸着し、その後O3ガスによりBTBASガスが酸化されるサイクルが多数回繰り返されて薄膜が形成される。
【0080】
本発明は、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給する場合にも適用することができる。その場合には、例えば第1の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第2の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第3の反応ガスノズル及び分離ガスノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガスノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0081】
[基板処理装置]
次に、上記の成膜装置を備えた基板処理装置の全体構成について図24に示しておく。図24中、111は例えば25枚のウェハWを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、112は搬送アーム113が配置された大気搬送室、114、115は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、116は2基の搬送アーム117、117(既述の搬送アーム10)が配置された真空搬送室、118、119は本発明の成膜装置である。
【0082】
続いて、この基板処理装置における処理の流れについて説明する。搬送容器111は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室112に接続された後、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム113により当該搬送容器111内からウェハWが取り出される。次いで、ウェハWはロードロック室114(115)内に搬入されて、当該室内が大気雰囲気から真空雰囲気に切り替えられた後、搬送アーム117により成膜装置118、119の一方に搬入され、既述の成膜処理(成膜ステップ)が行われる。
【0083】
上記の基板処理装置によれば、例えば5枚処理用の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0084】
[基板処理装置の他の例]
上記の例では、ウェハWを成膜装置内にて自転させるようにしたが、成膜装置の外部で自転させても良い。そのような例について、図25を参照して説明する。上記の基板処理装置の真空搬送室116内において、2基の真空搬送アーム117、117が各々アクセスできる位置例えば2基の真空搬送アーム117、117の中間位置における成膜装置118、119に近接する位置には、図26にも示すように、真空搬送アーム117上に保持されたウェハWを裏面側から突き上げて鉛直軸回りに回転させるための昇降軸130と、この昇降軸130を下側から鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に保持する駆動部131と、からなる自転機構132が設けられている。この自転機構132は、成膜装置118、119にて成膜途中のウェハWに対してその向きを変更し、成膜を続行するためのものである。尚、図26では1基の搬送アーム117のみを描画している。
【0085】
この基板処理装置では、ウェハWを自転させる時には、例えば真空容器1内の真空度が既述の真空搬送室116内の真空度と同程度となるようにバルブ65の開度を調整すると共に、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム117を真空容器1内に進入させて昇降ピン16との協働作用によりウェハWを真空搬送アーム117に受け渡す。次いで、真空搬送アーム117上のウェハWを自転機構132の上方位置に移動させると共に、下方側から昇降軸130を上方に突き上げてウェハWを持ち上げる。続いて、駆動部131により昇降軸130を鉛直軸回りに回転させて、既述の例と同様にウェハWの向きを変更する。そして、昇降軸130を下降させて真空搬送アーム117にウェハWを受け渡すと共に、このウェハWを真空容器1内に搬入する。こうして回転テーブル2を間欠的に回転させて残りの4枚のウェハWについても自転機構132において自転させた後、既述の例と同様に引き続き成膜処理を行う。この例においても、既述の例と同様に面内における膜厚の均一化が図られて、同様の効果が得られる。
【0086】
また、ウェハWを自転させるにあたって、真空搬送室116内に自転機構132を設けたが、真空搬送アーム117にこの自転機構132を組み合わせて設けても良い。このような真空搬送アーム117としては、具体的には図27に示すように、支持板141上に形成されたレール142に沿って進退するスライドアームとしても良い。そして、既述の自転機構132は、各々の搬送アーム117、117に設けられると共に、各支持板141内に埋設されて、搬送アーム117が後退した時にこの搬送アーム117上に保持されたウェハWに対して昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に構成される。この搬送アーム117においても、上記の例と同様にウェハWの自転が行われて同様の効果が得られる。また、既述の大気搬送アーム113に代えてこの真空搬送アーム117を既述の大気搬送室112に設けて、この大気搬送室112においてウェハWを自転させても良い。
【実施例】
【0087】
次に、上記の成膜方法を実施した場合に面内の均一性がどの程度改善されるか評価するために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、以下の条件において行った。
【0088】
(シミュレーション条件)
回転テーブル2の回転数:120rpm、240rpm
目標膜厚T:約155nm
ウェハの自転回数:なし(比較対象)、1回(自転角度:180°)、8回(自転角度:45°)、4回(自転角度:90°)
尚、ウェハWを自転させる場合には、夫々の条件において同じ角度ずつ自転させることとした。また、膜厚の測定(計算)は各々のウェハWにおいて周方向に49点ずつ行った。また、ウェハWの自転回数が8回及び4回のシミュレーションについては、ウェハWの半径方向において夫々8箇所ずつ及び4箇所ずつ膜厚を測定し、その平均値を用いた。
【0089】
(結果)
その結果、図28に示すように、ウェハWを1回自転させただけでも面内均一性が改善し、更に自転回数を増やす程均一性が向上していくことが分かった。そして、ウェハWを8回自転させると、回転テーブル2の回転数が240rpmの条件では均一性が1%以下に大きく改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0090】
1 真空容器
2 回転テーブル
4 凸状部
C 中心部領域
D 分離領域
E 排気領域
W ウェハ
16 昇降ピン
31、32 ノズル
41、42 分離ガスノズル
61、62 排気口
91、92 処理領域
200 昇降板
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内において、互いに反応する複数の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの成膜方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)等の表面に対して真空雰囲気下で少なくとも2種類の反応ガスを順番に供給することにより薄膜を形成する手法が知られている。具体的には、この手法は例えばウェハの表面に第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウェハ表面での両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを複数回例えば数百回行うことによって、これらの層を積層してウェハ上へ薄膜を成膜するプロセスである。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールできると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
この成膜方法を実施するにあたっては、例えば特許文献1〜8に記載の装置が知られている。これらの装置について概略的に説明すると、この装置の真空容器内には、複数枚のウェハを周方向(回転方向)に並べて載置するための載置台と、この載置台に対向するように真空容器の上部に設けられ、処理ガス(反応ガス)をウェハに供給する複数のガス供給部と、が設けられている。
【0004】
そして、ウェハを載置台に載置して真空容器内を所定の処理圧力となるように減圧し、ウェハを加熱すると共に載置台と上記のガス供給部とを鉛直軸回りに相対的に回転させる。また、複数のガス供給部からウェハの表面に例えば夫々既述の第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給すると共に、反応ガスを供給するガス供給部同士の間に物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることによって、真空容器内において第1の反応ガスにより形成される処理領域と第2の反応ガスにより形成される処理領域とを区画する。
【0005】
このように、共通の真空容器内に複数種類の反応ガスを同時に供給しているが、これらの反応ガスがウェハ上において混合しないように夫々の処理領域を区画しているので、載置台上のウェハから見ると、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスが上記の隔壁やエアカーテンを介して順番に供給されることになる。そのため、例えば真空容器内に供給する反応ガスの種類を切り替える度に真空容器内の雰囲気を置換する必要がないので、またウェハに供給する反応ガスを高速で切り替えることができるので、上記の手法による成膜処理を速やかに行うことができる。
【0006】
一方、例えば半導体装置の配線の微細化や多層化に伴って、このような成膜装置において例えば膜厚の面内均一性を更に高める技術が必要になると考えられる。膜厚の面内均一性を高める手法としては、例えば真空容器内における反応ガスの流れを均一化する手法が挙げられるが、この装置の真空容器内には、例えばウェハを保持するための凹部が載置台に設けられていたり、あるいはガス供給部や真空容器の内壁にウェハ搬送口などの凹凸が形成されていたりする場合がある。そのため、真空容器内において例えば反応ガスの流れがこれらの凹部やガス供給部などによって乱されやすいので、反応ガスの流れを均一化するのは困難である。
【0007】
特許文献9には、ウェハの表面にソース領域やドレイン領域を形成するために、ディスク上に複数枚のウェハを周方向に配置して、このディスクを支持する回転アームを軸回りに回転させると共に、このディスク上のウェハにイオンビームを注入する技術が記載されている。そして、イオンビームの全注入量の1/4を注入してウェハを90度周方向に回転(自転)させ、次いで再び1/4を注入して更にウェハを90度回転させ、こうしてウェハを1周させる間に全注入量を注入することにより、ディスクの往復直線運動に対して様々な方向を向いているトランジスタに対して均一にイオンを注入している。しかし、ALDを行う装置における上述の課題及び解決手段については何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公報6,634,314号
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、(b)
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【特許文献9】特開平5−152238:段落0016〜0019、図3、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、テーブル上の基板をガス供給系に対して相対的に公転させて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するにあたり、面内均一性高く成膜処理を行うことのできる成膜装置、成膜方法及びこの成膜方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記基板載置領域に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記の成膜装置の具体的な態様としては、以下の構成としても良い。
薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力する制御部を備えている構成。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの下方側に設けられ、当該テーブル上の基板を下方側から突き上げて回転させ、基板の向きを変更する構成。
前記自転機構は、前記テーブルと外部の搬送機構との間で基板の受け渡しを行う役割を更に有している構成。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの上方側に設けられ、当該テーブル上の基板を側方側から挟みこんで回転させ、基板の向きを変更する構成。
前記テーブルは上から見たときの平面形状が円形であり、
前記複数の反応ガス供給手段は、夫々前記テーブルの半径方向に亘ってライン状に反応ガスを供給する手段である構成。
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えている構成。
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気される構成。
【0012】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記の成膜方法の具体的な工程としては、以下のようにしても良い。
前記向きを変更する工程は、前記薄膜を成膜する工程の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、次いで前記自転機構により基板の向きを変える工程。
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側において真空容器の天井面と前記テーブルとの間に狭隘な空間を形成して、前記分離領域からこの狭隘な空間を介して処理領域側に分離ガスを流す工程。
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために、前記真空容器内の中心部に位置する中心部領域から、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出して、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気する工程。
【0014】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記に記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域と、これらの処理領域の間において分離ガスが供給される分離領域と、を基板が順番に位置するように、ガス供給系とテーブルとを鉛直軸回りに相対的に回転させる成膜装置において、プロセスの途中で基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更しているため、基板の面内におけるガスの流れの不均一さが緩和され、その結果面内に亘って膜や膜質の均一性が高い成膜処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図6】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図7】上記の成膜装置の一部を示す斜視図である。
【図8】上記の成膜装置におけるパージガスの流れを示す模式図である。
【図9】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図10】上記の成膜装置において基板を自転させる機構を示す横断面図である。
【図11】上記の成膜装置における処理の流れを示す模式図である。
【図12】上記の成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】上記の成膜装置において基板を自転させる様子を示す模式図である。
【図14】上記の成膜装置において基板が自転していく様子を示す概略図である。
【図15】上記の成膜装置の他の実施の形態を示す模式図である。
【図16】上記の成膜装置の他の例を示す横断面図である。
【図17】上記の他の成膜装置を示す斜視図である。
【図18】上記の他の成膜装置を示す平面図である。
【図19】上記の他の成膜装置の縦断面を示す斜視図である。
【図20】上記の他の成膜装置を示す横断面図である。
【図21】上記の成膜装置を示す説明図である。
【図22】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図23】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図24】上記の成膜装置が適用される基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図25】上記の基板処理装置の他の例を示す平面図である。
【図26】上記の基板処理装置に設けられた自転機構の一例を示す斜視図である。
【図27】上記の自転機構の他の例を示す概略図である。
【図28】本発明の実施例にて得られた特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態である成膜装置は、図1〜図3に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、この回転テーブル2を収納する概略カップ型の容器本体12と、この容器本体12の上面の開口部を気密に塞ぐように円板状に形成された天板11と、を備えている。この天板11は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に気密に接続されており、図示しない開閉機構により昇降して開閉されるように構成されている。
【0018】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。この回転軸22は、真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計回りに回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0019】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられており、この凹部24は回転テーブル2の回転により当該回転テーブル2の回転中心を中心として鉛直軸回りに公転するように構成されている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウェハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウェハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウェハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウェハWを凹部24に落とし込むと、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面(ウェハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、後述するように、ウェハWの中央部付近を下面側から支持して昇降させるための昇降板200が回転テーブル2に保持されている。尚、図4ではこの昇降板200の描画を省略している。
【0020】
凹部24はウェハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴なう遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、この基板載置領域(ウェハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウェハWの周縁をガイドするガイド部材をウェハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウェハWを吸着する場合には、その吸着によりウェハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0021】
図2、図3及び図5に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する上位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41、42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて配置されている。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計回りに配列されている。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは当該外周壁を貫通している。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、夫々反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段をなし、真空容器1の側壁の複数箇所に形成された貫通孔100に取り付けられている。尚、ノズル31、32、41、42が取り付けられていない貫通孔100は、図示しない覆い部材により気密に密閉されている。
【0022】
反応ガスノズル31、32には、夫々図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管31b、32bにより、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガス及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスが供給されるように構成されている。また、分離ガスノズル41、41は、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管により、分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)が供給されるように構成されている。
【0023】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔を置いて等間隔に穿設されている。反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウェハWに吸着させるための第1の処理領域91及びO3ガスをウェハWに吸着させるための第2の処理領域92となる。
【0024】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域91と第2の処理領域92とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転テーブル2の回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
尚、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0025】
従って分離ガスノズル41、42における前記回転方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記回転方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウェハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0026】
この例では直径300mmのウェハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウェハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0027】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における回転テーブル2の回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウェハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図6では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図6に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0028】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図6に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部位における既述の第1の処理領域91及び第2の処理領域92に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、既述の図1に示すように、バルブ65が介設された排気路63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0029】
これらの排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域91とこの第1の処理領域91に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域92とこの第2の処理領域92に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されており、夫々各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図3中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域91とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域91の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図3に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域92とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域92の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0030】
尚、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0031】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1及び図7に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウェハWをプロセスレシピで決められた温度に加熱するように構成されている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するために、ヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0032】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0033】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図8にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域91と第2の処理領域92との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスの回り込みが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0034】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との間の狭い隙間50を介して回転テーブル2のウェハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域91と第2の処理領域92との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域91と第2の処理領域92との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0035】
更に真空容器1の側壁には図2、図3及び図9に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGにより開閉されるようになっている。また、各々の凹部24の底面には、この搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しを行うために、ウェハWの中央部付近を下面側から支持して昇降させるための昇降板200が設けられており、上記の搬送アーム10は、昇降板200に干渉せずにウェハWを受け取ることができるように、先端側がU字型に分かれている。図10に示すように、凹部24の概略中央は一段低くなって円形状の窪み部201が形成されており、この窪み部201の底部は内側に突出するように環状に形成されていてその中央側のエリアは開口部202となっている。そして、この開口部202を塞ぐように上記の昇降板200が設けられており、この昇降板200は、上面の高さ位置が例えば凹部24内のウェハWの下面位置と同じかあるいは僅かに低くなるように形成されている。
【0036】
この回転テーブル2におけるウェハ載置領域である凹部24は搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において、搬送アーム10との受け渡し位置に対応する部位には、図10に示すように、昇降板200を裏面側から支持して昇降させるための昇降機構例えば昇降ピン16が設けられている。この昇降ピン16は、ヒータユニット7及び真空容器1の底面部14を貫通するように上下に伸びる昇降軸17を介して、当該昇降ピン16及び昇降軸17を昇降及び鉛直軸回りに時計回りに回転(自転)させるための自転機構を兼用する昇降機構18に接続されている。従って、この昇降ピン16は、真空容器1内に対してウェハWの搬入出動作を行うために昇降動作を行う働きに加えて、後述するように、ウェハWを上昇させて自転させることができるように構成されている。昇降軸17と真空容器1の底面部14との間には、軸受け部19a及び磁気シール19bが介在している。この図10中Gはゲートバルブである。
【0037】
また、この成膜装置は、既述の図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部80を備えている。この制御部80は、CPU、メモリ及び処理プログラムを備えている。このメモリには、ノズル31、32、41、42から供給されるBTBASガス、O3ガス及びN2ガスの流量、処理圧力、あるいはウェハWに対して成膜する薄膜の目標の膜厚T及び後述の成膜ステップの回数N、ローテーションステップにおいてウェハWを自転させる自転角度θなどの処理条件が書き込まれる領域がレシピ毎に設けられている。上記の処理プログラムは、上記のメモリに書き込まれたレシピを読み出し、このレシピに合わせて成膜装置の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理を行うように命令が組み込まれている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部85から制御部80内にインストールされる。
【0038】
次に上述の第1の実施の形態の作用について、図11〜図14を参照して説明する。以下の例では、ウェハWの表面に目標とする成膜量(膜厚)がTnm例えば80nmのシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する例について説明する。先ず、ゲートバルブGを開き、成膜装置の外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウェハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す(ステップS1)。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに、搬送アーム10によりウェハWを昇降板200の上方位置に搬入し、次いで搬送アーム10のU字型に分岐した先端部の内側領域を介して、下面側から昇降板200がウェハWを支持するように昇降軸17を受け渡し位置に上昇させて行われる。そして、搬送アーム10が真空容器1の外部に退避すると共に、昇降板200を載置位置に下降させて凹部24内にウェハWを収納する。このようなウェハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウェハWを載置する。続いて、回転テーブル2を所定の回転数例えば240rpmで時計回りに回転させて、バルブ65を全開にして真空容器1内を真空引きすると共に、ヒータユニット7によりウェハWを設定温度例えば350℃に加熱する(ステップS2)。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め例えば350℃に加熱されており、この回転テーブル2に載置されることで、上記のようにウェハWが設定温度に加熱されることになる。
【0039】
次いで、真空容器1内が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整して、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から真空容器1内に例えば夫々200sccm、10000sccmでBTBASガス及びO3ガスを供給する。また、分離ガスノズル41、42から例えば夫々10000sccm、10000sccmで真空容器1内にN2ガスを供給すると共に、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72からも所定の流量でN2ガスを中心部領域C及び既述の狭い空間内に供給する(ステップS3)。
【0040】
そして、ウェハWは回転テーブル2の回転により、第1の処理領域91と第2の処理領域92とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて反応生成物である酸化シリコン(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されていく。こうして回転テーブル2の回転(各処理領域91、92における反応)が所定の回数例えば20回行われることにより、ウェハWの表面には膜厚が目標膜厚Tの1/N(N≧2)この例では1/8(N=8、80/8=10nm)のシリコン酸化膜が積層されて、成膜ステップが行われる(ステップS4)。
【0041】
この時、第1の処理領域91及び第2の処理領域92の間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図12に示すようにBTBASガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガス及びO3ガスが雰囲気中においてもウェハW上においても混じり合うことがない。
【0042】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0043】
続いて、中間ステップとして、BTBASガスの供給を停止すると共に、図13(a)に示すように、凹部24が既述の昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2の回転を停止する(ステップS5)。BTBASガスの供給を停止すると、真空容器1のBTBASガスが速やかに排気されていくので、回転テーブル2の回転を停止しても、各ウェハWはBTBASガスの影響を受けない。そして、同図(b)に示すように、ローテーションステップとして、昇降ピン16により昇降板200及びウェハWを上昇させて、ウェハWを鉛直軸回りに例えば時計回りに360°/Nこの例では360/8=45°回転(自転)させてその向きを変更する。そして、ウェハWを下降させて凹部24内に収納する(ステップS6)。また、回転テーブル2を間欠的に回転(公転)させて、このようなウェハWの回転(自転)を回転テーブル2上に載置された5枚のウェハWに対して行う。尚、BTBASガスの供給を停止する時には、このBTBASガスと共にO3ガスの供給を停止しても良い。
【0044】
次に、回転テーブル2を回転させると共にBTBASガスの供給を開始して、ステップS4の成膜ステップと同様に膜厚が10nm(膜厚T/N=80/8)のシリコン酸化膜の成膜を行う(ステップS7)。この時、上記のようにウェハWを時計回りに45°回転させていることから、ウェハWは先程の成膜ステップを行った時の水平姿勢に対して、時計回りに45°ずれた水平姿勢にてノズル31、32の下方位置である処理領域91、92を通過することになり、ウェハW上には合計20nm(膜厚T/N×2=80/8×2)のシリコン酸化膜が成膜される。
【0045】
そして、ウェハWが時計回りに自転して1回転する間に膜厚Tnmの薄膜が成膜されるように、上記の中間ステップ、ローテーションステップ及び成膜ステップを(N−2)回この例では6回繰り返す(ステップS8)。つまり、BTBASガスの供給と回転テーブル2の回転とを停止して(中間ステップ)、ウェハWを時計回りに45°自転させ(ローテーションステップ)、次いで10nmのシリコン酸化膜の成膜(成膜ステップ)を行う各ステップをこの順番で6回繰り返して、いわば成膜処理の途中でウェハWを少しずつ自転させていく。すると、ウェハWは時計回りに45°自転する度に10nmのシリコン酸化膜が成膜されていき、合計45°×6=270°時計回りに自転し、また合計10×6=60nmのシリコン酸化膜の成膜が行われることになる。従って、成膜前(真空容器1に搬入された時)のウェハWから見ると、成膜後のウェハWは、時計回りに315°(45+270)自転し、80nm(60+20)のシリコン酸化膜からなる薄膜が成膜されることになる。
【0046】
以上の成膜処理におけるウェハWの自転した角度と膜厚とを概略的に図14に示すと、ウェハWは合計8回(N回)の成膜ステップと、45°ずつ時計回りに自転する合計7回(N−1)回のローテーションステップと、が交互に行われることにより、80nmの薄膜が成膜される間に例えば時計回りにほぼ1周(より詳しくは315°)自転することになる。尚、この図14中のウェハW上に描画した矢印は、ウェハWが自転していく様子を模式的に表すために、例えば1回目の成膜ステップを行う前の位置からのウェハWの自転角度を示したものである。また、この図14中の横軸には、成膜ステップとローテーションステップとの合計のステップ数を示している。
【0047】
こうして成膜処理が終了すると、ガスの供給を停止して真空容器1内を真空排気し、その後回転テーブル2の回転を停止して各ウェハWを搬入時と逆の動作によって順次搬送アーム10により搬出する。尚、既述のように、ウェハWが搬入前(成膜前)に比べて時計回りに315°自転していることから、真空容器1から搬出する前に、昇降ピン16により時計回りに45°自転させて搬入時と同じ向きに戻すようにしても良い。
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウェハWを被処理基板とする場合は例えば1rpm〜500rpm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。
【0048】
上述の実施の形態によれば、ウェハWの表面に2種類の反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)を順番に供給して薄膜を形成するにあたり、夫々処理領域91、92と、これらの処理領域91、92の間の分離領域Dと、の間をウェハWが順番に通過するように、回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させてウェハW上に反応生成物の層を積層した後、回転テーブル2上のウェハWを鉛直軸回りに自転させ、次いで再び反応生成物の層を積層して薄膜を形成している。そのため、例えば回転テーブル2の各凹部24において膜厚が厚くなる傾向の領域や膜厚が薄くなる傾向の領域が偏在していたとしても、つまり例えば1回目の成膜ステップにおいて成膜されたシリコン酸化膜の膜厚が不均一だったとしても、続く成膜ステップでは鉛直軸回りに自転させた状態で成膜ステップを行っており、上記の各偏在領域がウェハWの周方向にずれるように(膜厚の偏りが大きくならないように)次のシリコン酸化膜が成膜されるので、面内に亘って膜厚の均一性高く成膜処理を行うことができる。従って、例えば真空容器1のノズル31、32の長さ方向(回転テーブル2の半径方向)あるいは回転テーブル2の周方向(回転方向)において、ガスの濃度分布やガス流が不均一になっていたとしても、その不均一さが緩和されるので、面内に亘って膜や膜質が均一となるように成膜処理を行うことができる。
【0049】
この時、目標の成膜量Tに対して成膜ステップを8回に分けてウェハWを45°ずつ時計回りに自転させているので、各成膜ステップにおける膜厚のばらつきを面内に亘って均すことができ、後述のシミュレーション結果から分かるように、面内における均一性を1%以下まで向上させることができる。
また、ウェハWを自転させるにあたり、真空容器1の内部で行っていることから、例えば真空容器1の外部にて自転させる場合よりも自転に要する時間を短くすることができ、そのためスループットの低下を抑えて面内均一性を向上させることができる。
【0050】
更にまた、上記のように回転テーブル2の回転方向に複数のウェハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域91と第2の処理領域92とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして、前記回転方向において第1の処理領域91と第2の処理領域92との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に、回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるようにしているため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。尚、本発明は、回転テーブル2に1個のウェハWを載置する場合にも適用できる。
【0051】
上記の成膜ステップの回数Nは、後述のシミュレーション結果からも、2回(ウェハWの自転回数が1回、自転角度が180°)以上であれば良く、多くなる程膜厚の均一性が向上していくと考えられるが、ウェハWの自転に要する時間が長くなってスループットが低下するおそれのあることから、2回〜8回例えば4回程度であることが好ましい。また、成膜ステップをN回に分けて薄膜を成膜するにあたり、各成膜ステップにおいて同じ膜厚のシリコン酸化膜を成膜したが、各々異なる膜厚としても良い。具体的には、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、例えば1回目の成膜ステップで60nmのシリコン酸化膜を成膜した後、ウェハWを180°自転させ、次いで20nmのシリコン酸化膜を成膜しても良い。この場合においても、ウェハWを自転させない場合よりも膜厚の均一性を向上させることができる。また、成膜ステップをN回に分けて薄膜を成膜するにあたり、各々のローテーションステップにおいてウェハWを等間隔に360°/Nずつ自転させるようにしたが、成膜後の薄膜の膜厚が目標の成膜量Tとなるのであれば、各々のローテーションステップにおけるウェハWの自転角度θは以下のようにしても良い。具体的には、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、ウェハWを7回自転させると共に成膜ステップを8回に分けて10nmずつシリコン酸化膜を成膜する時に、例えば7回のローテーションステップの各々において30°ずつウェハWを自転させても良いし、あるいは1回目のローテーションステップにおいてウェハWを45°自転させ、その後の6回のローテーションステップの各々では30°ずつウェハWを自転させても良い。更に、例えば目標の成膜量Tが80nmの場合において、1回目の成膜ステップで例えば60nmのシリコン酸化膜を成膜した後、ウェハWを例えば90°回転させて、次いで20nmのシリコン酸化膜を成膜するようにしても良い。つまり、2回目以降のいずれかの成膜ステップにおいて、ウェハWの自転角度θが所定の角度(θ≠0、360)だけずれた状態で成膜すれば良い。このような場合においても、ウェハWを自転させずに成膜する場合よりも膜厚の均一性を高めることができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
上記の例では、ウェハWを自転させるにあたって、昇降機構18に自転機構を兼用させたが、第2の実施の形態として、この自転機構を別途設けるようにしても良い。具体的には、例えば図15(a)に示すように、昇降ピン16の上方位置における天板11に貫通孔210を形成し、この貫通孔210を介して天板11の上方位置から真空容器1内に垂直に伸びる昇降軸211を配置する。そして、例えば天板11上に、この昇降軸211を昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に保持する自転機構212を配置する。また、この昇降軸211の下面に昇降板213を接続すると共に、この昇降板213の下面側に、ウェハWを側方側から挟み込んで裏面にて支持するための内側が矩形に窪む保持機構214、214を、ウェハWの直径方向に離間させて相対向するように水平移動自在に配置する。尚、この図15中、既述の例と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。また、同図(b)は、この昇降板213をウェハW側(下側)から見たときの平面図である。
【0053】
そして、この昇降板213(保持機構214)は、ウェハWを自転させない時(ウェハWの搬入出時や成膜時)には回転テーブル2の回転動作に干渉しない上位置に退避して、ウェハWを自転させる時には保持機構214、214をウェハWの直径寸法よりも大きく離間させた状態で下位置に下降することとなる。そして、この自転機構212によりウェハWを自転させる時は、上記の例と同様にウェハWが昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2を停止させると共に、昇降板213を下位置に下降させる。次いで、昇降ピン16によりウェハWを裏面側から突き上げて保持機構214、214の内側領域にウェハWを上昇させて、保持機構214、214を内側(ウェハW側)に各々移動させることによってウェハWを両側から挟み込むと共に、昇降ピン16を下降させて保持機構214、214にウェハWを引き渡す。次いで、自転機構212によりウェハWを所定の角度だけ自転させると共に、再度昇降ピン16を上昇させて、ウェハWの受け渡し動作と逆の順序で凹部24内にウェハWが載置されることになる。このような自転機構212においても、上記の例と同様に成膜ステップやローテーションステップが行われて、同様の効果が得られる。
【0054】
[第3の実施の形態]
また、上記の各実施の形態の成膜装置としては、ノズル31、32、41、42に対して回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させる構成としたが、ノズル31、32、41、42が回転テーブル2に対して鉛直軸回りに回転する構成としても良い。このような具体的な装置構成について、本発明の第3の実施の形態として、図16〜図20を参照して説明する。尚、既述の成膜装置と同じ部位については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
真空容器1内には、既述の回転テーブル2に代えて、テーブルであるサセプタ300が配置されている。このサセプタ300の底面中央には、回転軸22の上端側が接続されており、ウェハWの搬入出を行うときにはサセプタ300を回転できるように構成されている。このサセプタ300上には、既述の凹部24が周方向に亘って複数箇所例えば5箇所に形成されており、この凹部24内には既述の昇降板200が設けられている。
【0056】
図16〜図18に示すように、既述のノズル31、32、41、42は、サセプタ300の中央部の直上に設けられた扁平な円盤状のコア部301に取り付けられており、基端部が当該コア部301の側壁を貫通している。コア部301は後述するように例えば鉛直軸回りに反時計方向に回転するように構成されており、当該コア部301を回転させることによって各ガス供給ノズル31、32、41、42をサセプタ300の上方位置において回転させることができるようになっている。尚、図17は、真空容器1(天板11及び容器本体12)並びに天板11の上面に固定された後述のスリーブ304を取り去った状態を示している。
【0057】
既述の凸状部4は、上記のコア部301の側壁部に固定されており、各ガス供給ノズル31、32、41、42と共にサセプタ300上を回転できるように構成されている。コア部301の側壁部には、図17、図18に示すように、各反応ガス供給ノズル31、32の回転方向上流側であって、当該上流側に設けられている凸状部4とコア部301との接合部の手前の位置に、2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々後述の排気管302に接続されていて、反応ガス及び分離ガスを各処理領域91、92から排気する役割を果たす。排気口61、62は、既述の例と同様に、分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。
【0058】
図16に示すように、コア部301の上面中央部には円筒状の回転筒303の下端部が接続されており、真空容器1の天板11上に固定されたスリーブ304内にて当該回転筒303を回転させることにより、真空容器1内でコア部301と共にノズル31、32、41、42及び凸状部4を回転させる構成となっている。コア部301内は下面側が開放された空間となっていて、コア部301の側壁を貫通した反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42は、当該空間において各々BTBASガスを供給する第1の反応ガス供給管305、O3ガスを供給する第2の反応ガス供給管306、分離ガスであるN2ガスを供給する分離ガス供給管307、308と接続されている(便宜上、図16には、分離ガス供給管307、308のみを図示してある)。
【0059】
各供給管305〜308は、コア部301の回転中心近傍、詳細には後述の排気管302の周囲にてL字に屈曲されて上方に向けて伸び、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて円筒状の回転筒303内を延伸されている。
【0060】
図16、図17、図19に示すように、回転筒303は外径の異なる2つの円筒を上下2段に積み重ねた外観形状に構成されており、外径の大きな上段側の円筒の底面をスリーブ304の上端面にて係止させることにより、当該回転筒303を上面側から見て周方向に回転可能な状態でスリーブ304内に挿入する一方、回転筒303の下端側は天板11を貫通してコア部301の上面と接続されている。
天板11の上方位置における回転筒303の外周面側には、当該外周面の周方向の全面に亘って形成された環状流路であるガス拡散路が上下方向に間隔をおいて配置されている。本例においては上段位置に分離ガス(N2ガス)を拡散させるための分離ガス拡散路309が配置され、中段位置にBTBASガスを拡散させるための第1の反応ガス拡散路310、下段位置にO3ガスを拡散させるための第2の反応ガス拡散路311が配置されている。図中、312は回転筒303の蓋部であり、313は当該蓋部312と回転筒303とを密着させるOリングである。
【0061】
各ガス拡散路309〜311には、回転筒303の全周に亘り、当該回転筒303の外面へ向けて開口するスリット320、321、322が設けられており、夫々のガス拡散路309〜311には、これらのスリット320、321、322を介して各種のガスが供給されるようになっている。一方、回転筒303を覆うスリーブ304には、各スリット320、321、322に対応する高さ位置に、ガス供給口であるガス供給ポート323、324、325が設けられており、不図示のガス供給源よりこれらのガス供給ポート323、324、325へと供給されたガスは、当該各ポート323、324、325に向けて開口するスリット320、321、322を介して各ガス拡散路309、310、311内に供給されることとなる。
【0062】
ここでスリーブ304内に挿入された回転筒303の外径は、当該回転筒303が回転可能な範囲で、可能な限りスリーブ304の内径と近い大きさに形成されており、前記各ポート323、324、325の開口部以外の領域においては、各スリット320、321、322はスリーブ304の内周面によって塞がれた状態となっている。この結果、各ガス拡散路309、310、311に導入されたガスは、当該ガス拡散路309、310、311内のみを拡散して、例えば他のガス拡散路309、310、311や真空容器1内、成膜装置の外部などに漏れ出さないようになっている。図1中、326は回転筒303とスリーブ304との隙間からのガス漏れを防止するための磁気シールであり、これら磁気シール326は各ガス拡散路309、310、311の上下にも設けられていて、各種ガスをガス拡散路309、310、311内に確実に封止する構成となっているが同図では便宜上省略してある。また、図19においても磁気シール326の記載は省略してある。
【0063】
図19に示すように、回転筒303の内周面側において、ガス拡散路309にはガス供給管307、308が接続され、各ガス拡散路310、311には既述の各ガス供給管305、306が夫々接続されている。これによりガス供給ポート323から供給された分離ガスは、ガス拡散路309内を拡散してガス供給管307、308を介してノズル41、42へと流れ、また各ガス供給ポート324、325から供給された各種反応ガスは、夫々ガス拡散路310、311内を拡散し、ガス供給管305、306を介して各ノズル31、32へと流れ、真空容器1内に供給されるようになっている。なお、図19においては図示の便宜上、後述の排気管302の記載は省略してある。
【0064】
ここで図19に示すように、分離ガス拡散路309にはさらにパージガス供給管330が接続されており、当該パージガス供給管330は回転筒303内を下方側に延伸されて図18に示すようにコア部301内の空間に開口しており、当該空間内にN2ガスを供給することができる。ここで例えば図16に示すようにコア部301は、サセプタ300の表面から例えば既述の高さhの隙間を空けて浮いた状態となるように回転筒303に支持されており、サセプタ300に対してコア部301が固定されていないことにより自由に回転させることができる。しかしながらこのようにサセプタ300とコア部301との間に隙間が開いていると、例えば既述の処理領域91、92の一方からコア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むおそれがある。
【0065】
そこでコア部301の内側を空洞とし、当該空洞の下面側をサセプタ300に向けて開放すると共に、当該空洞内にパージガス供給管330からパージガス(N2ガス)を供給して、前記隙間を介して各処理領域91、92へ向けてパージガスを吹き出させることにより、前述の反応ガスの回り込みを防止することができる。即ち、この成膜装置は、処理領域91、92の雰囲気を分離するためにサセプタ300の中心部と真空容器1とにより区画され、当該サセプタ300の表面にパージガスを吐出する吐出口がコア部301の回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。この場合にパージガスは、コア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことを防止するための分離ガスの役割を果たしている。なおここでいう吐出口はコア部301の側壁とサセプタ300との間の隙間に相当する。
【0066】
図16に示すように、回転筒303の上段側の外径の大きな円筒部の側周面には、駆動ベルト335が巻き掛けられており、この駆動ベルト335は、真空容器1の上方に配置された回転機構である駆動部336により、この駆動ベルト335を介して当該駆動部336の駆動力をコア部301に伝達し、これによりスリーブ304内の回転筒303を回転させることができる。尚、図16中337は、真空容器1の上方位置において駆動部336を保持するための保持部である。
【0067】
回転筒303内には、その回転中心に沿って排気管302が配設されている。排気管302の下端部は、コア部301の上面を貫通してコア部301内の空間に伸びだしていて、その下端面は封止されている。一方、当該コア部301内に伸びだした排気管302の側周面には、例えば図18に示すように、各排気口61、62と接続された排気引込管341、342が設けられていて、パージガスで満たされたコア部301内の雰囲気とは隔離して各処理領域91、92からの排ガスを排気管302内へと引き込むことができるようになっている。なお、既述のように図19においては排気管302の記載は省略してあるが、当該図19に記載された各ガス供給管305、306、307、308並びにパージガス供給管330は、この排気管302の周囲に配置されている。
図16に示すように排気管302の上端部は回転筒303の蓋部312を貫通し、真空排気手段である例えば真空ポンプ343に接続されている。なお図16中、344は下流側の配管に対して排気管302を回転可能に接続するロータリージョイントである。
【0068】
図20に示すように、サセプタ300の下方位置には、既述の昇降ピン16が設けられており、この例では昇降ピン16は、図18に概略的に示すように、各々の凹部24の下方位置毎に設けられている。つまり、この実施の形態では成膜処理はサセプタ300を回転させずに、ノズル31、32、41、42(回転筒303)を回転させて行うため、各々のウェハW毎に個別に独立して自転できるように、昇降ピン16、昇降軸17、昇降機構18、軸受け部19a及び磁気シール19bが各々設けられている。また、真空容器1に対してウェハWの搬入出を行うときには、各々の凹部24が搬送口15に臨む位置となるようにサセプタ300を回転させることから、各々の昇降ピン16は、サセプタ300を回転させるときには当該サセプタ300に干渉しないように下降し、ウェハWを自転させるときには上昇するように構成されている。
【0069】
この装置を用いた成膜処理の流れについて、既述の図11に示した各ステップS1〜S8と異なる点について、以下に簡単に説明する。先ず、ステップS1において、サセプタ300の回転動作に干渉しないように昇降ピン16を下降させ、既述のようにこのサセプタ300を間欠的に回転させて、搬送アーム10と昇降ピン16との協働作業により5つの凹部24にウェハWを各々載置する。
【0070】
次に、ステップS2において、各々の昇降ピン16の上方位置に各々の凹部24が位置するようにサセプタ300を停止させる。そして、回転筒303を反時計回りに回転させる。すると、図19に示すように回転筒303に設けられた各ガス拡散路309〜312は回転筒303の回転に伴って回転するが、これらのガス拡散路309〜311に設けられたスリット320〜322の一部が各々対応するガス供給ポート323〜325の開口部へ向けて常時開口していることにより、ガス拡散路309〜312には各種のガスが連続的に供給される。
【0071】
ガス拡散路309〜312に供給された各種のガスは、各々のガス拡散路309〜312に接続されたガス供給管305〜308を介して反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42より各処理領域91、92、分離領域Dへと供給される。これらのガス供給管305〜308は回転筒303に固定され、また、反応ガス供給ノズル31、32及び分離ガス供給ノズル41、42についてはコア部301を介して回転筒303に固定されていることから、回転筒303の回転に伴ってこれらのガス供給管305〜308及び各ガス供給ノズル31、32、41、42も回転しながら各種のガスを真空容器1内に供給している。
【0072】
このとき、回転筒303と一体となって回転しているパージガス供給管330からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ちコア部301の側壁部とサセプタ300の中心部との間からサセプタ300の表面に沿ってN2ガスが吐出する。またこの例では反応ガス供給ノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿ったコア部301の側壁部に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなっている。そのため、BTBASガスとO3ガスとは、既述の成膜装置と同様に互いに混じり合うことなしに独立して排気されていくことになる。
【0073】
従って、サセプタ300上で停止している各々のウェハWから見ると、各処理領域91、92が分離領域Dを介して順番に通過することになり、既述のように成膜ステップが行われる。そして、所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜されると、ローテーションステップとして所定のタイミングで既述の例と同様に、ウェハWが各々個別に独立して自転することになる。このようにウェハWを自転させるにあたり、既述の例と同様にBTBASガスの供給を停止して行うようにしても良いし、回転筒303の回転を停止しても良い。また、BTBASガスと共にO3ガスの供給も停止しても良い。更に、回転筒303の回転やBTBASガス及びO3ガスの供給を停止せずにウェハWを自転させても良く、その場合には例えばウェハWが自転している間にBTBASガスに接触しないように、当該ウェハWが第2の処理領域92あるいは分離領域Dを通過しているときに自転させても良い。
【0074】
この実施の形態においても、同様に面内において均一性の高い成膜処理が行われて、同様の効果が得られる。また、この例においても、ノズル31、32、41、42、凸状部4及び回転筒303と共に回転するように既述の第2の実施の形態における保持機構214、214を設けてウェハWを自転させるようにしても良い。この場合には、ウェハWの自転は回転筒303の回転を停止して行われる。
【0075】
本発明で適用される処理ガス(反応ガス)としては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0076】
[好ましい例、他の実施の形態]
例えば第1の実施の形態の成膜装置では、前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
そして、前記分離ガスノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、例えば第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げて説明すると、図21(a)、(b)に前記分離ガスノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウェハWを被処理基板とする場合、ウェハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hも小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hをある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウェハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離hをかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウェハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウェハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0077】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが好ましいが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部4を設けずに、分離ガスノズル41、42から下方に向けてN2ガスを吹き出してエアカーテンを形成し、このエアカーテンにより処理領域91、92を分離するようにしても良い。
ウェハWを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。また、上記の反応ガスによる反応が低温例えば常温において起こる場合には、このような加熱手段を設けなくとも良い。
【0078】
ここで処理領域91、92及び分離領域の各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図22は、既述の第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げてこのような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域91及び第2の処理領域92は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域91及び第2の処理領域92の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。
【0079】
また、反応ガスノズル31(32)の両側にも低い天井面を設けて、分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても良い。
また、同様に第1の実施の形態の成膜装置を例として図23に示すように、各ノズル31、32、41、42の取り付け位置を変更しても良く、例えばこの成膜装置では搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側の貫通孔100にノズル32を取り付けている。この成膜装置においても、同様に各々の反応ガスが混じり合わないように排気されながら、ウェハWの表面にBTBASが吸着し、その後O3ガスによりBTBASガスが酸化されるサイクルが多数回繰り返されて薄膜が形成される。
【0080】
本発明は、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給する場合にも適用することができる。その場合には、例えば第1の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第2の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第3の反応ガスノズル及び分離ガスノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガスノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0081】
[基板処理装置]
次に、上記の成膜装置を備えた基板処理装置の全体構成について図24に示しておく。図24中、111は例えば25枚のウェハWを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、112は搬送アーム113が配置された大気搬送室、114、115は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、116は2基の搬送アーム117、117(既述の搬送アーム10)が配置された真空搬送室、118、119は本発明の成膜装置である。
【0082】
続いて、この基板処理装置における処理の流れについて説明する。搬送容器111は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室112に接続された後、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム113により当該搬送容器111内からウェハWが取り出される。次いで、ウェハWはロードロック室114(115)内に搬入されて、当該室内が大気雰囲気から真空雰囲気に切り替えられた後、搬送アーム117により成膜装置118、119の一方に搬入され、既述の成膜処理(成膜ステップ)が行われる。
【0083】
上記の基板処理装置によれば、例えば5枚処理用の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0084】
[基板処理装置の他の例]
上記の例では、ウェハWを成膜装置内にて自転させるようにしたが、成膜装置の外部で自転させても良い。そのような例について、図25を参照して説明する。上記の基板処理装置の真空搬送室116内において、2基の真空搬送アーム117、117が各々アクセスできる位置例えば2基の真空搬送アーム117、117の中間位置における成膜装置118、119に近接する位置には、図26にも示すように、真空搬送アーム117上に保持されたウェハWを裏面側から突き上げて鉛直軸回りに回転させるための昇降軸130と、この昇降軸130を下側から鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に保持する駆動部131と、からなる自転機構132が設けられている。この自転機構132は、成膜装置118、119にて成膜途中のウェハWに対してその向きを変更し、成膜を続行するためのものである。尚、図26では1基の搬送アーム117のみを描画している。
【0085】
この基板処理装置では、ウェハWを自転させる時には、例えば真空容器1内の真空度が既述の真空搬送室116内の真空度と同程度となるようにバルブ65の開度を調整すると共に、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム117を真空容器1内に進入させて昇降ピン16との協働作用によりウェハWを真空搬送アーム117に受け渡す。次いで、真空搬送アーム117上のウェハWを自転機構132の上方位置に移動させると共に、下方側から昇降軸130を上方に突き上げてウェハWを持ち上げる。続いて、駆動部131により昇降軸130を鉛直軸回りに回転させて、既述の例と同様にウェハWの向きを変更する。そして、昇降軸130を下降させて真空搬送アーム117にウェハWを受け渡すと共に、このウェハWを真空容器1内に搬入する。こうして回転テーブル2を間欠的に回転させて残りの4枚のウェハWについても自転機構132において自転させた後、既述の例と同様に引き続き成膜処理を行う。この例においても、既述の例と同様に面内における膜厚の均一化が図られて、同様の効果が得られる。
【0086】
また、ウェハWを自転させるにあたって、真空搬送室116内に自転機構132を設けたが、真空搬送アーム117にこの自転機構132を組み合わせて設けても良い。このような真空搬送アーム117としては、具体的には図27に示すように、支持板141上に形成されたレール142に沿って進退するスライドアームとしても良い。そして、既述の自転機構132は、各々の搬送アーム117、117に設けられると共に、各支持板141内に埋設されて、搬送アーム117が後退した時にこの搬送アーム117上に保持されたウェハWに対して昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に構成される。この搬送アーム117においても、上記の例と同様にウェハWの自転が行われて同様の効果が得られる。また、既述の大気搬送アーム113に代えてこの真空搬送アーム117を既述の大気搬送室112に設けて、この大気搬送室112においてウェハWを自転させても良い。
【実施例】
【0087】
次に、上記の成膜方法を実施した場合に面内の均一性がどの程度改善されるか評価するために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、以下の条件において行った。
【0088】
(シミュレーション条件)
回転テーブル2の回転数:120rpm、240rpm
目標膜厚T:約155nm
ウェハの自転回数:なし(比較対象)、1回(自転角度:180°)、8回(自転角度:45°)、4回(自転角度:90°)
尚、ウェハWを自転させる場合には、夫々の条件において同じ角度ずつ自転させることとした。また、膜厚の測定(計算)は各々のウェハWにおいて周方向に49点ずつ行った。また、ウェハWの自転回数が8回及び4回のシミュレーションについては、ウェハWの半径方向において夫々8箇所ずつ及び4箇所ずつ膜厚を測定し、その平均値を用いた。
【0089】
(結果)
その結果、図28に示すように、ウェハWを1回自転させただけでも面内均一性が改善し、更に自転回数を増やす程均一性が向上していくことが分かった。そして、ウェハWを8回自転させると、回転テーブル2の回転数が240rpmの条件では均一性が1%以下に大きく改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0090】
1 真空容器
2 回転テーブル
4 凸状部
C 中心部領域
D 分離領域
E 排気領域
W ウェハ
16 昇降ピン
31、32 ノズル
41、42 分離ガスノズル
61、62 排気口
91、92 処理領域
200 昇降板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記基板載置領域に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力する制御部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの下方側に設けられ、当該テーブル上の基板を下方側から突き上げて回転させ、基板の向きを変更するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記自転機構は、前記テーブルと外部の搬送機構との間で基板の受け渡しを行う役割を更に有していることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの上方側に設けられ、当該テーブル上の基板を側方側から挟みこんで回転させ、基板の向きを変更するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記テーブルは上から見たときの平面形状が円形であり、
前記複数の反応ガス供給手段は、夫々前記テーブルの半径方向に亘ってライン状に反応ガスを供給する手段であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つの成膜装置。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記向きを変更する工程は、前記薄膜を成膜する工程の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、次いで前記自転機構により基板の向きを変える工程であることを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側において真空容器の天井面と前記テーブルとの間に狭隘な空間を形成して、前記分離領域からこの狭隘な空間を介して処理領域側に分離ガスを流す工程であることを特徴とする請求項9または10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために、前記真空容器内の中心部に位置する中心部領域から、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出して、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気する工程である請求項9ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項13】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記基板載置領域に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力する制御部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの下方側に設けられ、当該テーブル上の基板を下方側から突き上げて回転させ、基板の向きを変更するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記自転機構は、前記テーブルと外部の搬送機構との間で基板の受け渡しを行う役割を更に有していることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記自転機構は、前記テーブルの上方側に設けられ、当該テーブル上の基板を側方側から挟みこんで回転させ、基板の向きを変更するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記テーブルは上から見たときの平面形状が円形であり、
前記複数の反応ガス供給手段は、夫々前記テーブルの半径方向に亘ってライン状に反応ガスを供給する手段であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つの成膜装置。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記向きを変更する工程は、前記薄膜を成膜する工程の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、次いで前記自転機構により基板の向きを変える工程であることを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側において真空容器の天井面と前記テーブルとの間に狭隘な空間を形成して、前記分離領域からこの狭隘な空間を介して処理領域側に分離ガスを流す工程であることを特徴とする請求項9または10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記反応ガスの侵入を阻止する工程は、前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために、前記真空容器内の中心部に位置する中心部領域から、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出して、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気する工程である請求項9ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項13】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2010−212627(P2010−212627A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59971(P2009−59971)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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